ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:冒険者の宿【水繰の剣亭】( 82 )

月を見ながら食事はオツなものだが(パール思う、非常食じゃなかったら最高)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:32
銀斧と古城の弔い人

「ふぅ……」
アンバーたち【六珠】は、ある古い城で夜を明かしていた。依頼の帰り道、リューンまであと一息という所で雨が降ってきたためである。今は雨も止み、雲の切れ間からは美しい月が顔を覗かせている。【六珠】の一同はそれぞれ暖めた酒やらお茶を飲みながら非常食を食べていた。そして、1人の老人もまた、席を共にしている。
「今宵の月は、少しばかり磨かれたように見えるな」
「グロアさん、それは雨で空気が洗われたからでしょう」
黒いローブのフードから月を見、グロアと呼ばれた老人は瞳を細め、オニキスがレーズンを進める。それを口にしながら、彼は言葉を続けた。
「しかし物好きだな、お前達も。共に食事をしよう、と誘うなど」
「折角会ったんだよ。他にも色々話したいよ」
サードニクスが笑顔で答え、それには彼も小さく微笑む。何故か、このメンバーには釣られてしまいそうな気がし、事実こうして食事をしている。たまには、いいかもしれないなぁ、と思っていた。
「それにしても、この城……よく見れば見るほどいいディテールをしているわ。戦争でこんな状態になったのが悔しいわね」
今も栄えていればさぞ美しかっただろう、とジャスパーはため息をつく。が、隣のパールにはわからないらしく少々首をかしげる。
「俺に城の良し悪しはわかんねぇよ。それより……俺は外の月のほうがいいな」
「あら、意外ですね。パールのことだからお酒とご飯にしか興味がないかと」
そんなことを言ったのはクインベリル。彼女はトランペットの手入れをしながらも内心、グロアに興味を持っていた。
(一体、どんな戦争を見てきたのかしら。そして…1人で遺体を弔い続ける…。気になります)
本当は物凄く聞きたいが、恐らく彼は語りたがらないだろう。だからクインベリルは我慢し、トランペットの手入れを続ける。
「なんか、オロフさんと一緒に食事をしたときを思い出すな。
 事件解決後にこんなふうにしたけどさ、すっごく穏かな気持ちになれた」
アンバーはふと思い出し、少し酒を口にした。
「オロフ…?」
不意に出た名に、グロアは首をかしげる。
「うん、実はねぇ、ドワーフのオロフさんと一緒に戦ってきたんだよ」
少し興奮した様子でサードニクスが答える。少年にとって、記憶に色濃く残っているらしい。
「低俗な領主が、愚かなことに匠たるドワーフへ対し課税を言ったことが発端です。全く、冗談にも程がある、というものです」
オニキスがやや感情的になりながら付け加える。彼の弟が治める領地ではドワーフを『匠たる一族』、エルフを『知恵深き一族』と呼んで敬っているが故だ。
「アンバーが受けるって言ってくれて正解よ。私としては……お陰で思い違いをしている輩を捕まえることができてよかったんだから」
ジャスパーは少しだけ安堵したような、それでいてすがすがしそうな顔で答え……内心でお世話になった異端審問官に礼を述べる。
「実はオロフさんというドワーフがいる妖精窟がチーニの領主によって侵攻されたのが事の発端で、俺たちはオロフさんと一緒に横暴を働く領主をとっつかまえに行ったんだ」
「その領主というのがダークエルフとつるんでいましてね。正しく言えば、そそのかされて歪んだ異端の信念を吹き込まれていて、ドワーフが悲しいことにその犠牲になっていたのです」
パールとクインベリルがそう解説し、グロアはふむ、と一つ頷き瞳を細めた。
「お前達も、中々大胆なことをしているのだな」
「まぁ、異端審問官が知恵を授けてくれなかったら俺たちもヤバいことになっていたさ」
アンバーはそう苦笑し、一同もそれぞれ肩をすくめるやら、小さく舌を出すやらで反応する。その和気藹々とした雰囲気にグロアもまた小さく笑う。
「で、裁判とか終わったあとにオロフさんと一緒に飯を食ったんだ。そのときもこんなかんじでほのぼのしていた」
(……仄々と言っていいのか?)
アンバーの言葉にパールが若干首をかしげるも、他のメンバーは気にしていないようだ。その言葉に、グロアはそうか…と小さく呟いた。
「それでは、そろそろ失礼するよ。また、何かあったときは冒険の話を聞かせて欲しい」
そういい、グロアは1人席を立ち、闇へ消えていった。その背中を見送りながらオニキスはぽつり、呟く。
「……宗教戦争……ですか」
「まぁ、聖北も案外ドロドロよ。バルドゥアのよーな鬼畜もいるし?」
ジャスパーがそういいながらも十字架を握り締める。
「聖北以外を根絶やし……か。うん、なんかえげつなーって思うけど、良く考えればそんなことを別のとこもやっている、と考えると…頭が痛いな」
パールが珍しく真面目な目でそういい……サードニクスは小さくため息をついた。
「根絶やしにして、当然の権利として金目のものを奪っていく。……ま、最初からそのつもりだから遺体はほっぽらかし…ってこと?」
「そうだ。で、グロアさんは1人で埋葬を続ける……」
アンバーは頷き、言葉を続け……虚空に目を向ける。今宵も、彼は一人ちらばった遺体を弔い続けるのだろうか。明日も、明後日も。
「……なぁ、皆きいてくれ。
 明日発つ前に……グロアさんを手伝わないか?」
その言葉に、一同少しだけ目を丸くする。急な言い出しに全員が少しだけ目をぱちくりさせ……やがてそれは、小さな頷きへと変化した。どうやら、考えていたことは同じだったようだ。
「まぁ、宗教戦争ってーのは一つの予想でしかない。けど……やっぱ遺体がそのままなのはちょいとな」
「偽善と言われそうだけどね。第一に私たちには何の得もないわけよ。……それでもそんな提案をする貴方が、嫌いじゃないわ」
小さく微笑みながら、ジャスパーは言う。そして、彼女はその場に跪き祈りを捧げた。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
銀斧のジハード(Mart)
古城の老兵(SIG)

このリプレイ(もどき)は、上記二つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

こんな終わりだが……いいよな。若干しんみりしたか。

と、いう事でどーも、暑がりやなフーレイです。
今回は銀斧ッ!ある意味ハードボイルドテイストな『銀斧のジハード』ですよ!それに『古城の老兵』を組み合わせてみました。……魅力、出せなかったかもしんないけどね(遠い目)。まぁ、自己満足ッ!(をい)

 えー、Y2つさんとこのリプレイとはなんら関係がないことを強調しておきます(汗)。むしろ今後のリプレイでも友達になった、というノリでいろんな宿の連中が手土産もって遊びにいくとこにしようと考えていますけど……どうだろう?

