ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:無限銀雨図書館( 36 )

今回は微糖ってことで、どうっすか(滝汗:ポトフがうまそう)


 ドラゴンロード・スイートメロディアは同盟冒険者たちの手によって地に落とされ、ついにはドラゴンズゲートとなった。ドラゴンウォリアー状態での探索となる特殊なそれに、多くの冒険者たちが向かっている。

「……凄く興味深いが……」
コルドフリード艦隊の救護室。そのベッドの1つに横たわるヒト族の青年は、目の前にいる女性と少女に小さく苦笑する。先ほどの戦いで重傷となった彼を恐らく2人は行かせないだろう。と、言うより……微妙に回りから厳しい目で見られているような気もするがそれは無視した。目の前でゆらゆら揺れる黒とピンクのノソ尻尾を見つめながら、たまにはのんびりするのもいいなぁ、と思うのだった。

「何はともあれ。命あっての物種だなぁ~ん」
そう言いながら、黒いノソ耳を揺らしながら1人小さく微笑むヒトノソリン。彼女は大人の笑顔でもう1人の同種族とヒトの青年を見るのだった。

無限のファンタジアプライベートテイル
『戦いの傷に甘い薬を -2人分の情-』 (著:天空 仁)

 邪竜導士のギーエル・カンツバキ(a61051)と重騎士のミルフォート・シルファーン(a60764)は肩を並べ、廊下を歩いていた。それぞれ料理が乗ったお盆や治療道具を持って。
「だけどこの戦いも厳しかったですなぁ~ん」
ミルフォートは小さくため息をついた。傍らでギーエルも相槌を打つ。
「そうなぁ~んね。マサミも重傷だしなぁ~ん」
マサミというのは、二人が想いを寄せるヒト族の武人の名でマサミ・ファルガディア(a59923)の事である。彼は戦いにおいて深い傷を負い、この2人に看病されていた。勿論、今運んでいる料理や治療道具は彼のためだったりするのだ。
「でもマサミさんは、いつも頑張っていますなぁ~ん。こんな時ぐらいゆっくりしてほしいですなぁ~ん」
「それには俺も賛成なぁ~ん。俺達で看病してリラックスさせるなぁ~ん♪」
そんな事を言いながら歩いていると、マサミが寝ている部屋に到着した。ドアを開けると、彼は丁度別の冒険者と何やら話しているようだった。
「ん? ああ、ミルにギーエル……どうしたんだ?」
2人が入ってくると、その冒険者は一礼して部屋を出る。僅かに苦笑するマサミにギーエルは手に持っていた料理の盆を見せる。今日の料理はポトフとサラダと白いパンのようだ。
「そろそろお腹がすくと思ったので作ってきたなぁ~ん」
「それと、手当てもしますなぁ~ん」
ヒトノソ特有の愛らしい【なぁ~ん】という響きが空気を和やかにさせる。2人の笑顔を見ているとそれだけでなんとなくだが傷の痛みも和らぐ気がした。

 とりあえずベッドから出ようとしたマサミであったが、ミルフォートに止められその間にギーエルが食事の準備をする。おいしそうな匂いが鼻をくすぐり、疲れた体を癒してくれる。
「それじゃあ、いただきます」
と、マサミがスプーンを取ろうとしたが、ない。不思議に思っているとミルフォートの手にスプーンが握られている。一口サイズに切られた蕪が乗っかっているうえにこれ、という事は……続いて出るセリフが、脳裏に浮かぶ。そして、
「それではマサミさん……あ~ん、してくださいなぁ~ん……♪」
ミルフォートが顔を赤くしながらそういった。
「……えーっと……」
「あ~ん、だなぁ~ん♪」
戸惑っているとギーエルがニコニコ。絶対楽しんでいる、と思いながらマサミは口を開ける。幸い手の怪我はそんなに酷くなく、普通に使えるのだが……。
「……ん」
口にしたポトフの味は、凄く良かった。素材の味を生かし、尚且つ優しい口当たり。蕪はよく煮込まれ、すっ、と解ける。素直に美味いと思った。
「マサミ、あ~ん、だなぁ~ん♪」
今度はギーエルが一口大にちぎったパンを口に入れてくれる。この白パンもふわふわとしていてほんのり甘い。
(……確かに美味いが……なんか、こう、くすぐったいものがあるな)
マサミは咀嚼しながら2人の様子を見た。ヒトノソの少女と女性は優しい笑顔で、それでいて愛しそうに彼を見ている。
「美味しいよ、2人とも」
自然と笑顔でそう言った。なんか、内心2人に負けたなぁ、と思ってしまった。
「マサミさん、重傷が治るまでミルたちでお世話しますなぁ~ん」
「任せてくれなぁ~ん。たまには俺たちに甘えてほしいなぁ~んよ」
ミルフォートとギーエルの言葉に、マサミは少し苦笑する。グリモアの加護のおかげか、冒険者たちは重傷をくらっても5日で治ることができる。が、それまではこの2人がつきっきり、という事になる。キラキラと目を輝かせる2人。なんか言葉が出てこない。
「ミル、ギーエル。ありがとうな」
その言葉に2人とも頬を赤く染め、嬉しそうに微笑む。片や重騎士、片や邪竜導士あれどやっぱり女の子。好きな人に感謝されたり頼りにされたらハートが疼くものである。嬉しそうに揺れるノソ尻尾に瞳を細めながら、まぁ、たまにはこういうのもいいかもしれない、と小さく頷いた。

 しばらくして、ギーエルは1人部屋の外に出た。そして、何気なく先の戦いを思い出していた。何度でも再生するロードの中で見た《荒れ狂う『竜』》と、『竜』の力を制御し操る邪竜導士。それに立ち向かったとき、彼女の体の中で何かが激しく疼いた。それは破壊の衝動でも、憎しみでもなく、自分が『竜』の力を制御する存在―邪竜導士―であることへの悦びであった。あの濃厚な力が脊椎、脳髄を駆け巡り突破し、戦が終わった今も僅かにだが快感が残っている。
(けれど……この力をコントロールできなかったら俺は……)
何時になく真面目にそんな事を考えていると、窓に人の姿が映った。いつの間にかマサミとミルフォートが後ろに立っている。
「どうした、ギーエル」
「ああ、マサミ、ミル。……ちょっと考え事なぁ~んよ」
ギーエルはいつものように笑い、2人は不思議そうな顔をする。
「でも、ギーエルさん。少し不安そうでしたなぁ~ん」
ミルフォートが首を傾げ、ギーエルの目を見る。その血のように紅い瞳は何か考察をしている目に見え、何故か僅かに鈍い光を覚えていた。が、ギーエルは何時ものように明るい笑顔のままだ。何かを企んでいるような、笑顔のまま。
「それよりも、マサミ。寝てなくて大丈夫なぁ~ん?」
「ああ。傷の痛みも治まっている。ちょっと景色でもと思ってな」
マサミがそういい、ミルフォートが小さく頷く。ギーエルはくす、と笑ってマサミを挟んで右側に立った。
「それじゃあ、一緒に見るなぁ~ん」
そういい、腕を抱くギーエル。ミルフォートも少し恥ずかしそうに反対の腕を抱きしめる。
「暫くの間はミルとギーエルさんでマサミさんを独占しちゃいますなぁ~ん」
右側と左側では妙に何か柔らかいものの圧力が違うが、……というよりも。この状況をある集団が見たら確実に何かされそうな気もするが、マサミの表情は苦笑のまま。
「……しょうがないな」
戦場で深い傷を負ったとき、受け止めてくれたのがこの2人だった。そして気を失いかけた時も2人がいたからぎりぎりまで意識をつなぐことができた。戦争が終わったとき2人の口から終了を聞き、安堵したが、同時に2人がひどく心配していたのも感じ取ってしまった。だから……。
「暫くこうしててやるから……」
そういい、彼は2人の肩を抱く。ちょっとだけ目を見開いた2人ではあったが、自然と寄り添い、そのまま艦隊からの夜空に見入っていた。

