ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:札世界図書館( 58 )

大幅に文が増えました(バルディッシュ、何気に登場)

 次の日、手がかりから議員の下へ出向く。グレイシーが議員の話をくれたのだ。しかし、有力な情報は手に入らなかった。その帰り道、一行は近所の駄菓子屋で菓子を買い、宿に戻っていた。
「やっぱり、グレイシーさんは頼りになるよね」
エペは嬉しそうにいいながらお菓子を食べる。うまく聞き出せなかったものの、ヒントだけでもつかめた気がするのだ。クレイモアは無言でふ菓子を口にしながら町を見渡す。
「冒険者を見る目が、若干気になります?」
エイデンの問いに、クレイモアは溜息をつく。
「フランベルジェの一件で、宿への依頼が減ってるんですって。
 町でもあまりいい目で見られない。ふん、気に入らないわ」
「まあまあ、おちついて」
不機嫌になるクレイモアを、テッセンは宥める。彼らの会話を聞きつつ、パルチザンは立ち止まり、フランベルジェとの面会を思い出す。
(彼は、記憶を取り戻しかけている)
きっと、有力な情報……だれが彼を陥れたか……が出てくる。その言葉を固めるためにも、事件をもっとさぐらないと。1人決意を固めていると、風が吹いた。
―嫌な予感がする…。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (3) 著:天空 仁

「パルチザン、おいてくよ!」
テッセンに呼ばれ、彼は歩いていく。しかし、胸の中では…不安がぬぐえなかった。小さくため息をつき、頭を振るうと…ふいに、怒りをあらわにした女性とすれ違う。
「!」
パルチザンが振り返るものの、女性は足早に自警団の詰め所へと歩いていく。そのあとを一人の青年が追っていた。
「やれやれ……。 相当頭にきてるようだな…」
「…貴方は…先ほどの女性の…知り合いですか?」
パルチザンはおもわずそう呼びかける。そしてあわてて自分の名を名乗った。青年も、足を止め先を行っていたテッセンたちも戻ってくる。
「……? ああ、そうだが…。 俺はシュウ。 シュウ=アズベルト。 
 白銀の剣亭に所属する冒険者だ」
簡素だが、きちんとした礼を返す青年。
「シュウさん…ですね。私達は見えざる神の手亭の冒険者で
 『子供連合』というチームを組んでいます。
 ・・・あの事件でしっているかもしれませんが」
パルチザンはシュウと名乗った黒髪の青年に一礼し、若干声を潜めた。その言葉に、青年は頭を振り、少し笑みを浮かべていう。
「少しだが、噂は聞いている。 子供だけというチームでありながら、
 数々の依頼をこなしている冒険者のチームがいるとな…」
「えっ、そうなの? あまり知られていないと思ったんだけど…」
そう言ったのはエペ。彼女はツインテイルを揺らし、目を見開く。
「冒険者同士の情報は、他の宿であろうとも重要な部分だ。時に、一緒に
 依頼を組む場合であれば、その情報を知らなければどこかでミスが出るからな」
「ああ、そうですものね。なるほど…」
一人、エイデンが納得しつつシュウの言葉に頷く。そしてクレイモアも、テッセンも同じように聞いていた。パルチザンは紅い瞳をシュウの瞳に重ね、問いかける。
「ええと…先ほどの女性は…貴方と同じチームの方なのですか?」
「そうだ。 名前はカーナと言い、盗賊だ」
その言葉に、一同は一瞬フランベルジェのことを思い出した。この中に盗賊はいないものの、彼は手先が器用なので開錠などは彼が担当していたのである。
「それにしても…なぜカーナさんがあんなにおこっているのでしょう?
 なにかあったのですか?」
「理由は、君たちが一番良く知っていることだ。 殺人事件のことで、な」
その言葉に、全員が息を呑む。
「あの……例の事件のことで? なぜ?」
クレイモアがいつもの癖でシュウに詰め寄る。桃色の瞳は若干警戒したようだが、エペが止め、その様子に、シュウは苦笑を浮かべて、いう。
「あいつは、その事で自警団に問いただそうとしているんだ。同じ冒険者……しかも子供が現場にいただけで殺したなどとありえないって言ってな」
「わ、私達と同じ考えなんだね!」
エペがぱっ、と表情を輝かせ、こんどはクレイモアが苦笑する。そしてテッセンはディープブルーの瞳を細めて
「それじゃあ、あんたは味方と・・・みていいんだね」
と問うような目を向けた。パルチザンが心配そうに彼女の手を引く。やはり仲間以外の冒険者を若干警戒しているらしい。それもそうだ。この事件で、他の宿の冒険者にも冷たい目を向けられているのだから。
「元より、な。 それに……」
シュウの表情が少しだけ、悲しい笑みに変わる。
「俺も、同じ事件にあった…。 だからこそ、見捨てられない…カーナも、仲間達もな…」
テッセンは瞳を元に戻し、そうか…と小さくつぶやいた。警戒を解き、すまなそうに頭を下げる。しゅん、となった彼女をエイデンがぽん、と肩に手を置いて慰める。
「気にすることはない。 
 同じ冒険者とはいえ、他の宿同士では警戒するのは当たり前のことだろうしな」
「ううん、気にしないで。それに…ちょっとね」
テッセンは僅かに苦笑して答える。が、その表情はどこか僅かにおびえが混じっているようにも思えた。
「と、とにかく…心配してくれてありがとう…シュウさん」
エペがすこしだけ頬を紅く染めて頭を下げ、他のメンバーも頭を下げた。
「ああ。 だが、一つだけ言っておく…」
「無理はするな?それとも……真実を見失うな?」
と、クレイモアが真面目な顔で問いかける。
「例え信じられない人が犯人であろうとも、事実は物語る。 
 如何なる理由があろうとも……そして…」
シュウはそこで言葉を止め……僅かに表情を曇らせる。
「『尊敬し、信頼している人』であろうとも……事実は事実にしかならない」
彼の言葉に、子供達は小さく頷いた。そして、パルチザンの胸の中で……ある『漠然とした不安』が、また大きくなった。それとおなじように…幾筋もの風が6人を取り囲んでいた。
「シュウさんは…フランベルジェのこと、無実だって思ってくれてるんだよね。なんかうれしい…」
クレイモアがようやくにっこりわらう。いくら狂戦士でも、やはりそこは子供なのだろう。
「……風が教える」
「風が……?」
エイデンが、首をかしげる。他の面々も不思議そうな顔でシュウを見ていた。
「本当に殺した者なら……お前達の風は、こんなにも温かくはない」
言いながら、シュウは優しく微笑む。それと同時に……『子供連盟』達の間に、少しだけ暖かな風が通り過ぎた気がした。
(…風…が…)
テッセンの目が見開かれる。時折感情が高ぶって魔力を高ぶらせ、風を起こすことはあるが、あの時のように冷たくはない。彼女はシュウを見つめ…彼自信が持つ何かを、僅かにだが感じ取った。
「貴方は精霊使いなのですか?」
興味に駆られ、パルチザンが問いかける。
その言葉に、シュウは静かに頭を振る。
「生憎だが、俺は刀士。だが、幼い頃からこういう事が出来ている」
シュウの言葉に、テッセンも頷く。
「うん。精霊使いじゃないよ。…でも、力は感じる。よくわからないけれど
 …なんかの加護か呪(まじな)いがあるんじゃない?」
「闇の眷属としての……勘?」
エペの問いにテッセンは小さく頷き、彼女はシュウを見つめた。
「……。 そろそろ、行くとしよう。 君たちも、時間が無いのだろう?」
シュウはそんな様子を見て、静かに微笑みながら踵を返そうとする。その言葉に、一同は、あっ、と声を上げた。
「ありがとう、ございます!」
パルチザンはシュウにもう一度頭を下げ…一行は青葉通りへと駆け出した。
「……良い子達だな。恐らく……長い付き合いになるだろう。頑張れよ、後輩…」
これから先にあるであろう、後輩たちの成長に期待しながらシュウは自警団へと足を運んだ。

(続く)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
フーレイです。
えーと、これは作者である机庭球さんへと送ったリプレイに加筆修正を加えたものです。
そして、シュウさん&カーナさんをださせてくれてありがとう、龍さん。
おかげで増えましたよ、濃度が!(なんのだ:汗)
とりあえず次の週までは『空白の時間』及び『新人と私』のリプレイ、その次の週からは『山間の村』か別のリプレイを……とたくらんでおります。
そいでは!
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-11 18:38 | 札世界図書館 | Comments(0)

そして、時々痛い (フランベルジェ、一人部屋の隅でうずくまる)

― 一年前。
冒険者の宿『見えざる神の手亭』
その冒険者である盲目の少年が、殺人を犯した。そんなニュースが宿のメンバーに届いた。
「くそっ、なんでまた俺の息子が……」
黒髪のエルフが苛立ち混じりにカウンターを叩く。最近ここに出入りしている聖騎士のバルディッシュ。犯人とされたフランベルジェの養父である。
「何かの間違いですよ、きっと」
その隣に腰掛けていたパルチザンは力強く言う。この少年にとって、バルディッシュは先生的存在でもあり、友人の養父。どうしても励ましたかった。
「子供連合のメンバーで、面会に行くのか?」
バルディッシュの問いに、パルチザンは頷く。
「俺も会いに行ったが、凄くへこんでた。俺は俺で調べるから、お前たちも…頼むよ」
彼の言葉に、パルチザンは頷いた。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (2) 著:天空 仁

「ばっかじゃないの!子供が女性を犯す訳ないじゃない!!」
桃色の瞳に、怒りの焔が揺らぐ。貴族の娘でもある少女、クレイモアは明らかに苛立っていた。
「自警団もろくに捜査していないと思われますよ」
溜息混じりにエイデンが呟く。その赤い目が鋭く自警団事務所を射抜き、偶々目が合った見張りがたじろぐ。
「それにしても、普通男とはいえ子供をレイプ事件の犯人にするかな」
素直に疑問を紡ぐテッセンはディープブルーの目を細め、首をかしげる。エペも同感らしく、一つ頷いて茶色の瞳を自警団に向けた。
「普通は、しないよ。死体の傍に座り込んでたってだけでしょ?それで犯人扱いじゃ、たまったもんじゃないよね」
「とにかく、行ってみましょう。何かつかめるかも」
パルチザンの言葉に、全員が頷く。【子供連合】のメンバーは1人で寂しい想いをしているだろうフランベルジェのもとへ向かった。

