ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:閑人閑話図書館( 38 )

第五夜:黄金の地編


-黄金の

金色に輝く、安寧の竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、古の遺伝子眠る者。
真実を求めんとする思いが、運命の扉を開く。

 穏やかな朝の光が、カーテンを越えて、本に溢れた空間に流れ込む。その一角には沢山の机があり、その一つに沢山の本が積まれている。そして、机に伏せて眠っている大柄な青年の頬を僅かな光が撫でた。暫くすると青年の表情が僅かに曇り、手が動く。運悪く積んであった本を崩し、大きな音を立てて机の下へ落ちて行った。
「うわあっ!?」
それに驚いてしまったのか、青年が飛び起きた。途端にバランスを失い、思いっきり後ろへひっくり返ってしまった。鈍い痛みが、背中全体を覆っている。
「いててて…。あーあ、またやってしもうたか」
青年は苦笑し、身を起こす。そして素早く本を拾い上げた。そのどれもが大昔に起った【ドラゴン戦役】関連の書物だ。その中でも目立つのが【黒い魔物】に関する物。【月の御子】が生まれるはずなのに、変わりに【黒い魔物】が現れては町や村を壊滅させる。そこで、彼はある仮説を立てた。【黒い魔物】は【月の御子】を殺しているのではなかろうか。だから、【月の御子】は何時まで経っても現れない…。
「いつかは、『ドラゴン戦役』の遺跡を巡るんだ。この足で…」
そして、この謎を解いてみせる。1人決意を確認する。そうしながらも、彼は本を片付け始めた。名前はティルハーニャ。ミール・セゾー国立図書館の司書であり、学者もやっている。若き学者の夢は、【月の御子】と【黒き魔物】の謎と関係を解く事…。

 ティルハーニャが事務所に行くと、同僚が苦笑して出迎えた。彼が図書館で夜を明かすのは時折あることだから。本当は、非番であるはずなのに彼が居る。それだけで研究に熱中しすぎた事が丸わかりなのである。
「まったく、お前は本当に好きだよな…『ドラゴン戦役』の研究」
「まぁ、ね。なんか…こう、惹かれるんよ。魂がさ、『解いてくれ』って言うとるし」
同僚の言葉に、ティルハーニャが苦笑する。それは物心付いた頃からで、二十代後半に差し掛かった今でも、それは変わらない。
「そんなんだから未だに嫁の貰い手がないんじゃよ」
そう言ったのは上司だ。彼にそう言われ、ティルハーニャは苦々しい顔になる。研究の話になると人が変わったようになるため、近づいた女性は全て去っていく。それ故に中々恋が成就しない。それだけ、研究にのめり込んでいるのだ。この青年は。
「だったら、今の恋人は『ドラゴン戦役』関連の本やろねぇ」
彼はそう言うと一礼し、事務所を後にした。

 とりあえず、住んでいる家に戻る。家族は居ない。子供の頃は孤児院で育った。赤ん坊の頃に拾われ、現在も時折子供たちに読み書きを教える序に食事を食べに行く。彼にとって、孤児院の子供たちが弟、妹分。出身者が兄弟・姉妹。先生方が親同然だった。
「本当に、浪漫が詰まっているよな…『ドラゴン戦役』は」
彼は自然にそう呟くと、肌身離さず持っているお守りを懐から出した。金色に輝く宝珠だ。拾われた時には既に手にしていたらしく、特に親しかった先生からずっと持って置くように言われていた。思い出せば、ミランダ様もそう言っていたっけ。彼はそっと、宝珠を両手で包み込む。そして思い出した。生まれる直前か、もっと前にも、ドラグーンが活躍したらしい。詳しい事は知らないが、ヴァラージや怪物と戦い、数々の危機を救っているという。
(それに、沈まぬ月の崩壊も関わっているんやろうな。…ああ、会ってみたいよ)
そして、旅の話を聞きたい。ティルハーニャの思いは徐々に膨らんでいく。彼らの物語の中に、世界の真実が見えてくるかもしれない。そんな予感が、彼の中にあった。それに、妙な噂も耳にする。最近、異常気象や魔物の異常繁殖、巨大化の謎に、ドラグーンが立ち上がった、というのだ。だったら、余計に気になる。そのパーティに出会う事があれば…。ティルハーニャの目が光る。そして、自然と口ずさんでいた。
「ドラグーンの一行に同行し、物語が作られる瞬間を…この目で」
その言葉に反応したのだろうか、両手の隙間から、金色の光が零れ出た。思い出す。似たような宝珠を持っていた子供たちに、図書館への道を聞かれたことを。