(終わり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
まず、このストーリーにはお世話になっているマサミさんとミルフォートさんが登場しています。うん、らしくなかったらごめんなさいっ!キャラクターのデータとにらめっこして書いたんだけれども、どうだろう!とりあえず、ちょっとはラブラブできたかなぁ、と。まぁ、楽しんで書いたので頑張って読んでください(待)。出させていただき、ありがとうございました(一礼)。

きっと今頃マサミさんは2人から看護されて少しはまったりしてそう。
これでデレデレ顔にならないだろうしなぁ。
一度ミルちゃんとギーエルでマサミさんを骨抜きにしたろうと思ったのですが、なかなかならないものです。まぁ、こんな平和な感じですがどっちもマサミさんに恋しているしなぁ。はぁ、これで3ピンつくりてぇ……。

追記
ニルギンのランララピンですが、完成が早くなったとのこと。
で、メールがきたんですが商品の★の数が4.5個とありました。
あれ? ★は5つじゃないんかい!?てか……NPCだったらもしかしたら、おまけのSSはないんですか?!(滝汗:なんかランララSSのMS様はランダムらしいんで)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-03-02 19:12 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

とりあえず、後日ギーエルでまたやります (ニルギン、そつなく)


……雨が降っているような、音。
それで我に返ったのか、壁にもたれて座っていたセイレーンは閉ざしていた瞳を開いた。妙にぼやけた世界に僅かな青が揺らき……普段はまとめている髪を解き、眼鏡を外していることを思い出した。
(やはり、眼鏡がないと落ち着きませんね)
小さくため息をつきながら眼鏡をかける。漸くはっきりとした視界は妙にギアのように見え、僅かに口元が引き締まる。今、自分がいるのはコルドフリード艦隊・最終撃滅艦隊。そこで一人瞑想をしていたのだ。
「……結果は出ました。ならば、私は私の誓いを守り役目を果たすまでです」
彼は小さく呟くと、軽く体を伸ばした。

無限のファンタジア・プライベートテイル
『苦みの先の笑み -選ばれなかった選択肢を選んでも-』 (著:天空 仁)

 2時間前。ニルギン・シェイド(a55447)は霊査士であるエルフの女性、ユリシア・メルローズ(a90011)と向き合っていた。
「……」
ユリシアは綺麗な眉を僅かに顰めた。目の前にいるセイレーンの武道家は眼鏡を掛け直しながら手渡された資料を真面目に読み返している。
「これが、決戦を望んだ方々の意見ですね」
「ええ。……確かに、ドラゴンロード・スイートメロディアとの戦いは厳しいものになるでしょう。それでもこれだけの冒険者が決戦を望んだのです」
ユリシアの言葉に、ニルギンは小さくため息をついた。
 魔石のグリモアを目指していた同盟の冒険者たち。その前に立ちふさがったドラゴンロード・スイートメロディア。竪琴を核とする新たなるロードはコルドフリード艦隊から放たれた『最終撃滅砲』を受けても再生した。そこで撤退か、決戦かという選択を迫られたのである。そしてその結果はニルギンが読んでいる資料にある。ため息をつくニルギンを、ユリシアは黙って見つめる。
(納得は、している見たいですが……)
目の前の武道家が浮かべる表情に苦笑し、精神年齢が上がっても未熟さが残る彼に小さく微笑む。
「今回は緊急でしたし、しょうがないのかもしれません。それに、基本私たち同盟の冒険者は立ち向かう敵を排除に向かう傾向にありますから」
ずれた眼鏡を掛け直しながらそういい、資料をユリシアへと手渡す。が、彼の瞳はいつになく厳しいものだった。
「しかし、撤退を望んだ冒険者たちもまた仲間を思っていての事でしょう。そんなに気にすることではないとは」
ユリシアはそういいながら、資料を整える。霊査の腕輪が僅かに音をたて、揺れるさまを僅かに見つつため息をついて。視線をニルギンに戻すと、彼はまだ少ししゅん、としているように見えた。
「ユリシアさん。『最後の戦い』は覚えていますよね」
「ええ」
「あの時、私は戦うことを選びました。あの時は戦わないと、生き残れなかったからです」
ニルギンは鋭い目のまま口を開いた。彼はあの戦場であきらめた仲間たちに、そんなひまはない、と叫んでいる。その時の事を思い出して。
「でも、今回は違います。まだ、戦わなくても生き残れる。私はそう睨みました」
「どういう、意味ですか?」
「そのままの意味です。おそらく、あの様子だと……彼女は私たちを追撃しないような気がしたんです」
ニルギンはユリシアが不思議そうな顔をするのを見、やはり甘い考えかもしれませんが、と付け加えたうえでドラゴンロード・スイートメロディアが復活した時の事を思い出す。
「彼女は我々に攻撃せず、ただあの一撃を食らい…復活しました。彼女は、自分の再生威力を見せ付ける為だけに現れたような気がするのです。だから、この好機にいったん下がり、彼女の弱点を探る時間を作りたかったのです」

―私は、死にません。 それゆえのスイートメロディアです。

確かに、彼女はそう言った。ニルギンはその言葉のどこかに弱点や意味があるような気がした。
「しかし……多くの方は今こそ戦いの刻(とき)と睨んだようですね。私は臆病風に吹かれていたということでしょうか?」
若干自嘲の笑みを零し、眼鏡を正す。ユリシアはそれに首を横にふり資料を胸に抱いた。
「けれど、ニルギン様は戦うことができます。是までドラゴンウォリアーとしての責務をちゃんと果たしてきたではありませんか。一度ぐらい……そういう思いがよぎってもいいと思いますよ?」
そう言いながら、彼女はそっと微笑み……ニルギンに切実な目を向けた。
「私たち霊査士は悔しくても戦うことができません。ただ、貴方がたを信じる。それだけです」
「……わかっています、ユリシアさん」
ニルギンはそっと、僅かに苦笑した。そして一礼し、資料を読ませてもらったことに礼を述べた。

