ある野良魔導士の書斎

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二人でお話もラストです (リーダー二人、仲間紹介その2)


特別企画
カードワースPC対談:シオン&シュウさん編 (後編)
※シュウさんの生みの親である龍使いさん、協力ありがとうございます!

シオン「…次は…誰を…しょ、うか…いする?」
シュウ「こっちの神官は、エアリスだな。 聖北の神官だ」
シオン「聖北…の…神官。ほぅ……。どんな、ことが…得意なんだ?」
シュウ「癒しの秘蹟が出来るが、普通の女性神官と違って、格闘も出来る」
シオン「頼も…しい、な。格闘…武器を…つかわ…ない、戦い…が、得意なの…か」
シュウ「一応はな。 回復に専念すると、護身程度にしか動けないが」
シオン「そう…か。しか…し、切り札…になる。相手の…隙…を、
     う、み、その間…に…色々で…きる」
シュウ「まぁ、そうなんだけどな」
シオン「戦闘…を、左右、する…治癒、術持ちと切り札…いい逸材だな。
仲間…なら心強、いが敵に…する、と、戦い…辛い、ぞ」
シュウ「まぁ、な」
シオン「…なんだ…か、お前の…チームと、組んで、仕事…を、する、の…が、
     楽、しみになっ…てきた…よ」
シュウ「そうか。 何時か出来ると良いな」
シオン「ああ。次は…俺、か」
シュウ「そうだな」
シオン「次は…ヘイゼル。最年少で、リューン…育ちの精霊術師、の、女の子…だ。
     彼女は…水や、氷…や、風の精霊…を、つれて、いる」
シュウ「ふむ」
シオン「親が、精霊術師…だった、らしい。あと……猫の、ライカンスロープ、で、
     たま…に、猫化…する。普段、は、風のよう…に、自由、な子、だ」
シュウ「なるほどな」
シオン「冒険者に、なった…当初、は、両親との、別れ、をときに、寂しがる…こと、
     もあった、が…今、では、戦闘・日常…関わらず、ムード、メーカー…だ」
シュウ「ふむ。 いい奴だな」
シオン「ああ。落ち込ん、だり…した、とき、笑顔…に、助けられる、ことも…ある。
     あの、子は…そんな、子…だ」(笑顔)
シュウ「……そうか」
シオン「次、だぞ」
シュウ「次は俺か…」
シオン「そうだ。…どんな、仲間、が…いる?」
シュウ「後いるとすれば、シリウスだな。 大剣使いだ」
シオン「大剣…戦士か…あれ?知り合いの…槍を…使う少女…と、同じ…名、か」
シュウ「ほぅ。 まぁ、メンバー内で一番の攻撃力を持った奴だ。 中々に強い」
シオン「ふむ……。どんな、戦い、方、か…興味深い…な」
シュウ「まんまだ。 大剣を上手く利用して、敵を叩き切る。
     攻防を上手く使った戦い方が得意だな」
シオン「ほう…。それは、それで…おもしろい。
     筋力と、経験を…組み合わせる…タイプ、か?」
シュウ「それに近いな」
シオン「手合…わせ、して、みたく…なった、な。興味、深い」
シュウ「やめとけ。 結構きついぞ?」
シオン「だいじょう…ぶ、だ。俺は…そんな…に、やわ、じゃない」(笑顔)
シュウ「そういう問題じゃないさ」
シオン「そう、な…の、か?」(首かしげて)
シュウ「ああ。 油断は死を招く。 訓練とは言え、油断していると怪我するぞ」
シオン「…十分…承知は、して…いる」
シュウ「そうか」
シオン「戦…場では、つね、に…いわれ…ていた」
シュウ「……」
シオン「すまない…。ともか…く。いつか、は手合わ、せ、した…い」
シュウ「分かった、言っておこう」
シオン「ありがとう」
シュウ「さて、次はそっちか」
シオン「ああ。ユズハ…という、魔導士だ。彼女…は、俺、の…命の…恩人だ」
シュウ「ふむ」
シオン「行き、倒れ、に…なった、俺を、今の、宿…に連れて…きてくれた。
     彼女…に、助け…られ、なかっ、たら…俺、…は死んで…いた」
シュウ「……」
シオン「彼女…は、ヒイロの、次、に頭…の回転、がいい。
     また、補助…魔法…を、得意、としている。
     サポート…に、回る、ことが…多い」
シュウ「ふむ。 それは心強いな」
シオン「彼女…の、おかげ…で、不利な、戦闘…も、五分五分…いや、有利に、
     なることもある。…面倒見…も、いい、から、クズハや…ヘイゼル…の
     姉的…存、在でもある」(少し幸せそうな顔)
シュウ「……いい仲間だな」
シオン「ああ。俺、にとっても、かけがえの…ない、人だ」
シュウ「そうか」
シオン「こんな…ところ、だな」
シュウ「分かった」
シオン「…結局…前・中・後…と、なった。シュウ、疲れて…ないか?」
シュウ「大丈夫だ」
シオン「なら、いい…んだが。後は…この…話、を、聞いて…くれた人へ、
     メッセー…ジ、かな?」
シュウ「まぁ、無難にここまで読んでくれたことに感謝を……だな」
シオン「ふむ。俺たち…や、互いのチーム、メンバーを少しでも…興味、
をもってくれたら、うれしい、こと、だ」
シュウ「そうだな」
シオン「シュウ、今回…は、ありがとう。話す、ことが…でき、てうれしかった」
シュウ「こちらも、楽しかったよ」
シオン「そう言って…もらえると、企画した、あの…人 も、喜ぶ。
    …そろそろ、時間、の、よう…だな」
シュウ「そうだな。 それじゃ、いくよ」
シオン「途中…まて、送ろ、うか?」
シュウ「大丈夫だ」
シオン「そう…か。…それでは…気を…つけて」
シュウ「ああ、またな」

(おしまい)
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by jin-109-mineyuki | 2008-09-09 21:11 | 札世界図書館 | Comments(0)

おそくなりましたが (シオンとシュウ、トークは続く)


特別企画
カードワースPC対談:シオン&シュウさん編 (中編)
※シュウさんの生みの親である龍使いさん、協力ありがとうございます!

