ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:無限銀雨図書館( 36 )

『むげファン参加者に30のお題』より 24:目に映るものは


「………」
時限と時限の狭間。1人のセイレーンは選択のときを静かに待っていた。
(正史のままか、歴史を改変するか……。ったく、本当に陰湿な手を使ってきたな、あのデカブツは)
眼鏡をかけなおし、彼は小さく舌打ちをする。今、彼は一つ目の『門』を選ぼうとしていた。選ぶものは決まっている。仲間と共に『正史』を選択する。
「たとえ歴史を変えることになったとしても……、貴様と同じではない。
 そのことを証明してみせるッ!」
そういうなり、彼の身体は一つの『門』へと消えていった。

に映るものは』

-6月 8日 対ブックドミネーター戦

「……とうとうこの日が来ましたか」
ニルギンは眼鏡をかけなおしながら、空を見上げた。『第一作戦旅団』の作戦指令所に目を通していたものの、そろそろ時間だ。彼は小さくため息をつくと集合場所へ向かう。彼の役目は空中要塞の前を飛んで警戒することである。しっかりと役目を果たすためにも気合を入れようと髪を結いなおした。
(歴史をおもうように変えようとする、コルドのロード……。その能力から元は紋章術師か邪竜術士でしょうか?)
整えながら、ブックドミネーターについて思い出す。己は同じ時間を永遠に過ごし、高みの見物をしているのだ。
(赦せません……。人々の思いを弄ぶなんて…っ)
思い出すだけで怒りが湧き起こる。いつになく厳しい表情となったニルギンを見て、幾人かは驚いたようだが……確かに、水や窓に浮かんだ冒険者達の顔は、誰もがその瞳に鋭い何かを秘めていた。
(思いは…みんな同じなのですね)
顔を上げると、なぜか少しだけ顔が綻んだ。誰もが、あのロードを討ちたがっている。誰もが、ランドアースを、この世界を守ろうと意気込んでいる。その空気が、更にやる気をみなぎらせる。
「さあ、参りましょうか。
 私たちの手で、私たちの未来を手にするのです!」
ニルギンは叫ぶ。その瞬間、彼は姿を変えた。

髪は海の青から更に深いコバルトブルーへ
 左の瞳は眩い白銀に変わり、耳はエルフのそれと変わり
  その身体は細く引き締まり、精悍な若者の顔立ちへと変化する
  
それが、ニルギンの『ドラゴンウォリアー』としての姿。
手にした武器はいつもならばガントレットだが、今回は違う。身の丈ほどの青い棍だ。黒い、束縛衣に似たロングコートを翻し、眼鏡をかけなおした彼は音もなく風に乗った。

 戦場は、いつも血の匂いと、怒号が飛び交っていた。激しい戦いの光景は、いつまでたっても見慣れない。
(いつも……多くの仲間が傷つき、時には死者もでる)
彼は、目の前で仲間が死んだ事を覚えている。第二次ドラゴン界侵攻作戦時や神のと戦いで見たことは、時に彼を苛む。
(それでも)
ニルギンの棍が唸る。一撃でドラゴンの目を抉るとその身体へ強烈な突きを繰り出し、そこから疾風斬鉄蹴を別のドラゴンへと決める。その一つ一つの動きに、一つ一つの攻撃に魂を込めて。
(私たちは止まらない。グリモアに誓いを立てた冒険者は、決してあきらめない!)
彼はぐっ、と歯を食いしばると考察をやめた。今はただ、次の作戦へとつなぐため、この戦場を踊っていたかった。

-愛しきランドアースを護るために。

彼の目に映る冒険者達の顔は、誰もが皆『守護者』の顔だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
ども、フーレイです。24・23・22では『対ブックドミネーター』戦にまつわる話を書きます。第一弾はニルギン。途中で重傷を食らって、最後まで戦えなかったけれど、まぁ、生きていたからいいか(苦笑)。タイトルに沿っているか若干不安だけど、ニルギン視点の戦場でした。

一応、第三作戦『フリージング・タイムズ・ゲート』は第二までいましたー。
まさか第3ターンであんな事になるとは。

皆がもめたぞ、ボルテリオン

 メッセでの出来事は忘れられません。本当にブックドミネーターは惨かった!で、次の敵はどんなんだろ?個人的な話ですが、ロードって実はぎょーさんおりそう……。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-04 16:02 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

咲乱も案外苦労していたりする(導乱、普段はちゃらんぽらんだけど)


―静かな夜の帳に、ぼんやりと蝋燭に火が燈る。
ややこぢんまりとしたその部屋は、どこか神社の一角を思わせる。上座に座っている老女……というには若い女性は巫女のような着物を纏っていた。彼女の目の前では8人の男女が向かい合って座っている。大半が女性だった。

