ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:札世界図書館( 58 )

帰ってきました(スズキ、実はほろ酔い?)


 日も落ち、空は群青ともいえる色へ変わった。スズキとソウキュウは酒場『銀雨の降る庭亭』を出、拠点としている『礎の神話亭』へと戻る。
「で、あの依頼は受けるのか」
「まぁ、ね。マスターにはお世話になっているし」
ソウキュウの問いにそう答え、スズキは頷く。ちなみに現在は彼女はソウキュウの肩にとまっている。夜は魔力を使えば人間と同じように見渡すことも、夜目を効かせることもできるが今は普通の鳥同様鳥目モード。魔力温存のためだ。
「……たまには、元の姿に戻ったらどうだ?
 あの国は滅んだし、フォレストイージスは復興しつつあるし……」
ソウキュウは不意にそんなことを言うも、スズキは首を横に降る。
「それがな。……元の姿に戻ったら、別の意味で拙いんだ」
「なんでさ?恐らくリューンの『賢者の塔』とか優遇してくれるだろうし…」
そこまでいい、ふと、彼は口を噤む。何故、スズキが鳥の姿をしているのか。その理由を彼は忘れたわけではなかった。しかし、内心それが何と無く『過去を引きずっている』ように思えていた。
「まぁ、たまには元に戻らないと人間に戻れなくなる。
 その時はお前の生命力を頼りにしているんだ。頼むよ」
そういいながら、スズキがうとうとし始める。ソウキュウはそっと鳥の頭を撫でながら、小さくため息をついた。

カードワース・プライベートショートショート
『甘い夜・

「スズキ、遅かったですね」
宿に戻るなり、そういう者がいた。整った顔立ちに澄んだ緑がかった灰色の髪と瞳に、純白の翼を背負った青年だ。
「リー、そんな怖い顔するな。ちゃんと依頼を持って帰ってきたから」
リーと呼ばれた青年はその言葉に肩をすくめる。
「そういう問題ではありません」
「まぁまぁリーガルト。落ち着きなって。でねぇと親父みてぇにはげちまうぞ?」
ソウキュウがからかい混じりにいい、青年は鋭い瞳を向ける。
「ソウキュウ、貴方は黙っていなさい。私はスズキに……」
「相変わらず、心配性だね」
そういったのは水色の瞳と髪が白い肌に映える少女だった。手には長槍ほどのロッドを手にしている。額の汗からして、今まで鍛錬していたのだろう。傍らにはエルフの少年・ダートもいた。どうやら一緒だったらしい。
「じゃなくて、スズキがリーガルトのマシュマロを全部食べたからだよ」
「それは別にいいのです。
 リューンのお役所にまた『ペットの鷹が逃げている』って通報が…」
その言葉に、その場にいた全員が苦笑した。スズキは物言う冒険鳥である。が、それを知らない人間は彼女を『礎の神話亭のペット』と勝手に思い込んでいる。それゆえにだ。
「…鳥がリーダーじゃ、不安か?」
おちゃらけた声で、スズキが問いかける。が、リーガルトたちは首を横に振った。
「私は、貴女を信用していますよ。
 シリウス、貴女はどう考えます?」
純白の翼をちょっと震わせ、リーガルトは少女に問う。
「僕、スズキだからこそここにいるんだよ?
 他のリーダーでは味わえない体験もしているし」
シリウスと呼ばれた少女は笑顔で答え、傍らのダートが小さく頷く。
「この中でソウキュウをとめられるのはスズキだけだし」
「な、なんだよその言い方は!」
「そのままの意味ですわ。
 王子のお目付け役なのに役目そっちのけでナンパするあなたですから」
ソウキュウが腹を立てていると、一人の女性が二階から降りてくる。その声に全員が顔を上げる。
「プリムプラム…!」
「最近来た私が言うのもなんですけれどね。
 リーガルトは下界を良く知らなかったわ。
 シリウスは戦闘で冷静な判断をするのが不得意。
 王子…いえ、ダートも世間を良く知らない。
 そして私は纏める自信がない…。
 やはり、このパーティリーダーはスズキでないと……ね」
緑のローブを纏った女性は少しだけ頬を赤くしてそういい、くすっ、と笑う。が、その拍子にフードが外れ、純白のうろこを持つ鰭耳が姿を現した。
「プリムプラム、フード……」
おもわず突っ込むソウキュウ。しかし、彼女は周りには自分達しかいない、と確認すると小さくウインクした。
「とにかく、依頼の話をしよう。
 明日、アーシウムへ向かうぞー。赤と白を買いに行く」
スズキは依頼の話をしつつも、内心ではくすぐったい感覚を覚えていた。

―ありがと、みんな…。

 *    *     *     *     *

フォレストイージスの王は死に、民は王都から避難することになった。
しかし、希望はあった。
まだ、世継ぎとなる姫が生きている。
多くのものが『碧落の森』へと避難し、裏切り者は抹消された。
フォレストイージス自体は滅びずに済んだのである。
だが、犠牲は大きかった。
雪鴉衆の大半は死に、要ともいえる十三頭は二人を残し全員散った。
いや、一人は生死不明だが…。

バリアスは暫くの間は復興に力を注いだ。
しかし、ダイラのことを忘れずにいられなかった。
故に、心を病み……治療のために『碧落の森』へ向かった。
長い間、彼女はそこに暮らす魔導士と、その娘の世話になった。
そんな彼女ではあったが、一つの夢で我に返る。

―任期が明けたら、皆で旅をしよう。

その約束。
思い出したとき、戦争から20年もの月日が経っていた。
バリアスはその体を鳥へと変え、一人の少女と共に旅立った。
それが……

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぐだぐだエンディングの後書き

ども、フーレイこと天空っす。今回はスズキの冒険者になった理由でした。
案外ダークとはいえない内容になりましたけれども、どうでしょ?
少しはスズキをわかってくれたかなぁ~。
他にもいろいろありますが、ひとまずは。
『新月の塔』のリプレイでは見られなかったシリアスさが出ればよし。

 それでは今後もよろしく。こんな感じにいろんな『始まり』を描くかも。プライベートショートショートとしてですけれど。一応アンバーとジョドの因縁とか、エルフの王子ダートをはじめとする『碧落の森』出身メンバーの始まりとか、カモミールたち侵略者が異世界の大国『オーベルトューレ』から『リューン』へ向かった経緯とかも書きたいんですけれどネタが……。

クロスオーバーありのリプレイも今後登場する予定です。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-21 19:07 | 札世界図書館 | Comments(0)

スズキ、鳥でも飲酒(ソウキュウ、下心ありそう:待)


シュウが率いる【碧風と共に歩む者】やラムーナが所属する【風を纏う者】はスズキたち【スズキ組】と同期といえる。彼ら二組の活躍を時折耳にするが、なかなか好評らしい。スズキたちはというと目立った活躍はないものの、好んで彼らに仕事を頼む人々もいた。

「頼むよ、スズキ。俺とお前の仲じゃないか」
「って言ってもねぇ~。俺の一存ではなぁ。一応リーダーを務めてはいるが、皆で話し合って受けるか否かをだなぁ……」
冒険者の宿『白銀の剣亭』にほど近い酒場『銀雨の降る庭』で、スズキは知り合いであり現マスターであるシアに言われて頭を抱えるようなそぶりを見せる。この青年、シア・スティードもまた5年前まで活躍していた冒険者だ。いまでこそ酒場のマスターではあるが、凄腕の魔導士で引退の際は色々な研究機関が彼を欲したという。しかし、彼は趣味の料理を活かせる酒場のマスターを選んだのである。
「とりあえず、アーシウムの赤を5本と白を10本。で、そのうち白5本を『踊るトナカイ亭』マスターに届ける。……ってお使いかい」
スズキの苦笑に、シアはたのむよ、と両手を合わせた。

カードワース・プライベートショートショート
『ほの甘い黄昏・

「おう、スズキじゃねーか。お前も飲みにきたのか?」
そう、声をかけるものがいる。パーティメンバーの一人で、淡い緑色の瞳と髪が特徴的な若い男だ。若干優男っぽくも見えるがよく見るとその体は鍛え上げられている。腰にバスタードソードっぽい鉄の塊を下げた彼に、スズキが翼を上げて
「ドリアッドにしては珍しく鉄塊をぶんまわすソウキュウか」
「仲間にそんな言い草かよ、鳥」
青年が、拳を握って翼とあわせる。こうやって軽口を叩き合う二人をほほえましく思いつつシアは1羽と1人に軽食を与える。
「スズキには水、ソウキュウには蜜酒だっけ?まぁ、これでも飲みつつ考えてくれよ」
その言葉に、1羽と1人は頷いた。

*   *   *   *   *  *

「仲間、か」
不意に、ダイラは呟いた。戦場と化した王都で彼は小さくため息を吐きつつ額の血を拭う。彼の脳裏には『裏切り者』の顔と殺された仲間の顔が浮かんでいた。
(くっ、何で一番側にいたはずの俺が見抜けなかったんだ)
手を握り締め、壁を殴りつける。何度も、何度も。そうしているうちに血がにじみ、壁をも赤く染めていた。
ぐっ!
ふと、腕が抱きとめられる。細い手と僅かに覚える柔らかな感触。その正体にダイラの表情が曇り、力なく振り払う。
「……バリアスか」
弟子は今にも泣きそうな顔で、彼を見上げていた。その後ろには幾人かの仲間も。その顔ぶれに、彼は苦笑した。

 あの夕方、キアラと共に城へ戻った二人が聞いたのは、仲間の一人が聞いてしまったクーデターの予言だった。それが切欠で色々調べていたのだが……その途中、治癒術を得意とする女性がクーデターの首謀者により罠に嵌められ、監禁されてしまった。
―それが切欠で、歯車は狂う。
クーデターは止められず、仲間の救助に向かった者は死亡した。
その囚われた仲間もまた……。
生き残ったメンバーで部下を率いてどうにかクーデターを収めようと、騎士と協力するものの、今は被害の拡大を抑える程度しかできなかった。

