ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:札世界図書館( 58 )

大変遅くなりましたが (スズキ、ランティスとこうして出会う)

「…でね。この間ソウキュウに故郷から手紙が来た訳で…」
「何でまた」
「どうやらお兄さんが噂を聞いたらしくてな」
「あー、そうだよなぁ。Lv10の冒険者ってそうそういねぇもんな」
時間は昼時。穏やかな空気の中、一羽の猛禽類とエルフのようなヒトのような青年が楽しげに話している。初めてみる人は驚いて振り返るも、ここいらの住人たちは微笑ましくその光景を見つめている。
「ねぇランティス。俺達ってさ、知り合ってどれぐらい経つんだっけ?」
不意に鳥がとう。と、ランティスと呼ばれた青年は小さく苦笑した。
「えーっと、ざっと…2年ぐらい?」
「確か俺がパーティを組んだ頃…いや、リューンに来た頃だっけか?」
鳥は彼の肩に止まると首をかしげ、瞳を細める。そんな様子に、エルフっぽい青年はやさしく頭をなでてやる。
「確かお前……迷子になってなかったかい、スズキ?」
そう言いながら、彼は澄んだ青空に目をやった。ちょうどあの日、スズキと呼んだこの鳥が自分の前に落ちてきたんだ、と。

カードワースプライベートSS
『1羽と1人』(著:天空 仁)

聖暦1372年 12月 25日。
「……寒いなぁ、おぃ」
そんな事を呟きながらランティスは所属する宿【万魔殿の休憩所】を出て行った。聖夜祭だというのに彼は護衛の依頼を押しつけられていた。まぁ、馬車で半時で行ける距離である。夜には戻ってこれるだろう。そう思いながら依頼人の処へとぼちぼち歩いて行った。
……そこまではいい。何時も通りだ。
ランティスが依頼人の居場所を尋ねると、初老とおもしき女性が彼を待っていた。が、その表情はどこかさみしげである。
「えーっと、貴方が依頼人のレミエラさんですか?」
彼の問いに、老婦人は首を横に振り小さな声でこう言った。
「申し訳ありません、冒険者様。依頼の件なのですが一週間後、また来ていただけませんでしょうか?お嬢様は体調を崩されまして、今日は出かける事ができません」
その言葉に、ランティスの思考回路が一瞬止まった。

「ったく……一週間後に先送りかよ」
ランティスは貰った袋を手で弄びながら1人ごちた。これだけでも200spはあるだろうか。だが、素直に喜べなかった。確かに寒いから、と珍しいチョコレートの飲み物をくれたのは嬉しい誤算ではある。が、彼の目当てであった依頼人は一度も顔を出さず、乳母だと名乗った女性も会わせてくれなかった。その事を考えると木枯らしが吹雪のような冷たさに感じ、思いっきりくしゃみをした。空しく木の葉が足元で踊り、街路樹が騒ぎ、ランティスは妙にむっ、とした。空を見上げればどんよりとした灰色。だから思わずため息を混じりに思う。
(こんなに寒いんだったら雪でも降りやがれッ!)
と、その刹那。

―ゴウッ!!

と、おもいっきり強い風が後ろから吹いてくる。それに身を縮めていると…

―ボフッ!!

っと、いきなり何かの塊がランティスの後頭部に激突した。
「ってーなぁ、おい!!」
そう叫びながら振り返ると……なんかあったかそうな塊がころがっていた。微妙に茶色い。あと、もふもふしていた。というより…息はあるけどくらくらしてそうな鳥だった。
「おいおい、どこかのペットかぁ?」
痛む頭をさすりながら鳥を見てみる。どうやら気絶しているだけのようだが……微妙に何かが違った。全体的に見て猛禽類だとおもうが、鷹でも鷲でもない様な気がする。とりあえずやや小型かなぁ、という印象は見受けられた。
(…ん?)
ランティスは何気なく足をみた。ペットならば鎖が付いている、とおもったのである。が、この鳥の足には何も付いていなかった。しかし野生とも考えられなかった。
(いっそ売っちまうかな。羽根は上等だし、帽子の飾りにはなるかな…)
なんて考えていると……目を覚ましたのか、もぞもぞと鳥が動き出した。しかも
「ん……」
と声が漏れた。低めではあるが、女性の声である。
「はあっ?!」
思わず声を上げるランティス。それで完全に目を覚ましたのか、鳥はばさっ、と翼を広げた。そしてまじまじとランティスを見ると嘴を開き
「はあ? じゃないわよ。ったく、ぶつかった事は謝るけど、何いきなり人の足掴んでんのよ!!」
と、いっきに捲し立てた。怒っているのか、羽根が逆立っているようにも見える。いきなりしゃべりだした鳥に面食らうっていると、鳥はばさばさとランティスの前に近付いた。
「…あら? あらあらいいエルフのお兄さんじゃない。まぁ、それはともかく。鳥だからって足に輪があるとかみないほうがいいわよ。デリケートな部分もあるんだから」
ため息交じりに、鳥はいう。が、ランティスは表情を険しくした。それもその筈で本来、猛禽類の嘴から人の言葉が出るのは考えられないのである。
(誰かの使い魔か?)
使い魔ならば納得がいく。魔術で鳥を通して視覚・聴覚を共有しての捜索もできると聞いた事がある。
「申し訳ない事をした。…いま使い魔をつれてそっちへいく。場所はどこだ?」
ランティスが頭を押さえながらそう言うと、鳥がきっ、とランティスを睨む。
「使い魔じゃない。俺はスズキ!喋る猛禽類だ!!」
「いや、普通鳥は喋らないから」
と突っ込みながら鳥をにらみ返す。使い魔でないならば、魔族なんだろうか?鳥の姿を取る事が出来る魔族もいてもおかしくはない。この世界はなんでもありだ、とランティスは考えていた。とりあえず、鳥を抱え直して目を重ねる。
「ふぅ……。すまなかったな、スズキ…。俺はランティスという。【万魔殿の休憩所】に所属する冒険者だ」
「ご丁寧にどうも。俺はスズキで【礎の神話亭】に身を置いているんだ」
「冒険者になるつもりか?」
ランティスはそう問いかけておきながら…何かが違う気がした。彼女(多分雌だろう)は鳥……猛禽類であるがため、ここは冒険鳥と言った方が良かっただろうか?目の前の鳥はそうよ、という意味か1つ頷いた。
「鳥の身で冒険者って、大変じゃねぇか?」
第一に喋る鳥なんてめったにお目にかかれない。寒村とか聖北のお膝元にいったら命が危ないんじゃなかろうか、とすら思う。ああいった処の人間は頭が固い。しかし、スズキの表情は変わらない。
「んー、覚悟の上よ。故郷であった事に比べればそっちの方が楽でしょし」
そう言いながら、スズキは身を1度だけ震わせる。まぁ、冒険者になるという人間は壮絶な人生を送っている連中が多い。彼女もまたそうなのだろう。深い検索はしない事にし、「そうか」とだけ答え、もう一度鳥を見た。案外人懐っこそうな眼をしている気がした。

 数分後。2人の姿は先ほどの場所に近い【静寂の鏡亭】にあった。元々冒険者の宿ではあるが、その半分は居候という話だ。主であるカンバイ・アーシュレイが2人の姿を見ていらっしゃい、という。
「スズキ、どうせならうちで冒険者をすればよかったじゃないか。人手が欲しいんだよ」
「ごめんね、カンバイさん。俺、どうしてもどこまで仲間とやれるか試したくてさ」
どうやらここの主はスズキを知っているらしい。そしてランティスを見るなり「噂は聞いてるよ、色男」と人懐っこい笑みをこぼした。そしておごりだ、と言って暖かいスープとパンを用意してくれた。スズキの話によるとこのカンバイという男は昔からの知人であるという。ならばちょっと納得する。
「ま、これから冒険者していくから色々顔を合わせるとおもうのよね。よろしくたのむわ、ランティス」
片目を器用につぶり、スズキがいう。その言葉に苦笑しつつ、ランティスもまた小さく頷いた。そして杯を掲げて飲む。
(奇妙な奴ではあるけど、悪い奴じゃなさそうだ)
ちらり、と鳥を見る。器用に食事を取る彼女はとても楽しそうだった。こんな彼女はどんな冒険をするのかも気になったし、もしかしたら彼女と仕事で会うかもしれない。それはそれでおもしろそうだな、と彼は思った。

それが、1人と1羽の邂逅だった。

(終)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
後書き

漸く書き終わりましたぁ。どもー、どもー、フーレイです。ランティスさんのPLさん、大変遅くなりましたが、彼らしさが出ていたらいいのですがいかがでしょうか?