後に彼はそのドラグーン一行に出会う。それは一度出会っていた子供たちだった。後から自分もドラグーンの1人と知ったとき、ティルハーニャは決意する。
「真実を、この手で掴む。…たとえそれがどんな結果であろうとも」
そして、手にした仲間をこの手で守る…とも。

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 …番外編もプラチナで折り返しを迎えました!残りは彼を含め3人となりましたが…いかがでしょうか?実は彼の話も三角さんに期待されている模様。期待に添えたかが不安だったりします。彼のアイディアは実を言うと『黒い魔物』の話があったからこそ生まれたんです。つまりはロゼがいなかったら彼はこの世に生まれていなかったんですね(だからと言ってロゼが産んだ子ではありませぬ:汗)。残り3話よろしくお願いします(最終話はオリジナルです)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-11 01:52 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

第四夜:蒼海の水編


-蒼海の

紺碧の流動を模りし、激流の竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、二種の血が結した命。
踏み出した道は長く険しくも、足を止めることは無い。

 遠い、遠い歌が聞こえた。自分が幼かった頃に聞いた歌だった。そのメロディは儚くも暖かく、優しい物だった。けれど、誰が歌っていたかは思い出せなかった。だから少年は、思い出すためにそれを歌っていた。
「プラチナ」
名を呼ばれ、少年は顔を上げる。養母が彼を手招きしていた。なんだろう、と思い駆け寄る。と、養母は優しい顔で彼を出迎え、抱きしめた。

 赤い目が、開かれる。旅姿の少年は身を起こし、立ち上がった。大きな鎌を持った、十歳ぐらいの少年だ。名をプラチナといい、そこいらでは有名な傭兵であった。
(最近、不穏な空気が漂っているなぁ)
と、言うのも異常現象の所為である。彼方此方で起こっているために、人々は困り果てていた。そんな人たちの為に自称『正義の天使』を名乗る少年は戦っている。
「おいらには、おいらの正義がある。よぉし、今日も頑張るぞ!」
包帯の巻かれた左腕に右手を置き、にっ、と太陽に向かって笑う。これが、何時もの始まり。彼は一度体を伸ばすと大鎌を持って歩き始めた。口ずさむのは、幼い頃に聞いた歌。お気に入りの歌だ。1人で旅をする時、時々歌っている。
(メル母さんも、歌ってくれた、大切な歌だ。おいらの見えない宝物だよ)
こうしていると、勇気が沸いてくるようだった。口ずさむだけで、元気になれる。だから今日も歌っていた。

 プラチナは幼い頃に放火で両親を亡くしている。その時、左腕が焼け爛れたが故に包帯を巻いて隠している。何故、両親が殺されたのか。それは悲しい事に、父親が有翼人であったが為だった。そう、この少年は人間と有翼人の混血だ。両親の友達であったメルという女性が、プラチナを育ててくれた。彼女は息子がドナウから発つ際、一通の手紙を託した。渡す相手はダートとシェーナという夫婦で、母の古い友人らしい。母はこの手紙を渡したとき、真剣な目で息子にこう言った。
「頼んだよ、プラチナ。これは本当に大切な手紙だからね」
中身を見るわけには行かない。けれど、母親の表情からその内容がとても重要な事というのは解かった。だから早く届けたかった。それなのに、街道には沢山の魔物がいる。異常気象も起っていて、何がなんだか解からない。異常を母も感じていた。
「解かってる。早く届けるよ」
彼の口から、頷きが零れる。母からの手紙を、早くセレスにいる夫婦の元へ行きたかった。