「……シェニエル、アイビー、リーシェ、カタパルト。お前達の無念は、必ず……」
黒いローブを纏った男が、一人呟く。そして、生き残った者達はそれに頷き、彼は向き直った。
「今から、逃げ遅れた住人達を非難させる。あの男の事だ。多分見せしめとして王都の住人にも手をかけるだろう」
「あと、せめてあの裏切り者どもを血祭りに上げたいな」
赤い髪の男がにや、と笑ってそういう。
「とにかく、まず町へ。
 そこで何人かに分かれて住人の非難を」
ローブの男の言葉に、全員頷き行動を始める。バリアスはダイラと共に走り出した。
「……俺についてくるのか?」
「うん。やることはなんとなくわかるからね」
ダイラの問いに、バリアスは笑顔を向けた。そして、呟く。
「僕には、貴方しかいないんだから」

*   *   *   *   *   *   *

(……なんだかな)
スズキが何気なく水を見つめていると、ソウキュウは暫くしてシアに蜜酒を頼む。そして、鳥でも飲みやすいようにしてくれた。
「ん? 鳥酔わせてついに食う気になったか」
そんなことをからから笑いながら言うスズキに、ソウキュウは阿呆か、と返す。
「猛禽類なんて喰える肉が少ないだろうが。こいつは奢りだよ。いつもリーダー、おつかれさーん、ってな」
「お前の奢り~? 明日は多分豪雨だな」
普段女の子とのデートなどでお金を使いリーダーのスズキや他のメンバーに「奢ってくれ」という事が多い彼が、こうするのは珍しい。それで思わず冗談が漏れる。照れ隠しに毛づくろいをしつつも、スズキはありがと、といって蜜酒を口にした。
なぜだろう、その酒はあまり甘くなかった。

・・・・・・・・・・・
後書きと書いてせつめいと読む。
ども、フーレイです。今回はシグルトさん率いるチーム&シュウさん率いるチームの名前が登場。Y2つさんのリプレイにはシュウさんたちも出ているんでよろしく。シオンとかアンバーたちはまだ登場していませんけれど、楽しみにしております。

 【風を纏う者】はY2つさんのブログで語られるカードワースリプレイに登場する冒険者パーティで【碧風と共に歩む者】は龍使いさんのブログで語られるカードワースリプレイに登場する冒険者パーティ。天才ぞろいなので凄いなぁ……。それに引き換え【スズキ組】をはじめとする僕がリプレイに登場させるパーティは普通の存在です(まぁ、種族や過去は特殊ですけど、型は普通なのよ:笑)。

 最近書いているこのスズキメイン(だと思う)SSは【スズキ組】・【風を纏う者】・【碧風と共に歩む者】の3チームが活動しだしてちょっとは名が売れてきた頃を想定して書いております。そういうことにしておいてください(滝汗)。

あ、シオンとのリンク忘れてた(大汗)。
シオン率いる【ドルチェーズ】が活動を始めたのはこの三つのチームが冒険を始めて半年ぐらい後なので、なんかリンクを結ぼうと考えていたのにね(笑)。

あと、ドリアッドですが……『無限のファンタジア』のドリアッドと似ているけど多少違います。花が咲くものもいれば、ソウキュウのように咲かない者もいます。あと、髪の毛には葉緑素があるので水があれば生きていけるのです(笑)。あと、血に(媚薬であれ毒であれ)薬効成分があったり、恋愛にたいして個体で観念が違いすぎるゆえに結婚の概念がかーなーり薄かったり。このソウキュウは女好きでのちに3人の妻を持ちます(ヒント:全員人間じゃないよ)。あだ名で【孟宗竹】とかとも呼ばれていたり(をい)。

最後に。
ドリアッドは実を言うと精霊にごく近いため鉄を嫌う奴らが多いんです。あと、ソウキュウの鉄塊はのちにロキが持ったと言われるアレになります。

……今回は長っ?!。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-13 13:36 | 札世界図書館 | Comments(0)

…これは春ごろの話です(スズキ&シュウ、そぞろ歩き慣行)


「…でさぁ、その時の依頼でソウキュウがばちーんっ!ってやられてさー…」
女性にしてはやや低めの声が、町に響く。その聞きなじんだ声に瞳を細めつつシュウは相槌をうっていた。肩に乗せた猛禽類は楽しげに笑う。
「しかし、いい薬になったんじゃないのか?
 アイツはいつも女性に声をかけているようだから……」
「お前と初めて会ったときなんて『クールビューティーとお近づきになれるなんて冒険者生活の将来は明るいぜ』だもんなぁ!」
「あれには、少し驚かされたよ。まさか俺が女性と間違えられるなんてね」
一人と一羽が楽しげに笑っていると、一人の少女が二人の前を通り過ぎた。黒っぽい肌に痩せた体をした少女だ。
「あれ? ラムーナじゃん。どうしたのさ」
不意にスズキが少女を呼び止める。と、ラムーナと呼ばれた少女は小さく笑った。
「お使いだよ。おやじさんに頼まれて葡萄酒を買いに行くの」
「そうか。ココから近い店は……確か俺たちが向かう予定の店だったよな」
シュウがスズキに問うと、彼女は頷き、バサリと音を立てて羽搏く。少女の前に飛んでいく猛禽類は、どこか楽しそうだった。
「よかったら、一緒に行かないか?」
「うんっ!」
ラムーナが笑顔で頷き、シュウは一つ頷いた。

カードワース・プライベートショートショート
『爽やかな昼下がり・

 暫くして、ラムーナとシュウ、スズキの二人と一羽は店へと到着した。ラムーナが早速葡萄酒3本を買い、シュウは土産用にと少量の菓子を買う。スズキはその様子を見つつ店内を見回った。ここは『小さき希望亭』に程近い雑貨屋で、スズキがラムーナと初めて会ったのもここだった。まぁ、スズキは元々散歩と称してあちこち飛び回っているのでいろんな《冒険者の宿》や冒険者を知っていたりする。
(この間『礎の神話亭』の親父が何の因果かは知らんが『小さき希望亭』の親父に本を借りていた。……今頃ダートかシリウスあたりが返しに向かっているかもなぁ)
そんなことを考えていると二人が買い物を終えていた。
「どうしたの? スズキは何も買わないの?」
ラムーナに問われ、スズキは首を横に振る。
「ちょいと考え事をしていたんだ。俺、生肉食うだろう?
 だから、臭いがきつくならない様にしないとなぁ、と……ね」
鼻が利くコボルトたちなどにばれたら不利だろう?と付け加え、スズキは店の奥へと飛んでいく。器用に飛ぶ猛禽類を見つめ、シュウとラムーナは顔を見合わせた。

 スズキはハッカの根を見つけるとカウンターへ持っていく。そして器用に首から提げた巾着から銅貨を渡すと袋に入れてもらう。早速一本を嘴に咥えると、二人とともに店を出た。

*    *    *   *    *    *    *

 ダイラとバリアスが新聞を読んでいると、一人の青年が駆け寄ってくる。赤い瞳が特徴的で中性的な青年に、バリアスが手を上げて挨拶をする。
「ああ、こんなところにいた!二人とも早く城にもどってくださいっ!」
「……って、伝言魔術でも飛ばせばよかったのに」
バリアスがそういうが、青年は首を横に振る。
「いえ、私も家についた直後に連絡を受けて。だったら近くにいるだろうあなたがたを探すほうがはやいか、とおもったんです」
彼の言葉にバリアスは苦笑したが、ダイラは黒い瞳を細めて微笑んだ。そして、青年の頭を撫でてやる。
「やめてくださいよ。先月22歳になったばかりなんですから!」
「ダメだね。俺にとってお前はずっと『坊ちゃん』なんだからなぁ、キアラ」
キアラと呼ばれた青年は乱暴にダイラの手を跳ね除けると小さくため息をついた。身長はキアラが彼より5~6センチほど高いのだが、幼い頃から彼を知っているダイラは何かと彼を坊ちゃんと呼ぶ。
「…と、兎に角城へ戻りましょう。どうやら、拙いことになってきたようですよ」
キアラはそういい、バリアスとダイラも頷く。三人は駆け足で城へと向かった。

*    *    *    *    *    *    *

「それ、美味しい?」
「うん」
「スズキは猛禽類なのにそういうものがすきだな」
ラムーナ、スズキ、シュウの二人と一羽が楽しげに談笑しつつ歩いていると、目的地が見えていた。ラムーナが世話になっている冒険者の宿『小さき希望亭』だ。彼女はそこを拠点としている冒険者チームの【風を纏う者】の一員である。シュウやスズキはこのチームと同期ともいえる(彼らが冒険を始めたのと同時期に冒険者となっている)。
「俺はここの親父さんに用があるんだ。じゃまするよ」
「うん」
そういい、ラムーナと共に『小さき希望亭』へと入るスズキ。シュウも後を追う。と、親父さんが笑顔で出迎えてくれた。
「おや、ラムーナのほかにシュウとのスズキもか。
 珍しい組み合わせだな。特に物言う猛禽類が……」
「そんな風に言わないで下さい。俺はただの冒険鳥ですから」
いや、言葉を話すという時点でおかしい、とシュウは言いたかったが、取り合えず言わないでおく。
「あと、これを」
巾着からメモを親父さんに渡す。と、親父さんは一つ頷いた。
「ありがとう。しかし……別のチームが受けた依頼の感謝状を届けるとは、お前もお人よしだなぁ」
その言葉に、スズキは僅かに瞳を細めるだけだった。

(終?)

