ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:無限銀雨図書館( 36 )

アンオフィじゃない事を祈る(汗:弦、遠い記憶)

―神酒の海 Mare Nectaris

そこに人知れず栄える小さな国が、嘗てあった。
それはどこか古めかしさと懐かしさの混ざり合った中世日本を思わせた。

宮の庭先に、趣の有る梅が一本植えられていた。
その花を見つめ、1人の少年が溜め息を付く。
「漸く、かいな……」
彼がほっ、とした様子で目を細めていると、後ろから1人の老女がやってきた。
白髪を丁寧に梳き、髷を結っており、背筋が伸びてとても利発そうだった。
「陛下、お体に毒ですよ。
 そろそろ宮中へお戻りください」
「おおきに、安須乃(あずの)。けどな、もう少しだけ……ええかな?」
そう言いながら、陛下と呼ばれた少年は小さく微笑んだ。

『幼き手に握るは』 (著:フーレイ)

梅の香りが仄かに漂う宮中を、帝が歩いていく。
傍らには彼の右腕である老女が付き添う。

帝の名は、弦。
この柚子乃国の幼き帝であった。

「親父が財産を使い込んだお陰で、苦労続きやったな」
そういいながら、弦はあたりを見渡す。女官たちも、兵士たちもきちんと働いて
いる。しかし、彼の父親の代では娯楽に重点を置きすぎた為か、さぼる者も数
多く居た。弦の父親は地球への侵攻をさせないように、と財を使って民に贅沢と
娯楽を与えていたが、その為に色々と問題も起っていた。

国民へも負担がかかるようになる。
その事を見越し、弦の兄は父親を帝の座から降りるよう説得し、状況に青ざめた
父親は帝の地位を退いた。本来ならば兄が帝になるはずであったが、元来心臓
が悪かったが故、自ら弟である弦を帝においた。

その兄も、昨年流行り病で世を去った。
人間とはあっけないもので、父親もまた同じ病で亡くなっている。

「陛下が頑張られたお陰で、人々も活気とやる気を取り戻したのです。
 自信を持ってください」
安須乃に言われ、弦は小さく頷く。そして、顔を上げると窓から見えるものがあった。

青々と輝く、1つの惑星。
人々はそれを地球と呼ぶ。
そして、多くの月帝姫たちが進軍している場所。

弦も1度だけ、友軍の後方支援をするために降りた事がある。
その時に見た青い空と、青い海に酷く心惹かれている。
そして、触れ合った地球の人々の優しさにも……。
それ以来、進軍はしていない。

「……いつか」
「?」
「いつか、地球に……和平を求めに行きたいわ。
 あの場をわいのモノにするんやのうて、地球の人々と仲良くしたい」
そういいながら、ずっと地球を見つめている。
父が、兄が、母が……。
家族が皆焦がれた惑星。
そこへいつか、和平のために行けることを信じ、弦は瞳を細めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あの日からどれだけ経過しただろうか?

その数日後、地球は大規模な〈世界結界〉を張る。
そして、弦は眠りに付いた。
力を暴走させないための、静かな眠りに。生きるために。

それから目覚めた時、彼の青い瞳に映ったのは1人の女性だった。
柔らかな気をまとう、優しい女性だった。
彼女は地球からやってきた、という。

先に目覚めていた同胞と彼女から話を聞き、弦は多いに驚いた。
なんと、地球からの使者は『銀誓館学園』という所の『理事長』という、
とても重要な存在らしい。そんな人間が、命がけで月までやってきたのだ。

(時代は、変わったんやなぁ)
説明を聞いていくうち、弦の胸の中には希望が溢れていた。
彼女は月で眠り続けている数多の月帝姫たちを迎えに来てくれた。
その真実だけで、弦は幸せになり、眠り続けていた身体が解れていった。

「よぉし、わいもひと働きするでっ!
 なぁ、安須乃!わいの狩衣を………」
そこまでいい、弦はふりかえろうとするのをやめた。
彼を支えた安須乃は、もう、いないのだ。
(そうやったな。わいが眠る前日に……)
首を振ると、弦は気を取り直して腕をまくり、地球へ向う準備に取り掛かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、今。
地球へ向おうとした月帝姫たちを殺そうと妖狐の少年、巨門がロケットに飛びついて
いる。弦は小さく笑って手にした武器を握り締めた。
「はんっ。
 わいらの邪魔する気ぃやな、あの餓鬼狐は」
そういうお前も餓鬼じゃないか、と誰かが言ったが、弦は言葉を続ける。
「あの狐以外にも仰山邪魔者がおりますな。
 ……しゃーない、わいも覚悟きめまひょか?」
と、不敵な笑みを浮かべる。振り返ると多くの仲間たちが戦う意志を見せていた。
「そいじゃま、やりましょか。
 わいら月帝姫の力……おもいしらせてやるでっ!」

( 終 )


。。。。。。。。。。。。。。。。。。
はい、どーも。
設定がメチャクチャですみません、フーレイです。

頭にあった事をかいてみました。
ぐだぐだですが、まぁ、こんなかんじです。
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by jin-109-mineyuki | 2011-09-22 12:00 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

大好きな人だから、独り占めしたい、一緒に居たい (咲乱、どきどき)


―2010年 2月 16日

 夕暮れの街に映える街灯。その下で、1人の女性が顔を上げた。視線の先には走ってくる青年の姿があった。黒い詰襟の衣服からして、銀誓館学園高校の物だとすぐわかる。
「咲乱が女の子を待たせるなんテねぇ」
「悪い。日舞のお師匠さんに電子レンジの使い方教えててね」
苦笑する女性に、咲乱と呼ばれた青年が頭を下げる。ちょっとしょんぼりしたような顔を見るなり、彼女はクスクス笑っていた。
「えーにーしー……」
「はいはイ。しょうがないナァ」
そう言いながらも、縁と呼ばれた女性は手を差し伸べる。青年は手を掴み、口元を綻ばせた。

シルバーレイン・プライベートSS
『あるアフターバレンタイン』 (著:フーレイ)

 バレンタインも過ぎ、店ではチョコレートが割引されて売られている。それを横目に見ながら1組のカップルがスーパーマーケットの中を歩いて行く。2人ともポニーテイルを揺らし、楽しげに話しながら買い物をしていた。
紺色の瞳に、学校の制服なのが水繰 咲乱(b36038)。
赤い瞳に、軽やかなジーンズと白いシャツなのが海堂 縁(b30348)。
2人とも、こうしてみるとごく普通の若者だが……まぁ、色々深い事情を抱える『能力者』である。時が来れば、何も知らないごく普通の人々の命を陰ながら守る為に戦へと身を投じる存在であり、それを除いても似たような境遇の人間にしか言えない事だって抱えている。が、今はごく普通の若者であった。
「しっかし、最近仕事続きで大変だったな……」
「まぁ、ネ。でも全てうまくいったシ。これで暫く休みだといいナァ」
咲乱の言葉に縁が苦笑する。忍である彼女は鳩によって任務が齎されたら、行かねばならない。その事を知っているが故、咲乱はじれったく思っている。
「鳩がこなけりゃいいよな。バレンタインの日だってちょっとしか会えなかったし…」
咲乱はそう言いながら縁に苦笑しつつ、精肉コーナーに並んだ肉を見た。
「今日は鍋にするけど、縁は何がいいかい?」
「そうだネェ、……鶏団子鍋がいいネ?」
「よし来た。鶏挽肉に柚の皮をちょいと仕込んだものにしようかね」
少し思案しながらリクエストする縁に、咲乱は頷く。その後も色々話しながら買い物を済ませ、2人はそこを後にした。

―『宵闇館』
 ここは咲乱が下宿している洋館。咲乱の部屋ではキッチンで調理した具をカセットコンロの上に置いた鍋でぐつぐつ煮ている。整理された部屋の片隅では三毛猫のホームズがキャットタワーの上で丸くなっている。
「相変わらず手際がいいネェ♪ 惚れ直しチャウv」
「おだてても何も出ないぞ」
縁が笑い交じりに言うと、咲乱は苦笑しつつもほんのりと頬を赤くする。鍋に具を足しつつも嬉しそうににやにやしている。そうしている間にも縁は豆腐や白菜を器に盛って、ふうふういいながら食べていた。
「最近は仕事が多くテネ。中々会えなくて寂しかッタんじゃないのカナ?」
と、縁。
「……まぁな」
ぼそっ、と答える咲乱の顔は複雑そうだ。縁のやっている仕事が何かは十分承知している。が、その内容が若干そんな表情にさせるらしい。彼女が「忍びだからネ」と答えるのは判り切っているので口にはしないが……。そんな姿も、からかい対象になっていたりする事に、気付いていない。
「だってさぁ。俺は……その……縁をひとりじめしたいっつーか…なんつーか…」
「ははっ、相変わらずだナァ♪」
更に赤くなる咲乱の頬に、縁が手を伸ばす。そして口元についたご飯粒を取るとひょいっ、と口にした。修行が足りない、と言うべきか益々咲乱はたじたじになる。
(あー、やっぱ俺……縁に敵わないんだよなぁ、こーいうの)
頭から湯気が出そうな程紅潮しているが、それでも平静を装って食事を再開する。口にした鶏団子が何時もより美味しく感じ、ふと、縁と目があった。
「よく考えてみれば、俺達……付き合って一年になるな」
「覚えていたんダネ。色々あったから忘れたんじゃないカッテ思ってたヨ?」