シオン「…なん…か、暗い…話、に、なって…しまったな」(苦笑
シュウ「まぁ、過去が過去だからな」
シオン「……お互いに…な。これ…から、楽しい…こと、ふや、して…いこ、う」
シュウ「そうだな」
シオン「今は、互い…に、家…とも、いえ、る宿…が、あり、仲間…がいる」
シュウ「…ああ、護らないとな」
シオン「勿論。…あ、折角…だ。互いの、仲間も、軽く、話、して…おく、か?」
シュウ「それもいいな」
シオン「一人…ずつ、交、互に…。役割…とか、どんな…人、か。
     何れ、一緒…に依頼を、こなす…かも、しれ…ない、から、知り、たい」
シュウ「分かった」
シオン「どっち…から、いこう?」
シュウ「そっちからでいいか?」
シオン「わかった
    まず、ヒイロ・セイレン。…彼は、ハーフエルフの…学者で、策士だ。
    …パーティ1、の知識、量を誇、る。そして、パーティの、ブレー、キだな」
シュウ「なるほど」
シオン「俺、も、一般…常識、の7割を、ヒイロ、から、学んだ。
    いろいろ、アドバイス、も、くれる」
シュウ「まさに参謀……か」
シオン「普段、は、本の虫だ。…それか、裏庭で、ハーブ、を育て…ている。
     静かな、奴、だが、いい、人だ」
シュウ「なるほど」
シオン「次は、お前、だぞ」
シュウ「わかった。 ……そうだな…
    俺のほうでは、ルアムだな。 ハイエルフの少女だ」
シオン「ふむ…。たしか、魔導士…だったか?」
シュウ「ああ。 魔術師兼参謀って所だな。
    ハイエルフだけあって、知識はかなりのものだ。
    窮地に立たされた時、彼女の冷静な判断で良く救われた」
シオン「冷静な、参謀が…いる、とい、うことは…パーティ、にとって
    …ありが…たい、もの、だ」
シュウ「そうだな。 だが、日常では割と無口でな。
    暇さえあれば、魔術書をよく読んでいる」
シオン「……そう、なのか」
シュウ「ああ」
シオン「参謀…と、いう、人は、皆…本が、好き…なのかもしれないな」
シュウ「あいつは魔術師だから、興味のある魔術書は大概読むだけさ」
シオン「なる…ほど、な」
シュウ「こんなところか?」
シオン「会うの…が、楽し、み、だ。次は…盗賊のクズハ・イチジョウジ。
    エルフ、の子で…一見、少女に見、える」
    女顔、と言っ…たら、怒る、から、注意…だ」
シュウ「留意しておこう」
シオン「でも、腕…が、いい、盗賊、だ。罠を…解除…し、
    鍵を素早…く開け、ピンチ、を乗り、越え…られ、た」
シュウ「盗賊は探索には必要不可欠だからな」
シオン「うむ。…戦闘面…でも、ナイフで、サポート、して、くれる。
    普段は、お菓子が、好き…な、元気…な、子、だが、やは、り、冒険者…だ」
シュウ「なるほど」
シオン「ヒイロとは、出身、が…同、じで、仲が…良い。
二人…が、連携…する、と、敵…が、翻弄…され、る」
シュウ「仲間との連携が出来る、か。 良いコンビだな」
シオン「ああ。二人…が、少し、羨ま、しい。次は、シュウ、の番、だ」
シュウ「俺のほうは……そうだな。 同じ盗賊で、カーナと言う女性がいる」
シオン「ふむ…。どんな、女性だ?」
シュウ「PTの会計係で金銭には厳しいが、盗賊として脳では一流だ。
    ナイフを扱う事を得意とするが、良く使うのは魔導銃と呼ばれる
    マジックアイテムを使った射撃だな。
    ナイフに負けず劣らず、凄い腕を持っている」
シオン「ほう…。ガンナー…でも、ある、のか。凄そう、だ…。
     銃、と、やらを…使う、人物…は、珍しい…」
シュウ「ああ。 だが、過去の事はあまり触れて欲しくないらしいな」
シオン「わかった…。俺たち…の、家業…は、そう、いう、人が…多い、から、な」
シュウ「そうだな」
シオン「しかし…優秀…な、盗賊であ…り、ガンナーか。
    …その、腕前…見てみ…たいもの、だ」
シュウ「機会があったら、だな」
シオン「ああ。共に…戦え、る日が、楽しみ、だ」
シュウ「次は、そっちだな」
シオン「そうだな。次は…聖騎士…の、キャラメル・アーカイア…。
    彼女…は、聖海の、人間だ。槍を、振るう一方…治癒や加護…を、くれ、る」
シュウ「ふむ」
シオン「俺には…わからない…が、恋愛…小説、が、好きだ。
     クズハ…曰く『夢見がち』…らしい。
     が、戦いでは、先鋒的、な、役割…を、担って…いる」
シュウ「騎士だからな。 先陣に立つのは当たり前だが……」
シオン「俺、の…次に、筋力…に、優れる。
    甘く…みる、と、痛い、目を見るぞ…。
    普段は、普通…の、女性…と、さほど、変わら…ない、が」
シュウ「甘く見るつもりはない。 戦士にそれは、ただの侮辱にしか過ぎないからな」
シオン「それ…を、聞いたら、キャラメル…が、頷く…な。…次、だぞ」
シュウ「わかった」

(次回に続く)
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-29 21:24 | 札世界図書館 | Comments(0)

シオンとシュウさんで話してみた。 (二人、まったりと?)


特別企画
カードワースPC対談:シオン&シュウさん編 (前編)
※シュウさんの生みの親である龍使いさん、協力ありがとうございます!

シオン「…ひさし…ぶりだ。
    今回、は、企画…に参、加して…くれ…て…ありが、と、う」
シュウ「気にするな。 暇だったからな」
シオン「フーレイ…曰く、色々…話し、て…もり、あが、れ、とのお達…しだ」
シュウ「難しいな」
シオン「…そう…だな。…それ、ぞれの…こと…とか?」
シュウ「だろうな」
シオン「ふむ。……まず、俺から。
     リューン…とは、別…大陸に、ある……大き…な国の、出だ」
シュウ「ほぉ…」
シオン「しか…し、人工…生命…体だ。国籍…など、な、い。
    …逃げ、出す…まで、施設…周、辺と、戦場…しか…知らな、かっ…た」
シュウ「……」
シオン「……国は、滅ん…だ、らしい。過去、の…事…だ。気に、する…な」
シュウ「……ああ」
シオン「シュウ…は…どう、だ?…いや、なら…答え…なく、ても…いい、けど」
シュウ「そうだな……
    俺は、元はある国の騎士をやっていた。 父と腹違いの兄とでな」
シオン「騎士…か。国の…守り…人だった、の、だな?」
シュウ「ああ」
シオン「…故郷…は、どんな、所なんだ?
     俺、の…生まれ…た国は…殺伐…とした、平野…だったが…」
シュウ「良い国だったが……上層部は腐ってた。 
     いや、階級だけの貴族や聖北の腐った馬鹿どもが権威をかさにしていた
     ……とでも言えばいいかな」
シオン「…どこ…も、一緒……なの、だ、な…。
    そう…いう…毒…で、しか、ない…連中…が上……だと、
    周り…が迷惑、する」
シュウ「ああ……」
シオン「…そう…いう…やつら…に一泡…ふか、せられた、ら…楽しい」
シュウ「まぁ、な。 もっとも、俺は国に帰れないけどな……」
シオン「複雑…な、事、情…が、あるの…だな……。
     俺、も…国、が…あっ…たと、しても…もどっ…たら、処分……される」
シュウ「そうか…」
シオン「……似て…いる……のか?」
シュウ「……いや。 むしろ、嵌められた……って所だな」
シオン「…嵌め…ら、れた……だ…と?」
シュウ「家族に危害が行った事件があってな
     ……その時、過って貴族の一人を殺しちまった……。 
     あの国は、シグルトと同じような制度でな。 貴族殺しは、死罪なんだ」
シオン「……ふざ…けて…いる。人間…は、同じ…だと、聞い、た…が…何故?」
シュウ「一つは、状況を知っている奴は俺を陥れようと言う考えが事件後に
     あったため。二つ目は、どんな馬鹿でも親は親って事だ。 
     現実に起こった事だし、庇いきれないのさ」
シオン「…………難し、い」
シュウ「無理にわからなくてもいい。 
    それで、死罪になる所を俺は助けられた……。 望まぬ形でな」
シオン「望ま…ぬ…形?実験…体、に、でも…なった…のか?
     ……いや…その…無理…には…」
シュウ「気にするな。 
     俺の大切だった人が……俺を助けるために、国の王子と婚約したのさ。 
     もっとも、殆ど交換条件に近かったと、後から聞いたがな」
シオン「………」
シュウ「それだけでなく、父と義兄は騎士としてやってはいるものの
    ……辺境の地に飛ばされた。 
    義妹や俺の母は命令で国を離れて、修道院に入れられた。 
    そして俺は……国を出る事になった」
シオン「……家族…が、ばらばら…」
シュウ「そういう事だ。 護るべきものをなくした俺は……流れるままにリューンに来た」
シオン「そ…う、なの、か。…今は、どう…だ?」
シュウ「……言わなくても分かるだろ?」(微笑む
シオン「……だな。愚問…だった」(頷く

