ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:冒険者の宿【水繰の剣亭】( 82 )

アニメ化希望・・・ (ジョーカー、奮闘!)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:49
決戦!ジョーカーVSトアメルの呪い!!

 サードニクスはというと、ジョーカーの治療で安定していた。そして、1人ため息を突く。何もできないことが悔しいが、今は信じることしかできない。そして、ジョーカーの口から漏れた『ホムンクルス』という言葉が、引っかかっていた。
「…何を、考えているのです?」
ジョーカーの言葉に、サードニクスはゆっくり顔を上げた。
「僕は…ホムンクルス…なの?」
「やはり知らなかったのですね」
ジョーカーは悲しげな目で彼を見つめた。彼が知る中で、人間型のホムンクルスはもう1人いる。紫色の、刃物のような空気を纏う個体だ。
「……僕は、人間じゃ…ないの?」
その問いかけに、静かに頷いたとたん、少年の表情はこわばっていた。
「……じゃあ、お、母さん…が…」
最初からいなかったんだ、という言葉は出されなかったが、ジョーカーには聞こえていた。静かに頷くことしかできない彼に、サードニクスは僅かに瞳を細めた。
「…なおさら、死にたく…ないな。天国…で、だれ、も待って、ないから」
少年にできるのは、そうやって無理に微笑むことだけだった。と、その時だった。聞き覚えのある声が響いたのは。
「ただいま!」

 ナナミが竜眼の宝珠をジョーカーに渡す。5人はごくり、と息を呑んでそれをみつめた。
「……これこそ、竜眼の宝珠ですね。魔力が強い」
そういい、彼は助手の名を呼んだ。ナナミは即座に頷き、準備に取り掛かる。
「対価を支払われた以上、患者の命は責任を持って救います。…我が真名にかけて!」
「……お願いします、ジョーカーさん」
アンバーはそういい、頭を下げる。オニキス、クインベリル、ジャスパーもまた、同じようにし、フライマンバも目礼する。そして、パールがいつになく真面目な顔でその背中に叫んだ。
「名に誓った以上、違えんなよ!!」

 「それでは、患者サードニクスの治療を開始します」
厳かにジョーカーの声が響く。サードニクスは静かに瞳を閉ざし、二人に全てを託した。アンバーたちが危険を犯してまで対価を払ったのだ。治療に耐えてまた一緒に旅をする。そうでなければ…自分は作り出された意味がない。
「霊脈バイパス、患部からの呪詛を他部へ影響させないよう遮断。
 六感麻酔」
「六感麻酔。遮断します」
ジョーカーは手早く治療を施し、ナナミもそれについていく。対価を持ってきたアンバーの瞳が脳裏を過ぎった。あの青年にとって、この子はとても大切なのだろう。それがひしひしと伝わってきた。腕にのこった醜い傷は、おそらくノスフェラトゥとの戦闘で負ったものだ、と推測した。
(治療が終わったら、あの若者の治療も施しましょう)
ただし、その治療費を受け取るつもりはなかった。
(そして、闇の眷属たる猫の男に吼えられてしまった。この子は絶対に、助けてみせます)
その決意を胸に、彼はナナミへと手をだす。
「アグラの短剣を」
「かしこまりました、ジョーカー様」
ナナミが頷き、短剣を手渡す。その重みが、いつもに比べやけに重い。それでも、彼は迷いなく切り開く。ポルターガイストにも臆せず、彼は瞳を険しくした。
「マテリアライザー」
彼の言葉に、ナナミが薬を手にし、
「マテリアライザー注入。呪詛の具現化、完了しました」
言葉を紡ぎながら投与する。同時に言葉が終わるか否かで呪詛が醜い塊として浮かび上がる。それにジョーカーは瞳を懐かしそうに細めた。耳障りな嗄れ声が、空間に放たれる。
「我は魔神トアメルの呪いなり…。我は契約に基づきサードニクスに苦痛に満ちた死を与えるために存在している…」
「私はジョーカー。魔医師ジョーカー。サードニクスの定めに無き死を拒むもの」
厳かに名乗るジョーカー。その響きはまるで教会の鐘のように重く、じわりとした真剣みを帯びている。しかし、呪詛はそれを肯定するはずも無い。
「否!誰であろうが関係ない!我は我の存在意義を果たすのみ!!邪魔する者は」
「アグラ・テトラ・グラムマトン」
その言葉を遮ってジョーカーは唱える。
「アグラ・テトラ・グラムマトン…」
「ぐわっ?! さ、最後まで言わせ」
「アグラ・テトラ・グラムマトン…」
問答無用で、呪文を突きつける。ナナミもまた呪文を繰り返し、それは徐々に呪詛を蝕んでいく。そう、この少年を蝕んだ己のように。
(あの瞳を裏切るわけにはいかない)
ジョーカーの脳裏には、アンバーたちの瞳が…そして嘗て治療した青年と、その仲間たちの瞳が脳裏を過ぎった。
(あの瞳は、裏切れない!)
二人の呪文が続き、呪詛が身もだえ、首元をかきむしる。そろそろ頃合だろう、と睨んだジョーカーはきっ、とそれをにらみつけた。
「我が真名において命ずる。汝、直ちにサードニクスの魂より離れ滅せよ!」

―!!

瞬間、それは霧散した。そして、ナナミは静かに告げる。
「呪詛が魂から完全に分離しました」
それにそうか、と頷こうとした時、わずかに大気が震える。
―ジョーカー、またしてもお前か!!
虚空からする野太い声に、彼はあたりまえのように頷いた。
「ええ。魔神トアメル、お久し振りですね」
―契約に基づき、術者の魂と共に引き換えに植えつけた呪詛を、
 よくも消し去ってくれたな。
「それが、私の仕事です」
こともなげに言い放つジョーカーに、トアメルは僅かにいきり立つ。
―我ら魔人の契約は絶対不可侵でなければならぬ。
 それを人の身で覆すなど……。
その言葉に、ジョーカーはくすりと笑う。
「……聖アントニウスの法力で肘を失ったときそれを治したのが誰であったか覚えていますか?あと、貴方に反抗的な下級の魔神に虚勢手術を施したのは?」
―……お前だ。
「それでは、わかっていただけますよね?」
その言葉に、トアメルはむぅ、と唸ってしまう…が、急に反応が途切れる。
「?」
―うあっ?!ぐぅ…!!…き、貴様、何故ここに?!
『貴様は聖北の僧を敵に回した。故に処刑する。それ以上でも、それ以下でもない』
聞き覚えのない、美しい声がした。その持ち主だろう彼が、トアメルへ攻撃を仕掛けたのは間違いがない。そして、何度も響く銃声に、ナナミ共々言葉を失う。
―……そんな……馬鹿、な…。
暫くして、トアメルの存在が消失した、のを二人は感じ取った。恐らく、二度と彼は出現できないだろう。そして、声は続く。
『そこにいるのはジョーカーか。…混沌たる医者よ、その首をいつの日か貰いうけよう。このホムンクルスの少年共々…』
「それが、あなたの存在意義…ですか」
その言葉に、青年は『そうだ』とだけ答え……空間に静寂が戻った。空気が変わったのがありありとわかる。
「ナナミ」
そっと、助手の名前を呼ぶ。と、彼女は申し訳ありません、と頭を下げる。
「…経路バイパス解除。念の為霊脈の洗浄もしておきなさい」
「畏まりました、ジョーカー様」
ナナミはいわれたとおり手早く処置を施す。そしてジョーカーは糸状のエクトプラズムで手術跡を縫合し、ようやく安堵の息を漏らした。
(こんなに緊張する手術も久方ぶりですね)
内心でそんなことを呟き、彼はそっと、ナナミに微笑んだ。
「ナナミ、ご苦労でした」
「ありがとうございます、ジョーカー様」
ナナミはいつものように一礼し、静かに瞳を閉ざした。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

すいません、あと一週引っ張ります。
つか、端折りました、時々いろいろと(汗)。そして登場謎の青年(声の出演)。
ま、いろんな意味で波乱だ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-14 23:59 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