 約一年前。バレンタインが過ぎても屋上は多くの生徒たちで賑わっていた。偶々カレーを振舞っていた咲乱はそこで縁と出会い……互いに惹かれあった。そして、一緒に幾つかの戦争を乗り越えここまで来たのである。

「いつの間にか、だったネ」
「あっと言う間の1年だったよ」
2人で思い返せば、楽しい思い出がよみがえる。確かに喧嘩する時もあったが、一緒にいると互いにくつろげて、幸せだった。互いに深い事情を抱えてはいるが、その手があれば乗り越える自信もある。そんな事を感慨深く思っていると、縁はある事に気が付いた。
「咲乱も今年3年生カ。進路は考えてるの?」
「うん。大学の教育学部か理学部に行きたいと思ってる」
彼女の問いに咲乱がスムーズに答える。この学園に来てから「学校の先生になりたい」という夢が出来ているのだ。その話をする度に、紺色の瞳がきらきら輝くのを縁は知っている。口元を綻ばせ、茶を飲みながら恋人を見つめていた。
「まぁ、試験は苦手だ。でも頑張るさ」
ぶっきらぼうに言い放つ咲乱の横に座り、縁はさり気無く鶏団子を差し出す。
「なら、たっぷりスタミナをつけないとネ?」
「あはは、言ってくれるね」
「はい、あーんしテ」
「……あ、あーん…」
咲乱の口に運びこまれる鶏団子。こうして食べると妙に気恥かしくてならない。けれど、愛する人の温もりが、なんとなく嬉しい。
(守る為だったら、俺は何度でも戦える……)
一つ頷き、縁を見る。と、縁も穏やかな笑顔を見せてくれた。この笑顔を見るたびに、出会った頃よりも豊かになったなぁ、と実感する。
「味はどうダイ?」
「ん……おいしいよ」
と、2人見つめ合っていると……

ガタッ ガタガタッ!

と、窓が震える。
「もしかしたら、そろそろ行かなきゃいけないのかもネ」
縁はちょっとだけ苦笑し、窓へ行こうとしたが咲乱がそれを手で制して席を立った。
(……ちっ、鳩か)
そう内心で言いながら咲乱が窓を開けると……見覚えのある少年が顔を覗かせていた。白い髪をポニーテイルにし、学ランに身を包んでいる。あと、白いマフラーが暗闇に映えていた。水繰家と協力関係にある忍びの末裔、雨月 寒凪がにこやかな笑みで手を振っていた。
「よーっす、咲乱様、縁様。近所まで来たんで挨拶にきたっすー♪」
「「……」」
咲乱と縁は言葉を失う。そして僅かな沈黙の後、咲乱と縁は黙って窓を閉め、カーテンを閉めた。
「ちょっ、お二人とも!! それは無いっ!」
「緊張の糸が切れたわっ!!」
咲乱の言葉に寒凪は何が何だか分からず、首を傾げるだけだった。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
ども、フーレイです。
まず縁さんのPLさん、出させていただき誠にありがとうございます。
甘甘目指したけどおかしかったらごめんなさい。あと、オチ担当としてオリジナルキャラクターもでちゃったりしております。

 縁さんと咲乱が恋人同士になって1年。その記念にと思って執筆しました。縁さん、今後も咲乱をよろしくお願いします。

それでは。
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by jin-109-mineyuki | 2010-02-19 23:29 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より16:酒場


―喧騒、喧騒、喧騒。

 その中を歩くたびに、小さな翼がぱたぱた動いた。故郷ではない、賑やかな声にわくわくしていた。ここに来れば依頼がある、と聞いた新米冒険者は、きょろきょろと当たりを見渡した。
「……新顔?」
「うん。僕、ディート・マシロイって言うの。
 最近、冒険者になったんだよ?」
髪を二つに結った女性が、エンジェルの少年に問う。ディートは小さく微笑んで一礼した。
「私はミッドナー。霊査士をしています。丁度依頼の話をする所でしたし、
 是非」
ミッドナー・イートゥはそう言って一礼した。陽光に、きらりと鎖が光る。彼女の言葉に、少年は頷いた。

『酒

しばらくして。
「君には少し難しいものかもしれませんね」
ミッドナーの言葉に、ディートは頷く。そして、別の依頼を探すことにした。が、お腹がすいたので食事をしてから探すことにした。おいしそうなにおいが漂い、お腹がぐうぐうとなっている。
「ふふ、相当お腹がすいているみたいですね」
「うぅ~」
その言葉に顔を真っ赤にした少年にミッドナーは小さく微笑む。お腹を押さえ、カウンターに顎をのせるディートに、彼女は小さな声で呟いた。
「この酒場には色々な依頼が集まる。
 けど、こうして食事をとったり、お酒を飲んだりもします。
 ここは冒険者にとって、憩いの場所でもあるんですよ」
その言葉通り、今も多くの冒険者たちが和気藹藹と食事をしている。依頼の話をしている人もいれば、報告書に目を通す人もいる。はたまた世間話に花を咲かせる者もいてとても楽しかった。ディートにとっては、新鮮な光景で、思わず見入ってしまっていた。そうこうしている内に料理ができ、ディートの前にもおいしそうなハンバーグが置かれた。
「あ、ごはんっ!!」
ぱっ、と気づきランチを口にし始める新米冒険者に、ミッドナーはただただ笑みをこぼす。今後、彼は自分が受け持った依頼をこなしてくれるかもしれない。そう思いながら。

(終)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
後書き
えーっと、気分がおちついてきたのと、色々あってディートの話を。
ミッドナー・イートゥさんはNPCさんです。

漸くかけた……んだけど、ちょっとぼろぼろ(汗)

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2010-02-15 21:00 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より17:指先から


―血に混じる熱は全てを火照らせ、思考を鈍らせる

そんな事を思いながらギーエルは愛する人の髪を撫でた。先ほど塗った軟膏の匂いが鼻孔を擽り、それに表情を曇らせながら。
(全く……)
ため息をつきながら、もう一度髪を撫でる。そして頬を撫で、上唇を人差し指で擽る。無邪気な頬笑みを浮かべる彼に、ギーエルの眼も優しくなった。

先から」

 先日、最後の戦いが終わった。傷ついた体のまま祈り続け、冒険者たちはこの地上に戻る事が出来た。が、弟のように可愛がっていた友達は帰ってこなかった。愛らしい声の友達も散った。多くの仲間が命を捧げ、今はただ眠っている。
(命を託されたのかな)
ふと、そう思う。生きた者たちに、全てが託された。そう思ったのは終戦直後の事だった。

 ギーエルは多くの遺体の瞳を閉ざして回っていた。インフィニティマインドに魂の力を捧げ、散った者達の幾人かは、眼を見開いていたからだ。いつも明るいノリで過ごしている彼女ではあったが、流石にこの時ばかりは真面目な顔だった。瞳を閉ざし、化粧を施し、手を組ませる。黙々とそういう作業をしていくうちに、表情が穏やかになって行くのを、「彼」は見逃さなかった。
―優しいんだな。
彼はそう言った。
―ううん。違うなぁ~んよ。
ギーエルは「彼」にそう言った。静寂が広がり、2人はしばし見つめ合う。その刹那、どこか彼女の眼に宿るものを覚え、「彼」の表情が引き締まった。
―彼らの指が言うなぁ~んよ。≪たのむ≫って……。
唇から零れる言霊。ギーエルはそう答えるとまた作業に戻った。「彼」は遺体と静かな会話をするギーエルを黙って見つめ、胸元を掴んだ。その苦しそうな顔を見ないようにし、ギーエルは作業を進めていった。やがて、「彼」はその場を去った。

―おつかれ。
―待たせてごめんなぁ~ん。あ、あの子と一緒だったなぁ~んか。
ギーエルが戻ってきた頃、既に夜も更けていた。「彼」は手に包みを持って現れ、ギーエルは小さく笑う。どっちかと言えば「あの子」の方を選ぶ事を、ギーエルは知っている。が、年上故にそれを許し、かつ、あきらめはしない。決して「彼」を放さない、と心に決めている。
―いや、その…。
―別にいいなぁ~んよ? 俺は諦めないけどなぁ~ん。
どう答えようか迷う「彼」に、ギーエルは苦笑する。そして、そっと一歩踏み出すとやや強引に「彼」の唇を奪う。
―ぎ、ギーエル!
―ふふ、言っただろ、なぁ~ん。
ギーエルはそういうと両手で「彼」の頬を包み、ゆっくりと微笑んだ。

 滑らかな指が、逞しい肩をなぞる。細かい傷を覚えながらそっと、唇を寄せる。鼓動が跳ね、熱は血に混じって全てにめぐり、末端の指までも火照らせる。
「――」
ギーエルは愛しい人の名を紡ぎ、顎のラインをなぞる。優しい目でその寝顔を見つめ、前髪を払う。
(俺の指先は、いつでも貴方を癒すから。言葉なき愛の囁きも、ちゃんと聞いてほしいなぁ~ん)
―指先は踊る。愛しい貴方を喜ばせる為に。