・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
1日遅れでアップした微妙に続くものです。
Y2つさん、勝手にラムーナちゃん出してすみません。
龍使いさん、勝手に二週連続シュウさん出してすんません。
…ラムーナちゃんやシュウさんらしさがでていればいいのだが、若干心配だったりします。最初はシグルトさんを出そうかとも思ったのですが、ラムーナちゃんのほうがなんとなくよくなった(第一に、僕自身がラムーナちゃんを気に入っている)んで、こうなりました。

 ラムーナちゃんはY2つさんのブログにて語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。軽やかに踊る女の子~♪これからの成長が楽しみです。だからお気に入りでして。応援しています~。シュウさんは龍使いさんのブログにて語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。二週連続の出演、ありがとう!

あと、タイトルの色だけれども黄色を使用すると見づらいのでオレンジ。
理由はそれだけ。深くは突っ込まないで(大汗)。

とりあえず、もうちょっと続くかもしれんスズキ’ズ過去。
だらだらとならんようにがんばります…にゃ。
あと色々リプレイやりつつ……。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-07 23:14 | 札世界図書館 | Comments(0)

多分、来月までつづくかも(ダイラって誰?まぁ、気にしないで)


 スズキはなにげなく一人宿でえさをつついていた。スズキは猛禽類の姿をしている冒険鳥だ。最初は『礎の神話亭』の親父も流石に驚いたが、今ではごく当たり前の風景だ。
「……元気、ないね」
エルフの少年が、止まり木のそばにある席に腰掛ける。そして孔雀色の瞳をスズキに向けた。小柄な体をベージュのローブで包んだ、幼い少年はどこか不安げに鳥を見つめる。
「大丈夫? 疲れているんじゃない?」
「ああ、大丈夫だよ。ちょいと夢見が悪かっただけだ」
スズキはそう答え、専用の餌皿から生肉をついばむ。そして、水を飲み干して空を見た。青い空に雲は一つも無く、とても美しい。
「心配するな、ダート。今日は依頼もないし……のんびりしなよ」
「う、うん。そうするよ。でも、スズキ……無理しないでね」
ダートと呼ばれたエルフの少年はそういい、そっとスズキに手を伸ばした。

カードワース・プライベートショートショート
『酸い昼・

 何気なく街を漂い、一羽の鳥は人々を見つめた。こうしていると、気が楽になる。夢見の悪い朝は、何も考えずこうして風の中をたゆたっているのが一番いい。それが、ずっと前からの気晴らし方法だ。だから、時々やっている。
(ああ、あれからもう……)
どこか遠くを見つめつつも、体は風に包まれて自由に泳いでいた。ため息を漏らしつつもそれさえも纏って。
(判っている。多分死んでいる)
脳裏で影がちらつく。そして、最後ともいえる背中を思い出し、胸が痛む。苛々と嘴を鳴らし、スズキの体がさらに高く舞い上がる。
(・・・でも、願うさ・・・生きていてくれって)
なぜか、世界がゆがんだ。なんだか、小さかった人が大きくなっていく。そして、そのなかで見覚えのある姿が、それだけがはっきりと浮かんだ。

*   *   *   *   *  *  *  *  *

 その日は、快晴だった。仕事も速く終わり、師弟でもあり恋人同士でもあるバリアスとダイラはともに城から街へとやってきた。
「……にしても、最近きな臭い噂ばかりだな」
「ああ、そうだねぇ」
ダイラの呟きに、バリアスは頷く。そして側を通りがかった新聞屋から新聞を買うと早速目を通す。そこには【隣国の大臣、フォレストイージスを批難】などの文字が躍っている。
「ちっ、あの爺さんまたかよ」
記事を読んだダイラが舌打ちし、まぁまぁ、とバリアスは窘める。
「今度オルグレオさまと話し合うんでしょう?落ち着かないとまた変なことかかれますよ」
「ぐぅ・・・・・」
そんなことを弟子に言われ、ダイラは苦笑する。が、別の記事に小さく微笑んだ。
「みろ、バリアス。俺たちのことだ」
そこには【未来のおしどり夫婦】というタイトルで記事がかいてあり、二人のイラストが描かれている。そして、初夏には婚礼を挙げることまで書いてあった。
「あっ……」
バリアスは耳まで赤くなり、少しうつむいてしまう。ダイラは反対にかっかっかっ、とおおきな笑い声を上げた。
「ふふ、別に隠していることじゃねぇんだ。それにしても、よく調べたもんだな」
そういいながら口元をほころばせる。そっと恋人の髪を撫でながら彼は僅かに瞳を細めた。
「でも、はじめのうちは考えなかったな。人生初の弟子で病弱だった貴族の一人娘が今じゃ王国の守り人にして、俺の婚約者になっているなんて」

*   *   *   *   *   *   *

(んな訳がない。でも……、だとしたら!)
スズキは風を切って飛んでいく。世界のゆがみは解け、人の顔がはっきりとわかる。そして、己の欲した影が間近に迫った。心臓が早鐘を打ち、少し混乱しながらも、その姿を追って。
「なあっ!」
「……お前は……」
振り返る、影。それにスズキは空中で動きを止め、その場にただよう。見覚えのある影。されど若く、声も僅かに高い。
「シュウ、どこにいくんだ?」
スズキは平静を装って問いかける。相手は『白銀の剣亭』の冒険者であり、同期とも言える青年のシュウだった。彼もまた冒険者パーティのリーダーである。
「少し買い物に行く所だ。スズキは?」
「ただの散歩だ。夢身が悪くてね」
スズキは苦笑し、歩き出すシュウの後を付いていった。

(終?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
シュウさん、出演ありがとう。フーレイです。
今回は幸せだった頃の記憶であります。次回は気が向いたら続きを。
シュウさんとの会話・・・・もうちょっと精進せんと(汗)

 シュウさんは龍使いさんのブログで語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。パーティリーダで剣士様。今後もよろしくお願いします。前に掲載したリプレイ(子供連合がメインの『空白の記憶』です)にもカーナ姐さんと共に出演してくれました。

まだつづきます。
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-29 01:18 | 札世界図書館 | Comments(0)

えー、何?この……(略:フーレイ、ちょいと色々)


 赤々と燃え上がる街
 逃げ惑う人々
 襲い掛かる魔獣
 これは、一つの……国が死んでいく光景。

「……くそっ」
一人の男が、レンガの壁を殴りつける。そして、燃え盛る街を見つめた。彼の後ろには避難させた住民達の姿があった。短く切った黒髪の切っ先からも汗が滴り、その場に崩れる。
「あの宰相、何時の間に隣国と手を組んで……」
「先生…いや、ダイラ…」
一人の少女が、彼の肩に触れる。小麦色の手はローブ同様煤まみれで、指先は何かでやけどしたであろう痛々しい跡が残っていた。

カードワース・プライベートショートショート
『苦イ夢・

「…バリアス、避難経路は?」
「確保できています。あと5分で転送術が発動し、住民は碧落の森へと逃れられます」
男…ダイラはバリアスと呼んだ少女の報告に頷き、立ち上がった。そして軽く瞳を閉ざす。刹那、素早く呪文を唱えて敵を探す。…敵意は燃え盛る街からしか感知せず、今のところは安全であった。
「…上手くいっているかな…キアラたちは」
「ええ、きっと、彼らならば」
バリアスはその問いに頷きつつも…内心は不安であった。
相手は戦争に関して右に出るものが居ない、とまで言われる大国。宰相は魔導士と魔導技術をそこへ与えるために裏切り、今の状態を生んだのだ。
脳裏に移る、既に居ない仲間達のことが、胸をかきむしる。我慢しようにも、その緑の瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。
「泣くな」
ダイラはそれだけ言って、バリアスを抱きしめる。己の軋む心を押さえつけるように、力強く、ぐっと……。少女は少しだけ顔を挙げ、ぬれた瞳で男を見上げる。
「戻らないものは戻らない。お前は生きて、そいつらの夢をかなえてやれ」
その言葉に、少女は首を横に振る。
「嫌だ」
「!」
バリアスはダイラの胸を突き飛ばし、猛禽類のごとき鋭い目で叫ぶ。
「……皆が死ぬなら僕も死ぬ。
 魔導士として戦って、魔導士として……
 フォレストイージスの雪鴉翼十三柱の一柱として…!」
「バカ言うんじゃねぇっ!!」
ダイラが叫び、バリアスを抱き寄せ……言葉を続ける。それがどこか崩れ、涙交じりなのは弟子だからか…それとも…仲間だからか…あるいは……。
「忘れたのか?
 役目を終えたら、旅をしよう…。そう、皆で約束しただろう?」
「でも……」
バリアスの言葉は、柔らかく暖かいもので閉ざされた。

*   *   *   *   *   *   *   *   *

 天気のよい朝。リューンに程近い冒険者の宿『礎の神話亭』の一角。2段ベッドが二つあり、その近くにひとつの鳥かごがおしゃれな柱に引っかかっている。そこには一羽の猛禽類がいて、目覚め一発の毛づくろいをしていた。
「ふー、目覚めの悪い日は何もしないでささみでも…」
「そう言っている暇があるなら、仕事を探してくださいよ、リーダー」
猛禽類が人の言葉を話したのにも驚かず、緑色のローブを纏った女性が苦笑する。まぁ、この宿では当たり前の光景なので誰も気にしないのだ。リーダーと呼ばれた猛禽類ははいはい、と頷いた。
「ところで、目覚めが悪いといいましたけれど…」
「ああ。ちょいと昔をね」
女性の問いに鳥はそう答え、また毛づくろいをはじめた。そして、顔を上げて窓の外を見つめた。透き通った空色が、妙に目にしみる。
「……………わかってるよ……みんな」
その呟きを、女性はあえて聞かなかったことにした。
そして鳥は、嘴で器用に戸を開け、宿内へと翼を広げる。
こうして、一日が始まっていった。

―貴方が愛した空は、今日も真っ青です。

鳥は、内心で呟いた。

(終?)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あとがき
わけわかんねー!と思われてもしょうがないフーレイです。
一応過去話ですが、鳥って言えば判りますよね。
奴の過去はダークだ(シオンほどじゃないと思うけど)!
あと、実年齢は○○歳なのに若者クーポンなのは半分魔族の血を引いているからであったりする。
次回は、発展でけたらそれを書きます。脳力が持てばの話ですが!
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-22 14:06 | 札世界図書館 | Comments(0)

こんどこそこれで……(子供連合、がんばりましたよ!)


