ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:閑人閑話図書館( 38 )

はしおったとか、ネタわかんねぇ、とか色々……(ディート、いまのとこセーフ?)

 一方、ヴィントの小さな喫茶店。そこでは1人の少女が食事をしていた。首から乳白色の石が下がっており、さらさらとした黒髪を三つ編みにしている。
(先代の言葉が正しければ、このGEMがふさわしいオトメを選ぶらしい……のら。僕は自分の手で自分のオトメを探さなくちゃいけないのら)
ふと、食事を止めて石を見る。それが何か反応をするか、とおもったが何もない。ここには恐らくいないのだろう。そうおもい食事を再開する。
(護衛さんには悪いけど、単独行動をとるのら)
そんなことをおもいつつ、少女はくすくす笑った。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
1:護衛です!

 バスの中、フユノとエンゲットに挟まれて座ったディートはぼんやりと窓の外を見ていた。そして少しうとうとしているとエンゲットがにっこりした。
「疲れちゃったのかな?あたしちゃんたちがいるから眠ってていいよ、ディートちゃん」
「そうそう。目的地まではあとちょっと時間もあるし」
隣にいたフユノにも言われ、ディートは小さく頷く。考えるのはあとにし、かぶっていたキャスケットを脱いで瞳を閉ざした。

……が。

「「あーはっはっはっはっ!」」
不意にそんな高笑いが聞こえ、バスが止められる!よく見ると一台の奇妙な機械から二人の男女が姿を現した。なんかどこかでみた服装で、傍らには猫もいる。声で目が覚めたのか、ディートはきょとん、となる。
「! 何者だ!!」
フユノが叫ぶと、二人はにっ、と笑う。
「何者だ!!と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け!」
「シュヴァルツ構成員ジェムフラウ!」
「シュヴァルツ構成員ハクビ!」
「銀河を駆けるシュヴァルツの二人には」
「輝く明日が待っている!!」
「つまりはヤラレってことなんだね」
ふいにエンゲットがそういと、ジェムフラウと名乗った女性がきっ、と睨み付ける。
「な、何を言いますの?
 わたくしたちはそこにいるヴィント第一王女を貰いに来たのですわ!」
「そうそう!で、こいつさえゲットすりゃ俺たちも幹部に昇進できるって訳だ!」
二人の構成員はそういうものの、オトメ二人はその間にも乗客と運転手を避難させていて無視していた。ディートも既にいない。
「って話ぐらい聞くものですわっ! ハクビ、アレを!!」
「お、おうっ!」
ジェムフラウに言われ、ハクビは彼女と共に変な機械へと走る。そして、しばらくして……何故か派手な爆発音!バスもろともそこら一体に火が上がる!フユノとエンゲットは素早くディートたちを庇って立ちふさがる。
「やい、てめぇら!!一般人まきこんでんじゃねぇよ!」
フユノが叫ぶとジェムフラウはくすくす笑う。
「あら、オトメにしては言葉が汚いですわねぇ、子虎ちゃん。その調子ではマイスターオトメにはなれませんことよ?」
「るせぇっ! てめぇらなんざにディートを渡すか!」
「フユノちゃん、完全に地が出てる……」
窘めようとするエンゲットではあったが、彼女は機械を睨み付ける。勝手に契約するわけにも行かず、内心若干困っていたりした。
「…シュヴァルツなんかに僕、行かないもん」
ディートがむすっ、という。ハクビはその言葉に表情を険しくした。
「大人しくつかまってくれないかな?そうすればこれ以上酷いことしないからさ」
「やだよ。きっと嘘だ」
ディートはそういい、更に言葉を紡ぐ。
「シュヴァルツは、うそつきだもん。おうちに帰してくれなかったし」
「!?」
その言葉に、エンゲットとフユノの目が丸くなる。何故だろう、ディートはシュヴァルツを知っているような口ぶりだ。気になったが、今はそれどころじゃない。
―邪魔者は、排除するだけ……だが……。
「……くっそ、こんな時に許可がおりねぇなんざ。この状態だったらぎりぎり逃げられるだけだぜ」
「ローブを展開しない状態でもこれぐらい出来ないと駄目なのかもしれない」
顔を見合わせ、フユノとエンゲットがため息を突いているとどこからともなくサイレンが聞こえてきた。一台のパトカーがそこへやってきたのである。
「そこのシュヴァルツ!大人しく縛につくなぁ~ん!!
 あとオトメの卵ちゃんたちはおとなしくしておくなぁ~ん!」
「……相変わらずだね、ギーエル」
黒髪を風に揺らし、婦人警官が拡声器で叫ぶ。が、ハクビはお構いなしに銃を向ける。さっきの爆発はこれによるものだった。
「くたばれ、警察!無能な役人なんか用はねぇ!!」
爆音がし、オトメ二人はディートを庇う(一般人は既に避難してその場にいない)。転がったパトカーから二人の警官が転がり出るとそれは炎上する。
「備品(パトカー)が吹っ飛んだ……」
思わず呟くフユノ。そこへ傷だらけの警官が1人やってきた。彼女は身をかがめフユノとエンゲットに微笑みかける。
「ローブ展開をこらえたのは偉いよ」
「でも、皆大変だよぉ! こういうときこそのローブでしょ?
 なんで許可が必要なの?」
二人に庇われたディートが口を挟む。それにはもう1人の警官が口を開いた。
「アレはある意味凶器だなぁ~ん。あと、残念ながら卵ちゃんたちは未熟でシュヴァルツへの対応にはまだまだなぁ~ん」
その言葉に、ディートはむっ、となった。
「コーラルとパールじゃだめってことなの?マイスターならOKってことだよね」
「……ま、まぁ…そうなるね」
警官は気まずそうにそういう。ディートはそれで何か閃いた!
「じゃあ、マイスターの人を呼んで欲しいんだよ!!」
「そうだね。僕たち無能な役人より、1人のマイスターだね。よし、じゃあガルデローベに…」
警官が携帯を取り出そうとしたその時……

「その必要はない」
と、どこからともなく勇ましい声がした。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

うん。友達から「いくらファンだからって……(苦笑)」と突っ込み喰らった。
でも、大晦日までやるよ。 だれかが喜んで欲しいっす。

あ、追加したキャストは後日。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-19 22:48 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

基本、ギャグを目指します (フーレイ、シリアスにしたくない)

ガルデローベ・学園長室。
部屋の主であるスレンダーな女性は、紅茶を口にしながら書類に目を通していた。
「……これが事実だとすれば、ヴィントを混乱に招きかねない」
「だが、命を狙われているのは事実だ。
 この少年が死ねば、さらなる混沌が招かれることになる」
そばにいたもう1人の女性が眼鏡を正しながら呟く。そして、懐に入れていた携帯を
取り出し、どこかへと電話をかける。
「その少年、ここで引き受けよう。
 ただし、ガルデローベは『乙女の園』……男子禁制だ。わかってるだろうな?」
凛とした声が、朝の学園長室に響く。そして、眼鏡の女性は電話を切ると白衣を正した。
「……『彼女』を、守るぞ。
 この世界を揺るがしかねないお方を、な?」
「年齢は13歳、か。とりあえず性別がばれないようにする必要が、ある。
 『アスワド』の博士もそこはわかっているだろうな?」
「先ほど念を押している。聞こえただろう?」
二人はそんな言葉を交し合うと、ちいさく微笑みあった。

 一方、黒科学研究機関『アスワド』は慌しい空気に見舞われていた。保護した存在をガルデローベに預けることになり、それにあたっての処置で悩んでいるのだ。
「……ねぇ、どうして僕、女の子の服を着なきゃいけないの?」
痩せた少年が、不思議そうに首をかしげる。が、膝まで伸びた白銀の髪と愛くるしい灰色の瞳はどこからどうみても女の子である。そして、なによりぷにぷにとした桜色のほっぺが幼さをかもし出している。背はやや高めだが、『スレンダーな年頃の女の子』に見える。
「お前を守ってくれる場所は女の子だけの場所。だから、性別が男だとばれたら追い出される。だから、だ」
そういったのは、ピアスをつけた男だった。彼は白衣を脱ぐと軽く首を回しつつともに歩き始めた。
「更衣室はそこだ。中で女性スタッフがいろいろレクチャーしてくれる」
「何をですか、博士?」
「女の子の身だしなみについて、だ」
きょとん、とする少年に博士と呼ばれた男はにやり、と笑った。そして、小さく付け加える。
「いいか、ディート。絶対にアレは気をつけろよ?」