シルバーレイン プライベートテイル
『17.4』 第一閃

「水繰家、影釣家、土治家、風繰家、火釣家、日治家、木練家、雷練家全当主揃ったな」
上座の女性の声に、全員が頷く。それを確認すると彼女は静に口を開いた。
「水繰家当主、水繰 導乱殿から報告がある。心して聞くが良い」
彼女の言葉に一つ頷き、右側の最前列にいた大柄な男が一同のほうを向く。そして座ったまま顔を上げ、はっきりとした声でこう言った。
「わが愚息咲乱が、この度『能力者』として覚醒いたしました」
その言葉に、揃った男女は目を見開いた。『能力者』としての覚醒は彼らにとってもの凄く意味のあるものなのだ。
「……そんな……」
導乱と呼ばれた男の前に座っていた女性が口元を抑え、悔しげな目を向ける。しかし彼はそれを無視した。ちらりと上座の女性を見、互いに頷きあう。
「猫に変化できるところから『魔弾術士』だと思われます。今後はその力を生かして水繰家を盛り立ててくれるでしょう」
「そこで、儂は考えを改めることにした」
上座の女性の言葉に、全員が息を飲む。導乱もまた、振り返った。
「次の水繰家本家の当主は…導乱の息子…咲乱にしようと思う」
「お言葉ですが」
直ぐに口を出したのは先ほどの女性だった。彼女は僅かに導乱を睨みながら
「水繰家は本来女系の筈。ただでさえ現在男でありながら導乱殿…いや、兄上が当主を勤めているのに今度は息子ですか?私には納得がいきません」
「確かに、水繰家は魔術の観点から相性の良い女性が当主を勤めておるの。影釣 雪路殿」
雪路と呼ばれた女性は白い頬が怒りで赤く染まっていた。それが導乱にははっきりと解かる。相変わらず、兄が当主になった事を不満に思っているらしい。
「しかし、事実能力はそれだけ高いということ。ならば能力が高く尚且つ生命力・統率力に優れた者を時期当主に据えるのが定めじゃ」
上座の女性はそういうと顔を上げた。
「時期当主として水繰 咲乱を定める。次点として影釣 亜夜羽、三守として日治 縁とする。次の十六夜の時に儀式を行うゆえ、導乱殿、雪路殿、節殿は世継ぎを連れてくるようにな」
そういわれ、3人は頭を下げる。しかし、雪路は横目で導乱を睨みつけていた。

―これは、咲乱に『銀誓館学園 入学案内』が届く1年半と少し前の事である。

 咲乱はいつものように起床すると素早く身支度を整えて外にある道場へ足を運んだ。ここは日本舞踊の練習や剣道などの鍛錬で使われる他、魔術の鍛錬にも使われる。彼は毎朝ここで座戦を組んでいた。元々魔力が低いといわれているため、それを補おうと精神力を強化しているのである。足を踏み入れると、既に父親である導乱が木刀で素振りをしていた。これも日課だったりする。
「親父、おはよーさん」
いつものように声をかけると、きりがよかったのだろう。導乱は素振りをやめて額の汗を拭った。そしていつものようににっこりと笑いかける。
「おはよう、咲乱」
いつもなら、そこで止まるが、その日は違った。
「いや、若旦那」

…………?

咲乱と導乱の間に、微妙な空気が流れる。
「親父、もう一度…おはよーさん」
「おはよう、若旦那」

…………………………?

また、微妙な空気が流れた。咲乱は首をかしげるものの、導乱は輝かしい笑顔のままでぽん、と息子の肩を叩いた。
「咲乱、聞け。水繰家の時期当主はお前だ」
「ちょっと待て。今、何気なくさりげなくすげぇ事言わんかったか?!」
異常な驚きようにも動じず、導乱はそうだ、と頷く。そして木刀を肩に担ぎながら言葉を続ける。
「二代連続で男性が当主を勤めるのは初めてのことらしいけど。まぁ、がんばれ」
そう言って導乱はすたすたと道場を出ようとしたが咲乱は手を伸ばす。急にこんな事を言われても困る。第一に当主になる、など考えたことも無かった。
「ちょいまて、親父っ?!」
が、父親の手を掴もうとした瞬間世界が回り、我に返ると天井が見えていた。どうやら柔術かなにかの技を使ったらしい。武術を得意とする導乱に不得手の咲乱が敵うはずも無い。
「決まったもんは決まったんだよ。おめでとさん」
導乱はそういうとからから笑いながら道場を後にする。そして……十分に咲乱から距離をとってから、ぽつり。
「お前は、俺以上の素質があるんだよ。……悔しいがな」

 突然言われた『時期当主』という肩書きに、咲乱は微妙に落ち着かなかった。役目が怖いわけではないが、その役目を知らない上になるのは従姉妹たちだろうと思い込んでいたのでどうもすっきりしない。と、いうよりも
(女の子がいる筈なのに、なんで俺なんだ?!)
という疑問が強かった。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ども。
咲乱が学園に来る前の話です。これからニルギンたちのお題消化にはさんで連載予定。奴の過去も多少にじむんで、気が向いたら~♪

 因みに水繰家関連特有の言葉があります。水繰家の人間は本質が植物らしく、それに関わる符丁をもっています。たとえば『若木』は若者、『新芽』は赤ちゃんや幼児、『老木』はご老体というふうに。そして……『種』というのもありますが……これはいい意味で使われておりません。どんな意味か、は後日(何人かには教えておりますが)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-17 14:57 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 25:歩いていこう


希望のグリモアの近くに、ある旅団があった。
そこが、今ディートが拠点としている場所のひとつである。

『歩いてこう』

「いい天気だよぉ」
ある日。ディートは空を見上げて頷いた。特に依頼も無く、ノソリンたちもいつものようにはもはもと草を食んでいる。風も穏やかで、柔らかい。
「ちょっと散歩をしようっと」
背中の翼をパタパタさせ、少年は歩き出す。ふわふわと白い髪を靡かせて、楽しそうに。灰色の瞳をキラキラさせ、テクテクと歩き出す。目指すは、希望のグリモア。少年の足でいけば、そんなにかからないだろう。
(ドラゴンウォリアーの力があれば、確かに空を飛べる。けれど……)
ゆっくりと流れる景色を眺めながら、瞳を細める。歩くような速さで変わっていく季節を感じながら、踏みしめていく道。この道は確か、冒険者になるために踏みしめた道だ。その道だからこそ、歩こうと思った。

ギアに囚われたことがある。
その悔しさがきっかけで、冒険者になることを決めた。
確か、ザウス戦からあまり時間がたっていなかったと思う。
騒がしい中、この道を一人辿っていた。

(もうすぐ、1年が経つんだ……)
ディートの瞳が、ふっ、と細くなる。視線の先には、グリモアへの道が続いている。あの時は右も左もわからなくて、ただただ早く冒険者になりたい一身で歩いたのを覚えている。それから間も無くしてドラゴンが姿を現し、力に目覚め、ダークネスクロークのモノローグと出会い……本当にいろんなことがあった。
「本当にいろいろあったんだよぉ」
そっと呟き、少年は顔を上げる。この先もずっと、冒険者としての道を歩いていこう。そんな思いを胸に、グリモアへ向かう。一つの決意を固めるために。もっと頑張るために。みんなの笑顔の為に。

-ずっと、歩いていこう。
  冒険者としての、長い長い道を。

「それが、僕の生きる道だから……」
ディートは、小さく微笑んで歩き続いた。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き

……あれ?