リプレイでリンクする場合はちゃんと相談します。

因みに。
『銀斧のジハード』のリプレイは【札世界図書館】にて公開します。ラストのバトルの描写が納得いかないので修正検討中。そして『銀斧後日談SS』も考え中です。……『惨劇の記憶』リプレイは……プレイしてから時間がたつので『惨劇の記憶後日談SS』に切り替えます(滝涙)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-19 23:18 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

らららカクテル~(アンバー、また・・・)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:31
BARとコカ茶と商人の話

なんでかBAR薔薇園にきているアンバーたち【六珠】。実を言うと、もう一度カクテル作りをするために借り出された、のである。しかし。
「冒険者の仕事について、聞いてみたいっす!」
と言ったリントのお願いもあり、アルフォンスが入れてくれたお茶とオニキスが買ってきたおいしそうなチーズケーキでお茶を楽しみながら話すことにした。
「この間、『ラヴィアン』ってコカ茶の店に行ってきたんだ。とても美味しいお茶を出す店だから、いってみるといいよ」
アンバーが上機嫌でリントにいう。まぁ、アルフォンスが行ったら逃げられそうだが。
「しかし、ギャング…しかもリューンの盗賊ギルドが絡んでいる問題に首を突っ込もうとするとは。アンバーらしいといえばアンバーらしいのですがね」
オニキスがそういう側で、リントは目を輝かせている。
「凄いっす。アンバーさんたちも凄いっすよ!」
「まぁ、そこのギャングさんたちも本来は堅気…つまりは一般の方に迷惑をかけないようにしているようで。問題も解決しました」
とサードニクスはしみじみと言い、あのボルボというギャングの頭もできた人ですから……と付け加えた。
「なるほど。流石私が見込んだ冒険者なだけはあるねぇ」
アルフォンスは一人納得したような顔でアンバーを見るも、彼は内心複雑そうな表情だ。アニキに見込まれても、あんまり嬉しくない。それを察したのか、ジャスパーもちょっと苦笑する。
「けれど、ギャングとはいえなかなか強かったわよ。それに統率もとれていた。油断したら負けていたかもしれないわ」
「まぁ、頭をおもっての行き過ぎた行動が原因だったわけだが、あそこまで慕われる親分さんだったら……俺、ついていっていたかも」
パールが思い出しつつ唸る。彼曰くボルボは本当に筋の通った親分さんで「あれは本物の漢だっ!」とまで言っていた。が、クインベリルはやれやれ、と肩をすくめる。
「事件も無事に解決し、あの一党もまたもとの姿に戻ったわけですから」
「事件解決のために、冒険者さんたちってがんばるっすねぇ」
「それが俺たちだからさ」
リントが感心する横で、アンバーがふっ、と笑う。その姿をオニキスは微笑ましく思いながらもお茶を飲み、瞳を細める。冒険者になってけっこう経つが、アンバーは良い所だけ変わっていない。それが、彼にとっては何故か嬉しい。
(このままでいて欲しい。明るく、やさしいところだけは)
レベルが高くなるにつれて気位も高くなる冒険者も少なくはない。領主の補佐として冒険者を雇い、そういう輩を見てきたオニキスにとって自然体なアンバーたちは愛しい家族のような存在になっていた。
(【碧風と共に歩む者】や【風を纏う者】の先輩がたのように……、自然体で…)
願うように見つめる彼の肩を、リントが叩く。
「他にも話を聞かせてほしいっす。どんな依頼を受けたっすか?」
「そうですねぇ……」
オニキスは少し考え、ややあって静かに言葉を紡ぎ始めた。

 その一方、パールは若干機嫌よさそうにしている。
「何か、いいことでもあったのかね?」
アルフォンスの問いにパールはにっこりする。
「いやぁ、実はね。【水繰の剣亭】に来てくれた商人がさぁ!いいスキルを売ってくれたのさ」
「パールは槍を武器にしていて、いいアビリティを探していたんだよ。丁度いい物を見つけたから、うれしいんだって」
サードニクスもまた嬉しそうに頷くも、少しだけしょんぼりしている。その原因を知っているアンバーは小さな声で言ってみる。
「……あの黒猫のことか」
「うん。だって……かわいいんだもん」
サードニクスは小さな声で呟き、でもいいや、といってチーズケーキを口にした。クインベリルにくらべ、サードニクスは全くわがままを言わない。それゆえに、アンバーたちは少し心配だったりしている。
「欲しかったら言えって言いたいけどよー・・・・高かったな、あれ」
「そうよね。どうにかしたいけど。それぞれのスキルのこともあるからね」
ため息混じりにパールとジャスパーが言い合い、顔を見合わせた。

その様子をふと見てしまったオニキスは苦い顔をした。
(過去に弟がお金を送ってくれましたが……それを頼るわけにも行きません。あれはたまたまある依頼が領内にいい影響を及ぼしたからその御礼であったわけですから…)

……冒険者も、お金がかかるってことです、はい。 byオニキス

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
コカ茶店での小さな事件(でざーとわいん)
風たちがもたらすもの(Y2つ)
薔薇は魅惑の味わい(Ciel)

レベルを3に絞ってやってみた低レベルシナリオ。
過去に一つレベルを下げただけで死に掛けたわけですが、今回はそんな愉快なことも起こらず、ほんのすこしてこずっただけで済んだのは召還した精霊さんのお陰です。
ありがとう、オニキス。
ありがとう、アイマスなネレイデスたち……。

 あと、サードニクスが欲しいとおもっていたのは『猫の業』です。3000spなり。武具・「夕日の鉄撃」(SIG)にある『漆黒マント』は1000spなり。欲しいけれど高いから言わないサードニクス。一方クインベリルは欲しいものは欲しいと言ってアンバーたちに窘められるのでした。

2008年 7月 14日。
おまたせいたしました。やっとこさ出来上がりました。ごめんなさいです。
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-12 23:49 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

ヴァンパイアって、普通太陽に弱いっすけど(クインベリル、こう見えても)


『闇色の令嬢』

「……しばらくまって」
ベルベットの黒いドレスを纏った少女は、小さな声でそう言った。時間は真夜中。月齢の若い月は沈み、暗い屋敷を幾つものキャンドルが照らす。
「かしこまりました、お嬢様」
透き通るように白い肌のメイドはそういい、一歩下がる。少女は一つ頷いて衣服を正し、白い手袋を嵌めた。鏡に映った瞳は、キャンドルの輝きに染まって紫水晶のような輝きを見せる。髪に結ったリボンを直すと、彼女は振り返った。
「行きましょう。今宵は、狩りですから……」
少女、クインベリル・ブレス・エアギアスは幼いながらも妖艶な笑みでそういった。

 リューンより遠く離れたところに、中規模の都市があった。そこは代々公爵である「ヴィエント家」が治める場所で、人々はよい政をおこなう公爵を尊敬していた。

 しかし、それは表向きであり…本当にこの都市を治めていたのはヴァンパイアの一家「エアギアス家」だった。魔族の中ではかなり有名で特にファーデン・アビス・エアギアスはヴァンパイアたちから一目おかれていた。
「罪人の居場所は、わかっているのか?」
白銀の瞳を細め、ファーデンは傍らの執事に問う。彼は小さく目を細め、眼鏡をかけなおしつつ
「調べは付いております。私の部下がその宿を抑えております故、大丈夫でしょう。しかし念のためにナーデシアをお嬢様の警護につけます」
「ありがたい。ケイ、お前の采配にはいつも感心するよ」
「お褒めの言葉、感謝します」
彼は恭しく一礼し、一歩下がる。そしてドアを開くとファーデンによく似た少女、愛娘のクインベリルと黒いメイド服を纏った若い娘がそこにいた。
「まっていたよ、ベリー、ナディ。今宵の狩りは二人に任せようとおもう」
ファーデンは振り返るなり、二人にそう言った。クインベリルの表情が、自然と引き締まる。傍らにいたメイドは、優しく微笑むとそっと肩に手を置く。
「大丈夫ですよ、お嬢様。貴女様ならできますわ」
「ありがとう、ナディ」
ナディと呼ばれたメイドは、その一言に微笑むも執事は真面目な顔で二人を見る。
「ナーデシア、お嬢様を」
その言葉にメイドは頷く。そして、ファーデンはその様子に満足そうな顔をしながらもすぐに引き締め、
「この領内で……しかも私が愛する森で一家を惨殺した上に盗みと付け火…。
 赦しがたい所業だ。血祭りに上げよ」
握り締めた拳をわなわなと震わせ、彼は言う。自警団の警護を盗んで行われた犯行。黒く焼け焦げ、恐怖に見開いた目の遺体。その記憶が、彼の感情を高ぶらせる。
「わかっております、お父様。夜明けまでには狩りを済ませます」
「血は、飲んでかまわないぞ。ナーデシアが望むならその遺体を貰ってもいい」
「ありがたき幸せにございます、ご主人様」
メイドが嬉しそうに顔をほころばせる。その様子を楽しげに見ていた執事は懐から懐中時計を取り出すと、静かに言い放った。
「そろそろ、狩りのお時間です」
「ええ、行きますわ。…必ずや、首領の首を父上さまに」
クインベリルは小さく微笑むとスカートのすそをつまんで一礼した。