「本当にマセたガキだぜ」
下卑た笑い声をもらす自警団員に、フランベルジェは明らかな侮蔑の表情を浮かべた。
「ほら、吐いちまえよ。楽になるぜ?」
別の団員がそういうものの、フランベルジェは黙って首を横に振る。
「この……クソガキがっ!」
ばんっ、と机を叩く音。木製の机が大きく揺れ、音が狭い取調室に響く。それでも、少年は黙ったままだった。
「何か言ったらどうなんだ……あぁ?」
詰め寄る団員。僅かに酒臭い息が少年の鼻を掠める。
「……ってない」
「……?」
僅かに、声がした。団員が目を向けると、盲目の少年は小さくもはっきりとした声で
「僕は、やっていない」
そして
「そんなに怪しいと思うならば、処女検査の男性版でもやればいいじゃないですか」
とまで言い放った。
「僕の体には、性行為の跡が無いんでしょう?ならば彼女を犯した、という証拠は無い筈です」
少年はそれだけ言うと、また黙り込んだ。頭に血が上った団員が拳を振るう。白い頬は赤くなり、口元が切れて血が滲む。それでも、それ以上少年は何も言わなかった。
「そこまでにしろ」
指揮官らしき男の声がした。そして、彼はその団員を素早く殴った。
「な、何故……」
「やりすぎだ。それに相手は子供。吐けるものも吐けなくなる」
指揮官はそういうとくらくらして俯いていたフランベルジェに治癒の魔法を施す。
「大丈夫か」
彼の問いかけに、少年はただ
「もう、疲れたよ」
フランベルジェは、思わずそんな事を呟いた。

―何故、僕はあの場所にいたんだろう…。

面会に来たパルチザンたちは、憔悴したフランベルジェの姿に、胸が痛んだ。
『一刻も早く、自由にしたい』
その思いが、捜査へと駆り立てる。仲間の脳裏に浮かんだ夢もヒントに…。
現場に行くと、議員バッチと指輪があった。そこからさらに捜査を進め、殺害現場には地下室がある事が判明した。勿論聞き込みも謎解きのヒントになったし、教えられた議員との会話も…。面会を重ねると、夢もまた深度を増した。フランベルジェは失った記憶を夢で取り戻しているようだった。それは、パルチザンたちにとってもいい推理の種だった。

 その捜査に手を貸してくれたのは、皆が慕う先輩冒険者のグレイシー。『見えざる神の手亭』の看板冒険者の1人だった。ここは当時、バルディッシュとグレイシーの二枚看板で成り立っていたのかもしれない。彼らはグレイシーと2、3話したあと、チームメンバーだけで少し話し合った。
「それにしても、真犯人も慌ててたんでしょうね」
不意に、紅茶のカップを置いて、エイデンが呟く。
「何故そう思うの?」
エペが不思議そうに首をかしげると、エイデンは落ち着いた表情でいつもの様に遠くをみやり、口を開く。
「私の勘ですけれど、たぶん犯人は犯行現場をフランベルジェに見られたんだと思います。だから、彼を犯人に仕立てようと」
「よくあるパターンですね。よく考えてみるとフランベルジェはまだ10歳になったばかりの少年。女性に暴行するとは考えにくい」
パルチザンは一つ頷き、温くなったミルクを少しのんでまた口を開く。
「考えてみてよ。冷静だったならば、フランベルジェを犯人に仕立て上げるような事はしない。むしろ、目撃者だから殺そうとするよ」
「もしかして、殺せなかったんじゃない?冒険者だし、人魚族だし、一般人より丈夫だったから生きてたー、とか?」
今まで黙っていたテッセンがいう。が、クレイモアは首を横にふる。
「あの子は案外病弱よ。わたしは、フランベルジェの知人が犯人で、知人だからこそ手加減してしまった、と考えてるんだけれど」
「両方とも、可能性はあるね。フランベルジェが記憶を取り戻せば、そこの所もはっきりすると思うけれど」
パルチザンが狼の耳をぴくっ、と震わせる。そしてちらり、と時計を見た。もう午前零時。子供は眠る時間である。
「おまえたち、もう寝なさい。明日も捜査するんだろ?」
親父にせかされ、子供連合の一行はそれぞれ部屋に戻った。エイデンとパルチザンがいつものとおり部屋に入ると、同室の冒険者が既に寝息を立てていた。二段ベッドが二つ。そして、パルチザンが寝ているベッドの下には、本来フランベルジェが眠っている。
「私は、貴方を信じます。貴方は無実だと…」
パルチザンはそう祈り、エイデンも頷いた。

(続く)

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フーレイです。
続きは来週に。そして、このSSは机庭球さんへ送ったりプレイを修正して載せております。

実を言うと、最近リプレイを書きたくなるようなシナリオがなかなか…。
そう思っていたら見つけたけれどリプレイにしたら楽しさが半減しちゃうかもしれないんで若干怖い。そして、もうしばらくパルチザン率いる【子供連合】におつきあいくださいませ。

本当は……ある方のシナリオリプレイを公表したい。
けれど本人はあまり乗り気じゃないからなぁ…(しゅん)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-04 15:35 | 札世界図書館 | Comments(0)

冬の雨は妙に身に凍みる(パルチザン、路地裏で一人体育座り)


ざわざわ…… ざわざわ……

人の気配、血の匂い、女の人の匂い
地面の冷たさが、細い体をじくじくと刺し続ける。
「…時……分、婦女暴行及び殺害の容疑で、逮捕します」
ぐい、と引かれる手。
「な、何ですか!?」
「とぼけるな。殺したのはてめぇだろうが」
少年は顔を上げる。けれど、その目は僅かな明暗しか解らない。
「この少年は、目が見えないようですが…」
「…最近の子供はマセてるからな。それに…」
人の声が、手が、少年を引っ張りあげる。
(ど、どういうこと!)
少年はパニックに陥った。
なぜなら、彼には……記憶が無かったからだ。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (1) 著:天空 仁

 あの事件から多分1年経っている。そんな事を思いながら少年は顔を上げた。あの時は本当に大変だった。仲間たちが助けてくれなかったら、自分はここにいなかった。
「…あいつの推理が、なかったら…」
そういいつつ、白い髪をかきあげつつカウンターに座る少年の方を向いた。自分より年上の、緑色のローブが似合う、黒髪の人狼。しかし、いつも優しい笑みを浮かべているその顔には淡い影が降りている。狼の耳も伏せられ、力なくカウンターに頬杖をついている。その姿は彼には見えないが、感じる気で、かなり元気がない、という事がわかる。
「優しすぎるから、陥れやすかった。それが、悔しい」
そのときの事を思い出すと、胸が痛んだ。

―こんな私でも、先輩と見てくれる人がいて、嬉しいです

そういって笑った仲間の声が、頭に残っている。
「パルチザン…」
パルチザン、というのは人狼少年の名。彼の仲間であり、恩人の1人である。声に気づいたのか、少年は顔を上げた。そして振り返り、小さく微笑む。
「フランベルジェじゃないですか。どうしたのです?」
「依頼を探して」
フランベルジェと呼ばれた少年は、隣に座りながらそう言った。カウンターの内側にいたマスターは二人にミルクを出すと「おまけだぞ」といってクッキーを出してくれた。
「あ、あの…さ…」
実を言うと、少し気まずかったりした。フランベルジェは数日前の事件でパルチザンと少しばかり衝突してしまったからだ。

 二人は元々別々のチームで冒険をしているのだが、時折同じ宿の子供たちだけで【子供連合】というチームで冒険をする。そこそこ名が通っており、この宿では売り出し中のチームだった。しかし、名が通るというのはそれだけ妬まれることもあり、何者かが彼ら6人の始末を依頼したらしい。しかも、凄腕の始末屋に…。

 「彼」は冒険者になりたい、という女性に扮してこの宿にやってきた。そして、パルチザンにこう言ったのだ。
―あなたに憧れていました
前の依頼の時、彼は1人の少女を己の弟子にしていた。それもあったし、元々パルチザン自身がお人よしというのもあり、照れながらも受け入れた。そして、二人だけで依頼を受けた。それはある荷を届ける、というモノ。その時点で、いやな予感がした。が、様子を伺う。他のメンバーには町に遊びに行こう、といっておき、とりあえずその女性を泳がせることした。その隙にメンバーであるテッセン、エイデン、クレイモア、エペと共に女性について調べあげた。その時に真実を知る。パルチザンに「憧れていた」と言った女性は実は男で、しかも相当の悪らしい。しかも依頼人も、依頼人の故郷となった場所も虚実だらけ。最初からそれは仕組まれたことだったのだ。同時に、パルチザンの危機を感じ取る。

(パルチザン、無事で……)
実を言うと、フランベルジェはあせっていた。大切な仲間を失うのは嫌だから。恩人を失うのは、苦しいから……。
「きっと大丈夫だよ。あの子は頭がいいから、見抜いているって!」
エペが明るく答えるも、フランベルジェの中から不安は抜けない。パルチザンは、時折掛け値なしで人を信じるところがある。そこが前々から危ういから注意しろ、とは言っていた。けれど…。
「今回ばかりは…見抜けないかもしれない」
クレイモアが、息苦しそうに答える。剣帯に下がる刀の音も僅かに鈍い。
「それにしても、今回は相手が悪かったですね。何もない状態で嘘を見破るのは難しいことですし…」
エイデンが唇を僅かにかみ締め、その隣でテッセンが険しい表情で遠くを見つめていた。
「とりあえず、片棒を担いでた女は見つかった。上手く抱きこめてるけど…人間って、金に弱いよね。ま、欲には勝てない人間は多いって事だよね」
どこか疲れたその声に、魔術師はそういうものよ、と笑ってこたえた。
「それじゃ、行きましょうか」

道すがら、フランベルジェは三度溜息をついた。パルチザンはきっと何も疑っていない。
いつも『そこが危うい』と思ってて、言っているのに。
(僕のせいだ)
そんな事を思ってしまう。

それなのに。

チームで「彼」を倒した時の事。パルチザンは酷く悲しそうだった。
「相手を探ることこそ、信用していないってことじゃありませんか?」
不意にこぼれた言葉が、酷く痛い。嘘に気づかなかったのは、相手に無関心だったから、というような、誰かの言葉を言ったことが、酷くパルチザンを傷つけてしまったようだった。しばらくの間、言葉が止まる。が、人狼の神官は祈りを捧げ、手にした剣で「彼」の首をはねた。
「これは私の役目ですから」
酷く震えた声が、何故だろう。フランベルジェには自分を責めているように聞こえた。

