ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:札世界図書館( 58 )

お待たせしました…なのかな(汗:カモミール、嫌な予感)


-アーシウム・趣のある屋敷。
 そこで、黒髪の女性と羽帽子を被った青年がなにやら話している。青年のほうは一目見ただけで人間ではない、とわかるだろう。黒髪の女性はなにやら食べ終わった所だった。丁寧に口をナプキンでふき、食後の紅茶を口にする。
「相変わらず美味しいわ。さすがツァルトね」
「ありがとうございます、ベイジルさん」
ツァルトと呼ばれた青年は僅かに微笑み、ベイジルと呼ばれた女性もまたにっこりする。が、彼女はすぐに真面目な顔になった。
「それで、話というのは……」
「ラッセンの息子である貴方だからこそ、のお願いがあるの。これの解明をお願いしていいかしら?」
ベイジルはそういうと布の包みをテーブルに上げ、広げる。その中身を見たツァルトは若干目を見開き、息を呑んだ。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:1 (著:天空 仁)

「こ、これは……技巧ですね」
「ええ。ある組織が作ったものよ。研究のために倒したスクラップを持ってきたのだけど…」
機械の残骸を手に取り、ツァルトとベイジルはまじまじと見つめる。そして顔を見合わせた。
「どうやら、私や、兄弟達とは違うようで…」
「ええ。貴方達とは違って、殺戮のために作られた人形ですもの」
彼女の言葉に、ツァルトの表情が曇る。僅かに唇をかみ締めたようにも見えるその顔にベイジルは瞳を細める。
「悲しいですね。こんなものが作られるというのは」
ツァルトの言葉に頷きつつもベイジルは小さく呟く。
「私は、カモミールたちと一緒にそれを倒してきたの。これのほかに大きなやつもあったわ。ピンク色のヤツは倒せなかったけれど…」
「そうですか……」
「そして、もしかしたらその組織が……貴方を狙うかもしれない。だから…」
ベイジルがそういったそばから、一人の女性が現れる。白い髪に黄緑の瞳、健康的に焼けた肌が印象的な、細身の女性である。
「ベイジル、遅くなってすまない。ツァルト殿、はじめまして」
そう言って、彼女は二人に頭を下げる。
「この方は?」
「そうね…。研究と護衛の為にと思って呼んだの。彼女はサイボーグだから、半分は貴方と同じとも言えるわ」
ベイジルの言葉に、女性は少しだけ苦笑する。ツァルトがふむ、と興味深そうに見ていると彼女は少しだけ頬を赤くして口を開いた。
「そうやって見られると、少し照れてしまう。……名乗り忘れていた。私はオーベルトューレ所属の冒険者で名をローレルと申すものだ。以後よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ツァルトは一礼し、小さく微笑んだ……。

数日後・『オーベルトゥーレ』
「……と、いう訳で念のためにローレルをツァルトたちの警護につけたわ。あとはニッケ中尉たちがどうにかしてくれるでしょう」
ベイジルの報告を聞き、メンバーは全員頷いた。
「それじゃあ、ツァルトのコトはニッケ殿たちに任せるとして……だな」
【カモミール小隊】のリーダー、カモミールは水色の髪を素早くポニーテイルに結い、メンバーを見、一同頷く。宿の壁には先月行ったルーラルで入手したポスターがあり、それを見て瞳を輝かせた。
「……カモミールたち、楽しそうだな」
カウンターの奥で食器を拭きながら宿の親父・クミンシードがにっこりと笑いながら朝食を渡し、一同は和気藹々としたムードでそれを食べ始める。
「結局、これにいくのか?」
と、クミンシードがさしたのはカモミール達が見ていたポスター。それには
『第52回ルーラル祭り・象と一緒にバトルロワイヤル(純情編)』
と書いてある。
「おもしろそうだし。それに……訓練兵時代のことを思い出すからな」
ハッカは笑顔でうなずき、アスカロンの鞘を叩く。が、クミンシードは表情を曇らせる。
「しかし、この間の依頼ではそこで色々あったようだが…」
「そうそう。ヒゲ…いや、カーターさんが戦隷兵器に拉致されてあんな目に合うとは。ディック=ロラントの阿呆ぶりには呆れた物だ」
ジンジャーがお茶を飲みつつ呟き、ベイジルも頷く。それに同感なのかミントとマルパッチョもまた頷いていた。
「あの女装趣味な人、結局ヘイトマシーンがなかったら唯の人だったね」
「いや、プネウマさんがそれだけ強かったんだと思うよ?」
二人がそれで自己完結をし、纏めるようにベイジルが言う。
「ディック=ロラントの改造部分ぐらい、もって帰ればよかったかしら?」
その言葉にカモミールが内心ぞっ、とした。思わずハッカやジンジャーに助けを求めるも、二人は我関せずの姿勢を見せる。それに小さくため息をつくと、声がした。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
 さて。これって書き終わってからどれだけ経過しているっけ?フーレイです。とりあえずなのですがしばらくの間毎週火曜にこれを更新していこうと思っています。皆さん、よろしくね。……実を言うと『蛇の王』及び『ブルーラインズ』はまだやっていないんで、やりたいなぁ……。本当は『蛇の王』に関しては途中までやっていたんだけどデータがとんだのよね……(涙)。とりあえずぼちぼちやってまいります。

計画としては
『ヘイトマシーン』→『眠れる狂気』→『蛇の王』→『水晶の姫』(上・中・下)→『ブルーラインズ』
の順に行く所存です~。

それでは、よろしくお願いします(土下座)
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-09 19:34 | 札世界図書館 | Comments(0)

過去のセリフを振りあけると、シオン…なんか台詞が余計拙く… (ユズハ、もとは下宿人)


 その日の夕方、急に土砂降りになった。その事に内心ため息をつきながら、一人の若い娘は走る。大事そうに本を抱え、下宿先である冒険者の宿【静寂の鏡亭】を目指して。
(学院の寮より、こっちのほうがいいんだけれども……やっぱり距離があるわね)
耐水性のある、でもごわごわとしたマントをしっかりと身に纏い彼女はまたため息をついた。張り付いた前髪を払い、前を向く。早く家に帰って、この本の続きを読みたい。そうだ、おやじさんに熱い紅茶を入れてもらおう。うん。そうしよう。そんな事を考えながら彼女は走り続けていた。既にブーツの中にまで水が入り込んでいる。
(防水加工、取れていたのね)
お下がりだし、とそこは諦めた。もう少し腕が上がったら自分で防水の魔法をかけよう。恐らく、そういった魔法は学院の地下書庫にあるだろう。そんな考えが脳裏をめぐる。
(ああ、気持悪いわ。本を読む前にブーツを乾かさなくちゃ。それに熱いお風呂に入らないと風邪をひいてしまう)
そういった場所を与えてくれた神とおやじさんに感謝しながら、家路を急ぐ。……と、雨がマンとを叩く音に混じって、何かが倒れる音がした。水煙の奥にぼんやり見える宿の明り。そして、浮かび上がる紫色の髪。
(えっ?!)
見たとたん、彼女の背中にあったものが、びくっ、と震えた。

カードワースプライベートSS
『拾い上げたは、紫水晶』 (著:天空 仁)

 ユズハ・レシャ・ドゥニは半月前に天界から舞い降りた天使だ。彼女は人間界の魔術を研究するため、有名な学院のあるリューンを選んだ。本来ならば学院の寮で過ごすのが普通なのだが……魔導士の中にはユズハの翼を毟ろうとする輩もいたため、安全策をという事で3日でそこを出て行った。転がり込んだのが元魔導士の男が経営する冒険者の宿【静寂(しじま)の鏡亭】であった。

「……っ!」
ユズハが駆け寄ると、倒れていたのは若者だった。ボロボロになったマントを纏った旅人。それが第一印象だった。が、顔を見て彼女は息をのむ。
(こんなに綺麗な人を、見たことがないわ……)
そう、その旅人は人間離れした美貌を持っていたのである。が、息は弱く、凍えているようだった。
(! 見とれている場合じゃない。早く宿へ入れないと!)
ユズハの手が動く。助け起こそうとするが、なかなか重い。触れた骨の太さから、男性だろうと思いながらも必死にその腕を肩にかける。
「くっ……」
重い。ずっしりと肩に重みがのしかかる。が、ユズハは滑りそうになりながらも彼を助け起こす。今は彼を助けたかった。ただ、それだけだ。どうにかドアまで進み、声を上げる。
「親父さん、ユズハです!ドアを開けてください!」
「あ、ああ! 今開ける!」
声が聞こえたのだろう、ドアが開き鳶色の目をした男が出迎えた。
「随分濡れたな。風呂の準備はできてるぞ。それに……そっちの病人もどうにかしないとな」
親父と呼ばれた男は一つ頷き、その旅人を受け取った。グッタリとした彼を見、親父は僅かに目を見開くが、今は開いている部屋に彼を連れていくしかなかった。
「熱があるな。大方、極度の疲労でそうなったのだろう。俺が着替えさせる。ユズハ、着替えたら粥を持ってきてくれ。ちょうど作っていたところなんだ」
親父の言葉に、ユズハは頷いた。

 親父……ことカンバイは小さくため息をついた。目の前にいる若者は驚くほど肌が白く、誰もが振り返るほどに美しい。しかし、衣服に隠された器は鍛え上げられた戦士のもの……いや、戦う為だけにあるような鍛え方をしたものだった。それに醜い傷痕がいくつもある。
(……これは酷いが……)
カンバイの表情が曇る。戦いでついた傷ではないような物がいくつもある。火傷もあった。そして、何かにつながれていた跡も。僅かに触れると、若者は表情を険しくした。とりあえず熱に浮かされ、弱弱しく呼吸を繰り返す青年の体を乾かし、自分の新調したばかりの服を着せると、体の震えが弱くなった。それに安堵しつつも、うっすらと浮かんだ汗をぬぐってやる。その途中、彼の眼に一つの記号が飛び込んできた。右鎖骨上に刻まれた、肌理細かい肌に似合わない、無機質な印字。

