ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:閑人閑話図書館( 38 )

ごめん、まとめられなかったよ (フーレイ、がっくし)

―少しだけ時間を遡る。
 一方、傷ついたオトメたちを避難させていたミィニャとリリンにも危機が迫っていた。大体の避難が終わった、と思った頃……一つの影が一行目がけ落ちて来たのだ。
「! あぶないっ!!」
咄嗟にミィニャがコントラバスを鳴らし、衝撃波を放つ。と、それは姿を現した。鷹の鬼械である。
「ふふっ、殿下はどちらなのかしら? もしかしてここかしら?」
妖艶な女性の声に誘導していた2人は表情を険しくする。が、1人、制服姿のパールがその後ろからゆっくりとあらわれた。唯一白い制服を纏うパール……ユイエである。
「ユイエ! 休んでないとだめだよっ!」
「心配ありがとう、リリン。でも、俺は戦わなくちゃいけないんだ」
駆けよるリリンに、ユイエは小さく微笑む。そしてゆっくりと歩きながらピアスに手を添える。戦闘の疲れはだいぶ取れている。今ならまた戦える。だから再び戦衣を纏う。
「マテリアライズ」
静かに呟くと、制服が純白のローブへと姿を変えた。どこからともなくエレキベースが現れる。
「ミィニャ、リリン。一緒に戦おう。殿下をこいつらに渡すわけにはいかないんだっ!!」

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
9:信じる!

 無人の鬼械が徐々に減っていく。いや、待機しているようにみえた。狼の鬼械がフユノ、エンゲット、陸、スロウスを睨み銃口から炎の玉をはき出してくる。鋭い眼光でラジェルシードは叫んだ。
「ディート殿下を渡せ!さもなくばガルデローベだけでなくヴィントそのものを蹂躙する!王子は私の研究素材だ!!」
「させないっ!」
エンゲットが動いた。エレメントを奮って美力を発動させ、『虚』へと火の玉を送る。
「誰がディートを渡すもんか!こいつは……俺のご主人さまだ。
 このヴィントを背負って立つ、未来の国王陛下を貴様なんかに渡してたまるか!!」
フユノが叫び、突撃していく。それを追いかける無人の鬼械を陸とスロウスが足止めする。二人はそれぞれのマテリアルでそれらを押し返し、エンゲットがフユノの援護に回る。その様子を見、ディートはやきもきした。
「みんな、大丈夫かなぁ……何もできないってじれったいんだよぉ」
「あいつらに任せてみようぜ。懐さえ潜り込めばきっと……」
咲乱はそういってディートの頭をなでてやる。傍らではウィズムが手を握ってくれていた。
「僕らが彼女たちを信じないでどうするのら?僕らは信じて待つのら」

 一方、虎の鬼械と戦っていたロルクは懐に潜り込み、美力を発動させていた。激震が鬼械を襲い、ハクビは息をのむ。
(くっ、ここまでかよ?!)
「覚悟しな、坊主! 本気にさせようとした事を後悔しろ!!」
ミシミシミシミシミシッ!!
鬼械に走る亀裂。命の危機を覚えたハクビはすかさず脱出ボタンを押し、外に出る。が、既にパールとコーラルのオトメたちが待ち構えている。爆音が響き、鬼械は消滅する。ハクビの手にあった破片も霧散し、彼は両手を挙げた。
「……いっつもこうだ。今度こそオトメたちにひと泡吹かせられると思ったのに……」
悔しげに吐き捨てるハクビに、ロルクはため息をついて歩み寄る。そして腰に下げていた救急箱から道具を取り出すと、いつのまにか出来ていた顔の傷に治療を施し始めた。
「?! おい……俺は敵なんだぜ?」
「馬鹿野郎。医者の前では関係ねぇ」
ロルクの見事な手つきにきょとん、となりながらもハクビは小さくため息をついた。

「しぶとくってよっ!!」
ジェムフラウが叫ぶ。彼女の鬼械が羽根を模したカッターを飛ばすも、音を操るマテリアルを操る3人のパールは次々に技を繰り出して翻弄する。
「しぶとくなきゃ……将来仕える主を守れねぇっ!!」
ユイエの叫びが音に混じり、空間を割く。衝撃波となるそれをどうにか避けたと思ったら、真横から別の音が聞こえる。
「トリアスは学園の自治を任されている重要な位置。私たちがしっかりしないと……他の仲間を不安にしちゃうんだっ!」
自分を叱咤するように、リリンは叫ぶ。そしてくるっ、とターンすると再びタンバリンを鳴らす。同時に鬼械が動きを止め、ミィニャの声が響いた。
「一気に仕留めるですっ!!」
響き渡る重低音。コントラバスとエレキベースが結界を作り、タンバリンがしゃん、と鳴く。
「っ!?」
一瞬だけ、全ての音が消える。が、静寂を割く一閃。まっ白い光の刃がタンバリンから発生しまっすぐに鬼械へと突き進む。
―美力発動、音ノ磔刑!!
身動きが取れず、ジェムフラウは歯噛みした。どうにか脱出キーを押す事で衝撃と爆破からのがれる事は出来たが、これで無人鬼械の動きはあらかた止まるだろう。
(オトメの卵と侮っていたのが敗因ですわね……)
爆風からは逃れられず、煤けた身で逃げようとしたが目の前に別のコーラルたちが待ち構えている。仕方なく両手を上げて降参の意を示し、ため息をついた。そして、トリアスの三人は互いに顔を見合わせると、小さく微笑みあった。後は全てをあの子たちが……。

 ガルデローベ周辺。避難は終わりあらかた鬼械の始末も終わっていた。パトスたちアスワドのメンバーとクルーエ、ギーエルの警察官たちも一息付いていた。
「それじゃあ、シュヴァルツの人間が見つかり次第そっちに連行でいいかなぁ~ん?」
「その前に謝罪をしないとな。俺達黒科学を持つ者たちの構想に堅気の衆やガルデローベを巻き込んだ責任がある」
ギーエルの言葉にパトスは苦笑する。黒科学を研究する者としてはシュヴァルツをどうにかしたいと思っているものの、考えの違いから争い……今回のような事を招いた。それが、彼にとって悲しいのである。少し悲しそうな彼の肩をクルーエはぽん、と叩く。
「元気だして、ドクター。きっといつか…彼らにも思いは伝わるよ」
その言葉に、パトスはだといいな…、と呟いた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前回、「次回で最終回」と書いておきながら終わりませんでした(滝汗)
いや、終わるはずが長くなりそうだったので切りますわ。こんどこそ次で終わらせます、はいっ!!ぐだぐだ長いとか突っ込みはしないでーっ(涙)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-03-12 15:23 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

続・『ゼロの使い魔』ファンのみなさんごめんなさい (フーレイ、ネタだけで)

四周年目突入お遊び企画:ザ・もしも!
『ルイズさんがフーレイのPBM等のPCを呼び出した模様です』

注意
フーレイは『ゼロの使い魔』の本編を触り程度にしか読んでおりません。
つか、あるサイトでの二次作品が主で知識を変な偏りでつけています。
違うところはありますがとりあえずそこは無視の方向で海の如く広い心で
ごらんくだざい。