「ニルギンさん、どうしたなぁ~ん?」
不意に、優しい声がした。レイメイ・レーレン(a90306)がバスケットを手に歩いてくる。
「今回の決戦について、少し考えていたんです」
ニルギンはにこっ、と笑いながら答え、レイメイはニルギンの傍に駆け寄る。どうやら、お弁当を持ってきてくれたらしく、彼女はおいしそうな匂いのする包みを渡した。礼を述べ受け取ると、それはケバブサンドで、早速食べてみるとなかなかおいしい。
「これは怪獣の肉ですねぇ。下ごしらえがきっちりとされていて凄く美味しいです」
「よかったですなぁ~ん。なんか元気がでたみたいですなぁ~ん」
レイメイの言葉に、ニルギンがきょとん、とする。
「ニルギンさん、結果がでてからちょっと悲しそうな顔をしていましたなぁ~ん。ニルギンさんの気持ちは、わかりますなぁ~ん……」
レイメイはそういい、すこししゅん、となる。投票の日、彼女はニルギンの意見を聞いていてそれ故にどんな反応をするかなんとなく予感していた。
「すみません、レイメイさん。ご心配おかけしたようで……。でも、もう大丈夫ですから」
ニルギンの顔は、自然な笑顔でレイメイもそれに頷く。そして互いに笑いあっているとなぜだろうか、すこしだけ不安が薄れた。
(この笑顔のお陰で、私は逃げずに立ち向かえている気がしますよ)
にこっ、と笑う彼にレイメイはちょっとだけ首をかしげる。が、ニルギンは僅かに頬を赤くしてウインクし、思ったことは口にしなかった。そして、内心で呟く。

―この苦味を越えて、戦い抜こう。
  愛しい貴女を、仲間を、艦隊(ふね)を守るために。

彼の胸の中は、ずいぶんと楽になっていた。撤退を選んだ事に対し、少し自分が情けなかったとはじめは思ったが、今では後悔していない。
(やってやろうじゃありませんか。確かに撤退をすすめた私ではありますが、戦うときまったなら…)
しょげていた自分がすこし恥ずかしくなって、なんだかちょっとだけ泣けてきた。ニルギンは眼鏡をはずし、赤くなった頬を両手で押さえてため息をつく。そんな彼の青い瞳にうっすらと浮かんだ涙に、レイメイは少し苦笑した。
「ふふ、泣いちゃだめなぁ~んよ?」
そう言いながら手を伸ばし、指でそっと拭う。それに礼を述べるセイレーンは、やはり少しあどけなくて、ほんの少し、かわいく思えた。

(終)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あとがき
ども、フーレイです。えと、今回の事に若干納得がPLとして行かなかったので気持ちの整理をつけるために文章に。ニルギンとレイメイさんでもうちょっとラブラブさせたかったなぁ。でも、あまりラブラブさせると戦前なんで自重しろと言われそうだな、と。でも、年上のレイメイさんに少しだけ甘えてみたニルギンでした。

で、今回は同盟の代表的なユリシア様を出してみました。どうでしょ?
一応ニルギンは「ユリシアさん」と呼んでいますが……。
やっぱり「ユリシア様」のほうがいいかなぁ。

とにもかくにも、今後がいろんな意味で気がかりですが、3月 1日はがんばります。
あれ?銀雨は……卒業式なんじゃ?!
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-28 18:07 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

恋の花がちらほらと (5人、まぁいろいろ)


 ある依頼で出会った女性に、彼は一目で恋をした。そして、彼は思いを文に綴り始めた。二人は冒険者故に、大きな戦いにいく。だから、その度に。
―その手紙も、一体どれぐらい積もっただろうか。
そんな事を考えながら、彼は小さく微笑んだ。穏やかな朝の光を浴びながら、水のようなお下げをゆらし、眼鏡をときどきなおしながら菓子を作る。祭のためであり、愛する人のために。
「よろこんで、くれるといいのですが……」
ふわりと頬を赤く染め、ニルギンは小さく呟いた。そして、できたてのマカロンを指でつつきながら、口元を綻ばせた。
―雪のような貴女と、頬笑みあう為にならば。
 その為にならば、なんでもできそうな気がします。

 ある戦いで出会った青年に、彼女は生きる希望を覚えた。そして、その声を聞くたびに、心が震えた。それがいつの間にか恋になった。
―青い希望を灯す目の貴方だから。
彼を思うと胸が弾む。
「今日はいい天気になりそうなぁ~んねぇ」
その瞳に似た色の空を見ながら、口元を綻ばせて……ほんの少し表情を曇らせる。本当は彼の傍にいたいが、それができないらしい。と、言うのも菓子の制作を大勢の人に頼まれている。この調子では夜遅くまでかかるだろう。想い人はきっとあの少女と祭に行く。少しさみしく思いながらも、ギーエルは頼まれた菓子を作り続けるのだった。

 純粋で、まっ白い心に僅かな薄桃色の花が咲いた。小さな翼をぱたぱたさせ、未開の地を行く少年は小さくため息をつきながら仲間たちの話に耳を傾けていた。恋人や配偶者を持つ者は祭に出られないことを少し悔やんでいるらしいが、まだ帰れない場所まで出ているわけではない。その気になればちょっとの間だけなら行ける距離だったりもする。ドラゴンズゲートというものは偉大だな、と少年はおもった。
(でも、恋かぁ。僕もいつかは誰かに恋をして悩んだりするのかなぁ)
そんな事を思いながら、少年は木の実を口にし離れた第二の故郷を思う。たぶん、祭でにぎわっているだろうそこを。ディートの口からもう一度ため息が漏れる。
―恋はお菓子みたいに甘いのかな?

 夜、校舎の屋上。そこで何気なくカレーをふるまっていた青年に、ふわり、と舞い降りる影。そんな彼女に、いつの間にか心を奪われていた。
―どんな時も、そばにいられれば。
最初は姉だったら幸せだろう、と思っていたが……それでは何だか物足りなくなった。もっとこう、深い感情が。だから、もっとがんばろう。嘗て灯に誓ったことを違えないように。もし違えてしまったら、恐らく……。思わず考えてしまったことに首をふり、彼は小さく微笑む。
「一緒に、幸せになれるなら。その為にならがんばれる」
『自分だけのとっておき』を見つけたならば、守りあえる。黒髪を揺らして、咲乱は呟く。喜んでほしい一心で、走って向かうその先で待っている。そんな予感のままに。
―その手を繋いで、一緒に、未来へ。

 故郷の風習を思い出し、その青年は耳に触れながら小さく苦笑した。頬の火照りは思い出すほど繰り返される。恐らく、彼女はここにこないかもしれない。あの手紙を読まないかもしれない。それでも、待つと決めた。だから、答えが出るまで
(俺は、残るよ)
くもり空を見上げていると、人の気配がした。不思議に思って振り返るが、それは想い人ではなく、今共に戦場を駆けている友達だった。そろそろ打ち合わせの時間だったかもしれない。それを思い出し、イクスは一つ頷いた。
―今では夢の中でしか会えないとはな。
自嘲めいた笑みを僅かに浮かべ、直ぐに元の顔になる。不思議そうにしている友達に、小さく微笑んで。
「行こう。……この江戸を守るために」
彼の言葉に、友達も力強く頷いた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あとがき
特にタイトルとかありません。
息抜き程度に『無限』『銀雨』『AFO』PCたちの恋愛模様をちょっとだけ。
お相手さんの名前は(許可を取っていなかったので)出しませんでしたが、たぶん知っている人は知っているし、特に『無限』『銀雨』にいたっては活性化している感情を見ればわかりますので、直ぐにばれると思う。

えっ? イクスのが何かおかしい?
まぁ、推して知るべしというところでしょうかねぇ(遠い眼)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-23 17:09 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

咲乱についてのエトセトラ、まとめたほうがいいかな・・・(汗:亜夜羽、どこいくのっ?!)