― H-01-a001

瞬間、カンバイの赤い瞳が見開かれた。彼の予想が当たっているのならば、目の前の青年は人間ではない。エルフやハーフエルフでも、ましてや魔族でもない。
(まさか……人工生命体が)
彼の手にはありとあらゆる魔力情報が伝わってくる。目の前にいる青年は明らかに人間が持つ魔力とは何かが違う。どこか癖のあるそれに……
「親父さん、あの方は大丈夫ですか?」
気がつくと、背後にユズハがいた。手にはおしぼりと水の入った洗面器が。それを見てカンバイは一つ頷く。
「今の彼には、ここで十分休ませる必要がある。暫くの間、面倒を見よう」
本来ならば、医者にも見せた方がいいだろう。しかし、カンバイの脳裏にはこの青年が体験しただろうことが過っていた。印字と、幾つかの傷が予感させる。
「……そうだな。たぶん、時期に意識を取り戻すだろう。ころ合いを見計らってお粥を持ってくるよ」
カンバイはそう言いながら部屋を後にする。ユズハは青年の額に乗せられたおしぼりを変えた。
「大丈夫です。貴方は安心できる所につきました。今は早く良くなってください」
ユズハはそういいつつ、青年の手を取る。冷たい手。白く冷たい手を握りしめ、祈る。生きてほしい。目覚めてほしい一心で。自分の体温を送り込むつもりで。彼女の脳裏には、抱きあげた時に見えた旅人の横顔が焼き付いている。
(どうして…この人は、必死になってここへ来たんだろう?)
それが、彼女には気がかりだった。

 数時間後、ユズハと親父の看病が通じ旅人は目覚める。しかし、その旅人は目覚めるなり、ユズハにこう問いかけた。
「…ここは……リューン……か?」

(終)
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後書き
ユズハミーツシオンが、これであります。
何気に親父の名前が出ていますね。前に友人に語った名前とは違ってしまいましたが『元は有能な魔導士』ってのは変わっておりません。とりあえずカンバイをよろしくね。名前の元ネタは『雪中寒梅』という名前の日本酒であったりするのですが。

これの続きを後日出しましょう。それにはこっそりヘイゼルの話も乗っける所存であります。あの子は生粋のリューンっ子ですからね。

徐々にではありますが、暇を見てカードワースで遊んでいる冒険者たちの日常をちらほらとは。シリアスあり、ギャグ……あり(?)で。ギャグを書こうとすると微妙にそうじゃないんだよねぇ。目下の悩みです。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-06 19:50 | 札世界図書館 | Comments(0)

即興で (ユズハとリーガルト、親戚だったりします)


―天界

 人間の住む世界の上空にあり、天使たちが神々の手伝いをしつつ過ごす場所。
 故に下界とは違う、独特な静けさと厳かな雰囲気が漂っていた。

 その一角を、1人の天使が歩いていた。やや窶れてはいるもののその横顔は美しく、天界であっても誰もが振り返る。しかし、その日…彼を見た天使たちは同情の目を向けていた。
(誤解は解けましたが、厄介なことになりましたね)
彼は手にした紙を広げ、その文章にため息を突いた。そこには「ほとぼりが冷めるまで下界で修行せよ」とのお達しが書かれていた。

 リーガルトは元々聖北があがめる神に仕える天使で、助言や厳罰を神官に届けるメッセンジャー的な仕事についていた。彼は幼い頃に親をなくしていた為、祖父母の家で厳しく育てられ、その甲斐あってか礼儀正しい青年へと成長した。仕事も祖父の下で鍛え上げられ、若手の中では一番の仕事振りであった。
 しかし、幼馴染であった夫人と仲良くしていたのを不倫とかんぐられ、何者かに告げ口されたが故に騒動となり、審問官に呼ばれることになった。リーガルトとその夫人との間には友好しかなく、誤解は解くことができたのだが、元々リーガルトをよく思わない者達が彼の追放を求めたのである。審問官たちは話し合い、結局彼を少しの間下界へ行かせることにした。

 天使たちにとって、仕事でもなく修行でもなくただ「下界へ行く」というのはあまりいいものではない。追放されるということは翼を失い、力を失うことである。それがないとしても、下界は猥雑で、どうも好きではない。そう思う天使たちがたくさんいた。リーガルトはどちらかといえば下界へ仕事へ行くことを好んでいたくちだが、この結果には聊か不満だった。

「リー兄さん!」
不意に、リーガルトは足を止めた。急に名前を呼ばれ、不思議に思って振り返ると、ユズハがいた。リーガルトの親戚で、幼い頃から一緒に過ごしている。家も向かいにあり、二人はとても仲がよかった。
「なんだ、ユズハではありませんか。どうしたのです?」
「いや、その…リー兄さん、下界勤務になったのですか?」
ユズハの問いに、リーガルトは首を横に振る。
「勤務ではありません。ただ、下界ですごしなさいと。それだけです。
 天使としての仕事はできませんよ」
「……仕事だったらよかったのに、ね」
ユズハの言葉に、リーガルトは苦笑する。が、彼は小さく微笑んだ。
「でも、仕事ができなくても修行はできます。
 私は、人間界で冒険者になってみるつもりです」
彼はそういい、手紙をぎゅっ、と握り締める。修行だったら別にいつやったってかまわない。それにしてはいけない、というルールもないわけだ。ユズハは小さくため息を吐く。
「最近、人間界へ修行へいく天使って減っているんですよね。
 罪深い世界だからって…」
「そういう考えが傲慢だということに、きづいていないのでしょうね。
 人間たちの生き方が、私たちの力を高めるかもしれないのに」
そういいながら歩き出す。リーガルトは今夜にでも下界へ行くつもりでいた。こんなまどろんでいるような場所から離れ、刺激の強い人間界での修行をしたかった。ユズハもまた、彼に合わせて歩き出す。
「私も行きます」
リーガルトはその言葉を聞き、小さく首を振る。
「魔術のためにですか?」
「ええ」
答える彼女に、リーガルトの表情が僅かに曇り…それでも歩き続ける。
「行くとしたら、少し間をあけなさい。変な噂が立たないように」
リーガルトはそういうと、小さくウインクした。

 その夜、リーガルトは夜闇にまぎれて人間界へ降り立った。そしてその足で冒険者の宿へ駆け込み、そのまま冒険者になった。その時一羽の鳥と1人の小柄な少女と出会うのだが、それはまた別の話。そして、ユズハも直ぐに下界へ降り、そこで1人の青年を助けるのだがそれもまた別の話。

(終わり)

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【スズキ組】のリーガルトと【ドルチェーズ】のユズハの話。
二人は親戚同士で、幼馴染。
……ま、こんなかんじ。
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-15 23:57 | 札世界図書館 | Comments(0)

そして、戦いは始まった? (カモミール小隊、覚悟完了!)


(くっ、この光線さえどうにか耐えれば…)
ハッカの傷を、炎が燃やして塞いでいく。ジンジャーが舞で味方につけている風も微力ながら体力を回復させてくれる。しかし、力の差なのか…ビームで次々に倒れていく。風のおかげですぐに意識が回復するものの、焼け石に水の状態だった。何度も風が吹いてもビームで倒れてしまう。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:7(著:天空 仁)