「だ、誰だッ!?」
クレイモアが叫ぶと、彼女はふっ、と笑う。
「人が外でこの子たちのお食事を調達している時に勝手に忍び込むなんて…。
 その上名乗らずに『誰だ』ですって?
 なんと礼儀知らずな子供たちなの?」
彼女はそういいながら一人一人子供たちの顔を見る。そしてまぁ、いいけど、とくすくす笑いながら言葉を続けた。

『山間の村』(作:机庭球)より ※敬称略
『真実を掴む手は幼くも』 後編 (著:天空 仁)

「私の可愛いあの子たちが殺されたとは知っていたけど、あの人ったら冒険者なんて雇ってたなんてねぇ。しかもこんなちっこい子供達だなんて」
「あの子たち…?じゃあ、あのゴブリンたちも…」
エイデンが問いかけると女性はふふ、と小さく微笑む。
「そうよ。私が覚えた渾身の魔術でね。天才的な私は脆弱な人間を強力な魔物へと変える術を見つけて習得した。その結果だったのよ、あの橙色のゴブリンは。なかなか強いでしょ?」
そういいつつ、彼女はうっとりとした表情でリザードマンの入った檻に手を伸ばす。
「一般種より強く、能力次第では上級魔族にだってなる。
 ……そう、この子たちみたいに」
とは言ってもリザードマンぐらいなら駆け出し冒険者でも出来ると嘯きつつ子供たちを見る。
「そうか…そういう事なんだ」
パルチザンが一つ呟く。そしてフランベルジェと頷きあい、盲目の少年が言葉をつなぐ。
「全てそれで繋がった。僕たちが昨日殺したのは、レイト村のお年寄りなんだ!」
「ええっ!?」
その言葉にパルチザン以外のメンバーは息を詰まらせる。フランベルジェは小さく頷き、一度唇をかんでから言葉をつなぐ。
「彼女は、エリックと手を組んでいたんだ。老人を無駄と思ったエリックは実験材料として彼女にお年寄りを差し出したんだ」
「あら、その通りよ…おぼっちゃん。どう?すごいでしょ?老人からですら並みのゴブリンより強い妖魔が作れるんだから。ゾンビを生む術なんかとは違うよ?」
楽しげに笑う彼女に、子供たちの表情が険しくなる。からからと笑い続ける女性に、冒険者たちはきっ、と顔を上げた。
「お年寄りですら…?」
「そうよ。ちょっとしたリサイクルよ。ま、老人ばかりだったから警告の意味で襲わせたけれど……お陰でもっといいものをよこしてくれた」
彼女はそういいながら一歩ずつ冒険者たちに歩み寄る。そして、そっと…無駄のない動きでフランベルジェの顎を手にした。
「ふふ、一端の冒険者なんて滅多にお目にかかれないわ。どんな姿になるのかしら?早くその素晴らしいお姿をご披露していただきたいわ」
「…っ!!」
フランベルジェは腕を払い、瞬間にクレイモアたちは臨戦態勢をとる。女性もまた、リザードマンの檻を開け放つ。
「さあ、私の可愛いリザードマンちゃんたち!
 この冒険者たちを意識不明にしちゃいなさいっ!
 みんなレガッタ様の下僕にするのよ!」
レガッタと名乗った女性の言葉を聴き、リザードマンたちが動き出す。
「…来るッ!」
クレイモアが叫ぶ。そして、戦闘が始まった。
「…老人をリサイクルしてやった?よくもまぁ、そんな事言えますね…」
身構えるフランベルジェにレガッタは冷たい笑顔で言葉を紡ぐ。
「いえ、老若男女リサイクルできるのよ、私は。
 もちろんおちびちゃんたちもリサイクルしてあげるって言ってるでしょ?」
「ふんっ!人として一番大切なものを失った奴を許しはしないッ!」
手にしたサーベルを突きつけ、フランベルジェが叫ぶ。
「冒険者としては、そういうところが甘いわね」
レガッタはそっと笑い、リザードマンたちをけしかける。
「絶対に……許さないッ!!」
フランベルジェたちは声をそろえてそういい、一斉に戦い始めた。

 リザードマンとの戦いはあっけなく終わった。リザードマンさえ叩けばレガッタは直ぐに倒れたのである。
「ま、予想はついていた。魔術師は基本的に頑丈じゃないからね」
クレイモアが愛用の刀を鞘に収めつつ呟く。フランベルジェはレガッタを縛りあげながら問い詰める。彼女曰く何れ丈夫な人間を手に入れて本当に世界征服を考えていたらしい。
「とりあえず彼女を連行しよう」
パルチザンの言葉に全員が頷き、町へ戻ることにした。

 一行が町に戻ると彼らの耳にとんでもない事を聞いてしまった。
「ああ、あのエリック…捕まったぜ?」
「ええーっ!?」
それを聞いた子供たちは眼を丸くする。なんでも領主の使いがやってきたらしい。一行が町の広場に行くとまさに、エリックが公開尋問を受けていた。
(エディは何を思って告げ口をしたのでしょう?)
エイデンは青年から聞いた事を思い出しつつ首を傾げる。
しかし、フランベルジェはつかつかと彼らに歩み寄るとすっ、と手を握った。
「ちょ、ちょっと君…離れなさいッ!」
使いの言葉を無視し、フランベルジェはくすり、と笑う。
「何皆騙されているんです?この人は兄のエディ。エリックではありません」
瞬間、周囲の空気が凍る。そんなのは関係がない、というように、盲目の少年は笑顔でエリックとされる青年の右手を掲げ、
「剣のグリップを握ったときにできる肉刺が何よりの証拠です。
 こんなにゴツゴツしているでしょう?」
少年の声が、凛と響く。村人たちも、仲間たちもそれに驚いていたがエディは舌打ち一つ力任せに少年の手を振り解く。
「フランベルジェ!」
よろけた少年をテッセンが受け止める。エディはきっ、と冒険者たちを睨みつけながら領主の使いから剣を受け取る。
「やっぱグルだったんだ…こいつら!」
「エリックは魔術も使えるし頭がいい。こんなところで終わるような奴じゃない…。お前ら、この餓鬼どもを始末するぞッ!」
エディの言葉に領主の使いたちも身構える。ジュリアには村人たちを避難させ、一行は応戦の構えを取った。
(エディは所詮足止め…。このままじゃエリックを取り逃がしてしまう…。
 こんなとこで油を売っている暇はないんだっ!)
フランベルジェが内心焦っていると、蹄の音が耳に響く。
「フランベルジェ!!」
ジュリアの声に振り返る。と、気づいたエイデンとパルチザンが走ってきた馬を受け止め、フランベルジェをそれに乗せる。
「ありがとう!…よしっ!」
フランベルジェはそれにのり、エリックを追う。
「頼んだよ、フランベルジェ…」
クレイモアは小声で呟くと、改めてエディたちと向き直る。
「さあ、来いっ!!」

 馬の上から匂いや音を感じ、少年は辺りを探った。眼が見えない分、それ以外には敏感なのだ。魔力が高い分、魔力の匂いだって人の何倍も鋭いセンスで感じ取れる。
(この霧も…)
辺りを漂う白い世界に、辟易する。少年は僅かに呼吸を整え、馬を走らせた。

 激戦を制したのは、冒険者たちだった。彼らに縛られながらエディは祈るように呟く。
「エリック…頼む。逃げてくれ…」
「そうは行かないよ」
小突きながらパルチザンが言う。彼はエリックの胸倉を掴むとぎっ、と瞳をあわせる。
「フランベルジェは、絶対にエリックを捕まえる」
「とりあえず、フランベルジェを追うよ」
「こいつらは木に結んでおけばいいか」
テッセンとエペの言葉にクレイモアとエイデンは頷いた。

(魔力を感じる)
フランベルジェの頬が若干引きつる。少年は意識を集中させると音もなく固まりを掴む。それはエリックの手であった。肉刺のない、つるりとした手。それに少年は口元を引き締める。
「つかまえたっ!」
「しぶといっ!」
魔力が膨れ、少年を弾き飛ばす。瞬間に霧ははれ、エリックは鋭い眼で少年を睨んだ。
「お前1人か。…面白い。精々向こうでいい夢でもみるんだな…」
「あなたごときに…そう易々と倒れませんよ…」
フランベルジェは身構え、攻撃を繰り出した。相手は賢者の杖をもって魔力を高めている。しっかりと獲物のレイピアを握り、盲目の少年はくっ、と歯を食いしばった。
(一気に攻めるッ!)
まだ、それはただの細い鉄塊かもしれない。しかし、少年にとっては既に相棒と化していた。気合を入れ、勢い良く一歩踏み出すとそのか細い切っ先が、エリックの懐へと飛び込み…素早く、力強く”Z”の文字を刻み込む!
「なっ!?……『ラストレター』……だとっ!?」
強烈な一撃に呻き、エリックが膝をつく。少年はレイピアを青年の首元に突きつけると厳かに口を開いた。
「これで、私の勝ちです。さぁ、大人しく縛についてもらいますよ」
「くそっ……!」
エリックが、地面を叩く。その音に混じって幾つ物足音を捕らえ、少年は口元をほころばせる。全員が揃ったところで、フランベルジェは再び口を開いた。
「そして全部ぶちまけてもらいますよ。
 ゼルの生死、レガッタとの関係など…なにもかもね」
エリックはやれやれ、といった表情で何もかもを話す。そして、鋭い瞳でフランベルジェをにらみつけた。
「お前らのせいで何もかもが終わった。…怨んでやる。絶対に許さねぇ…ッ」
瞬間、か細い少年の拳が、エリックの頬を殴り飛ばす。そして他人事のように嘯く。
「どうぞご自由に」
そういいながら、少年は見えない目で、彼を睨みつける。
「けれど、これだけは覚えておいて。悪は絶対に……裁かれるって事をッ!」