   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

シオン「シュウ、は…この、大陸…の、人間、だっ…たか?」
シュウ「ああ」
シオン「この…大…陸に、来た時…リューン…に行こう…として、
     ライラックに、運ば…れた。
    この…大陸…では、旅人…を、売る、人間…が、いる、のか?」
シュウ「そいつは奴隷商人だな」
シオン「奴隷…人間…は、作ら…れた、存在…以外…同類…だろう…存在も…
     売り買い…するのか」
シュウ「そうとは思わない奴もいる。 それに、奴隷に身分なんか無いんだ。 
    亜人族や戦争で負けた捕虜とかは、特にな。 
    同族であれ、そういう事をする輩もいるんだ」
シオン「……そう…なの、か。(すこしげんなりしつつ)
     高値…で、売れる…とか、客…が付く…とかの…言葉…も、
     今、なら…意味が…わかる」
シュウ「気をつけた方がいいぞ」
シオン「ああ…。
     もう、あんな…甘った…るい、匂い…の所…には、行か…ないし、油断…しない
     奴隷…か…。あの…頃の…俺たち…も、そう…なん、だろ…う、な
     …俺、と、同じ…施設…に、いた、ホムン…クルス、の、こと、だ」
シュウ「……?」
シオン「俺…は、元々…殺戮…用…と、して、作ら…れた。
     戦う…ため、だけ…に。故…意思、など、なかった」
シュウ「……」
シオン「…あと、俺…は、初期、型と、呼ばれ…、何故…か、夜に…なると、
     時折…寝台…に運ば、れたり、もした。実験も。
    自我、が、芽生えた頃、俺は、人間は、皆、基本…平等・・・だと、
    思って…いた。俺、や、他の、ホム、ンクルス…と、扱い…が、違ったから」
シュウ「なるほどな……」
シオン「人間…に、も、違い…がある。それを、ここへ…来て、知った。
     …思った…より、も、複雑…なんだ、な」
シュウ「人なんて様々だ。 性格も違えば思想も違う
     ……全てを知っている人間なんて、いないさ」
シオン「……そう、か…」
シュウ「まぁ、全てが分からないからこそ……色々分かるとうれしいんだけどな」
シオン「ああ。…ここへ、着て、から…、色々…学んだ…。
     人間…たちは、たの…しいこと、拓さん…作り出す。
     家族…は、基本、あたたかい」
シュウ「……そうだな」
シオン「俺…は、もっと、人間…を、知り…たい。もっと…心を…、持ちたい」
シュウ「出来るさ、お前なら」
シオン「ありがとう…」
シュウ「……」(微笑む

(次週に続く)
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-19 14:00 | 札世界図書館 | Comments(0)

ついにお披露目 (カモミール小隊、出陣!)


 静かな朝に響く水の音。薄暗い厨房で、1人の男が黙々と朝食の準備をしていた。白い肌に黄色い瞳、そして短く切りそろえられた金色の髪に細く引き締まった体。見る人が見たら、彼が普通の人間ではない、と思うだろう。
―鍛え上げられた人間である、と。
…しかし、彼はそんなそぶりも見せずただ淡々と作業をおこなう。朝食用のスープを作り、パンの焼き上がりを見、上の部屋で眠る住人たちの心配をする。ただの『宿の親父』であろうとしていた。
「さて、そろそろか…」
男はくすり、と小さく微笑んだ。

カードワースショートショート
『ある宿の朝を覗けば』 (著:天空 仁)

 ここは表向き冒険者の宿『オーベルテューレ』となっている。事実ここには冒険者が入っており、いろんな依頼を受けている。が、その正体は異世界にある大国『オーベルテューレ』からやって来た軍人たちであった。先行部隊として送り出されたのは若者ばかり5人だった。今では冒険の途中で出会った少女が入隊したり、祖国から別の部隊が投入されたりで、中々にぎわい始めている。そんな冒険者…のフリをした侵略者たちの健康管理とリューンでの情報収集を任されたのが宿の主人…名をクミンシードと言った…となったホムンクルスであった。
「おまえたち、そろそろ起きたらどうだ?」
そういいながら、二階へ声をかける。これは既に日課だ。リューン侵略という任務は中々進みそうもないが、日々が充実している。まぁ、侵略者達自体が冒険者としての生活になじみすぎたのも原因だが、クミンシードはこれを甚く気に入っていた。
「今日は、カリカリベーコンエッグを焼きたてベーグルにはさんでるぞー」
その言葉に、ばっ、と一斉にドアが開いた。


 一階の食堂。そこのカウンターには6人の男女が顔をそろえていた。楽しそうに朝食を取る彼らの様子を見つつ、クミンシードは小さく微笑む。
「んー、今日の依頼はどうしよっかなー」
水色の髪をポニーテイルにし、東方風の衣服を身に纏っているのはカモミール。彼はリューン侵略任務のメインとなる『カモミール小隊』の隊長で、階級は軍曹。いつもはおちゃらけているが、決めるときは決める…らしい。最近ではある少女から貰い受けた刀が原因で【怪刀を帯びし者】という異名を持っている。
「ここ3日なにもしていないのは問題だぞ、カモミール」
紅蓮の髪をポニーテイルにし、腰に剣を下げているのはハッカ。『カモミール小隊』の突撃隊長で、階級は伍長。一番リューン侵略に対し真面目にがんばろうとしているのだが、如何せん戦闘が先に頭に上がる。今は魔剣アスカロンを手に先陣を切り、戦闘を有利な流れにしている。
「ハイリスク・ハイリターンが一番の魅力でしょうね…ふふ」
漆黒の長い髪をなびかせ、これまた黒い衣服を纏っているのはベイジル。『カモミール小隊』の参謀で階級は曹長。噂では異例のスピードでかなりの地位まで行ったが、上層部のいざこざが原因でこの地位に納まっているらしい。医者兼会計係でもあり、かなり厳しいらしい。
「この間の依頼みたいにはらはらするやつがいいなぁ」
白銀の髪をヘアピンで留め、傍らには槍を置いているのはミント。『カモミール小隊』の一員で階級は二等兵。一見軍人らしくないお嬢さんだが、かなり戦闘では活躍するらしい。ムードメーカー的な存在になっていて、宿のアイドルとも言えた。
「そろそろ遠出の依頼に行ってみるのもいいかもな…」
深い紺色の髪と瞳に、濃い灰色のマントを羽織っているのはジンジャー。『カモミール小隊』の諌め役で、階級は兵長。カモミール、ハッカとは同期で、この小隊に組み込まれる前は隠された暗殺者部隊の一員であったと言われる。ただし、存在感が多少薄い。
「うん、それはもの凄く賛成だよッ!!」
狐色の髪と二対の耳が特徴的なのはマルパッチョ。冒険の途中で『カモミール小隊』に入隊した少女で、階級は三等兵。ある魔術師によって犬とのキメラになったという。犬の耳と人間の耳で情報を聞き分けるので、重宝されている存在だ。
「元気なのはいいが、ちゃんと任務の事も……」
と、心配になるクミンシード。しかし、カモミールはははは、と笑う。
「勿論、日々リューン侵攻の作戦を練っているさ。近々この妖刀をつかって
 『リューン市民愚民化計画』を行うつもりでいるんだ」
彼はそういいながら腰に帯びた刀を叩く。彼が持っている刀は妖刀と呼ばれる類で、この効果は『人の心の奥底にある欲望を呼び覚ます』というものだった。
(…まぁ、カモミールたちらしいと言えばらしいといえるが)
クミンシードは少し首を傾げる。カモミールがもっている妖刀の力を食らった事がある彼としては、『愚民化っつーより、オタク化だろ?』という突っ込みをしたいが、一応上官なんで黙っておく。
「…まぁ、やってみる価値はあるとおもうわ」
ベイジルがそういいつつ、楽しそうに笑う。その様子を見つつクミンシードはうーん、と首をかしげた。

 暫くして、食事が終わる。そしてカモミールが依頼を見て口を開いた。
「親父さん。
 この張り紙はずいぶんシンプルだけどいったい何なんだい?」
「ああ、しかも内容も護衛だしな。よくある仕事だ」
クミンシードはふむ、とうなって答える。が、娘さん…と親しまれるパプリカは首を傾げた。彼女は唯一オーベルテューレ軍とは無関係の、リューンの人間である。
「でも、ルーラルなんて街なんて聞いた事ないですよ」
すっごく田舎なんじゃないですか、と言いながら彼女は肩をすくめた。カモミールも頷き「それに条件付っていうのが気になる」と溜息をつく。実を言うとクミンシードも知らないのだ。
「ひょっとしたら…危険な依頼かもしれませんね」
ベイジルがぽつり、と呟く。
「まぁ、そのあたりのことはこの依頼主に直接聞いてみて判断すればいいことじゃないか?」
そう言われ、そうだな、と全員が頷く。
「とりあえず、話だけでも聞いてみるよ。クリウス商会に直接向かえばいいんだな」
ジンジャーが確認をするようにクミンシードの目を見る。
「ああ、そうだ。リューンのクリウス商会に直接行ってくれ」
場所は、わかるよな?と親父は全員に問う。
「うん。それじゃあ行ってくるよ!」
ミントは皆を代表してうなづいた。

 こうして意気揚々とクリウス商会へ足を運んだカモミール小隊。その背中を見送り、クミンシードは食器洗いをパプリカに任せると自分は二階にある宿舎の掃除をはじめた。

しかしこの時。ここにいる誰もが……あんな大騒動に発展するとは思わなかった。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
※作品名は敬称略です。すみません。
ども、天空 仁です。ええと最後のほうが『ヘイトマシーン』(作:a-system)の冒頭部分となります。つか、この6人で遊んだ場合のリプレイもどきをかきますわ。リューン侵略を目指すカモミールたちですが…まぁ、実のところ『ケロロ軍曹』(著:吉崎観音)がモチーフです。そのはずですが、多少変更部分などが出たのでそうともいえなくなってきたかも。

この話は冒頭と顔合わせといいますか、カモミールたちの紹介をメインとした序曲です。次回
からは本格的に『ヘイトマシーン』シリーズのリプレイを書いていきます。

ギャグでいけるかわからないが、案外難しいんですよね。
僕、ギャグセンスに自信がないーっ!
だからケロロにはもの凄く尊敬が。
よし、やろう。やったろう!!
天プラ(同じネタを繰り返す技法。タイミングが命?)でも何でもやってから!!