 ドナウからセレスまでの間に、関所がある。そこを通って一路ベールへ向かう。母が一度ベールという街に行ってみるといい、と言われていたのだ。
「母さんの友達が、ここにもいるって聞いているんだけれど…」
そう、呟いていたとき…。嫌な予感がした。ベール方面をみると、大きな魔物に襲われている。三人とも自分の得物で戦っているようだが、どうやら苦戦しているらしい。
「おっ、困ったヒト発見!…どうやら、手ごわそうだね」
そう呟くと、プラチナは懐から宝珠を取り出した。母親から譲り受けた、青い宝珠。そして、これには秘密があった。
「力を貸してください、母さん」
彼が宝珠に囁く。と、次の瞬間には青い光が彼を包む。水がざわめき、彼を抱きしめ、弾ける。と、そこには美しい鎧を纏ったプラチナの姿があった。彼は背中に生えた美しくも逞しい翼を広げ、そこへと躍り出た。
「えっ、な、何なの!?」
赤いリボンを額にまいた女の子が、大鎌を持った少年を見上げる。一緒にいた男の子二人も、驚いたようだ。
「蒼海竜のドラグーンにして正義の天使、プラチナ参上!」

 この後、彼は助けた相手も色違いの宝珠を持っている事を知る。そして、それを意味する事を知った時、すんなりと全てを受け入れた。仲間たちよりも早く覚醒したプラチナ。彼は仲間に微笑む。
「…魔眼がおいらたちを導いているんだ。母さんたちの時のように」

(完)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 …なんだか、ダートと同じような事を言っているなぁ、プラチナ。しかもロゼ姐さんの如くドラグーン化して主人公一行を助けるとは。最初はそんな設定にするつもりはなかったのですが、何気なくこうなってしまいました。既に一度ドラグーンとなっているレニとディオなんですが、自分の意志では在りません。ちゃんとこの後にハルモニア共々本格的な覚醒の時を迎えますんで…。

※第一夜を除き金曜日に更新しておりますね。…今回は土曜日に泊りがけでボランティアへ行く為に更新が出来ないので一日早めに…。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-03 16:33 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

第三夜:碧緑の風編


-碧緑の

深緑たりて若々しき、知恵深き竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、夢抱く幼き王子。
旅立ちを決意した瞳に、強き意志の光が宿る。

 一人、華奢そうな少年が外を眺めていた。半分ずれた眼鏡が僅かに空を映し、薄っすらと涙が浮かんでいるのを隠していた。
「父様の様にも、母様の様にも…ましてや姉様やエオスのようにもなれない」
少年はテラスから離れ、部屋に戻る。簡単に纏められた荷物がベッドの上に転がって、王子を待っていた。
「…だから、旅に出ます」
行き先は嘗て父親が行ったミール・セゾーの国立図書館。幼い頃から旅の話を幾つも聞いていたが、その中で一番興味を持ったのが現在も修繕中の『英知の宝庫』だった。幼い頃から本が大好きなので、憧れているのだ。
(それに、僕自身の腕でどこまで行けるのかも知りたいのです)
セルディオの第一王子、ハルモニア。彼は、一つ頷いて荷物を手に部屋を出て行った。

 ハルモニアは母親譲りの髪を一本に編みなおすと、こっそりと父王の書斎へ入った。城を出る前に、見ていたいものがあったのだ。
(確か、机の引き出しに…)
誰もいない事をもう一度確認し、慣れた手つきで引き出しを開け、奥に隠されていたモノをそっと取り出した。父親が大切に持っている、緑色の宝珠だ。顔を上げると、父親が愛用しているマントが出されている事に気がついた。外に出るときはいつも纏っている。
(外に出るんだ。…そういえば、最近奇妙な噂もあるし)
セルディオを含む世界の彼方此方でモンスターの巨大化や異常繁殖、一部地方のみの異常気象などが起っている。それと同時に、彼自身も奇妙な予感がしていた。自分は近い将来、長い旅に出るのではないか、と。まあ、今回は家出という形で出るのだから、違うのかもしれないが。ハルモニアの手が、そっと、宝珠を握り締める。
「父様、ごめんなさい。僕は…」
その先を紡ごうとして、僅かに躊躇う。何故だろう、僅かに罪悪感を覚える。と、その刹那。人の気配が近づいてくるのを感じ取る。
(拙い!)
手は宝珠を包んだまま身を翻す。咄嗟に、持ってきてしまった。勿論マントも。自分のみには若干大きすぎるのに。それでも、手早く纏うと慣れた動きで窓から外へと飛び出した。外の畑には前日から隠していた槍がある。
「いってきます、父様!」
ハルモニアはそういい、地面を力強く踏みしめた。