 全てが終わり、エリックたちを引き渡すと一行は村をあとにした。その見送りには村長に返り咲いたメリッサとその孫のジュリア、多くの村人たちが出てきてくれた。
「坊主たちでこの樽が運べるか心配だなぁ…」
いつも裏山で見張りをしている青年が、そういいながら樽と6人を見る。が、エイデンはクレイモアとエペをちらりと見てにっこりした。
「大丈夫です。案外力持ちなメンバーがいますから」
「「エイデンッ!」」
クレイモアとエペが声を上げると村人たちとフランベルジェたちが笑い出す。それに頬を赤くそめつつ二人の少女はなんだかなぁ、という表情を浮かべた。
「とにかく力をあわせて運ぶから、大丈夫。冒険者を甘く見ないでよ」
テッセンはえへん、と最近膨らみ始めた胸をそらして言う。
「それにしても、いろいろありがとう。まぁ、まだ問題が残りそうだけど…」
ジュリアはそういい苦笑する。それもそうだ。メリッサだけが生き残ったことに複雑な感情を抱くものが多いに決まっている。しかし彼女は残りの人生をレイト村に捧げるつもりで居る、と強い瞳で語っていた。だから、冒険者たちは誰一人不安を持っていなかった。
「また、何かあったらいつでも『見えざる神の手亭』の子供連合に手紙をくださいね」
「パルチザン、それ、私の台詞ですよ」
パルチザンはにっこりわらってメリッサに言い、その横でフランベルジェが苦笑する。
そんなやり取りを見つつ、ジュリアはそっと瞳を細めた。
「……みんな、気をつけてね。あたし…おばあちゃんと一緒にこの村を護ってみせるから。フランベルジェたちに負けてられないもの」
「そう、ですね。私ももっとがんばりますよ」
フランベルジェはそう微笑み…皆を見た。そろそろ旅立ちの時間だ。
「それじゃ、これで…」
パルチザンの言葉に、一同は頭を下げ、背を向ける。一歩ずつ踏み出していくその未発達だろう背中に、村人たちは感謝の言葉を餞交じりにおくっていく。
「また…ね!今度は平和なレイトに遊びに来てよ!!大人になったら…一緒に葡萄酒を飲もう!!約束だよ、子供連合のみんなっ!!」
ジュリアはそういい、冒険者たちに手を振る。声に振り返ったフランベルジェは小さく微笑み、笑顔で手を振り返した。

 岐路の途中。フランベルジェは何気なくパルチザンの横に並んだ。
「どうだった?…あの村は…」
さりげない彼の問いに、人狼族の親友はくすり、と笑う。
「故郷に似ていました。…ええ、とても。だからこそ…やり直せると、僕は信じています」

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
※作者名は敬称略です。
ども、天空です。今回は本来机庭球さんの『空白の時間』および『新人と私』のリプレイと一緒に書く予定でした。が、やはり無理だったって事でこれだけは別にした訳ですが……、本当は前作『This memory is …』を読まないと解らない内容にしたかったのに、別に読まなくてもいい作品になりました。とりあえずネタバレしつつお送りします。

 意図的にシナリオの台詞を使ったところと、アレンジを加えた所があります。子供連合に合わせたかったところがあるんです。折角の『子供のみチーム』ですから。そして、このシナリオでは『Telelteba』(Gaff*Sail)で購入できる『ファイナルレター』を出しました。事実これで戦闘に勝ちまして(笑)。

 あと、『魔剣工房』(Djinn)で買ったばかりのレイピア『デュランダル』を使ったイメージがあり、こうしました。まぁ、これをやった当初も、鉄塊のままなんですがね(落涙)。

とにかく、楽しませていただきました。
今後もマイペースにやっていこうと考えています。
それでは。
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-15 16:03 | 札世界図書館 | Comments(0)

今回は二週間でいくとおもったんだけど(リプレイ、案外……)

(けれど、何かがおかしい)
全ては終わった。それなのに、6人…特にフランベルジェは何か奇妙な感覚を覚えていた。1人気が晴れず、夜の村を歩いていく。
(なんだろうな、この予感……あー…苛々するな)
罠は上手く作動し、戦闘も素早く終わった。円満解決のはずだ。それなのに…。
『この村…そういえばお年寄り…の方を見かけませんね』
ふと、パルチザンが呟いたのを思い出す。そうだ。自分もそう思っていたのだ。真っ先に食事を終えた彼は己の領域たる闇夜へと足を踏み入れ、頭を冷やそうとした。
(お年寄りが居ない村…、謎の魔物…。なんか絡みそうな…)

『山間の村』(作:机庭球)より ※敬称略
『真実を掴む手は幼くも』 中篇 (著:天空 仁)


彼は墓場で霊を倒すと自然と…山との狭間に来ていた。村人の1人が笑顔で手を上げる。
「よう。こんな遅くまで見回りかい?」
「違うんだ。…ちょっとね」
フランベルジェは苦笑したが…青年は首を横に振る。そして、肩をぽんっ、と叩く。
「お前…もしかしてさ、この村の”事情”気づいたんじゃないのか?」
「……だったら、どうなの?僕に全て、話してくれるっていうのかい?
 貴方の身も危ないよ?」
フランベルジェはまぶたを閉ざしたまま、若干つん、とした勢いで言う。青年は明らかに苦笑し、少年の頭を撫でた。
「そう怒らないでくれよ。そして、これは秘密だ。
 知りたかったら倉庫に言ってみるといい。詳しくはいえないけれどな」
そしてくれぐれも俺が言った、とは言わないように…と念を押した。
「ありがとう、おじさん」
少年は一礼してそこを離れる。その背中を見送り…小さく手を振った。

 倉庫の地下から、楽しげな談笑が聞こえる。眼が見えない分、耳はすこぶるいいのだ。フランベルジェがそこにそっと降りる。と、少女と老女が楽しげに話していた。
(そういうことだったのか……)
少年は一歩踏み出した。案の定見つかって怒られるけれど、少年は迷わずに口にする。
「隠れているんですよね、貴女は。
 この村には1人もお年寄りの人が居ない。
 貴女のおばあさんだけここにいるってことは」
「だったらそれを村長代理にいうの?」
「そのつもりはないけど?」
少女が噛み付くようにいい、フランベルジェは呆れたように肩をすくめる。そうしていると老女が「感情的になるな」と少女を諌めた。そして、全てを話し…その上で考えてほしい、と言った。
「ばあちゃん、この子眼が見えないんだよ?それにやせっぽっちだし…」
「ジュリア、人を見た目で判断してはいけないよ」
不満げな少女に、老婆はそっと諭すように口を開く。そのやり取りを聞きながら、フランベルジェは小さく微笑んだ。
「でも…それでも…」
ジュリアと呼ばれた少女は目に涙をため、不安そうに祖母の袖を引っ張る。
「それでは…話していただけませんか?」
少年の問いに、彼女は静かに語りだした。

 この村はムサック村、エルザ村と合わせて一つの領土。村人たちはそこを納める領主に税を払って生活しているが、他二つの村に比べレイト村は収入がはるかに少なかった。エルザには遊牧の民が作る手織物が、ムサックには観光資源がある。
しかし、レイト村にはそれがなかった。
故に領主は怒り、一ヶ月前に自分の息子、ゼル・ヴァルディを村長にするよう命じた。彼は貴婦人相手に野菜を売り始めたが、収入はなかなか増えない。そこで、村長と一緒にきたエリックが「一番の無駄は老人だ」と言い放った。村長はそれに怒り、エリックと衝突していたものの一週間前姿を消した。
「村長は…あの男に殺されたのよ…」
ジュリアは声を押し殺し、苛立ち混じりにそう言った。
…一週間前に姥捨てが始まった。少女はそれが嫌で祖母を隠した。
その事が、フランベルジェの胸に引っかかる。盲目の少年は息を飲み込み、唇を噛む。
そして、深く眼を閉ざし…思考を続けた。
(おかしい。ゴブリンっぽいやつの大量発生と重なってる。絶対…裏がある)
少年には見えないが、目に涙を溜めて「祖母の事をエリックにいうならまず自分を殺せ」とジュリアは叫ぶ。フランベルジェは小さく首を横に振った。
「口だけは、達者ですね。…ま、エリック達にいう必要はないよ。契約は終わってるし」
「だったら…あたしがあんた達を雇うことは出来るの?」
「うん。出来るよ」
ジュリアの問いに、フランベルジェは一つ頷く。少女は盲目の少年の手を取り、ぎゅっ、と握った。
「だったら雇うわっ!あの村長代理を殺して!皆解ってるの!本当は…あいつが…っ!」
「ジュリア、いい加減におし!」
老婆が諌めるが、フランベルジェは静かにこう言った。
「…僕は、その心算です。けれど…報酬の話がありますよ。何をくれますか?」
少女は若干うなりつつ、ワインを1樽くれる約束をした。
そして、同時に仲間たちが姿を現した。一番に飛び出したのはパルチザンだった。
「やっぱり、きみらしい決断ですね。
 本当は優しいきみだから、僕はきみを信頼してるんです」
その言葉に、フランベルジェは苦笑した。
まずはあの山を調査し、裏を探る。ジュリアは協力してくれる人…与太郎と言っていた…に話をつけておく、と言っていた。
「それじゃ、いこうか…」
テッセンが促すが、フランベルジェはちょっとまって、と皆を止める。そして、老女の方をむいた。
「僕の推測だけど…ゼル・ヴァルディが来る前はおばあさんが村長だったんですよね?村全体のお酒を護るならば、村の中でも由緒正しい家になるはずだもの。そして、ここは…ゼルがくるまで特に管理人を定めていなかった。強いて言うならば、村長家であったトランジスタ家が一番頻繁に出入りしていた可能性がある。…だよね」
少年の言葉に、老女は優しい笑顔でうなずき、そっと頭を撫でる。そして、他の子供たちの頭もそっと撫でて、おやすみ、ぼうやたち…と言った。