微妙に、なんかノリが…… (六珠、本気です)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:48
レッツ取立てという名の戦闘

 六珠が立ち寄った村は、とんでもない状況だった。村に入るなり、村人からにらみつけられ、抑揚のない声で
「でーてーけー」
「でーてーけー」
と、コールされてしまったからである。これには一同若干たじろぐ(オニキスとナナミ以外)。
「なーんーでー?」
パールが乗りで問いかける。
「よーそーもーのーにーいーうーひーつーよーうーせぇーはぁーなーいー」
村人の1人が言う。
「つか、その言い方はねぇだろう」
「そうじゃて」
アンバーと村長らしき男の言葉に一同静まる。
「まぁ、説明いただけますか?セオリーですし」
「ちょっとまて、その言葉は禁句だぞ、オニキス!!」
オニキスの言葉に思わずアンバーが突っ込むが、長老はその理由を話してくれた。
「…無関係なのですが」
「いや、この場合は放置プレイなんて惨いことできないのよ。命を1つ助けるも2つ助けるもドル箱いっぱいたすけるも同じじゃない?」
ジャスパーは笑顔で答え、クインベリルが頷く。
「私たちはジョーカーさんを信じているの。私たちが帰るまであの子は死なせないってね」
「理解に苦しみます」
ナナセがそういう傍らでアンバーは長老となにかを話している。
「…つまりは、ノスフェラトゥの農場にされている、と」
「ええ。今年は孫娘が生贄になる予定です…」
「よし、こっちは治療費滞納請求をある医者から受け持っているんだ。いっそやってみるか、ノスフェラトゥ退治」
アンバーの言葉に、一同が頷く。ナナミは理解できないまま、それに従うことにした。

 次の日、岩肌を登り洞窟へとたどりつき、ついでに門番っぽい狼を倒した。
「……邪魔したことをお恨みなさい」
オニキスがいつになく冷たく言い放ち、ナナミがため息を突く。
「目的を忘れていませんよね?」
「ああ!ノスフェラトゥをぶったおしてサードニクスと村の人々を助けるんだろ?」
輝かしい笑顔でアンバーが答え……ナナセがぽつり。
「摩り替わっています。治療費の取り立てです」
「でもアンバーったら倒すって約束しちゃっているし、合っているとおもうわ」
ジャスパーがのりのりで銀の剣を握り締める。
(本当は私もロード級のヴァンパイアなんだよね。ああいう同種の始末……久し振りだから腕が鳴るわ)
傍らではクインベリルが不敵な笑みを零し、パールもまた己の武器を手に目を輝かせている。
「そいじゃま、面を拝みに行きますか!」
「「おーっ!!」」
パールの言葉に、全員が手を上げる。仕方がないので、ナナミも付き合い程度に拳を上げたその時。
「煩い。人の眠りを妨げるな……」
と、青い衣を纏った男が姿を現した。そして、それに反応したのはナナミとクインベリルであった。
「お初にお目にかかります、ノスフェラトゥ。私は773号人工魂魄搭載型人造人間です」
「その顔は覚えているぞ。確か以前会った時は500番台だったか。そして……何故そこにあなた様が…」
ノスフェラトゥの表情を強張らせている。一同、思わずクインベリルを見る。彼女はにっこり微笑んで一礼する。
「覚えていていただけたなんて嬉しいですわ。
 クインベリル・ブレス・エアギアス、修行の為に冒険者をしております。現在はジョーカーさんの依頼を受け、あなたが払っていない治療費を取り立てに来たのです」
その言葉に、ノスフェラトゥは僅かに震え、素直に頷く。
「そういうことで未払いの治療費の代わり竜眼の宝珠を頂に参りました」
「そうか…」
ノスフェラトゥは素直にそれをナナミに手渡した。灰になったときに助けられたらしいが、そんなことはアンバーたちに関係がない。
「もう一つ用事がある。
 ……あの村を開放するためにも、散ってもらうぞ」
アンバーの言葉に、ナナミは眼を閉ざす。
「どうしても、戦うおつもりですね……。しかし、見捨てるのはジョーカー様の意思に反します」
彼女はそういい、瞳を開く。それに反応したのか、ジャスパーが彼女へと銀の剣を手渡し、ナナミもそれを受け取った。ノスフェラトゥは鋭い眼光で6人をにらみつける。
「お、愚かな…」
「それはあなたよ、名もなきノスフェラトゥ。罪なき人間を蹂躙するは同種であれど赦しがたき所業……。裁きを受けよ!」
クインベリルが叫び、一同が襲い掛かる。雷の矢が虚空を切り裂き、トランペットが響き渡る。槍が閃き、拳が唸る。
「くぅっ?!」
ノスフェラトゥは反応できず、それらの攻撃を食らいながらも襲い掛かったアンバーへと爪を立てる。鋭い爪に切られ、彼の腕に紅の化粧が施される。
「てめぇっ!」
アンバーがグレイブを振り上げるも、それを避けたノスフェラトゥはにやり、と笑う。
「死して我が下僕となれ!」
「!」
鋭い牙が肩へと吸い込まれる。が、顔面に丸いものがぶつかった。フライマンバがすかさず治癒を施し、隙をついて銀の煌きが突き刺さる。ノスフェラトゥの身を蝕む一撃が、音もなく。ナナミとジャスパーが握っている武器は、あの時サードニクスがくれたものだ。それまで歌を歌って援護していたクインベリルだったか、敵の弱り具合をみてそれを止め、腰に下げていた剣を抜く。
「久々に、儂も活躍できるかな」
「ええ。お願い、スライプラー……」
名を呼ばれた聖剣は久方ぶりの出番に身を震わせる。クインベリルはそれを手にひらり、とノスフェラトゥへ切りつける。聖なる力が悪影響を及ぼさないヴァンパイアは同族の非道を赦したくなかった。
「くっ、やはりエアギアスの血筋!穏健派リーダーの令嬢の力…」
「おしゃべりしている暇は、ありません!ナーデシア!!」
オニキスが叫び、風が巻き起こる。ナナミが攻撃している間にも風の乙女は傷ついたアンバーたちを治療し、勇気付けられたパールがぐっ、と踏み込む。
「そぉらっ!!」
ばっ、と紅が散る。パールお得意の『運命の歯車』が決まったのだ。愛撫するかのように血が流れ、激痛にノスフェラトゥは思わず悲鳴を上げる。
「きっ、貴様らぁああああっ!!」
「それ以上の苦しみを、あの子は受けているのよ!」
ジャスパーが叫び、銀の剣を振るう。そして、アンバーがもう一度グレイブで切りかかる!
「村の人に約束したんだ。あんたを殺すってね!」
その攻撃を避け、爪を振るってアンバーへと攻撃する。それを敢えて受け、パールが傷薬を施す。その間にもクインベリルが再び聖剣を切りつける。
「そして、未払いの治療費もちゃんと貰って、サードニクスを助ける!それが…」

―俺たちの、やること!!