とりあえずこれが2人の出会いなのですが、この後にもいろいろごたごたしていくのでした。まぁ、スズキがあんなノリですので。

あとはネタが湧き次第ほかの方とのコラボとかできたらな、と思ってます。
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by jin-109-mineyuki | 2009-11-09 14:27 | 札世界図書館 | Comments(0)

どうせなら、仲間入りしてほしい人材 (カシアス「それはできません」と笑顔で)


 その直後、ミントが街の方向に煙が上がっているのを見つけ、ルーラルへと駆け出す。その途中、プネウマは1人道をそれた。そして……そこにいる赤毛の青年に向き直る。
「…そこにいたのね」
「ええ、まあ。先ほどは邪魔が入りましたけど。これを言っておかないと、なんだか物語の進行の妨げになるかとおもいまして
「いや、その発言は色々拙いと思うわよ」
カシアスの苦笑にプネウマは頭を抱える。が、彼女は小さくため息をついて顔を上げた。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:10(著:天空 仁)

「…とりあえず。何が望みだ」
どこか疲れたように問う声に、カシアスは平静を装う。
「私は貴女様の後任として、現在の地位……第二委員会幹部となりました。この能力も随分犠牲を払って手に入れたものです」
プネウマは静かに、カシアスを見つめる。何が言いたい、という目で。しかし、青年はどこか不思議そうな目で彼女を見つめていた。
「それでも、嘗ての貴女の力には程遠いのです。それなのに何故、貴女は力を失ってしまったのです?」
どうやら、その事が気になっていたらしい。プネウマの表情が、どこかおだやかになる。
「…私より強い術者がいて、そいつに能力を封じられたとかじゃないから安心して」
「では、何故です? 一度契約を結んだ彼らが何故離れたと…」
先ほどよりも濃い戸惑いの声に、プネウマもまた息苦しそうな顔になる。それは確信がないことへの不安にも見えた。
「ごめんなさい。どうやれば奴らの呪いが解けるか判らないの。私自身にしたって……本当に契約が解消されているのかわからないの…」
「……そう、ですか……」
その言葉に、僅かだがカシアスの表情が曇る。それに、彼女は確信した。
「……カシアス。あなた…契約を解消したいのね…?」

 そのやり取りを、ジンジャーはこっそり聞いていた。そして、僅かに唇をかみ締める。
(……あの男……もしかして、本当に助ける意味で手を貸したのかも知らん。あの言葉どおり、ただ始末に来たのかも知らん。…どっちにしろ…今回は…)
暫く考えた後、ジンジャーは仲間のあとを追った。

 騎士団は既に姿を消しており、カモミールたちは必死に消火活動などに手を貸した。その途中、見慣れた人物がそこに現れる。
「だいじょうぶ、ですか?」
「おう、って……ツァルト!どーしてルーラルにいるんだよ!」
「俺様が、偵察に来てたのさ。こっちによぉ」
その言葉にカモミールではなくミントが顔を上げる。そして茶色い髪を項で縛った若者に抱きついた。
「ペッパー!!ツァルトさんをつれてきたの?」
「まぁ、詳しい話は後に。とりあえずこの騒動を……」
ツァルトにたしなめられ、ミントは頷く。よくみるとハッカの兄であるニッケが率いる【ニッケ小隊】のメンバーもそろっているようだった。
「げっ、ニッケ?!」
「実の兄に向かってそれか、ハッカ。
 それはいいとして……カモミール軍曹。これはGFの仕業なのか?」
「そのようです、ニッケ中尉」
カモミールの報告に、ニッケはふむ、と唸り……小さくため息をついた。そして、側に遣ってきた部下たちに住民の避難を頼むと彼もまた消火活動を始めた。

 ルーラルの火災はほどなくして鎮火し、死者を一人も出すことはなかった。怪我人は流石に出てしまい、それには医者であるベイジルやニッケ小隊の軍医・タイムと薬師オレガノが手当てをほどこした。瓦礫は男性陣を中心とするメンバーで撤去し、炊き出しではミントとツァルトが活躍した。
 ローレルの話によると、GFはアーシウムに偵察部隊を送っていたらしいが、程なくして撤退したとの事だった。恐らく、カモミールたちが関わっているヘイトマシーン計画を先にするつもりなのだろう、と一同は考えた。念のためにペッパーをルーラルへと派遣し、カモミールたちの様子をうかがわせていたものの、騎士団にとらわれたのを機に彼がニッケたちを呼び寄せた、とのことだった。
「ルーラルって、アーシウムに近いのか?」
『北の果て』を飲みながら、何気なくハッカが兄に問う。と、彼は小さく微笑む。
「いや。……リューンに比べて近いがな。馬を走らせてきたが、間に合ってよかった」
「そうだったのか……」
ニッケの言葉に、ハッカもまた息をついた。そして、ツァルトが作ってくれた料理を口にしつつ兄弟そろって外を見ていた。

-次はプリンスがくる。

その言葉は恐らく嘘ではないだろう。しかし、ハッカに恐れはなかった。
「ハッカ。……無駄に死ぬなよ」
不意に毀れたニッケの言葉に、ハッカは小さく微笑む。
「勿論だよ、兄さん……」
ハッカは小さく微笑み、『北の果て』を飲み干す。そしてそっと、瞳を細めた。

(…to be continued? Yes!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
えーっと、その、フーレイです。
とりあえずここまでやって、続きはまぁ、おたのしみにです。
現在まったりと、ネタあさりしつつ蛇の王プレイ中。
別の事を先にしてしまうのでどうも遅くなりがちです。

カモミールたちはとりあえず蛇の王クリア後、後日談をはさんで「水晶の姫」リプレイを。
こっちはまぁ、その…ギャグメインにできるように頑張ります。

それでは、また。
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by jin-109-mineyuki | 2009-09-04 21:58 | 札世界図書館 | Comments(0)

先週は忘れていたよ!? (カシアス、とりあえず…?)


「っしゃ、行くぞ。どんな敵でも押し通すだけだぜ」
そう言い、一行は洞窟の外に出た……は、いいが全員思わず身を縮めて叫んだ。

「「寒っ!!?」」

「な、なんなんだこの冷気は?! なんか、かつてないくらい嫌な予感がするぞ!」
バムの言葉にベイジルは冷静な目で向かってくるものを見つめる。
「私はそれほどではないけれど。…ふふっ、またずいぶんと醜いのがきましたわね」
「あれはまさか…」
プネウマもまた三角帽子のつばをあげつつ、向かってくるものを見る。青っぽい肌になんか機械
っぽいものをつけた、でかい生物だ。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:9(著:天空 仁)

「な、なんすか、あれ……」
ジンジャーの言葉に、プネウマは息を呑んだ。紫色の瞳が、猛禽類のそれとなる。
「セリオンよ……。気をつけて。奴らの邪悪な気には武器が一切きかないわ」
「……どないせーと」
思わずぐちるハッカ。心なしかやってきたリスが怯えている。
「抑える方法はあるはずよ」
プネウマはそういい、一同に開戦の合図を送る。と、ミントはぎゅっ、と首から提げたメダイを握り締めた。
「これだったら、きっと…っ!」
「くっ、こんな輩に負けてたまりますか!」
マルパッチョも気合十分に身構え、セリオンと呼ばれたでかいものは、こう、言った。

-ミナゴロシニ、シテヤル

瞬間。
『いやーですのーっ!!』
その声を残し、メルーナーが消されてしまう。
「め、メルーナー!?」
「くそ、リスたちも逃げちまった!……当たり前か」
ハッカが呼び出していたリスも逃げ、あらかじめかけていた魔法も解けてしまう。
「させるわけにはいかないの!!」
ミントがそういい、メダイを掲げる。……と、一瞬、時が止まった…かと思えた。目の前のセリオンが、動きを止めたのだ。
「?! おい……やっぱ効いてるぞ」
バムが指を鳴らし、一同の顔にも笑みがこぼれる。セリオンはぐががががが、と苦しそうに声を上げ、喉をかきむしりながら消える。
「やっぱり、効果があったわっ!」
ミントが声をあげ、仲間たちも抱き合って喜ぶ。が、プネウマはきっ、とそこをにらみつける。
「まだよ!……何かがおかしい」
「簡単には終わらせてくれないか」
カモミールが妖刀を手に身構えなおし、一行も構えなおす。が、ベイジルが胸を押さえた。
「なんか……体が重い……」
「ベイジル?!」
カモミールに抱きかかえられ、ベイジルが顔をしかめる。プネウマは唇をかんだ。
「くっ、化け物が魔力を吸い始めている!?……まずい、このままだと…」
「巻き添えを食らいますね」
喘ぎながらもベイジルが呟き、ゆっくりたちあがる。
「大丈夫か?」
カモミールの言葉に、彼女は苦笑する。
「勿論よ。ただ……魔族である私にとってはちょっと力をとられただけ……」
「でも……」
マルパッチョが駆け寄るも、空気が一気に固まる!