(終わり)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)

後書き
どもー。フーレイです。現在星の海へと行ってるギーエルの話です。
えーっと、「彼」や「あの子」については過去のSSなど参照。特に「彼」についてはステータスみれば一発で分かります。思いついたがままに書いたけどゆるしてーね。

ちなみに。俺としてはいっそ一生トライアングラーで子孫繁栄すればまず少子化対策になると思うんだよね。
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-17 18:57 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

『むげファン参加者に30のお題』より18:蝶のように舞う


 突き出された拳、舞い上がる脚。丁寧に形をなぞるのは、セイレーンの武道家だった。彼は架空の敵を相手に、戦っている。繰り出された技に空気が唸り、月の光を浴びた青い髪が水面のように煌いた。

のように舞う」

「……体が少し重いですね。体重を落としたほうがいいでしょうか?」
そんな事を呟きながら、ニルギンは首を回した。ここ数日なぜか眠る事が出来ない。だから眠る前に少し、こうして鍛錬する時間を増やしているのだが。
(最近、何故か成長していない気がするんですよね……)
どんなに鍛錬を組んでも、自分が成長したという実感が持てない。そのぎこちない体が、とてもじれったく、ニルギンにとって重い物だった。
(このままでは、私はだれも守れないかもしれません。……いいや、弱気になってはだめです。私は愛する人に誓ったんですから!)
迷いを振り払い、呼吸を整える。そして神経を集中させる。自分のやれることからやって行けば、きっと……。

 その肢体は伸びやかに月光を踊る。靡く足の軌跡に夜露が弾け、放たれた拳が空を打つ。青々とした瞳の先に、見えない敵を映し、その全てに気を纏わせて。

―私には守りたいモノがある。

 蹴りあげられた影、踊る青い流れ、煌いた銀。風が裂かれ、布とともに歓声を上げる。踏み込まれた土が悲鳴を上げ、その空間は矢の如き蹴りに穿たれる。

―私には愛しい人たちがいる。

 くるり、と舞う体。うっすらと浮かんだ汗すらも彼を飾る宝石に見える。青白く輝くベールを切り裂く、刹那の見えぬ刃となり、若いセイレーンは踊る、踊る、踊る。

―私には誓った事がある。

さまざまな思いを胸に、ニルギンは舞を舞い続けていた。傷ついた仲間たちの顔、散っていった仲間たちの顔、今を生きる仲間たちの顔、大切な仲間たちの顔……。脳裏に浮かぶ笑顔を胸に、そして、それらを曇らせる敵を穿つために…
「私は、戦うっ!」

眠れぬ夜に、ふと、窓の外を見る。と、外でニルギンが鍛錬する姿を見ることが偶にあった。その姿を見たものは、みんなこう言った。
「月夜に鍛錬をするニルギンは、まるで天女のようだった」と。
どこか朧気な雰囲気を漂わせながらも、瞳に闘志を宿らせるその様に、言葉を失う者も少なくはなかったらしい。その事を本人に言っても彼は「偶然ですよ」と曖昧にしか答えなかったが。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)

あとがき
 久々にお題消費。ぼちぼちやります~。まぁ、いろいろありますから遅くなる可能性もありますけど、できるだけ毎月更新できたらいいな、とはおもっています。
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by jin-109-mineyuki | 2009-08-29 20:20 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

本気バトルは難しい (咲乱、修羅色の舞)


―ヒュンッ!
研ぎ澄まされた一撃が、咲乱の前髪を散らす。風が裂かれ、その一遍が頬を掠めて血が滲む。同時に酷く冷たい力の存在を感じ、背筋に鳥肌が立つ。必死に避け続けていたらいつのまにか来た道を戻っている。
(魔力が濃い。……でも、これは亜夜羽のじゃない。じゃあ、一体……)
何度も閃く銀色を、ただ只管かわしながら咲乱は亜夜羽を観察する。と、彼女の手には一本の刀が握られていた。一見普通の刀だ。でも、咲乱には、それが普通のものではないことが、直ぐにわかったのだった。

シルバーレイン プライベートテイル
『17.4』 第五閃

「ちっ、そういうことかよ!」
咲乱は一撃一撃を的確に避けながら亜夜羽の様子を伺っていた。彼の記憶が正しければ、亜夜羽の手に収まっているのは妖刀だったはずだ。幼い頃父親が傷だらけになりながら成敗し、大人しくなるまで封印を施したのを覚えている。
(何者かが蔵の扉を開け、態と封印を弱めた。そして、妖刀は亜夜羽を何らかの方法で誘い出し、封印を解かせた)
また、銀の光が体を襲う。思わず懐から扇子を取り出し、それを庇う。鉄の骨を持つ扇はいやな音を立てて攻撃を殺ぎ、ぐっ、と刀と噛み合った。
「うふふ、さっちゃん……たたかうの、にがてだもんねぇ?」
亜夜羽が笑う。彼女の言うとおり、咲乱は戦闘が得意ではない。一応体術の心得はあるが、幼少の頃より鍛えている亜夜羽の足元にも及ばない。
「そんなことで、とうしゅなんてつとまんないよ?」
踊るようにすべる刀。幼稚な笑い声と相容れない、純粋な漆黒の殺気。銀の閃きは的確に咲乱の急所をとらえる。反応が遅かったら確実に赤い花が咲いていた。それと鉄扇のお陰でどうにか傷は浅かったり少なかったりするが、防ぎきれない分はやはり吸い込まれて傷になる。普通の人間には聞こえないが、確かに、殺気や魔力が犇めき合っては耳障りな音を放っていた。
(あいつにも、この嫌な音は聞こえている筈だ。正気ならば)
足のうらに確かな砂利の感触を覚え、肌に焼けるほどの悪意を覚え、それでも尚咲乱はにやり、と笑う。頭の中がすっきりしていくような感触を覚え、彼は瞳を細める。一瞬、それに亜夜羽が動きを止めた。
「しかし、俺より出来のいいお前が…そんなもんに精神を乗っ取られるなんざ…様ぁねぇぜ」
咲乱がぽそっ、と呟く。と、一拍の静けさ。
「……そんなもん?」
亜夜羽がきょとんとする。が、咲乱は全身の毛穴が音もなく開いていくのを感じた。
―さらに澄んでいく、殺気。
「そんなもの…じゃ…ないっ!!」
ばっ、と紅が散った。タイミングがずれたら確実に死んでいた。けれど咲乱は運良く浅く胸を切られただけで済んだ。出血量にしては傷が浅い。それも咲乱は感じていた。
「馬鹿野郎!俺より魔力が強くて精神力もあるはずのお前が何妖刀なんかに乗っ取られてやがるんだよっ!」
全身の体温が、掌に集まる。能力者として覚醒してから覚えた力が黄昏の薄闇に紅蓮の花びらを散らす。
―炎の魔弾。
それを目くらましにすると距離をとり、さらに集中する。魔力を整えて能力者の力ではなく本来持っている魔法を使うために。…が、それは途切れた。
「っ!」
背後に魔力を覚え、思わず左へと転がる。同時に茨の蔓が鋭い棘を生やして襲いかかってきた。水繰家の血を引く人間は、生まれながらにして植物の性(さが。本性)を持つ。水繰家の血をひくものは例外もなく己の魔力を植物の姿へと具現化させ、使役することができる。咲乱の記憶が正しければ、彼女の本性は茨で、その能力は……
(相手のプライドを打ち砕く!)
思い出したとたん、咲乱の体が硬直した。もう一度炎の魔弾を放とうとしたが、体温の移動は起こらない。鋭い痛みが左腕に絡みついている。身を起こすことはできたが、僅かに眩暈が起こった。どうやら、よけた際に棘が腕を掠めたらしい。
(くそっ、魔力が……)
焦った。亜夜羽の魔力が、咲乱の神経を通り、興奮させる。体が動かない。なぜだろう、その場には二人しかいない筈なのに、幾つもの視線を体全体に覚えた。
(これは幻覚だ。まやかしだ!)
そう言い聞かせ、動こうとしたとき、体から力が抜けていくのを感じた。砂利の感触が袴を通して膝に伝わる。

―『種』は『種』らしく大人しくしていればよいものを

不意に、そんな言葉が聞こえた。聞き覚えのある言葉に、形の良い耳が動いた。

―そうそう。幸い、容姿はほどほど良い。上質の『種』として嫁ぐ準備をすればいいのに
―『種』のくせに当主になろうとは、おこがましいんだよ


(!? だから、これは……幻聴だ…っ)
咲乱がぐっ、と歯をくいしばっても、そのねっとりとした言葉は拭えない。いつの間にか、鼓動が激しくなっている事に気づいた。
「……違う……」
強く息を吐き、もう一度立ち上がろうとする。が、なにかに押しつぶされたように砂利へと倒れこむ。息がつまり、目を白黒させている間もその声は止まらなかった。