 静かな、それでいて荘厳な空気を漂わせる一角。それが、水繰家・本邸にあった。亜夜羽は一人ぼんやりとそこに佇んでいた。
(……ここに……)
顔を上げる。漆喰の壁が、淡い夕暮れ時の空に映える。それを見つめ、少女は頷いた。

シルバーレイン プライベートテイル
『17.4』 第三閃

 一方、咲乱はその頃沐浴をしていた。一人、広い風呂の中、深くため息をつく。
(何故、何のために俺なんだ? 才能のある女性が一杯いるのに)
咲乱自身は大人になったらどこかへ婿養子に行くのだろう、とぼんやりと考えていた。影で『種』と揶揄されようと、父親や己のことをバカにされようと聞き流して。
(俺よりか、亜夜羽たちのほうが当主に向いていると思うけど)
疑問が解けない。が、彼はざぶんっ、と湯船に頭を沈め……その中で思う。
(選ばれたのならば、その役目からは逃げない。俺は俺なりに一生懸命当主を務めよう。親父みたく、うまく行かないかもしれないけど)
覚悟は、自然とできていた。何気なく思い起こすと、父親はいつもがんばっていた。それが認められたから、不満を持っていた者達も今は納得しているのだ。
(茨道かもしれない。けれど……)
咲乱は立ち上がる。そして、湯船から上がり脱衣所へ向かった。

 その頃、一人の老女が静かに白砂の庭を眺めていた。白髪を綺麗に纏め、趣のある和服に身を包んだ彼女はただただ景色を見つめる。そこに、幾つもの足音が聞こえてきた。
(まぁ、そうだろうな)
始めから覚悟していたのか、彼女は小さく笑いながらその方向へと顔を向ける。と、背の高い女性を中心に4、5人の男女が彼女へ向かってきていた。
「まぁ、雪路。それに…」
その顔ぶれに、苦笑が濃くなる。雪路と呼ばれた女性……影釣 雪路は厳しい目を向ける。
「やはり、というべきでしょうな」
「……長老・琥珀様にお話があり参りました。やはりというあたり、私たちが何を言わんとしているのか、おわかりですね?」
琥珀と呼ばれた老女…水繰 琥珀はくすくす笑いながら頷く。反応にむっ、としながらも雪路に従ってきた女性の一人が口を開いた。透き通るような金色の瞳が、雷光のような鋭さを含む。
「水繰家は戦国時代より女性を中心に栄えてきた由緒正しき呪術師・魔導士の家系。魔術には女性が持つ精神的強度が合う上に本質である植物の力とも相性が良い為、また母系社会を築くために女性が長を勤めてきた筈です」
「それは古くからの伝統。家系図をさかのぼっても、男性の当主は少なく、尚且つその代に限って幾度かの『沈め戦』に破れております」
別の女性が言う。琥珀は黙ってそれを聞いていた。次に口を開いたのは、唯一の男性だった。彼は青みがかった灰色の目を細め、
「その上、咲乱さまは『魔眼』を制御できず……上に立つものとしてはいささか力量不足かと。学校でもクラスに溶け込めず、友達は少ないようですし」
その言葉に、琥珀は少し眉を顰めた。
「咲乱自身はそれに気付いていないようだな。しかも、中途半端な覚醒故に能力が常に僅かながら発動しておった。最近では無意識だが制御できているようじゃが」
「しかし、能力に気づいていないあたりが未熟だというのです。いくら能力者とはいえ……」
雪路が畳み掛けるように口を開くものの、琥珀が止める。彼女は小さく、されど意味深な笑顔を浮かべ、白砂に目を移した。
「お主達の懸念はよぉ判るつもりじゃ。確かに、今の咲乱では当主になれん」
一同はそのとおりで、と小さな声で同意したものの、琥珀はか細くも鋭く、短く言い切る。
「今の、と言ったぞ?」
音も無く身動きをとめる雪路たち。その姿を見ることも無く、琥珀は口を開く。澄んだ瞳で白砂を見つめ、
「今宵の儀式で、私はある試しをしようと考えている。それは亜夜羽への試しでもある。お主達は静かに見ておくといい。今は下がって準備をしておきたまえ」
琥珀の言葉を、雪路は聊か不審に思ったが取りあえず従っておくことにした。彼女は仲間と共にその場を去る。足音が完全に遠ざかったのを確認し、琥珀は背後を振り返った。
「話は聞いたな、由緒」
その言葉に頷いたのは、いつの間にか現れた少年だった。細く、背が高く、一見咲乱と瓜二つである。しかし大きく違うのは漆黒の瞳と縁の無い眼鏡。由緒と呼ばれた少年はにっこり笑った。
「既に手筈は整えております。あとは蝶が罠にひっかかるだけですよ。ふふっ、嬉しいですね、あの子が時期当主とは」
眼鏡の少年はくすくす笑い、琥珀は窘める。が、少年の笑いは止まらない。それを不思議に思いながら見つめていると、由緒は口元を綻ばせた。

 水繰邸・零番蔵。本来無い筈のここには、通常の生活ではまず触れることの無い魔術関連の道具や資料が収められている。その中には『封印』と書かれた札を貼られたものや『浄化中』という札を貼られたものもある。だから、普段は滅多に入ることが赦されなかった。
(……ここに……)
亜夜羽は、何故か疑うことも無くここへやってきた。不思議な声に導かれて。いつもは硬く閉ざされている筈の扉は簡単に開き、誘っているようだった。

―我が身を取れ、不満を持つ者よ。

その深い声が、亜夜羽の魂を揺さぶる。血に解けて身体をめぐり、ざわざわと鳥肌が立っていく。
(これは、何かの罠? でも……私は……)
魔力を肌で感じながら、亜夜羽は重い足取りで進んでいく。心のどこかで、これは危険だ、という声がする。けれどそれ以上に、何処からとも無く聞こえてくる声は魅力的だった。何度も振り払おうとした声。だけど、蜜のように甘い。
「咲乱……」
口が、小さく名を紡ぐ。無意識に、一本の刀へと伸びる白い手。うっすらと埃を被った刀は、僅かに身を振るわせる。それを掴んだとき、少女の脳裏が一気に暗転した。
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-08 16:27 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より19:うた