「彼」の墓を作るその背中は、酷く震えていた。涙を堪え、首のない亡骸を一度だけ抱きしめて、穴に横たえる。
「パル……」
名を呼ぼうとしたフランベルジェを、エイデンが止める。彼はただ首を横にふり、それに従った。そっとしておいたほうがいい。それが、【子供連合】の仲間として……。
「行こう」
エペが、ようやく微笑んで、振り返ったパルチザンに手を伸ばす。が、彼は狼の耳を伏せて力なく一つ頷いただけだった。

後日ふと、彼は呟く。
「誰かを騙して傷つけるくらいなら、自分が騙されて悲しい思いをするほうがいい」
その声は酷く悲しくて、何故か胸が酷くきしんだ。

 あれから一週間はたっている。が、パルチザンが元気になる様子はない。他の仲間達も心配している。だから、思い切って声をかけてみたが……なんて言えばいいのか解らない。
「どうしましたか?」
パルチザンが問う。さあ、なんて言おう?また……傷つけてしまうかもしれない。どうしたら傷を開かないで話せるだろう?しかし、パルチザンはそんな心配を知らないようだった。ちょっとだけ微笑んで、口を開く。
「そういえば、一年前でしたよね。貴方が事件に巻き込まれたのは…」
「えっ…!? あ、ああ…あれか」
いろいろあって、フランベルジェは忘れていたが、パルチザンに言われて思い出す。
「実は、情けないですけど…その事もあってなかなか立ち直れなかったんです。
 1人でゆっくり考えてましたけど、やっと元気になれそうです」
彼はそう言ったけれど、フランベルジェには、それが強がっているようにしか思えなかった。やっぱり、一週間もうなだれている姿を見せられたくはないよね、と思ったのだろう。どこか、必死になっている気がする。
「無理、しなくていい。ゆっくり、でいいんですから」
フランベルジェはそういい、そっと、パルチザンの手を取る。
「僕も言い過ぎたよ。ごめん…」
「謝らないでください。悪いのは私ですから」
首を振る神官。しかし、フランベルジェは言う。
「悪くない。君は何も悪くない。悪いのは騙す方なんだから。それに…」
そういいながら、少年は一年前の事を思い出す。
「僕も、あの時の事は……思い出すと息苦しいから」

(続く)

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あとがき?
ども、フーレイでございますよ。今回も机庭球さんの作品を……。
面白かったシナリオを三つ立て続けにリプレイにできるかなぁ、と思いチャレンジした結果がこれになったわけでございます。
因みにこれは机庭球さんへ送ったものの一部でございまして、多少修正もあったり?
ってな訳で、来週もよろしく。

予告
多分有名すぎるだろう某シリーズもリプレイ化できたらなぁ~。
そう思いつつもシメが思いつかないぜ。
シリアス方面へ突き進むんだなー、これが!!
笑いの神様降りてこないかな・・・・・(ぼそ
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-26 20:20 | 札世界図書館 | Comments(0)

これ、いったいいつ使用すれば・・・・(スズキ、決断の時)


 四階へあがり、奥へ進むと宝珠があった。が、調べたソウキュウ曰く何かによって力を制御されている状態らしい。
「とりあえず、傍のスイッチがめちゃくちゃ怪しいですが…」
リーガルトはドアをダートに調べてもらう事を提案する。少年は異常がない、と確認した上でドアを開けた…が、ゴーレムが襲い掛かってくる。それをぶっこわして先へ進むと、石碑と鉄格子が見えた。石碑に刻まれた伝承にダートが眉をひそめるが、リーガルトが突っ込む。
「まあ、なんらかの意味があるはずです」
あの男の事ですから、と呟きつつ彼は鉄格子に目をむけ…息を呑む。
「シリウス……ッ!?」
「……なんでまた…」
ダートたちもリーガルトにつられてみるが、そこには『死んだように』眠るシリウスの姿があった。

CWシナリオ『新月の塔』(作:机庭球)より ※敬称略
『朔の帳を裂く者達』 後編 (著:天空 仁)

「まさか…本当に…彼女は…」
「いや、そう考えるは早計だよ。奴のことだ…」
そろそろ声なんてかけてくるんじゃなかろうか、など考えていると案の定奴のアナウンスが聞こえてくる。
・絵札どうり助ければいい。
・ただしミノタロウスが奥にいる。
「…我が妻をそんなものの餌食にしてたまりますか…」
「り、リーガルト落ち着いて…」
翼と拳をわなわなと振るわせるリーガルトをスズキが宥める。が、このミノタロウス…確か、記憶が確かならばこの怪物を倒したことがある…筈。とりあえず制限時間?が気になるが四階フロアを調べていくことで彼女を助ける鍵を見つけるしかないのだ。
「あの変な伝承とスイッチ、水晶を…照らし合わせれば」
ソウキュウの言葉に、3人は頷く。
「うまく行かなかったらシリウスはミノタロウスの夕飯…なんとしても止めないと」
やはり妻のことが心配なのか、リーガルトの表情はいつに無く真剣である。
「さあ、動くわよ」
スズキの言葉に、3人は頷いて行動を起こす……。

-しばらくおまちください(ネタバレ防止のためです)-

ややあって開かれた扉。中へ入ったダートとソウキュウはシリウスを背後にミノタロウスと対峙する。
「まずは俺が」
ソウキュウがシリウスを守り、ダートが攻撃する。この間にもスズキとリーガルトの羽搏く音が聞こえる。ダートが攻撃を喰らってすぐスズキが、少し遅れてリーガルトが舞い込んだ。しかしリーガルトは少し息を切らせている。
「くっ、しつこいんだっ!」
スズキが爪で掴んでいた獲物を素早く叩きつけ、ミノタロウスを屠る。と、ジェネラスの声が降ってきた。彼は相当楽しんでいる模様だ。
-ゲームは最後に親が勝つもの…。
その一言が、妙にひっかかっているとリーガルトが目を向ける。早くシリウスを助けてほしいらしい。我に返ったスズキはそっと、シリウスの手をとり…札を押し付ける。と頬に赤みが差し、彼女はゆっくりと目を覚ました。
「…漸く目を覚ましましたか、眠り姫」
そういいつつリーガルトがシリウスを優しく抱きしめ、額に口付けをする。が、シリウスは若干きょとんとしている。
「…森で意識を失ってから、記憶がないような…」
そういっている傍からスズキは事情を説明をはじめた。

 五階。ここに最後の仲間がいる。そう思ったとき…ジェネラスの声が聞こえてきた。いたくこの『ゲーム』が気に入っているようで、彼はご機嫌だった。
-実験用に作ったドラゴンゴーレムと戦っていますよ、彼女は。
 もって90分でしょうか?
「今回は制限時間つきかよっ!どこの風雲たけし城だよっ!!」
「いや、そのネタをここで持ち出すのはどうかと思われますっ!!」
苛立ったスズキの台詞にリーガルトが思わず突っ込む。が、そういっている暇は無い。90分以内にドアを開けて孤軍奮闘するプリムプラムに合流しなくてはならない!
-あなたに古いネタを出している暇があるならさっさと動いてはどうです?
 そういうことです
「……こういうとこばかり突っ込みやがって…」
ソウキュウはそういうとスズキをむんずとつかみ、抱えて走り出す。他のメンバーも彼に続いて走っていく。途中ジェネラスの息子に会ったりドラゴンゴーレムの弱点を見つけたりゴーレムに襲われつつも石碑の言葉を考えつつ突っ走る。
(今まで通っていた道の地図を見れば…)
スズキは何かひらめき、それを声にする。そして、その答えを手にしたとき、ダートとシリウスは顔を見あわせる。
「答えは俺たちの中にあるよ」
「ソウキュウ、貴方の武器は何?」
シリウスに問われ、ソウキュウは何を今更、とでもいうような顔をする。
「ん?俺の相棒はレーヴァテインだけど……」
そう呟いたとき、ソウキュウはなるほど、と頷く。一同が例の扉へ戻ると彼は腰に帯びたレーヴァテインを思いっきり扉へと振り下ろす。
「答えがあってりゃ、これで…」
瞬間、扉は開いた。そして、そのままに部屋へ突入する。振り返る緑色の影。それが最後の仲間、プリムプラム……!
「さあ、いくよっ!!」
シリウスが叫び、全員で猛攻をかける。そして、どうにかドラゴンゴーレムを倒すとスズキは仲間だから、と照れ交じりに言って札を彼女の手に押し付ける。勿論、札は彼女の呪いを解いてくれた。
「すみません、お手数おかけしました…」
プリムプラムが例を述べた刹那、例の声が振ってくる。それに全員が表情を険しくした。ジェネラスはとても満足しているようだった。
「もう腹いっぱいでしょ。なら…とっとと出してもらいたいけど」
シリウスが問うが、そうは問屋が卸さないらしく答えはNOだった。ジェネラスはそれに苦笑したような声でスズキに言う。
-それにしても、私は満足していますよ。
 元はといえばあなたが術に掛からなかったのがきっかけです。
 あとは…そう、私と戦うだけですよ
逃げも隠れもしない、といい彼は一方的に通信を切る。

 決戦に向かう前に、リーガルトがスズキの治療をする。その時に、スズキは小さく微笑んでこう言った。
「そういえば、さっき奴のせがれがいたよね」
「ああ、いたなぁ…まったく似ていない息子が」
ソウキュウが頷いていると、シリウスは息を呑んだ。
「まさか、セフィラムとかいう息子さんに全てを話す心算ですか?」
「そのまさか。一応人様の親を手にかけるわけだし」
そこでちょっと息をつき、スズキは言葉を続ける。
「やっぱ気になるんだ……あの子が」
一同はやれやれ、とセラフィムの所へ行った。彼に全てを話し、色々聞いてみると相手がやはり病んでいることが解った。ジェネラスは実の息子を塔に閉じ込め、そこで育てていたのである。セフィラムは彼を嫌ってはいるが、憎んではいないらしい。しかし、スズキが『貴方の父親を殺すのよ』と言ったのに対し、彼の対応は醒めたものだった。
そして、最後に彼は問う。
-外の世界は魅力的か…
それに、ダートは笑顔を向けた。
「ああ、とても魅力的だよ。
 色々な町があって、色々な人がいて、色々な音色があって…。
 この塔じゃ体験できないことが一杯ある。
 それに光も…」
「光…?」
セラフィムが不思議そうに首を傾げると、プリムプラムは優しく微笑む。
「ええ。太陽の光です。今、貴方に一番必要な…」
その言葉に……セフィラムは少しだけ…微笑んだ気がした。