それでは今回はこれで。
ついにやっちまった感たっぷりな著者・天空 仁
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-07 23:08 | 札世界図書館 | Comments(0)

二週間お待たせしてさらにこれって・・・(フーレイ、内心で土下座)


冒険者の宿『白銀の翼亭』
その前にやってきた一人の少年は、まじまじと真新しい看板を見ていた。
「……看板だけ新しいな。じゃあ、新しい冒険者の宿なのか?」
「ええ、そうですね。親父さん曰く私が第一号だそうで」
ハーフエルフの男にそう言われ、少年はふうん、とネコの耳を一度振るわせた。小柄な身体に真新しい黒い外套を纏った彼の目は、その看板に釘付けになっていた。
「…しら…がねの……つばさ?」
「その通りです」
たどたどしく看板の文字を読み取る少年の頭を、男は優しく撫でてやる。少年は少し恥ずかしそうにうつむいたが、ちょっとだけうれしかった。

カードワースプライベートSS
『羽搏く翼が集うとき』(後篇)

「理想のパーティってどんな組み合わせでしょうか?」
不意に、ユインが呟く。宿にいる全員が顔を上げる。サクヤの登場によりすっかり怒気が萎えてしまったヘイストはとろけたチーズを挟んだパンを食べながら、
「まぁ、戦士、神官、魔法使い、盗賊がいるパーティじゃねーの?ソドムって兄さんが神官で俺が盗賊。あと魔法使いはサクヤとユイン、戦士は…エレックでOKじゃねぇ?」
とその場にいるメンバーを一瞥する。
「私は精霊使いですッ!」
ユインが頬を膨らませる。肌が白い所為か、少し紅潮しただけでもすぐにわかる。しかしヘイストは面倒くさそうに鼻を鳴らす。
「へっ、どっちでもいいじゃねぇか」
「よくありませんっ!第一魔法も種類が幾つもあり……」
ぱっ、と席を立って彼に詰め寄るユイン。それをエレックがとめようとしていると、カラン、とドアの鈴が軽やかになった。
「漸く帰ってきましたか」
今まで黙っていたバニッシュが瞳を細め、手を止める。そして、自然な動きで紅茶を準備した。サクヤが顔を上げ、入ってきた少年とハーフエルフらしき男に一礼する。
「おや? 私がいない間に新しい冒険者が来たようですね」
「サクヤといいます。以後よろしくお願いしますね」
サクヤが一礼する。たおやかな空気がふわりと広がり、それに彼もまた表情を綻ばせる。が、傍らの少年は少しだけ頬を赤くし、直ぐ彼の後ろに隠れた。
「大丈夫ですよ、クッレルボ」
「…あ、ああ……」
そういい、漸く顔を見えた少年は黒髪から愛らしい猫耳を覗かせていた。そして、マントからでていたこれまた可愛い猫の尻尾がふわっ、と揺れる。
「……俺は、クッレルボ。クッレルボ・ノワールという。ソドムに拾われて、暫く一緒に行動していた。……俺も、仲間にしてほしいっ」
少し緊張気味に、でも一生懸命にいうクッレルボ。その様子に瞳を細め、バニッシュは小さく微笑む。
「歓迎しますよ、クッレルボ。貴方は何に自分が向いているのか解らないといいましたね。ならば……これから模索していくといいでしょう」
そういいながら彼はカウンターからでる。そして、何時の間にやら持っていた古い剣を少年に手渡す。
「そのショートソードは?」
不思議そうにエレックが尋ねる。バニッシュは一つ頷きながら身を屈め、小柄な少年と瞳をあわせる。
「これは、私からのプレゼントです。この剣を使いながら考えてみることを進めます。ああ、勿論、みなさんにもプレゼントがあります」
彼は一度にこっ、と笑うと一度奥へと引っ込む。
「……一体、どんなプレゼントでしょう?」
ソドムの一言が全員の心境を語り、暫く待っていると奥から店主が色々なものを持って戻ってきた。どれもこれも古いが、丈夫そうな印象があった。
「ソドム。貴方には……恐らく宗派があっているかと思いますがロザリオを。
 ヘイスト。貴方にはこの指貫グローブを。サイズは恐らく合うはずですよ」
二人はそれぞれ手渡されたものをしっかり受け取る。古いロザリオは本物の銀なのか、鈍い輝きを放ち、指貫グローブはやや草臥れているもののほつれも無く、使いやすそうだった。
「ユインにはこのアミュレットを……懐に入れておいてくださいね。
 エレックには、このロングソードを……クッレルボの剣と兄弟剣です」
アミュレットは翼を模ったもので、美しいトルコ石が嵌められている。そして、古いロングソードはこれまた丁寧に手入れされたものだった。
「最後に。サクヤにはこのブローチを」
そう言って手渡されたブローチは、蝶を模ったものだった。鈍くも美しく光る蝶の細工に眼を見張る。
「……い、いいの?」
ユインの問いに、バニッシュが頷く。
「ええ。ほんの気持ちですこれから先、がんばって欲しいと思いまして」
バニッシュはそういいながらも、僅かに瞳を細める。嘗てそれを使っていた仲間たちは、今頃どうしているだろうか。そして、受け継いだ冒険者たちを見て、どう思うだろうか、と。全員がそれぞれの言葉で礼を述べ、バニッシュはそれに頷いた。

 しばらくの間、一同は貰っていたものを眺めたりしていたが…ふと、エレックが呟く。
「……ところで、パーティはこの6人で組むのか?」
「それが一番いいでしょうね。私たちは初心者ですが、チームを組めばうまく行くでしょう。職のバランスもいいですし」
ソドムの言葉に、クッレルボとユインが目を輝かせる。
「それがいいぜ。俺は賛成!」
「私もですわ。ヘイストが少し気になりますけれど」
ヘイストは苦笑しながらも頷き、一気に葡萄酒をあおる。
「盗賊がいなきゃ罠は壊せない。まぁ、付き合ってやるよ」
「皆で鍛えていけば、生き残れるさ」
「冒険、楽しみになってきた!このメンバーでならうまく行く気がする!」
エレックとサクヤも頷きあい、全員がにっこりと笑って決断した。
「このメンバーでパーティを組みます。親父さん、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく!
 そして…リーダーとパーティの名前も決めないといけませんね」
その言葉に、全員が、なぜかソドムを見つめる。
そして、ハーフエルフの青年はきょとん、として全員の顔を見返した。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(後書きはしばらくお待ちください)
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-29 22:07 | 札世界図書館

・・・・・・・・・・っ(フーレイ、実はデータが1回飛んだ)


 『白銀の翼亭』に程近い小さな教会。そこに小さな少年がいた。真新しい黒い外套で身を包み、暇そうに会談に腰掛けている。しばらくして、一人の青年がかけてくる。赤黒い外套を揺らした彼を見、少年は顔を上げた。
「あれ? ソドム、冒険者になれなかったの?」
「ちゃんとなれましたよ。…それより、貴方にも着ていただきたいのです」
その言葉に、少年は目を丸くした。

同時刻。『白銀の翼亭』の真新しい看板を見つめ、少女は一つ頷いた。
「お嬢様、本気ですか?」
傍らの獣人族…しかも狼…の女性が問いかける。それに、少女は微笑んだ。
「当たり前です。でなければ、お父様と喧嘩してまで旅に出ませんわ」