空は澄み渡り、雲は流れる。その下で繰り広げられているのは模擬戦闘だ。しかもアビリティをつかってもいい事になった、本格的な。そのなかで、痩せたエンジェル族の少年が身の丈にも近いクレイモアをぶんまわしていた。その豪快な戦い方に、繊細なステップが加わる。まるで炎のように繰り出される一撃が、紅を纏って相手を翻弄する。
―少年の攻撃が、相手の背中を土につけた。

ここはホワイトガーデンにある小さな村。
その自警団での模擬戦闘に、冒険者となったディートも参加させてもらっていた。
自警団員の中にはグリモアに誓いを立てた者も多く、そのためディートも入れたのだ。

た』

「ふぅ、つかれたんだよぉ」
そういいながらディートは気の根元に腰を下ろした。先ほどまで模擬戦闘で戦っていたが、負けてしまったので退場となったのだ。うまくフレイムブレードが決まった直後、別の相手のブラストタックルを喰らって倒れたのだ。
「それにしても、皆強いな」
そう思いながらまだ戦っている仲間達を見つめる。誰か1人になるまで戦い続ける模擬乱闘戦で、ディートは最後まで残ったことがない。
(こんな姿を見ていると、なんかドキドキしちゃうな)
強い同業者たちは、今も楽しそうに戦っている。武器のぶつかる音、砂の毀れる音、僅かに血が飛ぶ音……。その全てが少年の心を振るわせる。
「もっと、強くなりたいなぁ。そう思ってたら歌いたくなっちゃったなぁ…」
そういいながら、徐に立ち上がる。と、少年はすぅ、と息を吸った。

 あたりに、やさしい歌声が響く。その声に瞳を細めながらエンジェル族の青年が白く短い髪を弾ませながらディートの側へと駆け寄った。ディートは気づいていないのか、のびやかに歌い続けている。
(ああ、あの子はやっぱりあいつの子供なんだな)
どこかもの寂しげに微笑みながら彼は歌う終わるまでその場から動かなかった。が、気づいたのか、ディートは歌うのをやめてにっこりした。
「おじいちゃん、どうしたの?」
おじいちゃんと呼ばれた青年、ハーシュは微笑んで歩み寄る。
「いや、なかなか歌が上手いなと思ってな」
ハーシュはそういってディートの頭をなでる。くすぐったそうに瞳を細める孫に、彼は少しだけ顔を綻ばせる。
(てっきり父親や妻と同じ吟遊詩人になると思ったが…まさか狂戦士になるとは)
それは、あの一件が原因か、と思い出しながら瞳を細め、その場に座り込んだ。

 ディートは冒険者になる前、ギアに取り込まれたことがある。それを冒険者に助けられて、彼もまたグリモアに誓いを立てたのだ。そう聞いたとき、ハーシュは最初父親と祖母がなっている吟遊詩人になっていると思った。ディートは今より小さい時から歌ったり踊ったりするのが好きだったから……。しかし、ディートは大きな剣を手にし、狂戦士として戦うことを選んだ。

『おじいちゃん、僕、強くなりたいの』

そういって、剣の扱い方を教えてほしい、と来た時のことを思い出し、納得がいった。あの子は歌よりも剣を選んだ、と。でも、今はこう思う。

―あの子は剣も歌も選んだんだ。

 孫の頭を撫でながら、ハーシュは思い出す。ディートの戦う姿はどこか舞を舞っているように見えるのだ。そして、飛んだり跳ねたりする音や武器と武器がぶつかる音などが不思議と、歌っているように聞こえてくる。ディートの体は、確かに、戦うたびにその喜びを歌っている。さっきまで歌っていた歌のように、のびやかに、元気よく……。そんなふうに戦う孫を、ハーシュは愛しく思う一方で、危うくも思う。
―いつか、その戦い方で壁にぶつかるかもしれない。
それでも、切実に願っている。
ディートがディートらしさを失わないまま戦い続けることを。
仲間を奮い立たせるように、歌い続けることを。

(終わり)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……お題にそっているがはさておき……。

ディートの過去を少々。あの子は過去にギアにとらわれたことがあるのです。だから「ギアと戦う力が欲しい!」と思い冒険者に。でも今ギアは……DGだけだっけ?とりあえず、この子はこれからも冒険者としてがんばりますよ。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-26 00:51 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 20:影


 輝ける太陽の光を受け、それは音もなく伸びる。多くの一般人は、それがある意味危機感を呼び起こすなどあまり考えないだろう。だが、邪竜導士―ウロボロス―達が持つアビリティの中には、そういうものがある。

―その名は、≪ヴォイドスクラッチ≫



「さてさて……」
邪竜導士のギーエルはメイド服を身に纏い、颯爽と現れた。今は1人しかいない。目の前には元は冒険者であっただろう雰囲気のあるアンデットがいる。今日は1人でこれらを始末しなければならないのだ。4、5体ではあるが、油断ならない。小さく息を吐くと、音もなく黒い炎が体を舐めるように覆っていった。≪黒炎覚醒≫を施したことで、基本攻撃が≪ブラックフレイム≫へと変化する。
「かかってくるなぁ~んっ!」
ギーエルが杖を一振りし、挑発する。と、アンデットが襲い掛かってきた。距離はまだある。それをブラックフレイムで攻撃しつつ、相手を睨む。
(それじゃ、やるかなぁ~ん?)
杖を軽く地面へ打ちつける。口元を綻ばせ、軽く念じ……僅かな間を置いて影から無数の手が伸びていく。それらがアンデットへ絡みつき、防具を剥ぎ取っていくのだ。

「落ちろ、なぁ~んっ」
ギーエルは渾身の一撃を放ち、アンデットは崩れる。

ヴォイドスクラッチ。
それは術者の影から虚無の手を伸ばし、相手の鎧など防具を壊す技。
相手の鎧強度を無視し突き刺さる、邪竜の力……

「……だったらいいなぁ~ん」
ギーエルはカウンターに手を着き、傍らに置いた杖を見つめてそういった。影から虚無の手が伸びたら、どんなに楽しいだろう?そんなイメージがそこにあるのだ。この技を主に使う彼女はくすくす笑いながら杖を手に取る。
「キマイラ戦でも使えばよかったかなぁ~ん?そしたらちょっとはマシになったかもなぁ~ん」
この間、キマイラと戦ってきた彼女は黒炎覚醒と回復アビリティを積んで依頼に赴いた。戦闘では回復をメインにしたため、お気に入りのヴォイドスクラッチを積まなかったのである。地獄で行われた御前試合ではそれを上手く起用し、所属チームの勝利に貢献できた、と本人は思っている。
「アーマーブレイク効果は、伊達じゃないなぁ~ん」
彼女はそういいながら立ち上がり、かるく背伸びをした。その影のように黒いノソリンの尻尾をぱたぱたと揺らしながら……。