その答えを叩きつけるかのように、オニキスの杖がノスフェラトゥへと突き刺さる。
「私は死なん…死を恐れぬ者…いつか蘇り…その報いを…」
その言葉を最後に、ノスフェラトゥは消え…ようとしたとき、銀が打ち込まれる。ジャスパーが投げた銀の剣が、灰を散らす。
「ちっ、完全にはいかなかったわね」
と舌打ち。しかしナナミはぽつり、と呟いた。
「……この結末は範囲外でした」
それに、一同はぽかん、とする。そのままナナミは言葉を続け、5人を見つめた。
「予測の範囲を超え、不可能を可能にする…それが人間なのですね」
「ま、種族で言えば人間はジャスパーしかいないけどね」
クインベリルは照れながらもそういい、一同が笑う。
「しかしな、オマエさん。心さえあれば、誰だって不可能を可能にするんじゃよ」
彼女の相棒たる剣が、そっと言う。そしてフライマンバもまた、優しく口を開いた。
「種族なんて関係ない。大切なのは…心意気とノリなのさ」
ナナミには、それがわからなかったが、何故だろう、その言葉が、不思議と温かく感じた。
(ジョーカー様……)

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

後書き
オニキスとナナミのなるほど!【存在元素】!!
オニキス「それでは前回ドクター・ジョーカーが言っていた
     【存在元素】について皆さんと一緒にお勉強しましょう」
ナナミ「それでは、まず注意点を。
    この設定はあくまで『天空版カードワースSS』や天空 仁著の
    小説にて登場するものなので注意してください」
オニキス「では、【存在元素】についての説明を」
ナナミ「これは『存在』を形作るもので、自然界に存在するものには確かに
    あるものです。そして、人工生命体を製造する過程でなくてはなら
ないものでもあります」
オニキス「天空の設定では
     生物は基本『肉体・精神・魂』から構成されるとなっています。
     人工生命体の場合、その三つを結束させるために自然界に生きる
     存在からそれを得る…となっていますね」
ナナミ「そうなります。ですから、私もジョーカー様から作られた時施され
    ていることになるのです。天空版では」
オニキス「それがなくなるとどうなるのですか?」
ナナミ「【存在元素】が少なくなることで、その存在が【崩れ】はじめます。
    自然に生まれた生命体の場合死亡した時点で流出が開始され、腐敗
    へと繋がります。人工生命体の場合は肉体が魔力へと戻り、霧散す
    る原因となるので注意が必要です」
オニキス「今回、サードニクスは35%消滅、とカルテにありましたが…」
ナナミ「危なかった、とジョーカー様も言っていました。40%以上流出すると、
    自己回復ができなかったのです。これ以降は他のかかわりが深い生命体
    から分けてもらう必要がありました」
オニキス「本当に、ぎりぎりでしたね」
ナナミ「はい。
    それでは、今回はこれで。残りは機会があれば説明しましょう」
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-07 15:14 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Trackback | Comments(0)

ブラックジャックとかダークエンジェルもそうだよなぁ (六珠、決断の時?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:47
やっぱ来たよ高額請求。

 サードニクスの治療にあたる、とジョーカーは部屋へ入った。
「申し訳ありません。
 皆様に雑霊や魔性がついていないとは限りませんので立ち入りは…」
ナナミの言葉に、アンバーたちは素直に従う。が、ジャスパーが口を開いた。
「風の精霊が換気の為に残っているの。彼女も退出しなければならない?」
「ええ。お願いします」
ナナミにいわれ、オニキスはしぶしぶルサリィを呼び戻す。彼女は心配そうに一度部屋を振り返り、すう、と消えた。
「じゃあ、よろしくお願いします」
アンバーの言葉に、ナナミは頷いた。

 部屋に入るなり、ジョーカーはため息を突いた。目の前に横たわっている存在が【何】か、彼には一目でわかってしまったのだから。
「ホムンクルス……人工生命体なのですね」
「……?」
サードニクスはそういわれ、きょとん、とした目でジョーカーを見つめる。それで、彼はこの少年が自分をどんな風に認識しているのか、理解した。
(かわいそうに、この子は自分の種族を知らなかったようだな…。そして、酷く魂まで脅かされ…)
彼はすぐさまナナミに空間の浄化を頼む。少女の施した浄化はそれほど強いものでなくてよかった。ルサリィの力のおかげである。しかし、ナナミが浄化を施したとたん、サードニクスは全身の悲鳴に瞳を閉ざした。
「全身の霊脈が汚染されている…。魂もエーテル部からアストラル部まで侵食されかかっている。存在元素の35パーセント消滅…やや危険域だな」
片目を瞑り、筒状の器具でサードニクスの体を診察する。そして、それが魔神トアメルのものだと確信した。
「……わかった、の?」
「ええ。魔神トアメルのものだと。そうでしょう?」
「う…ん。そう、だ、よ…」
サードニクスが精一杯答える。ジョーカーはそれに頷き、ナナミに鎮痛剤を用意させた。

 診察が終わり、ジョーカーは案の定大金を吹っかけてきた。
「30000sp、ですか」
オニキスが冷静に呟く。その意外性にジョーカーはほぉ、と吐息を漏らす。
「今は確かにお支払いすることができませんが…」
クインベリルがそういうが、ジョーカーは首を横に振る。
「生憎私は分割払いを受け付けていないもので」
「……あっそ」
パールはそういって暫くの間考えをめぐらせていたが、最初に再び口を開いたのはオニキスだった。
「……闇の世界では天使の翼や血はかなり高く売れるそうですね」
「よくご存知で」
オニキスの言葉にジョーカーが頷き、一同が目を見開く。彼が何を言わんとしているのか直ぐにわかったのだ。
「まさか、その翼を切り落とすつもりか?
 だったらやめてくれ、オニキス…。金は俺たちで工面しようよ」
アンバーが厳しい表情でいい、いつのまにかそこにいたアメジストがあいかわらずの井出たちで…それでいて鋭い目でジョーカーを見据えていた。
「俺たちからも頼む。どうにか金は作る。レベルは低いが……龍とか倒せばそれぐらいの金はできるから…」
そのやり取りにジョーカーは暫く思考を巡らせていたが、やがてそっと言葉を紡ぎだした。
「では、こうしましょう。幸いあなたたちは冒険者でありますから…」
「なるほど、依頼形式ね!」
まってました、とばかりにジャスパーが笑う。彼女はふふ、と瞳を細めると神に感謝の意を表した。傍らではリーダーが不敵な笑みをこぼしている。
「そうこなくっちゃな。それならば、俺たちにだってやれるさ」
アンバーはにやり、と笑いその情報をジョーカーに求めた。
「さあ、何をすればいい?あの子のためならば、俺たちはどんなことでもするぜ!」

 宿から北へ半里。その洞窟にすむノスフェラトゥの元へ治療費の未払い請求に行く。それがジョーカーからの依頼だった。六珠メンバーと共にナナミも行動している。
「……なんか、やっていることってさ」
不意にパールが口を開いた。
「患者を助けたかったらうちの病院を手伝えって言ってるのと同じだよな」
「……そうだな。つか、シリアス度を下げるコメントありがとう……」
アンバーが僅かにがく、と項垂れた。けれど少しは楽になれたかもしれなかった。その傍らではナナミがぼんやりと呟いていた。
「しかし、人間の形をしたホムンクルスとまた出会うなんて」
その言葉にオニキスがふむ、とため息をつく。アンバー以外のメンバーは少しだけ驚いた。ホムンクルスは珍しい存在なのだ。
「サードニクスがホムンクルスである、とはうすうす気づいていましたが……」
オニキスの言葉にナナミは言葉を続ける。
「錬金術の三禁の中に『人間そのものを作ってはいけない』というものがあります。彼のマスターは、それを犯したことになるのです」
「……でも、事実サードニクスは人間の姿をしているよ」
クインベリルが呟き、ナナミは頷く。
「私が知る限り、2人目です。1年前に別の症状で人間と瓜二つのホムンクルスを治療したことがあります。男性型ホムンクルスで名をシオンさんとか…」
「「……ええっ?!」」
それには、全員が驚いていると……パールが一つの村を見つけた。

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

引き続きチーム・バチスタ……ではなくてサードニクスの瀬戸際を。
今回は今後出すシオンのSSにも酷く関わる言葉をジョーカーの台詞に追加させていただきました。【存在元素】という単語です。これについては次週ナナミたんとオニキスで後書きにてちょっと語ろうかとか考えています。あと、何気に自前リンク~。
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-31 21:07 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

やってしまった (サードニクス、どうなる?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:46
サードニクス、倒れる。