 音もなく、踊るように。すいすいと夜闇を行くと、一匹の犬がいた。白い毛並みがふわふわしていてあたたかそうだ。しかし、それはクインベリルとナーデシアの姿を見つけると、すっ、と1人の青年へと姿を変えた。
「お待ちしておりました、クインベリル様、ナディ。奴らは眠っております」
「ありがとう」
クインベリルは青年に礼を述べる。その間にも二人は青年にエスコートされ、一軒の宿へと入っていった。ここの主や他の客はケイの部下達によって案内され、避難を終えていた。ここで、処刑がおこなわれるのだ。
「さあ、はじめましょう?」
クインベリルは、白い手袋をはずす。その細い指の細い爪があっという間に伸びた。鋭いナイフをも思わせるそれで、一つの部屋に滑り込む。中では1人の男がいびきをかいて眠っている。別の部屋ではおそらく奴の部下が眠っていることだろう。眠っている男はぞくにいう「甘い顔」をしており、身体も引き締まっている。
「・・・おもしろくありませんわ。でも…血はおいしそう」
少女はふっ、と笑って音もなく男へのしかかる。無防備な胸へと身体を押し付け、首筋目掛け顔を近づけて。相手はまだ眠っている。どうやら、酒の中に何か仕込んであったようだ。
「死んでもらいますわ」
少女はそういい、男の首筋に牙をつきたてる。刹那、男は目を覚ますも、少女の牙が深々と刺さり、声を上げることができない。恐怖によって身動きもとれず、その甘味なれど激痛の伴う音に顔が引きつった。そして、近くではうめき声が聞こえる。ナーデシアが部下の抹殺をやっているらしい。それに少し微笑みながら、食事を楽しむ。

-罪人の血をすすり、町を護る。

それが、エアギアス家のやり方。
町を裏から守り、表向きのことは人間達に任せる。そして、自分達は高みの見物をしておくのだ。彼らはヴァンパイアであるエアギアス家を「森の貴人」と呼んで慕い、彼らもまた人間達とともに生きる。

普段は太陽の下で。
裁くときは、夜闇の中で。

「……これで、お父様……褒めてくださるかしら」
「ええ。じょうできですわ、お嬢様」
帰り道、クインベリルは首の入った箱を抱えながら呟く。ナーデシアは美しく微笑んでほめるものの、少女にとっては面白みがないものだった。
「なんか、おもしろくありませんわ。どこかへ旅に出たい……」
クインベリルは小さくため息をつくと、一軒の宿が目に入った。
「そこは冒険者の宿です。色々な場所で色々な依頼をこなす人々ですよ」
ナーでシアはそう説明すると、クインベリルはそうねぇ、と微笑んだ。
「いろいろな場所で依頼を? ふふ、それならば、きっといろんな都市を見れる。
 いろんな領主をみれるわね」
なんだろう、その『冒険者』という生き方が、すごく面白そうに思えた。
「勿論、依頼もさまざま。そして、失敗することもあれば、冒険者というだけで忌み嫌う人間もいます。それでもやる気があるならば…」
ナーデシアの言葉に、クインベリルは笑う。
「大丈夫ですわ。……未熟なヴァンパイアなれど、私は…きっともっと強くなって見せますわ」

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き

・・・この話を書くのに『羞恥心』(羞恥心)を聞きながらやってました。
日曜に執筆ってねーよ、俺(血涙)
日付は土曜だけどな。フーレイです。

今回はクインベリルの話。
太陽に当たっても平気なヴァンパイアって実はレベル10は軽く超えるやつなんじゃ……なんて設定を考えつつおもっておりました(第一にじぇんつさん作『ジェーンとニンニクと不死の女王と』に登場するヴァンパイアロードのNPC・ナイアッドがレベル14だし)。バランスブレーカーにならないように、こんな設定になったのですよ。第一に、最初から強かったら面白くないですから!

つまり、彼女もロード級に近いんです。
両親はロード級ですよ。

 あと、パパことファーデンさま。名前の由来はファーデンクォーツ(内部に白い糸状のインクルージョンを含んだ水晶)です。中にできた小さな亀裂が癒着したり、液体インクルージョンが流れ込んだりしてできるようで、愛情や絆に関係する力をもっているらしいですよ?

 これで【六珠】メンバーの冒険者になる前が書き終わったので、こんどはパーティー結成秘話になるかな。まぁ、ギャグになればいいなぁ。
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-05 23:41 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

アニキは多分、永遠の敵(アンバー、へこむ)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:30
アニキと一緒(嫌)。

あらすじ
盗賊退治から戻ってきたアンバーたち『六珠』は親父からアニキの依頼を渡され、「一週間飲み放題」で手を打った。そこで彼らを待っていたのは……

カクテルの材料さがしだった。

材料を求めて町中を歩き回り、苦労の末……
アンバー「色々探した結果、スイカ……ゲットだぜ!」
オニキス「アンバー、そのセリフは聊か版権に触りそうです」
華麗に途中経過をすっ飛ばし、ある兄妹からスイカを譲り受けたのだった。

が。

「……で、これがどうかしたのかね?」
と、真顔で問うアルフォンスさん。
「カクテルの材料ですけれど?」
とスイカを差し出すクインベリル。しかし、なんとまぁ、アルフォンスさんのミスだったのだ。そして、本当に欲しいカクテルの材料というのは『裏メニューカクテル』の材料だった。

「アニキだけが飲めるカクテル……」
聊かぴりぴりきているサードニクス。そう、裏メニューはアニキ専用カクテル。
(って事は、私たちは飲めないはずよね……)
なんて考えたジャスパーではあったが、探してくる材料に頭を抱えた。
「お、男達の魅力かよ。可憐な乙女たちの魅力(美力や愛でも可)だったらよかったのに」
パールがポツリと呟く。
「さすがアニキ。説明が全く説明になっていないわ……」
クインベリルもまた、帽子を脱いで呆れ顔。そして一同……依頼の帰りがてら誰もいない丘の上で