 よくよく考えてみればの話、ヴォイドスクラッチで生み出される手は影のように黒っぽい。だから影からにゅっ、と出てくるようなイメージが脳裏を過ぎったのである。敵がアーマーブレイク状態になり、焦るその顔を内心で楽しみつつイメージを膨らませ、またそのアビリティを使う。
「もう一発、喰らっておくなぁ~ん?」
今日もまた、彼女は影色の虚無を解き放つ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どもーん、フーレイっす。
今回は「影」ってことで勝手にイメージしてしまったことを。キマイラ依頼と御前試合の話も少しはどうにかしたかったんですけど……一方は重傷者でてるし、もう一方は時間がたっているし、ということでちょいとだけ。そして実際にヴォイドスクラッチの際虚無の手が出てくるのが術者の影から、とは書いてないんでそこんとこはまぁ、ご愛嬌ってことで。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)

ぼちぼちとお題を消費しているわけですが、そろそろ3分の1を消費しようとしております。間に咲乱のSSも挟んでいるのでそうでもないかもしれないですけど。

イクスのSSについて。
いつかは書く所存ですが、いまんところはまだですね。まず咲乱の『17.4』を書き上げないといけませんから。十六夜なのに『17.4』なのは雰囲気的な問題なので気にしないでいただきたい。そして、イクスのSSは村での日常を冒険者になったきっかけを書くつもりです。
暗いので注意。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-14 20:19 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 21:君が君であるために


今までは、そばにいるだけで幸せだった。
でも今は、それだけでは不安になる。
本当に大切な人たちだからこそ、『護る』力を欲するようになった。

『君がであるために』

ある日。私は、友達の一言に目を丸くしました。ナビアでディアブロと戦わないか、という誘いが着たのです。まぁ、その場にいた仲間全員への誘いだったのですが。
(ナビアのクエスト……。行ってみたいですね)
私は二つ返事で参加表明をしました。見たこともない種族と戦うことに興味を持ち、己の力を試したくなったからです。それと同時に、私はこのクエストがいくつもの意味を持つようになるのではないか、と思いました。ディアブロについては知らないことばかりです。霊査もできませんし、だからとて霊査士を連れて行くわけにもいきません。
(この戦いで、霊査出来るものを得ることが出来れば)
そんなことを思いつつ私と同じように参加表明をした冒険者を見ました。皆、気の置けない人たちで、私にとっては頼もしい面々です。その殆どが私より腕利きの……。足を引っ張らないようにしなくては……。
(噂では、敗走し戻ってきた仲間もいるようですね。このクエストはなんとしても、成功させなければ……)
思えば思うほど、力が入ります。私は、血気にはやりそうになる自分自身を抑えながら会議に参加しました。

 ナビアを歩きつつ、私は辺りの景色を見ながらその事を思い出しました。どんな相手がいるのか、どんな行動を取ってくるのか。それは今の私たちにはわかりません。それでも、私たちは戦うことを選び、こうしてナビアへ赴いているのです。
(誰一人として、失うことはない)
これだけは、守りたい。それが、私の願いでした。皆でまたランドアースへ戻り、いつものように過ごす。戦争ではないけれど、今回は少し、いつも以上に真剣でした。

大切な仲間だから、誰一人失うことはない。
そのために、私には何が出来る?

不意に沸き起こった疑問を、私は首を振って払いました。

何、馬鹿なことを私は考えたのだろう。
仲間が仲間であるために、生き残るためにできること。
それは、この拳で、手にした獲物で、身に着けた技で……守ること。

私1人では、絶対に出来ないことも、仲間がいればできる。だから、先ほどの問いは、愚問でした。皆が頑張れば、それでいいのです。
「私は、守ってみせる」
小さく呟いて、私は手にしたアクスに唇を寄せました。この獲物で、身につけた技で、仲間を守ってみせる。その誓いを篭めて。

―キィーンッ!

不意に、金属音が耳に響きました。どうやら、近くで戦いが起こっているようです。暫くしてその音が止み、私たちはその方向へ進みました。音の発生源であろう場所にはいくつもの死霊兵の残骸が転がっていました。
(……始まる……)
戦いになれた私の体内で、血が徐々に熱を帯び始めます。目を凝らすと、木々の合間に人影を見つけました。恐らくはディアブロの冒険者でしょう。あの人たちが、死霊兵を倒したのだと思われます。私は、自然と口元が綻んでいることに気づきました。ディアブロと戦えることを、喜んでいるのです。しかし、同時に頭の奥が澄み渡るような感覚を覚えました。
―守る。
その覚悟が、鐘のように響いていく……そんな気がしました。

君が君であるために、私は、戦う。
その命がもっと輝くために。
生き残るために。

(終わり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
なんか微妙に力入れてしまいました。「君が君であるために」というお題にそぐわないかもしれませんけれど、今回はこんな感じで。実はカレルさんが「ナビアクエスト」の参加者を募っていたのでそれに参加させてもらいました。その際にひらめいたのでそのまま書いてみたのですよ。くわー。因みに書き終わった頃はまだリプレイが来ていませんでした。リプレイが戻ってきていたならばもう少し違ったかもね(汗)。ちなみに結果は『ニルギンの部屋』にて記された記録のタイトルから見ることが出来るので興味がありましたら

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-10-24 20:37 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

何気にややお家騒動気味(咲乱、案外苦労している?)


「……んだよ……」
咲乱は教室に入るなりどこか似た雰囲気の少女から睨まれる。白い肌、漆黒の髪は咲乱と一緒だが、瞳は咲乱が紺色、目の前にいる少女は赤だ。
「母さまから聞いたのよ。水繰家の時期当主…貴方なんだってね」
「しらねぇよ、んな事。俺は別に当主になりたいわけじゃない。ただ能力者になっただけだ」
そういうなり彼は欠伸をし、机に伏せた。

シルバーレイン プライベートテイル
『17.4』 第二閃

「…認めないから、私は」
少女はそういうと背を向け、隣の教室に戻っていった。名札には『影釣 亜夜羽』と書かれている。彼女を見かけるなり、幾人かの女生徒は笑顔で駆け寄っていく。それを声で感じ取りながら咲乱はため息をついた。
(いいよな、亜夜羽は。友達がいっぱいいてさ)
咲乱は長身と紺色の目が原因であまり友達がいない。それに比べ亜夜羽はモデルのような体型を持ち、勉強もスポーツもできる上男女共に人気があり、カリスマ性もある。
(先輩からも、先生からも一目置かれている。俺なんかより)
当主に向いているよな、なんて思っていると人の気配を感じた。顔を上げると漆黒の髪と白い肌は一緒の小柄な女の子がいた。
「えっちゃんか…」
えっちゃんというのは目の前にいる深緑の目をした少女、日治 縁の事である。縁は咲乱に小さく微笑みかけた。周りの男子がざわめきだすが咲乱は気にせず身を起こす。
「咲兄、なんか凄いことになったね」
「……俺は半信半疑だ。今度は亜夜羽かお前だと思うぜ。なんかの間違いだろ?」
「でも……お父様は『次は咲乱様だ。お前は三守となる。盛り立て、共に精進しなさい』っていいました」
その言葉に、咲乱の表情が少しだけ曇る。そして、小さくため息つくと首を振った。
「考えてみろよ、縁。元々水繰家は女系だろ?それに俺は魔力も弱い。お前か亜夜羽に決まっている」
そういうと咲乱はそう言うともう一度机に伏せる。が、縁が揺らし起こす。その様子を周りの男子生徒たちは羨ましそうに見つめていた。縁は小柄で愛らしく、かなり人気で『お嫁さんにしたい女の子No.1』とも言われている。それ故に、だ。
「私には当主なんて無理だよ。咲乱兄ちゃんならできると思う。とにかく、今日は学校を早退して、禊(みそぎ)だって。今日と明日はお肉とか牛乳とか、卵とか禁止だって言ってたよ」
その言葉に、咲乱は眉を顰める。
「……マジかよ…」
その日の『給食の献立』を見ると、咲乱が好物にしているつくねカレーだった。楽しみを奪われ、少ししゅん、としてしまった。

