ある野良魔導士の書斎

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カテゴリ:冒険者の宿【水繰の剣亭】( 82 )

つまりは、経緯です (ネフライト、おねだりしました)


 ソレント渓谷を流れる水の音。そして、鳥の鳴く声。風が吹けば木々がざわめき、その合間に幼子達の笑い声が混じっていく。
「ねえねえ、今日は何して遊ぶ?」
「この間おいしい木の実を見つけたから、そこに行こうよ!」
「うん、それがいいねぇ」
楽しげに話す子供達の中にはエルフや、ワービースト、ハーフエルフもいた。彼らの住んでいる村には様々な種族の人間たちが存在しており、それが彼らにとっては当たり前だった。
「あれ?アメジストは?」
背の高いエルフの少年の言葉に、おさげの少女が苦笑を浮かべる。
「また樹の上で眠っているかもしれませんね」
「レナータ、まだ固いなぁ。俺たちは友達なんだし、もう少し気楽にいこーぜ?」
少女の方をたたいたのは浅黒い肌をした少年。その傍らではちょっとだけ少年のような少女が頷いている。
「アンバーの言うとおりだよ。
 この村の皆、レナータを友達だって思ってるんだもん♪」
「それにさ。お前のお師匠様には村長の命を救ってもらっている。
 感謝してもしきれないよ」
別のハーフエルフの少年がそういい、レナータと呼ばれた少女はようやく頷いた。その様子に、アンバーと呼ばれた少年がにっこり笑う。
「まぁ、困ったことがあれば何でも俺やネフィ、アメジの兄貴に言ってくれ。
 力になるからさ」
そういって、少年は傍らのネフィ、と呼んだ少女と肩を組む。刹那、その少女は少しだけ頬を赤くした。

―そう、それは……幼いころの……。

カードワースショートショート
『切なる我儘』 著:天空 仁

 それから何年経っただろうか。既に成人したネフライトは、ある晩、村長でもある母親に呼び出された。
「何でしょうか、母上」
「実は……凄く言いづらいんだけれども、お見合いしてもらいたいの」
母親は凄く申し訳なさそうにそういい、ネフライトは表情を険しくした。お見合いなんてしたらそのまま嫁がされるかもしれない。好きな人がいる彼女としては、それは嫌だった。しかし、自分は村長の娘である。村の存亡をかけたものならば応じなくてはならないかもしれない。だが、彼女の記憶が正しければ、この村はそんなに厳しい状態ではない。
「……母上、それはどの様な経緯でお見合い話が持ち上がったのでしょうか?」
「実はね……」
ネフライトの問いに、母親は苦笑したまま話を始めた。

 事の発端は2カ月前。偶然にもアレトゥーザに遊びに来ていた貴族の若様が森で道に迷った。その際、使用人の1人がこの村の人間たちに捜査協力を依頼した。ネフライトも幼馴染達と一緒にそうさにあたり、その甲斐もあって精霊たちに襲われそうになっていた処を助ける事に成功した。その際、その使用人が、ネフライトに惚れてしまったらしい。主である若様は使用人の様子から察し、今回の見合いを思いついた、と言うのだった。

「……そんな」
「でもね、『恋人』や『許婚』がいるならばあきらめる、と言っているの。
 ネフィ、誰か『恋人』がいるの?」
母親の言葉に、ネフライトは小さく首を横に振る。しかし、その使用人と見合いをするのは嫌だった。年齢は近いし、物腰は柔らかい。紳士的だし、顔も悪くはない。しかし、ネフライトは彼にときめかなかった。
(……でも)
好きな人はいる。しかし、彼が自分をどう思っているかは解らない。けれど……彼以外に結ばれたくはない。
(我儘と言われてもいい。僕は……っ)
一つうなづくと、ネフライトは母に自分の要望を伝えた。それに母は小さく微笑む。
「やっぱりね、ネフィ。でも、此処からが本番だからね。あとは母さんに任せて」