 手の中の宝珠は嘗て父親がお守りにしていたらしい。詳しいことは知らないが、長い旅に出ていた事は聞いている。その話を聞きながら、三人兄弟はすくすく育っていた。
(僕も身分を捨てて、いつかは旅に出るんだ!)
ハルモニアも、幼い頃から夢を持っていた。姉のように聡明でなく、弟のように賢くはない。そう、思い込んでいた彼はちょっと前から疎外感と劣等感を覚えていた。実際には槍の才能と思いやりに恵まれた王子なのだが、己の美点がどうも見えていないらしい。小さな王子は溜息混じりに父親を見ていた。
(父様には、姉様とエオスがいる。僕は…多分…)
何故だろう、時折、胸が苦しくなる。その先の言葉を思い浮かべるといつもこうだった。そんな自分が嫌で、仕方がなかった。だから、家出を決意したのである。けれども、不意に、数日前の事が蘇った。
『誰かが呼んでいる気がするんだ』
真夜中に出会った、《別の可能性》の世界で生きる『もう一人の自分』が、呟いていた。何かの大きな力が、自分たちを引き寄せている。もしかしたら、これは始まりかもしれない。
「……、僕、頑張りますからね」
ハルモニアが呟いたとき、影が降りた。顔を上げると、親友のレニとディオが笑いかけている。小さな王子は決意を胸に、彼らの元へ駆け出した。

遠くで、誰かが手を伸ばしている。
美しい緑色の光が穏やかに満ちた『誰か』
その人は言う。
「私と共に行こう」と…
そんな夢を、繰り返し見続けた。
導かれるように、今、僕は一歩踏み出す。

 後に王子はその宝珠の正体を知り、同時に疼いていた力にも目覚める。その時、国王たちに家出の事がばれてしまうのだが、励まされ無事に旅立った。それぞれがそれぞれの役目を持ち、力を持つ。それに気付き、本当の意味で力を得るのは…まだ本の一寸先のことであるが…。

(完)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 …三角さんに期待されているらしい…ハルモニアの物語です。皆様、いかがだったでしょうか?この王子、自分の美点に気付かないという欠点があるんです(それは姉と弟にも言えることなんですが:汗)。因みに裏設定ですが、姉のプシュケも槍は操れます。そして、彼女は父親より長身です。弟のエオスは体が弱く、槍は操れません。…あ、長めになってしまった(汗)。
今回も、一日早くアップしてしまいます。いえ、なんだか「はよせな!」という声がスタンバイしている皆(キャラクター)聞こえてくるもので…。
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by jin-109-mineyuki | 2006-02-24 21:15 | 閑人閑話図書館

第二夜:白銀の光編


-白銀の

白妙ともいえよう、慈愛の竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、月の血を濃く引きし姫の息子。
祈るその背中に、宿命の光が降り注ぐ。

 風が吹き、木漏れ日が優しく地面にかぶさる。大樹にもたれる青年はその中で穏やかな寝息を立てていた。しかし、周りの喧騒で目覚めたのだろう。瞼が震え、ゆっくりと開かれた。誰かが、自分を呼んでいる。そんな気がする。けれども誰が呼んでいるか解からない。しかし、細胞単位で誰かが自分を呼んでいる気がして、ならなかった。と、その時。何かに気がつき、彼は身を起こす。紅いリボンが近くに落ちており、それが片割れのであると、すぐに解かった。ココからだったらまだそんな遠くには行っていないだろう。彼はくすっ、と笑って拾い上げた。

青年の名はディオ。セレスの村で生まれ育った素朴な青年だ。嘗て傭兵であった村長を父に持ち、双子の姉には、元気一杯なレニがいる。母親は穏やかな女性で、面倒見のいい彼も母親に似た、とよく言われていた。