-オマエラモ、ミチヅレニシテ……

その時だった。一同に強烈な眠気が訪れる。が、ベイジルだけはその人物をはっきりと見ていた。
「来ていたのね…貴方」
ぼんやりと毀れた言葉に、その人は小さく微笑む。そして、ゆっくりと呼吸をし、化け物に囁いた。
「フィータス!! もう理性も残されてないとは……哀れな」
(カシアス…?! やっぱり、この力はカシアスだったんだ)
マルパッチョが思うそばで、スリーピングマッドネスの効果は踊り続ける。カシアスのパートナーともいえる機械人形が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「カクニン。戦闘数値62パーセント以下ノ霊的生命タイヲホソク。コノ霊的生命ヲ「いれいず」ジッコウシマス」
瞬間、光が全てを覆った。……僅かな静寂のあと、すっ、とカモミールたちは眠りから覚める。そして、夕暮れよりも赤い髪の青年、カシアスがそこにいた。
「…カシアス! カシアス=ベイス!!」
プネウマが叫び、青年をにらみつける。バムもまた目を見開いていた。
「こ、こいつがGFの暗殺者……」
「何故、俺たちを助けた」
カモミールが不思議そうに問いかける。カシアスは何も言わず、ただカモミールを見つめる。
「……お前も、あいつらの仲間じゃないのか?それとも、失敗作の始末をしに着たのか?」
「そのとおりです。別にあなた方を助けたわけではない、ということですよ。自分の力に溺れ、見境なく他者を排除するのは美学に反します」
一つ、ゆっくりと伏目がちに頷くカシアスはそうおもいませんか、と問いかける。が、一同は何も答えない。ただ1人同感なのかベイジルが頷いている。傍らではプネウマが肩をすくめていた。
「へぇ、腕だけじゃなく言うことも立派になったわね。でも……」
そこで言葉を止め、彼女は三角帽子を整えつつ冷静にカシアスと瞳を合わせる。
「やっていることはたいして変わりない」
それに、カシアスは僅かに微笑む。
「そうかもしれませんね。現に私は今迷っていますから。貴方の連れを生かして帰すか否かを……」
そういい、彼は指を鳴らそうとした。が、それよりも早くジンジャーが口を開いた。
「変わり者だな、あんた。暗殺者は迷ったりしないんだぜ?」
「ふふ、変わり者ですか。褒め言葉として受け取っておきましょう」
カシアスはそういうと静かに一礼し、一同から一歩身を引いた。
「皆さん、ごきげんよう。置き土産に、一つ悪い知らせを伝えておきます」
彼はそういい、一呼吸おいて、こう、言った。

-フィータスを殺した貴方たちを、恐らくプリンスは許さないでしょう。
 次は第二実行委員長である彼がくると思います。


プネウマはその言葉に、小さく微笑んだ。
「最後まで、生き残るわ。負ける気はないわ。首の根を洗って待っているようにプリンスに伝えておいて頂戴」
それに、カシアスは小さく頷いて姿を消した。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いよいよ次で最後ですっ!
さぁ、どんな風になるかおたのしみにーっ!!

えーっと、念のために。これは『六珠』が活動を始めるちょっと前頃だと今さらながら推定。
『怪刀を帯びし者』カモミールをリーダーとする『カモミール小隊』は今日も元気にリューン侵略を目論みつつも(ぇ)、冒険者家業に精を出しております。
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by jin-109-mineyuki | 2009-08-19 16:54 | 札世界図書館 | Comments(0)

燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ冒険者ーっ♪ (プネウマ、どっから突っ込もうか悩む)


 南の洞窟には相変わらずヒゲがターンA!なイカすおっさん……ことカーターがいた。
「カーターさん、よく無事で!」
ハッカが言うと、カーターも笑顔で答えてくれたが、少し疲れているようにも見える。
「いやぁ、この街にきてから狭いところに閉じ込められたり隠れたりばっかりじゃ。
 本当にまいったよ」
「まったくだな。俺もここまできて酒の一つにもありつけやしねぇ……」
「俺なんか恋人に極北茶飲まされました」
バムとカモミールも苦笑しあい、三人は笑い声を上げる。が、プネウマはため息一つ三人の頭をべしべしとはたいていく。それが効いたのか、暫くの間三人ともその場にしゃがみ込んでいた。
「「「……っー!!」」」
「馬鹿なこと言い合ってんじゃないの。それよりもカーター。ここから逃げるわよ。いつ騎士団がくるか…」
その言葉にカーターは表情を曇らせる。話によると持ち込んだ資料の整理が出来ていないので手伝ってほしい……とのことだ。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:8(著:天空 仁)

「そういうことなら、やってしまいましょ。さっさとやって逃げればいいのよ」
ベイジルの言葉に頷き、一行は洞窟の中へと入り込んだ。中にはたくさんの資料があり、それらはロラントのアジトからもってきたという。
「『強化ロック』ってかいてあって、ぜんぜん開かなかったドアがあったの、覚えてない?あの奥にあったのよ」
「いやぁ、あけるのに一ヶ月かかってな、大変じゃったよ。バムには断られるしのぉ」
そのどこか責めるような目に、バムの表情がこわばる。こうして、全員で資料整理が始まるのだった。

一方その頃。
倒され、地にはいつくばっていたフィータスは血にぬれたまま必死になっていた。ぐはっ、と血を吐きつつも、必死にバロンへと祈りをささげていた。
「まだ運命は終わっていないぞ、俺の運命は……」
彼は瞳を一度閉ざし、口元の血を拭わぬまま、喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。
「バロン様、いかなる代償をも払います!!私に愚者を永遠に虐げる完全な力を与えて下さい……っ」
そして、どさ、とその身を完全に冷たい土へと伏せる。と、同時に…脳の奥でこんな声が聞こえてくるのであった。

-汝の望み、しかと受け止めた。……ぐっさ

「違います。私はフィータスです」
彼は、何故か信仰対象からもコメディアンに間違えられたのだった。そして、同時に……不思議なほど熱く、快楽ともいえる力が流れ込んでくるのを感じた。
『破壊しつくせ』という言葉とともに。

「……ねぇ、今……なにか音がしなかった?」
不意にプネウマが問う。
「もしかしたら、先ほど柄にも無いことを言ったーとか言ってめちゃくちゃ赤面していたベイジルが今こけてそれで荷崩れとかおきたんでしょかねぇ」
小さな声でカモミールが答え、そろりと振り返るとベイジルが平静を装って資料整理をしている。どうやら違うらしい。
「あれ?この宝箱は?」
「ディック=ロラントのアジトにあったものじゃよ。とりあえず持ってきた」
ハッカの問いにカーターが楽しげに答える。中身は杖らしい。とりあえずもらってみたら、人外の杖だった。
「……また、人外シリーズだな」
バムの呟きに、全員頷いた。プネウマも呆れたように呟く。
「……その内呪われるわよ」
「そう易々と呪われてたまりますか」
内心でリューン侵略のためですもの、と付け加えつつマルパッチョが答え、その間にカモミールが再びメルーナーを呼び出し、怪我を負ったミントとジンジャーの治療をする。まだ喋ることが出来ないミントは不服そうな顔で作業をしていた。その途中、一つのファイルを引っ張りだす。それを開いたベイジルがため息を漏らす。
「……スメルバ帝国……リューンの南にある都市国家。食糧危機であるはずなのに、殺戮兵器を輸入していたなんて」
馬鹿ね、といいながら鼻で笑う彼女にハッカがげんなりとなる。
「でもさ。あんな化け物機械がスメルバに輸入されたら普通の兵士はひとたまりもないぞ?」
「あそこは昔から評判がよくないな。……場合によってはリューンへそれで侵攻する事だって考えられる」
横にいたバムもまた眉をひそめるものの、プネウマとベイジルはため息を漏らす。
「だったら今度はリューンにヘイトマシーンを売りつけるでしょうね」
「奴らにとってはただのビジネスチャンスでしかない。そんなことまでするのがGFなのね」
顔を見合わせていやだわ、とため息を漏らす二人に一同は
『この二人、母娘じゃねーだろーなー』
とか思ってしまったとかなんとか。気を取り直してジンジャーが書類を捜すと、今度は『ヘリオン計画』というのを見つけた。が、内容はまったくわからない……。
「仮死状態の人間を完全復活……なんかおどろおどろしいような」
ジンジャーが眉をひそめていると、プネウマがそれを取り上げる。
「それは結構重要なファイルだから、もって行くわよ。錬金術の知識がないと解読は……」
と、彼女がそこまで行った時。どこかでなんか奇妙な声がした。
「……何の音?」
漸く喋られるようになったミントが首を傾げるも、誰もわからず首をひねる。仕方なく彼女はそばにあったファイルを手にしていた。
「帳簿はどうするんです、カーターさん?」
「そこらへんは特に重要だから持っていくぞ。GFの内部情報が入っておるからのぅ」
そういい、カーターさんはてきぱきとファイルを整理する。プネウマ曰く取引材料になるかもしれない、ということだ。
「……おい。あんなのが密輸かよ」
ジンジャーは別の資料も手にしていた。そこにはヘイトマシーンの密輸についての情報が書いてあり、表情を曇らせた。
「資料はこれぐらいかのぉ」
そうこうしているうちに、カーターたちは資料整理を終わらせる。が、プネウマは外の様子を伺い、眉をひそめた。
「何かいるわね。……準備は出来てる?」
つまりは、直ぐに戦えるか、ということである。それにカモミールたちは頷く。すでに動物やら精霊やら召還が終わっているのだ。
『いつでも戦えますの~』
メルーナーもまたやる気まんまんで答える。それに苦笑しつつもカモミールは妖刀『裏紫苑』を握り締めた。