「あんたたちなら…メリッサ村長…ジュリアのおばあちゃんを助けられるとおもってね」
山への入り口にいた青年は元冒険者の勘で、といいつつフランベルジェたちを迎え入れた。太陽もまだ昇らないうちなので、彼が付き添ってくれたのである。
「まぁ、姥捨ての際もジュリアと話し合ってあの酒蔵に隠したんだけど」
「…ばれた時の事は考えなかったの?」
不思議に思いエペが問いかけるが、彼は肩をすくめ首を横に振った。
「けれど、メリッサ村長は俺の恩人でね。頭が上がらないんだよ」
そういう彼の笑顔を見て、パルチザンも顔をほころばせる。
「本当に、メリッサさんの事を慕っているのですね」
「ああ、そうそう。なんでお兄さんは与太郎って呼ばれているの?」
今度はテッセンが問う。青年はうーん、と首を傾げる。
「ここの辺りを見張っていたりしているだけなんだけれどねぇ。何でかな?
 まぁ、暇って言ったら暇だけど…」
「…そ、それはそういわれてもしかたないかもしれない」
「ちょ、エイデン…それ、酷い…」
エイデンが小さく苦笑して呟き、クレイモアが突っ込みを入れる。そんな面々にエペは苦笑し
「そろそろ行こうよ。あたし、すっごく楽しみなんだから」
という。フランベルジェはそれに頷き、一行は歩き始めた。 
(たのんだぜ、子供連合…)
青年は小さく手を振って一行を見送る。…が、その時、彼は人の気配を感じたような気がした。少年たちとは違う、大人の気配を…。

 パルチザンとフランベルジェが主に道を調べ、一行は順調にゴブリンたちの通った後を辿ることが出来た。その先にあったのは一つの廃墟である。
「……魔力の匂いがする」
テッセンが眉を顰めて呟く。それにフランベルジェも頷きつつ廃墟へ潜入する。と、そこには紅いリザードマンが3体存在していた。動く気配はない。
「…紅い…?」
エイデンたちはそれに息を呑む。
(…この魔力の質…)
瞬間、テッセンとフランベルジュの表情が曇る。闇の眷属と人魚族の二人は魔力が高いのだ。
(あのゴブリンたちと……似ている!?)
「ど、どうしたの?」
エペが小声で問いかけるが、二人は何も言わない。そして、リザードマンも身動き一つしない。
「これもまた……亜種なんでしょうか?」
パルチザンが呟きつつ檻を見ていたその時、急に人の気配がした。
「そうよ」
「!!」
6人が顔を上げると、そこには1人の女性が佇んでいた。露出の多い衣服を身に纏い、子供たちを見下ろしている。

(つづく)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
多分、後書きじゃないけど後書きらしいもの。

くぁー。
あははははははははははは(壊)!

……またもや三週にわたっての模様でス。
丁度よい文章量ってどんぐらいなのでフか?

フーレイ
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-08 18:02 | 札世界図書館 | Comments(0)

散歩がてら、という雰囲気ではない(例の二人、また事件に)


「…ここが…」
ふいに、少年は口を開いた。
風が吹き、立ち止まった5人の目に映ったのは、一つの村だった。
もう1人いるが、彼は盲目なので耳で村を感じている。
「そう、依頼の舞台だよ」
先頭を歩いていた白い髪の少年は小さく微笑み、傍らにいた少年の肩をそっと叩く。
「うん…故郷に似てる…」
小さく微笑む少年の、どこかほっとしたような声に、彼は一つ頷いた。
今回の依頼は、簡単なはずだ。休暇代わりになり、仲間を励ませるかも。
そう、おもっていた。

-しかし、この後…6人はトラブルに巻き込まれる。

『山間の村』(作:机庭球)より ※敬称略
『真実を掴む手は幼くも』 前編 (著:天空 仁)

 冒険者の宿『見えざる神の手亭』に所属する冒険者チーム、『子供連合』のメンバーはある依頼を受けて小さな村へとやってきた。そこは美味しい野菜で有名な所らしい。
「そういえば、グレイシーさんも…こういうとこ、好きだって言ってたな」
白い髪の少年はそういい、小さく苦笑する。嘗て世話になっていた…そして、ある意味恨みにも近い感情を抱かざる負えなくなった先輩冒険者の名前に、メンバーは苦笑を禁じえない。傍らにいた少年は狼の耳を一度震わせ、一つ頷いて口を開いた。
「フランベルジュ、行きましょう」
そう呼ばれた少年は、ああ、と応じると再び歩き始める。
「パルチザン、ごめんな…」
フランベルジェの言葉に、今度はそう呼ばれた人狼の少年が首を横に振る。
「気にしないで」
そういい、少年は目の見えないフランベルジェの手を引いた。その後を他のメンバーが続いていく。
「そういえば……エイデンの故郷に似てる気がする」
そう言ったのはフランベルジェのすぐ後ろを歩いていたテッセンである。エイデンと呼ばれた少年は彼女の横でそうだね、と僅かに瞳を細める。
「出遅れ感は否めないけれど……まぁ、こういうのも悪くないわ」
一番後ろを歩き、黒髪の少女が呟く。彼女は僅かに唇を綻ばせるとふと、足を止める。新鮮な緑の匂いが混じる風を本当に楽しんでいるようだった。
「エペ…、呼んできて」
パルチザンは茶色い眼の少女に頼む。エペと呼ばれた少女は一つ頷くと彼女を引っ張る。
「クレイモア、早くいくよ~」
「わかってる。わかってるわよ」
黒髪の少女はばつが悪そうな顔で駆け出した。

「…報酬600sp以上で比較的ローリスク。そして近場…ある物ですね」
仲間のうちの1人がぼやいた呟きに、フランベルジュが苦笑する。が、彼の指はそれを見つけていた。そして、今その場に到着したのだ。
「山に巣食ったモンスターが夜に暴れるから倒せ、だっけ?」
「そうでしたね。恐らくゴブリンやコボルトだと推測しますが…」
エペの言葉にエイデンは少し考えてそういう。その間にもパルチザンたちは村長の家を探している。
(レイト村の事、調べていて正解だな。前に話に聞いていたパルチザンの故郷に似ている気がする。心なしか、軽やかですねぇ…彼の足取り)
これを選んだ理由の一つが、落ち込んでしまったパルチザンを励ますためだった。彼の故郷に似ているだろうレイト村に行けば少しはリフレッシュしてくれるかも知れない。
「こっちみたいだよ、村長さんの家。行ってみよう!」
パルチザンの声がする。フランベルジェたちは頷いて彼の後に続いた。

 依頼を出したのは村長の秘書であるエリック・クライスラーという若者だった。村長の名で依頼を出したのは村長から名前を使う事を許可されているから、と、やはり村長代理では格好がつかないから、だそうな。彼の話によるとゴブリンの亜種だろう、橙色の肌と青い眼の魔物が夜にやってくるので退治してほしいらしい。
(ふむ……)
フランベルジェは話を聞きながら
「40体ぐらいか……」
「正攻法じゃ、難しいよね。日中の奇襲も考えるけどあの数だったら…」
クレイモアの呟きにパルチザンも考える。
「いや、夜行性と考えるのは危険かな?」
彼の問いに、エリックは困ったような顔で
「何処に潜んでいるのかが…わからないのですよ」
と返す。
「どうするの、フランベルジェ?」
テッセンの問いに、盲目の少年は小さく頷いた。
「ここはやっぱり罠かな。数も減らせる上に錯乱も望める」
「そこを叩けばいいな。よし…っ!」
クレイモアは気合十分といった顔で手を打った。と、同時に扉が開く。そして鎧を纏った、エリックに瓜二つの青年が外から入ってくる。
(金属の匂い…。そして戦いの匂い…)
フランベルジェにはそれをはっきりと感じ取ることが出来る。
「剣士なんだね」
テッセンがぽつりと呟きつつ彼の右手を見た。剣を持つ人間の手だ。ごつごつとしたそれは仲間であるクレイモアと同じ手である。
「双子なんですね」
エイデンの言葉にエリックは頷く。彼の話によるとエディといい、村長のボディーガードだという。
(双子か…)
フランベルジェは小さくふむ、と頷きながら話を聞いていた。

 エディとエリックの計らいで、冒険者6人は村人たちから色々罠に使えそうなものを貰うことが出来た。…が。
「それにしても、エディが挑発してきたのには…驚いたなぁ」
そういいながらパルチザンが苦笑する。
「でも、私たちは私たちのやり方で戦う。……そうだろう?」
クレイモアは楽しげに笑い、エペが頷く。
「でも、倉庫の地下室であった女の子にも驚かされたなぁ。いきなり怒鳴るんだもん」
「しょうがないですよ。勝手に入っちゃった僕たちが悪いんですから」
エイデンは肩をすくめつつも樽を転がしていく。テッセンは揃った道具と地図を見比べ楽しげに声を上げる。
「ええと罠が仕掛けられる所をもう一度チェックしよう。
 で、あとは話し合った通りに仕掛けるよ!」
「けっこう色々あるから、楽しくなりそうだよね。よし、がんばろうっ!」
フランベルジェも頷き、皆が彼の声に笑顔を向ける。こうして一行はわいわいと罠を仕掛けはじめた。

…そして、その夜。それらは上手く作動し、戦闘も楽に終わった。

エリックとエディに腕を認められ、報酬も貰うことが出来た。
労を労ってくれた二人は一行を食事に誘った。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書きと書いて…(略)。
 ども、フーレイです。いやぁ、4月になりましたねぇ。なんとなくこのシナリオが今の季節のような気がしております。机庭玉さんの『山間の村』リプレイでありますが、…そこ、手抜き言わなーい(汗)。作者さんにはリプレイを送っておりますが、これはそれを加筆修正してアップしています(ほとんどしてない気もするけど)。

今後なにか「このチームでリプレイを」とかありましたらこのカテゴリのどこかに書き込んでいただけたら嬉しいかな?