 ディオは身支度を整え、白銀の宝珠を懐へしまうと急いでベールへと向かった。双子の姉・レニは母親の使いでベールへと向かっている。本来、ディオは争い事を嫌うが身を守る為、レイピアを持っていた。今も腰に下がっている。ふと、赤いリボンを見る。レニは父親から貰ったそれを大切にしていて、本気になるとそれを額に巻く。嘗て傭兵だった父も額に紅いバンダナを巻いていたという。そんな事を考えていると、レニの背中が見えた。
「あ、レニ!リボン、忘れてるよ!!」
レニが振り返り、ぱっ、と目を輝かせて駆け寄る。元気な笑顔が好きだった。愛しい片割れが、ずっと傍で笑っていればそれでいい。だから守り合いたい。
「ありがと、ディオ!何か忘れていると思ったら…」
「全く、おっちょこちょいだなぁ」
鞄から櫛を出し、レニをその場に座らせる。そして、髪を結いなおしてリボンを結ぼうとした時。背筋にぴりっ、と何かが走る。瞬間、頭が痛くなり、思わずレニに捕まってしまった。
「ねぇ、…どうしたの?」
レニは振り返る。と、片割れの瞳が金色に輝いている。何故だろう、戦士としての勘が二人の危機を察知していた。
「ディオ、敵が…モンスターが来る!」
ディオと共に立ち上がったとき、そこに一匹のモンスターが現れた。しかし、何かが違う。巨大なアサシンコックが、二人に向かって襲い掛かってきた。双子は己の得物を抜き、身構える。嫌な予感が、ディオの中で疼く。何故だろう、何かの悪意が、モンスターを巨大化させたように思えたのだ。
「行くよッ!」
レニが、片割れから貰ったリボンを額に巻きながらて叫ぶ。ディオは頷いて共に駆け出した。

 普段ならば梃子摺らない筈の、たやすい敵。けれどそれは巨大化し、二人に襲い掛かった。父親から仕込まれた術をもってしても、二人は追い詰められていく。だいぶ体力は削った、と思う。しかし、それは自分たちもである。次はどうしようか、と考えていると、隙を突かれた。羽で弾き飛ばされ、うわっ、と悲鳴を上げる間もなく転がるディオ。それに気付いたレニが背後を襲い、やっとの思いで切り倒す物の、血の臭いを嗅ぎ付けてもう一羽が既に襲い掛かってきていた。
(もう、駄目なのか?)
そう思ったとき、真紅と白銀の光が瞬いた。そして、みなぎる力と共に不思議な鎧を纏う。その後のことは、あんまり…覚えていない。気がついた時、モンスターは倒れていたのだから。
「レニ…、あの鎧ってなんだったんだろうね」
ディオは気絶したレニに膝を貸しつつ、懐から宝珠を取り出した。あの鎧と同じ白銀の、優しい光を帯びている。一方、レニの宝珠も鎧と同じ紅蓮の、力強い光。
「何故だろうね。私達は、なにやら大きなうねりに飲まれたような気がする…」

 モンスターの体にあった、白い欠片。その正体を知ったとき、ディオは両親の過去と僅かな繋がりを覚えた。しかし、それと同時に…レニと共にドラグーンとしての宿命を歩き出した事も知った。一つの覚悟と共に、ディオはゆっくりと立ち上がる。

―レニを守るのはこの私だ。

(終)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 レニに続き第二段で、双子の弟・ディオです。若干シスコンっぽいよーな気もしますが…。これで二人とも竜騎士の道を歩き出したんですよね。あと、彼の得物が弓ではなくレイピアな理由は後ほど紹介しますんで…。

※毎週土曜更新のルールだったんですが(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-02-17 22:17 | 閑人閑話図書館 | Trackback

第一夜:真紅の炎編


-真紅の

紅蓮なる、勇ましき竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、憧れを力に戦う娘。
目覚め近し今、様々なる思いと共に剣を握る。

 静かな朝を迎えるセレスの村。その朝霧を切るように一人の少女が木刀を振るう。漸く顔を見せた太陽が、僅かに上気した頬を、汗の浮かぶ額を照らす。ビュンッ、と風を切る木刀。見慣れた者が彼女を見るならば、おそらく誰もがこう言うだろう。
『戦う様は父親に生き写しだ』
少女の名はレニ。セレスの村を治める元傭兵の娘であり、誰もが認めるじゃじゃ馬だ。彼女は嘗ての父親のように強くなる事を目標に、毎日練習を欠かさない。父親は過去に長い旅をしており、それで多くの仲間と出会っている。その一人にセルディオの王がいたりするが、レニは気にしていない。父親は彼女の誇りであり、憧れだった。