(続く)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

もうちょい、つづきます。

えーっと、シオンたちのリプレイ開始に伴い、こいつらの情報及びスズキ組など「リプレイに登場する他宿のエキストラ冒険者」についてもいずれ情報開示していく所存であります。

とりあえずカモミール率いる【カモミール小隊】はY2つさんとこで使われている聖暦でいえば
聖暦1372年 7月半ば頃結成
という設定です。何気にシオン達【ドルチェーズ】より先輩だったりするんですよね(汗)。
でも威厳がねぇ……。

それに伴いカモミールたちの苗字案を募集してるんですが・・・いいもんないですかねぇ。
名前はハーブで統一しておりますが個性がないと思われそうですねぇ;
でも、見ていただければわかる…と思うけど、こいつら…まぁ、ね(遠い眼)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-08-06 17:35 | 札世界図書館 | Comments(0)

いや、多分僕だけだと思うけどね (バム、どこからどう突っ込もうと悩む:汗)



 結界が壊れたのを感じ、一行はミントが走るその後を追った。そしてたどり着いたのは、2番目に結界を壊した場所であった。
「この奥……物凄く嫌な気配がする」
そういい、ミントは己を抱きしめる。バムもまた眉間にしわを寄せた。
「そうだな、ただならぬ気配を感じる」
「この先にいるのは暗黒魔術師…委員会の暗殺者しか、考えられないな」
ジンジャーがいつになく真剣に呟き、全員が気合の入った顔になる。
「皆、準備はいい?」
「もちろん」
マルパッチョの問いに、カモミールが頷く。一行はその先へと踏み出した…のだが、そこでまっていた人物に、思わずカモミールは笑顔になる。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:7(著:天空 仁)

「……?」
「どうした、カモミール」
待っていた人物は首をかしげる。ハッカが問いかけるとカモミールは
「えっ、だってこのひとぐっさ」
「大変残念なことに、有名なコメディアンではないのだよ。私の名前はフィータスです。お見知りおきを」
笑顔でいうカモミールに対し、彼は冷静に首を横に振る。そして小さくため息をついた。
「ちょっと待ちわびていましたね。いつになったらくるんだろうって。どうでしたか?私が用意した結界は」
「……単調ね。どうせなら毎回違う敵をご用意なさいな」
彼の言葉にベイジルはきっぱりといいきる。彼の表情が聊か険しくなったように思えた。彼からしてみれば、そう言われるとは思っていなかったらしい。
「あなたが暗黒魔術師なのね」
ミントが問いかける。愛らしい顔に若干の嫌悪が滲んでいるのが仲間たちにはありありと分かった。フィータスは苦笑する。
「暗黒?とんでもない。私たちは生と死を司る神に従うに過ぎないものです」
「それってバロン神、だろ?」
ハッカの問いに、彼はええ、と静かに頷く。バムはふん、と鼻を鳴らした。
「どう言いくるめても悪霊から力を得る魔術を使ってる事に違いは無いんじゃねぇか?」
「あなた方はすぐ我らの神を悪魔呼ばわりしますね。何を根拠に…正当化するのでしょう」
語りかけるように、ゆっくりとフィータスは言う。が、ハッカはその声色に表情を顰めた。どこか粘着質のあるようなそれが、嫌なのだ。
「まぁ、いいでしょう。愚民が力を失った神に縋り続ける理由など、関係ありませんから。おしゃべりはここまで。さあ、はじめましょうか?」
「……そうだな」
カモミールは一つ頷き、ゆっくりと己の獲物に手を伸ばす。
「俺も丁度……あんたの顔をぶっとばしくなってきたんだ」
こうして、戦闘が始まる!
「私の力を、存分に味わうといい……」
彼が力を試行したとたん、召還していた存在が消滅する。それに内心焦りながらもカモミールは刀を閃かせた。
「ふっとんでもらうっ!」
「GFの暗殺者にそのような技を…こざかしいっ!」
フィータスの手が動く。と、同時にカモミールは体制を崩し術によって束縛されてしまう。それは槍を手に襲い掛かったミントにも発動する。
「歪ませた正攻法でも、無理ってかあっ?」
ハッカが叫びながら剣を振るい、ベイジルがメスを閃かせる。マルパッチョとジンジャーもそれぞれ攻撃するが彼にはあまり効いていないらしい。
「くそ、GFの暗殺者てのはこんな出鱈目ばかりなのかよ……」
「それは私たちにもいえるけれどね」
ジンジャーのぼやきに、ベイジルが苦笑し答える。と、ふいに空気が変わった。
「バカいってんじゃないよ、あんたたち。ふぅ、やっと助けに入れたわ。結界をやぶるまで入ることが出来なかったのよ」
渋みのあるアルト。そして、凛としたまなざし。それに、全員の顔が明るくなる。
「ぷ、プネウマさんっ!」
「結界の件はたすかったわよ。それにしても、苦戦しているようね」
ハッカが笑いかけるとプネウマは苦笑する。一方、男もまたやんわりと笑った。
「これはこれは先輩じゃないですか!これで探す手間が省けましたよ」
「見ない顔ね。それにしてもまだ暗黒魔術の使い方が甘いわ。暗殺は……荷が重いんじゃないの?」
そのはきはきとした物言いが、頼もしく思える。一行が見つめる中、フィータスは小さく苦笑した。
「それはこれから味合わせてあげますよ、先輩。吟味してください」
戦闘が再開する。ハッカがアスカロンに力を込めるも、フィータスの結界の所為か、身動きが取れなくなる。これで動けるのは4人となってしまった。
(こういうときの治療法……ないのよね)
ベイジルは焦燥を顔に出さないよう刃を閃かせ、マルパッチョも同時に攻撃する。一方拙いと思ったジンジャーは一か八か血清薬というバーサークさせる薬を飲み干し、雄叫びをあげる。
「……実に下品だ、愚民が」
フィータスの呟きが聞こえるか否かは定かではないが、ジンジャーの瞳には彼しか写っていない。ぐるるる、と唸りながら襲い掛かり、それを彼は音もなく避ける。が、ベイジルのメスやバムの攻撃は避けきれず、思わずひるんだ。そこへジンジャーとマルパッチョ、バムが次々に攻撃をしかけ、ベイジルは彼の視界から逃れた。
(精神状態だけでも…っ)
と、彼女はブーケ『タッジーマッジー』を取り出した。これは精神を落ち着かせる効果を持ち、これで恐慌状態になっていた3人を落ち着かせることが出来た。
「たああっ!」
「ぐおおおおおっ!」
マルパッチョの鋭い蹴りとジンジャーの拳、そしてバムの一撃でいつの間にかフィータスはふらふらになっている。ベイジルはふふ、と笑った。
「よくも私たちの仲間にこすいまねしてくれたわね」
同時に閃くメスの連続攻撃。それにフィータスは目を見開き、束縛されていたカモミール達はようやく動くことが出来た。
「くっ、くそ……。こんな馬鹿な?!こんな所で私が滅びるなんて……あってたまるか!」
その言葉に、ジンジャーが黙って鋭い蹴りを一発浴びせる。起き上がれず、フィータスは喘いだ。
「た、立てない。立つことができないだと…?バロン様…ああ、バロン様…っ!」
その気持ち悪い様子に背を向けると、プネウマがため息混じりに佇んでいた。
「ああ、プネウマさん!生きてたんですね!」
「カーターはどうしたんだ?ちょっと気になるが…」
カモミールとバムの言葉に小さく微笑むプネウマ。彼女は安心して、というように…二人にチョップをかました。
「「いでっ?!」」
「せかすんじゃない。カーターは無事よ。南の洞窟に隠れているわ。
 騎士団が入ってきたから隠れていたのよね」
「そういえば、騎士団の連中から町長殺しの容疑をかけられたんだけど……」
ミントの言葉にプネウマはため息をつく。
「GFの委員会が手を回した、とみて間違い無いわね。十中八九」
「じゃあ、どうすんだ?騎士団に目をつけられちゃ……ルーラルに戻るのもままならねぇぜ?」
バムが肩をすくめると、彼女はもう一度ため息をついた。辺りの空気がやや冷たくなったの
は気の所為ではない。
「そうね。GFの追っ手がやってくる以上この街にはいられないわね。脱出しましょう」
「そうっすねぇー」
彼女の言葉にカモミールたちは頷き、南の洞窟へと急いだ。