―ただの『種』め、くたばっちまえよ
―『種』の役目だけを果たせばいいというのに…
―『種』のくせに


(だから……違うっ、これは幻聴だ!亜夜羽の魔力の所為だっ!)
何度も何度も首を横にふる。声を無視しようと。それなのに何故、聞こえるんだろう?それでも起き上がろうと、咲乱は身をじたばたさせた。どうにか、動くようになると深呼吸。
(亜夜羽を、正気にもどさねぇと……っ)
そして、ぐっ、と起き上ったとき……確かな冷たさを覚えた。
「たねのくせに、あらがっちゃって……」
「……えっ?!」
咲乱の目が、見開かれる。浅かった筈の刀傷が、より深くなっている。目の前の亜夜羽は、あからさまな、されど、王者を思わせる嘲笑で従兄弟を見ていた。

―意識が、に、染まる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

久方ぶりにこのシリーズを更新。 まぁ、いろいろあってね。
とりあえずこの話はちゃんと書きあげます。

縁先輩、またストーリーに登場させてくださいね。
考えているネタがあるんで。
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by jin-109-mineyuki | 2009-07-24 16:35 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

銀雨リアイベ「ディスティニーサーガ」舞台裏 (フーレイ、連載ぶっちぎった)

―午前9時ごろ。

 咲乱の友達である忍びの末裔、雨月 寒凪(うげつ かんなぎ)は小さく欠伸をした。
下宿先の部屋でパソコンを開き、何気なくメッセンジャーのスイッチを入れる。

カン:咲、そっちはどう?
舞椿:ん、ぼちぼち。

 咲と呼んだのは『銀誓館学園』に通う能力者であり、自分の将来の主、水繰 咲乱だ。今、かれは能力者の使命としてMMO『デスティニーサーガ』をプレイしている。寒凪もまた、クラン『ウィザーズファン』のメンバーとしてこのイベントに参加していた。

 この『ディスティニーサーガ』は見た目、ごく普通のMMOである。しかし「完全招待制」かつ「厳格な情報統制」の為、その存在は世間に殆ど知られていなかった。そして、その正体というのが『参加者の魂を奪う呪いのオンラインゲーム』だった。判明したのは銀誓館の能力者が調査してくれたおかげだ。

 寒凪はこのゲームが始まってからすぐに招待された。そして友人のクランに入っていた。彼がこの真実を知ったのは友人からのメールだった。

―かんちゃん。 このゲームは…死神だ。

その数時間後、友人は倒れ昏睡状態。現在、友達である陣内 燕の家で保護され、眠っている。こういう事件に縁のある水繰家や陣内家、はては播磨家、紺野家でも調査が行われたものの銀誓館同様データセンターの位置はわからなかった。そして、21日のイベントでプレイヤーの大量虐殺を行う、というのが判明した。

故に、銀誓館同様、正々堂々とイベントに参加し、それを食い止めるため、寒凪たちも立ち上がったのだった。

カン:っと、お前はグラップラーか。俺はローグさ。
   お互いに、がんばろうぜ?
舞椿:おう。ってか…まさかと思うけどさっき入った『ウィザーズファン』
    って結構多くない?
カン:ははっ、まーね。こういう事件に絡む知り合い数人に頼んで援護
   してもらうようにしてるから。

寒凪は小さく笑い、画面を見つめる。そして、ひとつうなずいた。
何も銀誓館の能力者たちだけがこの真実を知っている訳じゃない、と。

(午前9時 27分ごろ更新)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
―10時半ごろ。 某所。

「真珠、今回の事件ってどう思います?」
「たちが悪いよ、クルトン君。僕たちの手にも負えないからさ」
そんな事を言い合ってパソコンに向かう青年と少年。1人は糸目なヨーロッパ系外国人。1人は小麦色の瞳をした小柄な少年。そして、部屋はあるマンションの一室。クルトンと呼ばれた青年はため息をつき、部屋の主を見た。
「……ローンさん、眠ったまんまですね」
ベッドでは、彼らとそんなに年齢が変わらないであろう青年が1人眠っている。顔色は多少悪い。そして、何より、どこか『何か』が抜けている感じがした。
「咲乱様曰く『魂狩りのための媒体だった』と。いったい何のために魂を集めていたんだろう」
真珠と呼ばれた少年が記憶をたどりつつ、ノートパソコンに届いたメールと見つめていた。

―神楽家当主 神楽 真珠殿

 水繰家次期当主 水繰 咲乱として貴方と友達であるクルトン・バッカニア殿に協力願いたきことがあり、電文を送らせてもらった。同時に、関係のあるMMO『ディスティニーサーガ』へのご案内を。

 既にその調査に乗り出していたクルトンは渡りに船とばかりに真珠を自分が入っているクラン『ウィザーズファン』へと誘った。そう、寒凪が所属しているクランだ。実を言うと、『ウィザーズファン』を立ち上げたプレイヤーはゲーム開始直後から何かきな臭い空気を感じており、クラスメイトであった寒凪や文通相手であったクルトンに協力を要請し、銀誓館とは別の方法で調査を行っていたのである。

「さて、どうなることでしょうか……」
とクルトンがモバイルを見つつ呟く。彼はそれから参戦しているのである。その顔はどこか真剣で、ゲームで遊んでいる風にはまるで見えない。
「まさかクルトンくんの弟も昏睡状態になってるなんてね。
 一刻も早くこの事件を解決したいよ……。でも、俺たちじゃ、だめなんだろうね」
真珠は何気なく呟き、電子メールを見つめる。彼が協力をしている相手、咲乱は巨大能力者組織『銀誓館学園』の一員だ。きっと彼の所属するそこが、事件を解決するのだろう。最近、『運命の糸』を見ることができるようになった彼はそう、感じていた。
「恋人さんは無事?」
「ええ。仕事が忙しくて、ゲームの存在すら知りませんよ」
「そういいながら昨日、一緒にお昼ご飯たべてたじゃないか~」
そんな会話をしつつ、真珠とクルトンもまた『ディスティニーサーガ』の野望を阻止せんと、頑張っていた。

※:クルトンはアーチャーの『浮』(ふう)、真珠はプリーストの『バロック』でプレイ中である。

(午前11時 23分ごろ更新)
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―正午の数分前。

カン:それにしてもさ、なかなか手ごわいものだね。
舞椿:そういえばねぇ。でも、やるっきゃないじゃん?
 浮:しかし舞椿さん。
   そちらの方……なんか噂が立っているんですけど…。
バロ:うん。クラン『銀誓館学園』って巨大な組織が出資しているプロ集団で、
    デスサガ潰しにかかってるって。
舞椿:イベントはつぶしにかかっているけど、ゲーム自体はまだ無理。
    お前らだから言うけどさ……絶対つぶさないとまずいと思うんだ。
カン:そのつもりさ。魂狩りなんて、させちゃならねぇ……。
 浮:でも、何のためにするんでしょうかねぇ…魂狩り。
カン:なんか呼び出すつもりなのかな?
バロ:魂を使って……鬼かな? 悪魔かな?
舞椿:どーだろ。俺は微妙でならん……。
 浮:そうですねぇ。そこの調査は今後『銀誓館学園』の能力者さんにお任せしましょう。
舞椿:ああ、がんばるよ。

 メッセンジャーでそんな会話をしつつ、咲乱はため息をついた。『デスティニーサーガ』の話題を聞いた時から何気なく嫌な予感はしていた。友達とこの話題を話していた時、考えていたことがある。

……もしかしたら、能力者の片りんのある人を引き付けて、洗脳か贄(にえ)に?

なんとなく、考えていた路線は間違いではなかった。その事に咲乱は小さくため息をつく。けれど、きっ、と画面を睨みつけ、小さな声でつぶやいた。
「どこに嫌がるんだ、黒幕さんよ。
 俺たち銀誓館が絶対に追い詰めて、この代償を払ってもらうかんな…っ!」

(午後1時 14分ごろ更新)
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―午後1時ごろ。

 部屋に戻ってくるなり、月華 陸は着替えながらパソコンを起動させた。今日は運悪く午前中は部活だった。が、今からでも間に合えば……。
「陸、帰るなりパソコンかい?お昼はどうするの?」
「後で取りに行く」
苦笑交じりの父親の声。それに焦りながら陸は答える。買い換えたばかりのパソコンはすぐに起動し、陸はすぐさま『ディスティニーサーガ』へログインした。同時に音声チャットもオンにする。
(クルトンの情報が正しかったら……それってまずいことじゃないか!)
魂を狩るゲーム、と聞いて陸の何かが激しく震えた。こんなゲーム、許しておけない。
「陸、待っていたよ」
聞こえてきた声は優しいアルト。空手の試合で知り合ったユイエ・シロトクロがにこやかに笑う。
「これでクラン『九蘭』は全員集合だね。……どうにかクラン『ウィザーズファン』と協力して
 いたおかげで全員生きているよ」
続いて、穏やかな男性の声が聞こえる。足立 明午は陸とあるHPで知り合ったメル友である。
「んじゃ、いくで!フルスロットルでいかんと……。
 クルトンちゃんや真珠ちゃんも頑張ってるんやし、寒凪ちゃんの話によると
 咲乱ちゃんも『銀誓館学園』っていうえらい大きなクランでやってるんやて」
元気のいい女の子の声がした。玖凰 晶はクラン『九蘭』を立ち上げた張本人であり、彼女率いる少数精鋭はなかなか強いとの評判だった。
「うん、がんばる。
 そして、魂狩りを阻止しなくちゃね!!」
陸の声に、全員がうなずいた。