「な、何よ……このぐらいっ!」
「おらぁあああああっ!」
ベイジルが医療メスを握り締めて切りかかる。続けざまにハッカが雄たけびを上げながらアスカロンできりかかる。が、それでもあまりダメージを与えられない。
「頼むぜ、メルーナーッ!」
『わかりましたぁ~♪ お治しいたしますの~』
カモミールの叫びとともに、ふんわりと小柄なウンディーネが姿を現す。彼女の力を借りて治療をしつつも裏紫苑を手に軽やかなステップで切りかかる。
「っらあっ!!」
「合わせる!」
同時にジンジャーがミストルティンで斬り付け、更にはミントもまたブリューナクで追撃する。が、手ごたえはない。
「そんな……っ?!」
「かっかっかっ…そいつはヘイトマシーンをより素晴らしいものにする為に俺達が血潮
 流して開発した存在だ!そう易々と倒されてたまるか!」
ディックが叫び、同時にプリティ・ヘイト・マシーンが殺人ビームを放ってくる!
「きゃんっ?!」
「ぐあっ……」
最初に倒れたのはマルパッチョとベイジルだった。傍らにいたハッカとカモミールはどうにか踏みとどまる。しかし、手に力が入らない。
「へへ、赤いだけに三倍のパワーってか?!」
『カモミールさま、あぶないですぅ!』
そういい、メルーナがカモミールを押しのける。さっきまで彼がいたところに殺人ビームが刺さり、別の方向ではミントが力尽きていた。
「きゅぅ~……」
「くそっ……、メルーナ、俺はいいから皆をっ!?」
ミントを抱えようとしたカモミールが別の攻撃を受け、倒れる。同時にメルーナも姿を消し、ハッカもまた炎が尽きて倒れたしまった。そして…
「くぅ……」
最後まで残っていたジンジャーも倒れ、ついには全員が動けなくなってしまった。
「はははっ、最後は派手に行くぜぇ?『クラスター爆弾』だッ!
 ―発射ッ!」
ディックが叫ぶものの…何もおこらない。
「…あれ?どうした?…爆弾だ、ば・く・だ・ん!!」
ディックが何度も叫ぶものの、何もおこらない。
「フリーズでもおこしたのかしらぁ?」
ベイジルが笑う。プネウマはゆっくり起き上がるとその場を立ち去ろうとしたディックの肩を掴む。
「!」
「…待ちな」
「このまま逃がすかよ…っ!」
刹那、カモミールが腰の刀を抜く。ステンドグラスの光を反射し、煌きは一瞬にしてディックの目を貫き…
「!?……魔女ッ子…!!?プネウマさん魔女ッ娘!!?」
「ふっ、世迷言はあの世でいいなあっ!!」
瞬間、もの凄く鈍く、痛そうな音が響いた。見事に蹴り上げられたディックの股間。続けざまに眉間、喉仏…と人間の急所を貫いていく。
「…ロラント、相手を見くびるな。暗殺の鉄則だ。
 そして暗殺に失敗したものは己の死で償うのも…だったよな?」
ごめんなさい、たすけて、すみませんでした…という声が聞こえたものの、無視していた。一同がどうにか立ち上がるとカーターと司祭の周りに集まる。始末を終えたのか溜息混じりにプネウマも歩み寄る。
「司祭さんは?」
「大丈夫じゃ。応急処置はしてあるからの」
「それじゃ、いこうか…」
ハッカの言葉に一同頷く。そして、プネウマはさりげなくカモミールの隣に並んだ。
「さっき…刀の光を見たディックの様子がおかしくなった。
 あれは一体…?」
「あれは…こいつの力です」
カモミールは苦笑して腰の刀を叩く。
「こいつの力は、人間の奥底にある奇妙な欲望を引き出し、困惑させるものです。
 そして、ディックは恐らく…貴女がかわいい魔女っ娘に見えたんですよ」
そういいながら、彼は傷だらけの身体を引きずって教会から出た。
太陽の光が、やけにまぶしかった。

 リューンへの帰り道。カモミールたちが振り返ると、プネウマは何気なく空を見上げていた。それはどこか懐かしそうで、それでいて酷く悔しそうな顔に見えた。だから、そっとしておこうと思ったが、彼女の唇が動く。
「巻き込んでしまった、わね。完全に」
その言葉に、全員が微笑む。どれもコレも楽しそうな、希望に満ちた様子で。
「もう、最初から覚悟してたから」
幼い笑みで、マルパッチョが
「とことん、いっちゃいますよ♪」
可憐な笑顔でミントが
「……放って置いたら我々の活動にも支障が出る」
そっけなくジンジャーが
「こんなやり方は、俺達の性に合わなくてね」
がさつにハッカが
「まだまだデータが足りませんから……あいつらの事」
意味深にベイジルが笑う。
「……あなたたち……」
「そういうことだから、今後もよろしくですよ、プネウマさん」
カモミールはにっ、と笑って手を差し伸べる。それはこれからもともに戦う、という意思表示。
「……どうなっても、知らないからな」
そういいつつも、プネウマの口元はほんの僅かに綻んでいた。

(…to be continued? Yes!)

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『後書き』と書いて『はんせいぶん』と読む
 こんにちは、フーレイです。……まず、この場を借りて『暗黒魔導士シリーズ』の作者であるa-systemさま及び『暗黒魔導士シリーズ』のファンの皆さんに一言。

……こんなリプレイでごめんなさい。でも、続けます。

『ある宿の朝を覗けば』というSSから始まったわけですが、このまましばらくお付き合い願いますこと、よろしくお願い申し上げます(土下座)。

本当は伊達さんの『異形の心』でのワンシーンも入れたかったんですが間に合わなかったっす。ので、次回『眠れる狂気』のリプレイではちょっと関わりますんであの物語らしさが出せるよう、がんばります……。先に言っておくけど、ツァルトさんのファンなみなさんはすんまそんー(汗)。

それでは、また!
次週からは暫く未定。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-18 13:36 | 札世界図書館 | Comments(0)

そろそろ佳境? (マルパッチョ、蹴り技がメインになってきた:汗)


 そのままその場で朝を迎えた一行は一度教会に向かった。町長の冥福を祈るため、である。司祭もプネウマも酷く悲しそうだった。
「こうなりそうなことは…わかっていたはずなのに」
そう呟いたプネウマの横顔にカモミールたちの胸が痛む。祈り終えた一行が外に出ようとすると、司祭が引き止めた。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:6(著:天空 仁)

「…私は言わなければならないことがあります」
「それ以上言わないで!貴方もロラントに…」
プネウマが止めるものの、司祭は首を横に振り胸元の十字架をぎゅっ、と握り締めた。
「いえ、私にはこれ以上人を欺く罪を犯すことが耐えられないのです。言わせてください」
彼はそういうと深く息を吐き、一度だけ目を閉ざして…口を開いた。
「この街はしばらく前からディック=ロラントと名乗る者に牛耳られています」
「やっぱりな…。で、ロラントは何処に?」
ハッカの問いに司祭は酷く困ったような顔をした。と、言うのも彼曰く誰もロラントの姿を見たものはいないし、何処にいるのかもわからないというのだ。それにも関わらず逆らったものは次々に死んでいく。恐らく村長も…奴に殺されたのかもしれない、という事だった。ハッカは無意識にアスカロンを軽く叩いていた。
「手がかりは…なしか」
「ただ、ロラントは鉄で作られた人形をよく使いますが、それはよくユニバーサル・フルーツの倉庫から出てくるのが…」
その言葉に、プネウマが顔を上げる。そして一行を伴って果物屋へと走っていく。
「…果物屋へいくよっ!」
「司祭さま、感謝します!」
マルパッチョはそういうとにっこり笑い、皆を追いかけた。

 果物屋へ向かうと…そこには誰もいなかった。そう、あの娘さんも。
「もしかしたら、彼女もなにかされたのかもしれない…。急ぐわよ」
プネウマの言葉に全員が頷いている傍から、ハッカが何かに気づく。
「…司祭さまが言っていたのって…これのことかなぁ…?」
一同が振り返るとそこには扉があった。
「それだ!」
ジンジャーは頷き、一同はそこへと飛び込む。…と、いきなり樽があった。
「…なんか気が抜けるような」
と思わず呟くベイジル。しかしこの奥には何かあるに違いない。
「しかし、冒険者としてはその樽が気になる。もしかしたら極北茶かもしれないし、例のお酒かもしれない」
「ロラントの罠の可能性もある…」
ミントとプネウマの言葉を聴きつつもジンジャーは樽に近づいてぽんぽんと叩いている。
「うん、いい林檎の匂いがする。20年ものの林檎酒だ…飲む価値があるね」
「それじゃ、後でのみましょう」
「…時間があったらね」
マルパッチョの言葉にプネウマがとりあえず頷き、さらに奥へと進んだ。階段を下った所には…やはりというべきか、カーターを浚ったときに出てきた機械人形がやってきた。
「ビンゴッ!やっぱりそうだったか!!」
カモミールたちはすぐさま動き出し、手早くそれらを始末する。途中宝箱で奇妙な盾を入手したり、機械人形のビームをくらってみたりしたが、どうにかヒゲ…ことカーターを助けることが出来た。その途中で色々な情報が入手できた。
「つまりは、ここは資料倉庫でもあるわけね」
カーターを連れて外へいく途中、振り返りつつベイジルが呟く。プネウマははき捨てるように
「ちょっとは解ったでしょ?GFがどんなにやばいところか」
「それどころか俺たち以上のえげつない奴らってーのもな」
ジンジャーが頷き、カモミールが肩をすくめる。そして、林檎の匂いに目を細めつつ
「こんなに美味しい林檎の産地を…汚しやがって」
地下を走りぬけ、戦闘準備して果物屋を飛び出す。と、教会から爆発音がしプネウマが攻撃を食らう。
「! プネウマさんっ!?」
「こんなの、掠り傷…それよりも早く教会に」
「ちっ、こそこそしやがって…」
ハッカに支えられ、プネウマは走る。カモミールもまた腰の刀を握り、全員が教会へ走る。ここにいても仕方がない。いち早く司祭を助けないと。
「ヘイデン司祭ッ!」
乱暴にミントが戸を開ける。と、司祭は血の海に倒れていた。案の定、といったところだろうか。カーターとジンジャーが抱きかかえるとかろうじて息があった。その傍らで辺りを探っていたプネウマが声を上げる。
「…上よ。司祭をこっちに」
「ああ」
ジンジャーたちで司祭を下げ、カモミールが治癒を施す。その間にも辺りを見渡していると……見覚えのある女性が不敵な笑みを零していた。
「あれ…?果物屋の…??」
マルパッチョが首をかしげていると気づいたのだろう、彼女はにっこりした。
「あら、こんにちは。みなさん、お元気?」
「…貴女が司祭様を倒したの?」
ベイジルが鋭い目で果物屋の女性を睨みつける。空気が一気に冷たくなり、女性は口元をほころばせ、ピンポーン、とふざけた口調で言う。
「この姿で倒したわけじゃないのよ?…誤解…」
そこまで言ったとき、気の変化に全員が身構える。瞬間、声が野太い男性のものへと変わったのだ。
「誤解するんじゃねえええええっ!プネウマァアアアッ、流石のお前も気づかなかったようだなぁ!」
「いや、そこまで変わっていたらわからないと思う。正直言って」
「……そ、そう?そういわれるとちょっとうれしいかなぁ…」
素直に感想をもらすハッカに、声が女性のものに変わる「敵」はどこか嬉しそうに照れたものの、はっ、と我に帰る。同時に目の周りの皮膚がはがれ、機械が露になった!
「じゃねぇえええっ!下等生物どもがあああっ!」
「いや、調子に乗ったお前が…」
相手が機械の身体をあらわにしたというのにも驚かず、ハッカが突っ込む。
「相変わらず調子に乗りやすいわね、ディック」
プネウマの呟きをとりあえず咳払いで無視し、ディックは言葉を紡ぐ。
「まぁ、兎も角…俺が『第二委員会』のディック=ロラントだ。わかったかなぁ~?」
「女装趣味?」
「これはあくまでも世を忍ぶ仮の姿だ!」
ディックと名乗った男の顔…機械の目に、醜く避けた口を目の当たりにしても動じず、今度はカモミールが首を傾げる。
「異常な異形ね…」
「遂に人間もやめたか…。お前らしいといえば、そうかもしれないな」
鋭く、冷たいベイジルとプネウマの眼光と言葉。荘厳な教会に響くディックの不協和音めいた声。冒険者たちも、カーターも彼を睨みつけるが、ディックは楽しそうに笑う。
「ははっ、うるせぇってんだ、崩れ魔女がっ!もう昔の俺とはちがうんだよ。
 そいつを解ってくれなきゃこまるなぁ、おいぃ!」
(こいつ…自分自身を機械にしやがったのか…。
 確かにあいつも機械の身体を持っているけれど…そいつとは違う)
ジンジャーが目を細め、ディックの目を見た。悪魔の技術だ。その禍々しさは空気を通して肌に伝わる。いまも鳥肌が立っているのだ。
「…これはちょっと教えてやる必要があるみたいだなぁ…。
 かっかっかっ、俺様の最高傑作をみせてやるぜっ!」
ドンッ!
鈍い機械音がし、目の前にピンク色の機械が現れる。昨夜戦った機械…ヘイトマシーンよりもなんだかオーラが…
「くっ、これが…もしかして…」
「あの倉庫にあった資料が正しかったら…こいつはプリティ・ヘイト・マシーン…」
マルパッチョとミントが息を呑む。
「ほほう? 察しがいいじゃねぇか。これがその実物だ、チビ二人。
 こいつで沢山人間を焼いてきたなぁ?
 …お前らも早速バーベキューにしてやるぜぇえええっ!」
声とともに、機械も『無差別殺戮モード』への移行をアナウンスする。
「こいつには…あいつの力や魔法の効果がないっ!…行くぜっ!!」
「「おおっ!」」
一斉に『カモミール小隊』の面々は走っていく。機械から発せられる光線に打たれながらも、只管立ち向かっていく。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書きとかいて反省文と読む
今週で終わると思ったら長すぎたので斬りました。
中途半端になってしまってすみません。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-11 15:05 | 札世界図書館 | Comments(0)

