ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:冒険者の宿【静寂の鏡亭】( 3 )

久々の更新でこれはすみません (クズハ、ぴょっこり)

冒険者の宿【静寂の鏡亭】:前哨の前哨【急】
パーティ結成?(前編)

―聖暦1373年・8月初旬

「父さん、私……冒険者を休業しようと思うの」
「何故にまた」
爽やかな朝、朝食準備をしていたシオンたちはそんな会話を耳にした。有能なアカネが冒険者を休業する。そうなると、冒険者はラシュ・ルーという聖闇神官以外いなくなる。父親であるカンバイは表情を曇らせる。
「……それは宿としてはものすごーく拙いと思うんだ。拙いと思うんだ。大切だから2度言ったうえでもう一度考え直さないか、アカネ」
「うーん、実を言うとね…お医者様に足の古傷みせたらちょっと冒険とかやめた方がいいって言われたのよ。それに……」
アカネはそういい、シオンを見る。シオンはちょっとだけきょとん、とした顔をした。
「シオンを冒険者にした方が、いろんな人間の姿を見せる事が出来るわ。父さん、どうかしら?」
にこにことそういい、シオンは興味深く彼女を見返した。元々冒険者にちょっと憧れを見せるようになってきた節はユズハたちも感じている。しかしカンバイはちょっと考える。
「確かにそれもそうだが……生半可な決意じゃ野たれ死ぬ可能性があるしな。それにシオンは出自が特殊すぎる。もし聖北とかに正体がばれたらまずい事になりそうだ。色々心配だな…」
「俺は…冒険者…を、やって…みたい…」
シオンが口を開いた。彼は少し緊張しつつもカンバイに歩いて行く。ユズハとヒイロはその様子を見、顔を見合わせた。この2人も実を言うとちょっとやってみたいなぁ、とは思っていた。が、なかなか言い出せずにいたのだ。
「冒険者…確かに親戚のリー兄さんが別宿でやってるわ。楽しそうではあるけど…」
「私も…前々から興味はあったのですが……」
2人が考えていると……、二階から黒髪の男がやってきた。ラシュは聖北の聖書をテーブルに置くとさりげなくカンバイの肩をたたいた。
「ならさ、あの3人にお使い程度の依頼を受けさせてウォーミングアップさせたらどうだい?で、適性判断して決めれば。それにパーティを組むには人数があとちょっと必要だし、集めさせるのも手だ」
あまり笑わないラシュがにこっ、と笑みを零しカンバイもうーん、と唸る。確かにそうやって判断した方が、長生きさせられるかもしれない。それにシオンが「人間らしくなる」にはいろんな人間や環境に触れさせた方が、いいかもしれない……。
「そうだな、それもいいかもしれないな……」

 「お、ここだ!ここ、ここ!!」
朝日を受け、ミントグリーンの髪がきらきら光る。小柄なエルフの少年は意気揚々と【静寂の鏡亭】へとやってきた。数日前【白銀の剣亭】で雨宿りしていたクズハは希望を胸に扉をたたく。
「おはよう! 宿のマスターいるかなぁ!」
「ああ、はいはい……」
直ぐに戸が開いた。すると、どことなく風格のあるハーフエルフであろう男性が笑っている。
「ようこそ【静寂の鏡亭】へ。何かご依頼ですか?」
「ここにヒイロという学者はいる?俺、お願いがあってきたんだ!」
クズハが元気いっぱいに言う。その声に反応したのか、後ろから赤いローブをまとった若者が宿の主人を押しのけてやってくる。
「ユズハ、貴方もここへきていたのですか?」
「ヒイロ!俺、親父や王様から許可をもらってきたんだ!冒険者になって見聞を広めるって!」
そういってヒイロに飛びつくクズハ。面食らったヒイロではあったが久々に会った親友に彼も顔を綻ばせる。
「親父さん、この子を置いてくれませんか?冒険者志願みたいですし」
「これまたタイミングがいいなぁ」
その言葉に何処となく真面目に目を丸くする。が、よく考えてみれば渡りに船である。親父と呼ばれたハーフエルフ、カンバイはにっこり笑った。
「私は宿の主でカンバイだ。君はヒイロの同郷者みたいだし……彼らと組んでみるかい?」
「いいの?だったら俺も仲間になるっ!!」
クズハが目を輝かせて頷き、今まで様子を見ていたユズハも口元を綻ばせた。シオンは不思議そうに突然現れたエルフの子を見ている。身を屈め、じっ、と見つめているとクズハもきょとん、とシオンを見つめ……小さく息をのむ。まるで精巧に作られた人形の様だ。
「シオン、という。よろしく」
「う、うん。よろしく!」
シオンが頭を下げる。クズハもまた少し気圧されたようだったが、直ぐに笑顔になった。傍にいたユズハにも笑顔を向ける。
「私はユズハというわ。よろしくね。貴方は何ができるのかしら?私とヒイロは魔法、シオンは剣術ができるけれど」
「俺は盗賊だから偵察とか、罠探しとかが出来るよ。となると……あと神官さんがいるとバランスがいいよねぇ」
クズハが少し考えているとシオンとカンバイの視線が奥の席で本を読んでいたラシュに集まる。が、彼は首を横に振った。
「俺はやめておいた方がいいぞ。迷惑がかかる」
「むぅ……お前が言わんとしている事は判るが……」
カンバイが表情を曇らせるが、ラシュは真面目な顔で言う。
「俺と組むと、絶対後悔する事になる。変わりと言っちゃなんだが知り合いから冒険者パーティを紹介してくれって頼まれている。そいつ呼んでくるから」
そう言って彼は席を立ち、裏口から外に出て言った。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ごめんなさい、1つにまとめ切れなかった。
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by jin-109-mineyuki | 2010-03-15 20:45 | 冒険者の宿【静寂の鏡亭】 | Comments(0)