 そして、スズキ組一行は先ほどドラゴンゴーレムを倒した部屋まで戻ってきた。
「俺たちのやることは後1つ!
 …ジェネラスを倒し、この忌々しい塔から脱出する!」
ダートが愛用の剣クラウソナスを握り締めて言う。
「ゲームを楽しませてもらった謝礼を…何倍も楽しいゲームで返さねぇとな」
続けてソウキュウがそういい、何処からとも無く鋼鉄の箱を取り出す。
「って何でそんなもんもってるんですかっ!」
とシリウスが突っ込む。と、いうのもあの下水道の依頼の後、鋼鉄の箱について調べた結果それが古代の兵器である事がわかったからである。
「んー、スズキが持って言っておけ、と」
それで意味の解った彼女は苦笑し、傍らにいたプリムプラムが懐に手を置く。
「だから、私も…このシコンを持たされたのですね」
スズキの勘は、時折妙な方向で当たる。最初は訳がわからなかったが、漸く合点がいった。
「相手に不足はありません。こっちも気を抜かないでまいりましょう」
リーガルトの言葉に皆が頷き、スズキは言う。
「今から一緒に、これから一緒に、殴りにいこうかーっ!!あの変態をっ!!」
『おーっ!!』
ここはとりあえず誰も突っ込まず、階段を上り始めた。すぐに扉が見つかる。
-覚悟は?
不意にダートが問うが、皆が笑顔で『できている』と答える。少年もまた微笑み、その扉をあけた。その瞬間、ジェネラスの楽しげで酷く興奮した声が飛び込んでくる。彼はイスに座り、水晶の前で目を輝かせていた。頬が紅潮し、ぎらぎらとした目で一羽の猛禽類を見やる。
「いやあ、本当に素晴らしい。お待ちしていましたよ、『スズキ組』リーダー、スズキ
 さん……!」
「それはどうも。で、ゲームは親が勝つって…なーんかイカサマでも仕込んでるワケ?」
気の無い返事でスズキが問うと、ジェネラスはしこんでいないが、そうなんだ、と子供のような答えを返す。そして帽子を被りなおしつつ微笑んだ。
「だってそうでしょう?遊技場やカジノでも……結局親がかつ。それは強いから、なん
 ですよ。だから、イカサマなんて仕込む必要が無い」
そういい、彼は水晶に手をかけ…瞬時に1つの結界が生じる。

『魔法を通さず、術者に返し…刃も跳ね返す…盾』

「……そんなの関係ないっ!」
スズキの掛け声と共にソウキュウが鋼鉄の箱をぶっ放す。炸裂するが、ジェネラスには効果が無いらしい。投げられた火晶石の攻撃を受けるも、スズキは例の魔剣を爪で掴み結界を切る。
「なっ……!?」
ジェネラスは目を白黒させる。それもそのはず、結界に皹が生じて上復旧も出来ないのだから。スズキはふふん、と自慢げに笑う。
「意外と無知なのね。コレはカナンの魔剣。ソドム最後の王であったカナン王が
 ………あの変態リッチが愛用した、ものすごい魔剣なのよっ!」
「いや、変態リッチって言い過ぎでは…」
思わずリーガルトが突っ込むが、それもお構いなくプリムプラムがシコンを投げるッ!
「これで、終わりです……」
瞬間、それは炸裂した……。結界もろとも吹っ飛ぶジェネラス。それにダート、シリウス、リーガルト、投げた本人は眼を丸くする。
「あ、有り得ない…玩具どもに…ゲームで負けるなど…」
(いや、シコンの一撃で結界もろとも貴方が倒れたほうが有り得ないんですが)
リーガルトは物凄くつっこみたかった。奴ではなくシコンに。他の面々もリーガルトと同じ意見らしいがスズキはばさばさと音を立ててジェネラスのもとに舞い降りる。
「人の命を軽んじ、ゲームと称して弄んだ報いだよ。物事を甘く、軽く見る奴がゲーム
 に勝てるはずが無い。これで、おしまいだよ」
「そうか…そうか、そうか…ふふふふふ…」
ジェネラスはどこか納得したように笑い、どこか彼女に恋焦がれる若者のような目で、本当に愛しそうに呟いた。
「…ならば、冥府で会おう…スズキ。そこでゲームをするときは…負けん…っ!」
それが、ジェネラスの…最後の言葉だった。その顔は、本当に楽しそうな、満足した笑
顔だった。息を引き取ったのを確認し、スズキは仲間に向き直る。
「さあ、帰ろう。奴は…死んだら塔が倒れるとかそんな仕掛けをしてないっぽいから」
一同は、とりあえず頷くことにした。

 塔から出ると、東の空が明るくなってきていた。ぼろぼろになった一同は塔を振り返りなんつう悪夢だったんだろう、と口々に言い合い、苦笑しあう。我が家といっても等しい『礎の神話亭』へ戻ろうとすると、1つの影が駆けて来た。…よくみると、それはジェネラスの息子、セフィラムであった。
「どしたん?」
スズキが問いかけると、少年は息を整え……どこか必死な顔で彼女に問う。
「僕も……僕も連れて行ってもらえませんか?
 やっぱり、世界を知りたい。…世界を見たいんです。ですから…」
それに、スズキは小さく微笑み、かるく頷く。
「それなら勝手についてくればいいよ。私は歓迎するけどねぇー。皆は?」
スズキは仲間たちを見、仲間たちは皆笑顔で頷いている。特にプリムプラムは少しだけ目に涙をためて…。どうやら彼の今後が心配だったらしい。
「それでは…戻りましょうか…私たちの我が家へ」
彼女の言葉に、スズキは頷く。そして、新たな仲間となったセフィラムの肩に止まる。
「でも、冒険者って大変だよ。それでもいいのなら…ね?」

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき

えー……一応、付箋はありましたがバレバレーな天空です。
まずシコン。もちアレのシナリオで入手しました。
それ以来『スズキ組』では危険物として倉庫に入れていたのですが
何かを思ったスズキは封印を解き、シコンを持って置くように言ったのです。
つーかね、シコンがね、全体攻撃であることを忘れていたよ!!(をい
決して他のリプレイでは使用しませぬ(戦闘ではなっ!:力説)
あ、でも鋼鉄の箱のインパクトが…(落涙

そして、最初に助けられるダートが『鎖で縛られ、その上で暴行を受ける』
とあったのでまるでジェネラスが…(大汗)のように見えてなりませんでした。

なにはともあれ、ギャグふくみ。
ネタはまぁ、古いところがありますがまぁ、少しでも楽しんでくれたら。
そして、カナンの魔剣がバルディッシュという冒険者から借りた事になっているのはぼ
ちぼちのちほど説明しようと思います。今後のリプレイにちょっとかかわるんで。

兎に角、あの鳥……スズキ率いる『スズキ組』の冒険はまだまだ続きます。
今後もよろしくお願いしますね♪

これは作者である机庭球さんへ送ったリプレイの一部を修正
しております。

それでは、これで。
天空 仁

補足
検閲削除となっている場所には人を不快にさせる罵詈雑言が入ります。
貴方のお好きな罵詈雑言を入れてお楽しみください。
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-19 21:47 | 札世界図書館 | Comments(0)

結局、二つに分けようかと(スズキ、暴走パラダイス:笑)


あれから三日後。
一羽の猛禽類が、深い闇から浮かび上がる。
それが目指していたのは、一つの塔であった。
(不恰好だが…致し方ない)
それは、剣を咥えて首に荷物袋を提げて飛んでいた。
普通の鷹では出来ない芸当だが、それだからこそできることであった。
ようは、魔術、である。
(…無事でいてくれ、みんな。バルディッシュの旦那からこの剣を借りるのに、理由を考えるのが大変だったんだからなッ!)
鳥は、そう思いつつ塔を睨んだ。
囚われた仲間はそこにいる。そして、宿敵も。
(まるで御伽噺の勇者様じゃないか)
内心で失笑しつつも、鳥…スズキは闇夜を飛んでいた。

CWシナリオ『新月の塔』(作:机庭球)より ※敬称略
『朔の帳を裂く者達』 前編 (著:天空 仁)

 スズキが塔に到着したとき、彼女の体内時計は既に深夜へ近づいていた。目の前に聳(そび)える塔はどこか懐かしく思いつつも、僅かに息苦しくなる。
「…まぁ、助ければいいんだ、助ければ」
彼女はそういうと器用につめで戸を開け、入り込む。と、途端に大きな音を立てて扉がしまった。
「扉が勝手に……!」
振り返った背後のドアは、簡単に開きそうも無い、と確信した。こうなったのは、相手が己を逃がさないため。己の楽しみを逃がさないためである。重苦しい空気に、威圧的な壁。相手を苛立たせるには良い環境だろう。
(流石変態有閑貴族)
などと思っていると…
-ようこそ、勇者のスズキさん…
ふと、漂う敵の声。
そう、彼女が率いる『スズキ組』を陥れた邪道なる魔術師・ジェネラスの声!
ぶわり、と音を立ててスズキの羽が逆立ち、苛立ちをあらわにする。が、頂上にいるであろう奴に見えるはずが無い。彼を倒せば万事解決するが…。
-スズキさん、早く私に会いたいでしょう?
 私もあなたが全員を救い会いに来るのを今か今かと待ち焦がれているのですよ。
 じれったいね…恋でもしたかのようだ。
「相変わらずふざけているな。
 それに…変態に好かれた覚えは無いし、お前のようなのはお断りだ」
半分呆れ気味にスズキはいうが、くすくすと笑うジェネラスはそれを褒め言葉と取っているようだった。そして、彼曰くこの塔には元々あった仕掛けがあり、それにジェネラスプロデュースな罠まで用意されているらしい。
(余計な事を)
などと思っていると、ジェネラスは軽い感じでこう言った。
-…さぁ、お話はここまで。
 まずは小手調べといきましょうかスズキさん
「うっさいっ!さっさとやりやがれっ!!」
スズキが羽ばたいて悪態を吐くと同時に、よく見ると目の前にあった妖魔の像が動き出した。すぐさま反応し、スズキは『風纏う霊刃』を使用する。そして手際よく爪で握った『カナンの魔剣』で像を造作もなくぶち壊す。
-エクセレント! 流石ですよスズキさん。これなら十二分に楽しめそうだ。
 あなたが無事、私の元に来る事を楽しみに待っておりますよ くくくく……
その陰湿な声色が、空虚な闇に映える。スズキは醒めた目で虚空を睨み
「……ご勝手に」
とはき捨てた。