※陸はナイトの『リク』、ユイエはノーブルの『燐』、晶はグラップラーの『トモ』、
  明午はローグの『ネヴミ』でプレイ中。

(午後4時36分ごろ更新)・・・誤って記事を消したので
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―午後2時半ごろ

 「あのでかすぎるクラン『銀誓館学園』……凄いよね」
ぽつり、とユイエが呟く。パソコンから離れ、ちょうど携帯を鳴らしていたのだ。その相手は音楽仲間のハロエリス・コウロギモリだった。運良くバイトの休みが取れた彼はネットカフェから参戦している。
「そうっスねぇ。しかも皆お金持ちっス。……噂で聞いたプロっスかねぇ」
ハロエリスは自分のキャラクター、ファイターの『アヌビス』の姿を見つめながら、ちょっとだけ苦笑する。彼の聞いた噂では『巨大なクラン「銀誓館学園」にはスポンサーがおり、沢山のプレイヤーを雇っている』と。一部のプレイヤーの間では「ルール違反だ」「排除対象でしょ?」という声もささやかれたが、一部のプレイヤー達……ほとんどが真実を知る者達……は彼らを信用している。
「咲乱にそこの所を聞いてみたんだけど……口ごもっちゃったんだよなぁ。
 言いづらいんだろーね」
「そうかもしれないっスね。もしかしたら能力者団体の1人としての参加かもしれないっスから」
二人でそう笑い合い、そして携帯を切る。ハロエリスは小さくため息をつくと再びパソコンに向かった。彼のキャラクターは『ウィザードファン』である。その一員として朝から参加しているが・・・・・・ローグとクルトンの弟、パセリア以外は倒れていない。
(……解決したいっス。クルトンさんの弟さんもローグさんも助けたいっス)

―午後3時 10分ごろ。
 ある青年を見、陣内 燕はため息をついた。巫女服のまま命を守る祈祷を続けてはいたが、効果は薄い。しかたなく、弟にすべてを任せ彼女もパソコンに戻った。プリーストの『スワロウテイル』はクラン『九蘭』に所属している唯一のプリースト。倒れるわけにはいかない。そう思いつつメッセを開くと、丁度同じクランの仲間が声をかけてくれていた。
「ああ、カディ先輩…」
「ん。ようやく陸ちゃんもきたし、頑張ってる」
カディと呼ばれたのは伴澤 カディナルト。大学生であり、本来ならば今頃実家のレストランで働いているはずだ。しかしここにいるという事は……
「元々休みの予定だったの。他の料理人さんと一緒に魚釣りだ。
 とにかく、残りをつぶさないと」
カディの文体は明るい。燕もうなづいた。が、表情はわずかに厳しい。
「……水繰家次期当主も大胆な事をしますわね。うまく伏せて協力を仰ぐなんて。
 ま、偶然でしたけれども?」
「相変わらずとげがきついね、燕」
燕はカディの言葉にそっぽをむく。と、言うのも水繰家とおなじ人間の『負の感情』の吹きだまりを制御する陣内家。ライバル的存在ともいえ、燕は次の当主に対し複雑な思いを持っていた。
「・・・今はそんな事を言っている場合ではありませんわ。 …まだ敵はいますのよ」
そういいながら、燕はパソコンを見つめた。

(午後5時 48分ごろ更新)
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―午後6時

 咲乱は『宵闇館』の食堂にいた。パソコンの電源を落とし、部屋に戻すと今度は厨房に立つ。
「さて、料理でも作るかなぁ」
そういいながら冷蔵庫に手をかけ……携帯電話がなる。不思議におもい、携帯を開くと何通かのメールが入っていた。そのすべてが「ディスティニーサーガ」に参加していた咲乱の友達だった。
「……お前らも、ファイナルクエスト……戦うつもりなんだな」
ひととおり目を通し、呟く。それが何を意味するのか、咲乱にはわかっていた。このファイナルクエストは1つのクランのみが参加可能だが・・・彼らには彼らの形で共に戦う、と言っているのだ。

―敗北は参加者全員の死を意味する。

だからだろうか。何故か体が熱くなる…。思いが伝わって、胸が熱くなった。
「ホント、ありがとう。俺も頑張るよ……」
咲乱はぎゅっ、と携帯を握りしめ、一人うなづいた。

 全てが終わり、寒凪は自室から出た。そして夕食を取る。それが終わるとクランでのチャットに参加する。後から咲乱や燕たちも参加することになっていた。音声チャットでカディナルトと話しつつ、時間を待っていた。
「ファイナルクエスト、ね」
「1つのクランしか参加できないのが口惜しい……。だが、まだ時間はある。私達でサポートできる分は、しないとな」
彼女の言葉に、寒凪はうなづきながら記憶をたどった。たしかカディナルトの言うとおりで1つのクランしか参加できない。という事は……『銀誓館学園』に頼るしかない。
(だったらサポートできる分は……サポートしよう。俺たちの分まで、頑張ってもらわないと……な!)
彼はいつの間にか、ぎゅっ、と拳を握っていた。
「丁度、いいクエストがある。それに誘ってみるよ」
そういいながら、カディナルトもまたパソコンのモニターを見つめた。

 クルトンと真珠は一緒にファミレスで食事をしながら今日のことを振り返る。ゲーム後、ローグを燕へ引き渡し、必死に頑張った。そのおかげでどうにか二人ともクラスチェンジできるようだ。それに安堵しつつも……表情を引き締める。
「……やるしかないよね」
「ええ。俺の弟と、ローグさんを助けるためです」
自分たちでできないならば、その援護をしよう。おそらくレベルアップをしなければならないだろうし……。せめてアイテムの提供ぐらいは、彼らにやってやりたかった。そう決意を固めていると、急に真珠の携帯が鳴る。相手は燕その人だった。
「ローグさんたちの容体は?」
「変化がありませんわ。……陣内家でどうにか守りますから、ご安心を」
そう言い、燕はこうも付け加える。
「こんな力を使うなんて、裏を知る者としては恥ですの。……重い裁きを受けさせなくてはなりませんわ」

 陸が食事をしに一階へ降りていると、丁度ユイエが遊びに来ていた。比較的近くに住んでいる彼女は時折陸の家に程近い心療内科に通っている(そこには明午も通っており2人はそこで知り合った)。
「えっ?ファイナルクエストに『銀誓館学園』がチャレンジするのか?」
「ああ。丁度そこのクランに友達がいてね。それで聞いたんだけど……。生存率0だろ?それで応援しようかとおもってさ」
ユイエはそう言いながら一つのフラッシュメモリーを陸に渡す。2人で2階へ上り、陸の自室にあるパソコンでデータを開く。と、それにはレアアイテムドロップモンスターの一覧だった。
「これ、どうしたのよ?」
「データ収集目的のクランから拝借したんだ。あいつらは真実を知らないけど、『銀誓館学園』を応援するとかで、俺含め何人かに託してる」
その言葉に、陸は小さくうなずく。魂を助けるために、彼らは戦うのだ。その為になら…できる限り、手助けしたかった。

 一方、明午は晶、ハロエリスとともに音声チャットをしていた。話題はもちろん『ファイナルクエスト』についてである。情報筋によると、それにクリアすれば魂は解放される……らしい。
「本当なんかな?」
「オレは信じるっス。これで向こうの野望がつぶれたらとっても嬉しいっス」
晶の言葉に、ハロエリスが頷くように答える。明午はふむ、と送られたデータを見ながら……考察を巡らせていた。
(向こうもルールを守らないと魂を刈り取る事が出来ない。と、いうことならばルールを乱してしまえばいい。だけど…方法が分からないな…)
数日前、寒凪にハッキングをお願いしたものの…徒労に終わっている。裏の手が使えない今、巨大クラン『銀誓館学園』に頼るしかない。それを悔しく思いながらも、明午は情報を探すのだった。
「でも、うち思ったんよ……。このゲーム、何の目的で魂をあつめとったんやろ?」
晶の呟きに、ハロエリスがぽつり。
「まさかと思うけど…悪魔か何かを呼び出すつもりっスかねぇ」
「……どうだろうなぁ」
明午は相槌をうちつつ、窓の外を見つめた。一体何人の人が眠っているんだろう。そして、その全員が助かるのは……。

 こうして、「ディスティニーサーガ」にかかわった若者たちは、其々複雑な思いを抱えながら夜を過ごした。だが、それは28日に行われる「ファイナルクエスト」への序章でしかなかった…。


(6月 22日 午前11時 43分ごろ更新:終わり)

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あとがき

ノリでPBMのPC出してみました。 うん、他の参加者も出したかったんだよ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-21 15:51 | 無限銀雨図書館

所詮、世界はネタに満ちている (咲乱、里帰りは)