 ブリズガルムの魔法院で出会った一人の女性から、アンバーたちは『邪悪なる呪術師を倒す』という依頼を受けていた。お金で多くの人間に呪いをかけてきた男だ。

―どうかあの呪術師を倒し、私を自由にしてくれまいか。

呪いをかけられた女性は息も絶え絶えにそういい、アンバーたちは二つ返事でそれを受けた。呪術師の使い魔を払い、罠を壊し、一行はその呪術師を追い詰める。
「さあ、観念しな。逃げられないんだぜ?」
パールがいい、獲物をつきつける。アンバーたちも武器を構え、臨戦態勢に入った。呪術師はどこか切羽詰った声を上げる。
「お、俺は頼まれた呪いをかけただけだ。復讐するなら俺を雇ってきたやつらじゃないか?」
「……それも一理ありますね。しかし、呪いの大多数はあなたの命が尽きれば解けるそうで…。そうも参りません」
オニキスが冷徹な笑みでそうこたえ、呪術師は小さくため息を突く。
「ああ、金か。貴様らは冒険者だものなぁ。金をやろう!見逃してくれたら金をやる!それでどうだ?」
(それもそうね。こういう人間はごまんといるわけだし……)
ジャスパーは少し心が揺れ動き、つばを飲み込む。
(お金なんて要らない。害は減らしておくに越したことないでしょ?放っておけるわけがないよ!)
一方サードニクスは呪術師を睨み付け、ナイフを握り締める。そして傍らのジャスパーの足を今でもちょっと踏んで正したい、と思ってしまった。
「2000spで、どうだ、冒険者ども!」
「そっ、それは……(依頼人の倍じゃない!)」
ジャスパーは思わず依頼金額をいいそうになり、サードニクスに足を踏まれてとどまった。ただでさえ、その言葉に怒りを覚えていたのだ。こんなやつを野放しにしては多くの人が泣きを見ることになる。その様子をみたのか、アンバーはゆっくり口を開いた。
「交渉決裂だな」
「そのようですわね。さ、おとなしくやられてくださいませ」
クインベリルがいい、全員が呪術師に襲い掛かった。

……戦いは直ぐに終わった。
しかし、止めを刺そうとしたサードニクスに、男はトアメルの呪いをかけた。

 一行は宿に戻っていた。アンバーたちの表情は暗い。ベッドの上ではサードニクスが荒い呼吸を繰り返している。熱を出しているのか顔を真っ赤にして。
「サードニクス……」
アンバーが手を握り、フライマンバが治療を試みる。もちろんジャスパーも呪いを解こうと頑張ったが、上手く行かない。ジャスパーの師匠である女性を頼ったものの、彼女から言われたのは絶望的な答えだった。
『こんな酷い呪いは初めてだな……。大司教クラスの人間でなければ解けないだろう』
しかし、サードニクスがそこまで持つか、わからなかった。
「…噂がありますね。
 どんな病でも治すという、闇医者の噂が」
不意に、オニキスが口を開く。彼の傍らに寄り添う風の乙女がくれた噂だ。いまも彼女は看病を手伝い、空気から邪気を追い払ってくれている。
「ナーデシアが言っています。『莫大な費用と引き換えに、命を救う存在がたしかにいる』と」
「どこにいるか、わからないわよね?」
ジャスパーが疲れた声で問うが、クインベリルは首を横に振った。
「希望は捨てないで、ジャスパー。サードニクスは生きたいって頑張っているんだもの。その声が届けば着てくれるんじゃないかしら?」
「俺は…どうなってもいい。ただサードニクスがまた元気になってくれればそれでいいんだ」
アンバーがぽつりとつぶやいていると、パールが部屋に駆け込んできた。
「…アメジストたちも『闇医者』の噂を知っていた。つか、霜の精霊の親父曰く『前に、ここの近くで治療を受けた男がいる』らしいんだ。で、金の工面は手伝うともいってる」
その言葉に、全員の顔が少しだけ明るくなった。

 サードニクスは、朦朧とした意識の中でただ、冒険の日々を思い出していた。路上で凍える自分を助けてくれたアンバー、いろんなことを教えてくれたオニキス、やさしくてあったかなジャスパー、からかったりするけど、頼もしいパール、素敵な歌を聞かせてくれるクインベリル…。まだ【六珠】でやりたいことがある。だから…生きたい。どうにか、生きたい。その想いが、言葉を紡がせる。

たすけて…

 ふと、パールが顔を上げる。馬車の蹄が猫の耳に聞こえてきた。彼は風のように窓から飛び降りる。と、目の前に馬車が止まっていた。遅れてアンバーたちが駆け寄ると、黒い衣服を身に纏い、サングラスのようなものをかけた男がたたずんでいた。
「……あなたが、お医者様か?」
「……ええ。必要とする者の声に導かれたもの。
 たとえるならば道化……魔医師、ジョーカーと申すものです」
サングラスをはずし、赤い瞳を見せた男にクインベリルが同属の気配を感じつつも見つめる。
「ナナミ、おりてきなさい」
と、彼は馬車の中の人間にそういい、そこから小柄な少女が降りてきた。彼女がナナミだろう。少女は大きな鞄を持っていたので、咄嗟にパールが手助けする。
「医療道具は繊細って聞いたからな。重いだろう?」
「いいえ、お気遣いなく」
ナナミはそういい、一礼する。そしてジョーカーと共に宿へと入るのだった。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

 えーと、ジョーカーの口上およびナナミへの行動はちょいとパーティーにあわないっつーか、こいつらならこうする、という動きの元かわったりしてます。ご了承くだされ(汗)。

ちなみに、物語に出てきたナーデシアとはオニキスが連れているルサリィ姉さんの名前です。
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-24 22:13 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

二週間遅れであったりしますにゃ(汗:オニキス、何気なく再会)


白い世界で、二人の天使がのんびりと散歩していた。緑色の瞳をした青年は、眼鏡をかけた天使へと声をかける。
「兄上、私は……あの方のことをもっと知りたいです」
「ならば、がんばることですね。私とではなくセーシカさんを散歩に誘えばよかったのでは?」
兄の言葉に、弟は小さく苦笑する。
「最初はそのつもりでしたが、セーシカ姫は今日、仕事がありまして。
 仕事が終わってからでもお茶を一緒に……とは考えているのですけれど」
「つまりこの散歩は時間つぶし……」
兄はくすくす笑い、弟はそれに少し苦笑し少しほほを赤く染めた。当たりは雪で白く染まり、自警団のそばには誰かが作ったであろう雪だるまがおいてあった。……が、その傍らに、黒いローブと骸骨の面(?)が見えた。
「兄上、あれは死神ではないですか?」
「……そのようですね。彼は、私の知り合いです。少し話してきますね」
眼鏡をかけた男は弟にそう言い、見えたものへ歩み寄った。

『震える言葉、落とされた不安』(著:天空 仁)