 レニは朝の稽古を終えると家に戻った。母と弟が朝食の準備をしている。そして、テーブルをふと、見たが…其処に居る筈の父は今、居ない。3日前から何かの用で出かけているとは聞いているが、なんだか不安だった。
「レニ、どうしたの?」
不意に、声がかけられる。振り返ると双子の弟・ディオがいた。彼はレニの顔を見、表情を曇らせる。理由が、何と無く解かっているのだ。
「父さんのこと?」
「いや、なんでもないよ……」
レニは首を横に振り、席に着く。ディオはそれが不安になりながらも彼女に習った。湯気を立てる目玉焼きなど質素な朝食が並ぶ中、三人で食事を取り始めた。

朝食を食べ終わると、レニは母親の使いでベールへ向かうことになった。身支度を素早く整え、村を出る。その際、お守りとしている紅い宝珠を胸元にしまった。
(父さんも、ベールに居るのかな?)
ふと、レニは思った。父親が色々な用事で村を出るのは多々ある事だが、奇妙な心配がするのは珍しいことだ。また、不安が色濃くなる。自然と胸元の宝珠を取り出し、深い溜息と共に握り締めた。幼い頃、川遊びの時に拾ったもので、両親はそれを見て多少驚いた。一体何かは教えてくれなかったが、大切にしなさい、と言われていたので大切にしているものだが…。
(父さんなら、強いから心配する必要なんてない筈なのにね)
レニは立ち止まり、深く目を閉ざした。そして、自分の意識が何処か深い場所へと引かれていくのを感じ取った。

ぼやけた光の奥に、父親はいた。
けれど、遠い、とおい、何かに阻まれて…届かない。
遥か彼方に、まあるくて、白く輝く、大きな月があった。
(月なんて…無い筈なのに…)
よく見ると、手前に自分がいる。
しかも、炎の紅を纏い、剣を手にして。
背中には、確かに見覚えのないような、あるような、皮膜の翼が…。

そこで、レニは目覚める。

 我に返ったとき、レニはその場に倒れていた。急いで立ち上がり、手に居ていた宝珠を胸元へしまおうとした。が、手を止めて見入る。何故だろう、紅い宝珠は僅かに光り輝いているように見えた。暖かい、力強い何かが自分を呼んでいる気がした。
「ねぇ、何か知っているの?父さんがどこに行ったのか、知っているの?」
その問いに、宝珠は答えなかった。

 後に、レニはこの宝珠の正体と父親の消息を知る。しかし、それは彼女の運命を変える長い旅の前奏に過ぎなかった。

(終)


お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

ここから抜粋したお題七つ+オリジナルテーマの計八週連続で『勝手にシリーズ』の延長戦SSをかいていきますので、よろしくお願いします。感想などありましたら書き込みをお願いします。更新は毎週土曜の予定です。
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by jin-109-mineyuki | 2006-02-11 23:37 | 閑人閑話図書館 | Trackback

レジェドラSS第一弾でifです(フーレイ、ちょっとドキドキ)


レジェンド・オブ・ドラグーンifストーリー
『真夜中の出会い』  著:天空 仁(フーレイ)