 しばらくして導乱がいくつもの料理を持ってきてくれた。おいしそうな匂いに3人の食欲も刺激される。咲乱たちは喜んで料理を口にした。が、それはどれも微妙に精進料理……だったりした。
「……よくみると、これ…お肉じゃないネ」
「うん。豆腐をつかってあるんだよ」
「俺も最初は豚肉っぽく見えたけど揚げだったな」
縁、咲乱、雅己の三人が食後のお茶を飲んでいると結がにこにこと口を開く。
「それはそうですもの。水繰家と真行寺家が正式に同盟を結ぶ為の式がありますから。それに、長老や他の皆さんにも縁さんをお披露目しないと」
その言葉に、縁と雅己は目が点、になった。導乱と咲乱は顔を見合わせる。
「なぁ、親父。2人分の白装束あるの?」
「なぁに。歩弛(ほたる)が一晩で準備してくれたから」
2人の会話に、客人2人はどこか不思議そうに首をかしげた。

シルバーレイン・プライベートSS
『桜、里帰り(前略)大分の洋館より』(中)

 時間は夕方。温泉で湯浴みをして体を清めることになったので雅己は咲乱と導乱とともに、縁は結と雪路とともにそれぞれ風呂場へ向かう。
「服はどうするんだ?」
「ああ。脱衣所に置いておけば後から運ばせるさ。既に着替えも用意してあるから」
雅己の問いに導乱が答え、その後ろでは使用人と思わしき男女がすぐに動いている。
「それじゃ、また後デ。のんびり浸かってくるヨ」
縁はにっこり笑って雪路たちについていく。咲乱が頷き、男性陣もまたお風呂場へと歩いて行った。僅かに沈みかけた日の、琥珀色を帯びた光の中、三人はとことこと歩いていく。
「なぁ、親父」
「ん?」
不意に、咲乱は父親を見上げて声をかける。
「なんか、昼食中元気がなかったみたいだけど?」
「いや、ネットセッションで『クトゥルフの呼び声』を久し振りにしたんだけどさ。……狂気に陥って最後にニャル様に喰われて死んだんだ、PCが……。それを思い出して」

……………。

2人の間に何とも言えない空気が広がる。
「……何の話だ」
雅己は突っ込みたそうな顔で2人を見ている。と、いうより隙あらば2人まとめてこめかみぐりぐりしそうな雰囲気だ。が、咲乱は首をかしげる。
「いや、俺はわからん」
「だったらスルーしろ。それが大人ってもんだぜ」
導乱がカラカラと笑うが2人はジト目で現水繰家当主を見ていた。と、今度はとたとたと一匹の猫が廊下を歩いているのが見えた。
「へぇ。咲の家にも猫が……」
雅己がそう言ってその猫を見ていたのだが……微妙に胴が長い。思わず歩みを止めて見入っていると、その猫はおわぁ~~~~~と間延びするような声で一声鳴き、導乱や咲乱の足に体をこすりつける。
「あ、そいつはノビって言うんだ。友達のとこからもらってきたんだよ」
頭をなでなでする咲乱。ノビと呼ばれた猫は雅己が出した手の匂いを嗅ぎ、しばらくすると安堵したのか頭を足にすりすりしてきた。
(うん、胴と鳴き声が長い以外は普通のネコだよな)
なんか和んだ。ちょっと色々長い気がするが、なんか和んでいた。導乱はこの猫を「ノビた~ん♪」と呼んですっごくかわいがっている。そんな様子に、ちょっとひきかけた雅己だった。

 一足早く風呂場について縁は衣服を脱ぎ、温泉にいた。どこかほっとする空間ではあるが戦争での傷がやや染みる。しかし……。
(どこか似ているようで、違う。違うようで似ている)
縁はふと、瞳を閉ざして思った。彼女は忍びとして生まれ、忍びとしてこれまで過ごしてきた。その『忍里』と似た空気を、この家は宿している。しかし、それは何か質が違い……、そうか、と彼女は納得する。
(この家は魔法使いの血筋。その部分を隠す必要がある……)
「縁さん、お湯加減はいかがかしら?」
不意に、顔を上げて瞳を開く。声は隣からで、湯着を纏った雪路に手伝ってもらいながら入浴をしていた結だった。咲乱よりも白い肌と、艶々とした黒髪が光に映えている。軟らかな湯けむりと空気に縁も甘いまどろみを覚えつつ、頷く。
「いいですネ。湯治にはもってこいじゃないかト」
「ありがとう。うふふ、この温泉は誇りですもの」
結が心から嬉しそうに笑い、雪路もまた頷く。ハンサムなその目が縁の赤い瞳と重なる。
「そして、水繰家にとっては清めの物。儀式の際は必ずこの湯で沐浴を行うようにしているのです。海堂さん…いいえ、縁様も水繰家に嫁ぐ際は婚礼の前にここで【濯ぎの儀】を行う事になります」
「!」
思わず息を詰まらせる。雪路はその様子にくすくす笑い、結もかわいい、と呟いて縁の頬に触れる。
「こっここっ、婚礼って……そんな……」
「あら? 私はそう思ったの」
結はにっこり笑って、そっと縁を抱きしめた。

 男湯。衣服を脱ぎ、風呂場で体を洗い始めた三人は何故か微妙な空気が流れていた。
「………」
「………」
「喧嘩、すんなよ?」
ぎろっ、と睨む雅己に縮こまる水繰父子。何かが違う、と思いつつも2人は黙々と体を洗う。因みに他人が見たら近寄りがたいのはそれだけではない。三人とも体は鍛えられており無駄な脂肪は全くと言っていいほどない。それを飾るのは幾つもの傷だ。そして咲乱の胸には真新しい刀傷があり、前から持っていたそれまで唯一だった刀傷と交差していた。
((……どこぞの人斬りか))
そんな事を考え…そういったら自分の方が近いか、なんて思ってしまう雅己と導乱だった。

「ん? 丁度だったようだネ。凄くよかったヨ」
「確かにな。お前んちが人気の温泉宿ってのがわかる気がするよ」
入浴後。縁と雅己に褒められ、咲乱はすこしてれてれとした笑顔になる。やはり実家の自慢である湯を褒められるのは温泉旅館の息子としては嬉しいことなのだ。そんな咲乱のポニーテイルをぐいっ、と引っ張った導乱が2人をみて嬉しそうになる。
「さっすが歩弛!2人ともぴったりだったようだな、白装束」
「久しぶりに力が入っちゃった~。ま、本格的に真行寺家ご当主様が仲間入りし、縁様がさっきゅんと結ばれたら身印(みしるし)入りが作れるんだけど」
導乱の隣には小柄な女性がいて、満足そうにうんうん頷いている。赤い瞳に燃えるような短い赤毛の女性は水繰 歩弛と名乗っていた。咲乱の叔母で普段はロンドンにいるらしいがこの度の一件で夫と共にやって来たらしい。
「……前に1度聞いていたが、本当だったんだな」
「そうみたいだネ。しかも上質の木綿ときタ。何かの意味合いがあるんだろウ?」
「そうとしか思えないがな」
雅己と縁が話しながら白装束の集団を見ていた。咲乱曰く今宵は真行寺家と水繰家の協力関係を締結させる調印式と、次期当主の恋人……花嫁候補を一族にお披露目する『清らかな』儀式だそうな。
「だから、客人にも白装束を纏ってもらうんだ。まぁ、窮屈かもしれないけど……ごめんな?」
咲乱は何時もの気さくな笑顔でいう。が、その井出達は普段のお気楽さとは違う、どこか淑やかな雰囲気を纏っていた裾には、白い糸でツバキが刺しゅうされている。一方導乱のはヤドリギ、歩弛のはコデマリだった。
(綺麗だナ……)
縁がまじまじと見ていると何時の間にか白装束を纏った少年少女が咲乱の周りにいた。中には雅己や彼女のように身印が入っていない白装束を纏っている者もいることから、自分たち以外の客人もいたんだな、と認識する。その中に、白い髪の少年がいた。
「……」
「……」
縁と少年の目が合う。が、それは一瞬。しかし、それで彼女は感じた。
「ん?どしたの、縁」
不意に咲乱が人を描き分けて言う。彼女は首を横に振り、雅己が2人に声をかける。よく見ると導乱が結、アシタと共に手招きしていた。

 3人は導乱たちに連れられ、水繰家本邸の奥へとやってきた。恐らく20畳は超えるであろう広間にざっと30人ほどの人間が集まっている。上座には初老と思しき女性がおり、その両脇を導乱を初めとする7,8人の男女(しかし殆どが女性)が固めていた。
「親父は水繰家の当主。で、あとは水繰家の分家の当主たちだ。で、真ん中は長老。儀式の時の進行役で俺のばっちゃだ」
咲乱の説明に、雅己と縁は頷いた。一応船の上で水繰家については軽く聞いている。そしてこの式には本家と7つの分家の当主と次期当主が出席する事も。
「当主の補佐として次点と三守がいる。で、当主、次点、三守はこの8つの家のうち裁定者たる土治家を除く7つの家の人間から選ばれる」
「土治家の役目ハ、次期当主がその器に等しいカを試ス事。ここと前当主たちからなル【元老陣】に認められなければ当主にはなれない、カ」
「ま、魔力・精神力が優れていて尚且つ統率力とか諸々が判定基準か。そんなとこ。なんだけど二代連続で男性が当主ってのは初めてなんだわ」
三人が小声で話していると雪路が口を開いた。
「これより、真行寺家・水繰家の同盟調停式及び次期当主の花嫁候補のお披露目を行います。私語を慎み、携帯電話・ポケットベル、PHS、その他通信関連の魔導具・詠唱兵器は電源等をお切りくださいますよう、ご協力お願いします」
なにやらごそごそと音がし、静まった処で蝋燭の火が落とされた。