楽しんで書きますので、がんばって読んでください。
以上。

テイク2:シオンの場合 その1
※:脱走直後をチョイス。

「!?」
土埃が舞い、それに一つの影が浮かび上がった。丁度180センチ程の、人間のような形。それに回りの生徒たちが声を上げる。
「ゼロのルイズが平民を出したぞ!」
「さっすが、ゼロのルイズだよなーっ!」
嘲笑の起こるなか、それでもルイズは歯をくいしばって土埃が晴れるのを待った。
―ドサッ!
次の瞬間、ソレはルイズに倒れこんできた。ずぶ濡れの体を抱きとめ……しかし、重さで尻もちをつくルイズに、教師であるコルベールが駆け寄る。そして、二人は息をのんだ。淡い紫色の髪、透き通るほどの白い肌。そして、かつて戦場に立ったことのある教師だけが感じた血の匂い。教え子が呼び出したのは、どうやら戦人らしい、と彼は確信した。
「……こ、こ…は?」
震える幽かな声で彼は問いかける。ルイズは小さくため息をついた。
「ここはトリスティンにある魔法学校よ」
「トリス……ティン? まほ、う…がっこ…う?」
たどたどしく、よわよわしく言葉を返す青年は、一度目を見開き、こう問う。
「ここ、は……リュー、ン、で…は…ない、のか?」
リューンという名前に、ルイズはおろか、コルベールたちも聞き覚えがない。それだけ言うと青年は意識を手放す。思わず、ルイズは叫ぶ。
「だ、誰か彼を助けてっ!!」
彼女の声に、おもわずモンモランシーが動く。なぜだろう、その声に逆らえなかった。応急処置的に傷をいやすとコルベールは頷く。
「まずは治療が先決だが…ミス・モンモランシー、ありがとう。
……ミス・ヴァリエール、コンタクト・サーバントを」
ルイズは彼の言葉に頷き、僅かに呼吸を整える。眠る青年の顔は穏やかで、魅入られてしまいそうだが……。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
詠唱し、唇を重ねる。と、僅かに彼の表情が曇った。左手の甲には複雑なルーンが刻まれていく。それにコルベールが眼鏡をかけなおし、ふむふむと頷く。が、我に返るとルイズの使い魔を救護室へ連れて行くように手配した。

 しばらくして、青年は目覚めた。つきっきりで看病していたルイズは目を開いた青年に言った。
「今日から、あなたは私の使い魔なのよ」
「使い…魔? どんな、しご、と、だ?」
相変わらずたどたどしい口調だ。ここの人間ではなく、言葉も学んでいる途中だったのだろうか。いや、しかし。なにか未発達な何かなのかもしれない。
「後で教えるわ。ああ、忘れていた。
 私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴方のご主人さまよ」
「ルイズ……。きみ…が、主?」
青年は首をかしげる。主という言葉は、知っている、らしい。ルイズは小さく頷きつつも「ルイズ様、よ。いいわね?」とくぎを刺すことを忘れない。青年は一つだけ、はい、と頷いた。
「さあ、貴方の名前は?」
ルイズはにっこりと問うが……青年は酷く困惑した顔でルイズを見ていた。名前、と言われたとたん、どうすればいいのか、わからない、といった表情になった。
(ふざけている……様子もないわよね。……本当に名前がなかったのかしら?)
ルイズは少し考え、彼を見た。美しい紫色の髪と瞳が、やけに目立つ。
「そうね。今日から貴方はアメジストって名前に……」
次の瞬間。
―ばっ!!!
白い布団が跳ね上げられ、ルイズは呼吸が詰まった。良く見ると、彼女の使い魔が胸倉をつかんでいる。見た目よりしっかりとした腕が、主を壁に押し付けていた。
「ちょっ、ちょっと!!」
「やめろ……。それ、だけ…は……アメジストだけは…やめろっ!!」
ぎらぎらとした紫色の瞳が、やけに鋭かった。そして、浮かんだ表情に、ルイズの目が険しくなる。使い魔の顔に浮かんだのは、苦悩と苦痛だった。
「……わかったわ。アメジストはやめる。別の名前にするわ…」
その一言で使い魔は腕を放し、表情を曇らせた。そして、ルイズを立たせベッドに座らせた。己はその場に跪く。
「貴方は、今日からシオンよ。シオン…よろしくね」
使い魔シオンは、小さく微笑んで「はっ」と返事を返した。

(続く)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
シオン編はたぶん2、3回続くかも (大汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-22 13:37 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

『ゼロの使い魔』(著:ヤマグチノボル)のファンのみなさん、ごめんなさい。 (フーレイ、勢いでした)

四周年目突入お遊び企画:ザ・もしも!
『ルイズさんがフーレイのPBM等のPCを呼び出した模様です』

注意
フーレイは『ゼロの使い魔』の本編を触り程度にしか読んでおりません。
つか、あるサイトでの二次作品が主で知識を変な偏りでつけています。
違うところはありますがとりあえずそこは無視の方向で海の如く広い心で
ごらんくだざい。

楽しんで書きますので、がんばって読んでください。
以上。

テイク1:スズキ(鳥)の場合。

ルイズは驚愕した。
『サモン・サーヴァント』で呼び出したのは一羽の猛禽類らしい鳥であった。回りは「ゼロのルイズが成功した!?」「明日は吹雪だ!」とか言い出したが、まぁそこは無視していたが…
「あら、かわいい子からのご指名ねぇ?」
その鳥はいきなりしゃべりだした。勿論、これには担当教師のコルベール先生も驚きだ。
「こんなことは初めてですねぇ」
「せ、先生……こいつ、本当にただの鷹…?ですか?」
「こいつとは失礼だね。俺にはスズキって名前があるんだ。で、キミは?」
スズキと名乗った鳥に問われ、ルイズはとりあえず名乗った。そして、皆と同じように口付をする。こいつの場合は嘴だが。最初目を丸くしていたスズキだが左の翼に痛みを覚えて右往左往するも、治まった途端それに浮かんだルーンを見、
「ふぅん、これまた古風で粋だねぇ」
とかごちった。コルベール先生といえば珍しいものだったのか熱心にスケッチしている。

部屋に戻るなり、ルイズはスズキと向かい合った。そして、次の事を確認した。
1:視界の共有
ルイズはとりあえず視界の共有からてっとりばやくやることにした。
「どう? なにか見える?」
「……何もないねぇ……」
どうやら、できないっぽい。うん、諦めよう。と、思った。

2:秘薬の材料探し
とりあえず期待しない程度に聞いてみる。
「んー、とりあえず向こうの世界でもやっていたから、たぶんできないことはないと思う」
なんか意外な答えだった。その前に『向こうの世界』って言葉が微妙に気になる。

3:主を守る
……どうみたって出来そうもない。ただのしゃべる鳥だ。そう思いつつもとりあえずそれについても聞いてみる。と、スズキはにっ、と笑った。
「これでもこちとら冒険鳥。それが一番得意なのよ?」
ハッキリ言って、期待できないと思った。

―ギーシュとのひと悶着。
香水を落としたことで二股がばれたギーシュ。それを拾ったのはシエスタと一緒にケーキを配っていた…というか、シエスタについて飛んでいたスズキだった。器用に爪で拾ったはいいが…それをモンモランシーの前に落としてしまった。
「決闘を……」
「あら? 鳥相手じゃご不満?」
スズキが問うがやっぱり鳥。回りからはギーシュにブーイングが。それでもギーシュはむっ、ときて決闘をすることに。震えるシエスタと困惑するルイズにスズキはにっ、と笑う。
「大丈夫、大丈夫。俺はこう見えても強いらしい雌の猛禽類なんだから」
茶目っ気たっぷりにそういったスズキ。そして彼女は…華麗なる勝利をおさめた。

ギーシュの作り出したワルキューレを軽くいなし、口(!)から出した光線―スズキ曰く、『魔法の矢』というスキルらしい―で粉砕。ムキになったギーシュが続けざまに出した6体のソレもなんか凄い魔法―コルベール先生でさえ知らないらしい―でいなしてしまった。とっておきはワルキューレからかっぱらった剣を爪で握った突端、左の翼にあるルーンが輝き、電光石火の勢いで最後の一体を壊したことだった。

 オスマン校長先生の話だと、それはガンダールヴとかいう特殊なルーンらしい。が、話し合いで秘密ってなった。
「なんか伝説とか聞くと向こうの世界にごろごろいるんだけれどもね。聖騎士やってる黒髪エルフのおっちゃんとか、うちのパーティの孟宗竹とか」
「ええっ?!」
「まあ、月が1つしかない故郷の世界でのことよ。気にしないでね、校長先生」
いや、周りの面々もいろんな点で面喰っているんだけれども、鳥は無視した。

お休みの日に買ったしゃべる剣『デルフリンガー』を「デルちゃん」と呼び、ルイズやキュルケやタバサと楽しく過ごすスズキ。なんか、この鳥といると自然と何でも楽しく思えてしまえるようになったルイズは『ゼロ』という蔑称を気にしなくなった。と、いうか
「『ゼロ』で結構よ。でも、今に凄い事してみせるんだから♪」
と、何だかんだでスズキの影響を受けまくって笑い飛ばす性質になっていた。
あ、フレイムやシルフィードたち使い魔軍団からは『姐さん』で通っていたらしい。