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
0:白い羽は舞い降りた

 その日は、晴れていた。ふわふわとした白い雲が浮かぶ青空を、二人の少女が見つめている。1人は銀色の髪を短く切り、サイドにちいさな編みこみを施している。もう1人はコバルトブルーの髪を四本の三つ編みにしてぴんぴんとはねさせている。共通しているのは赤がベースの制服。これがガルデローベのものであると、多くの人がわかるだろう。
「しっかしよぉ、なんでまた俺たちが要人警護?」
「いいんじゃない?あたしちゃんはいい勉強になるとおもうけどね」
少女たちはそんなことを言いつつ、公園へとやってきた。そして、目的の人物らしき人を見つけると歩み寄った。
「お迎えにあがりました、ディート・マシロイ・ヴィントブルーム様」
そういって、少女たちは跪いた。
「あ、ありがとう……」
ディート、と呼ばれた少女…実は少年…はぎこちなく頭を下げる。オトメの存在は知っていたが、自分が彼女たちのお世話になる立場になろうとは夢にも思っていなかったのだ。
「俺はコーラルNo22のフユノ・アトツキだ。よろしくな」
「あたしちゃんはコーラルNo15のエンゲット・セイルーンだよ。よろしく」
そういい、二人は挨拶する。フユノはボーイッシュ……というより男勝りで勝気そう。エンゲットは明るくて天真爛漫。そんな印象をディートは持った。
「僕は、ディート・マシロイ・ヴィントブルームです。これからよろしくおねがいします」
ディートが挨拶すると、二人はさっそく学園へ、と彼と一緒に歩き始めた。

 何気なくあるくその姿は一見ガルデローベの生徒ふたりと、友達だろう一般の女の子に見える。が、ディートは要人なのである。
「ディートさまって、今まで療養してたんだよな?」
不意にフユノが問う。と、エンゲットはそうだよ、と頷いた。
「学園長、言っていたじゃない。姫様は病気がちだったから『黒の森』で療養していたって」
「んー・・・だけど見た感じ病弱に見えないんだ」
フユノはそういい、小さく苦笑する。が、森で体を鍛えたのだろう、と勝手に解釈する。そして窓の外を面白そうに見ていたディートの肩をぽん、と叩いた。
「ん?なぁに、フユノさん?」
「フユノでいいよ、ディートさま。
 安心して俺たちに任せてくれよ。でさ、時間が合ったら遊ぼうぜ!」
「あー、それはいいアイデアかもしれないけど、宿題はどーするの?」
不意にエンゲットが突っ込むが、フユノはどうにかなるだろ、と苦笑する。ディートは嬉しそうに顔をほころばせ、二人を見ていた。

 その三人を、じっ、と見る影があるともしらず。

(つづく!)
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-12 23:24 | 閑人閑話図書館

徹底的、全面交戦というわけですが手段が (フーレイ、知識は足りない)

※これはあるサイトさんでの記事がきっかけでございます。
 そして、今後もこのブログは『荒らし撲滅』を訴えていく所存です。

 ここは、『見えざる神の手亭』という冒険者の宿。そこでは何人かの男女が顔をあわせていた。
長身痩躯のエルフ
紫色の瞳と髪が目立つ青年
ベールを被った乙女…ではなく青年
水色の髪を高く結った青年
猛禽類と思わしき鳥
黒い狼の耳を持った少年
暗い紅の瞳を細める男性
その他にも何人か、集まっているが同見ても一般人ではなかった。同業者や、その筋に詳しい人間が見たならば、そこに集っている男女と鳥がそれなりに名前の通った冒険者パーティのリーダーであることが一目でわかるだろう。いや、幾人かは一般人でも名前を知っているに違いない。
「今日、ここに集まってもらったのは他でもない。この一件のことだ」
口を開いたのは無精ひげを生やした黒髪のエルフのバルディッシュだった。彼は懐から一枚の紙を取り出すと小さくため息をつき、その内容を読み上げた。

-荒らし討伐の依頼。

「……この…ごろ、こうい…う輩、が、各区…域を…襲っ、てい…ると思わ…れる。全く…」
たどたどしく紫の髪の青年、シオンが深いため息をつき、それに同意するようにやや耳のとがった男、ソドムが頷く。
「確か……卑劣なことをやって行くようですね。この区域も何度か攻撃を受けていたかと」
「そうだな。一応警告はしているんだけれどもねぇ。ああいう輩って聞かないし」
物言う猛禽類、スズキは毛づくろいしつつ呟き、ベールを持て遊ぶ青年、アンバーはふん、と鼻を鳴らした。
「ま、報酬はいらないさ。俺たちの居場所は俺たちで守ればいいことだ」
東方風の衣服を纏った青年、カモミールはいつになく真面目な顔で考える。
「相手を撃退するのに手段は選ばない、ねぇ……。そいじゃ、入手次第フル稼働させていいかな、アレ」
「あれ…といいますと?」
今まで口を開かなかった赤い眼の少年、パルチザンが首をかしげる。
「俺たちが戦った殺戮機械。たしか『ヘイトマシーン』とか言ったっけ?」
「…あれはリューンが危機に陥るからせめてお前の『裏紫苑』かシオンの『紫苑』でどうにかしてくれ。あのデカブツは危険すぎてならん」
カモミールの言葉を苦笑してバルディッシュがとめる。
「だっ…たら…、案、外、転がっ…て…い、る『鋼鉄の箱』は?」
「どうせなら派手に『シコン』でいかないか?そのペンダントがのこってんだ」
シオンとスズキが提案する。言っておくがどっちも相当の兵器であり、『シコン』にいたっては基本的に『使用を禁止』したほうが身のためだともいえる代物である。
「…先輩方、危険物です、どっちも」
遠慮がちにパルチザンは言うものの、ソドムは少年の肩をそっと叩き、首を横に振る。
「これも今回は許されるでしょう。と、いうのもかなりの区域で被害にあわれているようですし、シオンが聞いてきた話によると婦女子に言えない事もしている模様で」
「ま、いろんな区域で対策が練られると思う。ここでも見つかり次第、倒して晒すか」
バルディッシュがそっけなくそういい、葉巻に火をつけようとする。が、手を止めたのはタバコを酷く嫌うシオンが軽く睨みを聞かせていたからである。しかたなく懐にしまっていると、声がした。それに顔を上げる。
「取り合えず討伐依頼が出る前にきた分は一つを除いて晒してるよね…」
不意に口を開いたのは今までだまっていた少女。ピーコックグリーンの目が特徴的なエリシェであった。傍らにいた燃えるような赤毛の男もまた一つ頷く。帽子を乱暴に脱ぎつつ、ニッケは言葉を続ける。
「今のところこの区域は取った手段のおかげか姿が見えんが…」
「油断は大敵だぜ? 相手は新たな手を考えてくる可能性がある」
蒼い鎧を着た青年が言う。うなじでまとめた金髪を揺らし、エンゲツトウは小さくため息をついた。
「そのときはそのときで、晒すしかないでしょう?ウイルスとかは手に入りにくいのよ。そしてカモミールが戦った殺戮兵器並の」
白っぽいベージュの髪とロングスカートを揺らし、つやっぽい女性が言った。口紅を塗りつつ、ジャマダハルは肩をすくめる。
「呪詛はそう難しくはないとおもうけれどね。ま、儀式を誰かに見られないようにすればいいだけですわ」
髪を綺麗に結い上げ、貴婦人らしく振舞う女性が頷いた。青い目を細めつつグングニルは紅茶を飲んで「そうではなくて?」というようなクールな表情を浮かべた。
「確かに。あんた達の言葉もあるな」
バルディッシュは頷きながらあたりを見渡しつつ……一人の男に目を留めた。それに、他の面々も自然と反応し、アンバーのそばにいた一人の男に目を向ける。
「うーん、冒険者になって早々…面倒なことになったな」
彼は狐の耳をぴくぴくさせる。糸目なので表情が読みにくいアメジストはそう呟くと狐の尻尾を一度揺らした。
「新入りのあんたたち一行でも、派手に暴れてくれればいい。そんなに難しいことじゃないさ」
「でも、怪我には注意ですわ。案外手ごわいかもしれません」
カモミールとグングニルの言葉に、彼はそうか、とだけ答える。
「ま、何はともあれ…俺達もやるしかないな」
エンゲツトウの呟きに、全員が頷く。エリシェとジャマダハルは全員分の紅茶を持ってくると(スズキは勿論冷ましてある)ニッケがカップを掲げる。
「それでは……荒らし討伐の成功を祈って」