 その夜。村長に呼び出されたエルフの男は彼女の言葉に顔をほころばせた。
「いいのですか? 私の息子で……。
 確かにネフライトの事を想っているようですが……」
「娘が、貴方の息子であるアンバーに想いを寄せている、と打ち明けてくれたの。
 アンバーがあの子に惚れているのは前から知っていたし……。ここはいっその
 こと、2人を許婚にして仲を発展させてみようかしら?」
「! それは面白そうですねっ。 互いに想い合っているならば……」
そう言い合い、互いに顔を見合わせる。
「「フフフフフフ………」」
そして意味深な笑みで握手をするのだった。

 翌日。ネフライトは沐浴をすませると母親から呼び出される。部屋に入ると、そこにはアンバーとその父親がいた。挨拶もそこそこに、村長たる母親は、ネフライトとアンバーにこう言った。
「貴方達は、今日から『許婚』よ。
 昨日の夜、トパーズと話し合って決めたわ」
その言葉に、アンバーの目が丸くなる。隣にいたネフライトは、驚きながらも小さく微笑んだ。心から好きな人の元に嫁げる、と。

―けれど……アンバーは、僕の事……好きなのかな。

アンバーが全く同じ事を想っているとも知らず、ネフライトは考えた。

(終)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
後書き

ネフライトとアンバーの二人についてだったり。フーレイです。
両思いでありながら素直になれず、こんなふうになりました。
普通じゃ横暴だと思われても仕方がないのですけれども、村人たちはみな、2人の不器用な関係を知っていたので寧ろグッジョブ、村長!だそうです。

そしてアレになる訳で。
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by jin-109-mineyuki | 2010-02-09 23:21 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

結局は (ヒスイ、落胆を隠せない)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:65
ヒスイ、依頼完遂できず……

―クリスマス当日
「……失敗したのか」
「ええ。……手紙、届けることができませんでした」
例の秘密基地。レモネドとヒスイは市場で買ったサンドイッチと熱いミルクで昼食を取りながら、昨日の話をしていた。
「一年前にお前が捕まえた悪い奴が、昨日探していた相手だったんだな」
「うん。しかも依頼人のお姉さんは二週間前に病気で死んでいた。
 ……なんだか悲しい気持ちになりました。彼女の手紙、その人に渡せなかったのですから」
ヒスイはそういい、ミルクを一口のみ、ため息をつく。
「結婚詐欺かぁ。すっごく悪い男だな!俺はそんな風にはならないぞ!」
「私もなってほしくありません。
 ああ、そうそう。悪いとは思っていたのですが…彼女の手紙を読んだのです」
「……どんな、内容だったんだ?」
レモネドがサンドイッチを口にしながら問う。ヒスイはどこかぼんやりとした顔で
「彼女、シトラスさんっていうんですけど
……その人が詐欺師である事に気づいていたみたいですよ」
そういい、内容にあった一文を思い出す。

―あなたにクリスマスの夜歌ってもらったセレネイドこそあなたの本心だと信じています

「……? じゃあ、なんで手紙を書いたんだろ。
 やっぱり怒っていたのだな?」
うんうん、と頷くレモネドにヒスイは首を横に振る。そしてミルクを一口飲んでサンドイッチを飲み込んだ。
「んー。それが違うようでした」
そう息をついた処で、言葉をつなぎ直す。
「気になった事があったので、宿の娘さんに聞いたんです。
『なぜシトラスさんは騙されていてもマーマを信じたのでしょう』って」
「で、答えはどうたったの?」
「…わかるって、言っていましたよ。
 『ずっと想っている人が気付いてくれなくても、その人の冒険の無事を願っている
し、成功を祈っている』……と」
「ふぅん……女の人って、よくわかんないや」
レモネドはそう言いながら別のサンドイッチを食べ始め、ヒスイも少し苦笑しながら……ちょっとだけ口元を綻ばせる。
「正直に羨ましい、と思いましたよ……その人が。
 その人は幸せ者すぎですよ。貴方も今に判る日が来ますから」
そう言いながら、右の頬に手を当てた。