『何処の世界に男性の魅力を使う奴がいるんだッ!』

と、大声で叫ぶのだった。

「……果実屋の店主が哀れだったな」
遠い目でアンバーは呟き、ため息をつく。
「…パール、貴方のハッスルは忘れません。魅力を得るためにアニキへオイル片手に呼びかけ続けた姿を…」
天を仰ぎ、脱力気味に言うオニキス。
「俺は物凄く忘れたいんだ。おまけにあの兄妹のお父さん。無事なのはよかったけどアニキになってたのはもぅ……」
頭を抱えるパール。なぜかなみだ目である。
「そして、過ちを犯してしまったアンバーがダディにハグされて石化……」
ジャスパーもどこか虚ろな目で座り込む。
「果物屋で筋肉の妖精を手づかみにしたのはその鬱憤もありそうだよね」
サードニクスが若干呆れ気味に呟いた。ちなみに若干繊細かもしれないこの少年、牧師に向かって啖呵切っていたりする。
「図書館を手伝う少年、ちいさな男の子…。そして若干ヤバい牧師様。もう、なんか…いろんな意味で穢れたーって感じです」
少年よ、決してそのケーキがどこにあったかを知っちゃいけない…なんて思いつつクインベリルは飴を食べる。あのケーキは悪いが食べたくは無い。一堂、かなり疲れたらしい。で、アンバーはひとり飴をガリゴリ噛み砕き、吐き捨てるように呟く。
「女の子っぽい少年をアニキんとこに連れて行くのに眠り薬使ったら人攫いと間違えられたかんなー」
「いや、あれはアンバーが悪いと思う」
すかさず突っ込むサードニクス。
「そして真実を話してアニキと間違えられる私たちって一体……」
クインベリルは「かっこいい人~♪」とか思った自警団員に誤解されたのがショックらしく、膝を抱えている。
「と、とりあえず帰ろうぜ」
アンバーの言葉に、全員が頷く。こうして一行はとりあえず宿に帰ることにした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
薔薇は魅惑の味わい(Ciel)

手抜きじゃねぇっ!!
と、いう事でフーレイです。何気なくこのリプレイもどきがしたくなったんですよ。そして、魅力の組み合わせは毎度悩みます。今回は『ヒゲのダンディズム』というカクテルでしたが、いつもは『ディア・マイフレンド』で済ませます。で、これ、終わりにしておりません。
ちょいとネタがあるので、引き続き再来週もやります(をい)。
で、次週はお待ちかね(?)クインベリルの物語です。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-28 22:34 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

猫が泉に落ちたなら(パール、まさかまさかの?!)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:29
野獣と泉でパールが!?

…盗賊退治の依頼。そこで体験したのはなんと
『動物占い』(笑)

(……宝珠の力で動物になったんだよな)
アンバーが眉を顰めて唸る。
(で、洞窟の水でもとの姿に戻ったんですよね)
眼鏡をかけなおしてオニキスがため息をつく。
(…どうにか元に戻ったからいいけど…)
鼠の篭を抱えたサードニクスが驚いた顔のまま思う。
(これってありえないと思いたいんだけれど…)
ジャスパーはグレイブを手に唖然。
(実際に、なんか変わったよね…)
クインベリルはただただ帽子を握り締める。

彼らの目の前には…パールが座っていた。
しかし、彼らの知っている真っ白い猫のパールではない。

「なんだよ、みんなして。俺の顔になんかついてんのか?」
そういうパールではあるが、なんか目線が違う。もっと高い位置にある筈のみんなの顔。それが近い。つか、なんか……身体が重い。
「パール……よく見なさい」
オニキスが彼に鏡を見せると、パールは目をぎょっ、と見開いた。
「お、俺……元に戻ってるっ!!」

…なんか、泉の水でパールは本来の姿にもどれたらしい。

「言っておくけどね、パール。ゾウに化けたあんたと一番に出会ったのはちょっと拙かったわよ。逃げてなかったら死んでたし、クロヒョウになったクインベリルに見つかったときなんかちょっとだけ死んだおばあちゃんの声が聞こえたわよ!」
と早口でまくし立てるジャスパー。彼女はふっ、と小さく笑いながら状況をもう一度話し始めた。

タヌキになった筈のジャスパーは運良く泉におち、腹いっぱい水を飲んだので元に戻ったのである。そんな彼女は一人獣が徘徊する場所を彷徨っていた。
ゾウとタヌキをランタンで炙ったパンでおびき寄せ撃退し……
コアラをランタンで炙った野の花でおびき寄せて落とし穴に落とし……
クロヒョウをランタンで炙った干し肉でおびき寄せて撃退し……
ライオンを道で撃退し……
泉につけたり水を飲ませたりして元に戻したのであった。
「しかしね…さすがオニキス。タヌキになってもずる賢かったわ」
肉を掠め取られたことを悔やむジャスパーに、オニキスは苦笑する。
「まぁまぁ、そのときの私はただのタヌキでしたし…」
「僕は楽しかったって記憶があるなぁ、ライオンだったとき」
その一言にアンバーは苦笑する。
「こっちは、ちょっと大変だったぞ」
「まぁ、帰ってくるなり親父が別の依頼も持ってきていたので、話だけはきいてみようとカウンターにきたが…」
パールがぽつりと言うと…さっそく親父が説明し始めた

(しばらくおまちください)

なんか、イメージ的に妙にはっちゃけて賑やかなBGMが流れ、いろんな人の悲鳴が轟く『水繰の剣亭』に一同表情が強張る。
「…ちょっとまってください。物凄くいやな予感がするのですが
 私の気のせいでしょうか?」
眼鏡が落ちそうになるオニキス。
「いや、残念ながら僕も全く同じ予感がしている」
若干青ざめるサードニクス。
「……」
言葉を失うクインベリル。一行の目の前に登場したのは見間違うはずもないアニキだった。依頼人のアルフォンスは一行に笑顔を向ける。
「キミ達が、依頼を受けてくれる冒険者だね?」
物凄く人違いといいたいが、そうも行かない。と、言うのも親父とオニキス曰くアニキの一派は政治的・経済的に多大な影響力を持っている、とのことだ。
(うわー、めっちゃ嫌だー)
あからさまに嫌な顔をするパール。
「でも、文化的に影響がないだけマシなのかもな」
とも呟いてしまう。そして親父との多大な交渉の末一週間飲み放題で手を打った『六珠』一行は依頼人アルフォンスと共に彼の店『BAR薔薇園』へと向かうのだった。

「……アニキの依頼か。まともだといいなぁ」
それが、全員の願いだった。

次週、結果発表(ぇ)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
美女が野獣(Dr.タカミネ)
美酒は魅惑の味わい(ciel)

えー……一方は次週に持ち越しです。
薔薇ですよ。
むっきむきなアニキどもの為にがんばってきますよ。ふぅ(遠い目)。

あと、アンバーはコアラでした。オニキスとジャスパーはタヌキ、サードニクスがライオン、パールがゾウ、クインベリルがクロヒョウでした。
サードニクスがライオンなのが意外。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-21 21:35 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

・・・・・季節、ずれてね?(アンバー、わかりづらーい恋心)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:28
恋と占いとホントの気持ち?