(終)

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あるブログで出された『荒らし討伐の依頼』に触発され、ここではいろんなパーティリーダーたちに話し合わせてみました。むしろ、どうやって『荒らし討伐』を行うか。ノリノリで僕もその記事にコメントしましたんで、とりあえずこんな感じのSSもどきを書いて『荒らし』に対しての姿勢を表そうと思っております。

ようは
ここで荒らすと取り合えずさらされる可能性があるよ?
って事です。

念のために。
区域=CWユーザーのブログってことです。
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-03 22:03 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

レジェドラのSSで、ゲテモノグルメですよ(フーレイ、はっちゃけ?)

レジェンド・オブ・ドラグーン コメディーショート・ショート
灼熱クッキング 砂漠編』
著:フーレイ

 おだやかな風が吹き、心が落ち着いていくのがありありとわかった。
「…落ち着きますね」
「…ああ」
長い髪を1つにまとめ、緑のマントを纏った青年が、透き通るように青い空を見上げる。傍らに居た青年は頷いた物の、苦笑していた。
「こうしていると、戦いの事を忘れそうですね」
「そーだな…しかし…」
紅いバンダナを巻いた青年は溜息をつき、辺りを見渡す。奇妙な植物が生え、どこか陰湿な雰囲気を持っている。光が差し、清々しい空気が零れるのは此処ぐらいなものだろう。
「なぁ、アルバート」
青年は、傍らでのほほん~と空を見上げる仲間に…どこか一生懸命に焦っている目を向けた。
「何ですか?」
「俺たちの状況…解ってる…よな?」
その一言に、アルバートと呼ばれた青年は…笑顔で答えた。
「はい。仲間とはぐれて、探しているんですよね」
「だったら…もう少しは焦ってくれ…」
そういいつつ、紅い鎧を纏った青年…ダートは滝涙を流しながら項垂れた。

 ここは……実を言うとどこらへんかわからない。他の仲間たちと野宿の準備をしようと思い、たべられる物探しに行った…はいいが、道に迷い、こんな状態に陥ってしまった。いつの間にか、オアシスから出、砂漠に出てしまったらしい。
「ちぃっ!」
ダートが剣を振るい、襲い掛かってきた魔物を断ち切る。
「だあああっ、しつこいんじゃ!…『マッドネスヒーロー』ッ!!」
鮮やかな舞を見せ、敵にダメージを与えていく。軽やかなステップを地に刻み、あっというまに敵を倒していく。
「本当、ですね。くっ…『疾風の舞』!」
アルバートもまた全力で槍を振るう。魔法攻撃に弱い彼の場合、力で押していく攻撃で魔法を使わせない戦い方があっているらしい。風を切るような猛攻で、敵を屠っていく。
「…はぁっ、はぁっ…どうにか、切り抜けたな」
「先ほどの場所からまだあまり離れていませんけれどね」
珍しく息を切らし、剣を地面に突き刺しながら言うダートに、アルバートは冷静な声で言う。と、言うのも、振り返るとまだ空が見える場所が見えていた。
「早く戻らないと、夜になるな」
「みんな、無事だといいのですが」
二人は不安を覚えつつも、先に進むことにした。しかし、妙に引っかかるような気がした。ダートは急に立ち止まったアルバートを不思議に思いつつ振り替える。
「どうした?」
その問いに、アルバートは答えない。しかし僅かに目を細め、辺りを見渡し、何か考え込む。何時もと比べてより慎重そうなその横顔に、声をかけるのを躊躇ってしまう。
(ここで問いかけたら、薀蓄地獄が待っている!)
ダートがハラハラしつつも言葉を待っていると、彼は1つ頷いた。どうやら聞き耳を立てていたらしい。
「また、何か来ますね」
次の瞬間、二人の目の前に現れたのは……サンドワームだった。
「またかよっ!」
ダートが舌打ちしながら身構える、と、アルバートがふと、こんな事を呟いた。
「そういえば……これ、食べられる…らしいですよ?」
「はっ?」
頭に浮かぶ?マーク。懐から一冊の本を取り出してダートに渡し、槍を持ち直すとサンドワームを睨んだままアルバートは言葉を続ける。それも妙に真面目な表情で。
「この文献によれば、そう書いてあります。34ページから35ページに」
その本のタイトルを見、ダートは息を呑む。

『砂漠の美味な珍品を求めて』

(だ、誰だこんなモン書いたのはっ!)
表情をこわばらせるダートの横で、更にアルバートが
「あぁ、そうそう。ダート、ドラグーン化しておいてくださいね」
「って…まさか、オレにアレを焼け、と?」
「はい。強火で一気に焼き上げるのが調理のコツだと書いてありますので」
「の前に黒焦げにしてやるよ」
ダートは何処か暗い笑顔で答え、剣を手にサンドワームへと切りかかる!アレを食べるわけにはいかない。いくら食材でも女性陣は、絶対引く。つーか、アレをどうせぇと!
「みじん切りはやめてくださいね!中身が飛びでてしまいますから!」
追いかけ、華麗に技を決めるアルバート。折角の食料を無駄にしたくは無いらしい。が、ダートはサンドワームの食材化を認めたくない。

―つーか、あれ、食べたくないし(大汗)。

「とにかく、一気に決めるぜっ!」
ダートが、赤い光に包まれる。一気にドラグーンの鎧を纏い、魔法を展開させる。
「やる気になってくれたんですね!」
横ではアルバートが嬉しそうにしているが、ダートとしては消し炭にして別の安全な食材を探すのが目的である。熱気が辺りに広がる。サンドワームも身構えているようだ。
「行くぞ!『ファイナルバースト』ッ!」
高々と舞い上がり、炎を纏って突き進む。サンドワームに引火、轟々と燃え上がる!その音で気づいたのか、アルバートが振り返ると逸れた面々の姿が遠くに見えた。
(なるほど、この煙や炎が見えた…のでしょう。食材も手に入り、仲間とも合流できて一石二鳥ですね)
一人納得し、ふむふむと頷く。そこへ、舞い降りもとの姿へと戻ったダートが現れる。遠くに見える仲間の姿に安堵しつつも、ちらり、と後ろを振り返ると…まさに狐色に焼けたサンドワームが転がっていたりした(一匹は消し炭にできたらしく、黒焦げだった)。
「マジで喰うの?」
「勿論ですよ♪」
にこにことサンドワームへと向かう碧緑竜騎士の背中を見つめ、ダートはがくり、と膝を付いた。そして呟く。
「…エクスプロージョンの方が、良かったか……」

(完)

おまけ
メル「(虫を食べつつ)あっ、クリーミーで美味しい」
アル「でしょう?」
ダート「………マジかよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
フーレイこと天空です。
えー…三角さん。お絵かき掲示板で御萩さんと海音さんがサンドワームのネタを書いていたので僕も便乗してダートとアルバートの漫才ネタを。ダートはボケ担当、とばかりおもっていましたが王様が仲間になったらボケ突っ込みオールマイティーになったなぁ。しみじみ。三角さんのお絵かき掲示板に素敵な描いてくださったお二人に感謝。ネタが沸いたので書きましたが、いかがでしょうか?あと、芋虫って食すと意外とクリーミーで美味らしいですよ(芋虫を食べた事がある方曰く)。

ネタが湧いたら『灼熱クッキング』をシリーズ化させても面白いかなぁ、なんて思いました。

ところで、サンドワームって何処で出て、どれぐらいの大きさでしたっけ?
そこまで行っていないので、判りません(汗)

では、今回はこれで。
フーレイ


更なるおまけ:レシピ『サンドワームの姿焼き』
材料
サンドワーム(1~2匹)
塩(適量)
レタスやサラダ菜(適量)