ファイル名は『へいとまっすぃーん』だったりする (ジンジャー、とりあえず立場上……)


 次の日。ルーラルに戻った一行は当てにならないだろうが村長の元へ向かった。彼は仕事の手を止めて一行を見る。
「どうしたのかな?」
「…昨日話していたカーターという老人のことなんですが…」

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:5(著:天空 仁)

「おお、そうだ。みつかったのかな?」
プネウマの言葉を聴き、前に乗り出す町長。それにミントが頷いた。
「はい。川辺の宿屋町で一旦は会ったんです」
「でも、その宿屋で襲撃を受けて、カーターさんが連れ攫われてしまったんです」
ベイジルが言葉を繋ぎ、様子を伺うと町長は酷く慌て、急いで警備隊に連絡し、探させる事にしよう、と提案した。
「なにか、手がかりになるようなものは…」
「誘拐した相手は自ら『ディック=ロラント』と名乗りましたが」
その言葉に、町長の表情が強張った。明らかな変化に、一同が目を見張る。
「………ディ、ディック=ロラント…か」
「町長、なにか知っているのですか?」
すかさずプネウマが問うものの、町長は首を横に振り、名前は知らない、関係は無い、と必死に否定する。
(それが余計に怪しいのよね)
と、達観した目でベイジルはふむ、とうなる。プネウマは捜査を町長に頼むと一行を伴って外に出ようとした。すると、町長は彼らに言う。
「…一言だけ、いいか? この町から早く出て行ったほうがいい。言えることはそれだけだ」
「ありがとう町長さん」
プネウマはそういい、一礼する。が、カモミールが小さく苦笑する。
「けれど…そうもいかねぇんだ。こっちはよ…」
そういって、一同外に出る。念のために司祭様にも協力を仰ぎ、何と無く果物屋に入った。と、いうのも…『極北茶』を買うためである。しかし1000spだった為購入を断念した。
「…林檎を買わなければ買えたんですけどねぇ」
「ま、まぁ…研究は出来るだろう」
財布を預かるベイジルの言葉にカモミールは苦笑する。林檎がないことを聞くと、売り切れてしまったらしい。念のためにディック=ロラントについて聞いてみたが…彼女は知らなかったようだった。
「果物屋のおねえさんも司祭さまも知らない……。しかし町長は知っているっぽい。影で町を操ってるのかなぁ」
不意にマルパッチョが呟く。それにかもなあ、と相槌を打ちつつジンジャーが唇を噛む。考えに困ったときの彼の癖だ。一行は一旦宿に戻ることにし、道をいく。ハッカは少し落胆しているようだった。
「はぁ、結局今日は何も手がかりが無かったですね、プネウマさん」
「……まだ、あきらめるのは早いわ」
プネウマはそういいつつハッカの後頭部を軽く叩く。それに励まされた気がしつつ彼は顔を上げた。

 一行が宿に到着すると、ウネが出迎えてくれた。ミントが状況を説明する。プネウマは出されたお茶に口もつけず、帽子をとって軽く頭を振った。
「そうね…、これだけディック=ロラントについて情報が取れないとなると…」
「そういえば、町長さんは『早くこの町から出て行ったほうがいい』とか言ってたけれど何か知っているのかな…いや、あれは知ってそうだよな」
昼の事を思い出しつつハッカは言う。それに皆頷き、プネウマは肩をすくめる。
「おそらく、委員会とかもろもろの事を口止めされているのよ」
「ふふ、ありがちね。やっぱり町長さんは知っているのよね」
楽しげにベイジルが笑いながらプネウマを見る。それに彼女は頷き「委員会には誰も逆らえないし」と悔しそうな表情を見せた。
「で、その委員会というのは……何なのですか?」
ベイジルはいつもの冷たい笑みでプネウマに問う。『委員会には誰も逆らえない』という言葉が、どうも引っかかる。
「そうね…巻き込んでしまったからには少し知っておいてもらったほうがいいかもね」
といいつつ彼女は何処からとも無くフリップと赤ペンを取り出した。
「な、なんか用意周到だね」
「余計なことは言わない。時間が無いんだから。説明するよ」
マルパッチョの言葉をプネウマは切捨て、赤ペンのキャップを外す。
「簡単に言うと…『委員会』というのは『ゼネラル・フィッカーズ』という大商会の私兵よ」
と、『 』の部分に赤ペンでアンダーラインを引きつつ説明する。
「ぜ、ゼネラル・フィッカーズ?な、なんですかそれ?」
思わず手を上げつつ質問するジンジャーにプネウマはよいしょ、と何処からとも無く鋼鉄の箱を取り出しつつ
「これ…『ろけっとらんちゃ』って聞いたことある?」
「ま、まあ…カードワースユーザーなら…げふっ?!」
カモミールがそう答えようとしてハッカに殴られる。なんだか言いそうだとは思ったけど、と呆れ顔のプネウマを背後にハッカはぎりぎりとカモミールの首を絞める。
「いい加減にしろ、カモミール…。俺たちが言う台詞じゃねぇから!」
「…と、馬鹿は放っておいて。確かにビホルダーもやっつけちゃう凄い兵器ですよね。まぁ、見つけても大抵売るらしいですけど」
ジンジャーは答え、プネウマはそれなら説明が早い、と頷いた。
「ここにあるのはそのレプリカよ。『ゼネラル・フィッカーズ』はこういうものを扱っている会社だと思ってくれればいいわ。最も傭兵派遣から戦艦製造まで手広く戦争関係を請け負っているけれど」
「いわゆる…死の商人ってやつですか」
ハッカの言葉にそういうことね、と赤ペンを突きつけて頷くプネウマ。
「そのゼネラル・フィッカーズ…略してGFのために裏で活動しているのが『委員会』なのよ」
そこで今まで黙っていたウネちゃんが手を上げ、プネウマは「ウネちゃん」と赤ペンで指して発言を促す。
「簡単に言えば『ろけっとらんちゃ』とか作っているやばい人にカーターさんはつかまっちゃったんでしょ?普通の探し方じゃみつからないかも…」
「って…ウネちゃん。そこは俺の台詞…。柄の悪い奴ら締め上げて情報を搾り出せばいいわけだな」
ジンジャーが少ししょんぼりしつつも言いたい事を纏め上げる。プネウマもそうねぇ、と赤ペンを手で弄びつつ
「ウネちゃんはそのガラの悪い連中について何か知ってる?」
「そういう人が集まる酒場は知ってるよ。時々私も行くし」
ウネはそういい、プネウマたちは早速その場所を聞き出して言ってみる事にした。