 一方、アンバーはというと一人考え事をしていた。いろいろ他にも考えることはあるのだが、彼が今、一番悩んでいるのは実を言うと恋愛だったりする。
(……ネフィは素直に色々言ってくれるけど……俺は……)
ネフィとは、ネフライトの事である。『珠華』のメンバーで同じ村の出身である。そして、親が決めた許婚だったりする。
(確かに、ネフィはいい女だよ。俺も好きだ。けれど……なんで俺みたいなのを婚約者に選んだんだろ、カルサイドさん……)
カルサイドとはネフライトの母親で、村では長老の補佐をしているエルフの女性だ。アンバーの父親・トパーズとは幼馴染であり、ソーフィア家とティアーズ家は家族ぐるみの付き合いがあった。
 実を言うと、アンバーは昔からネフライトを少し意識していた。が、他人に色々言われるのが苦手だったのでずっと隠してきた。それは親同士が二人を許婚にしてからも。ネフライトはその少し前からアンバーに色々良くしてくれたが……。
(なんでか恥ずかしいんだよなぁ、こういうこと)
一人、ため息を付く。と、人の気配を覚えた。宿の娘さんと『珠華』のメンバーであるコーラルとタイガーアイ、『六珠』の仲間であるジャスパーとクインベリルが楽しげに宿へと戻ってきた。
「みんなおかえり~♪ どこに行ってたんだい?」
「えへへ~、アマンダの館です~」
タイガーアイがはしゃいだ様子で答え、娘さんたちはカウンターに集まりお茶の準備を始める。途中で買ったのだろうクッキーが、とてもおいしそうだった。
「聖樹館のクッキーって美味しいのよね~♪お茶の時間にはうってつけよ♪」
「そうですね。今日はおやじさんのおごりでしたから…それもうれしい」
ジャスパーとコーラルがお茶の準備をしながらおしゃべりし、アンバーはちょっと聞き耳を立てる。そして、2、3日前のことを思い出した。

『六珠』の6人でアマンダの館に行ったときのことである。そこで意外なことにパールが遠距離恋愛中であった事が発覚して一時騒然となった。が、それではない。占いの最中、アマンダはアンバーに小さな声でこう問いかけた。
「貴方には、好きな人がいるのね?」
「……っ」
その一言に思わず顔を赤くするアンバー。アマンダは言葉を続ける。
「けれど、貴方はそれを素直に出せない。周りに色々言われると余計に言いたくない。案外恥ずかしがりなのね」
「よ、余計なお世話だっ!」
小声で突っ込むアンバーに、彼女は目を細めてこう言った。
「でもね、アンバー。たしかに親同士が決めたことかもしれないけれど、その前から貴方はその人のことが好きだったんでしょ?なら、素直になりなさい」
そして、ネコのような笑顔で、アマンダは運気下降気味だから要注意ね、と付け加えた。

(どーすりゃいいんだよーっ! なんか言おうとするとブレーキかかっちまうしーっ!)
頭を抱えたアンバーの姿に、女性陣は取りあえず呆れるのであった。

 一方、ネフライトはというと一人聖樹館に来ていた。そこでアイスコーヒーを飲みつつ、ぼんやりと考える。
(アンバーって二人っきりの時は凄く優しいんだよね。人前ではなかなか甘えさせてくれないけれど)
そして、くるくると氷を弄びつつ小さく微笑む。
(確かに、あまり表現しないよね。でも……些細なしぐさから響いてくる。アンバー、私を好きになってくれてありがとう)
彼女にはどうやらアンバーの気持ちが届いているらしい。彼女が顔を上げると『見えざる神の手亭』の先輩冒険者であるエトワールとバルディッシュがデートをしていた。この二人は先日アレトゥーザで挙式を上げたらしい新婚さんで、その二人が眩しく写った。
(今度あたり、アンバーをデートに誘ってみようかな。ちょっとぐらい…甘えたいもの)

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回話題に上がったシナリオ(敬称略)。
アマンダの館(わらみー)
Cafeteria聖樹館(魔王ゆゆう)

このリプレイ(もどき)は、上記二つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

本当は一人で行くことができない『アマンダの館』……。PC一人でも行けるとほんにいいんだけれどもなー。

取りあえず、アンバーとネフライトの許婚コンビ話。
本当はネフライトの事を愛しているのに、言い出せないアンバーでした。
ネフィはというと感づいている模様。

おまけ。
季節的に春じゃないのか、今回のリプレイのよーなものよ(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-14 23:55 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

くぁー・・・ぐだぐだん(汗:オニキス、パン屋へ)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:27
パン屋とギャンブルと夕日の鉄撃

 アレトゥーザから戻ってきたオニキスは一人パン屋へとやってきた。ここはアネッタとカールの若夫婦が営むパン屋である。店に入ると、美味しそうなパンの匂いが鼻をくすぐる。そして、オニキスの姿を見た利発そうな女性が、嬉しそうに駆け寄る。
「ああ、いらっしゃいませ、オニキスさん」
「お久しぶりです、アネッタさん。今日は遊びに来ましたよ」
オニキスがにっこり微笑むと奥から優しそうな若い男性が現れる。アネッタの夫、カールは焼きたてのパンをバスケットいっぱいに入れて、優しい笑顔をこぼす。
「ようこそ、オニキスさん。妻から話は聞いていますよ。この間、お世話になったそうで」
「いえ、気にしないで。困ったときはお互い様ですから」
と、柄にも無くオニキスが照れているとアネッタが紅茶を用意してくれた。オニキスは若夫婦から椅子を勧められ、それに腰掛ける。あたりを見渡すと焼きたてのパンが色々並んでいる。どれもこれもおいしそうで、お腹がなりそうだ。
(そうですねぇ、皆にお土産としてなにか買っていきましょうか)
そう考えつつ、ふと窓側の棚を見る。……と、見慣れた狐耳の男と小柄な少年が町を歩いている。【珠華】のリーダーであるアメジストと【六珠】のチームメンバー、サードニクスである。二人は丁度このパン屋へ入ってくるサードニクスは入るなり、オニキスを見つける。
「こんにちは。あ、オニキスさん!」
「サードニクスとアメジストですか。二人とも買い物ですか?」
「まーな。俺はこいつの調節」
そういい、アメジストは黒いダイスを見せる。若夫婦もまた不思議そうにそのダイスを見た。冒険者は色々いるが、これも武器になるのだろうか、というような目である。
「そういえば、そのダイスって……」
サードニクスが眼鏡を正してなにかいおうとしたが、それよりも先にカールが口を開く。
「ああ、気づかなくてすみません。お二人もパンを食べていってください」
「えっ?いいの?」
サードニクスはぱっ、と顔を輝かせ、アメジストもやった、と口元をほころばせた。

 三人はカールお手製のパンを食べ、紅茶を飲みつつ話を続ける。アネッタとカールもまたその話に聞き入る。
「それじゃあ、そのダイスは戦闘に被害をもたらすこともあるのですか?」
アメジストの説明に、アネッタが目を丸くする。それがおかしいのか、彼はちょっとくすくす笑うがサードニクスとオニキスは苦笑する。
「そうだね。でも、イカサマさえ上手にやればいいんだよ。俺はまだまだだけどねぇ」
アメジストはくすくす笑いながら掌でダイスを転がす。その様子に若夫婦はきょとんとしているが、サードニクスは肩をすくめる。
「アネッタさんたちは心配しなくていいよ。戦闘でしか使わないようにしているから」
と、ギャンブルアーツの説明をしつつその傍らでオニキスは出されたパンの一つをはもはもと食べ始めた。やさしい蜂蜜の味が口の中に広がる。
「うん、もちもちして美味しいですねぇ」
「それは蜂蜜パンです。記事に蜂蜜を練りこんでみました。優しい味に仕上がっているかと…」
カールはそう言って蜂蜜パンを切り、アメジストとサードニクスにも渡す。
「あ、甘くて美味しい♪」
「確かに美味いな。甘いものが苦手な俺でも食べられる」
美味しいパンに舌鼓を打てて、すぐさま幸せそうになる二人。そんな様子にオニキスとアネッタは顔を見合わせて笑いあう。
「こっちのパンもおいしそう!カールさん、これはなぁに?」
サードニクスが手を伸ばしたのは、一見普通のパンである。
「それはミルクパンですよ。朝一番に取れた濃い牛乳を使用しているんです。…義父の大好物でした」
その言葉に、オニキスはすこしだけしんみりしてしまったが事情を知らないサードニクスはさっそくミルクパンを口にする。すると口いっぱいにふわりと牛乳の濃い味が広がった。牛乳へのこだわりも見え、少年は思わずぱくぱくと食べてしまう。
「うわぁ、おいしいなぁ~♪僕、これを買って帰ろうっと」
「ん?この香ばしいのはなんだ?」
その傍らでアメジストが目をつけたのは焼きたてのバケット。ちぎってみると周りはしっかりしていたのに中がふわふわ。香ばしい匂いに鼻をひくひくさせながら口へと運ぶ。さくさく感が気に入ったのか、狐の耳がぴくぴくしていた。
「今アメジストさんが食べたのはバケットパンです。外はしっかりしてますが、中はふわふわになっているんですよ」
「そういえば……この間も冒険者さんが買いに来たかしら?丁度あなたぐらいの女の子がこのパンを買っていったのよ」
アネッタがそう言ってすすめたのは甘い香りのコロネ。それに三人も目が釘付けになる。そして、彼女が「あなたぐらい」といいつつ見たのはサードニクス。
「んー・・・誰だろ?子供でも冒険者っていっぱいいるし」
「そうですねぇ。それより、今はこのパンを食べましょう?」
首をかしげる少年だが、オニキスは考察よりも今はパンが食べたいらしい。三人は手にすると一緒に一口。すると、とろりとしたチョコレートクリームが口の中に広がった。甘いものが好きな人にはたまらないだろう。
「それはチョココロネです。クリームをたっぷりと入れてみました」
カールの説明に、オニキスが小さく顔をほころばせる。
「では、私はこれを買って行きますよ」
「俺はバケット。こいつに干し肉とチーズを炙ったものを乗せたら美味そうだぜ」
アメジストも珍しく笑顔を向けた。