とりあえず、二度に分けますわ。
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-01 15:01 | 札世界図書館 | Comments(0)

来週から『山間の村』編です。(人狼の神官と人魚の術士、苦い記憶)


 一方、シュウは自警団の詰め所内を歩いていた。面会を許された彼は辺りを見渡し、表情を険しくする。陰気くさい空気で、通るだけでも落ち込みそうだ。
(過去に俺も数度入ったが……嫌な気分だ)
と、昔のことを振り返っていると……案内をしていた団員が足を止める。ここが面会の場所らしい。ぎぃ、と鈍い音がして扉が開き、シュウは中へと案内された。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (5) 著:天空 仁

「面会時間は15分だ」
と、言って団員は睨むようにシュウを見ていた。既に、フランベルジェと思わしき少年がそこにおり、ちょこんと椅子に腰掛けている。白い髪と白い肌。そして閉ざされた瞳。聞いたとおりの姿だ。
「構わない。 早く終わるからな……それと」
その睨みに、シュウは冷えた目で睨み返す。
「俺たち冒険者をどう思おうとは構わない……だが、誤認逮捕のつけは、確実に払ってもらうからな……」
「そんなものは、しったこっちゃない。俺は下っ端で、現場に出してもらえない見張りだかんな」
乱暴に、団員は言い捨てると肩をすくめた。その言葉に……シュウは無言で胸倉をつかむ。
「下っ端、上司は関係ない…。お前たち自警団が腐ってるから、こんな状況が続くんだ。棚上げする根性があるなら、少しは態度を改めろ」
「……誰が。俺はお前のような小生意気な冒険者が嫌いなんだよっ」
「……やめていただけませんか?シュウ=アズベルトさん?…看守さんも…やめてください」
不意に少年の口が開く。その目は見えていないのだろうが、声で反応し、二人へと顔を向けていた。
「……」
無言で手を離すシュウ。団員もまた、首を回し……今度は普通に二人を見つめる。そしてもう一度面会時間は15分だ、といった。彼は頷き、席に着く。シュウも席に座り、言葉を紡ぐ。
「面会と言う時点で、大体の察しはついているとは思うが……事件に関して、なにか覚えてることとかはあるか?」
「……確か…僕は……親父さんからお使いを言われました。でぇ…薬を買いに行く途中、あの殺された女性をみて…あとを追ったんです」
フランベルジェはぽつぽつと思い出したところまでを語り、小さくため息をつく。己の耳と鼻と手で感じた事を思い出せないことが、少年にとっては苦痛なのだ。それでも、目の前にいる同業者が仲間である、とさっきの口論で判断したフランベルジェは思い出せたところまでを、シュウに説明した。
「……似てるな」
「シュウさんも…似たような事件に遭遇したんですか?」
フランベルジェは僅かに首をかしげる。
「似てるというより……同じと言い換えるほうが確実だろうな」
シュウの声に、少しだけ真剣さが帯びる
「…それじゃあ…貴方も死体と現場に居合わせたというだけで犯人にされ…?」
フランベルジェは口元を押さえ、声を潜めて表情を険しくする。シュウの言葉には偽りがない、と少年は思い……言葉を待った。
「……その通りだ」
刹那、フランベルジェの表情が酷く険しくなった。それが何を意味しているのか、シュウにもわかっている。どこか水面を渡るような風が吹き、少年は顔を上げる。
「……恐らく、思い出すのもそう遅くは無い筈だ」
「……」
その言葉の意味をつかみきれず、フランベルジェは首をかしげる。
「僕が記憶を失ったのは……姿を隠す薬の副作用かと考えています。僕は元々人魚なので、人化の薬を服用しているから…」
「ありえないな…」
「ありえない?」
否定するシュウに、フランベルジェが表情を曇らせる。
「俺のチームには、ハイエルフの魔導師がいる。 知識にかけては、彼女の師匠譲りだ。情報を集め、証言を聞いた限りでは……そんなことはありえない」
「そう、ですか……」
フランベルジェは小さく頷くと…頭を抱える。
(まずい、そろそろ人魚になり始める…)
それでも、少年はシュウの話に頷き……別の原因を考えてみる。
「……記憶は、消えることは無い。 ただ忘れてるだけだ。そして……」
そう言って、シュウは立つ。
「記憶を消す要因は、薬だけじゃない。それは、俺自身も良く知っているからな」
「…心理的要素…でしょうか。
 信じたくないことに出会うと、人はその記憶を無意識におしこめる」
「もしくは人による記憶の操作…だろうな。それと、気にしているようだが……言っておく」
シュウは、静かに……穏やかに言う。フランベルジェは閉ざして目を彼に向け、ただ言葉を待つ。
「例え種族が違おうとも、信ずるに値する者ならば……俺は信用しつづける。それが、絆となるのだから……」
その言葉に、フランベルジェは僅かに顔が綻んだ。そして、小さな声で「ありがとう」と呟いた。それが、シュウがはじめてみたフランベルジェの笑顔だった。

その夜のことである。
案の定、パルチザンの不安は的中した。議員と、その人とつながりのある男が殺された。
(犯人は、もしかしたら…フランベルジェを殺そうとした人かも)
その知らせを受けたとたん、パルチザンの胸が激しく痛んだ。

次の日。
フランベルジェは牢に横たわっていた。人化の薬が切れ、下半身は白い魚の尾鰭となっている。だから下半身は他の拘留者が驚かないよう、ぬれた布で覆われていた。
(なんか、嫌な予感がする)
鰭耳をぴくぴくさせ、フランベルジェは身を起こす。人の気配がし、我に返ると兵士がガラスの音と布の音をたてる。瓶と下着類らしい。
「差し入れだ。人化の薬もあるぞ」
「ありがとう、ございます」
フランベルジェは一生懸命這いずり、それを受け取った。薬を飲み、下着とズボンを身に着ける。
「表に出ろ。取調べを行う」
兵士は若干乱暴に少年を連れ出し、部屋へつれていく。
(間に合うかな)
フランベルジェがそんな事を考えていると、一人の男が彼らを止めた。そして、柔らかい声でそれが自分の治療をしてくれた人だと気づいた。
「その子は、無罪だ。釈放しろ」

フランベルジェは一行に合流し、事件の起こった議院宅へと一緒に向かう。
その途中で殺された女性の恋人と出会い、情報を手にする。
議員宅には色々な情報が詰まっており、一つのパズルに出くわした。
それが、真犯人へとつながる。
パルチザンたちをおいて、一人駆け出して…。

―その人は、僕らにとって憧れだった。
それなのに、今……僕はその人と対峙している。
「正直、同情もしますけど……幻滅しましたよ」

フランベルジェは冷たく言い放つ。
声の先には、信頼していた存在が、たたずんでいた。

「もう、ずいぶん前のことだと思えるけれど、ふと、昨日のことのように思うこともあるんだよ」
パルチザンは肩をすくめる。気がつくと【子供連合】のメンバーが顔をそろえていた。フランベルジェは点字の本を広げつつも、読まずパルチザンと話をしていたのだが、我に返る。
「そうだね……」
「それ、読んでいて面白い?」
パルチザンの言葉に返事をしていると、テッセンが首をだしてきた。曖昧に答えていると他の冒険者たちはもう依頼を受け、出て行った。
(はやく依頼を……選ばないと)
そう思い、フランベルジェは依頼のボードへ向かう。文字ははっきり書かれているので、触れば何が書かれているのかがわかる。
(どれがいいかな……あっ!)
ふいに、一つの依頼が少年の手にふれる。その現場は……彼の記憶が正しければ、話に聞いていたパルチザンの故郷に似ている。
(これにしよう。故郷ににた場所に着たらパルチザンも元気になれるかも)
フランベルジェは、小さく頷いた。

(終わり…いや…つづくか?)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あとがき
※これは作者である机庭玉さんへ送られたリプレイを加筆・修正したものです。
こんにちは。フーレイです。
実は本当は『空白の時間』→『新人と私』→『山間の村』の順でリプレイをしようとし
たのですが
・長すぎ
・ネタがまとまらない
の理由からまずは『空白』『新人』の二つを書いてみました。
順番どおりではないのだけれども。

うまくいっているか不明(汗)。雰囲気を壊さなきゃ良いけれど。
また、龍使いさんとこの冒険者であるシュウさんとカーナさんにも出ていただきました。
そして、そのシーンはメッセを使用して共同制作です。
だから部分的に龍使いさんとの共著となりますか。