何気なくしんみりしたような雰囲気だなぁ、このSS。ディートだからこそなんかおこちゃまらしいものを書きたいのにぃ~。まぁ、お題がお題だからか?当初はノソリンを連れてグリモア参りとかも考えていたのですが、なんか違うような雰囲気だったので変更しました。どっちにしろグリモアへいくのは変わらないけれどね~。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-28 15:10 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 26:なにごと?


――急に聞こえる破戒音。
誰もが振り返るほどの、大きなそれは……

『なにご?』

「これは失敗だなぁ~ん……」
もくもくと黒い煙が上がり、その中から現れたのは黒い耳と尻尾のヒトノソリン。元々白いであろう肌を煤だらけにし、けほけほと咽ている。取り出したものは丸こげとなった塊。……妙にでかいが、微妙にノソリンの形をしている。
「せっかくノソリンパンを作ろうとしたけれど……なぁ~ん」
釜の火力が悪かったのか、それとも生地か……ヒトノソリンは煤だらけとなったエプロンを見つめ、ちょっと苦笑した。身に纏っているメイド服は黒だが、若干埋もれるような色合いになっている。
「友達に食べてもらう予定だったのになぁ~ん」
ギーエルはカフェのオープン記念に配ろうと思ったパン(試作品)……の残骸を見つめ、小さくため息をついた。が、

――ごごごごごごごごごっ

なんて聞こえてきたから慌てて庭へ出る。今は、井戸掘りの真っ最中であったはず。父親であるリリシャールを初め親戚の男衆総出で井戸掘りをしてくれているのである。
「ど、どうしたなぁ~ん?!」
店を出た途端見える、明らかに湯柱っぽいもの。それにぎょっ、となっていると井戸掘りをしていた親戚(ほぼヒトノソリン)もまためっちゃくちゃ嬉しそうである。
「ギーエル、喜ぶなぁ~ん!!温泉を掘り当てたなぁ~ん!!」
上半身裸にねじり鉢巻タオル+ジーンズという井出達(しかも土まみれ)のパパ、リリシャールがにこやかにそういい、後ろを指差す。とりあえず、店を出た時点で見えているから判っているけれども、はっきり言ってとんでもないような気がした。
「すごいなぁ~ん!温泉だなぁ~ん!!」
「何でも、同盟の冒険者は温泉が好きだと聞いたなぁ~ん」
ギーエルが喜んでいると、若干筋肉質な若いヒトノソリンが肩をぽん、と叩く。
「ギーエルの旅団にも素敵な温泉ができるなぁ~ん!」
「早速温泉作りなぁ~ん!!」
別のヒトノソリンが大喜びで手を上げるものの、リリシャールに似た大柄なヒトノソリンと小柄なヒトノソリンが酒瓶を持ち上げて叫ぶ。
「その前に前祝で飲むなぁ~ん!!」
「祭りだなぁ~ん!!」
そんなこんなで、その日はずっとお酒を飲んでいたカンツバキ家であった。

……それが『カフェ・ナ・ノソリン』に温泉がある理由である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
後書き。
フーレイっす。
ギーエルの旅団『カフェ・ナ・ノソリン』はカフェなのに何故温泉があるのか、という話題が出たことがあるので、このネタに走りました。
カンツバキ家、酒盛り好きです。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-23 00:11 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 27:ちょっと待った


冒険者達は、依頼を受けて人の役に立っているわけだが、なにも酒場で出されるものだけではない。中には冒険者に直接たのむこともある。元来多少お人よしなセイレーンの少年は、その日も頼まれていた畑を耕し、届け物をし、屋敷の掃除をしていた。
「ふぅ、最近酒場の依頼をしてませんねぇ……」
そんなことを呟きつつ、窓を丁寧に拭きあげると今度は床掃除をしはじめるのだった。
この少年……実を言うと、若干無茶しやすかったりする。