 昼食を取り終わり、秘密基地を去る。そして紅葉通りを抜けて白樺通りへと行く。と、タンジェリンが待っていた。彼はヒスイに一礼する。
「タンジェリンさん…。実は」
「話は、彼女のお母さんから聞いています。あの後あったんだ。
 ……まさか亡くなっていたとはね」
タンジェリンは寂しそうに笑い……そのまま空を仰いだ。真っ青な冬の空は透き通っていて、佇む2人にはすこし寂しくみえた。
「……あの時は私も知りませんでした。えと、これからどちらへ?」
「彼女の墓参りに行こうと思います。貴方もどうですか?」
「もしよければ。依頼の報告もありますから」
ヒスイはタンジェリンの言葉に頷き、一緒に歩き出す。冷たい風に髪を揺らし、懐を抑える。そこにはあの手紙があった。
(…どうしたら、マーマに貴女の手紙を読ませる事が出来るでしょうかね)
そんな事を考えていると、ヒスイの口からふと、旋律が漏れた。それは……どこか悲しいセレナーデだった。それに耳を傾けつつも、タンジェリンは黙って歩き続けた。
ある、クリスマスの昼下がりの事だった。

(終)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書きとかいてはんせいと読む。
とりあえず、これで『Serenade』のリプレイは終わりです。
本編とはちょっと違うエンディングにしてみました。なんか物足りないとか、なんか重いとかあるかと思いますが、まぁ、色々。

66からはちょっと時計を巻き戻して『桃源郷の恋人』のリプレイ+珠華メンバーでのリプレイを慣行予定です。若干予定変わるかも。そしてその前にネフライトのSSをお届けします。

総集編は……日記形式?
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-31 09:54 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

少しの疑惑と、少しの… (ヒスイ、走る!)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:64
ヒスイとオレンジとストラップと

少年はヒスイに顔を近づけ、ヒスイもちょっとしゃがむ。こうした方がより目を合わせやすい。
「……どういうこと?」
「ほらっ!」
少年はポケットから同じストラップを出し、ヒスイと目を合わせた。
「どういう、事でしょう?」
「これは、俺達の秘密基地にあったストラップだ。だから、リーダーの証として俺が預かってるんだ」
そういい、ちょっと自慢げにいう少年。しかしヒスイはなんかぴん、と来てしまった。
(秘密基地……もしかしたら、何かあるかもしれない)
ヒスイは帽子をかぶり直すと、少年に問う。
「…ストラップのあった秘密基地に、ちょっと寄らせてほしいけどいいかな?」
(でも秘密基地って言うほどだし、何かあるんだろうなぁ……)
と、内心少し悩みつつも答えを待つと、少年は1つ頷いた。
「いいだろう」
「おや、やけにあっさり」
拍子抜けするヒスイ。少年はふん、と鼻をこする。
「ん、別に。ただ別の基地に引っ越そうと思っただけだよ。
でもただ案内するだけじゃ面白くないな……」
「いや、変な気遣いは本当にいいから」
突っ込むヒスイに、少年はじろ、っと軽く睨む。
「……お前、冒険者だろ?何か重大な事件を追ってんだな?
そしてそれに俺達の秘密基地が絡んでいる。そーなんだろ?」
と、問い詰められた。
「そうだよ。本当は守秘義務ってのがあるから……詳しくは言えないけど」
「その依頼の顛末、教えてくれるって約束してくれるか?」
「……。わかったよ。だから、教えてほしい。名前は?」
「レモネド」
「レモネドくんね。……っと、これでどう?」
ヒスイは素早く
『私、ヒスイ・エイボス・ニードルは依頼を完遂した暁には
貴殿、レモネドに依頼の顛末をご報告します。
                 ヒスイ・エイボス・ニードル』
と契約書を書いた。それを受け取ると、少年の眼が輝く。
「…ありがとう。約束だから教えてやる。場所は……」