フーケに盗まれた『恐怖の箱』…その正体『ろけっとらんちゃ』でゴーレム討伐。
「あれ、懐かしいわねぇ」
使い魔コンテストでは何を思ったのか他の使い魔たちとお芝居。
「前は作家目指していた時期もあんのよ」
「って普通できないから、こんなん」
王女様の密命時にであったワルドに対しては「興味がない」の一点張りで手合わせすらしなかったのに裏切り発覚で困っていたら謎の大技をかまして一撃で5体纏めて凍らせる。
「スズキ、あんたいったい何者なの?」
「だから言ったでしょ、ただの冒険鳥だって」

―のちにルイズは虚無に目覚める。
その傍には時に口うるさく、時にふざけ、時に勇ましい鳥がいたという。
それこそがスズキ。ガンダールヴ宿せし、自称冒険鳥。
その正体が魔導士であることは、ついに語られなかった。

(終)

次回:『ルイズがシオンを召還した場合』へ続く。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-09 19:50 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

当初の計画より押してます (フーレイ、……ちょいと頭痛)


「……解放されたか」
不意に、ハクビは顔を上げる。通信で響くラジェルシードの声に、それが何を意味するのかしばらく解らなかったが……次に飛び込んできたジェムフラウの言葉で目を見開く。
「久方ぶりに、『蒼天の青玉』のオトメが現れましたわね……楽しいことになってきましたわ」
「ってことはあの王子さま、学園の誰かと契約したってことか!」
つまりは、あらたにマイスターが1人増えたということである。そして、迂闊にはディートに触れられない……。
「誤ってオトメを殺してみろ。ディート殿下も死んでしまう。それは……最終手段だ」
ラジェルシードは声を震わせ、表情を険しくした。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
8:激突ッ!

―光。まばゆい光が3つ、鬼械を怯ませる。
 そのうちの一部は、その光に戸惑い、自ら壊れていく。

空のような青が、その肢体を包み込む。
雪のような白が、その肢体に牙を与える。
炎のような赤が、その肢体に力を注ぐ。

「こっ、これがマイスターGEMの力…」
フユノが両手にはめた手甲を見つつ呟く。どうやら、彼女のマテリアルらしい。エンゲットの手には一本の剣、陸の手には鞭が握られている。
「なんか、すっごく体が軽いや!」
エンゲットが軽くジャンプしてみる。感触が軽く、先ほどまでの疲れもすべてなくなったようだ。そして、どことなく呼吸も楽になった気がする。
「……でも、溺れないようにしないと、ね」
陸がくぎを刺すようにそういい、鞭を握りしめる。フユノとエンゲットも頷き、3人は無人鬼械をにらみつけた。
「いくぜっ!」「やっちゃうよっ!」「参るっ!」
三人がそれぞれ叫び、手当たり次第にマテリアルを振るう。その姿を見、スロウスは小さくほくそえんだ。
(あいつら、やっぱりそうしやがったかっ!)
即位が決まったウィズムは何の問題もない。ディートも諸問題さえ解決すれば父王からのお咎めもないだろう。しかし、咲乱は違う。いくら皇太子となったとは言え、成人していない。成人しないと確定しないのがヤマト連合国だ。
(しかし……今回は仕方のないことなのかもしれない)
そう言っている間にも、スロウスへと鬼械が迫る。それをロッドではじき返していると、大きく雪崩れて行くのがみえた。
「うっしゃあっ! お前らなんて目じゃねぇぜっ!」
フユノが手甲をはめた手を交差させる。闘気と美力が巻き起こり、両腕から発射される!
―美力発動! 魂破壊乱気流(ソールブレイクストーム)!!
めきめきと嫌な音をたてて飛んでいく鬼械の先、狼のようなシルエットが見えた。どうやら、博士と呼ばれた人間が操縦している鬼械らしい。
「近づけさせないっ!」
前へでたエンゲットが剣を振るう。と、同時にそれが双剣へと姿を変えた。自分の中にある力をそれへと宿らせ、一気に踏み込む!
―美力発動! 消失の悪夢(レムレス・ザ・イレイズ)!!
空気が漆黒に染まった。いや、そこに『虚』ができ、そこへと鬼械が吸い込まれていく。そして、彼女の傍を抜けて陸が鞭を撓らせた。
「そこを、どけっ!」
―美力発動! レイジングウィング!!
発生したカマイタチが一気に狼の鬼械まで届く。突然の攻撃にラジェルシードは防御するのが精いっぱいだった。
「くっ、さすがマイスターになれただけあって強力だな。しかしっ!」
ラジェルシードの言葉に続き、鬼械の腕からガチョン、と筒が姿を現す。そして、獣が獲物へ飛びかかるのと同じ体制で、背中からもアームのようなものを取り出した。警戒した4人はすぐさまディートたちの前にでる。
「ディート殿下を、手にしなければならないっ!」
ラジェルシードは叫び、狼の鬼械は吠え、銃器をぶっぱなした。

 一方ハクビはというと…一人のオトメと対峙していた。学園の様子を見に来たフィクロルクと鉢合わせし、そのまま戦闘になったのだ。
「……ふん、こんどはちぃっとマシなもん持ってきやがったか」
襲いかかる虎の尻尾をマテリアルで受け止め、どうにかひっくり返す。が、虎もまた軽い体さばきで元に戻る。必殺技である魅力技も避けられてばかりだ。
「あれ? 保健医さん、調子悪いんじゃねぇの?」
ハクビの挑発に、ロルクはふん、と鼻を鳴らした。と同時に手にした蛇腹剣を鞭モードから剣モードへと変える。
「いいや?」
そう言いながら、虎の爪から発せられる衝撃波を巧みにかわす。様子を見ながら、彼女は機械の弱点を探っていた。

(続く)

……次で最終回です。 うわっ、1月過ぎたよ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-04 16:13 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

先週水曜日はすみません (フーレイ、早めのアップ)


 次々に襲いかかる無人の鬼械。コーラルやパールの生徒たちと教員たちは率先して鬼械を倒していく。しかし、人が乗り込んだ鬼械はなかなか倒せなかった。
「一体どこにいるのかしら、ディート殿下は」
ジェムフラウが呟いていると、狼の鬼械に乗った男が呟いた。
「お前は右を。ハクビには左を当たってもらっている。私はまっすぐ行ってみるよ」
「わかりました、ドクター・ランタノイド」
ドクター・ランタノイド……いや、ラジェルシードはくすり、と笑って頷いた。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
7:(どさくさ感がぬぐえない)契約っ!!

「おい、てめぇら!!堅気の衆に被害を出すなよ!サツと手を組んで避難誘導をきっちりやれ!」
「第一部隊は避難経路確保を。第二・第三部隊はアスワドと鬼械を止めて!そこ、防御が薄いよ!!」
パトスの怒号が響き、それにアスワドの科学者たちは気合のこもった返事をする。一方クルーエの指令に警察もきりっ、とした声で答え、両者は連携を取り合っていた。その傍ではギーエルが手に持ったバズーカーで鬼械を打ち取っている。しかし、数はかなり多く彼らだけでは抑えるのが精いっぱいだった。
「…こっちにオトメを少し回してくれると、助かるんだけどなぁ~ん」
ギーエルはぽつり、と小さく呟いていると……見覚えのある影が鬼械相手に大暴れしていた。『黒焔』のオトメであるフィクロルクが蛇腹剣をふるいつつ高笑いをしていた。
「はーっはっはっはっ!てめぇらごときにここを落とさせてたまるかってんだっ!ガルデローベのオトメたち!お前ら、パール1人にコーラル2人のチームで挑めよっ!」
彼女はどうやら幾人かのパール・コーラルを率いているらしい。それに、ギーエルの口元がわずかに緩んだ。