『ちょっとった』

「ふぅ、最近働き詰めですねぇ」
そんなことを言いながらニルギンはお風呂に入っていた。いくら一般人に比べ体が頑丈に出来ている冒険者だとしても、やはり働きすぎは体に毒なのである。彼は小さくため息をついた。
「やはり……明日はお休みにしましょう。ここのところずっとお手伝いをしていましたし」
友達でも誘ってお茶でもしようか、それとも図書館に行って本でも読もうか……。髪を洗いつつ考えていると、微妙に頭が重くなっていく。おもわずうとうとしてしまう。
「…はっ、いけません、いけません…」
襲い掛かってきた眠気を振り切ってどうにかシャンプーを洗い流す。一緒に疲れも流れそうでとても心地よい。シトラスの香りが鼻を掠め、少しだけ体が軽くなったような気にもなる。肌を滑るお湯の感触も気持ちがいい。丁寧に流した後は丁寧にリンスを髪につけ、次にスポンジに石鹸を擦りつけで泡立たせ、体を洗う。淡い褐色の肌に、白い泡は映えるなぁ、と思っていると……脳裏にふんわり、想い人が浮かんだ。
「レイメイさん……本当に白が似合うかわいい方です…♪」
白いノソリンの耳と尻尾が愛らしい女の子だ。まぁ、一見ニルギンのほうが年上に見えそうだが彼女は立派に成人している。ふんわりとした気質を持ち、その上やさしくて愛らしい(とニルギンは思っている)。少年にとってはとっても大切な人であった。
(いつかは一緒にお風呂もいいですねぇ…。背中のながしっこ、よく兄たちとしました…)
なんて考える辺りがやはりニルギンも年頃の男の子である。
「……はっ!?」
我に返る。なんだか肌寒い。さっさと体を洗ってお湯で流すと顔を洗い、髪の毛を頭の上で一つの団子に纏めた。そしてゆっくり湯船につかる。
「と、とにかくお風呂から上がったらすぐに眠りましょう。それがいい。物凄く疲れているようですから……」
そういいながらも、ニルギンは酷い睡魔に襲われていた。お風呂に入ったことで体が弛緩し、疲れがでたのである。なんだか、沈みそうな勢いではあるが、どうにかがんばっている。
(ここで寝たら溺れる!そんな死に方はご免です!)
体を拭いて眠ればいい。ニルギンは酷い眠気をどうにか抑えて湯船からあがるとリンスを洗い流し、急いで風呂場をあとにした。体と髪をバスタオルですばやくふいて下着を身に着け、誰も廊下にいないことをいいことに道具片手にそのまま自室へと突っ走る。
(もう我慢できません!! 今日はこのまま眠ります!!)
そうとう疲れたのだろう。ニルギンはベッドに飛び込むとそのまま毛布を被って眠ってしまった。部屋で待機していたキルドレットブルーのユラヴィカもこれに驚き、すばやくベッドへと潜っていく。あとに残された、珍しく投げ出された衣服などが、呆然と転がっていた。

―翌日。ニルギンは(発熱が原因で)暴走した。

(お後がよろしいようで)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き。
タイトルが、ニルギンへと突っ込みという裏技ですが何か?フーレイです。相変わらず無茶しやすいニルギンの一面さえでればそれでよし!とりあえず、偽シナ『ニルギン、暴走する?!』のネタばらしでもあります。普段、なんか真面目に見られているようですが、……PLからすれば「若干天然入ってる」ように見えますけど……ありがたいことです。
とりあえず、こんなニルギンなので時折つっつくと楽しいかも?

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-16 21:08 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

咲乱ですよ、こいつ(咲乱、実はさみしがりや)


それは、ある満月の夜だった。
白い光が、窓から静かに零れ落ちていく。
ただなすがままにそれを浴びながら…一人の少年はベッドに横たわっていた。

シルバーレイン プライベートテイル
『Fly Me to the Moon -In Other Words-』

 平均的な子供部屋よりは1.5倍ほど広い部屋。質素なベッドに学習机。頑丈そうな本棚には科学雑誌や学校の教科書に混じって漫画も並んでいる。そして、一際目立つのは……どこか何かのゲームに出てきたような形の鉱石ラジオだった。そこから流れているのは、不思議な雰囲気がするジャズだ。少年は流れてくる曲に目を細め、一緒に歌っていた。が、しばらくして、小さく笑う。
「…『私を月につれてって』…か」
そう、有名なジャズのスタンダードナンバーだ。原題は『イン・アザー・ワード(言い換えると)』だったとされている。少年はそれを好んで聞いていた。体中を弛緩させて、ただ月光の中に浮かんでいる気分でベッドに横たわって。絶え間なく流れ続けるジャズの音色に、彼は夢見心地だった。そして、いつの間にか…またこの曲を口ずさんでいた。少年のつやつやとした漆黒の髪が、白いシーツをすべり、透き通るような白い肌はシーツに溶け込みそうだった。満月の夜空を思わせる紺色の瞳はぼんやりと宙を見つめ、歌の紡がれるそこを見つめていた。
(ずっと、この歌を歌っていた。寂しくなると、一人でこれを口にしていた…)
ふと、思う。今までの自分を。そして、これからの自分を。
(このまま、寂しい夜にこの歌を歌い続けるのかな)
自分を慰めるために、自分の魂を掻き毟るために。

少年の名は『水繰 咲乱(みまくり さくらん)』という。
大分の山奥にある民宿の、一人息子だ。が、それは表でのことで、本当は古くから西洋や東洋の魔術を受け継いでいた『魔導士』の末裔なのである。今も水繰家はその魔術を伝えており、いくつかある分家とともにその技術を護ってきていた。この家は基本的に女系であり『魔術に適した体と魂を持つ』女性が当主となっていた。また、水繰家は『由緒正しき家柄』の一つとも言えた。また、水繰家の人間は、基本的に背が高い。その上、瞳の色が何故か紺色だったり、緑だったりする。鎖国になる前にはポルトガル人が婿入りしている記述もあるが、それがかかわっているのかもしれない。