(続く)
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by jin-109-mineyuki | 2009-07-29 15:13 | 札世界図書館 | Comments(0)

今の季節、目に涼しいが敵。 (マルパッチョ、実は欲しかったかも…それ)


 森の奥。その一箇所でふとバムは立ちどまる。不思議に思ったジンジャーだったが、彼もまた辺りを見渡し…頷いた。
「どうした、バム? ジンジャー?」
不思議に思ったハッカは二人に問う。バムは辺りを見渡しながら口を開いた。
「あくまで俺の勘だが、ここには敵が出ないだろう。俺が見張っておくから休んだらどうだ?」
「そうだな。そうしたいが……バムはやすまなくてもいいのか?疲れているのはおたがいさまだろう?」
ジンジャーが心配するがバムはにっ、と笑う。
「誰か1人が見張っていないと寝込みを襲われる心配があるからな。なに、俺はそんなに疲弊していないから気にする必要はないぞ」
「俺もそんなに疲れていない。後で交代してバムも休んでくれよ」
ジンジャーの言葉に、バムは首を横に振る。そして、カモミールもまたジンジャーの肩を掴んだ。
「ここはご好意に甘えて、休ませて貰え。普段お前が率先して見張りをしてるんだからさ」
「大体お前が俺の存在を忘れて眠ってることが多いような気がするが?」
ジト目で見るジンジャーにカモミールは苦笑する。その間にも先ほどの戦闘で傷を負った面々の手当てをベイジルは施していた。酷く疲れたのだろう、ミントとマルパッチョの二人は既に眠り始めていた。
「眠れる時間は少ないわ。二人も……」
彼女の言葉に頷き、カモミールとジンジャーも近くで眠り始めた。その間にバムはプーリー草という回復効果のあるものを採取しておいた。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:6(著:天空 仁)

 暫くして目覚めた一行はバムとともに森を歩いた。途中、なんか雰囲気的に呪われてそうな剣を引き抜いてみた。
「……つまりは、人外ブランドってことかなぁ」
ふとマルパッチョは引き抜いた剣をみつめ、呟く。その傍らではカモミールが何やら考えている。
「ひょっとしたらこのシリーズを全部集めたらいいことあったりしないかな」
「引き換えになにかもらえるかもしれないな」
そんなことを呟くハッカを見てバムは思った。
(ダメだ、こいつら……緊張感が続かない…)
なんだか、少しだけ頭が痛くなった気がした。が、あえて無視して先へと進める。進んで行くと、十字騎士の見張りがいた。どうやらこの森に逃げた、と気づいたらしい。
「ここからは逃げられない……か」
ハッカは内心で舌打ちし、もと来た道を戻る。一同は小さくため息をついたり、空を仰いだりした。森の中は一見平和そうだ。天気もいい。
「気分的に、お弁当もってピクニックとかしたいのにね」
「それが出来ない状況なんだよな」
ミントとジンジャーは顔を見合わせる。と、ミントはなんだかいやな予感がした。同時に少しだけ、メダイが熱を帯びているような気がした。
(これは……どういうことかしら?)
顔を上げ、ミントは走り出す。それに気づいたのはバム。
「お、おい!ミント、どこへ行く?」
「なんだか、あっちから予感がするの!」
「だからって急に走り出すな!」
ミントの後を追いながらハッカが叫ぶ。全員でミントが走る先へ向かうと……そこには結界が張ってあった。
「これなのね。私が予感したのは……」
ミントはそういうと、メダイを握り締める。追いついた面々は、その結界が何か、うっすら判った気がした。
「ま、念のために」
と、ジンジャーが賢者の瞳をつかったとたん……そこに現れたのは液体の塊のような巨人であった。
「なっ?!」
-貴様らの魔法では、解くことは出来まい。…我らの敵よ。
その言葉とともに、それは臨戦態勢をとる敵。カモミールたちはすぐさま獲物へと手を伸ばした。
「ウォータゴーレム……水の巨人ね」
ベイジルがメスを握り締め、それは語りかける。
-フィータス様に刃向かう者は始末するように命じられている。覚悟しろ。
その声は抑揚のない、されどどこか厳かなもの。自然と、一行の緊張感が高まる。
「フィータス、ね。そいつの面拝むまでは倒れるわけには行かなくてなっ!」
その言葉を皮切りに、全員が猛攻をかける。ミントのメダイに弱り、あっというまにゴーレムは消滅した。
「一斉に襲い掛かったらさすがにウォータゴーレムも……」
と、苦笑するマルパッチョ。ジンジャーもまた鼻を鳴らし憮然とした顔になる。
「でも召還術はできないな。無効化されるってのが気に食わない」
「まあまあ。とりあえず倒したんだからさっさとメダイをつかって結界を壊しましょ?」
ミントは二人をたしなめ、メダイに願いを込めて使う。と、金属めいた音を立てて結界は壊れた。しかし、雰囲気は変わらない。
「……まだ、結界はあるのね」
ベイジルがそうぼやいた刹那、目の前にまたウォータゴーレムが登場した。
-我らの敵よ……覚悟し
「「しつこいっ!!」」
ぼこすかぼこすかぼこすかぼこすか。
台詞を言い終わる前に、7人にのされるウォータゴーレムなのであった。
-で、出番を……(涙)。
「てめぇの出番は終わりだっ!」
ハッカの一撃でそれは倒れ、一行はそそくさとその場所を後にした。もし、ウォータゴーレムがあと一言いえたならば「もうちょっと手加減ってのをしてくれ」だったかもしれない。
「あと何箇所か、あるみたいね」
歩きながらマルパッチョがいう。それにミントは頷きながらメダイを握り締めた。
「なんとなく、どこにあるかわかるわ。多分あと二箇所よ」
「手っ取り早く壊そうぜ!で、暗黒魔術士をぶっとばそう!」
ハッカはそういい、少女の肩を軽く叩く。そして、7人は順調にのこり2箇所の結界も壊しそのたびにウォータゴーレムを倒すのだった。

(続く)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
ぼこられるウォータゴーレムが見られるのは、このリプレイだけです。
……多分。
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by jin-109-mineyuki | 2009-07-17 22:58 | 札世界図書館 | Comments(0)

実を言うと、カモミールたちはシオンたちの1年ほど先輩 (ジンジャー、実は盗賊兼舞踏家)


「だーっ!! ベイジル!!茶をくれーっ!!」
「この間パプリカに色目をつかった罰ですわ」
「違う!誤解だ!!だから極北茶じゃなくて普通のお茶をくれーっ!!」
カモミールとベイジルが小声で言い合いながらも、一行はルーラルに到着した。最初に異変を感じ取ったのはマルパッチョである。
「あれ? なんかおかしいよ……」
「たしか、ルーラル祭が行われている筈だ。その割には静かだよな」
ハッカもまた、辺りの静けさに怪訝な顔つきになる。バムもまた、表情を曇らせた。
「ぬぅ……なにか物凄くいやな予感がするぞ。 何か、あったな」
そうこうしているうちに、1人の男が近寄ってきた。白銀の鎧に、十字を光らせた盾……どうやら聖騎士らしくみえるが。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:5(著:天空 仁)

「お前ら、見かけない顔だな。ルーラルの街に何のようだ?」
「お前は一体どこの兵士だ?ルーラルの自警団か?」
バムが問うが、ジンジャーが引き止める。
「バムさん、よく見るんだ! 彼は北方十字軍騎士団の騎士だっ」
「そのとおりだ。自警団ごときと一緒にするな」
ジンジャーの言葉に、その騎士は一つ偉そうに頷いてみせる。その仕草に全員がむっ、となった。が、とりあえず平静を保つ。
「そうか。それでその騎士様が何故このような田舎町にいらっしゃるので?」
「答える必要はない。お前らこそ、何故この町に来たのだ」
バムの問いに答えず、騎士が問いかける。それにさらにむっ、としつつもカモミールは顔をあげ
「ちょっと人を探しに着たんです。申し訳ありませんが、急いでいるので通させていただけませんか?」
と、丁寧にいった。……が。
「貴様ら、町長殺しの犯人だな!」
「はっ?!」
いきなりの言葉に、口があんぐりと開いてしまう。
「ひっ捕らえろ!町長殺しの下手人だーっ!」
「ちょいまて!!何かの誤解だ!!」
「てか、言い方が時代劇!!」
ハッカが叫び、ジンジャーが突っ込み、その間にも笛が吹き鳴らされてわらわらと騎士たちが集まってくる!
「ちっ、騎士相手じゃたちが悪い…」
バムが小さく舌打ちし、カモミールもため息をつく。
「…ここは、大人しくしておいたほうが賢明かな?」
「つべこべ言わず、縛につけ!!」
騎士がそういい、手早く縄をかける。結局7人はなすすべもなく捕まり、監獄へと入れられてしまったのだった。