1:新鮮なサンドワームを潰さない程度に倒します。
  みじん切りは中身が出るのでお勧めしません。
2:次に意識不明のところを一気に強火で焼き上げます。
  この際、赤眼竜騎士がいたら、その人に焼くのを任せましょう。
  ファイナルバーストあたりが適度な火力です。
  いない場合はそのオーブンなどで代用してください。
3:焼きあがったら塩をふりかけ、美味しく頂きましょう。
  新鮮なサラダ菜やレタスと一緒に食べると更に美味しく頂けます。

アル「と…。こんなところでしょうか(にっこり)」
ダート「その前に、オレ以外で赤眼竜騎士は…いるのか(汗)」
アル「普通は、いませんね(さらににっこり)」
ダート「オーブンで焼かれるサンドワーム…って(大汗)」
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by jin-109-mineyuki | 2007-03-08 22:36 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

レジェドラのSSで、シリアスですよ(フーレイ、実は心配)


レジェンド・オブ・ドラグーン SS
『悪夢の影、約束の言葉』  著:フーレイ

―それは、思い出したくもない、痛い、夢…。
目の前で散っていった親友の姿と、記憶が重なる。
その瞬間、彼の中で全ての器官が麻痺した。

(これは、夢だ!あの時の悪夢だ!)

何度叫ぼうとも、彼は二度と、戻ってこない

ヘルライナ監獄の夕闇に、若き王は絶望の瞬間を迎えた。

:*・*・*・*・*:

 薄暗い、血生臭い、痛い夢。激しい音を立てて崩れいく友達。それが、幼き王、アルバートの脳裏に過ぎった。
「!?」
跳ね起きる。質素な寝台が軋み、少年は荒い呼吸を必死に整えようとする。額に浮かんだ汗で張り付いた前髪を、ゆっくり、はらっていく。
「…そんな訳…ない…よね…?」
信じたくなかった。そんな悪夢など。彼は深呼吸を何度も繰り返し、朝の日差しを浴びた。今日も一日、何事もなく過ごせたらいい。そんな事を心の底から願う。しかし、少しだけ…背中が疼いた。
「……っ」
痛みを堪え、黙って傷に触れる。父が殺され、アルバートに継承された月の宝珠。それが、体に埋め込まれている。これは自分が国の命と共に守る物だ。
「行かなくちゃ」
彼は頷く。今日も「王」として、己の命を全うする為に…。

 ラヴィッツは騎士であると同時にアルバートのよき理解者であり、槍術の師であり、友人である。そんな彼が主の異変に気付かない筈が無かった。槍術の稽古が終わり、何時ものように休憩を取っている時も「何かがおかしい」と思ってしまった。
「アルバート様、いかがなされましたか?」
少し疲れているようにも思える主に、彼は問う。まだ少年と言える年齢の王はにこっ、と微笑んだ。けれどそれは、どこか陰のある笑顔だ。
「いいえ、何でもありませんよ」
「しかし、何時もより顔色が優れません。…何かあったのですか?」
「本当に、何でもないんです!」
少し強く言ってしまった。発してからアルバートは我に返り、ばつが悪そうに目を逸らす。その仕草が余計に気になってしまう。が、これ以上聞いてもダメかもしれない。仕方なく、頷くと彼は足を投げ出して座っていたアルバートの隣に腰を下ろす。そして、同じように足を投げ出して空を見上げた。
「…あの…」
アルバートはおずおずとラヴィッツを見た。従者は不思議そうに主と瞳をあわせる。
「…?」
「ごめんなさい。実は…」
そこまでいい、一度唾を飲む。思い出すだけで背筋が冷たくなっていく。けれど、何故だろう。長年そばに居てくれる彼になら、兄とも言える彼になら全て言ってしまえる気がした。
「実は、貴方が死ぬ夢を見たのです」
その言葉にきょとん、としてしまうラヴィッツ。しかし、彼はくくくっ、と笑ってしまった。それが、アルバートには不思議でたまらない。
「ど、どうしで笑うのですか?」
「いつでも、そんな可能性があるからですよ、我が君」
ラヴィッツは笑顔でそういうものの、アルバートの表情は険しくなる。
「でも…そんなのは嫌です!」
「しかし、私はアルバート様の盾にも剣にもなると決めた存在です。いつ、貴方の前で死ぬやもしれぬ存在なんです」
朗らかに、穏やかにラヴィッツは語る。しかし、すっ、と…槍を手に戦うときのような顔で、彼は言葉を続けた。
「貴方は、この国の王。ならば、従者を失う覚悟を…しなくてはならないときが来ます。…時に、国が分かれた現在は」
そう言われ、少年ははっ、とした。そうだ。この国は二つに分かれている。彼が納めるバージルと、伯父が納めるサンドラに…。
「でも……っ!」
アルバートの眼が、険しくなる。脳裏に浮かぶラヴィッツが死ぬ瞬間。そして、重なってしまったのは…父親の死ぬ瞬間。影が、飛び散る血が、音が、全てが重なっていく。
「それでも、大切な人を失うのは…もう、嫌です…」
涙が、零れた。震えていた。息が苦しくなっていく。ズキン、背中の宝珠が疼いていく。同時に、脳裏の遺体がバウンドしていく。
「それでも…覚悟しなくては、いけないのですか…?」
その途惑った言葉に、ラヴィッツは息を呑んだ。目の前にいるのは、確かにバージル公国の王。しかしその前に、まだ幼い子どもなのだ。
「アルバート様…」
彼は目を細め、ただ優しく少年の頭を撫でる。そして、改めて跪く。
「ならば誓います。この名と槍にかけて…。私は、貴方を守り、共に生きていきます。たとえどんな事があろうと、生き抜いて、貴方を支えます」
「本当…?」
嗚咽を殺し、少年は問う。
「ええ…」
本当は、そんな約束が出来ない。そう思いつつも、ラヴィッツは誓う事にした。
「本当、だね?」
「はい、アルバート様」
笑顔でそういわれ、幼い王は頼もしい従者にだきつき、ありがとう、と呟いた。

:*・*・*・*・*:

―12年後

 アルバートは、夢から醒めた。そして、あの絶望を思い出す。目の前で、ラヴィッツは死んだ。何者かの持つ剣に刺され、永遠に消えてしまった。
「あの約束、やはり果たせなかったのですね」
そう呟き、泣きそうになるのを堪える。歳を重ねるにつれ、彼にもあの時の言葉がわかるようになってきた。あの約束は、幼い自分を安心させる為の約束だった。それでも、絆だと、信じたい。けれど、その一方で、あんな夢など見なければ良かった、とも思う。見なければ、まだマシだったかもしれない。14歳の自分は、この瞬間を見てしまったのかもしれないのだから。
「…アルバート?」
不意に、声がかけられる。穏やかなアルトボイスだった。顔を上げると、黒髪の女性がそっと様子を伺っている。
「ロゼですか。…どうしたのです?」
「いえ、苦しそうだったから」
彼女はそういうと、水を手渡す。ぬるいが、頭をすっきりさせてくれる気がした。
「だいぶ、楽になりましたよ」
「ならば、いいんだけれどね」
アルバートの言葉に、ロゼがどこか心配そうに頷く。そして、何故かそっと、アルバートの頭を撫でて…、くるりと背中を向け、どこかへ歩いていってしまった。辺りを見渡すと、ダートもシェーナも眠っていた。
「ロゼ…?」
不思議に思う。なぜ、彼女は頭を撫でたのだろうか?けれど、懐かしい。あの悪夢を見たときも、ラヴィッツは頭を撫でてくれた。なんだかくすぐったくてしょうがなく、思わず、くすっ、と笑ってしまった。

:*・*・*・*・*:

 長い月日が流れ、アルバートは旅から戻った。旅の途中で出会った姫を妻に向え、既に子どももいる。
(…おや?)
彼は読んでいた本にしおりを挟む。何処からとも無く、幼い息子の泣き声が聞こえてくるのだ。どうしたのだろう、と思っていると、幼い王子は父王に駆けてきた。
「どうしたんです……?」
「……っ…」
王子は父王にしがみつき、目に涙を浮かべてこう言った。
「こ、怖い夢を…みたんです…」
そんな息子をかわいく思い、アルバートはそっと、息子の頭を撫でてやった。