 それは、ちょっとした運命の悪戯だった。

 セルディオの王都・ベール。インデスル城の奥深く。夜も更けた地下書庫を一人歩く影があった。小柄な、未発達な影だ。片手にはカンテラを持ち、そぉっと歩いていく。
「この辺りになら、面白そうなものあるかもね」
少年は淡い金髪をゆらし、くすっ、と笑った。この少年の名はペリドート。この国の第一王子だ。上にはやさしい姉が一人居る。やんちゃな王子は夜中に自室のベッドをこっそり抜け出し、地下書庫へと足を踏み入れた。パジャマの上にマントを羽織り、寒さを防いではいるが、若干肌寒い。それでも、好奇心が勝って足を進めている。
「あれ?」
ふと、ペリドートは顔を上げた。背よりも高い本棚の奥に何やら光るものがある。一気に興味を惹かれてしまう。何だろう、と思って近寄ってみるとそれは大きな鏡だった。
「こんな所に鏡が…?」
不思議に思い、覗き込んでみた。こんな暗い場所に何故この鏡はあるのだろうか。相当古いものであるらしく、綺麗な装飾には蜘蛛の巣が張っている。縁には文字が刻まれているようだったが、一部消えていて読めなかった。傍らの箱にカンテラを置き、もっと近寄ってみる。
「一体、何でだろ…」
ペリドートが首を傾げ、鏡に触れた時である。鏡に一つの波紋が広がり、音もなく一度だけ光った。そして奥を見ると、自分に似た別人が映っていたのだ。思わず、目が合う。
「「うわぁっ!」」
思わず尻餅を付くが、それは鏡の向こうにいる少年も同じだった。よく見ると眼鏡をかけている(半分ずれているが)。ペリドートより若干華奢だが、髪の色とパシャマは全く同じだ。
「き、君はだぁれ?」
鏡の奥から声が聞こえた。女の子のそれにも聞こえる、やわらかでのんびりとした声だ。
「僕はハルモニア。一応、セルディオ国の第一王子です」
にっこりとして、ハルモニアと名乗った少年は言った。けれどこの国の王子って…?ペリドートは訝しげに口を開いた。
「俺はペリドート。セルディオの第一王子だ」
「ええっ?」
今度はハルモニアが驚く番だった。彼は目を真ん丸く見開くと、ほんのちょっと首を傾げる。そしてこんな事を言い出した。
「そうか…、これはこういう事なのかしら。夢という可能性もありえるけれど…」
「ど、どうしたんだ?」
ペリドートが問いかける。ハルモニアはちょっと考えると、へにゃ、と柔らかで温厚な笑みを向けた。
「では聞きますけれど、父様と母様の名前を同時に言いましょう」
「いいよ」
二人が息を吸う。そして、同時に口を開いた。
「「父の名はアルバート、母の名はエミル!」」
途端に、二人ともキョトン、となった。
「そ、そんなことって…あるのか?まさか、これって…こういう事なのか!?」
「ど、どうしたんです?」
今度はハルモニアが問いかける。ペリドートはちょっと考えるとなんとなく、鏡の向こうの相手も同じ事を考えているのかもしれない。
「これはまさか」
ペリドートが鏡に触れる。それにハルモニアも合わせると、二人は掌を重ねているように見えた。
「これはもしかして」
ハルモニアは何と無く嬉しくなる。それはペリドートも同じ。なんだか胸がわくわくして、同時に口を開いた。
「「別の可能性の世界?」」

 ペリドートはやんちゃな王子。いつも窓から抜け出して、城下で遊んでいる。一方ハルモニアはのんびりとした王子。庭に畑を作って野菜を作ったり本を読んだりしている。ペリドートには姉が一人いるだけだが、ハルモニアには姉と弟がいる。けれども二人とも父親の槍を振るう姿に憧れて、槍術を学ぶようになった。二人は気が会い、お互いの世界のことを話し合った。共通している事と違う事の差を楽しむように。そして、ポツリ、とこんな事がハルモニアの口から零れ出た。
「あのねぇ、最近妙に気になる事があるの」
「…俺もだよ。なんだか、誰かが呼んでる気がするんだ」
ペリドートが答える。そして、何気なく胸に手を置いた。
「もうすぐ、物凄い事になりそうな気がするんだ」
「僕も、そうなんだよ。毎日、同じ夢を見るの」
二人は顔を見合わせて笑った。予感がする。何処かで誰かが呼んでいて、それに自分の魂が引かれている事を互いに感じあっていた。
「きっと、俺…もうすぐ国を離れるよ。そんで父上みたいに旅をするんだ」
「それは、世界の運命をかけた旅になるかもね。父様たちみたいに…」
二人は、手を重ねる。鏡越しだが、確かに暖かい。互いに、また会えるといいな、と思っていた。もうすぐ、別れの時が来るのを何故だろう、二人とも知っていた。
「また、会えるかな?」
「あえると思う。ううん、きっと会えるよ!」
ハルモニアにペリドートが笑って答える。だから、寂しくなるけれど、笑ってみせた。短い時間だけれども、異次元の友達が出来て、嬉しいから。きっとまた会えると信じたいから。
「またね、ペリドート!もっと話そうね!」
「またな、ハルモニア!」
そう言って、二人は分かれる。カンテラを持って、鏡に背を向けて。瞬間、鏡はまた光り、波紋を広げる。鏡はまた、普通の鏡に戻った。

 二人が出会って数日後、予感は的中した。ペリドートも、ハルモニアも父親と同じように碧緑竜のドラグーンとして覚醒し、他のドラグーンと旅に出る事になった。『動なる戦い』がまた起るのだ。けれど、きっと乗り越えていける。二人はそう信じていた。

(幕)