「……ホーキンスさん、お久しぶりです」
「よぉ、オニキス。あっちの天使は弟か。まさか彼にも俺が見えていたとはねぇ……」
オニキスとホーキンスはハイタッチで挨拶を交わす。が、次の瞬間には二人とも真面目な顔になっていた。
「お仕事でここへ?」
その問いに、ホーキンスは頷きながら片手で自警団のドアをかるく叩いた。
「ここの団員が……ね。で、俺は俺の仕事を済ませたまでだ。で、ついでに少し厄介なことを聞いたから、それを伝えたくてここに残ってたのさ」
ホーキンスの言葉に、オニキスは首をかしげる。まぁ、人の死なんてものは予測できないし、何より『死神が持ってくる厄介なこと』が全く予測できなかったからだ。
「死神カラスでも出てきましたか?」
「いや、そいつとはまた別の意味で厄介なやつを見つけたから一応注意しろってな。この近辺で呪殺された人間の魂を担当している死神がいてな。そいつは任務に忠実で、何が何でも魂を取りに来る」
彼はそう言い、顎をなでながら小さくため息をついた……ように見えた。オニキスは僅かに瞳を細め、ホーキンスを見やる。何かを隠しているようにも見えるが、ここで問いかけても答えは来ないだろう。そう思ったオニキスは瞳を閉ざした。
「私の仲間でないことを今は祈りますよ。私の仲間はまだ死神に連れて行かれるわけにはいきませんから」
ため息交じりにそういうと、死神も頷く。暫くの間黙って向かい合っていたが、やがてひらひらと再び雪が降り始めた。音もなくただ静かに降る雪を、二人でただ見つめていると頭にベールをまいたアンバーが走ってきた。
「オニキス、そこにいたんだな!サードニクスが情報を持ってきてくれたんだ。早速作戦会議をしよう!」
「さすがあの子ですね。仕事が早い……。先に行ってください。後から行きますから」
オニキスはそういい、アンバーに微笑む。その姿を微笑ましく思いつつホーキンスはその場から音もなく立ち去った。それに気づいたのか、天使の策士は先ほどまで死神がいた場所を見て小さく苦笑した。
「全く、別れの言葉もなしにとは……」
「? どうしたんだよ、オニキス」
聞こえたのか、アンバーが不思議そうな顔をする。策士が見つめていた場所には誰もいない。それに首を傾げるも、彼はふふっ、と不敵な微笑みを零して首を横に振った。精霊を見る力は持っていても、死神は見えないらしい。その事がオニキスには不思議だった。
「さ、行きましょう。策を練らなくては」
「お、おお……」
オニキスが歩き出し、アンバーがついていく。ふと、顔をあげると仕事が終わったのか、男装したセーシカがアゲートと共に散歩を楽しんでいる。仲睦まじい姿を見ていると、やはり楽しく思わず顔を綻ばせる。すこし頬を朱に染めるリーダーを横目に、彼は大人の笑みで再び歩き出すも、脳裏にはホーキンスが言っていた存在が気になる。
(呪殺された魂を連れていく死神、ですか)
その胸騒ぎが、当たらなければいいな、と本当に思った。けれど彼の直観は……一人の仲間が危機に陥ることを感じていた。

(終わり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき (敬称略ですみません)
ども、フーレイです。今回は『魂の色』(ZERO)に登場したNPC、死神110-105ことホーキンスが登場しました。来週から連載するレビューもどきにも多少絡むんで、まぁ……お楽しみに。つか、一応ヒントっぽく。
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-17 21:09 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

季節柄、白い世界が恋しくて(待:一行、でばがめも)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:45
凍れる都でまったり雑談♪

 凍れる都 ブリズガルム。その近くに領地を構えるアウスラ候。アンバーたちが向かったそこは、立派な樅の産地で有名なそこだった。無事に若き侯爵を送り届けた一行はこっそりと見合いの席を見ることができた。

 オニキス曰く弟のアゲート・アーク・スターシアはかなりの晩生で普段は大変大人しい男だという。しかしそつなく土地を治め、寛大な領主として名高い(そこは兄として誇らしげにしていた)。兄同様地上生まれの天使であるアゲートは純白の翼を背負っており、それが雪より白かったのには全員が驚いた。見合いはといえば相手であるアウスラ候が次女・セーシカ姫がアゲートに一目ぼれし、終始彼に寄り添って話に耳を傾けている。アンバー同様ハーフエルフであるセーシカ姫は氷の魔法を得意としており、また聡明で普段は父親の傍らで執務を手伝っているという。見合いの席では質素でありながら美しいドレスを守っていたが、普段は男装をしているらしい。それに驚いたアゲートではあったが父親を思う心と聡明さに惹かれ、この見合いは上手く行きそうであった。

 全て滞りなく終わった一行は気分転換にブリズガルムへと足を運んだ。そして、セーシカ姫が幼い頃在籍していた魔術院へと足を運んだのである。
「…へぇ、皆さんはリューンから来たのですね」
セーシカの知り合いといっていたスリュムが紅茶を持ってきながらいい、一行が頷く。
「スターシア侯爵の依頼できたんだ。上手く終わってよかったよ」
「それじゃあ、セーシカさんが見合いをするって言っていた相手の方を?」
彼女の問いに、オニキスが頷く。
「ええ(これで私の肩の荷もおります)」
彼が内心で何かを呟いたかはさておき、スリュンは冒険のことを聞きたい、と言い出した。勿論、隠す必要はないので話すことにする。色々考えてみると、案外いろいろあったりするものだ、と内心アンバーはおもった。
「っつか、グレン様…聖銃術の事になるとめちゃくちゃ熱くなるよなぁ」
「まぁ、それがあの方だから」
アンバーが思い出して肩をすくめるがジャスパーが苦笑する。
「テーブルを拳で叩くわ、祈祷台に足を乗せるわ、破天荒だよなーあのおっさん」
パールがその時のことを思い出して噴出すがサードニクスは苦笑いをする。やっぱりアレにはびびったらしい。
「銃とはまた思い切ったことを、と思いました。
 と、いうのもグレン様の言うとおり現在では遺跡で発掘されたものが多いからです。
 稀に作っている人もいますが、それは遺跡から出土したものに比べて赤子同然で、
 もし出回ればこの世界を大きく変えることでしょう」
オニキスはため息混じりにそういい、クインベリルも同意した。
「だから、世の中には銃を認めない存在も多いわ。私も、あまり好きじゃないの。
 剣と銃じゃどっちが勝つかわかりそうだから。けれど強力なのは認めるわ」
「でも、使っている冒険者はいると聞きます」
スリュムの言葉に一同は頷く。アンバーは銃と聞いて、2人の先輩同業者の顔を思い出した。1人は『見えざる神の手亭』の冒険者パルチザン。彼は狼の耳と尻尾を持つ聖北の僧侶で、子供だけのチーム『子供連合』のリーダーだ。グレンのもとで聖銃術を修行し、その腕はすこぶる良いらしい。もう1人は『白銀の剣亭』のカーナという、凄腕の盗賊だ。彼女もまた銃を持っているらしい。詳しいことは知らないが美しくて有能だということで知り合い達は噂しあっている。
「でも、珍しいっていったら珍しいよ。であったらラッキーなんじゃねぇか?」
パールに言われ、スリュムは素直にええ、と頷いて紅茶を飲む。その傍らで、サードニクスは何かを思い出していた。
「そういえばこの間、みんなより早く起きたんだよ。
 その時に四本の細い剣の忘れ物を見つけたよ。それを届けに行ったんだ」
「そういえば、そう言っていたな。
 たしか依頼を取ったつもりが別の冒険者に取られていた、という……」
アンバーが思い出しながら二杯目の紅茶に口をつけ、スリュムはその話に興味があるのか耳を済ませている。サードニクスは言葉を続けた。
「うん。それでね、この剣を届けたら教会からの配布物だから、ってくれたの。
 でも興味持ったら使い方を教えて欲しいっていったら教えてくれるって言ったんだ♪
 あ、もちろんお金はいるけれどね」
サードニクスが苦笑していると、傍らでジャスパーがそんなものよ、とため息を吐く。
「色々な人が、いるものですね」
スリュムが興味深そうにうんうんと頷いていると1人の女性がそこへ入ってきた。不思議に思ったアンバーは首を傾げる。纏っているのはくたびれたローブ。そして、そのフードで顔を隠し、更に顔の左半分を半分白い仮面で覆っている。それでも女性とわかったのは口元からだった。
「カリファさん、珍しいですね。隠者である貴女がここを訪れるなんて」
スリュムの言葉に、カリファと呼ばれた女性は苦笑した。そして、アンバーたちをみやる。
「お前達だろう?リューンからきた冒険者というのは…」
女性は年齢以上にしゃがれた声で問いかける。不穏な空気があたりに漂い、それでもアンバーは一つ頷く。すると、彼女は小さな声でこういった。
「少し……話を、聞いてはくれまいかの?」

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
凍れる都 ブリズガルム(AD)
ecclesia(Gaff*Sail)
律法の管理人(飛魚)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

またもやというべきか、微妙なお話リプレイもどき。
そして次のリプレイからサードニクスメインでいかせていただきます。
そしていよいよ『例のあの人』の暗躍が明らかに……なるといいなぁ。