(……アスワドと警察が協力してくれているようだな)
周りの音から、スロウスはそう睨んだ。校庭の外から聞き覚えのある声が響き、それに顔をほころばせる。しかし、直ぐに表情が研ぎ澄まされたのは鬼械の攻撃が来たからである。
「ええいっ、邪魔だっ!!」
一瞬にして美力が膨れ上がり、ロッドが一閃!
―美力発動、スプラッシュクリムゾンッ!!
巻き起こった炎が狼の形をとり、次々に鬼械を破壊していく。しかし、その後から鬼械がわいてくる。いくら戦歴の猛者とはいえ僅かに疲労を覚えるスロウスだった。
(他の教師たちも生徒たちと一緒にこいつらを叩いてるんだろな。ああ、せめてあと1人…、あと1人マイスターがいれば乗り越えられそうなんだが)
内心、焦っていた。シュヴァルツの親玉を叩かない限り、これは続く。
(くっ、策に嵌められたか)
歯噛みしているその近くでは、3人のコーラルたちがディートたちを守っている。が、その奥。そう、ディートたちから不思議な気配を覚えていた。そして、それは動き始める。

 フユノはロッドを手に奮戦していた。ディートたちを、そして学園長を守るために。
(くそっ、追いつかねえっ!!)
守っているつもりでも、自分の身を守るので精いっぱい。そんな風に彼女には思えた。ともすれば、攻撃が腹を、頬を穿ち脳裏が白くなりかける。
「おらああっ!」
ロッドを握りしめ、己の根性を込めて下からすくい上げる!ひっくり返った鬼械が別の機会もろとも吹っ飛び、音もなく霧散する。けれど別の鬼械が次から次に襲いかかってくる。
「今の俺じゃ……敵わなねぇのかよ…」
思わず呟き、膝をつきかける。それでも体を起こすのは、守り人……オトメである、という信念。だけど、その体は悲鳴を上げている。脳裏に浮かんだのは、土に倒れた双子の片割れ。
「畜生……っ!」
泣きそうになった。悔しかった。だから、力がほしい。皆を守るための力、大切なものを守るための…そんな力が。それはそばで戦っていたエンゲットと陸も同じだった。ロッドで戦いながらも、己の力不足を痛感していた。
(もっと、強くなりたいっ!あたしちゃん、お父ちゃんみたいに傷つけたくないもん!)
エンゲットは歯を食いしばる。陸もまた、泣きそうになるのをこらえ、踏みとどまる。
(あの人みたいに、失いたくないっ!おいらだって……力がほしいっ!)
二人は必至だった。どうしても、力がほしかった。だから、三人はロッドを手に戦いながら、切実な思いを叫ぶ!!!

―大切な人を、守りたいだけなんだっ!

その言葉に、ディート、咲乱、ウィズムは顔を見合せ…頷く。手の中からは力強い光がこぼれ出る。そして、それぞれが選んだオトメへと……。
「フユノちゃんっ!」
ディートは叫び、倒れそうになるフユノへと駆け寄る。
「馬鹿野郎っ!お前は後ろに下がってな!」
「そうじゃないんだっ!フユノちゃん……ううん、フユノ・アトツキ。僕がもつGEMを受け取って欲しいんだ!」
ディートはフユノの手を取り、必死な瞳で叫ぶ。が、その上で瓦礫がうめき、大きな塊が降ってくる。
「あぶないっ!」
フユノより早く、ディートの体が動いた。少年は手を伸ばし、とっさにそれを持ち上げ、鬼械へと思いっきり投げつけた。それにフユノは息をのむ。ディートの瞳が、悲しげに細くなった。
「僕……こんなのだけど……」

「エンゲット・セイルーン。僕のオトメとして戦ってほしい……のらっ!」
膝を突こうとしていたエンゲットを支え、ウィズムが叫ぶ。突然の言葉に、エンゲットは目を丸くした。
「いっ、いきなり何いうの?あたしちゃん、まだコーラルだよ?!」
「コーラルとかパールとか関係ないのら。実をいうと、さっきの戦いをこっそりみていたのら。その時、このGEMと僕の心が響いたのら!君こそが、僕のオトメなのら!」
ウィズムは真剣にエンゲットを見つめる。飛んでくる攻撃を持っていた棒きれで避けつつ、彼は小さく微笑む。
「僕は、未熟な…無茶をしやすい王かもしれない。けど…君となら一緒にいける。そんな直観があるのらっ!」

 陸は戸惑っていた。目の前に故郷・ヤマト国の皇太子がいる。しかも、自分に対し跪いて手を差し伸べて。まるで踊りに誘っているようだ。でも、言葉や瞳は違う。
「こんな時になんですか。非常識にもほどが……」
「こんな時だからこそ、だ。月華 陸。……俺のオトメになってくれっ!」
瞳が重なり、陸はどきっ、とする。しかしその間を鬼械が裂こうとし…とっさに咲乱は陸を抱きかかえ、そのまま転がって攻撃を避けた。攻撃を食らったのか、右肩から赤い飛沫が上がる。
「で、殿下!」
思わず声を上げる陸。護る立場である自分が護られ、しかも傷まで負って……。
「はは、ざまぁねぇ。けど……陸。こんな馬鹿を……支えてくれねぇか?」

三人のコーラルは、同時に、頷いた。
 そして、三人のマスターは、それぞれのオトメにGEMを渡す。
 オトメたちはコーラルのピアスを外し、新たなピアスをはめる。
 マスターたちはそっと、指輪を指にはめた。

「我が乙女、フユノ・アトツキ、虚空のごとき蒼を抱きし蒼天の青玉の貴石を持つ武姫よ」
ディートの言葉に、フユノは顔を上げる。
「我が乙女、エンゲット・セイルーン、古に伝わりし白銀を纏いし流水の透輝石の貴石を持つ戦姫よ」
ウィズムの言葉に、エンゲットは表情を引き締める。
「我が乙女、月華 陸、情熱と信念を集めたる紅を秘めし孤高の紅翡翠の貴石を持つ騎姫よ」
咲乱の言葉に、陸は小さく頷く。

-汝の力を開放するっ!

同時にディートが、ウィズムが、咲乱が…フユノの、エンゲットの、陸のピアスへと口づけを施す。

―それが、契。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

変身シーンは次回、ということでっ!
あと、今回長くなっちまったから削ろうとも思ったんだ。
でもできなかったんだぜー(涙)
あと、言わずもがな、『我が乙女』と書いて『マイオトメ』とよみます。

そして、完成したのでアップ。水曜じゃないがなっ!
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-19 22:17 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

ごたごたしています (フーレイ、延長しちまった:涙)


「時間がないな……」
スロウスはエンゲット、フユノ、陸、ディートを見てつぶやいた。背後にいた青年二人はにっこりと四人を見、一礼する。
「簡単に説明すると俺はヤマト連邦国皇太子の水繰 咲乱。隣りのはグラウゼル・ガルサの次期国王ウィズム・フォス・アヌビス。ちょいと野暮用でこっちにきていたんだ」
咲乱と名乗った長身の青年はそういいつつ歩きだし(前ではスロウスがすでに歩いていた)。ウィズムと紹介された青年は自分より背が高い四人に少々しゅん、としつつも一緒に歩きだした。
「で、陸、フユノ、エンゲット。私と一緒に3人を……」
スロウスがそう言ったとき、前方からカマキリのような機械が姿を現した。それも……数体も。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
6:激戦!?