 さて、とスズキは羽搏く。そばにあったドアに鍵穴は無い。としたらそれを開く仕掛けを探せばいいのだ。案の定、パズルが道の先に鎮座していた。
(おいおい、某魔法の眼鏡くんかよ、わたしゃ)
まぁ、某魔法の眼鏡くんではチェスに勝利しないと先へは進めなかったが…
スズキは説明を読んだ。
それによると要は「ななめ取りが出来ないオセロで白を勝たせる」ということだ。
(さて…)
スズキは少し考え…パネルを嘴や魔剣を使って動かす。
上手く全てが白くなると、どこかでドアが開く。が、いざその前に来るとなにかあるような気がした。しかし、準備など当の昔に出来ているのだ。
躊躇いも無くドアを開く。と……
(……っ!!)
鳥の目に映ったのは鎖で拘束され、酷い暴行を受けた幼いエルフ…ダートの姿だった。白い肌に生える鬱血の跡が、余計に痛々しく見える。治癒を施し、いざ、鎖を外そうとした…その時。目の前に現れたのは機甲の兵士だった。どうも一筋縄ではいかないらしい。襲い掛かる敵に攻撃し、その隙に鎖を打ち砕く。
「いわれなくても、倒すよっ!」
鎖から解き放たれたダートは腰に帯びていた細身の剣を機甲の兵士に叩きつける。
それが鎧を破壊し、その刹那決着がついた。
「物静かな依頼人のふりして…大した野郎だよな」
ダートの言葉にスズキはそうだな、と相槌を打つ。が、少年の白い手に痣があるのが見えた。それに札を貼り付け、念じればいいのだ。スズキはすぐさま少年の手に札を貼り付け、念じた。そして、すっ、と痣は消え、ダートは呪いから解き放たれた。
「消えた…。ということは痣は魔法でできたもの、と考えられるな」
-この札には、強力な……。
その言葉が、スズキにはヒントのように思える。そうだ、あの男…この札は6回使える
と言っていた。眠らなかった自分をのぞき、札は5回使用する事になる。
(そういう、ことなのか…?)
スズキは小さく苦笑した。

 その先には、宝珠があり、杖に宝珠の冷気を与えればいいらしい。一階にあるだろう、と睨んだダートの言葉を受け入れ、スズキは少年と奥へ進む。途中罠を壊し、箱からそれらしき杖を入手する。
(ガキがそのまま大人になったような…)
内心苦笑しつつ、ダートは溜息を吐く。そして、元の場所へ戻り、杖へと宝珠の冷気を移した上で二階へあがった。まっすぐ行ってみると、炎の力をゲットできる宝珠を見つけたがあえて無視し、もう一方の道を行く。……が、先が見えない。
(一か八か)
スズキはある手段に出、それがその道へと仕掛けられたものが何か気づかせる。
解除した瞬間、ダートはぽつりと呟いた。
「ここにも仲間が囚われている。…心して進まないと」
そうだ。奴はこの塔の一階ずつに仲間を監禁し、彼自身は最上階で様子を見つつ『スズキ組』を待っているのだ。道の先、嫌な予感のする扉を見つける。ダートは肩に止まったスズキの目を見ると彼女も頷いていた。準備は出来ている。部屋に入るや否や、ジェネラスが労を労ったが、それ以上に奥から聞こえてきた仲間の叫びが気になった。
「そ、ソウキュウ!?」
スズキの声に、ジェネラスが笑う。
-毒ガスをまきました。もって15分…
しかもソウキュウの体はロープで縛られているという。しかもドアには忌々しいゴーレム。しかし、ここでもダートの持つリュディスの剣が役に立った。これは鍵を外す力があるのだ。レバーを少年に任せ、スズキは嘴でローブを切り、ソウキュウを助ける。それでもリザードマンと戦い、漸く一段楽した。
「って、何のまじない!?」
「黙ってろ。これでお前の呪いが解ける」
手を出してもらい、それに札を押し付ける。ダートの時と同じように痣は綺麗に消えた。
「…ともかく…行くしかないな」
ソウキュウの言葉に、2人は頷いた。

 一旦ソウキュウが囚われていた場所へ戻り、ヒントを探す。と、女神と天使の像があった。とりあえず高く売れそうな天使の像をかっぱら…もとい入手し上へ行くと、魔方陣(あきらかに怪しい)が見えた。
「とりあえず、他のところにもありそうだな」
ふむ、と考えるソウキュウ。転移系魔術のかけられたそれへ踏み出すと、3人は扉のある部屋へと飛ばされる。と、扉が気になったダートはちょっと時間がほしい、とスズキに頼む。そして、あるものがはまりそうな穴を見つけた。
「ビンゴ!」
はめ込んだとたん、ダートは思わずそういい、ソウキュウがわしわしと少年の頭を撫でる。
「ってそれ、ダスキン・モップの口癖じゃないか」
思わずスズキがつっこみつつも、3人はその奥へと向かった。その先でも扉があり、詳しく調べると一部の床が盛り上がっている。
「意味、あるのかなぁ」
「……あるんじゃね?あの(検閲削除)のことだからさ」
ソウキュウの言葉にスズキは頷く。とりあえず調べてみると…どうやらそういうことらしい。しばらくしてそこには女神像が置かれることになった。
「……なんか、ネタバレしているみたいだね」
「いや、そういうコメントは避けておいたほうが無難かと」
スズキの言葉にソウキュウが突っ込み、一行はとりあえず目の前の扉を開くことにし、目の前の扉と魔方陣に苦笑する。念のため行っていない方向の道も確認するがその先も硬く閉ざされた扉しかない。意を決し魔方陣へと踏み込む。覚悟など、とうの昔に出来ている。
「塔だけに」
「いや、くだらん洒落はいいから!」
スズキの言葉にダートがつっこんで3人は転送される。そして、その先の魔方陣には光が無かった。
「ふむ、魔力を注げばいいみたいだな」
ダートがそう判断し早速そうしようとしたら…今度は這う音がした。出てきたのは蜘蛛の群れ。それを全てつぶした先に…蜘蛛の巣があった。それを払うと、そこには酷く衰弱し、虚ろな瞳を向ける天使族…リーガルトの姿があった。縄を解いても、彼は何も言わない。
「こんな時にジェネラスの声が…」
とダートが呟いている側から、奴の声がする。リーガルトがぼんやりとした状態なのは蜘蛛の毒の所為らしい。
「…って、そういう問題じゃない!人の命の重みも道徳心もあんたにはないんかいっ!」
「あったらその時点でこんなゲームは起こらないよ…スズキ」
ダートの突っ込みに、ジェネラスがそうですよ、と頷く。
「で、今度は何だ」
-その蜘蛛の親玉です。ちなみにリーガルト君を助けるにはそいつから抽出される血清が必要ですよ
ソウキュウの問いに、ジェネラスが丁寧に答え……幕が開く。
「ダート、魔方陣を」
「任せておけ、4分もあれば…」
ダートは魔方陣に駆け出し、スズキとソウキュウは虚ろな目で横たわるリーガルトを庇いながら大蜘蛛との戦闘を始める。
-さあ、もっと私を楽しませてください…。そう、あなたたちのあがく姿で…
ジェネラスの声が、忌々しい。しかしスズキたちはそれを無視した。ソウキュウは得意とする技で急所ごと蜘蛛を縛り上げ、そこから血清を奪い取る。
「今のうちに与えて…っと」
蜘蛛が動けないうちにリーガルトの治療をする。と、彼の瞳に生気が宿った。
「私は…!?」
「大丈夫だぜ、リー。…と。あとは魔方陣さえられば蜘蛛から逃げられる!」
ソウキュウはそういうとリーガルトの肩を軽く叩き、蜘蛛へ攻撃する。そうこうしているうちにダートが駆け寄り、魔方陣の用意が出来たことを伝える。
「とんずらするぞっ!」
スズキの言葉に、全員が頷く。こうしてスズキたちはリーガルトを連れて魔方陣へと踏み込んだ。転移魔術により、四人はさきほどの場所へと飛ばされる。
(引くときは引く。勝ち目の無いときは生存を優先する。当たり前のこと…)
ジェネラスはスズキを真の勇者だと褒めたが、嬉しくは無かった。
-因みに蜘蛛には再チャレンジできます♪
「いや、無理にきゃぴきゃぴせんでいいから」
ジェネラスの微妙な声色に、スズキが突っ込んだ。

(後編に続く)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あとがき?
 どうも、フーレイです。とりあえず、前編と後編に分けました。プレイしつつ執筆という実験的作品でもあったのですが、作者である机庭球さん…ほんまに、こんな輩ですみません。シナリオのダークでドキドキな…そう、手に汗握る!ムードが出ていない!

ちなみに、このリプレイは机庭球さんへ送ったリプレイをちょっと修正して公開しています。

それでは!
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-12 19:09 | 札世界図書館 | Comments(0)

のっけから飛ばします(スズキ組が行く)


リューンの下水道。
遺跡をそのまま使用している、というそれを通る7つの影。
「それにしても、バイトはまったく……」
そう呟く眼鏡の青年以外は、どうかんがえても冒険者としか考えられない衣服を纏っている。おまけに一羽の猛禽類がいた。彼らの目の前には、ゴミが積んであるが、何かが見えた。
「ふむ、どけてみよう」
鷹とおもわしき鳥はそういい、翼でゴミを払う。と、なにやら銀色の塊がすこし見えた。天頂部に取っ手のようなものがあり、側面にはなにやら古代の文字が彫りこまれている。
「何かしら?」
不思議そうに女性の前で、眼鏡の青年は声を張り上げた。
「…ろ、ろ、ろけっとらんちゃぁ?」
訳が解らない。その場にいるメンバーも首を傾げ、興味深そうに見つめる。が、それに飛び乗った鷹は、こう言い放った。
「こいつはいい物を仕入れた。もっていこう」
「…冒険者って変わっていますね」
眼鏡青年の言葉に、緑色の髪をした青年が肩をすくめる。
「いや、変わっているのはこの鳥だよ」