 その帰り道。サードニクスはミルクパンを齧りながら前を歩く。
「そうそう、サードニクスは何を買ったのですか?」
「ん? これだよ」
オニキスの言葉に、少年はすっ、と投げナイフを見せる。流石盗賊、動きに無駄が一切無い。雨ジストもまた興味深そうに少年の手を見る。
「夕日の鉄撃で買ってきたんだ。この間の依頼で使い果たしちゃったから……」
本当はもっと丈夫な普通のナイフがほしいけど、といいつつもサードニクスはいつのまにかナイフを隠していた。あまり一般人には見せたくないらしい。
「ふぅん、お前も盗賊らしい顔になったな」
アメジストはそういい、その店をあとで訪ねよう、と考える。
「実はね……欲しい防具を見つけたんだ。でも高くて手が出ないよ」
サードニクスはミルクパンにかじりつきつつ、ため息混じりに呟く。その店で見かけた盗賊用の防具、漆黒マントはとても魅力的に見えたのだ。
「それだったら、ギャンブルでもして金を増やすか」
「堅実に依頼を成功させ、お金を貯めるしかないですね」
アメジストとオニキスに言われ、サードニクスは小さくうん、と頷いた。
(店のおじさんもベテラン向きって言っていたなぁ。…ベテラン、かぁ…)

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
魂の色(ZERO)
ギャンブルアーツ指南所(Hotoha)
夕日の鉄撃(SIG)

このリプレイ(もどき)は、上記三つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

諸事情によりの修正もありますが、まぁどうにかなるでしょう。
そして看板パンについて。どれ!とはしていませんが全部だして、みんなで美味しくいただくという話にしました。そして、買い物をしている。……うん。既に『聖夜の死神』(F太)をしていたからね(既にオープンしていたのよん)。

と、とりあえず今回はのんびりと羽を伸ばしてみました。
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by jin-109-mineyuki | 2008-06-07 23:27 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

更新、来週は大丈夫だろうか(ヒスイ、目指すは)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:26
焔と家宝の鎧…あと、希望の都。

 さて、アンバーたちがアレトゥーザで暴れているころ。アメジスト率いる【珠華】は仕入れたスキル等の試しから帰ってきた。
「つつ……やっぱ厳しいですねぇ」
と、ヒスイが傷を抑えつつカウンターに座り、乱暴にアメジストがそこを叩く。
「っ!」
「これぐらい軽い。ま、目指すと決めたからには本腰入れるこった」
彼はそういうと狐の耳をぱたぱたさせ、早速親父に葡萄酒を頼んで呷る。その様子に肩を竦めながらネフライトがため息を付く。
「買い物ついでにフォーチュン=ベルでゴブリンとウルフ討伐。
 その後にまたワディムさんの所で剣術修行……貴方らしいけれど…」
「……少しは休んだほうが…」
「そうだよ、体壊しちゃうから…」
コーラルとタイガーアイも心配するが、ヒスイは大丈夫、と言ってサラマンダーを召還した。赤々とした火蜥蜴が傷をぺろりと嘗めた途端、傷が焼けて塞がっていく。
「ヒスイも男の子なのね。だけど、心配させちゃうのはだめよ?」
「分かっています」
トルマリンの言葉にヒスイはそっけなく答え、彼はそれっきり黙りこんでしまった。それに苦笑しつつアメジストは親父にエールを頼むと小さくため息をついた。
「フォーチュン=ベルのウルフどもは案外倒しやすかったな」
「だけど、ゴブリンはなかなか手ごわかったですね」
彼の言葉にネフライトがため息をつく。あの戦いでタイガーアイが何度も戦闘不能に陥っているからだ。それを思い出し少女は苦笑する。
「こっ、これからだって!技を鍛えれば攻撃されないうちにやっちゃいます!」
「でも無理しないで。もちろん、ヒスイも」
コーラルがそういい、出されたエールを一気に飲み干す。傍らではヒスイがむっつりとしたままそっぽをむいていた。
「しかたないわね、ヒスイは。……そういえば、リヒャルト卿の依頼はおもしろかったわよね?」
トルマリンは何かを思い出し、ワイングラスを持ったままくすくす笑う。ヒスイはげんなりした顔で
「オークたちのことですね。蚤入りのガラス瓶……何にする予定だったんですかねぇ。思い出しただけでも体が痒くなります」
高貴な家系の彼としては、それがとても嫌だったらしい。アメジストはそれにケケケケ、と笑い声を上げる。
「ガキの頃はこいつにしこたまやられたなー。狐の耳をちくちく刺しやがって!まぁ、今じゃ蚤除けの薬草とか知ってっけど。まぁ、その他にもスキルを見つけたんだ。使うか売るか、考えようぜ?」
そういい、彼は懐から呪文書を取り出してぱらぱらめくる。霜の精霊を相棒とする彼にはもしかしたら相性がいい……かもしれない。
(なぁ、《セルゲイ》爺さん。あんたはどう思うね?)
心の中で、相棒にしている霜の精霊に問う。彼はどっちでもええんじゃね?とでも言うような声を彼の心中に届け、居眠りを始めていた。このパーティは全員が精霊をなんとなく感じることができ、なんとなくだが《セルゲイ》の声を聞くことができ、その反応に小さく笑う。
「オークの一団には笑ってしまいましたよ。リヒャルト卿の反応も~っ」
「うんうん!相当怒っていましたよねぇ!」
ネフライトとタイガーアイは依頼のことを思い出し、思わず笑い声を上げる。オークロードが依頼人の祖父が残した鎧を着ており、その光景とリヒャルト卿の反応を思い出すと笑いのツボを突かれる模様だ。コーラルたちも実を言うと笑いをこらえて戦っていたりする。そのなかでコーラルは深呼吸をして冷静に戦況を思い出す。
「あの蚤入り瓶をオークロードにぶつけたのは名案だったわね」
「まぁ、生着替えを見ることになったがな」
「私は目を背けていましたから」
苦笑いするヒスイの横で、ふふ、と意味深な笑いをこぼすトルマリン。小さく「夫以外の殿方の着替えなど手伝いませんもの」と呟きつつワインを流し込む。タイガーアイとヒスイはそれに首を傾げるものの、残りのメンバーはなるほど、と納得していた。
「しかし……毒花の棺を笑顔で展開するアメジストと、完璧なタイミングで昇蛟閃を決めたヒスイは凄いと思います。リヒャルト卿に花を持たせたのもよかったでしょう」
そう言いながら一人すっ、と紅茶を飲み干す。確かにオークロードへのとどめはリヒャルト卿怒りの一撃であった。
「あの鎧、一人で磨くのかな?やっぱり、お手伝いに行ったほうが良かったかな?」
しょんぼりと帰っていく姿を思い出したのか、タイガーアイがぽつりと言う。が、ネフライトは首を横に振った。
「きっと一人でやるとおもいます。……ご先祖様にわびながら。そっとしておきましょう」
そういうと、彼女は小さく頷き……戦闘を思い出す。
(それにしても、オークロードの一撃で意識を失うとは……。もっと鍛えないとッ!)
一人こっそり決意を固め、ネフライトはそっと裏庭に出た。