 紅葉通りの中ほどにある細い道をたどり、奥の廃屋へとたどり着いた。素朴な作りで、子供がいるときは賑やかなのだろう、とヒスイは目を細め……中に入った。ガラクタなどが転がり、子供達が遊ぶのにはうってつけだった。そこを隅々まで調べていると……ゴミの中から皮の手帳が見つかった。
「……これは……」
呟きながら開くと、そこには女性の名前と、なにやらメモが書かれていた。その1つがヒスイの脳裏から記憶を引っ張り出す。
「……確かリスボンさんの訴えから治安隊が動いた筈。じゃあ、この手帳は去年私が捕らえた詐欺師の物……」
と、呟きながらも捲っていき……その名はあった。
―シトラス・ライム

 ヒスイは走っていた。ある場所へ向かって、手紙を持って。
(間に合ってください!貴方に渡さなくてはいけないのです!)
―ロマンチストな奴でクリスマスにセレネイドを歌ってやったら
 すっかり俺の虜に。
彼はシトラスも標的に選んでいた。大金をせしめるつもりだったようだが、シトラスは本気のようだった。複雑な思いがあるも、ヒスイはその手紙を渡す為、走っていた。
(マーマ・レイド。貴方はとても鬼畜な人です。でも、私はシトラスさんから貴方へ手紙を承っているのです!)
走る、走る、走る。人をかき分け、風を切って。自分が探していた存在は、1年前に捕らえた極悪結婚詐欺師だった。自分のした事が本当は無意味じゃないか、とも思った。けれど、直ぐに思いなおした。
―私には、シトラスさんから預かった手紙がある!
刑務所へ向かう。一陣の風となって。石畳から突き刺さる冷たさも振り払い、ただ只管。すると、目の前に馬車があった。今、まさに走りだそうとしている。
「まってくださいっ!!」
ヒスイが叫ぶ。が、遠くて届かない。馬車は走りだし、看守たちが刑務所へと引っ込む。
「まって…くださいっ!」
全速力で追いかける。が、馬車はどんどん遠くなる。
「マーマ…レイド、に…手紙が……」
息が切れる。それでも馬車を追いかけるが、どんどん遠ざかっていく。少しずつ重くなる足取りの中、ヒスイが叫ぶ。
「手紙が、あるんです!!止まって……っ!」
ばたんっ、とヒスイは倒れた。どうやら、石に躓いたらしい。その間に、馬車は遠くへ走っていく。立ち上がった頃には、既に見えなくなっていた。
「……っ」
何故だろう、荒い息をつきながら、その頬に流れ落ちるものがあった。膝が痛むのを無視し、馬車の走り去った方角を見つめていると、1人の看守が心配そうにやってきた。
「……大丈夫、ですか?」
「……ええ。これぐらい、平気です」
立ち上がろうとしたが、よろけてしまった。ズボンは破れ、膝は派手にすりむけて赤く染まっていた。そして、足首が痛かった。どうやら捻ったらしい。
「痛そうですね。手当てしますから」
看守はそう言い、ヒスイに肩を貸す。礼を述べながらヒスイはちらり、と馬車の消えた方を見……小さく唇をかんだ。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書
ええと、台詞に関してはまとめちゃいました;すみません。
また、最後のシーンはあっけなかったんで着色してみました。
実は「ぎりぎりで間に合い、マーマに手紙を渡す→マーマが馬車で我に帰る」という
エンディングも考えてはいたのですが……。
もし読みたい、という方が1人でもいれば、後日「if」として書きますけど…。

あとNPCの男の子に名前がなかったのでつけました;
作者であるにいかわさん、すみません;
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-30 23:20 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

少しの記憶と、少しのぬくもりと (ヒスイ、思い出し)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:63
ヒスイとシトラスとマフラーと