まぁ一言。……ホムンクルスたちよ、イキロ。

あと龍さんや。勝手にカーナさんの名前を出してすまない。銃を使う冒険者といったら彼女が一番に思いつくんだよ。

そして来週(間に合えば)はブリズガルムを舞台に久々のあの人登場。
つか日記にしかでてねぇから初とも言っても過言じゃないけれどオニキスメインです。
あと、今年最後の『水繰の剣亭』更新。来年早々嵐の予感っす;
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-27 23:39 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

外は冬の雨 まだやーまぬー (六珠、北へ)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:44
古城とランチと北の都

ここはいつぞやの古城……の周り。だだっぴろーい大地につづくお墓。そこでは今も1人の老兵が亡骸を弔い続けている。が、その日は1人ではなかった。ちらほらと見える4つの影が彼を手伝っている。グロアはそのうちの1人が、姿を変えていることに表情を和らげた。
「ほう、パールは元に戻ったのか」
「まぁな。おかげで漸くあんたの役に立てるってもんさ」
パールはそういいながら墓穴を掘っていた。その様子に昼食の準備をしていたジャスパーとクインベリルが微笑みながら手を振った。
「そろそろ食事にしましょう?」
「今日は特別に美味しいものを用意できたんですから!」
と、いうのも今日のランチはたまに行く教会でグレンの説教を聴くついでに買ったものだ(ジャスパーは時折グレンの手伝いもしている)。それとピナのパン屋でかったケーキもデザートとして持って言っている。
「レイオラさんの手作りランチってめちゃくちゃ美味しいんだよな」
「ええ。特に、チキンはみんなの好物ですから。それに、ピナさんのケーキは最高のデザートです。疲れを吹き飛ばしてくれるでしょう」
アンバーとオニキスがそれを思い出して空腹を覚えているとサードニクスは僅かにくすくすと笑う。
「苺のパイもあるとよかったんだけど、予算がなかったんだよね。まぁいいや」
「それはまた別の時に。そんなにたくさん食べられないでしょ?」
ジャスパーはそういいながらフライマンバが暇そうに漂っているのを見つめた。彼はやることがないので見張りを兼ねて漂っているが、その口からは「暇だ」という言葉しか出てこない。
「フライマンバ、ご飯だよー」
「おっ、やっとメシかよーっ!!」
クインベリルの声に反応し、フライマンバがふよふよと一行の下に飛んでいく。グロアはそれを面白そうに見つめながらお茶を口にした。オニキスが用意するお茶は、乾燥した喉を優しく潤し、疲れを忘れさせる。彼はたまにやってくる【六珠】の一行を少しだけ家族のように思い始めていた。

【六珠】の一行は時折ではあるがグロアのもとを訪れてはこうして墓づくりを手伝っている。最初、古城で雨宿りをしたときは一晩の宿のお礼だったのだが、いつのまにかこうなった。
「まぁ、たまには技を学びに来るといい。最近はお前たち以外の冒険者がたまに顔を出すことがあってな、そんなに静かではないが」
そういいながらチキンに口をつけ、苦笑しているとアンバーが目を輝かせる。
「へぇ!俺たち以外にも冒険者がくるんだ!」
「このあたりで安全に眠れそうな場所といったらここぐらいなものでしょう。
 貴方の事です。そんな冒険者と鉢合わせしたのではないですか?」
オニキスの問いにグロアは頷く。
「おぬしたちにとっては先輩にあたるだろうな。もしかしたら出くわすかもしれない。その時はその時だな」
「会えると良いな。強い奴と戦ってもっと鍛えたいし」
パールが意気込み、それをジャスパーは窘める。そうしつつもふと、思い当たる先輩冒険者がいて、ふぅん、と瞳を細める。
「だったら相当鍛えないと、ね。でも、貴方は人間性で既に負けていると思うけど」
「それは俺が未熟だからさ。いつかは越えてみせらぁ」
彼女の言葉にむっ、としつつパールが極めて冷静に返す。普段だったらもうちょっと怒るのだが、精神的な変化だろうか。グロアが僅かに思考を巡らせていると、クインベリルが彼にレアチーズケーキを勧める。
「ピナさんのケーキはすっごく美味しいの。私たちは『天使の食べ物』って呼んでいるのよ」
「ほぅ、『天使の食べ物』とはまた大きく出たな。ふむ……」
少女から渡されたケーキを手に取り、すぅ、と匂いをかいで見る。爽やかなにおいがするのはレモンのおかげだろうか。一口かじっていると、優しいチーズの舌触りと淡雪のように解けていく甘さに思わずため息が漏れた。
「……これはまさに……!」
「だろ? 俺はこのレアチーズケーキが一番好きなんだ。一度食べたらやめられない!でも、2個以上食べたら体が重くなって飛べないんだよなぁ」
それが悩みだ、とフライマンバが行っているとサードニクスがくすくす笑う。
「僕、5つは食べられるよ。でも、アンバーにとめられちゃった」
そういってぺろっ、と舌を出す姿は子供らしい。けれどこの少年は実力をつけてきた盗賊なのだ。そう思うとアンバーは少し誇らしい気持ちになった。

 食事が終わり、各々暫くのんびりしていたがアンバーたちは荷造りを開始した。ここからリューンに戻らす、依頼へと赴くのだ。そう聞いていたグロアは一行を楽しげに見つめる。
「アンバー、今度はどこへ行くつもりだ?」
彼の問いに、アンバーは小さく微笑む。
「ちょいと長い旅になるな。ブリズガルムまで出かけなくちゃいけないんだ」
「貴族の護衛なの。依頼人はオニキスの弟さん。
 今度ブリズガルムに暮らす貴族の令嬢とお見合いをするんだってね」
パールはそういいながらオニキスをつつき、お前はどうなんだというような笑みを向ける。が、オニキスはそれを無視して呟いた。
「私は弟のあとでいいのです。そうではなくてですね。ブリズガルムは結構寒いというので防寒具は私の家で準備させていただきますから。ああ、グロアさん。お土産買ってきますから、お楽しみに」
そういわれ、グロアは苦笑する。
「気を使うな」
「いいえ、いつもお世話になっている人ですから」
ジャスパーがそういい、サードニクスとクインベリルも頷いた。

 こうして、一行は古城を離れ一旦スターシア領へと向かう。その後オニキスの弟(スターシア侯爵)を護衛しブリズガルムへと向かうのであった。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
古城の老兵(SIG)
ecclesia(Gaff*Sail)
Pina'sBakery(さよこ)
凍れる都 ブリズガルム(AD)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

そして、現在さよこさんが作ったシナリオはレシェさんが代理公開していますのでお求めの際はレシェさんのHPへ行って下さい(多分、本家本元カードワースHPにいけばたどり着けると思うのでお手数ですが自分で調べてください)。

 あとグロアのおっさんが行っていた他の冒険者たちって……多分わかる人にはわかると思う。誰とは言わないけれど。思い当たるふしがある人はいるでしょう。本当はヒスイがグロアの弟子に……も思ったんだけれどもエルフである彼にはイメージ的に『焔紡ぎ』(作:Martさん)の話ディムさんのほうがいいと思いこうなりまして。いつかはグロアさんとワディムさんを合わせたいなー!(無理っぽいけど)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-13 23:46 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

ダンス大会ネタは、なかなか…… (アンバー、ごめん:汗)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:43
再会と薄紫とドライアード(でも小柄)