その影響からか、咲乱は14歳にして身長が190センチほど。
その上瞳は満月の夜の空を思わせる深い紺色であった。
これが原因で、クラスでは浮いていた。

「………」
ふと、思い出す。クラスでのやり取り。挨拶とかはするが休み時間につるむ相手はいない。誰も、彼に寄り付こうとしないのだ。皆、どこかぎこちない。いや、どこか不審がっているようにも思える。嫌ってはいない。けれど、どこか怖がっている…ような。
(俺は……)
何度も、友達を作ろうと試みた。親しみやすくするためにいつもにこにこしていた。けれど、誰も咲乱と親しくならなかった。皆、咲乱の姿を…特に目を…怖がっていた。
「……っ」
いつの間にか、一人でいた。一人でも平気になっていた。寂しくても笑って、絶対に口になんか出さなくて。それで、よかった。そう、思っていたかった。
(だけど……ホントは……)
シーツを握り締める。瞳を閉ざす。喉が渇くが、それ以上に何かが疼く。胸の奥から、冷たくて鋭い何かが突き出そうだった。
「Fly me to the moon
And let me play among the stars」
いつの間にか、歌っていた。小学生の頃からずっと、ずっと聞いていた曲。だから、英語が苦手でも歌詞は自然と覚えていた。これだけは発音に自信がある。自然と唇から毀れる、どこかふわふわとした歌声。
「Let me see what spring is like
On Jupiter and Mars.」
どういう意味なのか、実を言うとおぼろげにしか解らない。が、寂しくなると口ずさんでいた。特に満月の夜、1人でいると歌っている。
「In other words, hold my hand
In other words, darling kiss me…」
そう歌いながら、ただただ宙を見る。胸が潰れるような感触がした。音がしない。ただそんな感触が迸る。口から呻くような声が漏れ、それでも歌い続ける。
(寂しい……)
不意に思う。身体が軋む。空気が冷たい。何もかもが、ぼんやりとなる。
(俺は……)
目が見開かれる。焦点が一瞬だけハッキリして、空気の塊を吐き出した。息苦しい。涙が毀れていく。訳も無く、ただ吼えたくなる。
「In other words, hold my hand……」
壊れたラジオのように歌い続ける『Fly Me to the Moon』
けれど、それは決して恋の歌じゃない。
「In other words………」
何度、クラスメイトに言いたかっただろうか。
何度、押し込めてきただろうか。
「……want the friend……」
搾り出すように、その言葉が出てきた。ずっと天井を見つめる。涙で滲んだ、ディープブルーの世界に入り混じる白い光。それを振り切って、押しつぶされ続ける胸を押さえながら身を丸くする。声を漏らさないように唇を噛み締めて、蹲って。止まらない涙をそのままに。
―鉱石ラジオは、ずっと音楽を零し続けていた。

暫くして、咲乱はそのまま眠ってしまった。いつもの悪い癖だ。その事を知っていた使用人はそっと部屋に入るとカーテンを閉め、ラジオのスイッチを切る。そして起さぬように毛布をかけた。手馴れているので起すことはない。
「若様……、ずっと気になされているのですね…眼の事」
そういいながら、彼は懐から一つの書類を取り出す。そして眠る少年の枕元に置き、静かにその場を立ち去った。その書類には『銀誓館学園 入学案内』と書かれていた。
咲乱はまだ知らない。これが、彼の運命を大きく変えることになろうとは。
(終)

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
あとがき
お題消費よりも先に咲乱のプライベートテイルが完成(汗)。フーレイです。
掲載はディートの方が先にしたけれどね。
ええと…もうちっと詳しい咲乱の設定はぼちぼちやってきます。
だから気長に待ってください。
奴も苦労している?んです。……多分。
(歌詞引用)『Fly Me To The Moon』(バード・ハワード)
日本語の歌詞はこちら。…実は女性が愛しい人へ歌うものなんだな、これが(笑)。ともかく、今回は微妙に艶っぽい雰囲気でお届けしました。
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-15 01:41 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 28:ばーか


その日は雨が降っていて。
約束は果たされなかった。
少年は、頬を膨らませて窓を見つめた。

『ばー

煩い雨の音に苛々した翼。
白く、細く、ふわふわとした翼がばたばたと動く。
…相当不機嫌らしい。
「ディート、いい加減機嫌を直しなさい」
母親がそういうも、少年はぷいっ、とそっぽを向いてソファに寝転ぶ。そして小さく呟くのだ。
「パパのばーかっ。約束してくれたのにっ…」
フワリンの縫い包みを抱きしめ、ふてくされた顔のまま蹲る。母親は困ったような顔で歩み寄り、少年の白い髪を撫でる。
「仕方ないでしょう?自警団のお仕事なんだから…」
「でも、約束だったんだよ!非番だから、一緒に遊ぼうって!」
飛び起き、縫い包みをソファに叩きつけて少年が叫ぶ。が、母親はだめよ、と嗜める。
「大雨の日は集落を回って安全を確かめなきゃいけないの。
ディートも知っているでしょう?」
「でも…」
その優しくも真剣な言葉に、少年もまた勢いを無くす。確かにそうだ。自警団は村の皆を護るために大雨の中安全点検をしているのだ。わがままを言ってはいけない。けれど、約束を守ってくれなかった父親に対して、どうしてもむかむかしてしまう。
「むぅ……」
暖かい部屋の中、少年は不機嫌なまま窓を見る。雨の所為だ。この大雨が降らなかったら父親と一緒に遊べたのだ。一緒にお昼寝して、一緒におやつを食べて…。
ばーか、ばーか、雨のばーかっ!!
少年は、空を睨みつける。恨めしい雨を、そんな風になった今日を。
(解ってる。パパやおじいちゃんは皆のためにがんばってるんだもの)
ぎゅっ、と縫い包みを抱きしめる。そして、力なくソファに寝転がった。
ばーか、ばーか……
そんな言葉が、胸の中に渦巻いた。

雨がやみ、雲が消え、空が晴れる。
待ちくたびれて眠る少年の頬を、やさしい春の風が撫でていく。
「ただいまー。用水路が詰まらなくてよかったよ」
そんな事を言いながら、黒い制服を着た父親が戻ってくる。母親はおかえりなさい、とタオルを持って出迎えた。
「…それにしても、ディートには悪いことをしちゃったな。
 とっても楽しみにしていたみたいだし…」
父親はタオルで髪を拭きながらそういい、すまなそうに息子の頭を撫でる。冷たい指がすり抜けた刹那、少年は寝返りを打って背を向ける。僅かに動いた小さな翼に、父親は思わず溜息をついた。
「相当機嫌が悪いみたいだな……」
「まだ子供なのよ」
くすくす笑いながら、母親は息子にかけたブランケットをただす。縫い包みを抱きしめて眠る小さなエンジェルは、ちょっとだけ悲しそうな顔で眠っていた。