 依頼人の家を出、ヒスイは小さくため息をついた。帰る直前、母親からシトラスの絵を見せてもらったのだが……。

―1年前・クリスマスイブ
ヒスイはクリスマスイブという余裕もなくある詐欺師の足取りを追っていた。
「……くっ、一体どこに姿を眩ませたのでしょう…」
ヒスイは内心焦っていた。相手は足が速く、あっという間に姿を見失ってしまった。このままでは、逃がしてしまう。
「……拙いですね」
僅かに荒い息をつく。一体どこにいるんだろうと、考察を繰り返していると、鈍い音がした。それで我に返ったが、どうやら女性にぶつかってしまったらしい。
「す、すみません!大丈夫ですか?」
ヒスイが助け起こすと、若い女性は金髪を揺らし、はにかんだ様に答えた。
「ええ、私は大丈夫です。それより…こちらこそごめんなさい」
「いえ…。怪我もありませんし。それでは、失礼します」
ヒスイは一礼し、立ち去ろうとした……が、不意に風が吹く。
「…あのっ!」
「…はい?」
ヒスイは振り返り、その女性と瞳が重なる。綺麗な金色をした、実に優しそうな、柔らかい空気を纏った女性だった。彼女は少し頬を赤くしつつ、小さな声で
「……あの、その…」
ともじもじしている。ヒスイが小さく微笑むと、彼女は緊張を解いたようだった。賑やかな空気の中、その声は雪のように落ちる。
「時計台、綺麗ですよね……」
ヒスイも時計台を見上げ……小さく頷いた。
「ええ、とても……」
そう答え……自分のマフラーを掛けた。
「?!」
「誰かをお待ちなのでしょう?寒いでしょうし、これでよければ。では、私はこれで」
そう言い、ヒスイは駈け出した。一瞬だけ、心がほぐれた気がした。

「…もしかして、うちの娘をご存じだったのですか?!」
「ええ……」
ヒスイは小さく頷いた。
「赤煉瓦の時計台の下で会いました。とても綺麗で、天使のような方でしたから覚えています」
そこまで言い、ヒスイは胸の痛みを覚えた。
「既に2時を回っていましたが、誰かをお待ちのようでした」
「……そんな、勘違いではないのですか?」
母親は表情を曇らせる。彼女の話によるとシトラスはちゃんと出会い、聖夜を共に過ごした、と言ったという。
「そういえば若草色のマフラーをしていたわ。行く時は巻いていなかったけれど……。恋人からの贈り物だと思ったわ」
その言葉にヒスイは表情を険しくした。母親から見せられたそれは……確かにヒスイのマフラーではあったが、ヒスイは何も言わなかった。

(……1年前に、会っていたなんて……)
そう言いながら、ヒスイは1つのストラップを手で弄んだ。母親から借り受けたものだった。最後まで大切にしていたもの、と聞いたが、それは「オレンジ・ザボン」からの贈り物だったのだろうか。
(……シトラスさん……)
胸が熱い。風は冷たく、髪で隠したエルフの耳の先がじんじんと痛む。それなのに、胸の中が酷く熱く、鈍い痛みが走っている。少し頭を冷やそう、と帽子を取っていると、先ほどの少年と出くわした。
「なんだ、お前。まだいたのか」
「ええ。冒険者としての仕事で色々と」
そういって苦笑していると、少年は肩を竦めた。
「イブだっていうのに、冒険者ってのも大変だな。で……」
そこまで言って、少年は目を丸くする。ヒスイが不思議そうにしていると、少年の眼はヒスイが持っていたストラップを見つめている。
「? これに見覚えがあるのかい?」
「おい。何故お前がこれを持ってるんだ??」

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書
……ども、フーレイです。
ちょっとここでも色をつけております。

記憶に残るようなことをしておきたかったのでこんなネタに。
ヒスイにとっては色々辛いことが……。
なんかレーテの時と言い、今回と言い……。

……しかし、何故彼女がマフラーを持ってたのか。
実はヒスイが女に見られていた、というオチがかくされていたり。

うーわーぁ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-29 21:25 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

探偵は足で頑張るものだよ (ヒスイ、寒空の下がんばる)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:62
ヒスイ、聞き込みに勤しむ