(終)。

あとがき
 …ども、フーレイです。不肖ながらラヴィッツとアルバートの話。なぜかロゼ姐さんもでております。ブラックキャッスルに行く前だと思ってください。なんとなく「予言夢」チックなネタが湧き、こんなシリアスなSSになりました。なんか物足りないって方も居るでしょうね。第一、ラヴィッツはアルバートにとってかけがえの無い戦友ですからね。ファンの皆さん、ごめんなさい。
 因みにこれは三角さんへ捧げます。エミル姫&『月の短剣』を描いてくれ!という俺の我が侭を叶えてくださる、との事でお礼です。バトンは今しばらくお待ちを。

 最後に。実はラストにアルバートの子どもがでておりますが…それは俺が考えたハルモニアか、三角さんが考えたペリドット君か…。それは皆様のご判断にまかせます。

それでは、今回は是で。

ペリドット君とハルモニアのイラストが大好きな著者:フーレイ

おまけ
…三角さん、いつか親子でドラグーンVerを描いてください(アル様&ペリ君で)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-10-19 00:12 | 閑人閑話図書館

アルバートファンの皆さん、めっさごめんなさい…(フーレイ、レジェドラSS第三弾)


レジェンド・オブ・ドラグーン コメディーショート・ショート
紅蓮、夜風に舞う』
著:フーレイ

それは、風が渡るテラスでの事。
「綺麗な星空ですね」
 そう呟く者が居た。長い髪を潮風に靡かせ、夜空を仰ぐ若者は一人口元を綻ばせる。久々に一人になった気がする。何時もは仲間がそばにいて、色々な話をするのだ。城から響く喧騒が遠い。きっと仲間たちも、宴の中、思い思いに過ごしているに違いない。
「本当に、綺麗だ」
彼はもう一度呟き、瞳を細める。このときばかりは戦いを忘れ、星に見入っていたかった。全ての疲れが、癒される気がする。濃い金の髪とマントが風に煽られるのも気にせず、彼は空を見上げ続けた。

 彼の名はアルバート。バージル公国の若き王である。今、彼は身分を捨て、亡き親友から受け継いだ竜眼と槍術と共に旅路を行く。彼だけでなく、多くの仲間が竜眼を持ち、様々な思いを胸に旅をしているのだ。

竜眼は古に伝わる『ドラグーン』の証。
今、ここに七人の『ドラグーン』が揃っている。

 古の言い伝えによると、『ドラグーンが集うとき動なる戦いが始まる』と言われている。その只中に巻き込まれて親友は死んだ。その悲しみは癒えきれていないが、振り返ってばかりもいられない事は、彼自身が一番知っている。

 今、ドラグーン一行が滞在しているのは海辺の国・ティベロア。その王都フレッツの城にいる。ある事件を解決した為、その宴が開かれていた。解決するまでに色々な事が起ったが、いい経験になったのは確かだった。第一に、新たな仲間も加わった。
「それに…あんなに美しいお方にもめぐり合えたのですから」
アルバートは口に出していい、少しだけ頬を紅くした。ふんわりとした笑顔と、鈴を転がしたような笑い声。ティベロア国の第一王女、エミル姫の姿が、彼の脳裏に浮かんだ。彼女は一時期鏡の中に閉じ込められていた。変装していたのはリーナスという有翼人の女性だ。その粗暴な姿を目の当たりにし、眩暈を起こしたこともあるが…本物のエミル姫は噂どおりの優しい姫だった。
「出来ることならば、ゆっくりと話を…」
願うようにそう言ったとき、人の気配がした。仲間だろうか、と思い振り返るとそこには……願った相手が、エミルがそこにいた。
「アルバート様、そちらにいらしたのですね」

 !?

瞬間、心臓がドクンッ、と大きく高鳴った。けれども平静を装ってにっこり笑う。
「エミル姫、どうしてここに?」
「実は……どうしてもお礼を言いたくて……探していたのです」
エミルはやんわりとはにかんでそう答えた。鏡から救い出してくれたドラグーン達。その中で一際目に入ったのがアルバートだった。目が合った途端、体の芯から全てが火照っていったのを覚えている。
(なんて美しいお方なんだろう…)
再びこうして向かい合いながら、内心で呟く。相手もそう思っているなど露知らず、エミルはアルバートと目を合わせた。
「それは…人として、当たり前の事をしたまでです。困っているのならば、手を差し伸べる。それが、私達の使命でもありますから…」
アルバートは少し考えながら答え、改めて自分たちの使命について考え出そうとした。けれど、目の前にいる姫に気が向いてしまう。
「使命…。アルバート様や皆様は、今後も旅を続けられるのですね?」
彼の言葉に、エミルの表情が曇る。『ドラグーン』達の旅は終わっていない。いや、まだ始まったばかりなのだ。
「ええ、行かなくてはなりません」
アルバートの真剣な目に、息が止まりそうになる。けれど、負けないように瞳をあわせ続けた。恋もまた戦いだ、とは良く言ったものだ、と今思う。
(本当は行って欲しくない。けれど、我が侭は許されない。ならば…)
エミルが、一歩踏み出す。何事だろう、とアルバートが首を傾げるその刹那、姫は若き王の手を取った。
「アルバート様と皆様の無事を、心より祈っております」

!!?

再び心臓が唸る。純粋で無垢な瞳に吸い込まれそうだ。
(エミル姫…)
アルバートは彼女の優しい言葉と、気遣いになんだか涙が流れそうな気がした。
…が、彼はふと、気付いてしまった事がある。
(…む、胸に手が!?)
ふにふにとした感触が、手に触れていた。つーか、エミル姫、勢い余って手を胸に押し付けていた。本人気付かず。思っていたよりもボリュームがある、と思って慌てて頭からそれを締め出す。が、やわっこくて…♪
「アルバート様…」
エミルは頬を朱に染め、彼を見つめている。一方平静を装うアルバート。この場合、喜んでいいのかどうかが難しいらしい。
「ありがとうございます」
やっとそういえた。そしてゆっくりと手を自分に引き戻し、エミルの細い手に自分の手を重ねる。
(えっ!?)
これにはエミルが目を白黒させる。なんだか嬉しくなってしまった。こんな展開になるとは思っても見なかった。
「きっと、使命を果たします。私も、彼らも…」
あくまでも真剣に、真面目に言うアルバートにエミルは頷く。ひゅう、と吹く夜風の冷たさが、熱を少し冷まし、何時の間に見詰め合っていた若者二人は恥ずかしくなって手を話す。
「ご、ごめんなさい!」
「い、い…いえ。私こそ…申し訳ありません…」
エミルとアルバートは互いに背を向け、走る心臓を落ち着かせようとした(因みに流れ星が流れ、一組の恋人たちが唇を交わしたのだが、彼らは知らない)。
「あまり夜風に当たりすぎると、体に毒です。私はもう暫くこうしていますから…」
アルバートが照れを隠すようにそういい、背を向け続ける。が、エミルはそれが嫌だった。だから、無意識に動いていた。細い手が、引き締まった彼の腰へと伸びる。本来戦士でもあるアルバートならば、避けられるはずの速度。けれど、彼女は若干違ったようだ。
「もう少し、ここにいてください。…私と一緒に…」

-ぎゅむ♪

!!!!?

強風が吹いた。おもいっきり踊るドレスの裾。その音が遠い。アルバートは思わず硬直した。顔が真っ赤になる。ふわふわな感触が、背中に押し付けられている。ダイレクトに感触が伝わっていて心臓が暴走しだす。
「は、はいっ!?」
「嬉しい…です…♪」
ふにゅりん♪
エミルの腕が、さらに強くアルバートを抱きしめる。刹那、彼女はどうやら何かの引き金を引いてしまったらしい。と、いうのも、柔らかな胸がたっぷりと押し付けられているのだから…。
(こ、これは…っ!!?)

がぶぁっ!?

