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ある野良魔導士の書斎

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またもやですよ!?(冒険者、なんとかウィッチプロジェクト!?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:5
魔の森へのピクニック

スキル不足に悩むパーティ、【六珠】の一行。今日も今日とてキーレで蛮族退治に精を出し、無事に報奨金を得てきたのだった。

「ふー、この間はフォーチュンベルでウルフ退治、その前はデオタドさんの護衛。ぱーっ、と派手な依頼って無いもんかね」
「そんな事を言っているとリューンの衛生局から下水道掃除の手伝いを申し込まれますよ」
こんなやり取りをしつつリーダーのアンバーとまとめ役のオニキスが部屋から降りてくる。既に他のメンバーはそろっているようで、いつもの様にカウンター席でたわいの無い会話を楽しんでいる。
「何話してるんだ?」
アンバーが興味心身に問いかけるとサードニクスはにっこりと
「この間の事ですよ」
と答えた。彼の膝の上では白猫のパールが伸びをしている。
「この間、薬草取りに依頼人の子と行ったじゃん。あの話。あれは正直、恐怖体験その2ってかんじだったよな」
「そうそう。よく無事に戻れたなぁ、と思うもの」
ジャスパーは相槌を打ち、クインベリルも魔女のような帽子を脱ぎつつ頷いた。
「シャルロッテちゃんが無事だったからよかったけど、一体何が原因で恐怖の森になっちゃったんだろ?」
「魔術師兼精霊術師としては気になるのですがね」
オニキスはそういいながら親父に珈琲を頼む。そしてパールを抱き上げて膝に乗せ、いつものように新聞に目を通した。
「雷を放ったオニキスは一撃で気絶させられるし、クインベリルが全体治療のスキルを持っていなかったら、今頃どうなっていたか……」
アンバーが安堵の息をついていると、ジャスパーが二人にパンを回してくれた。彼らが受け取ったのを見届け、彼女は小さく溜息をつく。
「とにかく、生き残れたのが不思議だわ。…もしかしたら…驕る人間への反乱…なのかもしれないわね」
そんな彼女の言葉に…全員は小さく頷く。僅かに重い空気が、彼らを包み込む。しかし、サードニクスはそっと、呟く。
「でも、無事だったんだもん。今を笑おうよ。あの化け物たちからがんばって逃げたんだもの。だから、今笑えるんでしょ?」
「お前にしてはいいこと言うじゃん!」
パールはどこかほっとし、サードニクスに笑いかける。
「そう…だな」
アンバーもいつになく真面目な笑みで頷いた。

 食事を終え、六人はそれぞれ部屋に戻る。アンバーは同室のパールを抱きかかえつつベッドに力なく座り込んだ。
「…なぁ、パール。お前はどう思う?この間の出来事」
「やっぱり怖えぇよ。なーんか、俺の感じた事のない力だな」
二人は何気なく外を見る。あけた窓からは人々の声が聞こえてくる。その声に耳を傾けながら、アンバーは僅かに目を細めた。何故か、少し…故郷が懐かしい。
(もうすぐ、里では祭だな。……今年は帰れそうも無いな…)
街の穏やかな様子を見つつ、彼は小さく溜息をついた。
「あの木々も……ある意味悲しいよな」
なんとなく、思い出してそう思う。いつのまにか生命を喰らう存在となった木々。本来は双でなかったはずなのに、何があったのだろう。しかし何も解らない彼はただ静かに溜息を吐いた。

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
鳥の歌が聞こえない(作:齋藤 洋)
碧海の都アレトゥーザ(作:Mart)
希望の都 フォーチュン=ベル(作:Djinn)
城砦都市キーレ(作:ブイヨンスウプ)
by jin-109-mineyuki | 2007-11-24 00:43 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】