 店に到着するなり、プネウマはふふ、と小さく微笑む。
「感じのいい店じゃない。気に入ったわ」
「俺も。こういうトコ好きだな~」
カモミールがにっこりしてカウンターに座る。酒、弱いくせに、とプネウマが苦笑しつつ後に続き、一行もそれぞれ席につく。
「マスター、とりあえずお酒ね。ジントニックを!」
「それは私が飲むわ。あんたたちは他のにして頂戴」
ハッカがそういうもののプネウマが手を上げてマスターに言う。ちょっとぐらい、いいじゃないですか、と不満げなハッカだったがどうにかミントがたしなめる。
「んじゃ…マスターのお勧めを」
気を取り直してベイジルが頼むとマスターは一行の顔を見て
「見慣れない顔だな。冒険者かい?だったらこれを薦めるさ。『北の果て』って銘柄なんだが」
と、マスターは一本のボトルを取り出し、グラスに注ぐ。一見白ワインにも見えたが、甘い香りは葡萄のそれではなかった。
「…いい匂い。これは?」
マルパッチョが顔をほころばせるとマスターがにっこりする。
「ルーラルのシャトーで限定生産している林檎のお酒さ。甘口だが、いけるぞ」
「へぇ…」
感心しつつ飲んでみると実に美味しい林檎酒だった。まろやかな甘みが口に広がり、なるほど…と思う。癖がなく、案外さっぱりしている。
「林檎の良さを引き出している。これなら人気が出るのも間違いはないな」
ジンジャーが頷いていると横からミントが情報について聞いていた。するとマスターは店の端で煙草をふかしていた一人の青年を呼び出す。どうやら、彼が情報屋らしい。
「…えーと、大した情報じゃないから近隣については100spでいい。…これは噂なんだが、最近『機械が町を襲って人を殺す』って事件が多発しているって聞いたな」
「どんな機械が町をおそった、とかは?」
プネウマがジントニック片手に問いかける。と、情報屋はそうだなぁ、と記憶を辿る。
「生き残った奴の話によるとでかいらしい」
「…ちっちゃい、じゃなくて?」
ジンジャーは少し目を見開くが、情報屋はそこまでは知らないが、かなりでかいと聞いている、と言った。続けてジンジャーが男の目を見つつ問いかける。
「んじゃ、続いてディック=ロラントについて」
「それは高いぜ。500sp貰う」
それに頷くと男はジントニックを飲む女性に目を向けた。
「もしかして、あんた…プネウマさんって人?」
「…そうだけど、何故私の名を?」
情報屋はふむ、と頷くとすっ、と目を彼女と合わせる。
「いや、本人からメッセージを預かっているんだよ。
 『今夜はショータイムの始まりだ』
 ってね」
「お前、ディック=ロラント本人に会ったのか!?」
ハッカが思わず乗り出し、男はそいつの部下から聞いたんだ、と首を横に振って答える。と、同時に……何かが発射される音が一同の耳に聞こえた。
「な、何!?」
ミントがブリューナクを握り締める。
「早く外へ!」
プネウマに促され、一同は外にでる。と、村長の家から音が聞こえた。
「…つか、何かでけぇものがこっちに向かってくるんですけど…」
眉根を寄せてカモミールが呟く。と、いうのも村長の家からなんか本当に鉄の塊っぽいものが一行に向かってくるようだった。
「迎え撃つぞ!」
ジンジャーに促され、一同は臨戦態勢に入った。
「とりあえず、魔法攻撃は控えよう。多分…効かないと思う」
カモミールの言葉に一同頷き、マルパッチョが魔法の鎧を皆にかける。一方ベイジルは
歌を歌って攻撃力を高め、ジンジャーがサポート的な術を使うために舞う。後のメンバーがぼこ殴りを決行したため、ジンジャーがビームを受けたもののすぐに倒すことが出来た。…が
「活動停止5秒前です。近くのみなさんは避難してください」
「って安全装置作動=自爆っぽいんですけれど!!?」
「とりあえず下がれっ!!」
カモミールの言葉を無視しハッカが首根っこ掴んで引っ張っていく。
「これってどくろなきのこ雲…あがるのかなぁ」
「いや、それはちょっと…」
ミントの呟きに思わず首をひねるジンジャー。そのすぐ後に妙な機械は爆発した。
「町長のところに!」
プネウマとともに町長の家に向かうと、そこには変わり果てた町長の姿があった。
「見事なまでに黒こげだね…。やっぱり…」
ミントたちは呆然となり、プネウマの表情も深く瞳を閉ざす。不意にジンジャーが手にした紙には

踊り方を忘れたか、プネウマ ロラントより

とだけ書いてあった。
「………ッ」
「! プネウマさん?!」
張り紙を見るなり、彼女はその場に崩れ落ちた。誰も何も言えず、ミントたちはその場に立ち尽くす。しかし、カモミールは灰をぎゅっ、と握り締めた。
「……くそ、ロラントの野郎め…さっさと姿を現しやがれってんだ!!」
酷く血が滾る。珍しく怒りを露にするカモミールの姿をベイジルたちはただ黙って見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書きとかいてはんせいぶんとよむ

えーっと、ここで言うことではないとは思いますが、『眠れる狂気』のリプレイ完成であります。そして、『蛇の王』のリプレイもぼちぼちと。念のために『ブルーラインズ』をやったらなぜかリーダーがマルパッチョ、熱血くんがカモミールだったのでそこは微妙に修正します。

まぁ、『ブルーラインズ』の前に『水晶の姫』をやる所存ですけどね(ぇ)
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-04 11:09 | 札世界図書館 | Comments(0)

因みに、極北茶はあとから買いました (ミント、ちょっと腰を抜かす)


 その内容をジンジャーは一人聞いていた。そして、小さく溜息をつく。
(確かに、騎士団が動かないのはおかしいな。つーより…あの一件をクリウス商会で調べていたのか。プネウマさんの言うとおり原因を作った奴らが騎士団に手を回しているとしか思えない)
だからこそ、北部地域の消失についての事実関係がつかめない。そんな気がしたジンジャーは推測があたらなきゃいいけど…と思いつつ部屋に戻った。そして、仲間たちと同じように眠りについた。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:4(著:天空 仁)

…のだが、三十分もしないうちに、振動で目覚める。
「……!?」
まず、カモミールが寝ぼけ眼で跳ね起きる。続けざまに全員がおきると、中に球体が浮かんでいた。なんか足のようなものが生えている。
「なんだ、こいつら!? 空中に浮いてやがるっ!」
「こんな魔物、みたことないぞ…。みんな、気をつけていけっ!」
カモミールが注意を促し、6人はすぐさま襲い掛かってきた球体と戦った。それぞれ攻撃していく傍からベイジルが冷気の魔術を使う。が、効果が無い。
「くっ、魔法が…」
「しょうがない、力で叩き伏せるんだ!」
歌で動物を呼び寄せたハッカが皆に注意する。ジンジャーが変な光線に当たりつつも組紐で縛り、ミントがブリューナクで叩き潰す。かと思えばマルパッチョの鋭い蹴りで落ちた奴もいた。
「ふう…なんとか倒したな」
「それにしても、こいつらは一体…」
ジンジャーとハッカは的の残骸を踏みつけつつも首を傾げる。が、そこではっ、となる。
「カーターさんたちが…っ!」
「急ぎましょう!」
ベイジルの言葉に全員が頷いて走り出す。と、すでにプネウマが外に出ていた。彼女も例の奴と戦っていたようである。
「プネウマさん、大丈夫ですか? カーターさんは?」
「…油断するな! まだ連中がいるよ!」
その声に全員が身構える。と、さっきと同じ物体がふわり、と浮いて…なんかキュイーンとか音を発している。
「ビ、ビーム!?」
「黙る、そこ!」
カモミールにゴス、と拳を叩きつけるプネウマ。すると同時に丸い奴から男の声が聞こえた。それに戦慄するプネウマ。
『誰かと思えば、なんとあのストレッチ様じゃないか。情報では死んだと聞いていたがこーんなところで生きているなんてなぁっ!』
「いきなりしゃべりましたね」
冷静に観察するベイジルの横でプネウマがきっ、と睨みつける。
「貴様、誰だ!」
『あれ?あれあれ?わかんないかなー、この声聞いても』
「…知り合いですか?」
思わず問いかけるハッカ。丸い奴から聞こえる声の主は、どうもプネウマを知っているようだが…プネウマは答えない。
『ほれ、「第二委員会」のディック=ロラントだ!!』
「ディック=ロラント…だと?」
なんかシリアスなムードが漂ってきたな、と思いつつ一同はとりあえず警戒する。他の奴らが襲い掛かってくるとは限らない。
『わかったかなぁ?さすがのストレッチ様も物忘れが進んできたのかなぁ?』
その言葉に、プネウマの表情が一変した。さらに鋭い顔に、僅かな焦りが浮かんだ。
「貴様が何故こんなところにいる?!」
『ハハ。それはこっちの台詞だ!なんでまた、かの有名な空間魔術師ストレッチがこんなトコ』
「その名で呼ぶな!」
一瞬、悲鳴にも思えるような声をプネウマが発する。思いもしなかったそれにカモミールは表情を研ぎ澄ます。軍人としての勘が、危険信号を発していた。
「私はもう委員会の人間でも、ストレッチという名前の人間でもない!」
『ハハハ、なるほど。自分の過去は捨てた…ってことねぇ。どおりであんたから蚊ほどの魔力も感じないわけだ』
その言葉に、ベイジルが目を細める。魔術師である彼女もプネウマから魔力を感じていなかった。押し黙るプネウマに、丸い奴はさらに言葉を続ける。
『ま、いいや。直接会おう、スト…いや、プネウマさん。ああ、そうそう。あんた達の仲間のじーさん、あずかったから』
「「はっ……?」」
ついでに、というように発せられたその言葉に、一同は眼を丸くする。
『いや…はっ、じゃなくて。あんたらのお仲間のあのヒゲは預かったってんだよ。んじゃ、再見(ツァイチェン)!!』
「ヒゲーっ!!????」
「やっぱそうくるとはおもったよ!?プネウマさんじゃなくてヒゲが浚われる気がしてたさ!」
姿を消す丸い奴に頭を抱えるマルパッチョと若干青くなるハッカ。呆然となったミントはぺたん、とその場にくずれる。
「な、なんだったの?? あいつ」
「そんなことよりカーターさんは? ウネちゃんは??」
「立て、ミント!探すっきゃねぇだろ!?」
ベイジルが辺りを見渡し、カモミールがミントを立ち上がらせて一同を散らばらせる。しばらくしてウネは見つかったがカーターは何処にもいなかった。
「やっぱヒゲ…そうか、ヒゲ狙いだったのか…」
悔しげに壁を殴るジンジャーを見つめ、プネウマはただ乱暴に背中を叩く。そして一同は先ほどの場所に集まった。ウネは少し身を縮めていた。
「こ、怖かった…」
「大丈夫ですか?あの変な魔物に襲われたりしませんでしたか?」
怪我の有無を見つつ問うと、その点は大丈夫だ、と答えた。
「…あれは魔物じゃない。人が作った『機械人形』だと思う」
プネウマは細めた目のまま、すっ、と切り出す。機械人形という言葉に一同はある依頼を思い浮かべる。そういえば、彼は元気だろうか?
「それじゃあ、ゴーレムみたいなものですか?魔法使いの魔力によって動くような…」
ハッカが問うと魔力は感じないがそんなものね、とプネウマは頷く。ジンジャーは一歩踏み出し、顔を上げる。
「プネウマさん、お聞きしたいことがあります。ディック=ロラントとか、委員会についてとか…」
「それには一つずつ答えるよ。…ディック=ロラントは昔の…性質の悪い知り合いね。なぜカーターを連れ去ったかは…わからない」
プネウマはそういい、若干苛々したように頭をかく。そして苦々しい表情で再び口を開いた。
「委員会については…んー、世の中には知らなくていい事と悪いことがあるけれど…それについて、知っていいことは一つもないわね。悪質な連中、とだけ覚えておいて」
(それはちょっと気になるな…)
言葉を濁されたような気がしたジンジャーだが、とりあえずこれからどうするか、を問う。と、彼女はどうしようもないので明日にしよう、と提案した。一同はそれに同意した。