夜空に舞う一線の紅蓮。アルバートはうつぶせにぶったおれ、その下からどくどくと赤い、赤い血が流れ出ていた。
「あ…アルバート様!?…アルバート様、どうなされたのですか!!」
エミルは慌てて助けようとするものの、彼は何も答えられなかった。

父上、叔父上、ラヴィッツ…。私は…今からそちらに旅立つやもしれません。…もしかしたら。

アルバートは意識が遠のく中、そんな事を内心で呟いていた。

(終)

「後書き」と書いて「謝罪文」と読む
 はいどーも。天空 仁ことフーレイです。えー…あんまり二次小説ではCPを書かない…といいますか、CP小説を書いたのは「ハガレンノーマルCPアンソロジー」以来だったりします。実はエミル×アルバートです。アル様は受ですよ(爆)。エミル姫が絶対攻側だ!というのが僕の考えです。…ノーマルでもCPはだめって人には抵抗のある文章ですね(汗:この後書きがもろに)。と、いうより「アルバートって、こういう事(上記参照)に免疫がないんじゃ…?」という僕のちょっとした考察から生まれたものです。元ネタは漫画版の『舞-乙Hime』(原作:矢立 肇)の第某話なんですけれどねー。もちろん、エミル姫のバストについてはめちゃくちゃ僕の妄想が入っております。多分姫はFカップだろう!んならこれでも喰らえ、アルバート!

…てなわけで上記の展開になったわけでございますですよ(爆)。

エミル姫も『ウルトラバストインパクト』の保持者だったわけですねー。むふー。でも、この御仁(アルね)が鼻血を吹くなど(戦闘でもない限り)想像できない。皆さんの想像にお任せしますね。つーか、アルバートファンを一気に敵に回しそうなモンだなぁ、と…書いていて思いました。

それでは、今回はこれで。ご自由にお持ち帰りください(リンク不要。ただし、著作はフーレイである事は示してくださいね)。

ファンの皆さん、ごめんなさい:天空 仁(フーレイ)

因みに、この『ウルトラバストインパクト』は発動させるにはFカップ以上が望ましいとの事。効果はバストの大きさに比例し、対象との間を隔てる布地の厚さに反比例する、とも…。
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by jin-109-mineyuki | 2006-07-24 00:00 | 閑人閑話図書館

第八夜:災いの雫編(後編)


-災いの-(後編)

 交代の時間が来た。なにやら楽しげに話すプラチナたちの会話に目を細めながら、ティルハーニャは歩み寄る。…一度振り返ると、コーラルの姿が無かった。
「コーラル、トイレね?」
一度問うが、答えるはずも無い。仕方なく歩き出す。そして三人と入れ替わった。月の無い空。無数の星が彼を見つめる。
「やっぱり、そうやったんね。【月の御子】と【沈まぬ月】、【黒い魔物】は…関係しとったんやね」
彼の呟きに、誰も答えない。ただただ、書きかけの論文が、風に煽られる。
「最初から【月の御子】は幸せなどもたらさんやったんよ。そう、最初から」
「正義なんて、どこにあるのかわからない。【黒い魔物】のやり続けていた事も赦されることじゃない。けれど、結局世界の破滅は救われてるから」
ふいに、声が聞こえた。コーラルが、短い髪を震わせて立っている。彼女はキャスケットを手に持っていた。
「コーラル、起きとったん?」
「まーね。色々考えててさ」
ティルの問いにコーラルが苦笑する。何時ものおきらくな笑顔だったが、何時の間にか真面目な顔になっていた。僅かに伏せられた目が、何処か鋭い。
「生きなきゃな…って思った」
学者は、きょとん、となる。何を今更、といいたい気持ちと、なるほど、と思う気持ちが綯い交ぜになった、戸惑いの顔だ。コーラルは囀り続ける。
「あんな事…、あんな戦い、繰り返すのは御免だから」
「確かに、な」
ティルは頷いた。繰り返すのは嫌だ。戦いを終わらせないと平穏なんてやってこない。
「古の戦いでも、ダートさん達の戦いでも、大切な人が失われている。今度は、そんな事無いように、生きなあかんな」
そう呟き、天を仰いだ。旅の途中で回った遺跡には、深々と感情ごと戦いの爪痕が残っていた。足を踏み入れるたびに、魂のそこが揺るいでいく。
「多分、魂を引き裂かれるような思いだったんよ。悪霊化したラヴィッツさんと戦った時とか」
そこまで言うと、ティルの表情が曇る。コーラルは不思議そうに見ていたが、彼はぼそっと、呟いた。
「ダートさんも、父親、失ったし。レニとディオも…父親、囚われてるし」
「うん…」
ティルの酷く悲しげな顔。コーラルにはその理由が解かっている。彼には親がいない。だから、せめて親と過ごせる仲間は、離れないようにするんだ、と常日頃言っていることを。
「だから、戦うんだよ。…自分達の為に」
コーラルは胸元を押さえ、少しだけ微笑んだ。この旅が、仲間を守る事が、自分の誇り。ハツバサの民として、彼の願いを、成就させたかった。

 それは…闇に浮かぶ冷たい光。嘗て月が破壊された場所に、嘗ての竜騎士は捕らえられていた。
「どうだい、この空間は」
「懐かしい、な。それでいて、酷く滑稽だ」
二人の人間が、檻を挟んで向かい合っている。二人とも若々しく、二十代後半ぐらいだろうか?牢の中に居た青年は溜息混じりにつぶやいた。
「こんな事をして、どうする心算だ?これはお前の手に余るんじゃないのか?」
「大丈夫だ。私はメルブ殿と違う。あの方のミスを繰り返さないさ」
檻の外にいた青年は白衣を靡かせ、懐からふしぎな輝きを持つ宝珠を取り出した。それは、囚われの存在から奪ったもの。そして、嘗て彼に力を与えた物。
「神竜王の魔眼…。うむ、まさに王者の魂として相応しい」
「お前には、到底発動できないだろうな」
白衣の青年に、檻の青年が言い放つが、白衣の青年…ファディオスはただ微笑んでこう言った。
「おそらくな。…神竜王に認められし者、ダート」
ダートと呼ばれた青年は表情を険しくした。今まで起ったことはあの戦いで飛び散った【沈まぬの月】が原因だ。それらを操っていたのがファディオスたちである。
「子どもに月の欠片を埋め込んで実験台にするのも赦せねぇ。それなのに何故更に世界に手を下すんだ!」
ダートの問いに、ファディオスは醒めた目で彼を見やる。それは解かっているだろう、と問うかけているようでもある。
「世界には、お前が思っている以上に悪意があるんだよ。それを溜め込んでいるといずれ世界は終わるに決まっている。だったら…解放して、管理する。それもまた一興と思わないか」
「馬鹿げているぜ」
彼の言葉に、ダートは呆れた、とでもいうような目を向けた。しかしファディオスは気にせず檻に背を向ける。何気なく照明に魔眼を翳し、うっすらと口元を綻ばせながら、目を細める。
「生贄は生贄らしく、大人しくしていろ。ま、これで罪も償われるというものだろう?」
その言葉の意味が解からず、首を傾げるダート。しかし、白衣の男は振り返らず、ただ魔眼を見つめたまま、呟いた。
「破片が、騒動を引き起こしているんだよ。【沈まぬ月】を撃ったのは、お前だろう?」

世界の彼方此方で災いが引き起こされる。それを辿ればあの男に会えるかもしれない。レニはそう思っていた。父親を攫い、色々な人々に混乱をもたらした存在に。
「レニ…、思いつめちゃだめですよ」
一人考えていると、ハルモニアが傍にいた。どこからともなく、シアのハープが聞こえてくる。他の仲間たちも、優しい目で彼女を見つめていた。
「うん、ありがと…」
レニはそういい、彼に笑いかけた。

―きっと、全てを終わらせるから…。

(終)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 全八週にわたった物語もこれでおしまいです。『勝手にシリーズ・延長戦』だったわけですがまずお題を考えてくださった三角さんに感謝します。そして、読んでくださった皆さんにも感謝します。一応あと三つ、書く予定ではいますが「もうええわ!しつこい!」など苦情がありましたらやめておきますよ。…止めるなら今のうちです(笑)。

 そーいえば、初めてゲームのキャラクターが出てきたよーなきがする。ダートが囚われの身ですよ?!そしてファディオスも登場!ゲーム本編ではジーク、えらいこっちゃで息子と戦うことになったけれど、これではそんな事はなくむしろダートが自力脱出を…なども考えています。あの人、ただで囚われるような人じゃない気がするもん。