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今よりさらに幼い頃のディートがふてくされたときのお話です。
いや、もっとほのぼのさせたかったけれど力不足(汗)。
縫い包みを抱きしめて眠っているちっちゃい子はかわいいです。
まぁ、幼子の愛らしさと幼いが故のわがままさえ表現されていたら…。
因みに、この時外見年齢3歳、実年齢は5歳です。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-07 11:43 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 29:ごめんなさい


その笑顔は、もう…見ることは出来ない。

『ごんなさい』

それは春の初めだった。1人の女性が静かに息を引き取った。
白い髪と肌、ノソリンの耳と尻尾をもった、綺麗な女性だった。
あとに残されたのは夫と1人娘だった。

男は、1人亡骸を見つめていた。
妻だった女性は、冷たく、固く、静かに横たわっていた。
男はその白い肌に優しく化粧を施した。
「……アルカンド、もう苦しくないなぁ~ん?」
紅を乾燥した唇に差しながら、男は問う。その目は酷く震え、今にも泣き出しそうだった。それでも涙を零さないのは、のせたばかりの頬紅を落とさないため。最後だから、せめて美しく送り出したい。それが、夫としての勤めであり、妻への弔いである。男はそう思っていた。
「守れなくて…ごめんなぁ~ん」
男はそういって髪を、首筋を撫でる。そして、いつものように唇を重ねた。

葬儀は穏やかに進められた。
雨の中、白木の棺は静かに運び出される。森の中にある墓地へと続く葬送行列。その先頭には妻への贈り物を抱いた夫の姿があった。その手には、幼い少女の手が握られている。
「パパ、ママはどこへいくなぁ~ん?」
少女は小さな声で父親に問う。彼はただ墓場への道を見つめながら答えた。
「遠いところ、だなぁ~ん」
「遠いところって、どこだなぁ~ん?」
少女は更に問いかける。が、父親は何も答えない。
「ママはどこへ行くんだなぁ~ん?」
尚も問いかける少女の頭を、父親はただ何も言わず撫で続けるだけだ。
少しずつ近づいていく墓場から、土の匂いがする。
遠くを見ると、何人かの村人が穴を掘っていた。
「遠いところって、土の中なぁ~ん!?お母さん、閉じ込めるなぁ~ん?」
少女の声に、父親は静かな声で
「そうだなぁ~ん」
そっと肯定した。

母親の棺が、土の中に入っていく。
その瞬間を、少女は泣きながら見つめていた。
「ママ、ママ……」
呼びかける声に父親は歯を食いしばって娘を抱きしめる。
「ママ…、ママ…」
白木の棺に、その上に置かれた贈り物に、土が被せられる。二度と会えなくなる悲しみが、人々の胸を締め付ける。土が落ちるたびに、少女の目から涙が毀れた。
-これが、えいえんの“さよなら”
少女は思った。こんなに悲しいものなんだ。「大切な人が死ぬ」って寂しくて苦しくて、悲しいことなんだ。冷たい悲しさが、深く胸に突き刺さる。
「なぁ~んっ!なぁ~んっ!!」
少女は叫ぶ。ノソリンの声が墓場に広がる。それに続くように村人たちもなぁ~ん、とノソリンの声で涙ながらに叫び続ける。別れてもまた会えるように。生まれ変わって出会えるように。そのために叫び続ける。
その時、ふと……少女の耳に声が聞こえた。

-ギーエル…ごめんなさい

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えー…ギーエルの母が死んだときの話です。
テーマに合っているのかな。つか、二話連続悲しい話ですね;
アルカンド・カンツバキは白いノソリン耳&尻尾で愛らしい女性でした。
だから夫であったリリシャールは深く愛していたんですがね。
それだけにずいぶん凹んだそうです。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-31 14:37 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 30:ありがとう


 「共に戦えたことを、誇りに思います」
その言葉を言うたびに、私の胸は酷く軋む…。

りがとう』

 ある晴れた昼下がり。1人のセイレーンが花束をもって歩いていく。濃い桃色や紫を帯びた桃色、白など秋を彩るコスモスは本当に美しかった。
(…喜んでくれるでしょうか)
彼は眼鏡の奥で目を細め、小さく微笑んだ。浅瀬の海を思わせる青い瞳は、何処か悲しげに揺れ続ける。彼は暫く花を見つめていたが我に返り、再び歩き出した。彼の進む先には、一つの石碑が建っている。顔を上げると、少年は僅かに目を細めた。

 『希望のグリモア』にほどちかい場所。ここには数多の戦いで散っていった冒険者たちの名を納めた石碑がある。そして、その傍には幾つもの花束が置かれている。そこへ訪れたそのセイレーンもまた持ってきたコスモスをそこへ手向けた。石碑の前で暫く佇んでいたが、しばらくして祈るように片膝を折って跪き、手を組んだ。瞳を閉ざすと、いろんなことが脳裏を過ぎる。
(あの人は短い間だったけど、同じ旅団でお世話になりましたね。
 あの人は同じ依頼で一緒にご飯を食べましたっけ?
 そしてあの人は、お祭りで楽しそうに過ごしていた……)
色々と思い出していると、目頭が熱くなっていく。同じときを過ごし、助け合い、励ましあい、切磋琢磨していた筈の仲間たち。特には喧嘩もしたけれど、気の置けなかった仲間たち。
しかし、彼らは散っていった。