「で。騎士曰く処分は明日発表とのこと。十中八九濡れ衣で斬首か?そう思うと、なーんか腹立たしいな……」
監獄の中で、ジンジャーが呟いた。
「くっそー!何もしてないのに何でこんなとこに閉じ込められてんだ?」
カモミールが苛々と呟き、バムもまいったな、と肩をすくめる。当然監獄の扉には鍵がかかっており、このまま手を拱いていると暗殺者が来る。
(なんとか開錠できないかな……)
カモミールはちらっ、とジンジャーを見、彼もまた頷いた。
「とりあえず……って痛っ…」
「魔法による防御か。…賢者の目ぐらい大目にみろってんだ…」
カモミールが手早く癒身の法を使い、傷を癒す。それに礼を述べるとジンジャーは早速愛用の針金で鍵をいじり始めた。普段ならばあっという間に開けてしまうのだが、今回はそうもいかなかったらしい。小さくため息をつき、針金を引き抜くと小さく舌打ちした。
「…何十にもロックされてる。こじ開けている間に見張りが来るな、これは」
「見た感じからそうだな。俺でも開けるのには苦労しそうだ」
バムもまた小さくため息をつく。が、彼はおもむろに扉へと歩み寄った。そしてジンジャー
へかわるように言う。
「えっ?」
「お前らじゃ、荷が重そうだから、俺が開けるとするか。ただし、騎士団から追われる羽目になるが……それでもいいか?」
「バムさん、これ……あけられるの?」
メダイを握り締めていたミントが問いかける。彼は小さく微笑んで見せた。
「まぁやってみないとわからないが。…あけちゃっていいか?」
「うん。あけてもらえるとたすかるわ」
彼の問いにミントが丁寧に答え……それに全員が頷いていた。バムはにっ、と笑う。そして開けるぞ、と言ったとたん右手の指が飛んだ。おもわず口を開くハッカ。
「その義手、まさかと思うがいろんな機能が満載……てか?」
「そのとおりよ。昔いろいろあって失った際に仕込んでもらったのさ。じゃ、はじめるぞ!」
バムはその右手を使い、素早く鍵を開ける。後にジンジャーは語るが、自分がやるより数倍も早いらしい。
「うわぁ、バムさんすごーいっ!!開いたよっ!」
「早くしないと奴らが来るぞ、マルパッチョ」
思わず抱きつくマルパッチョの頭をなで、バムは苦笑する。そして一行にそっと囁く。
「それじゃあ、なるべくばれないように静かにいくぞ」
「おお」
全員頷き、7人はそろーりと静かに牢獄を抜け出した。こういうことには実を言うとオーベルトゥーレからきた侵略者たちにとって朝飯前であった。彼らは母国では有能な軍人として一応名をはせているのである。階段の付近まで彼らは悟られずに行動できた。
「…一応言っておく。奴らは腐っても権力だ。手を出した時点で死刑が確定すると思え」
バムの言葉に、全員頷く。一応、知識としては知っていることだ。
「手を出すな。時間稼ぎさえすればいい」
「せっかく『裏紫苑』で欲望でもさらさせようと思ったのに」
「それが出来たらまだ楽だよな」
カモミールとハッカは顔を見合わせて苦笑する。そして、彼らはとりあえず階段を上り、静かに廊下を突き進む。すると見張りたちも気がついたようだ。
「だ、脱獄だっ!逃がすな!!」
「意地でも……逃げてやるぜ!」
カモミールはにやりと笑い、その場へと踏み出す。一行もまた襲い掛かる騎士たちの攻撃をただひたすら避けたり、見切ったりする。
「……やはり死刑が怖いか」
「まーな。こっちも色々あるんでねっ」
騎士の一撃をどうにかさけつつ、ハッカが笑う。本当はその顔面に拳を叩き付けたいが、我慢しなくてはならない。
「バム、まだなのか!」
「もう少しだ。もう少しでセッティングが完了する!」
ハッカの問いにバムが答える。それが、一行の内心も明るくする。あと少し気を引けば……。全員がそう思った時、バンッ、と何かが爆発した。飛び散る光に、騎士たちが慌てふためく!
「ぬおっ?! なんだ、こりゃあっ!!」
「今のうちだ、逃げるぞ!!」
バムが先導し、カモミールたちは必死に走った。走って走って、どうにか森の中へと入りこむ。どうにか追手はないようだが、それでも7人は走り続けた。

(続く)
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このリプレイ(もどき)はカードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)をプレイした感想なども混ぜて書いております。

……くあぁ、『蛇の王』…プレイが最初からだわぁ(吐血)。

『ヘイトマシーン』→『眠れる狂気』→『蛇の王』→『水晶の姫』(上・中・下)→『ブルーラインズ』→(秘密)→オリジナルSSという風にする所存ではありますが回想という形でも伊達さんの『異形の心』もやりたいと思っています。いやぁ、ちょっと改編する予定ではありますが……。

因みにオリジナルSSは若干カードワースの世界とは違う雰囲気です。
いや、『ケロロ』がモデルにしている割にラボとかメカとかでないカードワースクオリティなんで、そこはまぁ、カオス風味で楽しんでいただこうと計画中。

おまけ
Y2つさん所ではカードワース世界で『聖暦』を使用しています。
ので、僕もそれを適応させていただいております。カモミールたちの設定は「聖暦1372年 7月半ば頃結成」という風になっています。つまりは…スズキ組やドルチェーズ、六珠よりか先輩なのです。
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by jin-109-mineyuki | 2009-07-08 23:06 | 札世界図書館 | Comments(0)

因みに、今回は長めです、話 (ミント、ちょっとヒロイン目指しました。後日)


「ルーラルに行く前に買い物でもしますか」
貰った軍資金をベイジルに預けつつ、カモミールが言う。が、即座にバムの手が覆いかぶさる。
「?!」
カモミールがきょとんとなるも、バムは目で「向こうを見ろ」とさす。気づいたのか一行もまた見るとなにか、いる。
(戦闘の準備をしとけ)
バムの言葉に、全員うなづき獲物に手を伸ばす。カモミールもまた軽く呪文を唱える!
「メルーナー、こいっ!」
『治療しますの~♪』
するとふわり、とカードから水の精霊メルーナーが姿を現した…が、バムにぶつかって頭をぶつけてしまった。
「いっ…嬢ちゃん、気ぃつけな?」
『くすん、ぶつけましたのぉ~』
「……横とび、やめたら?」

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:4(著:天空 仁)

その間にもハッカとベイジルの歌声が聞こえ、ジンジャーも氷の乙女を召還する。そしてマルパッチョが魔法の鎧を唱えた。
「準備OKね。さあ、まいりましょう♪」
皆の準備が終わったところで、ミントが微笑む。何気なく台詞を取られた感を覚えつつもカモミールは『裏紫苑』に手を伸ばした。
「あのメダイは?」
バムの問いにミントは微笑んでみせる。彼女が首にかけているのだ。
「それよりも、出て来たらどうだ?いやなにおいがぷんぷんする」
挑発するようにカモミールがいうと、1人の男が姿を現した。
「勘は、いいようだな」
音もなく現れたその男は、値踏みするように7人を見……そして言った。
「恨みはない。が…死ね」
同時に、彼の姿が幾人にも分かれた。一行は魔力の結界を肌で感じる。
「影がたくさん? どれが…本物かしら?」
「同じに見える…見分けがつかないな」
「恐らく全部、奴の能力による幻影だ!襲ってくるぞ!」 
ミントとジンジャーが思わずこぼし、バムが叫ぶ。
「なら、全員萌えてもらおうかっ!」
『ですの~♪』
カモミールがにっ、と笑って『裏紫苑』の力を解放し、全員襲い掛かった!