とりあえず、シオンは教育中 (シオン、文字練習中)


冒険者の宿【静寂の鏡亭】:前哨の前哨【破】
ある雨の日の……。

―聖歴1373年・8月初旬。

 その日は、午後から激しい雨に見舞われた。冒険者の宿【静寂の鏡亭】も閑古鳥が鳴いている。奥のテーブルでは赤いローブを纏った若い男が、同年齢ぐらいだろう紫色の髪の若者になにやら教えているようだった。
「だいぶ、文字が書けるようになりましたね、シオン」
「……そう、か?」
どうやら、読み書きを教えているようだ。シオンと呼ばれた青年は僅かに首をかしげ、青年―名をヒイロと言った-は僅かに微笑んだ。羊皮紙には拙い字で「シオン・アーシュレイ」と書かれている。
「ほら、1年前と比べると断然違います」
そう言って、彼は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。そこには全く読めない…お世辞にも文字とは呼べないものが書かれていた。シオンはそれと今書いた文字を見比べ、少しだけ笑った。
「ヒイロの教え方が上手いからよ」
そう言って現れたのは、金髪の女性、ユズハだった。彼女は紅茶を入れると2人の前に置いた。そして自分もカウンターのいすに腰掛け、優雅に口に運ぶ。
「ユズハ。私は…貴女が教えた方がシオンもうれしいと思いますよ?」
ヒイロが苦笑交じりにそういう。というのも、ユズハに拾われてから、シオンはユズハに懐いていた。宿にきて暫くは母に甘える幼子のような感じでユズハについて回っていたのだから。それも2年前の話だが。その事を思い出したのか、シオンは僅かに頬を赤くし、茶菓子を持ってくる、とたどたどしく言って、カウンターへと消えた。その様子に苦笑しつつ、ユズハは優しい顔になる。
「表情が少しでも豊かになってきたわ。宿にきたばかりのころは殆ど表情がなかったもの」
「そうなんですか?」
約1年半前にこの宿へやってきたヒイロは、その時の事を知らない。ユズハは小さく頷き、その時の事を話そうとした。が……がしゃん、という陶器の割れる音に反応する。
「…珍しいですね。シオンがお皿を割るなんて」
ヒイロはきょとん、としつつユズハとともにカウンターの奥にある厨房へ向かった。