そして、もう一人。細身の少女が冒険者の宿をいろいろ訪ねていた。
「……どこも魔導士は必要でないようですね。ふう、こまったものです」
少女は小さくため息をつき、再び歩き始めた。

カードワースプライベートSS
『羽搏く翼が集うとき』(中篇)

 ソドムが戻ってくるのを待ちつつ、ヘイストは1人パンを食べていた。新鮮なチーズを軽く火で炙ってもらい、はさむと香ばしい匂いがし、食欲がわく。
「やっぱ美味いよなぁ、これ。うん、新鮮なものが食べられるのは幸せだ」
「そう言ってもらえると嬉しいな。旅の途中じゃ、携帯食が多いから…」
バニッシュはちょっとだけ苦笑していると、再びドアが開く。軽やかに響く鈴。それに二人は顔を上げる。
「ソドムか?」
ヘイストの問いに、入ってきた人物は首を横に振った。白い髪と肌、赤い瞳が目立つお嬢様と、灰色の毛並みと赤黒い瞳が特徴的な狼の獣人族らしき女性だった。首を振ったのは少女である。
「ここは冒険者の宿ですね。……私を冒険者にしてください!」
少女の言葉に、バニッシュがちょっとだけ目を丸くする。いきなりだったので、ちょっと驚いているのだ。しかも、どこをどうみても良家のお嬢様、なのである。
(依頼人、という雰囲気がするけれど……)
バニッシュはそんな感想を持ちつつも、少女をみる。
「…お名前は?」
「私はユイン・バリアスといいます。勉強のためにも、冒険者になりたいんです!」
ユインと名乗った少女は赤い瞳を輝かせてバニッシュにいう。その傍らで、狼の獣人族であろう女性が口を開く。
「名乗り遅れました。私はエレック・レイヴンといいます。ユインさまの従者をしております」
エレックと名乗った女性は恭しく一礼した。身の動きは洗練された戦士のそれだ。第一に、暗い紅の瞳はどこか肝が据わっている雰囲気を持っている。どこかソドムと似ていた。
(この従者がいれば、大丈夫かな)
バニッシュは小さく微笑み、宿帳を用意する。そして、手渡そうとしたそのとき、今まで黙っていたヘイストが口を開いた。
「お嬢様ねぇ。……すぐに逃げ出さなきゃいいけれど?第一に冒険者なんて乱暴な職業、よくご両親がゆるしたな」
「貴様、お嬢様を愚弄する気か?」
ユインが何か言おうとするよりも早く、エレックが静かに答える。平静をよそっているのだろうが、僅かに毛並みが逆立っているようで、怒っているようだ。
(彼女にとって、ユインは主。主をけなす奴は赦さない、か?)
バニッシュが黙ってみていると、ヘイストが席を立つ。そして値踏みするようにユインとエレックを見……へへ、と軽薄な笑みを浮かべた。
「へぇ、そのまだまだ甘いミルクの匂いがするお嬢ちゃんと冒険ごっこ?おふざけじゃねーよ!」
「なんですって!」
ユインがその白い肌を真っ赤にして怒る。同時に髪で隠れていた首筋が露になり、雪の文様が見えた。どうやら、この少女は精霊術師らしい。同時に冷気が流れたが、それをとめたのはエレックだった。
「その言葉、聞き捨てならん……。お嬢様はよりよい領主となる為、冒険者として生き、色々学ぶことを選ばれたのだ。私はその姿をそばで見たい、とおもってここにいる。それを『冒険ごっこ』だと…?ふざけているのはそっちだろう!!」
彼女もユインを護るように一歩前に出る。そして睨みつけるヘイストの目を見てちいさく笑う。
「それとも何か? お嬢様のような愛らしい少女がいると色々妄想してしまうから落ち着いて依頼が受けられない…とでも?」
「ぬかせ、犬っころ。俺はメスガキも犬もお断りなんだよ」
ヘイストは鼻で笑って更にエレックを睨みつける。二人の間に火花がちり、一触即発といえる雰囲気だ。それに慣れているバニッシュはすこしおろおろするユインを椅子に座らせる。
「も、もしかして拙いことになっているのでは・・・」
「ああ、最初はこういうこともあります。一度ぐらいぶつかってもいいでしょう。喧嘩でしたら裏庭でおねがいしますね。真新しいテーブルとかにさっそく傷をつけるのはいやですから」
丁寧に紅茶を注ぎつつ、静かにそういうマスター。二人は互いに頷きあう。
「丁度いい。……表に出ろ、犬っころ」
「ああ、いいぜ……茶色頭の鼠め」
そう言って二人が外へと出ようとすると、止める者がいた。いつ入ってきたのか、バニッシュやユインにもわからなかった。一人の少女が茶色い帽子を押さえながら小さく微笑む。
「お二人とも、喧嘩はいけませんよ?」
その声で、全員が少女に注目する。茶色い帽子にゴーグル、茶色いローブ姿の少女はやんわりと微笑んで一礼する。
「私はサクヤ・シグレと申します。冒険者になりたいと思い、あちこちの宿を回っているのですがどこも魔導士はいらない、と追い出されてしまいました。こちらはどうでしょうか?」
急にそう言われ、バニッシュはすこしきょとんとしつつも宿帳を開く。
「今日オープンしたばかりの宿ですから、魔導士は1人もいません。歓迎しますよ。もちろん、そこの盗賊さん、戦士さんと精霊術師さんも」
「「はぁ……」」
なんか、サクヤという少女が現れただけであたりのムードが和やかになっていた。険悪なムードだったはずのヘイストとエレックもまた、怒気を抜かれている。
「この宿のメンバーとなったからには、お互いに顔をあわせることになります。なかよくしましょう?」
そういい、やんわりと微笑むサクヤに…二人はただただ一つ頷くしかなかった。なんか、喧嘩する気が萎えてしまって……。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……すみません、遅れました。
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-01 18:33 | 札世界図書館 | Comments(0)

リプレイ、この宿では一応やってるけど(バニッシュ、ちょっち…:汗)


 真っ青な空の下、一人の青年が嬉しそうに看板を見つめている。少し古い宿に似つかわしくないような、真新しい看板。けれども、青年にとってはそれが新しい夢の第一歩なのである。
(この宿に、どんな冒険者が集まるんだろう? どんな依頼が来るんだろう?)
新しく冒険者の宿を経営することにしたこの青年は、元はただの雑貨屋だったのをこつこつと半年かけて改造し、今日、漸く開店させることができたのである。
「よーしっ、がんばるぞっ!!そして、夢のお手伝いをするんだ!!」
青年は両手を天に突き上げ、にっ、と笑った。

彼の名前は、バニッシュ・ローベント。
嘗ては『黄昏の剣亭』に所属した有能な軽戦士であった。
通り名『空舞のバン』

そして、この宿の名は……『白銀の翼亭』

カードワースプライベートSS
『羽搏く翼が集うとき』(前篇)