―儀式が始まる。

しかし、問題はその後に待っているものという事に……この時、2人は気づくはずもなかった。

(続く)

・・・・・・・・・・・・
後書き

本当はおきらくごくらくの前・後編の予定が微妙にシリアス混じり?
第一に新しい単語できちゃったよ。……身印(みしるし)。

まぁ、水繰家の人間は性(さが)である植物があり、魔力を具現化させるとその植物そのものやその一部(花弁や葉、花、根等)になるのです。で、それがそのままトレードマークになるので身の印で【身印】となります。嫁いできた人間は具現はできる…かは本人次第ですが判定があるのですにゃ。

……導乱が『クトゥルフの呼び声』のネットセッション……まぁ、気にしないでよ。あと、ノビたんについては銀雨PCである嘉禄さんの結社のRPスレにて登場。そして前編に出た導乱のゲームが云々は現在咲乱の下宿先であり結社のイベスレでのネタでございます。んで次回も雅己さんと縁さんには出ていただきます。おかしかったら容赦なく手紙やメッセでどついてね。

最後に。
咲乱たちが纏っている白装束。実はモデルが。ゲーム『俺の屍を越えて行け』で一族の人間が普段纏っている着物がありますよね。アレです。
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by jin-109-mineyuki | 2009-04-16 22:59 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

春休み内の出来事です (咲乱、里帰り+アルファ)


 流れる景色を見ながら、ため息をつくものが1人。車は黒塗りではあるがベンツではない。が、高級車であるのは間違いがなかった。
「……つか、これ本当に中古で100万だったのかよ」
「ええ。旦那様が値切りました」
「……親父」
運転している青年の言葉に、思わず唸る。と、傍らの青年が小さくため息をつく。そして、反対方向にいた女性は右腕の包帯を気にしながら顔をあげた。
「親父から聞いた通りの人物のような気がした」
「そう言えば、雅己と咲乱ってお父さん同士が先輩と後輩だっケ?」
雅己と呼ばれた短髪の青年と、咲乱と呼ばれたポニーテイルの青年が1つ頷く。因みにこの2人と同じ年齢差である事も蛇足ついでに付け加えておこう。そんな3人の会話を楽しく思いながら運転手は口元を綻ばせた。それは、薄紅の花綻ぶ、春のある日のこと……。

シルバーレイン・プライベートSS
『桜、里帰り、(前略)大分の洋館より』(前)

 水繰 咲乱(b36038)は服の上から包帯の感触を確かめながら門を見る。水繰家第二邸の正門には彼に招待された真行寺 雅己(b22347)と海堂 縁(b30348)が並んでいた。3人の荷物は先ほど車を運転していた使用人の鈴木さんが運んでくれるという。
「んじゃ、入るぞ」
咲乱が門を開き、その後に2人は続く。佇まいのある洋館へと歩いていくとその途中雅己はどこか懐かしい気分がした。写真で見たかもしれない。
(親父も何度か来ているみたいだしな)
あたりをそんなふうに見渡していると縁が何かに気づいた。
「あの人ガ咲乱のお父さン?」
「ん?」
咲乱が顔を上げると、視線の先に赤毛の男。目元がどことなく咲乱に似ているなぁ……と思っていたらなんか走ってくる。
「なんか表情が険しいぞ。何かしたんじゃないのか?」
雅己の言葉に、咲乱が少し気まずそうな顔になる。と、同時に

「馬鹿倅!俺のゲーム売りやがったなーっ!!」

「「…………」」
絶句する客人2人。咲乱はといえば重傷を負っているのに臨戦態勢を整えている。よく見ると手にはイグニッションカードが握られていた。
「って一般人相手にイグカ使うな!!」
「親父は一般人じゃねぇ。能力者ではないにしろ真行寺流の剣術と水繰家の伝わる魔術を使う『異能使い』だからセーフだって」
「第一に重傷中だから起動してモ、そんなに力は発揮できないヨ?」
雅己の突っ込みに苦笑しながら答えるが、縁の指摘はもっともである。あ、そうか、とイグカを懐に直していると赤毛の男……咲乱の父親が息も乱さずやってきた。と、いうか咲乱めがけ木刀を振るう。
「あん中にはレアものもあったんだぞ馬鹿倅!」
「いや、パソゲーを息子に送りつけて匿ってって方が間違っとるから!!」
それを手持ちのカバンで受け流して叫ぶ咲乱。客人がいるのにも関わらず一触即発になりかけたが…
「さ~く~」
びくっ!!?、と雅己の言葉で咲乱の背筋が震える。同時にその父親もまた身動きを止めた。
「「ごっ、ごめんなさい……」」
親子揃ってどこか震えた声。そういう反応を起こすのは何か深い事情があるのだろう、と縁は何も問わずそう考えた。
「……んー、とにかく、すまなかった。こっちの赤毛で長身なおっさんが俺の父です」
「どうも、父の導乱です。うちの馬鹿倅が世話になっています」
咲乱が手を伸ばして父親を一礼させようとし、反対に導乱は息子の頭を下げさせる。そんな兄弟のような父子に雅己と縁は似たもの親子だなぁ、と考えた。
「真行寺 雅己です。いつも父がお世話になっております」
「海堂 縁といいまス」
雅己と縁が挨拶をすると導乱は怪我している息子の頭をくしゃくしゃに撫で、先ほどとは比べられないほど優しい笑顔になった。
「雅己君については息子と修夜先輩から話は聞いてる。いつも馬鹿なこいつの面倒を見てくれてありがとうな!」
と、右手で雅己と握手しつつ片手で咲乱のポニーテイルをくいくい引っ張っている。後ろで咲乱が叫ぶが、傷が痛んだのか言葉になっていない呻きが……。
「そして縁さん。咲乱のような青いガキと仲良くしてくれているようでおっさん感激だよ!つーかこんなかわいい娘欲しかったーっ!」
「うわアっ!」
と、縁には歓迎のハグをしようとしてかわす縁。同時に咲乱の拳が導乱を襲う!
「縁が驚いてるじゃねーか馬鹿親父!」
「いヤ、僕は大丈夫だかラ」
息巻く咲乱に縁がぽつり。しかしすっかりテンションが上がっているらしい父子には届いていないようで雅己と顔を見合せ、ため息をつく。
「これで水繰家当主と次期当主というのが滑稽ですわ。ああ、恥ずかしい」
急に声がした。いつのまにか2人の背後には漆黒の髪を丁寧に結い上げた妙齢の女性が佇んでいた。纏っている若草色の着物も似合っており、年相応の色香を漂わせている。背後で父子喧嘩が始まろうとしているのを無視し、彼女は雅己と縁を見、にっこりとほほ笑んだ。
「私は水繰家次点を務めております、影釣 雪路(かげつり ゆきじ)と申します。真行寺さん、海堂さん、当主と若様に代わりましてわたくしめがお部屋へご案内いたしますわ」
「は、はぁ……」
呆気にとられた雅己は生返事を返し、縁もまた少しだけ目を丸くする。何か後ろの方で傷口が開く音とか、拳のふるわれる音とか生々しく聞こえるが
「あれはほっといていいわケ?」
「いや、放っておいていい。うん、多分」
「いつもの事ですから」
縁は雅己と雪路の言葉に納得し、歩き始めた。
因みに咲乱はこの親子喧嘩が原因で胸の傷が開いた……らしい。

「全く、貴方達はいつもいつもこうなんだからっ!」
「「ごめんなさい」」
雅己と縁がそれぞれの部屋で荷物を確認し、客間へ行こうとすると……こんな声が聞こえてきた。声の主は背の高いスレンダーな女性だった。落ち着いたワンピースを纏った、愛らしい女性だ。瞳を閉ざしてはいるが、厳しい表情をしており、その前に咲乱と導乱が正座して頭を下げている。女性の傍には黒いラブラドールレトリバー。体にはハーネスが付けられているところから盲導犬らしい。
「お客様の前で喧嘩するなんて、2人らしいけれど。……あら?」
どうやら2人に気づいたのか、女性は顔を真っ赤にし頭を下げる。お客様?と正座している2人に問い、咲乱と導乱は頷いた。
「ああ、おふくろ。お世話になっている雅己先輩と、縁だ」
そう言いながら咲乱は2人の手と母親の手を重ねる。咲乱から盲目であるということを船で聞いていた2人はふと、彼女を見た。ふわふわとした漆黒の髪や耳の形はどうやら母親譲りらしい、と思える。
「この剣だこのある手は雅己さんかしら?そして、このかわいい手は縁さん?はじめまして。咲乱の母の結(ゆい)といいます」
手に触れながら、結は笑顔であたまを下げる。2人も自己紹介をすると結はさらに嬉しそうな顔をする。
「俺の自慢の妻だ。よろしくな」
導乱がにっ、と輝かしい笑顔で肩を抱く。それにまた頬を赤くしながらも結はそれをどかしてにこっ、とする。その笑顔はとても柔らかく、のんびりしている時の咲乱に似ていた。咲乱も両親のこんな処は尊敬しているのかにこにこしている。
「ところでさっちゃん。お昼はどうしたの?」
「うんにゃ。俺が作るつもりだったから食べていないよ?」
結の問いに咲乱が応え、導乱が首を横にふる。
「お前は怪我人だ。座って待ってろ。俺がつくってやるから」
そういうなりどこかへ消える導乱の背中を見つめながら、結は苦笑する。
「導ちゃんたら、はりきっちゃって」
「確かに楽しそうではあるな」
結の言葉に雅己はぽつりと答える。が、結は2人にだけ聞こえる小さな声でこう言った。
「さっちゃんが、お友達を連れて来たのは……小学校の頃以来なのよ」