ザウス大祭阻止、トロウル最終決戦、神との戦い、対ザムザグリード、対ヴァーゼルゼ、第一次・二次ドラゴン界侵攻作戦、対ドラゴンロード戦…。

彼は冒険者になって何度も戦いに赴いている。そして、仲間を失う辛さを何度も経験しているのだ。だから、こうして時折花を手向ける。
(ロード戦でも、多数の死者が出た。……けれど、共に戦えたお陰で…)
石碑を見る。どんな思いで、散っていったのだろう。そう、思うだけで彼の胸は激しく痛む。そして彼らは今、何処にいるのだろうか。彼らの魂はどこで何をしているのだろう。寂しい思いをしていないだろうか。少しの不安がよぎる。けれど彼は口に出さなかった。そして、黙って立ち上がる。
(私は貴方がたに誓います。もっと強くなって、ランドアースを守ると)
だから、見守っていてください。後から、私も参ります。
彼は静かに黙祷を捧げ、再び瞳を開いた時、そっと、口ずさんだ。

-ありがとう、ございます。
 出会えたこと、共に戦えたこと……感謝します。

 青い髪が、煽られえる。セイレーンはそれ以上何も言わず、ただ一礼して石碑に背を向ける。ゆっくりと帰り行くその背中を、石碑が黙って見守る。けれど、少年の瞳は…眼鏡に写る幾つもの戦友の面影に、涙を浮かべていた。

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
ども、フーレイです。お題にチャレンジで逆走プレイング!(ぇ
ルール違反ではないはずだ。とりあえずニルギンが墓参りです。
…勝手にこんなものがあるとしちゃったけど本当のトコどうだろう。
とりあえずニルギンはがんばって生きています。
今後もよろしく。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-13 14:34 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

第二次ドラゴン界侵攻作戦で(フーレイ、実は悩む)


「今にして思えば、我々はこの時既に選択を誤っていたのかもしれない…」
CWシナリオ『賢者の選択』より

 ぐつぐつと虚しく煮える鍋。それを見つめるのは三人の冒険者である。白い翼のエンジェル、黒い耳と尻尾のヒトノソリン、青い髪、瞳、石のセイレーン。
「さぁ、できましたよ」
力なくセイレーンの少年がいい、エンジェルの少年とヒトノソリンの女性が顔を上げる。皿に盛られたシチューとパン、飲み物がそろうが、食べ始めない。
「まずは、戦いで亡くなった皆さんに黙祷、だなぁ~ん」
「うん」
女性の言葉に、キャスケットの少年は頷く。もう1人の少年もだまって頷いた。

―第二次ドラゴン界侵攻作戦
それは表向き成功に見えた。
しかし、多くの者が重傷になり…死亡したものもいた。
そして、ロードが自らグリモアへと進み始めた。

その戦いで、己の無力さを痛感した3人は、こうして集った…。

『第二次ドラゴン界侵攻作戦・反省会』 (著:天空 仁)

「で…ニルギン。これは作りすぎだなぁ~ん」
ニルギンと呼ばれたセイレーンは寸胴2つのシチューを見つめ、ああ、と苦笑。
「…実は…いろいろ考え事をしていたら、作りすぎてしまったので。ディート、沢山食べてくださいね」
ディートと呼ばれたエンジェルは、その言葉に苦笑する。
「いいにおい…。でも、食べきれないよ。ギーエルさんでも」
ギーエルと呼ばれたヒトノソリンはその言葉に苦笑で頷く。
「俺やニルギンは今回の作戦でお役に立てなかったなぁ~ん。だから夕食ついでに反省会だなぁ~ん」
ギーエルは突撃戦、ニルギンは撤退戦に参加していたのだが、何かうまく行かなかったのか酷く疲れた様子だった。特にギーエルは先の作戦で重傷になっている。ディートはそうでもないようで、むしろ友人の死を知るまでは笑顔であった。
「と、とにかく食べつつ反省会ですね」
ニルギンの言葉に、2人は頷いた。

 3人は時折食事を一緒にとる。ニルギンやギーエルは料理を得意とするのでどちらかの部屋での場合は、部屋の主が料理の腕を振るう。今回はニルギンの部屋で反省会なので、彼のお手製である。
彼の部屋中にシチューの美味しそうな匂いとあったかい湯気が漂うものの、誰も口にしようとしない。それだけ疲れているのである。
「そういえば…ニル兄、作っているとき物凄く静かだったね。いつもなら歌いながらやってるのに」
キャスケットを握ったままディートが問うが、ギーエルは厳しい表情でとめる。どうして、と問おうとするが、ギーエルは黙って首を横に振る。そんな2人のやり取りを見ていたニルギンは酷く顔を赤くしつつ小さな声で言った。
「お恥ずかしながら、私は…背中を守る、と約束した方を守れなくて。その事が悔しくて…」
薄っすらと青い瞳に涙が浮かび、必死に堪えようとするニルギン。ギーエルはそっと頭を撫でつつも何処か苦笑した声で
「でも生きてるなぁ~ん。次守ればいいなぁ~んよ」
「だね……死んだ仲間たちの分までがんばって…」
ディートが頷き小さく笑うものの、その灰色の瞳にも涙は浮かんでいる。同じ旅団の仲間が死んだことが、少年には辛かったらしい。ギーエルはディートの頭も撫で、頷いた。