カードワースシナリオ
『奇塊』(作:齋藤 洋)および『新月の塔』(作:机庭球)より
※敬称略

『朔の宴は倒錯の味』

リューンの下水道掃除から3日後。一羽の鳥が剣をまじまじと見つめつつ呟いた。
「……まぁ、結果から言えばアレはある意味豊作よ」
「ってなんでまた古代兵器があそこにあるんだよ」
傍らの青年は鳥に対してつっこみをいれる。鳥はそうだな、と苦笑するように身を震わせ、嘴を開く。
「俺に解るもんか。まぁ、どっかのだれかの置き土産だろ?」
「スズキ、よくもまぁそれで…」
青年が何か言おうとしたが、スズキと呼ばれた鳥は目を細めて睨む。
-言うな-
鳥はそういっているようだった。
「わりぃ」
「いや、いいよソウキュウ。それにしても、次の依頼があるんだ。それに備えろ」
スズキはそういうと嘴で自慢の翼の手入れを始める。ソウキュウと呼ばれた青年はへいへい、と気の抜けた返事を返した。その背中に、鳥はさらにこういう。
「例の箱、持っていってくれ。…あとシのつく危険物も。なんか妙な予感がする」

 一方、宿の裏では小柄なエルフの少年が真面目に剣を振るっている。その真剣な眼差しに、見ていた女性は小さく微笑む。
「相変わらずですね、王子」
「そう呼ばないでよ。僕はここじゃ、ただの冒険者なんだから」
女性の言葉に、少年は苦笑する。彼の手には細身の剣……『クラウソナス』が握られており、しっかりと手になじんでいるようだった。鍛えなおしてもらったそれは、どこかうれしそうに見える。それが少年にも嬉しいらしく、表情が明るい。
「それにしても、その剣…似合いますね」
不意にそういわれ、少年は少しだけ頬を赤くする。
「プリムプラムさん、からかわないでください」
「うふふ、ダートはあいかわず照れ屋ですね」
緑のローブのすそを握り、プリムプラムと呼ばれた女性は笑う。ダートと呼ばれた少年は、小さく肩をすくめ、再び剣の素振りを始めた。その姿をみつつ、ローブの女性はやんわりと瞳を細めた。

 一方、宿の一角。一組の夫婦が紅茶を飲みつつ苦笑しあっていた。
「それにしても、なんてふざけた生き物ですかあれは。倒したとたん汚水に流されるとは」
青年は溜息混じりに頬杖をつく。その背中から生えた純白の翼を一度動かし、溜息を吐く。
「そうよね…。あの後匂いを取るのに大変だったし。
 でも、下水道での依頼はまだありそう」
同じように溜息を吐くのは若い女性。水色の瞳と髪が魅力的だが、いつも凛々しい表情は曇っている。
「シリウス、貴女もたまにはそんな顔をするんですね」
青年がそういいつつ紅茶を入れなおす。シリウスと呼ばれた少女…とも言える女性はそうね、といった上で夫である天使に微笑みかける。
「まぁ、これでも人の子ですもの、リーガルト」
リーガルトと呼ばれた青年はふふ、と小さく微笑んだ。
「兎に角、明日には依頼がある。今日はゆっくり休んでおこう」
彼はそういい、妻の髪をそっと撫でた。

…冒険者の宿【礎の神話亭】の看板冒険者チーム『スズキ組』…
この6人は、まだ…今からおこる事を知らない。

 次の日。スズキたちは森を歩き続けていた。長い時間森を歩き続けていたが、何か、表情は冴えない。依頼は妖魔退治であったのに、なにもないのだ。
(これは、騙されたのかもしれない)
そうおもった面々は引き返す事を選んだ。そのはずだったのだ。
刹那、ふとこぼれる甘い香り…
「!?…ちょ、ちょっと!!」
スズキは嘴を翼で覆い、身構える。仲間たちは次々に倒れ、なぜか彼女だけが残ってしまう。激しく爪で揺さぶるが、誰も目覚めない。
-まるで、気絶するかのように。
そして、仲間たちは全員姿を消した。ただ仰天する一羽の鷹を除いて。
名を呼んでも返事はない。
苛立ちだけが肉体を支配する。
(くっそー、ソウキュウがいないと元の姿にも戻れやしない…)
木に体当たりしてみるが、何も変わるわけではない。一羽途方にくれていると、どこからともなく男の陰湿な笑い声が聞こえた。
「どうやら、想定外の事が起きてしまったようですな…」
距離を置きつつスズキ組をみていたという男は気づかれずあとをつけるのに苦労した、と肩をすくめてスズキを見る。そして、こう言ったのだった。
「なんといいますかね、あなたたちから嫌な予感がしましてね。
 そしたら案の定、計算外の事が起こってしまったではないですか」
人間の第六感はこわい、といいつつも、その男からはどこか余裕を感じ、スズキは僅かに男を睨む。
「それで…あなたは確かスズキ…さんでしたっけ?」
スズキが黙っていると、男は依頼主と雇われた人間の関係を持ち出す。
(ジェネラス・ベルセゾン、最初から俺たちを騙す気でいたのか!?)
そう、奴こそがスズキたちに依頼をよこした張本人だったのである。

目的は、冒険者を生贄に悪魔召喚をすること。
そのために偽の依頼を出した。
その事実にスズキの瞳が鋭くなる。
「頭、両手足、胴体…」
「そう、6人分の生贄がね」
ジェネラスは小さく微笑み、不思議そうにしゃべる鷹を見つめる。強力な催眠ガスを使った筈なのに眠らなかった鳥を。
(趣味でんな事するなよな)
半ば呆れ気味にジェネラスを見つめ、スズキは内心で溜息を吐く。しかし、相手は趣味で学んだとはいえ強力な魔術師である。用心するに越したことはない。相手は今、スズキを殺す気はあるらしいが『面白くない』と考える人間である。とっさに鸚鵡返しのように問いかけ、表情を険しくする。
(つまりは、仲間の命を商品に、ゲームをしようって魂胆か…)
ルールは簡単。
ジェネラスが死ぬと仲間も死ぬという呪いを解くために1人でパズルを解くこと。
舞台は『新月の塔』

「やってやろうじゃないか(検閲削除)め、この『スズキ組』に喧嘩売ろうとは」
スズキの言葉に、ジェネラスはどこか嬉しそうに微笑む。
「それは私への褒め言葉ですか、スズキさん?」
「いや、違う」
スズキははき捨てるようにいい、ジェネラスを睨む。
「お前に、誰一人渡さない。
 ダートはいずれある国の王となる。
 ソウキュウには3人の妻がいる。
 リーガルトとシリウスは結婚してまだ半年しかたっていない。
 プリムプラムは将来国の宰相になる事が決まっている。
 そんな未来の仲間を…」
彼女はそれだけいい、一度溜息を吐く。
(俺なんかと違って)
「未来がある仲間を、生贄などにはしない!」

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
『新月の塔』の前に『奇塊』でゆるゆる質をとりこんだフーレイです。正しくは…まぁ、魔剣工房で仕入れた剣を打ち直させるために使い切らせる為だったわけですが…
おかげでこんなプロローグ完成。
って…当時『山間の村』リプレイが白紙状態なのにこれに手を出してしまった(をい)。と、いうのもCWユーザーの友人が「おもしろい」と言っていたので(攻略ヒントを教えてもらいつつ)むくむくとやりたいなー、という思いがふくれあがって
DL→れっつプレイ→同時進行でリプレイ?
となりました。

補足程度に言いますが、スズキ(パーティーリーダー)は鳥です。猛禽類です。
元々は別に正体がありますが。で、エルフの少年、ドリアッド(木の精霊っぽい種族)、ホムンクルス、天使、人魚の仲間とチーム組んでいます。・・・今思えばスズキだけ眠らなかったのは、彼女の正体の所為なんじゃなかろか、と思ってしまう。と、いうことで本編のリプレイもおたのしみに。前編・後編の二つに分けてお届けします。

おまけ。
冒頭には名前が出ないもののダスキン・モップくん登場。
ビンゴーっ!!
おまけに別シナリオのアイテムも…。
付箋がばれているだろうが、まぁ、気にしないッ!
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-05 20:40 | 札世界図書館 | Comments(0)

自信は無いが(おっさん、思い出す)


『朔爛漫』【7】

 新月の闇の中、静かにエルフの男は笑う。彼の傍らでは、人間の女が幸せそうな顔で彼を見つめていた。
「俺と一緒に…あいつに一泡吹かそうぜ…キィフェ」
射抜かれた魂のまま、彼女は一つ頷いた。

 次の日から、二人は領主の目を盗んで仲間を集めた。町の人間たちも、森のエルフたちも領主の横暴には怒っていたのだ。これさえなければいい領主なのに、という声も彼方此方で聞こえていた。
 キィフェは表向き領主の言いつけどおりに振舞った。父親の会わせた見合い相手はそこそこ整った顔をしていたが、やはりバルディッシュには勝てなかった。それでも、彼女は表向き大人しいお嬢さんを演じ、時々人目を忍んで話し合いに参加した。
 バルディッシュは仲間たちと共に打ち合わせを繰り返した。満月の夜に花嫁を掻っ攫い、森の奥まで馬で走る。追っ手が来たら、作戦を決行する。その内容を深く煮詰めていた。

そして…満月の夜。バルディッシュはキィフェを浚ったのだ。

 黒い馬を追う領主たち。バルディッシュたちが消えた森へ入ろうとしたとたん、迷いの魔術がかけられる。そして、松明を持った多くの領民たちが領主たちを取り囲む。
「どけ!お前たち!!娘が浚われたのだぞ!!」
「それはできません、領主さま」
1人の老人が鋭い目で領主を睨みつけ、声を張り上げた。多くの領民たちがそこに集まっており、色んな種族がいた。人間とエルフは勿論のこと、ドワーフや髪に葉緑素を持つドリアッド、泉に暮らす人魚族まで姿を現していた。
「昔から、この領地はさまざまな種族を平等に見ていた。それなのに貴方の代になってからエルフやハーフエルフなどを差別し、自由を奪っている!」
一人の若いエルフが声を上げる。と、別の人間の少女が言葉をつないだ。
「我々は昔から…そう、ここが領地となる前から人間とエルフの協力によって栄えてきた。それが、この地に生きる者達の姿なのだ。それを否定する領主など、我々は要らない」
「他の領地に比べて税金などが軽く、飢饉のときは屋敷の食物庫を開いてくれる。それはありがたい事だが種族での差別は撤廃していただきたい!」
「それさえなければ、貴方は素晴らしい領主なのだ。それを嘆き、キィフェ様はこの土地を出て行かれたのだ!」
そういったのはハーフエルフらしき双子の青年だった。二人はきっ、と領主の目を見つめて声を上げた。次にドリアッドの老女が前に進み出る。
「我々が望むのは、仲良く穏やかに暮らすこと。それ以上は求めぬ。ただともに暮らす事を認めてくれればいいのじゃ」
「そして、あんたの娘が愛する人と一緒に生きることを…な」
人魚族の男が真剣な顔でそういい、領民たちは領主たちの様子を見た。彼らの言うとおり、エルフなどに対する態度を除けばここの領主はいい領主だった。わがままで若い娘を連れ去ったり、年貢をむりやり取ったりはしない。厳しいときは待ってくれたり、量を減らしたりしてくれる。むしろ、政治的には優しい領主であった。彼らはその事を知っているし、キィフェがそれを一番知っていた。領民を宝に思う領主であることはバルディッシュも感じていた。だからこそ、彼はこれを気に事を起す事を思いついたのである。
「……くっ……」
領主はうなった。いま、ここにいる領民たちの言葉はどれも本物だった。確かに、己の父親はエルフにも、多種族にも優しい領主だった。それ故に森は豊かで毎年美味しい木の実や上質の炭になる枝も取れていた。一揆に当たる行動ではあるが、そうとも言い切れないのは彼らが一揆である、という態度ではなく説得という形であり、誰一人武器を持っていないからであった。手にしているのは、松明やカンテラだけである。
(これは…キィフェとあの男が考えたのだろうな)
それを悔しく思いつつも、領主はその場を動くことが出来なかった。ただただ、この領民たちをどうしようか…本当に困ってしまった。