 その日は、本当によく晴れていた。バニッシュは一人宿のカウンターで食器を拭いている。1年ほど前までは自分も宿の親父さんに「ツケ払え」とかいわれつつもいろいろ助けてもらいつつ冒険者生活をしていた、と思うとなんだか懐かしい気分になる。
(そして今日からは僕がみんなの親父さんになるんだな)
綺麗に洗った食器はみんな、食器を作っている友人から買った者だ。店の改造も大工である友人の力を借りておこなった。ここまでこれたのは友人達のお陰…それも、冒険を当して知り合った…である。
(みんなのお陰でスタートラインにつけた。だから、今度は僕が……)
なんて思っていると、扉が開いた。かららん、と軽やかに響く鈴の音。
「ああ、いらっしゃいませ!お泊りですか?」
バニッシュはさっそく声をかける。自分も、冒険者への第一歩を踏み出したとき、こんな風にいわれたものである。入った来たのは自分より10歳ほど年下だろう青年だ。
「いや、冒険者になりたいと思いまして……」
彼は深い紅の瞳を細めてそう言った。僅かに桃色がかった、癖のある金髪は顎にかかるかかからないか、という微妙なラインで整えられている。外套は暗めの紅。そして、僅かに見えた十字架は聖北教会の信者がよくしているものであった。
(信者さんにしては、衣服が調いすぎている。熱心な信者さんか、僧侶崩れ?)
なんて考えていると、彼は不思議そうな顔をした。
「店主殿、いかがなされましたか? ここは冒険者の宿なのですよね?」
「ええ。ただ、今日開いたばかりで。そして、貴方が始めてのお客…しかも、冒険者志望なんで、嬉しくて…」
バニッシュの言葉に、青年は少しだけ目を丸くした。僅かに現れた耳はやや尖っている。ハーフエルフらしいな、と思っていると青年が口を開いた。
「そうでしたか。なんか、嬉しいですね。
 名乗り遅れました。私はソドム・スカーと申します。来月で30歳です」
「…えっ?」
今度はバニッシュの目が丸くなる。30歳…今のバニッシュの年齢も、30である。さすがハーフエルフ。その年齢に見えない。
「今まで山奥の修道院におりましたが、色々あって僧籍をはずされました。しかし、信仰は捨てておりません。これからどうしようか、と考えていた矢先冒険者になってみたら、とアドバイスを貰いまして、こうして…」
ソドムと名乗った青年は笑顔でそう言ったものの、僧籍をはずされた、ということは物凄く大変なことがあった筈、とバニッシュは認識した。一見貴族の御曹司にも見えそうだが、その瞳は酸いも甘いも飲んだ『賢者』の目。そんな目をしている人間を、バニッシュは2、3人ほど知っている。
(僕が冒険者になったときみたいに、いろいろ言うのは無粋かも)
そう思った彼は真新しい宿帳をソドムに手渡す。
「そうでしたか。…新しい第一歩を踏み出すんですね。僕と同じですね。それじゃあ、これに名前を…」
「はい」
ソドムは一つ頷き、記帳しようとした…が。
「ふぅん、いい雰囲気じゃん」
そんな軽薄そうな声がした。二人が声の方向を見ると…茶色の髪と瞳をした、若干痩せた青年がそこにいた。
「いらっしゃいませ、ようこそ。お泊りですか?」
「いや、冒険者に。そこの兄さん、戦いの術は心得てるみたいだけどよ……最初のうちはパーティを組んだほうがいいぜ?」
そう言ってバニッシュとソドムに笑いかける。彼はゆっくりと歩み寄ると、ぽかん、としているソドムから宿帳をひったくろうとした。が、気づいたのだろう。ソドムはそれを胸に抱く。
「私が先です。順番は、守ってくださいね」
「真面目なことで。……いいぜ、待つよ」
そういい、青年はカウンターの椅子に腰掛け、バニッシュに3枚の銀貨を渡す。
「俺とこっちの兄さんに葡萄酒とパンとチーズを。お近づきの印に」
「そ、そんな…いいですよ。私の分は私が」
宿帳に書きながら、ソドムがいう。が、バニッシュは二人分の食事を用意する。
「まぁまぁ、初めての冒険者ですからこれぐらいサービスしますよ。…で、貴方は?」
「俺? ヘイスト・ヘイズル。ライラック生まれで盗賊を生業にしている」
ヘイストと名乗った青年は出された葡萄酒を一口のみ、そっけなくそう言った。記帳の済んだソドムはふむ、といいながらヘイストに手帳を渡す。
「そういえば私、そこにある陰間茶屋に売られる予定でしたね。まぁ、信仰に目覚めて修道院に行きましたが」
何気なくディープな事を呟くソドム。その言葉にも動じず、バニッシュはにこにこと二人のゴブレットに葡萄酒を注いだ。
「まぁ、野暮なことはいいっこなし、という事で。そこの盗賊さんとパーティを組んではどうです?」
「パーティ…盗賊は心強いですね。しかし私は戦闘術が乏しいですから、戦士がいてくれるといいですねぇ…」
そこまでいい、ソドムはぽつり、と呟いた。
「丁度いい子がいます」

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とりあえず、前編。 …更新する日に書き上げちまったよ、これ(涙)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-25 22:04 | 札世界図書館 | Comments(0)

遅くなりましたが、ヒイロの邂逅編(ジウ、名前のモトネタは慈雨)


忘れはしない。
あの白い世界で包まれた、確かなぬくもりを。

白い雪が、ふわふわと森に降り注ぐ。思ったより早く降り始めたそれに、ジウは表情を曇らせた。備えはしているものの、今年の冬はどうやら長引きそうだ。果たして、足りるだろうか。
「……ジウさん?」
「ジウでいいですよ」
村へ戻る道の途中、ジウは手を引いたヒイロにそういい、瞳を合わせた。どこか虚ろな緑に彼の胸は激しく軋む。
「ヒイロ。今日から貴方は私の子供です」
そういい、微笑んで頭を撫でようとした。が、ヒイロは身を竦め怯えるような仕草をする。思わず手を引っ込め、しばらく様子を見たが、少年はどこか恐々とジウを見つめる。
(少し、時間が必要ですかね)
彼は、内心でヒイロの両親に怒りを覚えた。この子はもしかしたら……。

カードワース・プライベートショートショート
『白妙と黒妙の絆』 (後編)

家に戻ると、ジウの妻・ベルは驚いて…その次に優しく笑みを零した。人買いに売られた子供を連れてくるのは良くあることだったからだ。
「その子が、新しい家族なのね。名前は?」
「ヒイロ、です」
黒髪の少年はそういい、一礼する。が、フードは取らないままだった。それにジウとベルは顔を見合わせ、彼女は屈んでヒイロと目を合わせた。
「ヒイロくん、家の中ではフードを取りましょうね」
「……でも……」
「大丈夫。ここにはいろんな種族の人がいるの。ハーフエルフだからって何も言わないわ」
その言葉に、ヒイロの目が丸くなる。ベルは笑顔で頷き、ジウもまた頷いて頭を撫でる。優しい感触がする。それに、何故だろう、耳の先端まで赤くなって、ゆっくりフードを外した。さらさらした黒髪から現れた、やや尖った耳。それには幾筋の傷が見えた。
(この傷を、見られたくなかったのもあるんでしょうね)
耳に手を伸ばし、そっと傷をなぞるとヒイロの表情が少しだけ痛そうに歪む。それでも、ジウはそっと傷をなぞった。既に治ってはいるもののどうやら自分で傷つけたあとのように思えた。
「でも、父と母は僕の耳が尖っているのが嫌いでした。だから、丸くすれば……。最初はそう思ったんです」
感じたことを察したのか、ヒイロが言った。その声に感情は無い。ジウの指が止まる。そして、両手で頬を包み込んだ。
「いいですか、ヒイロ。ここではもうそんな事をしなくていいんです。キミはここの子供。この村の仲間です」
その言葉に、ヒイロは暫くの間どう反応すればいいのかわからない、といった様子だったが……やがて小さく頷いた。

 ヒイロが孤児院へやってきて一週間が過ぎた。孤児院の子供達は皆、ヒイロに興味を持った。が、まだヒイロは心を開けずにいた。初めて大人数の子供を見たのか、少し驚いているようにも、怯えているようにも見えた。
「ヒイロ、そこにいますか?」
ヒイロが一人部屋の隅で本を読んでいると、ジウがやってきた。ヒイロは未だにフードを被ったまま過ごすことが多かったが、皆と一緒にいるときはフードを取っていた。今も、フードを脱いではいたが髪で耳を隠していた。
「ここには、慣れましたか?」
「………」
ジウの問いかけに、ヒイロは首を横に振る。そして小さな声で
「どうして、僕なんかをここに?」
と問いかけた。ジウは少しだけ考えていたが、やがてそっと……言葉を紡ぎ始めた。
「放っておけなかったから、です」
そういいながら、ヒイロの横に座る。と、少年は不思議そうにジウを見た。
「あの時から、ずっと思っていました。家を守るために、私は売られたのに、貴方は私をここに連れてきた。それでは、契約違反に……」
「人身売買は……やってはいけないことですっ」
どこか強い口調で、ジウが言う。暖かな暖炉の空気が冷えるような鋭い目に、ヒイロは身を固くして竦め、縮こまった。その様子にジウはしまった、と思った。怯えさせてはいけない。
「……ごめんなさい、ヒイロ。私は、人身売買が行われることが嫌なのです。そして、売られていた貴方を見ていられなくなって。全くの偽善もいいところです。でも、私は、貴方を放っておけなかった」
「わからない」
ヒイロは被りを振る。
「どうして、僕なんかに優しくするんですか?なにか企んでいるんですか?どうして僕を抱きしめたり、頭を撫でたりするんですか?」
「それはね、ヒイロ。キミが愛しいからですよ」
ジウはそっと、ヒイロの目をみて答える。
「子供はね、愛されて育てられる存在なんです。たっぷり抱きしめられて、たっぷり頭を撫でられて。暖かいご飯と、やさしさと、少しの厳しさと……。それが、必要なんです」
そういいながら、ジウは自分が泣きそうになっている事に気が付いた。そして、ヒイロは余計にわからない、というような顔になる。その瞳にも、涙の粒が膨れていた。
「どうして…?僕は…家を守るために売られたのに…。僕は…」
静かに、白い頬を涙が伝う。ヒイロは不思議そうな顔のまま、ジウを見上げる。
「どうして、みんな、やさしいのですか?僕は……僕は……」
「いいんですよ」
ジウが答える。
「誰だって、幸せになっていいんです、ヒイロ」
その言葉に、ヒイロは漸く笑みを零した。それは、本当に愛らしい笑顔だった。