(つづく)

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後書き
ども、フーレイです。
基本ほのぼので行かせていただきますが、ほんのちょっとだけ過去発覚(汗)。次はちょいとディープ(設定的な意味で)ですが、まぁ基本はギャグを目指します。暗い話ではありません。むしろ咲乱の立ち位置とか、水繰家の設定とかかなぁ。

次も雅己さんと縁さんは登場します。
ださせてくれてありがとう、お2人のPLさんっ!

因みに、タイトルには深い意味など毛頭もありません。
だって元ネタが……元ネタですから(遠い眼)
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by jin-109-mineyuki | 2009-04-01 22:52 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)

お題消費より先にこっちを (咲乱、実は和服派だったりする)


 沐浴を済ませた咲乱はいつものように質素な着流しを纏い、乾かした黒髪を結わないままあてがわれた部屋で寛いでいた。1人大好きな科学雑誌を読んでいると障子に人影が映る。それが誰か、彼にはわかっていた。どうぞ、というと障子が開かれる。
「咲乱様。おめしかえでございます」
「……自分でやります。外で待っていてください」
メイドの1人が白い着物を持って佇んでいた。咲乱はそれを受け取ると彼女を下がらせ、素早く着替える。白い羽織と袴は儀式の際身に纏うことが多く、普段から日本舞踊の練習などで着物を纏うことが多い咲乱は自分で着ることができた。
(儀式、何をするんだろう?)
素早く着替えながら、何気なく考えた。父親は何も言わなかったが、とにかく継承順位が定まった儀式が今宵あるのだ。
(考えても、しかたねぇか)
小さくため息をつき、顔を上げる。そして襟を正し、手早く髪をポニーテイルに結うと彼は小さく笑った。準備は終わっている。後は、きっちり儀式を受けるだけだ。
「おまたせしました。……長老のところへ行ってきます」
咲乱は部屋から出るなり、待機していたメイドにそう言って歩き始めた。

シルバーレイン プライベートテイル
『17.4』 第四閃

 うっすらと暮れていく空を見ながら、咲乱はメイドを伴って歩いていく。その途中、縁が白い着物を纏って現れた。彼女もまたメイドを伴っている。
「咲兄ちゃん、やっぱり似合ってるね」
髪を結わないまま伸ばしている縁は、頬を僅かに赤くして笑う。それにちょっとだけ照れながら咲乱もまた縁を見つめた。透き通るほどに白い肌。そして、穏やかな緑の瞳。彼女の父親はケルト民族の血を引く男性で、その影響からだろう。
「縁も、よく似合っている。綺麗だよ」
その言葉に、縁は顔を真っ赤にして俯いてしまいメイドたちはやさしく微笑む。若い時期当主と時期三守のやり取りが、愛らしく思えたのだろう。
「そろそろ時間だ。さ、お祖母さまの所へ……いや、長老の所に」
咲乱の言葉に縁は頷き、四人は歩き始めた。

 一方、導乱もまた着替えを済ませていた。赤みがかった髪を丁寧に梳き、今度は妻である結の髪を梳く。柔らかく、子供のような髪の手触りに瞳を細めつつ、彼は言葉を紡いだ。
「今さっき、先輩がきたよ。儀式じゃなかったらゆっくり酒も飲めたんだけどな」
導乱が苦笑していると、結はくすくすと笑った。
「貴方らしいわね。……それで、先輩はいまどちらに?」
「客間でお茶を飲んでいる。今晩の儀式も見ていくそうだ。他の客人ともはなしているんじゃないかな?」
そういいながら、彼はふと手を止める。何を考えたのか、僅かな間瞳を閉ざし…またおもむろに手を動かし始める。
「導乱、どうしたの?」
「ちょいと……ね」
彼の言葉に、結はくすくすと笑いながらその手に触れた。
「やっぱり、咲乱が心配なの?」
「いや。あいつならどうにかなるだろう?」
そういいながら導乱はそっと妻の手に唇を寄せた。

 そろそろ、亜夜羽がメイドを伴って合流する。そう思っていた咲乱と縁ではあったが、彼女の姿はなかなか見えなかった。
「……おかしいな。あいつだったらとっくの昔に待ってそうなのに」
「もしかしたら先に行っているんじゃないかな?」
訝しがる咲乱に、縁はにこにこと答える。確かにきっちりとした性格の亜夜羽を思い出せば先に長老である琥珀の元に行っていてもおかしくはない。そう納得しかけた咲乱であったが、縁の前にいたメイドが首を横に振る。
「先ほど志村が迎えに行きましたが、亜夜羽さまはいらっしゃいませんでした」
「それじゃあ、鍛錬か沐浴か?」
咲乱が不思議そうに首を傾げると、前からもう1人のメイドが慌てて走ってくる。それが志村さんであるのは4人とも知っていた。
「志村さん、どうしたのですか?」
咲乱の前にいたメイドが問いかける。と、志村は緊張した面持ちで口を開いた。顔は青白く、汗でびっしょりとしている。ただ事ではない。
「…あっ、あっ…亜夜羽さまが…亜夜羽さまが…零番蔵前でお倒れに…」
「何っ!?」
咲乱はいても立ってもいれず彼女を押しのけ、庭へ降りた。側に草履があったのにもかかわらず足袋のまま砂利を踏み、蔵のほうへ走っていく。そのあとを縁とメイド達は追いかけた。
「なんでまたあんな物騒なとこに行ってんだよ、亜夜羽の奴……」
咲乱はふと、首を傾げる。記憶の中では零番蔵は本当に危険な場所だった。錬金術の実験道具や魔術の道具が収められているだけでなく、危険な妖刀の類や不浄の物から受けた《穢れ》を浄化するために術を施された武具などが収められているからだ。魔力も高いだけでなく猥雑としているため、魔力の高い人間が入ると眩暈を起こすこともままある。まぁ、比較的魔力が低い咲乱は父親から『悪戯のお仕置き』として怖い武者鎧の前に縛り付けられ、蔵に閉じ込められたために中学生になった今もそこが『怖い所』という認識なのだが……。
(普段、立ち入り禁止になっている場所にお仕置きとして叩き込む親父も親父だけどさ。その前になんで亜夜羽が倒れてるんだ?)
「咲乱兄ちゃん、1人じゃ危険だよ!」
縁が息を切らせながら走ってくるが、咲乱はとまらない。蔵へ近づくたびに、疑問が、少しずつ濃くなってくる。砂利を踏む度に、何故だろう、胸騒ぎが起こり、酷くなる。
「縁、悪い。長老に言ってくれ。……今夜の儀式は中止したほうがいいってさ」
咲乱は振り向かないままそう叫び、蔵を目指して走り出した。

 程なくして、咲乱は蔵の前へとたどり着いた。全てで8つある蔵の中で一番屋敷に近いのが零番蔵だ。その前に、白い着物を纏った亜夜羽が倒れている。こうしてみると勝気でつん、とした印象の彼女もか弱い部分があるなぁ、となんとなく思った。が、そんなことを頭の隅にやり、抱きかかえる。
「おい、亜夜羽!しっかりしろよ!!」
そう言いながら頬を叩いていると、違和感を覚えた。何故だろう、冷たい空気があたりを覆っている。いや、項がぴりぴりとし、抱きかかえているのを思わず横たえた。
―同時に聞こえる、吐息の音。
「なっ!?」
体に力が入り、袖から何かが飛び出る。それが見えた咲乱はあわてて身を引いた。見えたのは銀の閃き。そして、ゆっくりと起き上がる亜夜羽の姿。
「…性質の悪い冗談だな、亜夜羽」
咲乱が苦笑して声をかける。も、亜夜羽は艶やかな笑みを口元に浮かべ、刀を向ける。その瞳に透明感は無い。曇りガラスのような赤い瞳の奥にギラギラとした何かが灯っている。
「あそぼう?さっちゃん……」
その唇が、言葉を紡ぐ。うっすらと微笑みながら刃を向ける亜夜羽は、幼い時のように咲乱を呼んで……襲い掛かった!
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by jin-109-mineyuki | 2009-03-19 15:58 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)