あとがき
 どうも、フーレイこと天空 仁です。これは三角 勇気さまへのお礼SS第一弾です。第二段はのちほど。とりあえずディスク二枚目の…重力崩壊の谷行き前(メルの仲間入り直後?)です。

 この物語は…僕と三角さんが考えたアルバートとエミルの子二人が主人公で、夜中に出会ってしまうという…話なんです。話がつたなくてすみません。実を言うとヒントは小説版『玻璃の薔薇』だったり(笑)。一つの異変が起るとそこにピンが刺され、可能性ごとに枝分かれしていく…というものでそのうちの二本が鏡を通じて…という感じですかね。うわー、読んだ人にしかワカラナイ例えだー(汗)。それはいいんですが、恐らく誰にも満足していただけない意味不明なものになってしまったような気がしますが、僕はちょっと満たされています。とりあえず可能性を分に出来たので。本当はハルモニアに薀蓄かたらせてペリドート君につっこんで貰う予定でした。

 と、いう訳で今回は初SSとなったのですが、これまで。それでは、また。電文乱文閑人閑話失礼しました。
天空 仁(フーレイ)
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by jin-109-mineyuki | 2006-01-31 10:33 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

恋愛経験は少ないですが(フーレイ、ちょっと頬がむずがゆい)

 どうも、フーレイです。今回は恋愛関連(?)の短歌を幾つかご紹介します。先ずは『風零の徒然書庫 一話一会』に掲載された物をUPしなおした物をご覧ください。


まだ眠る 桜の蕾 君の様 花咲くときは 僕の腕にて
(2005・3・31)

君の手を 欲する夕べ 黄砂吹く 孤独深まり 指先冷える
(2005・4・16)

見失い 君が恋しと 携帯を 何度鳴らせは 一人だちする

熱交え 指を絡ませ 生きている 感じた昼の 光戻らず

切り替えろ 青葉見つめて 奥歯噛む 君への思い 断ち切る為に
(2005・4・28)

いえ、恋人だった現戦友の事を考えていたら浮かんだ短歌が四つです。唯一「まだ眠る~」だけは僕が男性でちょっと年下の恋人がいたならこんな心情になったかなぁ、と思い歌ったんです。未練が残っているといえば多少ありますが、どーにかなるでしょう。どーにか。

闇に咲く 血の紅に 燃ゆる目を 吐息交じりに 見る雨の夜

求めてた 君のその声 湿り気の 溜まる空気を さっと乾かす

火照る骨 細胞揺らぎ 息を呑む 逢瀬の様は カタバミの種

(2005・6・22)

夜の大学で何気なく思いついてしまったものです。友人と話しているうちにもやもやと浮かんで帰宅後、書き込みました。既に日付変わっていましたよ(笑)。カタバミの種は熟すると触っただけで破裂します。それだけ凄いんですよ(爆)。心音です、といおうと思ったらなんだか「逢瀬の様は」って言葉自分で入れていますね!…うーん、それだけ熱い語らいがあると思ってくれるとありがたい。

まぁ、ともかく。今回は恋愛?短歌という事で…。
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by jin-109-mineyuki | 2005-06-22 09:29 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

前にあげたものを(フーレイ、少しドキドキ)

 どうも、フーレイです。新しく短歌を作りました。前に別のブログであげていた短歌をまずご紹介します。これらは『風零の徒然書庫 一話一会』に掲載された物をUPしなおした物です。一部はまた別の機会にご紹介します。

その行方 知りたいが為 祈る空 イシコログサの 種よ何処行く
―『星の綿毛』239ページ、ツキカゲの台詞より考察―
(2005・3・14)

バスの中 窓から見る町 万華鏡 時々だけど モノトーンなり
(2005・3・15)

骨の髄 冷える春雨 昼下がり 春一番を 僅かに恨む
(2005・3・17)

梅吹雪 悩み吹き飛べ あのように 散って流して 白紙に戻そう
(2005・3・28)

空晴れて 夢見心地の 一日を まどろむままに たゆたう我が身
(2005・3・31)

空に映え 微笑む花と 歌い人 まだ見ぬ仲間 夢見て迎え
(2005・4・5)

 全てを解説するのは難しいのですが…兎に角心に映るままに時折書いております。これからも書いていきますので、よろしくお願いします。
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by jin-109-mineyuki | 2005-06-19 00:00 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)