 街はクリスマスイブということもあり、賑わっていた。すれ違う子供たちはクリスマスソングを歌い、親子連れは笑顔で教会に向かっていた。そんな姿を見送りつつ、ヒスイは聞き込みに精を出していた。
(依頼を受けたなら完遂しませんと)
それが他の先輩冒険者たちから学んだ事だった。確かに…レーテを救えなかった事は今でも胸の中でしこりとなっているが……。
(……)
首を横に振り、顔を上げると子供達が遊んでいた。その1人が不審そうにヒスイを見る。
「なんだ、お前。目障りな奴だな」
「目障りで申し訳ありませんね。序ですけど少しお伺いしたい事が」
と、ヒスイはその子供にシトラスとオレンジについて聞いた。が、その少年は知らなかった。堪え終わるとさっさと失せろ、と少年にあっかんべー、をされてしまった。
(まぁ、子供は元気が一番ですけど、可愛げがありませんね)
気を取り直し、木の葉が舞い散る中聞き込みをしていくとシトラスは白樺通りに住んでいる美人な女性。性格もよく、学生時代は男女ともに好かれていた、ということが分かった。白樺通りではシトラスの幼馴染という青年、タンジェリンにも会い、彼からは自分が街に戻ったのは内緒だ、と言われてしまった。が、オレンジという人物については情報が得られなかった。

(しかし、オレンジ・ザボンか。……妙に引っかかるな)
ヒスイが首を傾げていると1人の男と目があった。その男に一礼すると、早速聞いてみる。
「すみません、少しよろしいですか?」
「……?ええ、いいですよ」
男は小さく微笑み、ヒスイの問いに答えてくれた。シトラスについては知らなかったが、オレンジの名を出すと、彼は少し眉間にしわを寄せ、瞳を軽く閉ざした。
「オレンジ・ザボンさん…ですか。恐らくですが、偽名でしょうね」
「えっ?! 偽名……といいますと?」
「長年、探偵をしていると勘が閃くものでしてね。
 そして、貴方もそう思っているのではないですか?」
彼はくすっ、とヒスイに笑いかける。ヒスイはその言葉にきょとん、としてしまった。そんな顔を見、探偵が苦笑する。
「いえいえ、冗談ですよ…申し訳ありません」
とぽりぽり頬をかき、言葉を続ける。
「実は過去にですが貴方の依頼人とは違う方から依頼を受け、その人を探した事があるのです。役場で名前を隅々まで調べましたが、同じ名前はありませんでした」
そう言って、小さくため息をつく。なるほど、とヒスイが納得していると、その引っかかりが溶けたのに、胸の奥で妙な予感がした。
「過去に探偵である貴方が調べても見つからず、今回も見つからない。
 その名の人はいるのに記録にはない…故に偽名の存在……」
「私は、そう推理します。……手伝いたいのは山々ですが、今別の仕事がありまして」
と、探偵は苦笑するも、ヒスイは首を横に振った。
「いえ、その気持が嬉しいことです。ありがとうございました」
ヒスイは一礼し、タンジェリンから教えてもらった方へと歩いて行った。そこに依頼人の家がある筈だから……。

 「……えっ?!」
 「……シトラスは…」
依頼人の家。そこで、ヒスイは丁度買い物から帰ったシトラスの母と出会った。そして、彼女から聞かされたのは……シトラスの死であった。
「玄関先と言うのもなんですから」
と、母親はヒスイを中に入れ、紅茶を勧めてくれた。彼女の話によるとシトラスは二週間前に病で亡くなったという。
「肺の病でした。……一カ月前まで元気な笑顔を見せていたのに、三週間前酷い吐血をしまして……」
「……肺結核……ですね」
ヒスイの言葉に母親は頷いた。彼女は小さく笑い、泣くまいと気丈に振舞っていた。
「聖夜には好きな人と過ごすから、と笑っていたのですが……そのような依頼を冒険者に依頼していたとは。私の前では心配させないように振舞っていながらも、死期を感じていたのですね」
「……辛い話をさせてしまい、申し訳ありません」
ヒスイが深く頭を下げると母親は首を横に振り、優しい頬笑みを向ける。しかし、その綺麗な目には光るものがあった。
「覚悟は、できていましたから。それに…何時までもうつむいてはいられません。前を向かなくては…。こんな時こそ、笑わって過ごさなければならないのですね」
そんな姿にヒスイの胸も熱くなった。どうにか、この依頼を完遂したい、そんな思いが強かった。ふと、外を見ると……そんな思いとは裏腹なのか、酷く寒そうな色をしていた。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書
 諸事情により一部変更させて頂きました。そんなフーレイです。聞き込みシーンをちまちまとリプレイにするとなんかまどろっこしいんじゃなかろうか、と想いこんな形に。重要な所だけを抜き出してみました。あと、何言なくリプレイで登場したNPCの名前を出しました。レーテの事は若干引きずったみたいで、いずれ他の方面でも影響します。