 僕は、小さいときから屋敷の奥に入れられていました。お父様も、お母様も、お兄様にばかりいろいろしてくれて、僕には使用人と爺やだけでした。僕はお兄様のようにお父様やお母様に抱きしめられたかった。頭を撫でてもらいたかった。だから、勉強を始めたのです。けれど、何時までたっても、そうしてくれませんでした。だから、家が危ない、と知って…私は売られようと思いました。ハーフエルフは高く売れるときいていたので。これで、やっとお父様もお母様も僕を……だから、幸せになってはいけないとおもっていました。

でも、違うんですね?

ヒイロは、黙ってジウに抱きついた。ジウはそっと抱きしめ、やさしく頭を撫でてやった。
「やさしくするのは、当たり前です。あなたは大切な家族なんですから」
泣き続けるヒイロをジウは抱きしめつつける。
(この子は、心が凍っていた。寂しくて仕方が無かったのに、麻痺していた……)
だから、戸惑い続けていた。けれど、今変わった。この子は、漸く素直になれた。手ごたえを感じたジウもまた、涙を零す。
「我慢しないでください。あなたは私の子供ですから。大切な…大切な…」
抱きしめながら、ジウはいう。ヒイロはうん、と小さく頷き……一つのことをきめた。

もう、あの名前は名乗らない。
今日から僕は、『ヒイロ・セイレン』だ。
ここの子供たち同じように、名乗ろう。
暖かさをはじめてくれた、この人のようになれるように。

   *   *   *   *   *

だから、そう簡単に話したくない。
そんな思いが、あった。今よりも頑なで、可愛げのない子供。学問を鎧にして、凍りついた心を守ろうとしていた自分なんて恥ずかしい。何より、『やさしさ』という絆を…養父との絆を簡単には明かしたくなかった。
(今の苗字が、私の誇り。ジウ・セイレンの息子である、その事が私の誇りですから…)
ヒイロはくすっ、と笑い……一度だけぎゅっ、と自分を抱きしめた。

(終)

・・・・・・・
あとがき
 なかなか納得のいくものが書けなかったので、遅くなりました。フーレイでございます。漸く心を開き始めた幼少のヒイロ。このことがきっかけなんですねぇ。成長後、孤児院と学院をいったりきたりという生活でしたが、今では冒険者。そのきっかけもいつかは書けるならばなぁ、とか考えています。

 そんなジウも実は元冒険者(前に話したかもしれないけれど)。それが吟遊詩人に歌われているぐらいですからねぇ……。

……あ、微妙に長い(汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-12 21:36 | 札世界図書館 | Comments(0)

良く考えれば、奴の過去もディープ(ヒイロ、実は売られてた)


 がたがたと軋む馬車の中、少年はただ呆然と流れる風景を見ていた。季節は冬。草花は枯れ、冷たい風が頬を弄る。強風が、細い身体を揺さぶって纏っていた襤褸をどかす。
-現れたのは、曇り空に映える白い頬。
少年は慌てて襤褸を被ると、興味なさそうに景色を眺めた。
(これから、どこで使われるんだろうか?どこだっていい。ぼくはこれでよかったんだ。これで、みんな助かるんだ)
曇りのない、けれど光のない、どこか深い泉を思わせる瞳。
それは静けさを孕んだ緑の瞳だった。

カードワース・プライベートショートショート
『白妙と黒妙の絆』 (中編)

「ねぇ、ヒイロさん。ジウさんについて教えてほしいんだけど……」
「何故?」
クインベリルに問われ、ヒイロは不思議そうな顔で言葉を返す。それに少女はえっ、と目を丸くした。
「それは、伝承に歌われる人ですもの。興味がありますわ」
「ただの、優しいハーフエルフの男性でした。それだけですよ」
ヒイロは小さく苦笑して断る。紅茶を口にし、少し頬を膨らませる少女を見ていると、幼い頃の自分を少し思い出す。
「まぁ、いいたくなかったらそれでいいさ。俺たち冒険者はそういう奴が多い。我慢しろ、クインベリル」
物言う猫、パールがなだめるもクインベリルは納得がいかないような顔をしている。ヒイロの口元が緩んだのを見つめながら、むぅ、と唸りスカートの裾を握り締めていた。傍らで、白猫が心配そうに見つめている。
「でも、本当ですよ。伝承については私も巣立ってから知りましたし。私にとって養父は心優しい人だった。ただそれだけですよ」
苦笑し、ヒイロはそういいつつクインベリルの頭を撫でる。耳を澄ますと僅かだが雨が降り始めている。
(そう簡単には、話したくありません。私の宝ですから。それに……)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 それは、ジウが『歪の翡翠』に暮らして50年がたった日のことだった。その日は妙に寒く、孤児院の子供達も外で遊ぼうとしなかった。
「……霜の精霊たちが暴れていますか」
外を出るなり、ジウは緑の瞳を細めて呟く。彼の言うとおりで、庭は霜柱だらけだった。比較的温暖な気候であるはずの碧落の森にしては珍しいことだ。彼の故郷である山間の小国では冬場、毎日のことだったから見慣れてはいたが、この集落に着てからは珍しい。
「……そろそろ、買出しに行きますか。今年の冬は厳しくなるかもしれない」
一人呟くと、彼は部屋へと戻り素早く身支度を整える。そして後からやってきた妻ににこりと微笑んだ。
「……今から、少し遠出する。一週間以上かかるかもしれない」

 ジウはなれた足取りで道を歩いていた。買い物の為にポートリオンまでいこうかと考えながら、あたりを見渡すと冷気が身体を包み込む。
(今年は何かがおかしいですね。例年より寒いが……何が起っているんでしょう?)
頬を撫でる風は酷く冷たい。外気にさらされた耳が痛く、何度もこすりながら痛みをごまかした。この痛みが、酷く懐かしい。
(幼い頃は、当たり前でしたね。毎年、冬が来るとここが痛んだものです)
僅かに口元をほころばせると、僅かに空気が震えた。静まり返っていたはずの森に、地面の振動が伝わる。
(?)
不思議に思っていると、馬の蹄と何かが軋む音が響いてきた。どうやら、馬車のようだ。ジウの瞳が細くなる。この道を馬が走ることは酷く珍しい。『歪の翡翠』に暮らす者は馬を使うことが無く、あまり聞かないのだ。稀にやってくる商人ぐらいだろう。しかし、稀に人買いがやってくる事もあり、僅かに身を強張らせた。
「……とまってくれ」
近づいてきた馬車に、ジウが手を振る。と、馬車は止まった。御者は胡散臭そうにジウを見る。冷たい風が木々をざわめかせる。
「ああ、なんだ兄ちゃん。悪いが今急いでるんでね」
「……何処へ向かう?樹海を荒らすものならば容赦はしないぞ」
ジウの瞳が、音も無く研ぎ澄まされる。と、御者は苦笑した。
「荒らすもなにも、俺はただ商品を届けるためだけにここを通り抜けるだけだ。安心しなよ」
「……ふむ。その商品とは?」
そういいながら、不思議そうに首をかしげるジウに、御者は
「何でもいいだろ?行かせてくれ」
と言って馬を走らせようとした。が、馬が動かない。そして、ジウの姿が無い。不思議に思っていると、ジウは勝手に荷台をあさっていた。
「お、おい!!てめぇ、何を勝手に・・・」
「人の売り買いか」
ジウが荷台から一人の子供を抱え上げていた。襤褸を纏った、一人の少年。それ以外の荷物は携帯食と葡萄酒だけだった。少年の足には商品の証である傷と、文様が刻まれている。
「……この国は初めてか? この国は人買いを見つけ次第捕まえて騎士に引き渡すのが決まりでね」
その言葉に、男の頬が引きつった。