それでは、今回はコレで。続きは『山間の村』リプレイメインで。

フーレイ
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-25 14:14 | 札世界図書館 | Comments(0)

ノリ的にはなんか知的な曲をBGMに(カーナさん、顔を上げ……)


 シュウが自警団の詰め所にいくと……仲間である女性、カーナともう一人……長身のエルフが団員に詰め寄っていた。少し遠くからでも判るが、二人とも相当怒っているようである。
「っとに、リューンの自警団は腐るところまで腐ってるわね!」
「第一に考えてみろ!あの子はまだ10歳かそこいらだ。子供がヤるか普通!」
そんな声が、風に乗って聞こえてきた。シュウの記憶が正しければ、一方は有名な冒険者、バルディッシュであった。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (4) 著:天空 仁

「それだけじゃないわよ! 状況証拠ばかりで、肝心の証拠が少ないのに犯人扱いって聞いたわ!盗賊ギルドの情報収集でももう少しマシな情報を仕入れるわよ!」
「しかし……」
団員はカーナの形相とバルディッシュの表情にたじたじとなっている。
「…疑わしきは罰するってか?おいおい、勘弁してくれよ」
「じゃあ、逆に聞くわ? その子が事件を起こす理由はあるの?無いはずよ」
「それを今当局は捜査しているわけで……」
団員は二人の言葉に今にも泣きそうな顔で応じている。見ている一般人としては思わず団員に同情しそうになるような光景だった。
「あたしの仕入れた情報では、通報者がいて、その証言で捕まえたと聞いたわ。けど、そんなの矛盾に過ぎない、そもそも……」
「そこまでにしておけ」
「あん?」
シュウの言葉に、エルフが振りかえる。呆れた声で近寄りながら声をかけるシュウ。
「まったく……少しは冷静になれ。 感情が先走りすぎてるぞ」
「とはいってもなぁ…。こちとら息子が濡れ衣を着せられてるんだ」
バルディッシュははき捨てるようにいう。
「まぁ、らしくないっちゃそうかもしらんが……な」
つづけて出された言葉は、どこか自嘲を含んでいた。
「気持ちは分からなくも無い。 だが、そういう時だからこそ、冷静にならなくちゃいけない。感情は、時として正常な判断を鈍らせる……お前ほどの戦士なら、それくらい理解できるはずだ。バルディッシュ」
シュウにいわれ、バルディッシュはばつが悪そうに苦笑した。
「そうだな。……確かにそうだ。すまない、な…こんな姿をさらしちまってよ」
そして、彼は傍らのカーナにいい、ぽん、と肩を叩く。
「…だってさ、お嬢さん」
「……分かってるわよ。けど、納得は出来ないわよ!
 あんただって前に同じめにあったじゃない!」
「確かにな。 それに、同業者……ましてや子供が犯人扱いなのは俺だって許せない。だが、ここで喚いた所で、事態が好転するわけもない」
シュウの言葉に、カーナは眉をひそめて言う。
「…っとに、あんたのその達観した部分が偶に羨ましくなるわよ…」
「200年ぐらい生きても、俺には無理だったけどな」
バルディッシュはそう、さらに苦笑してみせるがカーナの言葉には反応する。確かに、彼自身もカーナと同じ思いなのである。
「だからこそ、無実を晴らすために仲間達が頑張っている…。違うか?」
バルディッシュは小さく頷く。
「俺たちに出来ることは、サポートだけだ。解決するのはあの子達に任せて、信用する……それが、同業者にとって重要なことだと俺は思う」
シュウにいわれ、バルディッシュの表情が少しだけ寂しそうになった。やはり息子のことが気がかりなのだろう。しかし、それでも彼はああ、と頷いた。が、自警団員には鋭い眼光を向ける。カーナもまた、自警団員を睨むように見据えている
「……やれやれ」
そんな二人の様子に、苦笑を浮かべながらシュウは紙の筒を取り出し、団員に渡す。
「面会を頼みたい。ここに、ある人物の紹介状がある」
団員は書状を受け取ると一つ頷くとシュウを中へと案内した。あとに残されたバルディッシュとカーナはため息をつく。
「……って、お前は……」
傍らにいた女性の名前を思い出そうと、少しだけ眉を顰める。一度ぐらいは会っていると思うのだが…と。
「ああ、エリザベイト?!『勇ましき戦乙女亭』の…だろ?」
「……え?」
名前を呼ばれて。首を傾げるカーナ。
「誰のことか知らないけど……違うわ。あたしは、カーナ。白銀の剣亭所属の盗賊よ」
「…あー…すまねぇ…。カーナか。いやぁ、悪い…。そうだよなぁ、エリザベイトはもう60年前の冒険者だった。200年生きてると記憶が混合しちまって…」
バルディッシュは苦笑いをした。そして、一礼する。
「俺は見えざる神の手亭の冒険者で、バルディッシュ・ルー。一応『聖闇教会』の聖騎士だ。ま、聖北じゃあ聖闇(おれたち)は異端らしいがな」
「噂は聞いているわ。 良くも悪くも……ってところでね」
カーナはそう言って苦笑する。 世間一般では、冒険者と言う家業はそれほど認められているわけではない
「あははは、そうか。良くも悪くも、か」
バルディッシュは愉快そうに笑う。が、その顔は……酸いも甘いも知ったうえでのそれだった。そう簡単に、人間に浮かべられるような代物ではない。カーナはそう思った。
「ええ。 それに、今回の事件でまた……冒険者の風当たりは強くなりそうね」
「まったくだ。これで真犯人も冒険者だったら目も当てられない。
 せっかく築いていた信頼関係も崩れるかもしれない」
「あら? そうかしら?」
カーナの言葉に、バルディッシュは肩をすくめる。
「人間ってーのは案外薄情なやつもいる。祭り上げておいてちょっとした他人のへまでも、叩き落す。そんなヤツらを見てきていると……多少勘繰ってしまうのさ」
「そう。 けど……死んだ母さんが言っていたわ。
 『その程度で崩れる信頼関係は、塵にも等しいもの。
 本当に、冒険者を信頼している人は、どこまでも信じる人だっている』ってね」
どこか懐かしむように、遠くを見るような眼で言う
「あたしは、それを信じたい…。 母さんが信じつづけたように……」
「若いねぇ、カーナ。確かにお前の母さんの言葉も一理ある。けれどな…そう信じていたとしても…崩れるときは崩れるのさ。どんなに硬い信頼だとしても小さな罅が不信を生む…」
バルディッシュはため息混じりにそういい、どこか遠くを見るような目でもう一度ため息をついた。
「カーナ。お前の母親は……心が澄んでいたんだな。俺とは違ってよ」
「あら、そう言うあんたもじゃない?」
「?」
バルディッシュはカーナの言葉に首をかしげる。
「俺が?…んな訳ねぇよ…」
「養子といっても、そこまで信じる人はいないわよ。それに……忘れたくても、忘れられない人……そんな人がいるって目をしてるわよ、あんたは」
カーナの微笑に、バルディッシュが困ったような……それでいて、どこか参ったような表情を浮かべる。大人特有の、どこか寂しい笑みを。
「…一本、とられたかな?」
「さて、ね。 けど、疑うも信じるも、結局は自分次第よ。仮に、あんたの大切な人が無実で捕まって……あんたはそれを一瞬でも信じる?」
クスッと笑いながら、問いかけるカーナ。
「いや。信じなかったな……っ」
バルディッシュは降参だ、とでも言うように手を上げた。
「矛盾、してるわよね?」
そんな様子に、カーナはクスクスと笑いながら続ける。
「それと一緒よ。信頼は絆になれば、信じられるものでしょ?」
「判ってる。俺がそいつは一番わかってんだよ…。ったく、お前は……。やーっぱ、エリザベイトに似てるわ。いい冒険者になるぜ」
「あら、お褒めに預かり恐縮ね」
バルディッシュはその言葉に小さく微笑み、
「シュウが戻ったら、二人ともおごってやる。で、序に捜査の手伝いでもすっか?」
「いいわよ、別に。 ただ……」
「ただ?」
カーナの言葉に、バルディッシュは思わず聞き返す。彼女は眉を顰め、
「……あの時と同じように出来すぎているのよ、この事件。いくら自警団が馬鹿でも、すんなり行き過ぎてる」
「俺もそれは思うんだわ。だから一応色々聞いてはいるんだが…。第一、あの議長さんが血なまぐさくてねぇ」
「……いいえ、あたし達のときにも、シュウが似たような事件に巻き込まれたわ。その時の犯人は……『身内』よ。うちの宿の……ね」
「身内…ね」
「…ええ」
カーナの声に、バルディッシュは僅かな戸惑いと悲しみを覚える。そして……小さく呟いた。
「ありえるわな。実は…ある身内が…」
そこまで言ったとき、鐘が鳴る。……夕方の鐘だ。
「……時間も少ないわね。 シュウが戻り次第、仲間と合流しないと…」
「そうか。……またな。俺は現場に行ってみる。ま、もう何もないかもしれねぇが…」
そう言って、バルディッシュは彼女に背を向ける。そして
「シュウによろしくな。一度手合わせしようってな」
そう言って、雑踏の中に消えた。その様子に、カーナは笑顔で言う。
「ええ、伝えておくわ」
だが、バルディッシュを見送った後に小さく呟いた…。
「……祈りたいわ。 この事件、『身内』による犯行じゃないことを…」
その言葉は、風の中に消えていった……。

(つづく)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あとがき
しつこいようですが、これは作者である机庭玉さんへ送ったリプレイに加筆・修正したものです。
…長くなったので、後一回。
・・・・・・あっけないいわないでね;

フーレイ
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-18 20:49 | 札世界図書館 | Comments(0)