 さて、そのころ。当のディック=ロラントはなにやらごそごそと通信をとっていた。
「あ、どうも。ディック=ロラントです。夜分遅くに済みません、『プリンス』様」
「…今何時だと思ってるんだ。深夜2時だぞ…お化けがでる時間なんだぞ!?」
「いや、それは十分承知…って何故お化けなんですか」
プリンスと呼ばれた男は微妙におちゃらけた声でいうも、ディックはとりあえず軽めに突っ込んでおく。
「冗談はおいといて…何の用だ、ロラント。こんな時間に通信を取るからには何かあったんだろうな? まさか…『ヘイトマシン計画』になにか起こったのか?」
その問いにディックはそれではない、と首を横に振る。
「誤作動以外はなにも。しかし予想外のことが起こりまして。先日から『ヘイトマシン計画』の拠点であるルーラルにあのストレッチが入り込んでいるんですよ!目的は不明ですが」
「ほう…まだストレッチが生きていたか」
プリンスと呼ばれた男はどこか懐かしそうにそう呟き、くす、と笑う。
「とりあえず、まだ手を出すな。魔力を残している可能性がいある。ただし」
そこで一端切り…少々凄んだような声で続ける。
「奴が計画を阻止するようなことがであれば、容赦なく消せ。
 奴は、もう委員会として用はないからねぇ」
「…了解。では…」
ディックは頷き、通信を切った。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現在、続編である『眠れる狂気』もリプレイ製作中。
順を追って『蛇の王』のリプレイも開始いたしますんで、こうご期待!
……と言えるほどのリプレイじゃないんですけれどねぇ(汗)。

最近、プレイしつつ即リプレイという方法でリプレイをやってますが、それって
やっぱりなんか違和感があるのかなぁ。
書いていて「これでいいのかな?」って思ってしまうんですよ。
やっぱりやってしまってから即書いたほうがいいのかな……?

とりあえずこいつら【カモミール小隊】の活躍をよろしく。
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by jin-109-mineyuki | 2008-10-28 14:41 | 札世界図書館 | Comments(0)

因みにこいつらは科学ちっくなシナリオのリプレイに (ハッカ、突っ込み役と思われ)


 とりあえず店を後にし、一行は川辺への道を歩く。のどかな光景に感嘆の息を漏らしつつミントは道を見た。
「町長の話だと…宿屋町はあっちだね」
「案外早くみつかるかもなぁ」
ハッカが隣でそんな事を言っていると、プネウマが何かに気づいたらしく、小声で話しかけてきた。
「ん?」
「…いま、物陰に気配を感じた。…なにかいる」
「えっ、そうですか?」
話しかけられたハッカは首を傾げる。傍にいるミントも辺りを見渡し頷く。
「…特に怪しい気配は感じなかったですよ?」
「…気のせい…かしら?」
プネウマはおかしいなぁ、とでもいうような表情で辺りを見渡す。
「ま、一応気をつけましょう。さ、ヒゲの親父さんを見つけるぞ!」
カモミールの言葉に、彼女はそうね、と言って歩きだす。…しかし、確かに…一行の動きを見張っているものが草むらに隠れていたのだが、一同はそれを知らない。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:3(著:天空 仁)

 川の景色がいいことと温泉がある、という事で川辺には宿屋町が形成されていた。今はシーズンオフらしく、客はそんなに多くない。カモミール一行がカーターを探して5件目の宿へと到着した頃にはすっかり日が暮れていた。宿の奥から現れた若い女性はにこやかに一行を出迎える。
「すいません。ここにカーター=クリウスという人は泊まっていませんか?」
「ヒゲの目立つ爺さんを探しているんだけれども、いない?」
ミントとプネウマが問うと、ああ、と彼女は大きく頷いた。どうやらビンゴらしい。
「いたわね…カーター」
「ど、どしたんですかプネウマさん」
ふと、プネウマが呟きにやり、と笑う。ハッカが問う傍から、若い女性は呼びますよ、と言ってくれた。が…
「カーター!!いるなら早くでてらっしゃいっ!つーかでてこんかい、ヒゲ!!」
「いや、クリウスさんのお父さんだから!!」
プネウマの大声に思わず突っ込むミント。その大声にすっ飛んできたのは若干小太り気味な…ヒゲが微妙にターンAなおじいさんだった。
「いやー、まいった、まいった。もぅ、ウネちゃん…ちゃんと口止めするように言ったじゃないか」
「ご、ごめんなさい。ついヒゲって聞かれちゃったから」
と、ぺろ、と舌を出して苦笑する女性、ウネ。
(ひ、ヒゲがターンAじゃんッ!!)
必死に笑いを堪えるカモミール小隊の一行。
(た、確かにヒゲだわ!!うん、ヒゲ!!ヒゲだよっ!!)
そう思ったのはマルパッチョだけではない。
「そういえば、みなさんはどこから来たんですか?」
「リューンだよ。この爺さんを追ってね」
ウネの問いにカモミールは答える。ウネは遠いところご苦労様ですね、と労ってくれた。その横では怖い顔のプネウマがカーターに迫っている。
「いい、カーター。わざわざ私がここへ来ている意味をよく考えて見なさいね」
その『わざわざ』の部分が強調されているなぁ、と思いつつベイジルは様子を伺う。
(ふふ、なんだか修羅場の予感ね…ふふふ)
と、微妙に楽しそう笑いつつもそれを悟られぬように問いかける。
「貴方がカーターさんですね」
「そうじゃよ。私がカーターじゃ。君たちは冒険者のようじゃが…」
「私たちは貴方の息子さんであるドルイズさんから依頼を受けて貴方を護衛するためにプネウマさんと一緒に着たんですよ」
ジンジャーがそういい、経緯を簡単に説明する。
(ここで存在感をだしておかないと…筆者にも忘れ去られてしまいそうな気がする)
なんて内心では若干怖がっていたりしつつ。
「…ドルイズの奴が私をあの退屈なリューンに戻したがっているのか」
「そのリューンももうすぐ楽しいことになる予定ですが」
溜息混じりに言うカーターにベイジルはさらりとそんな事を言う。プネウマは思わず首を傾げるがそんなことより、と鋭い目でカーターを見る。
「いくら退屈でも、今回はいつもと事情が違うの。力ずくでもリューンに帰ってもらうわ」
「ドルイズが言っている事が本当だとすればそうかもしれんが、どうも取り越し苦労じゃないのか?」
カーターは半信半疑のようである。しかし、ここは依頼だ。ちゃんと戻ってもらわなければ2000spはない。
「しかし、帰ったほうが良いのではありませんか?あんまり息子さんに心配かけさせてもいけませんよ」
その言葉が聞いたのか、カーターはそれもそうだなぁ、と少し考えてみる事にした。一行としてはこのまま大人しくリューンに帰ってくれたほうがうれしい。いや、そうしてもらわないとこまる。
(無事に帰って、象祭りに行くんだ!ああ、訓練兵時代を思い出すなぁ。象との演習は)
カモミールが数年前の事を思い出している間にもウネからこの辺りの事を聞いていた。彼女曰く、なんか陰気なかんじはしていた、という。それにハッカは何か首を傾げる。と、ウネがにっこりと笑いかける。
「せっかくですし、お酒でも飲みながらおはなししません?リラックスできますし」
「いーね。ウネちゃんわかってるねぇー」
ほっ、としたジンジャーが指を鳴らす。
「そうじゃのう。ここはわしのおごりということで」
それに思わずやった、と色めき立つカモミール小隊。しかしハッカはそこでカモミールとベイジルを睨みつける。いや、ジンジャーやミント、マルパッチョもである。
「二人は飲みすぎるなよ…。とくにカモミール!貴様は脱ぐからなっ!」
「わ、わかってるよ…。でもそれ以上にベイジルの酒乱をどうにかしたほうが」
「そうね。そうしておくわ」
カモミールは四人の剣幕にたじたじになりつつ、ベイジルは苦笑しつつ頷いた。それを黙ってみていたプネウマはふっ、と笑って
「…わたし、ジントニック」