 同時刻。【白銀の剣亭】のあるテーブル。そこには1人本を読む少女の姿があった。年の頃は12か13。良く見ると耳が笹の葉のようにとがっている。そこからエルフである、というのがわかる。名はルアムといった。彼女は真剣に一冊の本を読んでいたので、僅かにドアが開いたのに気付かなかった。
「おや、どうしたんだい?」
カウンターにいた、20代だろうマスターが問いかける。と、入ってきた存在が口を開いた。ルアムが僅かにその方向へと目をやると……同種族の少年がずぶぬれの状態で息を整えていた。
「お兄さん、ごめん。ちょっと雨宿りさせてくれないかな?」
「ああ、いいとも。それにしても、酷い雨だなぁ」
少年とマスターの声で、ああ、雨が降っているんだな、と彼女は思った。
 ローブを纏った少年は懐から布を取り出すと顔を拭き始めた。そして見えたのは……柔らかそうな乳白色の肌と、鮮やかなミントグリーンの髪と瞳だった。そして、声は少年のものであったのに、顔は少女のそれだ。少しだけ目を丸くしていると、目が合い、少年が小さく笑った。
(珍しい髪の色……)
黙礼するとまた本を読み始め……影が下りた事に気づいた。ローブを脱いだ少年が、自分を見ていた。
「オレはクズハ。碧落の森から来たんだ。君は冒険者なの?」
その問いに、ルアムは小さく頷き、また本を読むことに集中した。クズハと名乗った少年はまた小さく笑い、前の席に座る。そして楽しそうにあたりを見渡していた。冒険者の宿が珍しいのだろう。けれど、彼女には話しかけてこなかった。読書の邪魔にならないように、気遣っているのだろう。暫くして、マスターが2人にミルクティーとクッキーを差し出したところでルアムは本を閉ざした。
「さっきはごめんね。本を読んでいるのに」
「…別に、いい」
ルアムはそういうとクッキーを進める。そして小さな声で自分も名乗り返し、クズハはそれにいい名前だね、と微笑んだ。
「その本、オレも読んだことがあるよ。全然わからなかったけど」
クズハがちらりとルアムの本を見つつ答え、ルアムはそう、と小さく相槌を打つ。
「これは魔術を研究している人には面白いけど、それ以外の人には全くと言っていいほど理解できないかもしれないね」
「全く同感。ヒイロって凄いなって思ったよ」
そういいながら、クズハはまた笑い……同時に優しい目を彼女に向け……僅かに耳を赤くした。

 その頃アレトゥーザでは1人の乙女が教会で真剣な顔をして司祭らしき男と話していた。また、リューンの片隅で、1人の少女が両親からある事を言い渡されていた。その2人が【静寂の鏡亭】で出会うのは…数日後の事だった。そして……アカネの爆弾発言も、その日に迫っていた。

(続く)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

とりあえず。
ちなみに【白銀の剣亭】及びそこに所属の冒険者、ルアムちゃんは龍使いさんのリプレイにて登場している宿と冒険者さんです。リンクに龍使いさんのブログ『集いし者達の空間』はありますので、ぜひ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-09-01 23:26 | 冒険者の宿【静寂の鏡亭】 | Comments(0)

プロローグですよ、奥さん (スズキ、何気に乱入)


冒険者の宿【静寂の鏡亭】:前哨の前哨 【序】
ある冒険者の宿の夕方。

―聖歴1373年・8月初旬。

 冒険者という職業は、ある意味努力次第だ。まぁ、どの職業もそうなのだが。夢を燃料にあれやこれやと人々の為に依頼をこなす冒険者の姿は滑稽でもあり、美しくもある。その数多の困難を乗り越えて、一掴みの冒険者だけが成功する……と、思われている。

 リューン。冒険者の宿が密集する地区が点在し、交易都市として賑わう町の、その一角。冒険者の宿の1つ【静寂の鏡亭】はその日もにぎわっていた。所属する冒険者は決して多くはない。有名な冒険者は出ているか、と言えば誰もが首をかしげる。
(いっそ下宿にしちまおうか)
なんて、宿の親父であるカンバイ・アーシュレイが思うほどだった。魔導士と学者がここを下宿代わりに使っており、その前には行き倒れの若者を拾って家族にしている。それを考えるとそんな事も考えたくなるのだった。