 とりあえず食事を始めたものの、のぼる話題はどれも明るくはない。まぁ『反省会』と名づけているだけあっていつもより真面目な会話だ。
「やはりナパームアローよりも無風の構えを持っていって盾になったほうが良かったのかもしれませんねぇ」
「よく考えて見れば、ヴォイドスクラッチは単体だったなぁ~ん。それをすっかり忘れていたのが痛手だなぁ~ん」
アビの選択ミスが結果に響いたな、と思うニルギンとギーエルは互いの顔を見合わせて苦笑する。ディートは2人の話を聞きつつふむ、と1つ唸る。
「ニル兄ちゃんは技系アビ…特に蹴りを得意とするから…武器選択もカギなのかな?第一技系等は威力アップ系アビがあるといいけど」
ディートの言っている『威力アップアビ』とは『狂戦士の極意』や『武人の極意』『邪竜身』のように攻撃力を初めから底上げするアビリティの事である。
「俺は邪竜導士だから『邪竜身奥義』を使って心攻撃の威力上げにしているなぁ~ん。ニルギンの場合は技攻撃の威力上げだから『タクスリーダー』だなぁ~んね」
「牙狩人のアビですね。見落としていました…。私はてっきり技攻撃の威力を上げるアビは無いと思っていましたから…」
ニルギンは感心したように頷き、早速メモを取る。
「俺は思うなぁ~んけど、ニルギンは武道家だから素手だと連撃が望めるなぁ~ん。武器を捨ててそれでもいい気がするなぁ~ん」
ギーエルの言葉にニルギンはそれも考えて見ます、と頷いた。
「あと、ギーエルさん。やはり貴方は心攻撃に強いですから範囲アビを積んで攻撃に望むか、回復系アビを積んで前線援護に回ると良いと思います」
「うん。折角『邪竜身奥義』で威力上げをしているんだもの。医術士のアビでもかなり期待できるんじゃないかな?」
2人の言葉を受けてギーエルはそうかもなぁ~ん、と考える。確かに心能力値が高いという点は活かさないと生き残れなさそうである。少しでも回復手はほしい。あえてそっちへ回るのも手かもしれない。第一に【最後の選択(黄昏の役ともよばれる)】では邪竜導士としてのアビリティを抜かし、回復アビリティのみ積んで戦いに望んだのである。
「ディートはお疲れ様でした。貴方が参加したチームは無事に全員生還されたようで…嬉しいです」
急にニルギンから言われ、ディートはありがと、と少しはにかんで言う。
「話に聞いたけど、撤退条件を託されたらしいなぁ~んね。うまくいってよかったなぁ~ん。それに連携がちゃんと取れてたらしいなぁ~ん」
ギーエルからもそう言われ、ディートの頬は緩む。しかし、すぐに曇って行った。
「でも、他の作戦では死んだヒトも多いよ。それに第四作戦……ロードのこと……」
その言葉に、ニルギンは唇をかみ締める。彼は己の目で無残に殺された仲間の姿を見ているのである。ギーエルもまた、溜息を吐いた。

 しばらくして、反省会は終わった。ニルギンは後片付けをし、そのまま夜の街を歩いた。ロードは確実に近づいてきている。
「次はロード戦。私たちは、無くなった仲間が持った全ての悲しみと怒りを奴らにぶつけて…勝利を収めなくては」
そんな事を呟いていると、見覚えのある影がよぎった。白い髪とノソリンの耳と尻尾。片思いの相手、レイメイ・レーレンである。
「レイメイさん、こんばんは」
「こんばんはだなぁ~ん。ニルギンさん、何処に行くなぁ~ん?」
レイメイは手に色々救急道具を持っている。仲間が重症になったのだろう。その事を思うと胸が痛い。
「私は第三作戦旅団に入団届けを出しに。…約束した仲間がいるので」
ニルギンはそういうと、いつものように微笑んだ。しかし、レイメイには痛そうな笑顔にしか見えなかった。それを何故か言えなかった。

 ギーエルは同じ依頼へ行くことになっているマサミ・ファルガディアの元にいた。彼もまた重傷を負っている。ニルギン、ディート共通の知り合いではあるが、ギーエルは彼に一度応援されてからあまり会話をしていない。
「…ギーエルか。お前も重傷なんだってな」
苦笑しながらいうマサミに、ギーエルはそうなぁ~ん、と同じように苦笑して相槌をうつ。それでもてきぱきとお茶の準備をするのはメイドの嗜みだからであろう。
「まぁ、でも生きていて何よりだなぁ~ん。気になる相手に死なれては困るなぁ~ん」
「?」
ギーエルの何気ない一言。マサミは意味が取れず首を傾げるが、彼女はいたって真面目な顔でくすっ、と笑った。

 静かな酒場。ディートがそこに入ると、彼が慕っている霊査士のミッドナー・イートゥが1人で静かに酒を飲んでいた…ようだったが、グラスに注がれたワインは一口も飲まれていない。あの作戦の時と同じだった。が、彼女は気がついたのか、ディートを見るなり少し微笑んだ。
「こんばんは、ディートさん」
「ミッドナーさん、こんばんは。…作戦、がんばってきたよ…」
その言葉に、彼女は1つ頷き、優しく少年の頭を撫でる。その感触が嬉しくてディートの頬は緩むが…僅かに曇っていく。
「…でもね…僕……悲しいの。友達が…別の作戦で…」
途切れがちになる言葉を、ミッドナーは目でとめる。それ以上言わなくていい、と。彼女は静かに頷き、一度だけ、ぎゅっ、とディートを抱きしめた。

―静かに、その夜は更けていく。

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
NPCを初めて出したフーレイ(天空 仁)です。
いや、NPCは勝手に出していいらしいので。
マサミさんについてはPLさんに許可を貰っております。

それにしても、PCがこんな会話をしていていいのかわからないので一応アンオフィシャルかもしれない;

では、これで。
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by jin-109-mineyuki | 2007-11-18 16:11 | 無限銀雨図書館 | Comments(2)