 一方、舞闘場。そこで戦っていたユイエは息を切らせぬまま、虎、鷹、狼の機械を相手にしていた。マテリアルであるエレキベースをかき鳴らし、空気を振動させて動きを封じようとしてる。
「くっ、ちょこざいな!」
いったいどれだけ彼女と戦っているのだろう?そう、博士と呼ばれた男が思ったとき、わずかに隙が生まれる。
「ここだっ!」
振動と振動の合間をすり抜け、虎が駆ける。が、ユイエはそれを追いかけなかった。彼女はただ、楽器をかき鳴らし、歌を紡ぐ。特殊な音波となったそれが鬼械をすり抜けた直後に誤作動が起こる。
「っ! ハクビ、気をつけるんだ!」
「それにしても、おかしいですわ。ここで戦っているのは彼女だけ……?」
そう言っている間に、ジェラは一つのことに気がついた。人の気配はするのにそこにいない。これは一体?
 その外側。パールローブをまとったミィニャがマテリアルを展開していた。彼女のマテリアルはなぜかコントラバスなのである。それを巧みに奏で、音波の檻を作っていた。
(無人の鬼械を入り込ませない為にも、あいつらが3人を捕まえない為にも……僕にできることをするですっ!)
事実舞闘場のまわりには無人の鬼械が近づけず、ガルデローベの見習オトメたちが善戦している。破壊された鬼械は霧散し、傷ついた幾人かのオトメたちはマテリアラズを解かれ避難している。
(この美力、『重低音ノ鳥籠(ディープベースバードケイジ)』はまだまだ改善の余地ありです。だけど、ここは…)
ユイエが一人で戦っているが、大丈夫だろうか。恐らく鬼械の動きを鈍らせ、ある程度ダメージを与えてあの四人追跡を少しでも遅らせようとしているのだろう。
「ミィニャ!真祖様の方向からまた何か出てきたよっ!」
そう言ったのは同じトリアスでリリンというパールオトメだ。彼女は三日月型のモンキータンバリンをマテリアルとしている。それから発せられる衝撃波が敵を打つのだ。今も華麗なステップで敵を倒している。
「……そろそろなのかもしれないです」
ミィニャは覚悟をきめて技を緩める。と、同時に鬼械たちが近づき始めた。それにはリリンが絹練色とアイスブルーの瞳を研ぎ澄まして応戦する。
「僕もいくですっ!」
ミィニャもまた瞳を研ぎ澄まし、手にした弓に力を込めた。
「美力解放!『低音強弓(ベースバリスタ)』!!」
「美力解放……『メテオライトダンス』!!」
合わせてリリンも美力を解き放ち、モンキータンバリンを振り回す。音波の矢と鞭が敵を薙ぎ払い、一瞬にして鬼械が霧散していく。しかし、続けざまに鈍い破壊音がその場に響いた。同時に、見知った顔が砂煙から抜け出てくる。
「くっ……時間、どれだけ稼げたかな…」
傷だらけになったユイエがマテリアルを手に咳き込みながらやってくる。ミィニャとリリンが駆け寄ると、ユイエはがくり、と膝をついた。途端に、彼女のローブが消え元の制服姿に戻っていた。リリンが手を貸し、立ち上がらせる。
「大丈夫、ユイエ?」
「ああ、とりあえずは。時間稼ぎになったんならいいんだが……」
「僕は避難する子たちを助けるです。リリンさんも手伝ってくれますか?」
ミィニャがあたりを見渡して問うとリリンは頷いた。

 カマキリのような鬼械を相手に、三人のコーラルオトメとスロウスが奮戦していた。スロウスのマテリアルは身の丈もあるロッド。その一方は鋭いニードルとなっている。
「でりゃああっ!」
気合で一突きし、それに回転をかけると一撃で鬼械は霧散する。その一方で陸たちは三人で連携し合って敵を倒す。
「だーっ!? しつけぇなー、鬼械ってもんは!」
「でも、無人だなんて…聞いたことがない」
フユノの横で、陸が呟く。彼女たちの知識が正しければ、鬼械は契約者とともに行動するのである。
(……てことは、どこかに誰かがいる?)
エンゲットがあたりを見回し、様子をうかがう。戦う四人の姿を見つめながらディートたちは内心やきもきしていた。
「……俺達じゃ、かなわないっぽいな」
「ナノマシンがあるからこそ、対等に戦えるのかもしれないのら」
「でも、こういうのってすっごくじれったいんだよぉっ!」
咲乱、ウィズム、ディートの三人は守られながらもはらはらしていた。自分たちのために彼女たちは頑張っている。だから、どうにかしたいのに……。
(くそっ、俺たちにできることって……何かねぇのかよっ!)
咲乱はイライラしながらポケットをまさぐった。すると、その白い手に当たるものが。その冷たくもどこか脈打つような力を感じるものに、彼は酷く苦笑する。
(俺達のために無駄に命を散らすかもしれない……。でも、彼女たちのサポートがあるから、俺達『ご主人さま』も信念に基づいて腕をふるえる……)
彼はポケットから一つの指輪とピアスを取り出す。それは美しい緋色の翡翠……。
(俺にご主人さまの資格があるのなら……俺のオトメにこれを捧げ、背中を任せよう)
咲乱は顔を上げる。その手にGEM『孤高の紅翡翠』を握りしめて。傍らで、ウィズムが小さく頷く。
「どうやら、彼女こそが……僕のオトメなのら」
「……この力を、貸す時が来たのかな……ディゼロさん」

 そして、襲われるガルデローベへと駆けつける男女の姿が、そこにあった。
「くそっ、俺たちの苦労が水の泡じゃねぇか!!」
白衣を纏い、特大のメスを握った男、パトスが叫ぶ。その近くで警察が近隣住民の避難を誘導していた。
「全く、厄介なことになったね。まさかガルデローベを直接襲うなんて……」
「でも、俺達は俺達でやれることをするなぁ~ん!」
警察署の所長であるクルーエと相棒で警部補のギーエルは頷きあって人々を誘導する。それにパトスがにっ、と笑った。
「シュバルツに関しては俺達アスワドにも責任がある。ガルデローベばかりを批難しないでくれよ?」
「わかっているよ、ドクター・パトス。それにしても……ディート殿下の他にも咲乱殿下にウィズム陛下もいるんでしょ?」
クルーエは小さくため息をつき、煙の上がるガルデローベを見つめる。
「……なんだが、めちゃくちゃいやな予感なぁ~ん」
ギーエルは一人呟き、その煙をにらみつけていた。

(続く)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
年明けちまったよー(涙)
てなわけで今月水曜もがんばって連載します。今月こそは終わらせますっ!!
あとスレイブにあたるもの。機械っていってたけど鬼械とさせてもらいます。

ちなみにシュバルツとアスワドを分けているのは趣味です。
アスワド:ガルデローベや各国とも和解している。
シュバルツ:テロ集団
この二つはもち敵対しており、一般市民を巻き込まないようにどんぱちしてます。今回のラストでも出たように影ではシュバルツの連中とも戦ってるのよ。まぁ、編み目をぬけてガルデローベが襲撃されたって思って。あと、ナノマシンは解析できなくて、それを含む一部の古代科学技術(舞―乙HIMEの黒科学にあたる)はガルデローベでのみ研究されているって考えてね(大いなるご都合で:汗)。そうだったんだけど情報の一部が漏れて、ディートが「対オトメ兵器」として人体実験をされていたわけです。
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-07 17:34 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

設定が (ディート、ばれ・・・・)


 舞闘大会は盛り上がりを見せ、いよいよ決勝戦となった。そこに立つのはフユノとエンゲットである。
「ふむ……。出場したパール全員がやられるなんてね」
ユイエが呟いたとおりで準決勝まで残ったパールもこの二人に倒されたのである。傍らの陸とディートはステージを見つめていた。
「でも、それだけあの二人が舞闘に関しては優れている、ということだね」
陸はため息混じりに呟く。と、いうのもステージ上の二人はきらきらと瞳を輝かせているからである。それは獲物を前にした狼にもなんとなく見え、オトメらしくない、と少し苦笑する。
「ガルデローベは確かに競い合う場ではあるけど……やはり、戦う姿も競い合う姿も華麗じゃないと」
「競い合う場?」
ディートが首をかしげる。ユイエと陸は静かに頷いた。
「ああ、そうさ。ディート、この学校には入学試験があるのは知っているよな?一体何人ぐらい毎年応募すると思う?」
ユイエの問いに、ディートは目をぱちくりさせる。オトメが人気の職業であることは知っていたが、毎年の入学志願者数までは知らなかった。黙って首を傾げていると彼女の口が開く。
「毎年500人から600人ぐらいだ。そこから筆記・実技・面接・舞闘と四種類の試験を受けて50人がやっと入学できる」
「そこから進級できるのは大体25人から20人。そして……最終的にオトメになれるのはほんの一握りなんだ」
陸が言葉をつなげ、そっと瞳を細める。
「だから、競い合う場でもあるんだよ」
と、その時…建物が大きく振動した。それも立て続けに何度も……。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
5:襲撃!?