 いつものように宿へと戻ってきた【六珠】のメンバーはカウンターに座りつつここ最近のことを思い出していた。
「久々にアイリと会ったけど、相変わらずだったな」
アンバーがそういいつつ紅茶を飲む。一行はリスボンからリューンへ帰ろうとしたのだが、その途中でアイリと執事の二人に再会した。買い物にきたという。
「あの元気な声がまた聞けるとは思いませんでした。淑女となるにはまだまだですが、元気なのは良いことです」
オニキスが頷きながらクッキーを皿に盛る。最近趣味で作り出したそれは案外美味しい。それを見たとたん他のメンバーも次々に手を出し、食べ始めた。
「でも、飽きっぽいのはだめだと思うよ。ちょっとわがままなのも……」
「そ、それは少しずつ諌めて行くしかないんじゃないかしら?」
サードニクスがちょっと苦笑し、ジャスパーが嗜める。そしてクインベリルは頬杖を突きながら小さくため息をつく。
「ドレスは私も着てみたかったなぁ。素敵なドレスが一杯だもーん♪」
「ははは、花嫁になる時にでも注文すればいいだろう?」
親父さんがそういいながら六人分のナッツパイを用意し、置いていく。そして、受け持った依頼の出来を聞きだした。
「まず、オーク退治だな。あれは普通のオーク退治では体験できない素敵な事を沢山体験したよ」
アンバーはほくほくとした笑顔でパイにかじりつく。オニキスもまたご機嫌な様子でサードニクスのポプリ人形をつっつく。
「公害の原因を突き止めただけでなく、大地の精霊とも出会えましたからね。メディア様にはいつかまた会いたいものです。いろいろお話を聞きたいですから」
「そういえば、あのガス……パールだけは平気だったよね」
ふと思い出し、サードニクスが問うとパールは苦笑して頭をかく。
「いや、ほら…俺こう見えても闇の眷属だろ?それで耐性ができてんじゃねぇかな?」
「って、私もヴァンパイアだけどちょっときつかったわよ?」
「お前の場合、魔力酔いじゃないのかい」
親父が目を丸くするクインベリルにそういい、それにアンバーがくすっ、と笑う。ポプリ人形を膝に乗せていたサードニクスは小さくため息を吐いた。
「魔力酔いかぁ。魔力が強い人が、魔力の強い場所へ行った場合起こるんでしょ?……あ、あの依頼を思い出した」
「それって……ドライアードの女王様が魅了能力を暴走させちまってるからどーにかしろってヤツだろ?」
パールがどこか疲れた顔でカウンターへ顎をつける。どこか全員が若干ぐったりしたようなかおになっていた。
「繁殖力の具現化した姿だと言っていましたが……好奇心にも程があるといいましょうか」
眼鏡をかけなおしてオニキスが呟くと、ふわっ、と目の前に魔力が盛り上がる。慌てて顔を上げると、そこには小柄なドライアードがいた。それに一同驚愕していると、ドライアードはカウンターから出、オニキスの鼻をつっついた。
「!?」
「ちょっとぉ!そういう言い方ないでしょ?」
「いや、そのお前なんでここにいるんだよ!依頼は終わっただろ!!」
思わず突っ込むアンバーにドライアードはふふ、と小さく笑う。そして今度はカウンターに身を預けるパールの頭に腰掛ける。
「やぁねぇ♪ 依頼以外で来たらいけないの?同属の匂いがしたからついてきちゃったのよ」
「ど、同属……?」
パールが不思議そうにしていると、ドライアードは小さく微笑んだ。
「この街にドリアッドって種族の男が珍しくいるって風の噂に聞いたのよ。髪と瞳が緑系でね、髪に葉緑素を持つ種族よ」
「でもリューンでは滅多にお目にかかれないわ。彼らは比較的森にいることを好むからエルフとかと共存していることが多いの。私たちが知っているドリアッドっていったら……あいつしかいないわね」
ジャスパーの言葉に六珠のメンバーは全員同じ人物を思い浮かべる。翡翠色の髪と瞳を持つ女好きな先輩冒険者を……。
「……あの人ですね」
「あの人だね」
オニキスとサードニクスが顔を見合わせていると、ドライアードはちょこん、とカップに腰掛けた。そして、一人一人の顔を見る。
「それと、お礼も言いたかったから。古の姉様たちも貴方たちには感謝していたわ。最初は反対していたのに、『六珠』ならいつでもおいでって言うようになったのよ」
「そ、それは別の意味に取れそうなんだが」
アンバーの顔が強張る。ドライアードがそれにくすくすと笑い「いやーねぇ」と頬をつっつく。興味本位で森の奥へ行ったら全員物凄く疲れてしまったのは覚えている。いや、どんな内容かも覚えているがここではいえるようなものではない。
(か、軽く放送事故用語が2、3飛び出るどころの騒ぎではありません。と、いうより子供には話したくないような内容で……)
青ざめるオニキスにパールが突っ込む。
「……なんだよ。翼の付け根を触られて悲鳴上げたのだれだっけ?」

その一言が原因か、その後パールはオニキスが呼び出した精霊たちによって押し流された……らしい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
魔光都市ルーンディア(ロキ)
薄紫に染められて(ほしみ)
樹精の森(平江 明)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

『薄紫に染められて』ですが、馬鹿正直に「あ、碑石もどしゃあいいじゃん!」と思いました。でも、なんか戻さなくても和解エンドになる方法はあるそうです。はて?やっぱりポプリ人形がらみかしらん?そして『樹精の森』は下手しなくてもネタがネタなので人を選ぶかも(汗)。でも真面目な話も出てくるんですよ。自然環境についてのぽそっ、としたドライアードの言葉。それは忘れないで下さいね。

くあー、短い(汗)
あと、なかなかレッドフロアネタが出ない。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-29 22:27 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

これ、リプレイするなら何度か遊ばないと(汗:ヒスイ、暫く立ち直れないかも)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:42
ありのままの貴方が消えないように

 宿を飛び出したヒスイは、いつの間にか近くにある『礎の神話亭』という冒険者の宿に来ていた。そしてカウンターに座り、一人白ワインを飲み干す。エールが苦手な彼は酒を飲む場合大抵白ワインだ。
(参ったな)
彼が思い出したのは護衛中に出くわした依頼だった。奇跡をうけ『処女解任』がおこったと騒いでいた村で裏を調べて欲しいとある少年から依頼された。
―しかし、翌日…その少年は殺されていた。
 それもまた、恐ろしく変わり果てた状態で。
村の人々は『処女解任』を信じきっており、その少年の遺体はトランス状態の人々によって焼かれた。共に護衛の依頼を受けていたデシールとトゥーレの二人の冒険者もあの異変に巻き込まれ――いや、デシールは元々その異変を解決することが目的だった――、ヒスイたちはその真実を見……結果、レーテに宿ってしまった異形と対峙し、2つの命を失った。
仲間と、彼女を。
「……っ」
「おい」
涙を堪えていると、声が振ってきた。振り返ると翡翠色の髪をした青年が笑いかけている。
「なんだ、ソウキュウさんか」
ソウキュウと呼ばれた青年は『礎の神話亭』の冒険者であり、【スズキ組】のムードメーカーである。彼はヒスイの隣に座ると親父にエールを注文する。そして、いつもの笑顔で覗き込んだ。
「どーした?何しけた顔してんだよ」
「……ちょっと、色々ありまして」
その横顔に酷い影を覚え……ソウキュウは真面目な顔でヒスイの頭をわしゃわしゃと撫でてやった。それにまた泣きそうになるも、ヒスイは必死に堪えた。
「俺もまぁ、結構長いからな。無理には聞かねぇよ。でも、辛かったら泣いていいんだぜ」
「……」
ソウキュウはエールを受け取り、ため息混じりにそう言って一気に飲み干す。ヒスイはただ、の見かけの白ワインを見つめ、小さな声で話し出した。

 キャラバンの護衛で出会ったデシールとトゥールの事。途中の村で聞いた『処女解任』の奇跡。その裏を探りたがったが故に殺されたクインシー。奇跡の娘とされたレーテ。『神に背くもの』、力の源たる『トーテム』と汚染された区域『グール』。ドクウツギ。悪霊の語った真実。トゥーレの過去。花に埋もれた遺体。狂った一瞬。散った紅。失われていく温度と変化のない重み。そして、呼び続けた名前。