 カンバイ・アーシュレイ。ハーフエルフの男で、30年前には『銀の賢者』という二つ名で有名な魔導士だった。が、それも昔の話。冒険者を引退し、妻の実家である冒険者の宿【静寂の鏡亭】を継ぎ(多くの人々が軍使や研究員として欲したが丁重にお断りした)、妻との間には1人娘、アカネ・アーシュレイが生まれている。彼女はこの宿の看板冒険者だ。
(……ん?)
カンバイが顔を上げると1羽の猛禽類がエルフっぽい男と一緒にカウンターへやってきた。鷹のような、隼のような猛禽類は雌で、名はスズキ。近所にある冒険者の宿【礎の神話亭】に所属するパーティ『スズキ組』のリーダーだ。一方、カウンターの端に陣取ったのはランティス。ここからやや離れた冒険者の宿【万魔殿の休憩所】に所属する冒険者だ。
「なんだ、お前たちか。それぞれの宿で飲んだらどうなんだ?」
カンバイが苦笑しながら1羽と1人に問うとランティスがぽつりとつぶやく。
「ん。ちょっとこいつに誘われて。それにしても……この間ごっそり引退したんだって?」
「ああ。結構有名になったかなぁ、とおもったんだがな。なんでも故郷のお袋さんが死んじまったそうでな。実家を継ぐとか。それでパーティ解散して…他の連中は他の宿にいったり旅立ったり」
カンバイの言う通りで、今登録している冒険者は自分の娘であるアカネともう一人……子供に読み書きを教えつつ冒険者をしているラシュという同種の男だけであった。
「でも、最近下宿してる子がいるじゃないか。天使族の女の子で…そう、ユズハ。俺んとこのリーガルトの従姉妹ちゃん、冒険者にならないの?それにハーフエルフの学者さんも」
スズキが不思議そうに首をかしげていると、カンバイがにやり。
「まぁ、興味は持っている。あと覚悟とか人が集まれば冒険者をやるかも知れん。それに……あいつが率先して面倒を見ているあいつも…」
そう言っていると、一瞬、冷たい風が吹いた……気がした。2人の背後に、1人の若者が立っていたのである。そこまでは、ごく普通のことだ。が、ランティスは言葉を見失う。
「…………おい」
たっぷりと30秒は間を置き、漸く小さな声で呟く。彼はハッキリ言って戸惑った。性別で迷うのだ。肌は透き通るように白く、腰まである髪は夜明けの空を思わせるような淡い紫色。瞳は磨かれたアメジストがそこに2つはまっているようだ。目、耳、鼻、口、輪郭、体形。そのどれもが『完璧に作られた』ように美しい。人間の域を超えた、美しさを固めたような存在だった。彼が今までに出会ったどの女性よりも美しい。
「……? いらっ…しゃい、…ま、せ…」
不思議そうな顔をした青年(ランティスは声で判別した)は一度だけまたたきをし、軽く頭を下げた。そして、水をランティスとスズキの前に置く。
「彼はシオンよ。シオン・アーシュレイ」
スズキがいった。シオンと呼ばれた青年は真顔でカウンターへ入るとカンバイが作った料理を言われた席へ運んでいく。
「へぇ……。それにしても、人間じゃねぇみたいだ」
ランティスの言葉にカンバイの表情が僅かに険しくなり…すぐに元に戻った。が、彼とスズキはそれに気づいた。そして目を合わせこの話題を口にしまい、と誓う。
「シオン。この二人のオーダーを頼む」
「はい」
カンバイの声に、シオンは頷き、料理を置くなり1羽と1人のもとにやってきた。一つに纏められた髪がはね、天使の輪がキラリと光る。そして、思わず見とれた男がエールを零してしまった。
「あー、またか」
「シオンが来てからああなのよねぇ。男の子って知らないで告白する奴はおろか襲う奴もいるし?」
カンバイが呆れていると、赤毛の女性がため息をついて頷いた。アカネは持っていたモップで床を拭く。それに気づいたのか、シオンがカンバイを見た。
「……親父さん、エー…ルを…注が、なく……て、いい、のか?」
「俺が行く。お前が注ぐとまた零しそうだ」
「ちがいねぇな」
ランティスが笑いを堪えながら頷く。それにシオンがきょとんとしているように見え、彼とスズキは顔を見合せて小さく微笑んだ。
(まるで子供みたいだな)
そう思っていると、シオンがランティスを見つめていた。注文を取りたいらしい。ランティスは適当に頼む、と言うとシオンは頷いてそのままカンバイに伝える。と、カンバイはことん、と葡萄酒の瓶とグラスを置くのだった。スズキには菜っ葉が出される。新鮮なそれをついばんでいるとシオンがスズキの頭をなでた。
「スズキ、…彼、も冒険者……か?」
「ええ、そうよ。ここいらでは有名な先輩冒険者よ。この間依頼の帰りも助けてもらったの」
シオンの問いに鳥は答える。そしてもったいつけるように毛づくろいをし、シオンを見上げた。相変わらず、彼は人形のように表情に乏しい。が、初めて会ったときに比べれば変わるようになった。そんな事を思っているとシオンの滑らかな唇が動く。
「冒険者……か……」
その小さな呟きを、カンバイは聞き逃さなかった。

(続く)

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はい、フーレイです。
ついにスタート?した【静寂の鏡亭】リプレイ。今回はとあるメッセ仲間さんのPCであるランティスさんをゲストにシオン登場を。他のメンバーは次の前哨の前哨【破】・【急】で出しますので。

何気なくシオンの美人さんアピール。 どーでしょ?

前哨の前哨は【序】・【破】・【急】の3つですけど深い意味はないので気にしないでください。
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by jin-109-mineyuki | 2009-08-09 21:08 | 冒険者の宿【静寂の鏡亭】 | Comments(0)