「……!」
振動に気がついたフィクロルクは瞬時にマテリアライズし、周囲を警戒する。スロウスもまた二人の客人を守ろうと身構える。
「これは一体…何だ?!」
咲乱が怪訝そうな顔をしていると、ウィズムがステージ上を見ていた。手の中のGEMから真っ白い光が僅かに毀れている。
「あの子たちのどっちかが、僕のオトメなのら!今すぐ会いに行くのら!!」
「まってください、陛下。今は危険すぎます。とりあえず避難を」
スロウスが止め、咲乱もまた頷いて彼女へついていく。舞闘場ではオトメたちが振動を堪え、陸とユイエはディートを庇っていた。
「くそっ、何者かが攻撃を喰らわせたようだな。
 トリアスに告ぐ。今すぐ大会を中止させろ。そして全生徒で調査に当たれ!わかり次第捕獲なりなんなりしろ!上手くクリアしたものにはオトメハートなり刑罰なしなりなんでもやるぞ!」
スロウスは通信をいれ、二人を案内しつつそういった。

「まってましたっ!」
フユノがロッドを手にステージを降りる。エンゲットもまたそれに続き、陸とユイエもローブを展開していた。
「なんかすっごくノリノリだね、フユノちゃん」
その輝きようにディートが苦笑していると陸が頷く。
「彼女の事です。多分宿題未提出でもおこられないようにしてもらおうとか思っているんでしょう」
「それにしても、一体何者だろうな…ガルデローベに攻撃だなんて阿呆な真似を」
ユイエが真剣に考えている側で、エンゲットがふとディートを見る。確かシュヴァルツがディートの命を狙っていた。となると
「ディートちゃん狙いじゃない?」
「そのとーりっ!!」
不意に、声がした。そして、次の瞬間……、二人のシュヴァルツが姿を現した。エンゲットとフユノとディートには見覚えがあった。
「「「あ、やられ要因」」」
「その呼び方は不本意ですわ」
赤い衣服の女性、ジェムフラウが黒いローブ姿のハクビを伴って現れる。ハクビはにっ、と笑いかける。
「他の連中はうまく陽動に引っかかって別方向へ散ってくれた。戻ってくるまで時間がかかる」
「見習いオトメだけで勝てると思わないことですわ」
ジェムフラウがそういうなり、1人の男が姿を現した。白い髪が特徴的な、痩せた青年だ。盲目なのか、瞳を閉ざしている。そしてその人間に、ディートの表情がこわばった。
「はじめまして、オトメの見習いさんたち。そして、お久し振りですね、ディート殿下」
「……博士……」
「えっ?」
ディートの声が震える。周りのオトメたちにも動揺が走った。ディートが彼を知っていることが、微妙な空気を生んでいた。
「表向き、病気だった殿下は我々がお預かりしていたんですよね。そして軍資金をこっそり国王陛下からいただいていまして…我々はここまでのことをする事ができたのですよ」
「出鱈目いうんじゃねぇ!」
ユイエがエレキベースを構える。パールオトメの武器…マテリアルは本人の意思によって変化する。彼女の場合は特殊で、エレキベースがマテリアルなのだ。彼女は身構えると後ろのコーラル三人とディートに目配せし、出ろ、という。ディートが何かを言おうとするも、二人は素早くそこを離れた。
「あっ、待て!!」
ハクビそれをみつけ、四人を追いかけようとするもユイエは前をどかない。ピックを手にシュヴァルツの三人を睨み付ける。
「俺が相手だ、シュヴァルツ!いくぜっ!!美力開放……『電子低音偏執疾患(テクノベースパラノイア)』!!」
周囲を、深い低音が響き渡る。舞闘場が振るえ、重力が三人に襲い掛かる。が、彼らもオトメ対策をしているのか、例の機械を召還していた。今回は1人一台なのか、ハクビは虎、ジェムフラウは鷹、博士と呼ばれた男は狼を模したものだ。それでも響き渡る低音が、音波が、その3体の動きを奪う。
「くっ、噂には聞いていましたが……。しかし、貴女1人で3体も相手にできないのです!」
狼型の機械からノイズが放たれる。音波同士がぶつかり、その振動でマテリアルが振るえた。それでもユイエはしっかりとふんばった。ベースでメロディを奏でながら、敵の動きを奪い、少しでも時間を稼ぎたかった。

 誰一人息を切らせることなく、四人は走っていく。どうやら他にもシュヴァルツの機械はいたらしく、あちこちで戦闘がおこっていた。パールとコーラルで協力し、それでも漸く1体倒せるぐらいで、エンゲットとフユノ、陸はそれからもディートを庇っていた。
「……お前、まさか…シュヴァルツの施設から逃げ出したのか…」
フユノの言葉に、ディートは黙って頷いた。
「うん。僕、本当はねオトメ対策としての研究対象だったの。だから、僕……本当は病気なんかじゃなかったんだ」
「「オトメ対策としての研究対象?」」
エンゲットと陸は声を合わせて目を丸くする。オトメをよく思わない人間は確かにいる。が、そのオトメ対策としてディートが実験体になっていたとは、どういうことだろうか?
「オトメって、『男の人が持つ特定の酵素』っていうのが体の中に入ったらナノマシンが力を失うの。それは、みんなしってるよね?」
ディートは首を傾げつつそういう。その『男の人が持つ特定の酵素』が何なのか知らないらしい。少年の言葉を、三人は静かに聞きながら走った。
「つまりはね……」
ディートがそこから先を言おうとした時、大きな地震がもう一度おこる。そして、思わずこけそうになるのを、ふわり、とスロウスが支えた。
「が、学園長!あれ?そこの二人は??」
エンゲットが問うとおり、彼女の後ろには若い男性が二人いる。スロウスはばつが悪そうな顔になる。その二人は非常事態にも動じず、笑顔を浮かべた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急展開なのは、まぁ、大晦日までに決着がつくか否かであります。
契約シーンにまで漕ぎ着けられるかが不安。とりあえず石があるんだから、やらないとおもしろくないでしょ!!やった意味ないよ!?

―あれ? ディートの怪力見せる前に正体が(涙)。

(2009年 1月 7日 補足)
すみません、陸がぬけていました。と、いうわけで一部修正。
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-18 21:34 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

・・・・・・・・なーっ?! (フユノ、元ネタは多分・・・)


 ガルベローデは乙女の園。普段は男子禁制のある意味『秘密の花園』ともいえる
場所だ。しかし、その日は違っていた。
「各国の首相や国王も認めているらしいな、グラウゼル・ガルサの風習は」
「それだけ、伝説が怖いらしい。まぁ、最初の国王が『竜乙女』と呼ばれるほどの
 オトメを連れていただけあってね」
フィクロルクとスロウスは笑い合って扉を開ける。と、そこにはグラウゼル・ガル
サ群国の若き国王ウィズムとヤマト連合国の皇太子咲乱がいた。
「丁度いい時においでくださいましたね。
 ヴィントの皇太子であるディート様の歓迎を祝い舞闘大会をすることになったの
 ですよ」
スロウスの言葉に、ウィズムは小さく微笑む。
「丁度いいのら!渡りに船なのら~♪
 戦う姿を見れば、どの子が僕のオトメになるのか石が見つけてくれるのら!」
「話によればディート姫って病気から回復し、ここに着たんだよな。
 両親の元にいきたいだろうに……」
その言葉に、フィクロルクがため息を吐く。
「んー、事情って奴があってね。
 本当は俺様だってそうしたいさ。でも今はだめなんだ……」
「事情、のらか」
ウィズムはふむ、と頷きつつ……何か考えるような目で二人のオトメを見た。手の
中で例のGEMを握り締め、反応を見たが、二人は違うのか、何もおこらない。
「…お二人の事は伏せさせていただきますが、特等席でごゆるりと
 お楽しみください」
スロウスはそういい、二人をソファへと案内する。既にフィクロルクがおいしそうな
ケーキを用意していた。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
4:舞闘大会っ!