 月の光も届かぬ、森の奥。カンテラと焚き火の揺らめきを感じながらバルディッシュは小さく溜息をつく。腕の中では愛する人が穏やかな寝息を立てている。その愛らしい姿を見つめながら周りへと耳を傾ける。木々のざわめく音に混じり、僅かにだが人々の歓声が聞こえてくる。それで作戦成功を知り、小さく口元が綻んだ。
「これで、お前の望みも…俺の望みも叶いそうだよ」
ぎゅっ、とキィフェを抱きしめて呟く。そして、穏やかにエルフと人間が過ごす領地の事を思い描きながら彼もまた眠りについた。

 後から聞いたのだが、あれから領主はまもなく引退しキィフェの親戚に引き継がれたという。そして、議会が出来上がり種族に関係なく領民の中から選出され、領主とともに盛り上げる事を決意したそうだ。

 バルディッシュは妻となったキィフェとともに碧落の森で暮らし、後に男の子を一人授かった。二人はその子にラシュと名づけ、大切に育てた。彼自身は聖騎士団の一員として森を護り、一人の男として家族を護り、その幸せをずっと大切にしたかった。

…しかし、それは遠い昔の夢になっていた。

バルディッシュは100年も昔の事を思い出し、小さく苦笑していた。碧落の森とリューンの間にある道の途中、ふと空を仰ぐ。今日は新月で光はカンテラだけである。
「……親父?」
不意に声がした。在りし日の己に似た息子が紅茶のカップを手渡しつつ見つめていた。
「ラシュ、すまないな」
「母さんの事でも思い出してたのか?」
ラシュはローブを正しつつも問いかける。バルディッシュの表情からそう思ったのだろう。そして、少しだけ表情を曇らせる。幼い頃に失った母親の事を思うと、胸が痛い。父親がそれを悔いている事を知っているし、父親を責めてしまった自分も恥ずかしいからだ。
「まぁな。でもお前が気にすることじゃない」
そういいながら息子の頭を撫でる。一見、バルディッシュは壮年、ラシュは青年とも言える年齢に見えるのだが、バルディッシュは200年生きるエルフ、ラシュもまた70年生きているハーフエルフである。ラシュは照れまじりに手をどけると、傍らに置いていたカップに手を伸ばし、中身を口にした。何故だろう、胸が酷く痛い。
「どんなに思っても、帰ってこないけどな」
ラシュはそういいながら立ち上がり、ばつが悪そうに背を向ける。何も言わず天を仰ぐバルディッシュを残し、彼は少しだけそこから離れる。未だに父を許せずにいる幼い自分。それが、恥ずかしく、思わず出た言葉に顔をしかめる。バルディッシュはそれを横目で見つつも、小さく苦笑した。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
とりあえず、終了。最後がなんかやや苦いんですけれどまぁ…若干は親子の確執が見えないと(汗)。キィフェは病死です。バルディッシュが聖騎士団から抜ける理由がちょっちありますけれど。母親の病が治るように祈ったのですが助からなかったんで、ラシュは『厚き信仰』ではありません。そう、真逆のクーポンもちです。

いろいろありますけれど、他を除けば時々どつきあうこともある普通の父と子ですよ。
次回はとりあえず過去に書いたシナリオのリプレイの予定。
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by jin-109-mineyuki | 2008-01-29 17:19 | 札世界図書館 | Comments(0)

そういやぁ、何故タイトル・・・これにしたんだろう、俺(汗:バル、がんばってる)


『朔爛漫』【6】

 その夜は、新月で真っ暗だった。いつのまにか、新月の夜に逢瀬を重ねるようになっていた。今宵もその約束だった。
(さて……)
バルディッシュはいつものように待ち合わせの川原で佇んでいた。そして、懐から手紙を取り出し、カンテラで照らす。そこには短く
“聖闇教会 聖騎士団・第3小隊長及び第1中隊長に命じ、碧落の森勤務とする”
とだけ書かれている。つまりは、本拠地の都市を護るためにそこへ戻らなければならなくなっていた。これを切欠に、彼はキィフェに求婚しようと考えていたのだ。そうこうしていると、馬の蹄の音が、彼の耳に入ってきた。
(おかしい。いつも歩いてきているのに)
不思議に思い、バルディッシュはカンテラを掲げてその方向を見る。と、キィフェが愛馬に乗ってやってきた。彼女は馬を下りるなりバルディッシュのもとへ駆け出した。
「キィフェ!?」
「バルディッシュ…私…どうすればいいの?こんな選択だなんて…」
彼女はわあ、と泣き出し、バルディッシュは驚いたもののそっと、キィフェを抱きしめてそっと頭を撫でた。
「一体何があったんだ?」
問いかけるものの、キィフェは嗚咽を漏らしたままで何も答えない。しょうがなく思いながら彼はそっとキィフェを抱え、彼女の愛馬に跨る。そして、滞在しているエルフの村へと急いだ。誰かに聞かれたら拙い気がしたからだ。
(それに、これは……求婚どころじゃなくなるかもしれないからな)

 キィフェが我に帰ると、そこは川原ではなくバルディッシュの部屋だった。寝台に横たえられ、服が少しだけ緩めてある。ゆっくり起き上がると部屋の主が紅茶を注いでくれた。
「…ありがとう。あと、取り乱してごめんなさい」
「いや、相当嫌な事があったんだろう?おちついてからでいいよ。言いたくなかったら言わなくてもいいし」
バルディッシュはそういい、自分の紅茶に口をつける。良く見ると、彼もゆったりとした部屋着を纏っている。ふと、色々勘繰ってしまったがそれよりも先に言わなければならないことがあった。カンテラの光だけが広がる中、キィフェは紅茶をちょっとだけ飲んで口を開く。
「気遣い、ありがとう。でも……言うよ。これは君と私に関わる重大なことだし」
バルディッシュの表情が、少しだけ研ぎ澄まされる。それを確認しつつも、頭ではどう説明しようかと必死になっていた。けれど結局はそのまま出ていた。
「実は、見合い話が持ち上がっている。そして父はこんな事を言ったんだ。見合い相手と結婚するならば、引退して私に領主の座を譲る…とね」
「なっ……!?」
バルディッシュの赤い眼が見開かれ、感情の揺らぎが見えた。少し俯き、軽く唇を噛む。キィフェの夢を知っているから、酷く胸が痛む。
(予想はしていたが、そう来たか……)
溜息が漏れ、しばらくの間二人とも何も言わなかった。闇夜を焦がすカンテラの光に照らされ、湯気が踊る。その中漏れ出るのは、溜息ばかりだった。が、バルディッシュは顔を上げる。
「俺も、お前に言わなくちゃならんことがある。聖闇教会の聖騎士団本部から手紙が来てな。本部勤務になったんだ」
「えっ!? じゃあ…昇進したんじゃない!おめでとう!!」
これにはキィフェも嬉しくなる。が、バルディッシュは苦笑した。
「んー、本部勤務ったって本拠地の警備が主だぜ?それに…ここから離れることになる」
「あっ……」
キィフェはしゅん、となるものの……バルディッシュは毅然とした表情で彼女と目を合わせる。
「だから、俺と行かないか?碧落の森へ」
「でも…私には…皆が…」
確かに、バルディッシュの言葉は嬉しい。すぐにでも頷き、この場所から…いや、父親の手から逃れたい。愛する人と共に暮らしたい。しかし、それだと夢を捨てることになる。この土地を再び昔のように、人間もエルフも楽しく暮らせる場所にする、という夢を。
「俺は、おまえじゃないと駄目なんだ。だけど、お前にも夢があるんだよな。困ったな……。俺はどっちも選べないんだ」
「そ、そんな…」
バルディッシュの表情は、悪戯を思いついた子供のような顔だった。それにキィフェは少し呆れてしまう。が、その時、彼は決断していた。
「お前と一緒になれるなら、まず俺が幸せになれる。あと…これを切欠に、この村を元に戻せるかもしれない…」
「何か策でもあるの?」
「皆に協力してもらうのさ…俺たちの駆け落ちを」
その言葉に、キィフェの目が丸くなった。
「な、何言ってるのよ!」
「そして、俺たちの脱走を合図に……作戦を始めるのさ」
バルディッシュは任せておけ、というとキィフェをそっ、と抱き上げる。
「バルディッシュ……本気なの?」
「ああ。本気さ。俺と、お前と…この地に暮らすみんなの幸せの為に…」
頬が赤くなるキィフェにくすくす笑いつつも、バルディッシュは寝台に腰掛けて愛する人を膝に乗せる。そのままぎゅっ、と抱きしめる。
「そのために、がんばらせてくれよ…キィフェ」
不意に、カンテラの炎が消える。その刹那、影が重なって崩れた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えー、ラスト。「その刹那、影が重なって崩れた」ってどうなったかわかる人には解りますよね。いや、そういうシーンがストレートすぎる、と友人に言われ…むしろそういうシーンが多いといわれ(過去に主催したPBMにて)、うーん、と頭をひねった挙句友人から提示された例をそのままだったりする(をい)。
次回、遂にラスト。うわぉ。無計画!!
いや、バルディッシュの旦那がいかに暴走したかが丸解りのよーな。
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by jin-109-mineyuki | 2008-01-25 21:55 | 札世界図書館 | Comments(0)