と、いう訳で本当に長い間ありがとうございました!
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by jin-109-mineyuki | 2006-04-01 10:11 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

第八夜:災いの雫編(前編)


-災いの- (前編)

嘗てはたゆたいし、静かに見つめる傍観者。
その正体は破壊神の器-『沈まぬ月』-
壊れ、砕けたその破片たちは雫となりて大地に降り注ぐ。

 レニとディオの双子は、空を見上げた。仲間たちは焚き火を囲み、眠っている。今日は野宿となっていて、その見張りにレニが起きている。ディオは眠れず、その傍に居た。
「お父さん、大丈夫だよね」
ディオの言葉に、レニは頷いた。赤いリボンは手に巻かれていたが。
「大丈夫だって。元は竜騎士なんだもの。ちょっとやそっとじゃ死なないって」
そういうものの、不安はある。旅を続けて知った事は仲間たちを混乱させていた。学者であるティルハーニャに至っては様々な書物を取りにミール・セゾーへと戻ると言い出す始末だ。結局、一度そこへ戻ることになるのだが…。一番の不安は、父親たちが壊したはずの『沈まぬ月』だった。その破片を、悪用している連中がいる。彼らに、父親は攫われたのだ。
「でも、お父さんは…」
不安げにディオが呟く。母親たちは各国の国王たちと協力して別方向から探っているようだが、進展は見られない。焦りが、レニの顔に薄っすらと浮かび上がる。
「父さんは…確か、神竜王の竜騎士になれる。だから、きっと…大丈夫な筈。ううん、大丈夫なのよ。そうよ、そうだわ…!」
「レニ…」
レニは必死に自分に言い聞かせ、手首のリボンを握り締める。こみ上げてくる不安を押さえ込もうと、泣きたくなるのを堪えて、強く、強く。同じように締め付けられるディオの胸。本当は、同じ思いなのだ。けれど、あえて口にしない。こうしたって、始まらない事を、冷静に見抜いていた。だから身を寄せて手を伸ばし、優しく片割れを抱きしめる。
「大丈夫、だよ。レニ、きっと大丈夫。君がそう、言うんだもの」
そういって、ディオは言葉を紡ぎなおす。
「僕らなら、きっと助けられる。お父さんも、この世界も」

 レニと交代の時間がやってきた。それを感じ、起きてきたのは最近漸く馴染み始めたシア。彼女は竪琴を手に立ち上がる。彼女に気付かず抱き合っている双子は、何故か愛しく思えた。だから真っ赤になる二人をからかいつつ見送った。それと入れ替わりにきたのはハルモニアとプラチナ。若干幼さが残る二人はとても眠そうだった。
「二人とも、眠っていたほうが懸命ではなくて?」
「あ…そ、それはそうなんだけどさぁ…」
「父様達が黙っていた事とか、【沈まぬ月】の事が気になって…」
プラチナとハルモニアは互いの顔を見合わせ、困ったような顔でシアを見つめる。歌い手は苦笑して肩をすくめて見せると、ぽろん、ぽろんと竪琴をかき鳴らす。
「それは、皆そうだと思う。ティル兄が本を取りに行きたくなるのも、無理は無い。あの月が、また元凶になっているんだから」
「また…、だよね」
シアの言葉に、プラチナが頷く。ダート達の戦いも全ての元凶は【沈まぬ月】だった、といっても過言ではない。
「メルブ・フラーマがあんな事をしなければ…ロゼさんも、ジークさんも死なずに済んだ。それどころか、多くの人が死なずに済んだんだ。初めから【沈まぬ月】さえなければ…」
プラチナが、拳を握り締めてそういう。バージルの王、アルバートが全てを話してくれた。この戦いは新旧両竜騎士が協力しなければ終わらない。その事を感じた旧竜騎士たちは過去の話を風の竜に託した。レニたちは驚き、それぞれ複雑な思いを抱く。
「…父様たちも、苦しかったと思う。今は、教えてくれた事に感謝するしかありません」
ハルモニアの凪いだ瞳に、プラチナの感情が行き場を失う。シアはただ黙って竪琴を奏でていた。
「ハル、お前はなんとも思わないの?」
「今まで黙っていた事には、怒りがあるけれど…、それ以上に、責任の重さを感じているんです」
王子はそういい、少し瞳を伏せる。薄っすらと浮かんだ涙を、二人は見逃さなかった。
「フォディオスが、あの月を利用して神になろうとしています。そんな事を私達は赦しません。そうでしょう?」
涙に濡れた、決意の目。意外と鋭い眼光に、シアとプラチナはちょっと驚いた。普段は優しい眼をしている。その目は時折、本当に刃物と化す。その鋭さに皆が言葉を失う。
「そうよ。全て遭った事は真実だわ。だから、振り返ったって仕方が無い」
「シア!それはどういう…」
プラチナはたじろいだが、直ぐに言葉の意味を理解し、一つ力強く頷いた。
「…そう、だね!オイラたちで、あいつを倒せばいいんだね!」

(後編へ続く)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 今回は3月 31日と4月 1日にかけてUPします!
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-31 10:37 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

第七夜:暗黒の闇編


-暗黒の

黒曜の煌きを宿す、聡明な竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、きまぐれなる旅人。
記憶虚ろな時を超えて、鮮明なる現在へ躍り出る。

 何故だろう、何時の間にか、「それ」を手にしていた。少数民族の末裔であるコーラルは、手の中にある宝珠を見つめ、いつも思った。気がついたとき、自分は涙を流せなかった。そして、黒い「それ」を手にしていた。初めはこれの所為で涙を流せない体になった、と思っていたが、どうも違うらしい。なんとなく、そんな考えと共に、崖の上からある一行を見つめる。一人を除く四人は自分とさほど変わらない年齢だろう。そんな彼らは、沢山の魔物を相手に戦っている。キャスケットを被りなおし、小さく溜息。自然と、懐の宝珠に触れながら。
(苦戦しているようには見えない。けれど、面白そうだ、戦いの様子でも見るか)
コーラルは内心で呟くと、その場に跪いて上半身を折りたたむ。腕を交差し、額を膝に押し付けた。少数民族、ハツバサの民が戦いの前に行う『目覚歌(めざめうた)の儀』である。
「…ハツバサ、失われし鋼たる民よ。今目覚めて〈竜〉に仕えよ。ハツバサ、失われし戦の民よ」
そう唱え、コーラルは懐からナイフを二本取り出し、急な崖を駆け下りた。

 レニを初めとする一行は崖から降りてくる少女に目が点になった。両手に大振のナイフを持ち、人とは思えないスピードで走っている。それでこそ魔法であるかのように。―これがハツバサの民の特徴だ。大昔から特殊な戦闘技術を持ち、戦っていた―そして、華麗に舞う彼女に目を奪われた。ティルハーニャが倒し損ねた獣を、彼女は一撃で倒したのである。それが最後であったらしく、一行は言葉を失ったまま、己の得物を懐へ戻した。
「きみは?」
レニは不思議そうに問いかける。すると、キャスケットを被った少女はにっ、と笑った。
「ハツバサのコーラル。追い剥ぎまがいの冒険者さ」
何処か小悪党めいた笑顔に、レニたちが思わず笑ってしまう。どう見ても似合わないのだ。どこからどう見ても普通の女の子にしか見えない。けれど、確かに人並み外れた戦闘能力を持っているようだ。
「君たちは〈竜〉なんだろ?だったら、その旅にお供させてよ」
「でも…危険な旅ですよ。それも普通では考えられないような…。それでもですか?」
ハルモニアが不安げに問い、それにコーラルは若干むっ、としつつも
「キミやあっちの細いお嬢さん方よりも、戦えるぜぇ?」
「僕やハルちゃんはキミと一緒で男なんだけれど?」
「いや、彼女は女性や」
プラチナの抗議にティルハーニャが訂正をする。灰色のローブを纏った彼女は、一見男に見えるのだ。彼の一言に満足したのか、コーラルは乾いた地面を一つ踏んでレニ達を見つめた。
「竜に仕えるのが、民の誇り。キミたちが噂の『竜』なら僕は従者になる。よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしく。ただし、仲間としてね」
ディオは優しい笑顔で握手する。コーラルはその体温を感じ、楽しげに噛み締めた。