 舞闘場に、いつも以上の活気が溢れていた。と、いうのもディート姫歓迎の舞踏大
会が行われることになったからである。
「これは模擬戦闘だからね。
 本当は国と主君の命を懸けたシビアなものだ。色々な戦いで、色々なオトメが散っ
 た事実は忘れてはいけない」
陸に言われ、ディートが小さく頷く。その事は前にも聞いた事がある。誰から教わった
かは忘れてしまったけれど……。
「でも、フユノちゃんたちの舞が見れるのは楽しみなんだよぉ」
「そうだね。あの二人は特に凄いから。おいらも興味深いんだ」
陸はどこかわくわくとした笑顔でいい、顔をほころばせる。ディートを挟んで右側には
パールNo1のユイエ・シロトクロがいる。彼女はクールな風貌が印象的なトリアスの
1人。唯一白い制服をまとう彼女は少し照れくさそうにしている。
「あの二人がでるのはまぁ、わかるさ。ミィニャも実行委員として働いている。
 けど、何故あんたは出なかったんだい?」
ユイエに問われ、陸が苦笑する。
「実は……」
ごにょごにょと耳打ちし、それに納得したのかユイエは「タイミングが悪いね」と言って
励ました。その意味がわからなかったディートだが、それよりも素敵な舞のほうがいい
らしい。
「あっ、エンゲットさんだよぉ!」
ディートの声に二人も顔を上げる。と、コーラルローブを纏い四本の三つ編みを揺らし
たエンゲットが声援に答えていた。相手はどうやら先輩であるパールオトメのようだ。
「パール相手か。飛行能力の有無がどうでるかだね」
「ほえ」
ユイエがぽつりつぶやき、ディートが相槌を打つ。そうこうしている間にもミニ真祖様
人形が舞闘開始の合図をしていた。

「へぇ……」
咲乱は舞闘場で舞う二人のオトメを見つめていた。いや、攻めに入るコーラルオトメ
に。四本の三つ編みを揺らした少女は虚空から繰り出された一撃をロッドでなぎ払い、
そのまま流れるように拳を振るう。それが相手を沈黙させ、勝利を収めたようだ。
「エンゲットの軽やかさは相変わらずだな」
スロウスはにこやかにそういいながら会場を見る。彼女は勝敗を記録しつつ会場に目
をやったまま小さく呟く。
「去年・今年と豊作だよ。いい乙女の雛たちが集まっている」
「みんな、生き生きしているのら」
その呟きに反応したのか、ウィズムは相槌をうち、楽しそうにオトメたちの舞を見つめ
ていた。が、咲乱は1人冷静な目でそれを見つめていた。
「戦争となれば全てを終わらせるために舞闘が行われる。
 そして、負けたオトメは主とともに死ぬんだろ?……嫌だな、そういうの」
険しい表情のまま、彼は僅かに唇をかみ締める。
「それでも、オトメは必要とされている。
 かりそめの平和のためにも……。そして、俺はそのオトメと契約を結ぶ
 立場…か」
そんな言葉に、スロウスが苦笑する。
「気持ちはありがたいね」

 一方その頃。ガルデローベを見つめる怪しい影がそこにはあった。
「うぅ…・・・姉御ぉ、ディート取り逃がしたって拙いっすよね」
「しかし、やるしかありませんわ!」
先日、ディートを襲ったシュヴァルツの二人組……ハクビとジェムフラウは高台から
ガルデローベを監視していた。しかし、今回は二人だけではなかった。
「オトメのナノマシーンを研究し、改造したものを誘拐した王子に施した。
 洗脳は失敗ばかりだけれども…今度こそ洗脳してヴィントを思うがままにせねば」
瞳を閉ざした、白い髪の男が呟く。彼は何かを操作しつつ頷きながら歩み寄る。
「ハクビ、ジェラ。ディートさまは見えたか?」
「ラジェルシード様にご報告します。
 現在殿下は舞闘大会に夢中になっています。
 潜入するには丁度いいかと」
ハクビが報告し、ラジェルシードと呼ばれた男はそうか、と一つ頷く。そして、小さく
呟いた。
「姫ではなく王子と知ったら……オトメたちはどう出るかな?」

(つづく)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とりあえず、やってみたよ。
…大晦日がエンドだ!
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-10 20:03 | 閑人閑話図書館

いちおう続く、物語 (咲乱とウィズム、でくわしたー)


「しっかし……なぁ」
漆黒のポニーテイルを揺らしながら、とある学校から出る青年が1人。彼は小さくため息をつくとなにげなくある店へと足を運ぶ。ガルデローベのグッズが売ってある店だ。
「土産だからってなにもオトメたちのブロマイドを頼まなくてもいいじゃんか、あいつら」
そういいながらも色々な商品をみていると、見覚えのある影がそばを通った。墨色の三つ編みを揺らした、小柄な少女らしき人影。
「ウィズム……さま?」
「その声は咲乱くんなのら。久しぶりなのら!」
ウィズムと呼ばれた少女…のような少年は小さく微笑むと駆け寄る。こうしてみると咲乱と呼ばれた少年のほうが年上に見えるが、実はウィズムが4つも年上である。彼は小声で耳打ちした。
「実は三日前に国王になることが正式に決まったのら。でもその為には僕のオトメを自分で任命してからなのら」
「……ガルサの伝統っすね。石にオトメを選ばせるって…」
「そうなのら。この『流水の透輝石』が選んだ相手が、僕のオトメなのら」
そういうと、ウィズムは小さく顔をほころばせた。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
3:元気がない時は

ガルデローベに来て早3日。ディートはコーラルの生徒たちとともに勉強していた。……が。
(うわぁ、むつかしいことわからないよ~!)
教科書に目を通しつつ、ディートは眉をひそめる。ある程度のことは知っているものの、それ以上のことがそれには書かれていたからだ。それをフユノやエンゲットはちゃんとこなしているのである。
「宿題を忘れたら真祖さまから厳しいおしおきが待っているけど、立派なオトメになるためだ。がんばらないと」
そういっていたのはコーラルNo1の月華 陸。彼女は小さく微笑みかける。主にディートのお世話をするのはフユノとエンゲットの役目ではあるが、陸はコーラルのトップとして時々ディートの面倒を見る。
「ふぅん、オトメになるって厳しいんだねぇ」
「でも、そうして鍛え上げられた逸材が国の守り人になるんだぜ?」
フユノが後ろから声をかけてきた。今は丁度お昼休み。食事のあとでディートたちはテラスで次の授業の予習をしていたのである。
「フユノちゃんはよく宿題を忘れるよね?」
「あ、あれは…トレーニングやっててつい、だよ!!」
「相変わらずなんだな、フユノ。でも、真祖さまもあきれるよ?」
そういわれ、フユノは苦々しい顔になる。ディートは彼女たちの会話を聞きつつ、胸元に手を置いた。僅かに鎖が見えたのか、陸が口を開く。
「ところでディート様。その首から提げているものは一体?」
「これ?……僕のお守りだよぉ」
そういい、ディートは懐からペンダントを取り出す。それは美しいオーブだった。青いそのオーブを見つめ、小さな声でエンゲットが呟く。
「こ、これは……『蒼天の青玉』?!」
「……僕ねぇ、ずっとこれをもっていたの。父さんと母さんがね、大切にしなさいって渡してくれたんだよ」
ディートはそういってにっこりと笑う。が、直ぐに表情を曇らせた。
「でもね、普段はみせちゃいけないの。悪い人に渡ったら大変だから。だから、僕、ずっと隠していたんだけど……」
そういって懐に戻すディート。現在国王は病に倒れ、実質王妃と国王の右腕である宰相ががんばって国を治めており、現在オトメはいない。本当は早く両親に会いたいものの、暫くの間は会えない、といわれディートはもの寂しい気分になっていた。それを知ってか知らずか、陸をふくめた3人はよくディートのそばにいてくれる。
(ディート様が生まれてまもなくヴィントのオトメは引退し、それ以降いない。殿下はヴィントの世継ぎだから、国王夫妻が託したのか。それなら納得できる。しかし……)
陸にはなにか腑に落ちない部分があり、少し考える。しかし何もわからいので考察をやめた。そして食後の紅茶を入れていると……白い手がおいしそうなクッキーを持ってきた。
「! ミィニャお姉さまではありませんか」
「みんなにおやつです。先ほどの実習で作りすぎたから、おすそ分けです♪」
そういって現れたのはパールNo2(トリアス)のミィニャ・ベルトゥリー。彼女は面倒見のいいお姉さまとしてみんなに慕われている。ちなみに、エンゲットは彼女のお世話係だったりした。
「はじめまして、ディートさま。僕はミィニャ・ベルトゥリーと申します。よろしくです」
「よろしくだよぉ。僕はディートといいます」
礼儀正しく挨拶するミィニャに、ディートはニコッ、と微笑みながら暖かそうな人だなぁ、と思った。