暫くして、ヒスイは一人剣を片手に裏庭にでた。ネフライトが一人鍛錬をしている。そこから多少離れた場所で、彼も剣を振るう。
(精霊使い、か)
内心で、ワディムの言葉を思い出す。鉄の匂いが強いと、やはり精霊使いになるのは難しいらしい。元々精霊は鉄の匂いを嫌う。彼曰く、エルフにしては珍しくヒスイもそうらしい。
(精霊使いはまぁ、アメジストがいる。しかし…)
彼がであったニコラエという人物が言っていた『精霊の加護を受けた剣』には、興味を持った。いつかは、そういう剣を手にしてみたい。そう思いつつ、肩に乗せたサラマンダーの頭を撫でる。
「いつか、俺も…ワディムさんみたいになれるかな…《フィー》」
その言葉に、小さなサラマンダーは小さく頷いた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
焔紡ぎ(Mart)
希望の都フォーチュン=ベル(Djinn)
家宝の鎧(齋藤 洋)

このリプレイ(もどき)は、上記三つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

焔紡ぎは、用が無くてもついつい行ってしまうシナリオです。ジナイーダちゃんがかわいい。アンバーたち【六珠】のメンバーではなく【珠華】のメンバーに行かせたのはヒスイの設定で少し考えているのがあるからであります。

実は高レベルキャラクター向けのアイテム販売店シナリオのギャンブルアーツ指南所(Hotoha)の感想も出す筈だったんですよね(笑)。無気力リーダーのアメジストに持たせたくだりも書こうと思っていて抜かしました(涙)。

次回はアンバーたちの話に戻る所存です。精霊たちに名前があるんで、それの一部紹介でもできれーばなー。しかしネレイデスたちの名前は全員『アイドルマスター』に登場する女の子達から取っているので、説明は『 』内のでひっくるめ紹介していいじゃないか、と最近思い始めた(をい
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-31 13:36 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

よくある?光景から(パール、こうしてジャスパーと)


『物言う白猫と、神官と』

土ぼこりのなかを、一匹の白猫がとことこ歩いている。
全長はおよそ45~50センチほどだろうか?
一見この世に生を受けて1~2年ほどの若い雄猫に見えた。
「ったく、なんでこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ」
猫は悪態をついた。そして苛立ち紛れに柱を蹴り上げる。しかしほんの少し爪あとを残すだけで、なにも手ごたえは無かった。
「くっそーっ!俺が一体何をしたんだ!!」
彼は吼える。しかし、それに耳を貸すものは誰もいなかった。

彼の名はパール・フレニール。
本当は闇の眷属なのだが、なぜか今は猫の姿をしていた。

 (それにしても、これからどうするかねぇ)
パールは一人とことこと街の中を歩いていた。さんさんと降り注ぐ太陽の光を浴び、白い毛並みを輝かせている。しっぽを優雅にくねらせ、風を切って町を行くのは気分がいい。しかし、猫の姿で人の言葉を話すと、大体の人が驚いて逃げてしまうのだ。
(噂では物言う猛禽類がパーティリーダーをしている冒険者集団があるらしいな。それなのに物言う猫は別なのかい)
ふん、と鼻を鳴らしながらあたりを見渡す。そこでは子供達が楽しそうに遊んでいた。なんだか厄介なことになりそうだ。子供に捕まったら何をされるかわからない。
(つかまらないうちに逃げちまおう)
そう、走ろうとしたのだが……ばさっ、と音がした。子供に目が行って気づかなかったが、どうやら罠が仕掛けられていたらしい。
「捕まえた!」
甲高い、子供の声がした。どうやら、この籠を被せたのはその子供らしい。パールは籠へと爪を立て、どうにか立ち上がる。別の子供がやってきて、籠を触る。
「白い猫つかまえたよー。触ろう!」
「おい、ガキども!!何しやがった!!」
パールが叫ぶ。大体それで人は逃げるのだが、子供達はそれで興味を持ったらしい。
「うっわー、変なの! こいつしゃべるぞー?」
「僕にも見せて~!!」
そういい、籠がはずされる。逃げようとしたがそれよりはやく子供がパールを持ち上げる。
(おいおい、勘弁してくれよ!
 子供相手に引っかいて逃げるのもなんか大人気ないし…)
本物の猫ならしないような心配をし、身動きが取れなくなるパール。しかし子供たちはそんなことを知る由も無く猫を見つめた。
「かわいい~。あ、こいつオスだ!」
「ちょっ?! 何処見てやがる!!」
「本当だ!こいつしゃべる!!」
子供のうち一人はパールを抱えて、もう一人は頭を撫でる。子供達にもみくちゃにされながらも、パールはどうしようか考えていた。
(早く逃げたいけど…タイミングが…)
すると、少年が一本のペンを取り出した。よく調印式とかで使われる羽ペンだ。それを目の前でひらひらされて、パールの目は思わず釘付けになる。
「それでどうする気だ?」
「ん~? こうするんだ」
子供はペン先をなぜかパールに向ける。そして、おもむろにその額へとそれを落とそうとする。つまりは、何かを書こうとしているのだ。
「お、おい! やめろ!!」
そのときだった。
「ぼうやたち、何してるの?」
一人の少女が近づくや否や、子供たちは慌てて逃げていった。ぽい、と捨てられたパールはけっ、といいつつ子供を見送る。少女は小さくため息をつくと、パールをひょい、と抱き上げた。
「きみも大丈夫だった? うん、落書きはされてないね」
「……ありがとな、お嬢さん」
パールは心からお礼を言う。が、すぐにしまった、と思った。猫の姿だと普通は驚くのだ。……まぁ、あの子供達は別だが。しかし、彼女は少し驚いたような顔をしただけ。そして小さく微笑み、パールの頭をそっと撫でた。
「わたしはジャスパー。こう見えても神官なの。
 冒険者になるためにいい宿を探しているんだけれども…」
「ふうん、冒険者ねぇ。お前も物好きだな。
 ああ、俺はパール。本当はこんな姿じゃないが理由があってな」
苦笑していると、ジャスパー、と名乗った少女はそうなのね、と小さく頷く。そして魔法だったらありえるか、と呟いた。
「冒険者って、盗賊退治したり怪物退治したりするやつらだろ?
 まぁ、英雄候補生でもあるけど大半は埋もれるがオチらしいけど」
パールは己が持つ冒険者のイメージを言ってみるが、彼女はそうね、と頷いた。
「一般的にはそう思われてるようね。
 でも、わたしは……修行にはいいと思うのよね」
そこまでいい、彼女はパールを抱えたまま歩き出す。パールは降りようとしたものの、ジャスパーは放さず言葉を続ける。
「あなたも、元に戻りたいんじゃない?
 なら、冒険者になればいいとおもうわ。手っ取り早く」
「手っ取り早く冒険者になれと?……まぁ、冒険者になれば自分で調べることもできるだろうな。土着の魔術が案外解呪に効果的だったりしそうだしなぁ」
なんか、ジャスパーに言われてみると、いいかもしれない、と思えていた。確かに、冒険者は人間だけではなく多種族も見受けられる。中には滅多にお目にかかれないハイエルフとか、髪に葉緑素を持つドリアッドとか、髪が水のようになっているセイレーンとかも見かけるらしい。
「ある冒険者集団のリーダーは物言う鳥らしいわ。
 物言う猫が冒険猫になるのも、おかしくないと思うの。どう?」
パールはその言葉に、それもそうだな、と小さく笑った。