 涙は慈愛の証。『慈愛と勇気』が、彼らが彼らである証。それが、コーラルには苦しかった。彼女は涙が流せないのだ。村人たちはそんな彼女を気遣っていたが、一部の人は村から追い出そうと考えては行動に移した。だから、そういった奴らをどうしても見返したかった。
「先祖は、遠い昔…〈竜〉と共に有翼人と戦った、と伝えられている。それ以来、我々は何時の日か再び〈竜〉に仕える為に、日々技を磨いているのだよ、コーラル」
両親を失って以来自分と兄を育ててくれた長が、ある日コーラルに語った。いつものように村の子供たちと喧嘩して、負けて帰ってきた日のことだ。
「〈竜〉に仕える事は誉。だからその戦いでは多くのハツバサが戦場へ躍り出た」
長はそう言うと聞き入る少女の頭をそっと撫でる。
「〈竜〉って…なに?」
「〈竜〉とは、巨大な存在だ。魔力と勇猛を生き物にした、と言った存在。もう一つが…それに認められし人間。我々の先祖は認められし人間たちの為に共に戦ったのだ」
長は浪々と、優しく、深く語り続けた。コーラルは顔を上げ、長を見つめる。
「ぼくも、〈竜〉に仕えられる?そしたら…認めてくれるかな…ハツバサとして」
希望が、見えた。自分が、民の一員である事を認めてもらえる可能性が。涙が流せなくても、「勇気」はある。それを、見せ付けたかった。

 旅の途中、噂の天才吟遊詩人とであった。彼女は若干苛々しているようだったが〈竜〉が動き出した事を教えてくれた。そして、レニたちと会ったのである。過去の事を振り返りつつ、コーラルは前を向いた。
「それじゃ、行きましょか」

 後に、彼女は持っていた宝珠の正体と涙が流せない理由を知る。それを意味するのは長い旅と戦いの始まり。それでも、いや、だからこそ笑顔で受け入れる。誇りと涙と世界の為に、歩くことを選んだのだ。

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 竜騎士のラストは一番のおちゃらけキャラクター…の筈だったコーラルです。ロゼが『ミステリアスな女戦士』ならばコーラルは『意味不明な自称悪党』というイメージで行きました。次はいよいよおまけの話になりますが、タイトルが以下の通り。

災いの雫

 これは最後まで『レジェンド・オブ・ドラグーン』をプレイされた方ならわかるであろう代物です(僕はまだ攻略本に載っている所までしか知らないので本当のエンディングは知らないんですが…)。そして、僕の中で思いついてしまったネタはレジェドラではなく、別の物語として書こうかな、などと考えています。

※次回は前編と後編に分けます。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-25 22:05 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)

第六夜:紫苑の雷編


-紫苑の

紫紺と天の嘶きの、鋭き竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、孤高なる歌姫。
真なる思いに気付いたとき、竜は一つ成長する。

 黄昏時も過ぎた、街角の酒場。その一角にちょっとしたステージ1人の存在―クールな美貌を持つ若い女性―が竪琴を手に微笑んだ。彼女は本来溢れている筈の喧騒を沈めている。
―その蕾が開き、歌が零れ始めた。
初めは静かに、けれど徐々に熱を帯びた歌声がその空間に染み渡る。かき鳴らされる竪琴の音色と憂いを帯びた瞳に人々の魂が揺さぶられる。けれど、当の本人が深い孤独を抱えている事を知らない。

彼女は孤児院で歌いながら育った。その内職員の1人が才能に気付き、教育を施した。10歳の頃には『天才吟遊詩人』として名を知られ、沢山の人に囲まれ、ちやほやされて彼女は育っていった。しかし、彼女は気付いていた。誰も、彼女を対等に扱っていない。多くの人々が彼女を讃え、集ってくる。でも、一人で部屋にいれば、ぽつりといるだけ。心から「友達」や「仲間」と呼べる人などいない。孤児院でも他の子どもたちから「いい気になりやがって」というような目で見られ、誰も相手にしてくれない。
「結局、私は独りなんだ」
それが、何時の間にか口癖になっていた。名前はシア。知らない人は殆んどいない、歌の女神。

 ある日、シアは一人で何気なく故郷に戻っていた。ミール・セゾーの孤児院。そこに戻っても、何にもならないって解かっている。けれど心のどこかでは自分を懐かしみ、暖かく迎えてくれる人がほしい。そんな事を考えていた。そして、思い当たる人がいた。たった一人だけ、自分を対等に見てくれる人物が。
「…ティル兄…」
孤児院の門を開いたとき、その人物はいた。長身の青年はにっこり笑い、シアは自然と腕を広げる。兄的存在のティルハーニャとはいつもハグをする。
「元気だったか?体、無理しとらん?…シアは無茶しやすかけん、心配やったんよ」
「ううん、大丈夫。丈夫なだけが取り柄よ、私…」
シアは自分の中の孤独を隠し、笑う。けれど、ティルは心配そうに彼女を見つめた。そんな時の目に、なぜか逃れられない何かを覚える。何故だろう、急に胸が苦しくなる。
「それより、兄さんは何故戻ってきたの?」
「実は、長旅に出るんよ。やから、挨拶に」
長旅。それを聞いて、シアは目を細める。恐らく、研究の為だろう。仕方の無いことだ。本当は、暫く彼の元に厄介になろう、など考えていたのだが。兄の話も聞きたかった。が、そんな事を考えているとティルは何かに気付いた。腰に下げているシザーバッグから、淡い光が漏れていた。
「シア、ちょっ、それば貸してくれんね?」
「えっ?!」
ティルの逞しい手が、それに伸びる。シアが止められずにいたそれは、紫色の美しい宝珠を取り出した。
「…この前の舞台で、ファンから貰った。綺麗だったから、持っていたの」
シアが若干しどろもどろになりつつ答えるが、その傍ら、ティルは目を見開く。その表情は何故か知的な欲求からくる興奮と喜び。
「もしかしたら、仲間かもしれん」
ティルが呟くが、シアはそれが何を意味するのか解からない。そして、「仲間」という言葉に、何故か無性に腹が立った。
「…兄さん、何の事?仲間って…」
何処か曇った、険のある声。ティルが答えようとするよりも早く宝珠を引ったくり、彼女はきっ、と厳しい視線をティルに投げつける。
「シア?」
「私、つるむのは嫌い。群れるのは嫌いよ。何の「仲間」かは知らないけれど、入る気は無い」
「そ、そんなこと言わんでよ、シア!まだ説明も」
「説明も何も要らない。仲間はいらないわ」
シアは説明をさせない。ティルは妙なところで頑固さが出た、と若干困った顔をする。本当は仲間を欲しがっている事を知っているティルだが、こんな状態だとシアは誰の話を聞かない事を知っている。彼はシアと同じ孤児院で過ごした存在なのだから。
「仲間なんて…要らないのよ」
シアはそう言うとくるり、背を向けて走り出す。ティルはそんな彼女を悲しげに見つめた。内心では、まずかったか、と思いつつも。
「先ずは、話を聞いてほしいんやけれどね…」
後に、シアは宝珠の正体とティルが言っていた仲間の正体を知る。けれども初めのうち、彼女は中々仲間たちに打ち解ける事が出来ず、単独で行動し続けた。幾度変身を繰り返しても…。

 竜の力を持つドラグーン。そして、知らぬ間に手にしたその力。シアを一人の【竜騎士】として、仲間としてティルは手を差し伸べる。他の仲間たちも同じようにし、なかなか素直になれない彼女が漸くその手を取った事は…また、別の機会に話すとしよう。

(完)

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

…一番やばい気がする、シアの話。どうしても「私に仲間は要らない!」といったようなへそ曲がり…というか、天邪鬼というような雰囲気を出したかったんですがね…。ツンデレ?うーん、どうなんだろう。彼女の変化はまぁ、第八夜のストーリーで。次はいよいよ最後の竜騎士ですよ!オリジナル設定である少数民族の一員ってコトになっていますが、気にしないで下さい。頼みます(笑)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-18 19:44 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)