その全てをヒスイはぽつぽつと語り続けていた。いつのまにか、涙が毀れていた。
「…あの時、俺にも聞こえていました。魔物の声が……宿ってしまっていたあの存在の声が、です。そして、とめることが出来なかった。その事は、やっぱり…悔しいんです」
それだけ言うと、ヒスイは黙り込んだ。ただ、溢れる涙を抑えきれず、俯いたまま、泣き続ける。
「お前な。難しく考えるな。その子が欲しがっていたものを与えられたわけだし、その子を覚えているんだろ?」
ソウキュウは小さくため息を突いた。そっと頭を撫で、一度だけぎゅっと抱きしめる。
「失った仲間のことを覚えているか?…なら、覚えておけ。そして、その子の事も。たとえどんな選択を選んだにしても、残ったならばその道を歩き続けなきゃいけねぇ。……俺はそう思うんだ」
「……アメジストと同じ事を、いいますね」
俯いたまま、ヒスイは泣き腫らした顔で小さく微笑んだ。

 一方『水繰の剣亭』ではコーラルが一つの瓶を握り締めたままベッドに寝転がっていた。心を揺らした相手は、目の前で死んだ。その時何も出来ず、しかも仲間を庇って……。
(複雑な気持ちがする)
瓶を抱きしめたまま、翼で自分を覆うと彼女は小さく呟く。
「トゥーレ……」
あの時、アメジストが自己嫌悪に陥るヒスイに言った言葉が脳裏を蘇る。それが、今彼女に名を紡がせていた。

貴方の名前を唱えましょう。 ありのままの貴方を覚えているために。

一階の酒場に残ったアメジスト、ネフライト、タイガーアイ、トルマリンは顔をつき合わせ小さくため息を突いた。
「あー、言い忘れていた。あの一件が原因でさらに教会からの依頼が舞い込むらしい」
その一言に三人は目を丸くする。タイガーアイにいたっては飲んでいたミルクを噴出しそうになっていた。あっけに取られたネフライトが怪訝そうに声を潜める。
「どこで聞いたんです、兄さん」
「コネで」
と、アメジスト。彼は狐の耳をぴこぴこ動かしながら言葉を続ける。
「多分、デジールの上司とか関係者がからんでんじゃねの?そうとしか思えないけど……」
吐き捨てるように……そしてどこか不適に微笑んで、こう付け加えた。
「ま、俺は神なんて信じないけどよ。そいつらが俺らを手足みたいにしたいんだったらとことんつきあったろうじゃねぇか……なぁ」
「貴方らしいというか、なんと言うか。でも、忘れないでね。私はラミアよ。教会にしては拙い存在じゃなくて?」
「多分、気づいていないかと」
タイガーアイはくすくす笑い、ミルクを飲み干した。

(続く!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
アモーレ・モーテ――或いは<存在/非存在>についての言及(Fuckin'"S"2002)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

 多分名作といわれているかもしれない『アモーレ・モーテ――あるいは<存在/非存在>についての言及』の後日談っぽくなってしまったーっ?!これをやると最後でいつも涙ぐみます(因みにレーテに話しかける人を策士さんにしてしまうと感動が半減するので注意。過去にやってすっきりしすぎた:汗)。しかし僕なりの解釈つきで。と、いうのもある組織をのちほど敵として出したくて、その為と冒険者=悪者というイメージを持ちたくないのが本音なんですね。それ故にちょいと解説からちょいと引用したかったのですが、止めておきます(滝汗)。その代わり、彼らには今後も聖北関連依頼を中心にやってもらおかと考えています。彼も出てきたことだし?
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-22 21:18 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

教会系シナリオってたまに重いよね (ヒスイ、若干こたえた)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:41
教会に絡み続ける冒険者たち

 一方、アメジストたち【珠華】もまた着実に依頼をこなしていた。彼らは賑やかに宿へ戻ると、奥のテーブルに座った。カウンターが【六珠】の定位置というならば、彼らのそれが奥のテーブルだった。
「ガルシアさんも驚いただろうねぇ。死者が墓を掘ってよみがえっていたんだし」
アメジストがふと思い出しながら言う。ある死霊魔術師と戦ったときの事を思い出していたのだ。頷きながらネフライトが小さくため息をつく。
「倒したかと思ったら自らそうなってしまうなんて。全く……」
「彼らには、彼らの美学があるようね。理解しがたい」
コーラルはそういい、首を横に振りながらココアを口にする。傍らでタイガーアイとヒスイが顔を見合わせた。
「珍しいなぁ。コーラルさん、滅多にそんなこと言わないのに」
「でも同感ですよ。聖水の一瓶でも振りかけたら昇天するだけの輩になるなんて、どこか頭のネジが外れてますって」
「デュソー司祭の悩みも解けたからいいではありませんか」
トルマリンはそういい、聖水を握り締める。それに頷きつつもアメジストは鼻を鳴らして頬杖をついた。
「司祭である前に父親なんだ。……娘のことを思ったらそうせざる負えなかったんだろう。ありがちな脅迫手段だよな」
「そういう輩、私は許せません。そうそう、クドラ教も」
ネフライトはどうやら、次に対峙した敵を思い出したらしい。遺跡調査かとおもったらそれは邪教とされる彼らの罠だったのだ。一行はとらわれていた同業者クレンセンを助け出し、共に戦ったのだが……首謀者たるボウェーロを逃がしてしまった。それは悔しいが、逃げられたのは事実。少しだけ、空気が重くなる。
「それにしても、その後教会をはしごして聖水買いあさるあたりなんか変だよね」
「選ぶ依頼が教会関連ってあたりでなにか間違っているだろう?」
タイガーアイがくすくす笑いながらそういい、アメジストは苦笑する。そう、ここ最近彼らが受け持つ依頼は全て教会が絡んでいるのだ。
「グレン様の説法、過激でしたよ。祈祷台に片足乗せている時点でなにか間違っているように思えます。あそこの女顔の司教さまとは全く違いますね」
ネフライトが兄同様苦笑いしているとトリマリンも頷き、皆で少し笑うものの、やはり色々モヤモヤとしたものを胸に抱えていた。
「クレンセン、大丈夫でしょうかね」
ふと、コーラルが心配そうに遠くを見やる。と、親父さんが全員に暖めたミルクを持ってきてくれた。
「有能な同業者だろ?大丈夫だと、思うよ。旅を続けていたらきっと出会うだろう」
「ええ。でも、1人でボウェーロを追ってしまって……、心配なんです」
「ボウェーロは俺も殴りたい。馬鹿にされたんですから……」
受け取ったタイガーアイが祈るように相槌を打つ。ヒスイはそのミルクに真剣な眼差しを落としている。脳裏によぎる影が、余計に彼を苛立たせるのかもしれない。しかし、酷く悲しそうにも見えるのは……。
「ヒスイ、力んでるわ」
トルマリンが嗜める。黄昏時の光を受け、青年の横顔に浮かぶ表情を浮かび上がらせるもアメジストはめんどくさそうにため息を吐く。
「お前がどう思おうと、あれはそうなってしまったんだ」
彼の言葉に、ヒスイは歯を食いしばる。音もなく張り詰める空気に、ネフライトがため息を突いた。夕日で赤く染まった中1人立ち上がり、ヒスイは宿の外へと駆けていった。
「……あの子の事、まだ残っているんですね……」
「私も、正直つらい。あの人のこと、好きになってたから」
ネフライトとコーラルが顔を見合わせる。そして、タイガーアイは少しするどい目でアメジストを見ていた。

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
墓守の苦悩(groupAsk)
灰色の神殿(tz)
ecclesia(Gaff*Sail)
リューン共同墓地(マルコキエル)
アモーレ・モーテ――或いは<存在/非存在>についての言及(Fuckin'"S"2002)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き。
えーっと、適当に遊んでいたら続いてしまった教会コンボ。やってしまった感があります。そして、次回に後を引くという微妙な展開っす(いや、『アモーレ・モーテ』が想像以上に後を引きまして)。因みに、僕なりの後日談なんで、ふっつーに『アモーレ・モーテ』をやった人およびファイル内にあった解説を読んだ方には微妙に違和感のある後日談になる可能性が。

―だって、フーレイクオリティーですから。 ビバハッピーエンド主義(待)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-15 17:25 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)