―そして、一匹の冒険猫がその日誕生したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき

…………グダグダ感。

ども、フーレイです。下書きなし一発書きです。なんかネタが沸かず、こうなりました。奴が猫になった理由はぼちぼちリプレイで明かして行く所存ですが、シリアスな展開にはならないようにする予定です。シリアスなのはアンバーとかサードニクスで十分だと思えてきた今日この頃。最後はクインベリルですが、クインベリルの話は少ししんみり?【六珠】以外もメンバーもぼちぼちやる予定ですが、彼女の話の後は【六珠】結成秘話をお送りします。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-24 20:25 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

今思えば【札世界図書館】ですればよかった?(アンバー、とりあえず邂逅?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:25
踊り手達の存在証明(結)

 すべての騒動が終わった、と確信した一同は、市内に踏み出した。暫く歩くと、開けたところへ出る。そこでアデイは一行に優しい笑顔を向けた。
「本当に、ありがとう。……その……『踊り』を、守ってくれて」
「いや、先生……。俺にとっても、『踊り』は俺の証です。だから……」
いつになく顔を真っ赤にしてアンバーが答える。オニキスたちも、フライマンバもなんだがちょっと嬉しい。
「先生も…先生である証を…続けてください。約束ですよ」
「勿論。私は、私のために踊り続けるわ。医者も探してみようと思うし、そのために踊りを教え続ける。だから…アンバー、これからもしごくわよ?」
その言葉に、アンバーは満面の笑みでうなずく。
「その笑顔がいいねぇ、アデイ姐さん!やっぱ姐さんには笑顔が似合うぜ!」
パールがそういい、アンバーに小突かれる。そんな一人と一匹に全員が笑ってしまう。けれど、そんな、心からの笑いが、心地よかった。潮風が、どことなく優しい気もして、気持ちが安らいでいく。
「医者探しは手伝いますし、私も力になれればと思っています」
「もちろん、手伝ってもらうつもりよ。ありがとう、オニキスさん。それと…御礼もしなくちゃね」
オニキスの申し出に、アデイは頷く。そして、彼女はアンバーに微笑む。
「こんなことしかできなくて申し訳ないけれど…
 今の私には、一度しかできない。だから、しっかり見ていてね、アンバー」
「はい……」
アンバーにはそれが何か、わかった。アデイが何をしようとしているのか。
「いくわよ」
アデイはステップを踏み始めた。その舞は、海風をイメージした、柔らかなものだ。優しくも力強く。たしかに痛むのだろう、時折顔をゆがめながら、揺らぎつつも…崩れそうになりながらも。アンバーたちが今までに見たことがないステップを踏み、優雅に身をくねらせて。その舞は、まさしく……降り注ぐ陽光と海を渡る風だった。
「先生……」
いつのまにか、アンバーの瞳から涙が毀れていた。踊り手の生き様を、確かに彼は感じ、胸を打たれていた。
「綺麗ですね。こんな舞は見たことがありません…」
「うん、僕も……」
オニキスとサードニクスが感嘆の息を漏らす。それはただただ見つめ続けるパールと身を振るわせるジャスパー、トランペットを握り締めるクインベリルも同じ事を考えていた。
「すげぇ……」
フライマンバも思わず呟く。踊り終えたアデイはアンバーの手をとり、にっこり笑った。
「【太陽と風】……私がひとりで作り上げた唯一の闘舞術よ。貴方の仕事に役立てると思って…」
「……! でも、いいんですか?」
目を丸くするアンバーに、アデイは頷く。暫くなにか考えていたアンバーではあったが、彼は力強く頷いた。
「よーし、私もその踊りに合う立派な吟遊詩人になります!そしてアデイさんに踊ってもらいますよ!」
「僕も…なんか役に立てたらなぁ…」
クインベリルとサードニクスが決意も新たにいい、パールとオニキス、ジャスパーが頷く。
「あ、そうだ。今日はイル・マーレもありますし…ちょっとしたお祝いもしませんか?」

その日、一行は遺跡でちょっとした食料を持ち寄り、イル・マーレで乾杯した。踊り続ける決意を固め、その一歩である勝利を祝うために。焚き火を囲み、飲んで歌った。クインベリルがギターをかき鳴らすと、アンバーがそれに合わせて舞う。たしかに未熟ではあるが、その舞には彼らしさが滲んでいた。

「ふぅ……」
踊り終えたアンバーは少し輪から外れ、遺跡の瓦礫に腰掛けた。手にはグラスに注いだイル・マーレが光っている。月光を受け、蒼い輝きを見せるワインに、アンバーは瞳を細める。
(まるで……あの洞窟の…)
そんな事を考えていると、人の気配がした。最初はアデイかチームのメンバーだろう、と思っていたのだが……そこにいた人物は、予想もしなかった人物だった。
「……お前は……!?」
「ソノ通リダ。オ前ノ事デ……話ガアル」
彼女はそういい、一歩アンバーに歩み寄る。そして、真面目な声でこう、言った。
「オ前ノ舞ハ、繊細デ風ノヨウダ。シカシ、ソレデイテ生キル希望ヲ人ニ与エル。戦イノトキニ見セタ【連捷の蜂】モ、力強カッタ」
予想もしなかった言葉に、アンバーは思わず頬を赤くする。たしかに敵ではあったが、今は違う。同じ、舞に生きる者だ。
「ほ、褒められるなんてな。……ありがとう、ザハ……さん」
彼女はソレダケダ、と言って頬をかくようなしぐさを見せる。そして一枚にメモをアンバーに投げ渡すとくるり、と背を向けてしまった。
「……これは? それに…折角なんだから一緒に飯でも食おうぜ?」
「ソレハ、我ガ調ベタ……名医ノ住所ダ。アデイニ渡シテクレ。ソシテ……飯ハマタアッタトキニ取ッテオク。今ハ…共ニイル資格ガ無イ」
それだけ言い残し、ザハは闇夜へと消えていった。しばらくの間背中を見送っていたアンバーではあったが、小さな声でありがとう、といい、メモを抱きしめる。
―今度会うときは、共に踊れたらな。
そんなことを思いつつ、彼の瞳は闇を見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
碧海の都アレトゥーザ(Mart)

ども、フーレイです。
えーと、クロスオーバーする際はフォローする所存なので大目に見てください(大汗)。アンバーは踊り手なので…。あと、ナパイアスの出る奴はもうちょい後ですがアンバーのルーツについてあるんでそれもやる所存です。

今のところ、そのシーンで使用する替え歌製作中。
次回はパールの話です。抱腹絶倒は無理ですが、暗くないです。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-17 13:01 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)