 授業を4時間目まで受けると、咲乱は帰り支度をさっさと済ませて職員室へ向かう。そして、担任に例のことを伝えるとそのまま正門をくぐった。いつもだったら歩いて一人で帰るのだが、今日はのんびり帰るわけにも行かないらしい。正門には既に亜夜羽と縁がおり、一台の黒塗りの車が到着していた。それを運転してきただろう青年がにっこりと頭を下げる。
「お待ちしておりました、咲乱さん。これで全員ですね」
「思ったけど、他の連中は?」
その問いには亜夜羽がしぶしぶ答える。
「今回は私たちだけよ。時期当主である貴方と次点である私、三守である縁だけ。明日の夜が丁度十六夜だから、今夜から水繰本邸で説明とかあるそうよ」
縁は少し緊張したような面持ちだが、元々親から「次の当主は貴女よ」といわれ続けていた亜夜羽はそっけなくそう言った。運転手は黙ってそれを聞いている。彼は小さく微笑むと後ろの席のドアを開けた。
「さあ、亜夜羽さんも咲乱さんも乗ってください。縁さんは酔いやすいので前に」
縁は一つ頷くと前の助手席へ座る。亜夜羽はさっさと車に乗り込み、咲乱は小さくため息をついた。
(俺が、時期当主か。……理由と利点が全くわからん)

 本邸につくやいなや、亜夜羽は宛がわれた部屋に荷物を放り投げるとそのまま風呂へ向かった。沐浴をし、座禅を組もうと思ったのである。けれど、胸の中によぎるのは疑問だけだった。
(何故、咲乱なの?)
本当はなんとなくわかるような気がするけれど、認めたくなかった。自分よりも優れているとされた咲乱のことを。
(他の子だったら、素直に認められる。なのに……何故、アイツなの?)
乱暴に衣服を脱ぎ捨てながら亜夜羽は考察を続ける。しかし、理由は見つからなかった。幼い頃から咲乱が影では『種』…遺伝子を明け渡すだけの存在…と揶揄され、哂われていたのを知っていた。多くの関係者が彼をいずれ婿養子に出すだろう、と考えていた。しかし、上層部はそれを良しとしなかった。確かに力は女性たちより劣るかもしれないし、当初は当主候補にも挙がっていなかった。けれど…。…微妙な矛盾を覚え、頭が痛くなる。
「……どうして私じゃなくて……縁やほかの女の子じゃなくて……咲乱なの?」
思わず毀れる言葉。途端に、胸の奥で……酷い唸りを覚えた。濃い感情の波が身体の血流に混じっていく。

『不満か?』

不意に、そんな声がした。
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-13 19:35 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より 22:きみのためにできること


-フリージング・タイムズ・ゲート
これをくぐらなければ、第四作戦部隊の仲間達を宿敵であるブックドミネーターの前へと送り出せない。門は全部で三つ。

歴史を変えるか、守るか。
苦渋の選択が、ドラゴンウォリアーたちに迫る。
「この選択がくるなんて、僕……考えていなかったよ」
その一人である青年は、小さく呟いてため息をついた。今でも、多くの冒険者達がそのことについて話し合いをしている。

-ここは正史を…
-いや、この機会を使って…
-しかし、それではヤツと同じ事を…

時には喧嘩にまで発展し、別の冒険者達がなだめる。顔見知りの冒険者達も酷く悩んでいる。彼はもう一度、小さくため息をついた。

『僕らは、ブックドミネーターと同じ事をしようとしているのだろうか?』

みのためにできること』

「……歴史を、変えるぞ」
その一言が、ディートの翼を震えさせた。
三つ目の門はソルレオンという獅子の頭をもつ種族の存亡がかかっていた。
正史では、ノスフェラトゥに作戦の隙を疲れ、グリモアを壊されてしまった。
その為にモンスターと化してしまったのだ。

ソルレオンは男性しか生まれない。
ゆえに、多種族の女性と交わり、子孫を残していた。
そして、ソルレオン王国では、全員が冒険者になることになっていた。

門をくぐる。
そして、戦場は……冒険者達への怨嗟であふれていた。

-裏切り者どもめがっ!

ディートは眼を見開いた。
『うまく言えば、ソルレオンは滅びずに済むかもしれない』
その言葉を信じて、彼は改変を選択した。
しかし、それはその時代のソルレオンたちを裏切ることにも繋がるのだ。
「……みんな……」
ディートたちの姿をみつけ、ソルレオンたちが顔を向ける。ダレもが、冒険者達へと怒りを向ける。しかし、彼らは皆、ブックドミネーターが生み出した……
「みんな、ごめんっ!」
ディートが叫ぶ。そして、同時に翼が展開され、少年の身体が戦場に踊り始める。

 灰色の髪は黄昏の金色に、左の瞳は深き漆黒に。
 背中に広がる四枚の翼
 その引き締まった身体を包む白いコート、ロングパンツ。
 手に握るは、水晶の刃をもつクレイモア…

「ああああああっ!」
襲い掛かる敵を、水晶の刃で切り伏せ、ディートが吼える。真っ白い光がはじけ、爆音が轟く。デストロイブレードが、ソルレオンを真っ二つにする。
(そう、この人たちは皆……)
酷く胸が軋む。その痛みが、背中を、首を、腕を、頬を伝わっていく。
-裏切り者!
-裏切り者!
-裏切り者!
怨嗟の声が、戦場に響く。彼らは冒険者達を信じていた。しかし、冒険者達の決断は……
「……くぅっ!」
再び振るう剣。襲い掛かる武器を武器の一薙ぎで防いで。胸に沸き起こる悲しみと怒りを燃料に、1人、戦場を踊り続ける。
-裏切り者!
-裏切り者!
-裏切り者!
叫び続けるソルレオンたち。それでも、冒険者達は戦い続ける。

…これは、そう、ブックドミネーターの仕組んだこと。

「負けるものかっ!」
ディートの一撃が、ソルレオンを下がらせる。
胸が激しく痛み、熱くなる。怨嗟の声が突き刺さる中、冒険者達は戦い続ける。
「僕らは……っ」
剣を握り締め、振り下ろす。途端に、透明な雫が舞散った。

-涙だった。

ディートは思っていた。ソルレオンたちの事を。
図書館で学んではいた。
もう、あえないと思っていた。
けれど、今、彼らと戦っている。
この戦いさえ勝てばもしかしたら……。

「……偽善といってもいいよ。でも…この戦いは……」
皆(ソルレオン)の存亡がかかっているんだ!!