「ミィニャお姉さま、ディートさま…少し元気がないようなです」
しばらくして陸はミィニャに相談を持ちかけた。エンゲットとフユノがディートを励まそうとしているが、いまいち効果がないことも伝え、ミィニャは小さく頷く。
「恐らく、ヴィントに戻ったのにご両親に会えないから寂しいんです。
 どうにかして、元気になっていただきたいですねぇ。ディートさまの好きなもの
 でも作って様子を見るです」
そういったとき、陸は少しだけ「あ、」と小さな声を漏らす。
『そういえば、シュヴァルツに襲われたんだけどよ。
 そのとき俺たちの戦いを見ててディートはすっごく喜んでたよ!
 だから舞闘の授業とかみせたらよろこぶんじゃねぇかなーって俺は思うけど』
フユノの言葉をその時は窘めた。が、今思えば……。
「ミィニャお姉さま。いいことを思いつきました。
 ディートさまの歓迎もかねて、舞闘大会を開いてはどうでしょう?」
その言葉に、ミィニャは小さく頷く。
「では、早速学園長とトリアスのみんなにかけあってみるですっ!!」

こうして、ディート様歓迎記念舞闘大会が、開かれることになった。

(続く)
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-03 23:28 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)

とりあえず、マンガ版第一話と比較しないで(汗:ディート、ついにガルデローベへ!?)


 なにやら騒がしい。それに気づいた少女は素早く支払うとその騒動の場所へと赴いた。転がるバスとパトカー、剣呑な空気。そして…コーラルオトメらしく少女と守られている少女。シュヴァルツらしき二人組はどうやら、白い髪の少女を狙っているらしい。そして、警察官らしき二人も少女たちを守ろうとしている。
(……あの子は…一体誰なのら?そしてシュヴァルツの狙いはあの子なのら。一体何が…)
そう思っていると、少女が持っていたGEMが僅かに反応した。ふんわりと輝くそれを懐へ戻し、彼女は騒動を物陰から見つめていた。

 風が吹く。エンゲットたちが顔を上げると、そこには1人の女性がいた。小柄だが中々のないスバディでしかもどこか豪胆そうな雰囲気も漂う。彼女は白衣を棚引かせるとふっ、と不敵に微笑んだ。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
2:マテリアライズ!

「俺様はフィクロルク・シルバー・グロウ。『黒焔の金緑石』って名が今は通ってるが…てめぇらもそれぐらい知っているだろう?」
「って保健医じゃんかよ!?」
眼鏡を正しながら言うロルクに、フユノがあからさまにいやな顔をする。が、それを見逃す彼女ではない。
「フユノ、お前帰宅したら校庭100周な」
「職権乱用!!」
「まあまあ落ち着いて……」
指差しで言われたことにフユノが怒り、エンゲットが諌める。シュヴァルツの二人はその間にも砲撃をロルクへと合わせていた。
「くそっ、マイスターかよ!」
「ここで討ち取ればいいのですわっ!」
と、機械を動かし…砲口をロルクへと向ける。が、誰もが緊張しなかった。ただ、ディートだけがはらはらとその様子を見ている。
「あの人はマイスターオトメだから、大丈夫だよ。安心して」
「そうだなぁ~ん。クルーエのいうとおりだなぁ~ん」
二人の警察官に言われても、ディートはおろおろするばかり。しかし、ロルクは微笑んだ。彼女はそっ、と左耳に二本の指を添え、何かを唱える。
「くっ、容赦いりませんことよ、ハクビ!」
「おうっ、派手にいくぜーっ!!」
ジェムフラウの言葉にハクビがスイッチを押し、砲撃が炸裂!轟音と共に煙が立ちこめ、建物が倒壊する。
「ほ、保健医さーんっ!!」
ディートが叫んだ途端
「っ、派手にやってくれたじゃねぇか」
とロルクが無傷で姿を現した。黒い短めのパンツからすらりとした足が伸び、その手には蛇腹剣が握られている。ローブを展開した彼女はその場にすたっ、と降りコーラルコンビに目を向ける。
「ローブ使用を許可してやる。展開しやがれ!!」
「応ッ!」
その言葉に、フユノが勢いのある返事を返す。エンゲットと顔を見合わせ頷いているとロルクがそれぞれのピアスにそっ、と唇を寄せた。
―これが、承認の儀式。

「「マテリアライズッ!!」」

瞬間、眩い光が二人を包む。そして、音もなく紅のローブに身を包んだ影が姿を現す。
「っしゃあっ!!我慢していた分暴れるぜ!!」
「いくよっ!!」
フユノとエンゲットがそれぞれロッドを握り締める。そして素早く機械へと詰め寄る。
「見習い程度に負けなくってよ!」
ジェムフラウの叫びに、フユノが気合と共に思いっきりロッドを振り上げる。派手な音を立ててへこむ装甲。同時にエンゲットが後ろからロッドを叩きつけ、ロルクが重ねるように一撃を見舞う。瞬く間に砲台がばらばらになり、
「! 姐さん、まずいっすよ!うごかねぇ!!」
反撃できぬまま攻撃手段を奪われた機械に青ざめるハクビ。ジェムフラウはぐぅ、と呻く。
「てめぇら、纏めて飛ばしてやるぜぇ?クークックックッ!」
そんな笑いと共にロルクが眼鏡を光らせる。そして蛇腹剣に力をため、そのまま一閃。
―美力発動 エナジーブラストッ!
バリバリバリバリバリッ!!
「「や、嫌な感じぃ~~っ!!」」
轟音がとどろき、淡い紫を帯びた光が機械を破壊する。その勢いで、シュヴァルツの二人組がぶっとんでいった。

「っと。署長と警部補さん。手ぇ煩わせてすまなかった」
「いえ。でも、オトメちゃんたちもこの子も無事で何よりだよ」
ロルクはそういい、署長と呼んだ女性に頭を下げる。ディートは初めて見たオトメの戦いに目を輝かせ、若干興奮ぎみである。
「凄いっ!すっごーいっ!!オトメってすっごいんだねぇ!!」
「強すぎる力だから、考えなきゃいけないんだよ」
そういいながら、署長はディートの頭をなでる。警部補はふふ、と小さく笑うとどうにか転がったパトカーを起こし、調子を見ていた。
「うん。動くなぁ~ん。とりあえず、俺たちは任務に戻るなぁ~ん。
 クルーエ、さっさか乗るなぁ~ん」
そういわれ、署長はパトカーに乗り込む。過ぎ去るパトカーを見送った4人は一息つくと顔を見合わせる。
「で……。
 今回のことはシュヴァルツを予測してなかった俺にも不備があるから、な。
 んでディート様にも怪我はない。ちゃんと守れたし、お咎めはないだろうよ」
ロルクはそういい、若干しゅんとなるコーラルの二人に笑いかける。
「けどよ、俺……なーんかやきもきしたな」
「仕方ないよ。承認もなしに展開できないんだから」
そんな事を言い合うフユノとエンゲットをディートがまあまあ、と嗜める。
「でも、僕は無傷だから結果オーライなんだよぉ。だから、元気だして」
「そーそー。そんじゃま、戻ろうぜ?……学園によ」
彼女の言葉に、一同が頷いた。

 暫くして、一同はガルデローベへとやってきた。ディートは暫くの間ここで過ごすことになる。そう思うと少し緊張した。
(男の子ってばれたら、追い出されちゃうんだよね。そうなったら、僕はどこで暮らせばいいんだろ?やっぱりアスワドに戻るしかないのかなぁ)
そんな少年の内心を知ってか知らずか、エンゲットはにこっ、と微笑みかける。
「大丈夫だよ、ディートちゃん。あたしちゃんたちとがんばろうね?」
「うん」
小さく頷いていると、ぽん、とフユノが肩を叩いて笑いかける。頼もしい笑顔に、少しだけ不安が和らぐディートだった。

(続く)
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-26 21:55 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)