 結局、ジウは男を見逃す代わりにその少年を引き取ることにした。元々この国の住人達がエルフやドワーフ、ハーフエルフ…という特性ゆえに、人買いには敏感らしい。ジウもまた、何度か人買いから商品とされた人たちを解放したことがある。
(一旦村に戻るかな)
小さな村の酒場で、ジウは引き取った少年と向かい合いつつ思った。やせ細った少年の目に輝きは無い。ただ、何かを悟ったような瞳をしていた。10歳ぐらいの子供にしては、大人びすぎていた。
「………?」
「……私はジウ。『歪の翡翠』で妻と孤児院を営んでいるんです。キミは?」
襤褸を捨て、自分の纏っていた外套を与えた少年にジウは聞く。と、少年はか細いながらもかすれることなくヒイロです、とだけ名乗った。白い肌にさらさらとした黒い髪。けれど、その顔は中性的ではない。少年独特のはかなさを纏ったその顔に、僅かにだがジウはきょとんとなる。そして、ある事に気が付いた。
「フードみたいにしているけれど、まだ寒いですか?」
そう。ヒイロと名乗った少年は外套を頭から被り、胸元でぎゅっと握っている。頼んだロスティ(ジャガイモを使った料理)や温かいお茶にも手をつけず、ただただジウを見つめて首を振るだけ。
「なら、頭からはずし・・・・」
そこまでいって、ジウは言葉をとめた。普通、フードは室内で取るものである。が、時折室内でもフードを被っている人はいる。その大半が顔や耳を隠しているのだ。そして、その少年もまた……。ジウには、心当たりがあった。
「もしかしてキミは、ハーフエルフなのですか?」
その言葉に、小さく頷くヒイロ。そして、小さな声で
「だから、両親はぼくを売ったのです。……没落しかけた家を守るために」

それで、家族が幸せならぼくはそれでいい。
それで、アーヴェ家が没落しないのならば…それでいい。

ヒイロの言葉に、ジウは席を立ち、ぎゅっ、と少年を抱きしめた。

(続く)

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来週まで続きますよ。
続・後付設定万歳なヒイロのSSでございます。

ヒイロのクーポン「高貴の出」と「都会育ち」について。
 元々ヒイロはある貴族の子で、生まれもポートリオンです。が、両親は人間なのにやや耳がとがったハーフエルフとして生まれてきた為、屋敷の外には出されず表向き死産ということになっていました。ヒイロは幼い頃から学問に興味を持ちました。それは「賢くなったら父上も母上も僕に目を向けてくれる!」とおもったからです(彼の兄は幼い頃から学問をしていて、両親も教育熱心でしたし)。が、両親はヒイロに見向きもしません。

 しかし、とあることがきっかけでヒイロの家は没落へと追い込まれます。色々策を練った挙句、両親は犯罪と知りながらハーフエルフであるヒイロを売り渡したのです。ヒイロは気高い人間で、「名誉こそ命」を持っています。家名を自分が売られることで守られるならば、それでいいと思い彼は反抗せず、売られることを黙認します。家族の温かみをしらなくても、学者を沢山排出したその家を守りたい。小さな誇りが少年を支えていました。

 後編はヒイロが元の苗字『アーヴェ』を捨て、養父・ジウが持つ『セイレン』に変える話がメインになるかと……。

 読み返すと、ヒイロもディープな過去を送っているなぁ、おい(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-03 19:46 | 札世界図書館 | Comments(0)

今度はヒイロの話です、勢いで(ヒイロ、養父は伝承の人)


 静かな闇の中で、一人泣く者がいた。
 それは少し痩せた、若い白髪の青年だった。
 ただひたすら、その瞳から涙をこぼし続けていた。

カードワース・プライベートショートショート
『白妙と黒妙の絆』 (前編)

「何故、あの二人を結んでくださらなかったのですか…」
彼はか細い声でそう言った。そして、震えながら天を仰ぐ。
「僕はどうなってもかまわない。そう言った筈なのに」
その緑の瞳には、何も写らない。胸にあいた大きな穴はドンドン広がるようで、このまま千切れて死んでしまうかもしれないほど、苦しかった。

 彼は、捨て子だった。物心付いたときには孤児院におり、白い髪が原因で他の子供達から気味悪がられた。しかし彼自身は欲が無く、涙脆く、心根の優しい子供だった。

 そんな彼は十三になるとある屋敷に仕えることになった。黙々と雑用をこなし、誠心誠意主に尽くすことで主や使用人たちに認められた。それだけで、幸せだった。けれど、年頃になった時。何かが足りなくなった。

彼は、一人の娘に恋をした。

それは主の娘だった。しかし叶う事は無い、とはっきりわかっていた。確かに、身分違いではあった。それ以前の問題で、令嬢には既に恋人が居たからである。彼女の恋人は、とても優しい人で、聡明な騎士だった。彼は、確かに嫉妬もしたが……全てを飲み込んだ。そして、思いを告げた上で令嬢に誓いを立てたのである。

『僕は、貴女と貴女が愛する人を守ります』

それなのに、二人は引き裂かれた。令嬢は政略結婚のため国王のもとに嫁がされ、騎士は策略に嵌められて命を落とした。令嬢もまた病でこの世を去り、何もできなかった彼は絶望した。助けようとあの手この手を駆使したが、彼もまた同様に策に嵌ったのである。屋敷を追われ、何もかもを失った彼は、一人彷徨っていた。

「……どうして……」
いつの間にか、彼はその場に倒れていた。緑の瞳に辛うじて宿っていた炎も消え、曇った世界を見つめていた。行く筋もの涙の跡をそのままに、ただただ彼は嘆くばかりだった。

*   *   *   *   *   *
「……なんだよ、このヘヴィな展開」
「こういう物語なんです」
ここは冒険者の宿『水繰の剣亭』。その一角で一人の少女が愛用のギターでもの悲しいメロディーを奏でながら、白猫の問いに答えていた。吟遊詩人の少女、クインベリルに物言う白猫のパールはけっ、とはき捨てる。
「そーいうのは女の子たちに受けるんだよなぁ~。悲恋系ってやつ?」
どうやら、彼はこういう物語が嫌いらしい。
「違います。別の大陸から伝わった『白妙の旅人』って物語です。これはその冒頭部分にしか過ぎません。この後、主人公は自分がハイエルフと人間のハーフである事を知らされたり、一人の子供を託されたり、旅に出たりするんです」
クインベリルはそういい、少しうっとりした顔でギターを抱きしめる。
「ああ、『白妙の贖い人』……ジウ様……」
「! ジウを知っているのですか?」
急にそんなことを言って来る者がいた。たまたま遊びに来た『静寂の鏡亭』所属の冒険者、ヒイロである。彼はハーフエルフであり、彼が所属する冒険者チーム【ドルチェーズ】では策士的な位置にいる。
「…まぁ、私は仲間からこの話を教えてもらっただけですし」
「お前、このジウって奴をしってんのか?」
パールが何気ない調子でヒイロに問う。と、彼は一つこくり、と頷いた。
「知っているも何も…そのジウは恐らく…私の養父です」
そう言ったヒイロは、どこか悲しそうな目で小さくため息をついた。

(続く)

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後書き
なんとなく思いついた物語を書いてみたフーレイです。

 …後付設定万歳、なノリで見切り発車なヒイロの過去話スタート(今回は微妙にジウの物語だけだけれどもさ:汗)。本来はシオンがやってきた経緯を書こうかなとか思っていたけれど、食器を洗っていたらクインベリルが語ったような物語がふっ、と湧き出たのですよ。あと、微妙にヒイロがシビアな性格になった原因もちょいと絡んでおります。ジウの物語とヒイロの過去が絡むような書き方になると思いますが、まぁ、期待しないでね(汗)。あと、ジウが愛した女性とその恋人の話が微妙に何かに似ている気がしたが、違いますからね(滝汗)。

多分、2、3週間で終わるかと。

あと、イメージは『花帰葬』って曲だったりする。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-27 17:34 | 札世界図書館 | Comments(0)