(三時間後)

 完全に全員出来上がっていた。カモミールが脱ごうとするのをミントが必死に止め…てはいるがなんかクリティカルヒットしている。ベイジルは暴走する前にジンジャーから止められていた。
「と、とりあえず撤退しますね」
それを彼女はふん、と鼻で笑って見送る。それに対して微妙に傷つくハッカであったが今はそれどころではない。とりあえず鳩尾を殴って気絶させたカモミールを背負い、部屋へ行く。プネウマはジントニックを飲みつつ正気を保ったまま若者たちの背中を見、完全に消えたのを確認してから口を開いた。
「…カーター、まだ話できる?」
「おお…今、おぬしに殴られたので酔いがさめた。大丈夫じゃよ、多分」
倒れていたはずのカーターがむっくりと起き上がる。それを確認してプネウマはふう、と溜息をついた。
「…実は」

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【後書き】とかいて【はんせいぶん】と読む。

とりあえずやってしまったがままに現在まったりと『眠れる狂気』(作:a-system)もリプレイ中。つか、止まってる(待)。こいつらで『ブルーラインズ』(作:a-system)もやる予定だけども、実は『水晶の姫』シリーズが続けておこる所存です。で、やる気があったら別のシナリオも続きになるかなぁ、とか思っております。
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by jin-109-mineyuki | 2008-10-21 14:58 | 札世界図書館 | Comments(0)

リューン侵略の前に、観光・・・ではありません (ベイジル、一人含み笑い)


 ルーラルまでの旅路は、本当に穏やかなものだった。特に何事も無く途中で親父さんが作ってくれたお弁当を食べつつ進み、あっという間に到着した。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:2(著:天空 仁)

「早速捜索開始だね」
「それじゃあ、あの立派な教会から行ってみようぜ」
プネウマの言葉に、ハッカが頷く。一同がそこへ入ると町の規模にしてはとても立派で、搭もかなり高かった。中に入るなり、ジンジャーは瞳を輝かせる。
「こんな教会にめぐり合えるなんてな!この構造なんか実に…」
「はいはい、興味があるのは十分にいいことだけど先ずはカーターさんを探さなきゃ」
マルパッチョが彼を宥め、一人祈りを捧げる司祭に声をかけた。
「おや、こんにちは。冒険者の方ですか…ようこそ、ルーラルへ」
「突然ですいませんが、この町の近況を教えていただけませんか?」
一同を代表し、カモミールが問いかける。司祭は不思議そうな顔をし、理由を求めてきた。言葉に詰まった彼をプネウマが「最近良くない噂を聞いたもので」と助け舟を出す。司祭はそうですか、と小さく微笑んだ。
「他の街に比べて、特に酷いということはないですね。一つだけあるとすれば…」
「すれば?」
不意に表情が曇る司祭。ジンジャーが問うと彼は酷く心配そうな顔で呟いた。
「あるとするならば…街が主催で行うイベントですね」
「…ど、どんな?」
「毎年、象と戦うというイベントをやっているのです。毎年ハプニングが起こってしま
 うんですよね…」
一瞬、カモミール小隊の目がきらーんっ!と輝く。
「ど、どうしたんですか!?」
「い、いや…象と聞いて少し心が躍ったもので」
驚く司祭に対し、若干興奮が抑えきれないといった様子で答えるハッカ。傍らのミントはそんなのがあるんだぁ、と頬をほんのりと桃色に染めてわくわくしている。
「…なぜそこに反応する」
首をかしげたプネウマに、ベイジルはくすくす笑うだけ。それに肩をすくめていると今度は二人でカーターについて聞いた。プネウマ曰くヒゲが特徴らしいが、それが切欠で司祭も何か思い出したらしい。
「あ、ああ…あのヒゲの!確かにいますが今どこにいるかは…」
「ありがとうございます(ひ、ヒゲか…。要するにヒゲの人なのか)」
マルパッチョはお礼を言いつつも脳裏に青々としたヒゲを生やしたおっさんを脳裏に描いた。

 一同はとりあえず教会を後にし、今度は町長の家へ向かった町長は珍しくやって来た冒険者に興味を示してくれた。一同はちょっとだけお世話になります、と頭を下げる。
「リューンからとは…。さぞかし大変だったでしょう。さぁ、お茶ですよ。これでも飲んで疲れを癒してください」
「うわぁ、有り難うございます!」
「丁度喉が渇いていたんです。うれしいなぁ!」
マルパッチョとハッカはそういってカップを手にする。他の面々もそれぞれカップを手にし、早速飲み始めた。
………が。
「な、なんだこりゃぁああああっ!?」
「ど、どうなさいましたか?」
思わず叫ぶカモミール。町長はその大声に眼を丸くする。
「こ、これは一体何なんですか!?」
思わず聞いてしまうジンジャー。町長はああ、これですかとにっこりした。
「ルーラル名産の林檎をつかった『極北茶』だ。健康にはいいぞ」
(酷い…。こんなまずい茶なんて飲んだことない!)
マルパッチョは若干意識が飛びかけた。ジンジャーがふとベイジルをみると……彼女は涼しい顔で笑っている。と、いうかあまり飲んでいない。
(つか…知っていたとしか思えない。あの顔は知っていたとしか…)
プネウマたちが一人涼しい顔の彼女を見つめていると
「あら、口に合わなかったみたいですね……ふふふ」
なんて言ったので内心なんかむっ、とした。彼女は手にした情報を口にせず、混乱を楽しむ癖がある。その事を忘れていた、とカモミールは頭を抱えた。
(それにしても…林檎からこんな味が出るんだろう。ある意味凄いかも)
まじまじとカップの中身を見つめ、マルパッチョは思う。密かにカモミールに渡し、リューン侵略の兵器に出来ないかとか相談してみようと思った。
「お、お茶ご馳走様です…町長。実はお聞きしたいことが。ちょっと噂に聞きましたが
 最近、北部地方の治安が良くないというのは本当ですか?」
今まで黙っていたプネウマが問いかける。
「いえ、そんなことはないと思うが。確かに事件はあるが、国の方で調査もしているし問題ないはずです。君たちは…それを調べにきたのかな?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、ルーラルに滞在しているはずの人を探しに来ただけです」
それでこの辺りの治安も気になっている、とマルパッチョが理由を説明すると町長はそうか、なるほど…と朗らかに笑う。
「ルーラルにいたっては大丈夫ですよ。むしろリューンの方が治安は悪いんじゃないんですか?」
「ははは、それはそうかもしれませんね」
それにジンジャーは思わず苦笑した。町長はふむふむと頷き、机から住所録を取りつつ口を開く。
「で、お探しの人はルーラルに住んでいるのかな?住所がわかれば教えたいんだが」
「いえ、なんでも全国各地を旅して回っているという人なんで、決まった住所はないらしいんです」
ジンジャーの言葉に、町長はふむ、と住所録を弄りながら考え…思い出す。
「それなら多分、市の中心から離れた川沿いに宿が集まっている所があるから、案外そこにいるかもしれないな」
「ありがとうございます、町長さん」
カモミールたちは彼に頭を下げる。そしてそこへ行こうとしたがミントがまって、と止める。
「ところで…さっきのお茶に使われている『極北』って林檎は…」
「き、聞きたいかね!」
「えっ!?」
町長の目が、ぎらん、と光る。
「聞きたいかね!聴いてくれるかね?あの林檎は開発するのに随分と手間隙が掛かったものなんだ。ルーラルの農家としては自慢の一品で、今でも更なる品質改良を手がけているんだよ」
「は、はぁ…」
「とりあえず先を急いでますから、また後ほどゆっくりとうかがわせていただきますわ」
ベイジルは涼しい笑顔で会釈し、呆けているメンバー全員を軽くどついて町長の家から退出した。その短い間にもジンジャーは『第52回ルーラル祭り・象と一緒にバトルロワイヤル(純情編)参加者募集』のチラシを見、内容を記憶していた。