痛みで、ディートは吼える。
言葉にならない方向のまま、翼を広げて戦い続ける。

彼は泣いていた。
悔しくて、悲しくて、苦しくて泣いていた。

 僕らのやってることは、やつと同じじゃない。
 傲慢でもいい。僕はそう叫びたい。
 この戦い、うまくいけばソルレオンが復活するかもしれないんだもん!

その可能性を信じ、彼は剣を振るう。
胸に激しい火傷を追いながら。
呪詛のように響く叫びを、その身にうけながら……。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき

ごたごたとしたニルギン、若干最後に微エロ気味になったギーエルと続き、『ブックドミネーター戦SS』第三段・ディート編でございました。

当時、あるPLさんがメッセで言っていたせりふがきっかけです。
それで「あ、ディートは泣きながら戦うな」と思ったので。

この後、ソルレオン復活。それでよかった、と思う反面当時の戦争でなくなった人たちの事を考えると胸が痛んでしまった少年でした。

それでは、また。今度は普通に消費予定っす。 フーレイ

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-05 22:02 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』 23:そして空は澄み渡る


対ブックドミネーター戦が発表された日のこと。
1人のヒトノソリンが、一つの作戦旅団へと入団届けを提出する。
「……赦せないから……叩くなぁ~ん」
そこは第四作戦旅団。ブックドミネーターと直接戦う部隊である。彼女には、一つの考察からくる思いがあった。
(今度のロードの能力からして、恐らく元は紋章術士か邪竜導士。俺は邪竜導士の端くれとして、奴を倒しておきたいなぁ~ん)
邪竜導士は『世界の摂理』を『破壊』することで力を操る為、そこから『竜』に喩えられ名の由来となっている。その強大さ故に、人々の中には彼らのアビリティを『呪われた力』として忌み嫌うものも少なくはない。事実、ギーエルもそんなふうに言われたことがあった。
(こいつの事を考えると、人々が恐ろしいと考えるのもしかたないなぁ~ん。だからこそ…)

-負けるわけには行かない。

して空は澄み渡る』

 …戦争までの数日間、第四作戦旅団の団員たちは連日会議に追われていた。ギーエルもまた然りで、ここ2、3日はそこからくる頭の疲れで泥のように眠っている。それでもチョコレートを齧って会議に参加していた。
(他のところも、大詰めなぁ~んね)
第一・第二作戦旅団の会議状況はそれぞれに入っているニルギンやディートなどから話を聞いている。第三作戦旅団には顔見知りがいないのであまり情報を知らないが、向こうも色々大変らしい。
(とくに第三は、時代を変える可能性があるなぁ~ん)
フリージング・タイム・ゲート・・・そこを通らないとドラゴンウォリアーたちは宿敵の場所へ行くことができない。また、その門は複雑で、下手すれば時限を彷徨う可能性もある。しかし、『希望のグリモア』に誓いを立てた冒険者達はあきらめるはずがなかった。
「当日は、最後まで待つしかないのかもな」
ある冒険者がぽつりと呟く。それに、別の冒険者も静かに頷いた。
「途中の作戦に出て重傷になったら、ドミーの首がとれないからな」
「ある意味『耐え忍ぶ戦い』なのかもしれないなぁ~んね」
ギーエルも思わず呟き、彼らは苦笑した。恐らく、第一作戦から第三作戦の間に同盟側にも死者が出るだろう。もしかしたら、酷い戦況になるかもしれない。そうなったとしても、第四作戦までおとなしくしなくてはならないのだろうか?そんな不安があったが、彼らの役目はドラゴンロードを討つ事。もしかしたら……不安は的中するかもしれない。
「重傷となったら下がる。それが鉄則。なのに守らないで死ぬやからもいる。みていられないよ」
1人の医術士が被りをふってそういうも、彼らは顔を見合わせた。
「当日のことは、当日じゃないとわからない。…いまは、出来る事を考えて動こう」
その言葉に、ギーエルも頷いた。

 当日。戦場は相変わらず異様な熱気に包まれた。そして、その中を舞うドラゴンウォリアーたちの姿を第四作戦旅団の団員達は離れた場所で見ていた。
-戦力を温存させておくこと。
多くのメンバーが静かに待っている中、ギーエルは料理しながら戦場を見た。この中には仲のいい友達もいる。
(皆、無事で……)
顔を上げたとき、第三作戦・第三ターンの結果が届いた。その内容に、中には複雑な顔をするものもいる。なぜならば、彼らの決断は『歴史改変』だったからだ。
(やっぱり、そうなったかなぁ~ん)
ギーエルは1人冷静に料理を皿に盛ると、それにかやを被せて歩き出した。【はんなり】のメンバーが、リーダーである青年のもとに集まっている。
「それじゃあ、出撃だなぁ~ん」
彼女の声にチームのメンバー全員が微笑んだ。

 漆黒の髪は鮮やかな紅へ
  血の赤をした左目は、透き通る空の青へ
   纏ったメイド服は露出が増え、白い頬に紅の蝶が浮かぶ
    そして、肘まである手袋に覆われた両手で、モップを握り締める

 作戦は1ターン。そして、それぞれの全力をブックドミネーターにぶつける。弱点と思わしきところに……。
「よぉし」
ギーエルはもう一度モップを握り締めた。狙うは脊椎。
息を吸って、雑念を払って。
ただ、目の前にいるロードの破滅だけを狙って。
全身から、赤黒いオーラが漂いそうな雰囲気がした。頬に浮かんだ蝶の文様が熱い。魂の奥底から火照り、首には汗が浮かぶ。脊椎をなんとも言い難い痺れが走り、思わず口から甘いと息が漏れる。それでも唇をかみ締め、精神を研ぎ澄ます。
「これで」
更に、ぎゅっとモップを握り締める。倒すのは、ブックドミネーター。
仲間の笑顔を奪い、卑劣な罠を仕掛けたロード。
だからこそ、討ち取りたい。
「決めるなぁああああんっ!!」
握ったモップを振るう。同時に放たれるデモニックフレイム。血が滲むほどモップを握り締め、脊椎へと叩きつけ、吼えるッ!

「あああああああああっ!!」

脳裏が白濁する。刹那の爆音。
空気がゆれ、音が消えた後も身体には震えが続く。
「………」
恍惚ともいえる吐息を漏らし、ギーエルが空を仰ぐ。何故だろう、妙に心地よい。意識がゆっくりと戻っていくにつれ、その空がまぶしく思えた。
いつまでも、抱きしめられていないほど、澄み切った白い空。
あの人がこぼす笑顔のような、そんな、空。
「………」
彼女が我に返ったとき、ブックドミネーターは……。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おまたせしました。ギーエルの話です。
タイトル、ブックドミネーター撃破時にいいなぁ、とおもえたです。
そして、微妙になんか……まぁ、某票が入りそうだ。
まぁ、あの人については感情欄参照ってことで。
そして、ディートでも書きますけれど……短い上に、暗いです。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-11 17:41 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)