とりあえず、あとちょいつづきます(フーレイ、次回を考えて)


『朔爛漫』【5】

 その夜、バルディッシュはエルフたちの村に戻り、1人宛がわれた小屋のなかで昼間の事を考えていた。エルフを嫌う領主。反対にエルフをかばう領民と娘。
(そういえばあのお嬢様…いい眼と声だったな。それに匂いも)
思い出すと、少し顔がにやける。上玉と行動できた上に、いっしょに食事も出来たのだから。しかし、領主と遭遇したときの顔を思い出すと、胸がチクチクする。
(心から笑ったら、どんなにいい顔だろう)
曇った表情の彼女は、見ているともの悲しくなる。だから、どうにか笑顔が見たかった。そうすれば自分も嬉しくなる。そんな気がする。
―いっその事、私を掻っ攫ってみない?
そんな言葉が、脳裏を過ぎる。領主の娘・キィフェに言われた言葉だ。
(なかなか気骨のあるお嬢様じゃねぇか)
悪戯っぽい笑顔でそんな事を提案するキィフェは本当に愛らしい。吸い込まれそうなほど澄んだ瞳で見つめ返されると鼓動が跳ね上がる。
(これって……まさか、な)
なんだか落ち着かない。キィフェの顔を思い出すと頬が熱くなる。とりあえず休もうと考えたバルディッシュは水を飲み干すと寝台に身を投げ出し、毛布を体に巻きつける。しかし、しばらくの間はキィフェの色々な表情が脳裏を過ぎり、なかなか眠ることが出来なかった。

 その日から、二人は時折顔をあわせ始めた。最初のうちはキィフェの仕事をバルディッシュが手伝ったり、反対にバルディッシュの仕事をキィフェが手伝ったりするものだった。そして、領民の農作業を共に手伝っていた。しかし、いつの間にか二人はそれぞれを深く意識するようになり、夜にそっと逢瀬を重ねるようになった。

 バルディッシュが村に滞在して1年と少しが経ったある日のこと。キィフェは必死に馬を走らせていた。時々後ろを振り返り、追手の有無を確認する。
(父上の横暴は腹立たしい。けれど私が結婚すれば父上は引退する。…私はどうすればいいんだ)
キィフェは馬の上で唇を噛み締める。そして、深く溜息をついた。

 領主は自分の娘がエルフの男と恋に落ちた事を密偵から聞いて激怒した。が、その時丁度見合いの話を貰っており、これを口実に別れさせようと考えたのである。それを聞いたキィフェは目を見開いた。彼女は将来ここの領主となって、父親の横暴な政治から領民を解き放とうと考えていた。過去のようにエルフと人間が共に生きる場所にしようと。それを知っている領主はキィフェが見合い相手と結婚すれば領主の座を彼女に譲る、と持ちかけたのです。まぁ、彼が進めた見合い相手は敬虔な聖海の信仰者であり、意見も自分に近い。キィフェを丸め込んで大人しくさせることも出来るだろう。そう、考えていたのである。

 しかし、キィフェはそんな事ぐらいわかっていた。それと同時に深く悩んだ。彼女が今愛しているのは黒髪と赤い瞳が美しいエルフの聖騎士、バルディッシュだけなのだ。しかし、父親は彼との婚姻を認めない。いや、もしかしたら殺意すら持っているかもしれない。
(あの人以外の誰とも結婚なんてしたくない。けれど、私はここにいなければ…)
いまは、ただ、彼にその事を打ち明けたかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがきというか、なんというか…なんか急かした気もしないでもない。
しかし、もともと考えていたんだけれども若干色々あります。まだ続くけれど、どうなることやら。つか、なんか端折り感は無視して!頼むから!!

 因みにバルディッシュの話の次は過去に書いたリプレイを。知っている人間はごく僅か。でもシナリオは有名かもしれない。やったこと前提でみてくれると嬉しいかもしれない(ネタバレは多少ある?)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-01-15 17:58 | 札世界図書館 | Comments(0)

いちおう、らヴです(フーレイ・・・・新年早々)


『朔爛漫』 【4】

 領主が顔を上げると、そこには黒髪のエルフがいた。彼は紅い瞳を細め、堂々と道の真ん中に佇んでいる。
「貴方が、ここの領主様でしょうか?」
青年の問いに、領主は答えない。ただ厳しい眼をむけ、エルフに問う。
「入り口に書いてある看板を見なかったのか?ここはエルフを歓迎してはおらん。早々に立ち去るがよい」
しかし、青年の影は動く気配を見せない。じっ、と紅の眼を領主に見せている。彼は緊張も、気負いもする様子がない。むしろ威風堂々とした立ち振る舞いで馬上の領主を見つめていた。
(むっ……)
領主は僅かに内心うなった。彼はエルフが纏っている黒い鎧と衣服が『聖闇教会』の『聖騎士』のものである、という事を見抜いていた。敬虔な聖北教徒である彼からしてみれば『異端』である。ますます機嫌が悪くなった。

 キィフェは物陰からバルディッシュと父親である領主のやり取りを見ていた。いや、領主を見るバルディッシュの姿に見とれていた。媚びるでも脅えるでもない、刃のような瞳。真剣な横顔は確かに相手を知ろうとしている。
(不思議な気持ちだわ…。何故かあの人を見つめてしまう…)
高鳴る鼓動を抑えようと深呼吸し、唇を軽く噛む。凛とした態度の彼がキィフェには羨ましく思えた。
(私もあんなふうに父親と対峙できたら…いや、ならなきゃ。ならなきゃいけないのよ)
軽く手を握り締め、バルディッシュを見つめる。彼は領主と会うことが目的だといっていたが…。少し心配だった。彼は何をするのだろう。そして父は…。

「貴様、儂を愚弄する気か。斬られぬうちに立ち去れ」
「……では、そのように。また日を改めて参りましょう」
エルフの聖騎士は優雅に一礼すると彼らから背を向ける。領主はそれを一瞥するとエルフを抜いて立ち去ろうとした。が、その眼がある娘を捕らえる。
「そこにいるのだろう……キィフェ?」
その言葉に、物陰にいたキィフェは体を強張らせる。バルディッシュも何かに気づき、そっと振り返る。
「どうなされましたか?そこには誰もいませんよ?」
「貴様には聞いておらんっ!」
領主は一喝し、バルディッシュは肩をすくめてだまってみやる。
(そうか…奴はキィフェの…)
ならば納得がいくな、などと内心で思いつつ、バルディッシュはくすくす笑った。笑いを堪えることが出来なかった。
「何がおかしい!」
「いえ、少し思い出したことがありまして。貴方様とは関係がありません」
怒鳴る領主に対し、彼は嘘をつきさらに言葉を放つ。
「私は先ほどそっちから来ましたが何もありませんよ。気のせいでしょう」
バルディッシュの言葉に、領主は何も言わず、そのまま騎士たちと馬を走らせていった。その背中を睨みつけ、彼の唇が言葉を紡ぐ。
「…今のままでは大切なものを失いますよ…領主さま」

 キィフェは深く溜息をついた。今のやり取りで自分が領主の娘である事がばれてしまった。もしかしたら、バルディッシュに嫌われるかもしれない。そう思うと、激しく胸が軋んだ。その場に座り込み、何度も深呼吸を繰り返す。
(大丈夫よね。……そんなことないわよね)
そう、内心で繰り返し、彼女は立ち上がった。

 しばらくして、キィフェやエルフたちが物陰から姿を現した。バルディッシュは道の真ん中で首を回し、ふぅ、と小さく息をつく。
「ば、バルディッシュ……」
キィフェは恐る恐るエルフの青年を見る。が、彼は笑顔をむけてくれた。
「ん?気にすることはないさ。親子で意見が食い違うことはよくあるさ」
そういい、バルディッシュはそっとキィフェの頭を撫でてやった。それに頬が赤くなりつつも手を払いのけ、きっ、と睨みつける。
「こ、子ども扱いをするな!」
「悪い、悪い。でも、本当のことだ。俺はお前が領主の娘だと知っても嫌ったりしない」
「ど、どうしてそう言い切れる?」
バルディッシュの言葉に、キィフェは怪訝そうな眼を向ける。エルフの青年は信じろよ、といいながらキィフェの眼を見た。
「…お前が奴と違うって、一目見たときに解ったからさ」
彼はそういうと小さく微笑むと軽くおなかを押さえて、茶目っ気のある眼でキィフェに言う。
「ちょいと小腹が空いたな。どこかいい店はないか?」

 小さな食堂。そこで遅めの昼食をとる。たわいもない会話をしながらキィフェはバルディッシュにそれとなく問いかける。
「ところで…本当に…領主に会うだけが目的だったの?」
それにバルディッシュは少しだけ苦笑してしまった。
「本当はその心算だった。けれど……ちょっと変更した」
「ちょっと変更?」
キィフェは不思議そうにバルディッシュを見、彼の言葉を待つ。やはり領内で大きなトラブルは起きて欲しくない。領民を巻き込むのは更に嫌だ。
「うん。大切な何かを奪っていけば…ちったあ眼を覚まさせられないかな…なんておもってな」
その言葉に、ちょっとどきり、とする。
「が、領主が大切にしているもの…っつーたら領民とかだろ?基本は。だから何が効果があるかなぁ、とか考えているんだ。キィフェ、何か思いつかないか?」
バルディッシュの眼は真面目にそれを考えているようだった。ふざけている心算はないらしい。それに、彼と眼を合わせるだけでドキドキしてしまう。
「ねぇ、バルディッシュ。いっその事…私を掻っ攫ってみない?」
その一言が自然と出た。案の定、バルディッシュは吹きかけた。が、少しだけ考える。
「それはいいアイデアかもしれないな」
そして品定めするようにキィフェの頭からつま先までをじっくり見る。キィフェは表情を強張らせた。
「なっ、何!冗談よ!!冗談に決まってるじゃない!私は時期領主なのよ!ここを元に戻すためにいなくちゃ!」
「そうか。なかなかいいアイデアだとおもったんだが。偽装誘拐」
バルディッシュはそう苦笑しつつ
「お前、なかなかの別嬪だしな」
と微笑んだ。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さくらんぼキッス」って曲を聴いていたらキィフェが…。
冗談でですが。
兎に角・・・・・・・じょじょに動き出すかな?
前フリ長かったかな?
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by jin-109-mineyuki | 2008-01-04 23:54 | 札世界図書館 | Comments(0)