 一行は川辺の宿へ行く前に果物屋へ立ち寄った。あのお茶の秘密を探るために『極北』を買いに来たのである。店員は500spです、と言っていた。
「普通の林檎にしては高いな」
値段を聞き、ハッカが苦笑する。その間にもミントとプネウマは店員からこの辺りの事を聞いていた。
「ええ、何もありません。平和そのものですよ」
「ふぅん。本当に?」
プネウマは胡散臭そうに問うものの、店員は笑顔でええ、と答える。動じていないようだ。とりあえずお茶を濁すように店の事を聞いてみる。と、店員は意味深に笑って見せた。
「このお店は林檎しかないわけじゃないんですよ」
「他にどんなのがあるの?」
ベイジルの問いに、店員は少し口を閉ざす。が、すぐに微笑んで
「…いえ。でも、ここはユニバーサル・フルーツの直営店なんですよ」
と答えた。この名前は冒険者たちも知っている。果物を好物とするミントはああ、と頷いた。
「それなら聞いたことがある!ってことは『極北』って結構有名なのね」
「ですね。そうそう、ここで取れた林檎はこの店を通して全国に送られます。一つ500spとちょっと高いんですけどね」
そこで苦笑しつつもリューンだと800spはするんじゃないか、と感想を漏らす。た
めしに食べてみるともの凄く美味しかった。
「よし、買って行こう」
カモミールは決断し、一個買ってみることにした。支払っている傍でジンジャーとプネウマは真横の張り紙に目を留める。
「…貴方の健康のために、一日五杯の『極北茶』(株)ユニバーサル・フルーツ…」
「極北茶…本気だな……恐ろしい」
二人はその張り紙を見、思わず眉を顰めた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【後書き】と書いて【はんせいぶん】と読む

 まだまだ続きますが、とりあえず、このリプレイが終わったら別の話を書くのでよろしく。雰囲気的に『月○』っぽいシナリオとかあるからねぇ。
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by jin-109-mineyuki | 2008-10-07 12:54 | 札世界図書館 | Comments(0)

よく考えてみてくれ。こいつをどう思う? (カモミール小隊、漸くです:汗)


 リューンの石畳を、楽しげに歩く6人の男女。その全員がちょっと武装しているところからして、彼らが『冒険者』であることは用意に推測できる。
「ふむ…クリウス商会か。案外がっぽり儲かるかもな~♪」
なんていいながらリーダーのカモミールが鼻歌交じりに依頼の紙を見る。と、傍らでベイジルがやれやれと肩をすくめる。
「けれど、まぁ……いつもながらなんかきな臭い気がする。ただの護衛ではなさそうだ
 ぜ」
紅蓮の髪を揺らし、ハッカが呟く。彼は嫌な予感がしたとき、腰に下げているアスカロンの鞘を叩く癖があり今もかるくぽんぽん、と叩いている。それを見つつミントとジンジャー、マルパッチョが苦笑した。
「その可能性は十分あります。まぁ、楽しめばいいんですよ、た・の・し・め・ば」
ベイジルがそういいつつ不敵に微笑むその横で、ミントがそういうものかしら?と首をかしげる。
「確かに、はらはらするほうが楽しいけれど………」
「それと一緒かもしれないね」
マルパッチョが同意するように頷く。
「…ああ、ここだ。失礼のないように…とくに隊長」
ジンジャーはそっけなく言うとカモミールの肩をぽん、と叩く。そして、彼の耳元で
「いいか。『裏紫苑』は奥の手だぞ」
と小さな声で囁いた。

…まぁ、ともかく。一行はクリウス商会へとやってきたのである。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:1 (著:天空 仁)

 カモミール小隊のメンバーが客間に通されて数分後。優しそうな眼鏡の男性が奥の部屋からやってきた。どうやら、彼が依頼主らしい。
「こんにちは、『カモミール小隊』のみなさん。私はクリウス商会の会長をしています
 ドルイズ=クリウスといいます」
彼はにこやかに微笑み、わざわざ来ていただいて…と一礼する。冒険者たちも恐縮し、一礼した。

彼からの依頼は『ある人物の護衛』である。
ルーラルという地方都市へ向かい、そこにいる「ある人物」を無理やりにでもリューンへ連れ戻してほしい、という。

「……つまり」
そこで黙っていたミントがドルイズを見る。
「どうか、されましたか?」
「ううん。無理やりにでもって事は…どんな手を使っていいの?」
依頼人に、キラキラと目を輝かせて問うミント。いや、この少女だけではない。良く見ると紺色の髪をした青年以外が目をめっちゃくちゃ輝かせている。
「え、ええ…。どんな手段を使ってもかまいませんから」
「どんな手段でもOK?よし、この依頼面白くなってきた!!」
思わず顔が強張るドルイズ。それに気づいているのか、いないのか、カモミールはぐっ、と手を握り楽しげに笑う。一体どんな手段を使おうとしているのか、もの凄く不安に思っ
た依頼人は苦笑しつつ死なない程度に…と言った。
「それって、本人が嫌がってもか?」
今度はハッカが問う。凛とした軍人を思わせる彼に、ドルイズは若干背筋を正して答える。
「ええ。……多分本人はリューンに戻りたがらないでしょうから」
「ふぅん。旅を続けていたいんだねぇ、その人。ならいっその事冒険者になってしまえばいいのに…」
マルパッチョがふむ、と唸る。その愛らしい姿にくす、と笑いつつ彼は報酬の説明をした。無事に達成できれば2000sp。これはかなり美味しい依頼である。
(しかし、なんかトラブルの匂いがするな…)
カモミールはその金額と依頼のバランスが合っていないような気がした。無理やりにでもある人物をリューンへ戻して2000sp。不意に、彼の脳裏に浮かぶシルエットが…。
彼はそのまま依頼主に問う。
「もしや、その護衛してほしいって人は…アニキですか?」
「違います。アニキだったら護衛はいりませんし、彼らには用事がありませんから」
ドルイズは怪訝そうな顔で即答した。
「それで、連れ戻してほしいのはどんな人なのですか?」
ベイジルの問いにドルイズは少し間を空けて、真剣な顔になる。
「私の父、カーター=クリウスです。父を見つけて、ルーラルから一刻も早く引き連れ
 ていただきたいのですが…」
その言葉に、一同は「これはなかなか厄介なことになってきたな」と内心で呟く。が、そこで引くような『カモミール小隊』ではない。
「お受けしましょう、依頼人さん。我ら『カモミール小隊』に任せれくれ!」
カモミールがとん、と自分の胸を叩いてにっ、と笑う。それに続けてハッカが少し首をかしげて問いかける。
「何故貴方の父親をリューンに戻さないといけないんだ?大切な用事でもあるのか?」
「ええと…実はですねぇ…」
ドルイズは少し不安な表情で理由を述べる。
会長職を離れた彼の父・カーターはその後各地を旅歩いている生活を続けており、現在はルーラルに滞在しているという。しかし、最近その都市から北にある村が突然丸々無くなっているという事件が発生したそうだ。
「…初めて知りました。そんなことが起こっているなんて(私の情報網でもつかめてい
 ないなんて、おもしろいものね)」
思わずそういってしまったベイジル。ドルイズも商会の情報網ではじめてしったらしく一般には出回っていないであろう情報…と推測された。
「しかも北部地方では頻発していてどれも原因不明とされているんですよ」
「だからこそ、秘密にしておこうと…(普通だったら入ってきそうなものなのに)」
ベイジルは説明を受けつつも知らない情報に内心苦笑する。
「息子としては、やっぱ父親には無事でいてもらいたいよな。その気持ち、解る気がす
 るよ、ドルイズさん」
ハッカはうんうんと頷き、その横ではミントとマルパッチョも頷いている。
「…だが、それにしても…奇怪な話だな」
不意に、ジンジャーが呟き…一同静まり返る。そしてカモミールと彼の目が合った。
「ジンジャー、お前いたのか」
「それは態とだろ!」
「いえ、私も申し訳ないのですが…今貴方の存在を…」
申し訳なさそうなドルイズの言葉に、ジンジャーはがっくりと項垂れて目に涙を浮かべていた。
「俺って……どれだけ存在感が無いんだよ…」

 とりあえずしょげるジンジャーの背中を叩いてしっかりさせ、ドルイズから前金を貰う。そして、彼は危険な場所へ行くに当たって、同行者を1人だそう、と言った。
「…プネウマ」
それが、同行者の名前だろう。ドアが開き、そこから1人の老女が入ってきた。絵本に出てくる魔女のような三角帽子を被っていた。だからといってかわいい雰囲気ではない。むしろ、どこかオーラが体から発散されているような雰囲気だ。その場にいるメンバーは思わず息を呑んだ。
(いや、絶対オーラが出ている!間違いない、この人は……)
カモミールは額に滲む汗をそっと拭いながら、小さな声で呟いた。
「この人は……きっとマスターアジ」
「そのネタは止して下さい。年齢を疑われます」
すぐにベイジルが突っ込み、当のプネウマ本人はふん、と鼻で笑っただけであった。ドルイズ曰くクリウス財団で一番の腕利きという。
(へぇ……是非手合わせしてもらいたいな)
ハッカが真面目にそんな事を思いながらプネウマをみていた。暫くして、彼女が口を開く。その目はあまり期待していないような目であった。
「……この人達が同行するのですか?失礼ながら1人を除いて魔力はそれほど高いとはおもえませんか」
ドルイズは手厳しい、と笑う。プネウマはベイジルを見つめ、小さく笑う。
「まともなのはそこの黒髪のお嬢さんぐらいですね」
「それは光栄ですわ」
そういわれ、彼女はまんざらでもないという笑みで答えるものの隣にいたカモミールはそれがある意味彼女にとっては挑発の意味である事を知っているので内心苦笑してしまう。
「まぁ、ともかく…早速向かおうぜ。善は急げって言うだろう?」
カモミールはとりあえずそう提案し、一同は動き出した。
「では、みなさんお願いしますね」
ドルイズは切実そうな目で一行を見送り、全員の無事を祈った。

(続く)

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【後書き】と書いて【はんせいぶん】と読む。
ども、フーレイです。シオンとシュウさんのトークが間にはさまったので今週からスタートです。なんか年齢を感じさせるネタもありますけれど、まぁ、今後もよろしくお願いします(一礼)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-09-30 20:25 | 札世界図書館 | Comments(0)