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ある野良魔導士の書斎

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二週間遅れであったりしますにゃ(汗:オニキス、何気なく再会)


白い世界で、二人の天使がのんびりと散歩していた。緑色の瞳をした青年は、眼鏡をかけた天使へと声をかける。
「兄上、私は……あの方のことをもっと知りたいです」
「ならば、がんばることですね。私とではなくセーシカさんを散歩に誘えばよかったのでは?」
兄の言葉に、弟は小さく苦笑する。
「最初はそのつもりでしたが、セーシカ姫は今日、仕事がありまして。
 仕事が終わってからでもお茶を一緒に……とは考えているのですけれど」
「つまりこの散歩は時間つぶし……」
兄はくすくす笑い、弟はそれに少し苦笑し少しほほを赤く染めた。当たりは雪で白く染まり、自警団のそばには誰かが作ったであろう雪だるまがおいてあった。……が、その傍らに、黒いローブと骸骨の面(?)が見えた。
「兄上、あれは死神ではないですか?」
「……そのようですね。彼は、私の知り合いです。少し話してきますね」
眼鏡をかけた男は弟にそう言い、見えたものへ歩み寄った。

『震える言葉、落とされた不安』(著:天空 仁)

「……ホーキンスさん、お久しぶりです」
「よぉ、オニキス。あっちの天使は弟か。まさか彼にも俺が見えていたとはねぇ……」
オニキスとホーキンスはハイタッチで挨拶を交わす。が、次の瞬間には二人とも真面目な顔になっていた。
「お仕事でここへ?」
その問いに、ホーキンスは頷きながら片手で自警団のドアをかるく叩いた。
「ここの団員が……ね。で、俺は俺の仕事を済ませたまでだ。で、ついでに少し厄介なことを聞いたから、それを伝えたくてここに残ってたのさ」
ホーキンスの言葉に、オニキスは首をかしげる。まぁ、人の死なんてものは予測できないし、何より『死神が持ってくる厄介なこと』が全く予測できなかったからだ。
「死神カラスでも出てきましたか?」
「いや、そいつとはまた別の意味で厄介なやつを見つけたから一応注意しろってな。この近辺で呪殺された人間の魂を担当している死神がいてな。そいつは任務に忠実で、何が何でも魂を取りに来る」
彼はそう言い、顎をなでながら小さくため息をついた……ように見えた。オニキスは僅かに瞳を細め、ホーキンスを見やる。何かを隠しているようにも見えるが、ここで問いかけても答えは来ないだろう。そう思ったオニキスは瞳を閉ざした。
「私の仲間でないことを今は祈りますよ。私の仲間はまだ死神に連れて行かれるわけにはいきませんから」
ため息交じりにそういうと、死神も頷く。暫くの間黙って向かい合っていたが、やがてひらひらと再び雪が降り始めた。音もなくただ静かに降る雪を、二人でただ見つめていると頭にベールをまいたアンバーが走ってきた。
「オニキス、そこにいたんだな!サードニクスが情報を持ってきてくれたんだ。早速作戦会議をしよう!」
「さすがあの子ですね。仕事が早い……。先に行ってください。後から行きますから」
オニキスはそういい、アンバーに微笑む。その姿を微笑ましく思いつつホーキンスはその場から音もなく立ち去った。それに気づいたのか、天使の策士は先ほどまで死神がいた場所を見て小さく苦笑した。
「全く、別れの言葉もなしにとは……」
「? どうしたんだよ、オニキス」
聞こえたのか、アンバーが不思議そうな顔をする。策士が見つめていた場所には誰もいない。それに首を傾げるも、彼はふふっ、と不敵な微笑みを零して首を横に振った。精霊を見る力は持っていても、死神は見えないらしい。その事がオニキスには不思議だった。
「さ、行きましょう。策を練らなくては」
「お、おお……」
オニキスが歩き出し、アンバーがついていく。ふと、顔をあげると仕事が終わったのか、男装したセーシカがアゲートと共に散歩を楽しんでいる。仲睦まじい姿を見ていると、やはり楽しく思わず顔を綻ばせる。すこし頬を朱に染めるリーダーを横目に、彼は大人の笑みで再び歩き出すも、脳裏にはホーキンスが言っていた存在が気になる。
(呪殺された魂を連れていく死神、ですか)
その胸騒ぎが、当たらなければいいな、と本当に思った。けれど彼の直観は……一人の仲間が危機に陥ることを感じていた。

(終わり)

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あとがき (敬称略ですみません)
ども、フーレイです。今回は『魂の色』(ZERO)に登場したNPC、死神110-105ことホーキンスが登場しました。来週から連載するレビューもどきにも多少絡むんで、まぁ……お楽しみに。つか、一応ヒントっぽく。
by jin-109-mineyuki | 2009-01-17 21:09 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】