(しばらくおまちください)

しばらく(念のために)いつものように戦闘をするも、影が「ねこみみ大好き♪」とか「せっかくだから俺は赤い方を選ぶぜぇ~」とかしか聞こえず、なんか手ごたえがない。
「やっぱり、これかしら?」
と、ミントは懐から例のメダイを取り出す。
「どうだ、効いただろ!」
カモミールが叫ぶと、破壊音が木霊し、暗黒魔術師はがくり、と膝を突く!
「結界を壊したの。やはり、効果があったのね」
ミントの言葉に暗黒魔術師は苦々しい顔をする。
「なら……自分の力で倒すま……」
バキッ! ズシャッ!! ザクッ!!!
魔術師が何か台詞をはこうとした瞬間、一斉攻撃が施される!そして、一太刀も振るうことなく、その暗殺者は倒されたのだった。
(うっわー、えげつなー…)
バムは、平然と一息つく6人を見て、そう思いつつも平静を保った。まぁ、悪いのは向こうだ、と自分に言い聞かせることで納得したのだ。
「これで、暗殺者の一人を倒したのか」
ふん、と鼻を鳴らしてハッカが呟く。バムは小さく頷いた。これでルーラルに急ぐ理由は、出来たのである。

 一行はルーラルへ(用心しつつ)急いだ。その中でも話は弾むもので……。
「ま、久しぶりに『北の果て』が飲めると思えば悪くないな」
「あの待ちは林檎がメインですものね」
バムとミントはそういいあい、笑いあう。一同もそれに釣られていた。
「……でも、極北茶はノーサンキュー。あれは地獄の味だ」
ジンジャーがあからさまにいやな顔をし、ベイジルはくすくす笑う。
「でも、親父さんは気に入って飲んでいるわよ?故郷に送ったら上官も気に入ったみたい」
「うそだろよ?パプリカだって嫌がってたじゃねーか!」
ハッカが驚いているとカモミールは若干青ざめた顔をした。
「なぁ、ベイジル。俺の水筒……めちゃくちゃ苦いんだが?」
「ああ、それ極北茶です。今朝入れているのを見ました」
マルパッチョの言葉に、カモミールの表情が凍りつき、全員がまたそれで笑うのだった。

その頃、マリンに対して悪態をつく存在がいるとも知らず……。

そして、ルーラルでは1人の男が笑っていた。
(既に結界を張り巡らし、さらにはあの連中だって動かしている。
 さあ、どう行動する……クソ忌々しい冒険者ども?)

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……とりあえず、一言。
『怪刀を帯びし者』カモミール率いる『カモミール小隊』メンバーの苗字、なんか案あったらください。
ただし、マルパッチョを除く(連れこみのNPCなので)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-30 01:52 | 札世界図書館 | Comments(0)

危険があぶない (ハッカ、時には真面目に活躍したい)


「……なんか、見られている気がする」
クリウス商会へ走る途中、ジンジャーが思わず呟くもののその首根っこを引っつかんでハッカが走る。疾風のように駆け込んできた6人に、従業人は額に汗を浮かべたが、ハッカたちの言葉を聞き更に青ざめた。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:3(著:天空 仁)

「ちょっ、その……急にそんなことを言われましても…。それに、クリウス様は間が悪い事に外出中ですしですし……」
極度に緊張したのか、微妙に言葉がおかしい。何時帰ってくるのか分からないといわれ、ベイジルは思わず口元をほころばせる。……いや、青ざめる従業員の顔に反応しているらしい。
「…ベイジル、落ち着いてくれ。それと悠長な事言っている場合じゃないんだ!何処に行ったのか教えてくれ!」
そんな彼女を揺さぶりつつも器用にハッカが言う。その形相に怖気づいたのか、従業員の声が微妙に上ずった。
「そ、それがクリウス様は盗賊ギルドに出かけているのです」
「たしか、財団員が居たわよね。だったら話が早いわ。……いきましょ」
ベイジルの言葉に一同頷き、おなじみの盗賊ギルドへと走っていった。この後、この従業員が腰を抜かしたというのは知らないままそこへと駆け込むと、一見優男風のクリウス商会会長が一人の男と話している。
(言っちゃ悪いけど、浮いてるなぁ……ドルイズさん)
カモミールはふと、そう思ってしまった。思わず目があった盗賊風の男にはなーんか弱そうと言いたそうな目を向けられているので余計になんだかなぁ、という気分だ。
「ああ、皆さん。どうもお久しぶりです」
気づいたのか、ドルイズがほえほえとした笑顔を6人に向ける。微妙に脱力しそうなのを堪えていると、盗賊風の男が口を開いた。
「ドルイズさん、知り合いで?」
「ああ、そうだ。ルーラルの一件で助けてくれた【カモミール小隊】のみなさんだよ」
ドルイズに紹介され、カモミールたちは一礼する。と、盗賊風の男はへぇ、と目を丸くする。
「こいつらが化け物機械をぶっこわした連中か?……たいしたもんだぜ」
「いや、それほどでもないよ」
先ほどのことを思い出し、カモミールが苦笑する。
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はバンバーダっていうんだ。よろしくな。まぁ、ここいらでは俺を『バム』って呼ぶから、そう呼んでくれ」
そういってにっかりと笑うバムに、一同も笑顔を返す。なんだが、気が合いそうだ。根は悪くないらしい。ドルイズ曰く、クリウス財団のトレジャーハンターで、カーターの友人らしい。
 とりあえず、カモミールは今朝起こった出来事を簡単にまとめ、ドルイズに話す。それにバムはあからさまに表情を渋らせた。
「早速GFの暗黒魔術師がおいでなすったか」
「やっぱり、大変なことになってしまいましたねぇ」
ドルイズもまた、ずれた眼鏡を正して頷く。そして、GFについてバムと話していた、とため息混じりに呟いた。カモミールもまた、先ほど襲い掛かってきた存在のことを思い出す。
「ああ、あのあんちゃんもGF暗殺者の幹部だっていっていました」
「なんか、とんでもない魔法をかけられて、情けないことに手も足もでなくて。まったく歯が立たなかった…」
ジンジャーが苦々しい表情でいう。彼も暗殺の技を持つが、何も対抗できなかった、というのが悔しいのだ。バムもそれには表情を険しくする。
「ゲッ、幹部クラスが来たのか?!厄介な事になりやがったな。で……その男の名前はなんてえんだ?」
「カシアス=ベイスよ。赤い髪の……ね」
ベイジルが憮然とした顔でいい、瞬間、二人の顔が若干こわばる。不思議に思ったミントは首を傾げるが、バムは目をしばたかせる。
「ど、どうしたの?」
「あのカシアスか!! お前ら、よく生き残ってるなぁ!」
「私も、噂には聞いていたわ。内心、嘗められたた気分よ」
「いや、その…バムさんとベイジル…その人知ってるのか?」
ジンジャーが二人に問うが、ベイジルは例のごとくふふ、と笑うだけである。カモミールは小さく苦笑した。
「ジンジャー、彼女に聞くのは無駄だ。俺も上層部も知らない情報網があるのはたしかだろうが…」
「正直、ベイジルが知っているのは驚きだが。カシアス=ベイスってたら裏社会じゃ知らない者はいないぜ。噂じゃ騎士団の一個師団を一瞬にして崩壊させたってぐらい凄腕の暗黒魔術師らしいしな」
その言葉に、ベイジルとジンジャー以外の全員が絶句する。
「一個師団…それも案外嘘じゃないかもね」
ベイジルが冷静に呟き、バムはあくまでも噂だが高位の暗黒魔術師なら…と付け加える。
「なんでも、奴が通り過ぎた後には傷一つ無い騎士どもの亡骸が山積みにされていたっていうぜ。ホント、お前ら運がいいな」
「そうかもしれない…な」
バムの言葉にジンジャーはため息混じりにうなづくが、その様子をハッカたちは若干ぴりぴりとした空気に身をこわばらせた。
「軍人暦もあるし、冒険者としても案外長いが……あいつらの会話が微妙に…」
ハッカの言葉にうんうんとうなづくミントとマルパッチョ。
「GFが雇っている暗黒魔術師についてはプネウマから色々聞いています」
ドルイズが穏やかにいい、それにベイジルが肩をすくめる。
「私が思うに、私たちの力ではどうにもできそうにないような気がしますが。まぁ、無茶をしろというのなれば、しますが?」
その言葉にドルイズも表情を曇らせるが、カモミールたちはそれが上辺だけの言葉であると感じている。ベイジルの目は相変わらず楽しげだからだ。それに気づいているか分からないが、ドルイズは苦笑する。
「ええ、恐らく正面から戦っても勝てる相手ではないことは確かでしょう」
「でも、あきらめちゃダメだぜ?凡人があきらめちゃ取り柄なんてないだろ?」
バムの言葉に、全員が笑顔に戻る。
「はは、確かに言えてるな。でも、カシアスがやったように魔力で結界を張られたらどうしようも…」
ハッカがそういって首をひねった時、ばっ、とドルイズの手が彼の肩にかかる。そして、妙に輝いた瞳を向けていた。
「なっ?!」
「そ・こ・な・ん・で・す!!プネウマも言っていましたがその結界さえどうにかすれば勝てなくはない、と!」
「いや、近い!近いってドルイズさん!!」
(その前に軍人であるハッカさんが動けないって……)
微妙に輝いた顔のドルイズをとりあえず落ち着かせるハッカ。それをみつつもマルパッチョは若干身をこわばらせる。
「で、でも結界はどうやって破る?」
ハッカの素朴な疑問に、空気が凍る。カモミールたちは結界そのものを壊す力を持っていない。せいぜい魔法を無効化させるだけが精一杯だ。普通、魔術師の結界を破るにはそれ以上の術士が力を試行する必要がある。バムは魔法が使えない、といい首を横に振る。
「それに関しては前に彼女と同じ話をしました。曰く、暗黒魔術師の力の源泉を押さえるしかない…とのことで」
ドルイズはハッカから離れ、眼鏡をかけなおす。どういうこと、とマルパッチョが首をかしげると彼は一つ頷く。
「GFの雇った暗黒魔術師はそもそも『バロン神(BULON)』という悪霊の力を源泉としているらしいんですよ」
その言葉に、空気がどん、と冷え込んだ。
「BULON……悪魔の力、ね」
魔族であるベイジルがくすり、と笑う。この悪魔の力を押さえる事が何より重要になる、と彼はプネウマの言葉を思い出しながらそう言った。
「バロンって、聞いたことはある。たしか聖北でも立派に悪魔って認定されているよね」
マルパッチョの問いに頷くドルイズ。一行は表情を引き締めた。バムも悪魔と戦ったことはないらしく、厄介だなぁと呟く。
「と、いう訳でとりあえずこれを持って行ってください。プネウマの話どおりならば、役に立つ筈ですよ」
と、彼は一つのメダイを取り出しミントの首にかける。ミントもまた、そのメダイが聖なる力を持つのはありありと分かった。
「ありがとう、ドルイズさん」
「いえ。それと、バムも皆さんに同行しますよ」
その言葉に、全員はきょとん、となるが彼曰く他にも守ってくれる人がいるとのことだった。
「ま、よろしくたのむぜ」
「おう!」
バムの言葉に、ハッカは笑みをこぼし彼とハイタッチした。こうしてカモミール小隊はバムとともにあのルーラルへと向かうことになった。が、ここであることに気づくカモミール。
「……またヒゲだな」
「でもカーターの旦那にくらべりゃ普通だろよ」
バムは思わず突っ込んだ。

(続く)
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 えーと異世界からの侵略者(?)『カモミール小隊』では科学チックなシナリオのリプレイを今後もやっていきます。基本、シリアスでもギャグ交じりで!!
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-24 22:00 | 札世界図書館 | Comments(0)

ファンの皆さんごめんなさい。 彼、はっちゃけさせてぇーっ!! (ベイジル、ちょいと苛々?)


 ……そうですか…。
 貴方がたが彼を殺した冒険者……なのですね?


その声はどこか現実的ではなく、けれど妙に透き通ったテノール。不意に、カモミールは口を開く。
「なぁ、今なんか声……しなかったか?」
「確かに聞こえた。姿は見えないが、生命反応が一つ多い」
クミンシードが頷く。他のメンバーも目だけで相手を探す。動いたら攻撃される可能性があるからだ。暫くすると、また響いてくる。

 まぁ、あのロラントはともかくとして。
 あのヘイトマシーンを倒してしまうとは……。
 大したものですね。正直、仲間として引き入れたいぐらいです。


風は吹かない。ベイジルが静かに問う。
「いるんでしょう……? ロラントの名を知っているのは……」
瞬間、最初からそこにいたかのように、紅い髪の人がいた。赤い瞳が特徴的な長髪の青年。一度見ただけでは性別が分かりづらいが、声からしてカモミールたちとさほど変わらない年齢だろう。彼は小さく微笑んだ。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:2 (著:天空 仁)

「ええ、居ましたよ。最初から……」
「! 何者だ」
ジンジャーが問うが、ベイジルが愚問よ、と小さく呟く。そしてため息混じりに言葉を続ける。
「GFの幹部かなにかかしら?」
青年は、ベイジルの言葉に対し慇懃な雰囲気で一礼した。それが様になっているので微妙に嫉妬しそうになるカモミール。
「ご明察。名乗り遅れましたが私はカシアスといいます。GFの第二委員会で幹部を務める者です」
「暗殺者……殺しに来たのか」
ジンジャーの表情が、『仕事』のそれに変化する。空気が冷たくなり、カシアスと名乗った青年はくすくすと笑う。
「いやいや、そうじゃありません。それに、命令が下されていたら即始末にかかりますから。いくらなんでも命令無しで無意味な殺害などしませんよ」
その言葉を聴き、今まで黙っていたハッカが顔を上げる。そして紅い瞳を合わせて口を開いた。その目はいつも以上に鋭い。
「そいじゃ……ディックがやった事も意味があるのか?」
「……それは、私の判断するところではありませんね」
彼は醒めた表情で肩をすくめる。微妙にぴりぴりとした空気の中、【カモミール小隊】のメンバーは息を呑んだ。暫くカシアスと6人は黙って互いを見ていたものの、その静寂を破ったのは客人だった。
「折角ですから、ついでにあなたたちの力を試させて頂きますよ」
そういうと、ぱちん、と指を鳴らす。微妙な魔力の変動に、ベイジルが眉を顰め…
「これは…!」
「?!」
一気に、眠気が襲い掛かってきた。音もなく、強力な…。
「な、なんか、意識が後頭部から一気に抜き出され……」
マルパッチょの言葉を最後に、全員が眠りに付く。その寝顔を愛でるように瞳を細め、カシアスは嘯く。

 どうです?
 私の能力《スリーピング・マッドネス》の感じは


「な、何よ……これ?!」
ミントが我に返ると、辺りは漆黒に染まっている。他のメンバーもその状況に若干驚きを隠せないでいる。ベイジルだけが最初から知っていたように平然としている。
「体感するのは初めてだけれども、やはり甘く見ていたようね…カシアス=ベイス」
「……何か来るぞ!」
腕を組むベイジルの傍らでハッカが身構える。目の前に現れたのは、機械人形のようなもの。それは一行に反応する。
「……カクニン。戦闘指数41パーセント以下ノセイメイエネルギーホソク。
 コレヨリ、破戒シマス」
瞬間、六人が動くよりも早く機械人形の手から光がほとばしり、その一撃でベイジルが倒れる。
「ベイジルッ!…!?」
カモミールたちも体が動かせなくなるものの、ジンジャーだけが《猫の業》で抜け出し戦闘態勢を整える。素早く氷の戦乙女を召還し、己も攻撃に踏み切ろうとする。
「くそっ、一撃でも……ッ!」
しかし、再び迸る青白い光に打たれ、全員が力尽きた。体が酷く軋む。しかし、それは僅かな間のことで、死に至るものではない……と全員がすぐに悟った。
「……洒落たことしてくれるじゃない」
ベイジルの皮肉に、カシアスがくすくす笑う。

 なかなかやりますね。
 更なる成長を期待していますよ…ふふっ。


「もう、どうしちゃったのよ!?もしもし? もしもーし? 生きてますかぁー!」
パプリカの声で我に返り、【カモミール小隊】は辺りを見渡す。そこに、カシアスは居ない。
「……いきなり眠ったから、何が起こったのかはらはらしたぞ。まぁ、6人とも一気にあの世行きってのは考えなかったけれどな」
クミンシードがため息混じりにいい、六人をみる。誰も健康状態に問題がない、と確認した上で
「カシアスの旦那だったら、とっくの昔に出て行ったよ」
と呟いた。
「…にげられちゃったねぇ」
マルパッチョが醒めたコンソメスープに口をつけながらいい、クミンシードは軽く瞳を閉ざした。
「約3時間前に姿を消したと思われる。俺も能力に多少やられたらしいが、大体そのぐらいだろう」
と、不機嫌そうな表情で珈琲を口にした。ベイジルは懐から医療で使われるメスを取り出し、くるくるともてあそび始めた。不機嫌になったとき、精神を沈めようと無意識にやる彼女の癖だ。
「もし、彼の言っていた事が事実だとすると……なかなか面白くなるわ」
「って暗殺者が来ているってことでしょ?」
ミントが声をあげ、彼女は言葉を続ける。
「早くカーターさんたちに教えないと。殺されてしまうかもね。私たちにしたってどうなるかわからないわ」
「……と・に・か・く!まずはクリウス商会にしらせなくちゃ!行こう!!」
いつもの調子のベイジルに思わず頭をかきむしりたくなるカモミールではあるが、とりあえずしめるところはしめるのだった。が、ふと……彼は恋人を見る。
「何?」
「いや、お前……なんでヤツの名前を知ってたんだよ?」
「ふふ、私の情報網でかじってたのよ」
ベイジルはそういうと、小さくあくびをする。そして、赤い瞳を細め僅かながら苛々したような声を漏らす。
「でも、正直彼の力を侮っていたわ。私としたことが……」

(続く)

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とりあえず、こんな感じで次にいきます。次回は次回でぐでぐで。
それでもいいならば、楽しみにしていただけると幸甚でございます。

 あと、NPCのカシアスさん登場。シリアス続きなのでこの人をはっちゃけさせたいのが本音だが、だめっぽそうです。ブルーラインズでの彼は痛々しい……(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-18 13:20 | 札世界図書館 | Comments(0)