 それで、なのですけどこのシナをプレイした方ならばエンディングを知って居るでしょうが、あえていいます。天空版では別のエンディングを用意しております。作者さん、すみません。

それではまた明日。
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-28 14:46 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

クリスマスイブに、メッセンジャーを (ヒスイ、あくびをかみしめ…)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:61
ヒスイとクリスマスイブの依頼

―クリスマスイブ。

 朝、ヒスイは1人だけ暇を持て余していた。『六珠』のメンバーは秋から長い旅に出ており、『珠華』のメンバーも其々依頼なりなんなりしている。
「くそっ、こんな時に風邪かよ」
「ん、どうしたんですかアメジさん」
同室のアメジストが狐の耳を震わせ、憎々しげに外を見やる。アレトゥーザ生れの彼としてはこの雪が憎いらしい。妹であるネフライトは平気そうだったが兄はそうでもないらしい。
「こいつの所為で風邪ひいちまったようだ。あーっ、今日は暖かいチキンドリアでも食べて寝て直すぜ……」
相変わらずの気だるそうな声で無気力リーダーは言う。それに苦笑しつつヒスイは部屋を出、一階に下りる。うきうき気分の娘さんと挨拶を交わし、カウンターに座る。と、親父さんと目があった。彼は確認するなり珈琲を注ぎながら言った。
「ああ、ヒスイおはよう。1年前にお前が捕まえた詐欺師について、新聞に載ってるぞ」
「えっ?」
不思議に思いつつ新聞を読むと、その詐欺師が永遠に極寒地方にある炭鉱で働く事が決まったという事が書いてあった。
(…ブリスガルムあたりかな。それともクローネガルド?どっちにしろ……ご愁傷様、というところでしょうか)
食事も少なく、極寒の地での危険な肉体労働……。それだけの事をその詐欺師はしていたのだ。小さくため息をつき、ヒスイは首を横に振る。
(クリスマスイブに、こんな話はしたくありませんね)
…と、思いながらもそんな日に自分は彼を捉えたのだ、と思うとやや複雑な気分なのだが。もう一度首を横に振ると、彼は親父さんに仕事はないか、といつもどおりに問いかけた。そして、受け取った手帳から、1つの仕事を選んだ。

依頼人:シトラス・ライム
仕事内容
12月 24日に「オレンジ・ザボン」なる男性を探し、その人に手紙を渡してほしい。

親父の話によると、1か月前に受け取った依頼だという。既に400spの報酬を受け取っており、成功次第払うとの事だった。何故今日なのか、と疑問を持つと
「…ヒスイさんったら本当に乙女心に疎いのよね。だって、今日はクリスマスイブだからでしょ?」
なんて怒られた。またその人は『紅葉通り』に住んでいるらしいが、詳しい事は判らなかった。情報は少ないが、ヒスイは動くことにした。
「あ、ヒスイさん。軽くお腹に入れて行った方がいいですよ。何か食べます?」
娘さんが珈琲のお代わりを入れながら聞くと、ヒスイは少し考えた。
「んーっと、クロックムッシュを。あと、アメジさん…風邪をひいたみたいなんでパン粥でも持って行ってあげてください」
「判ったわ。しかしクリスマスイブに風邪ねぇ。……今夜は冷えるかも。それに雲の色が妖しいし…雪が降るかもね」
娘さんは窓の外を見ながらそういい、早速調理に取り掛かった。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書
 ども、フーレイです。そんなわけでこんなのりなのですが、いかがでしょう?因みに、クローネガルドはY2つさんのリプレイに登場する北の国です。勝手に出してすいません。あと、ブリスガルムはカードワースシナリオにもあり、リプレイにも出しています(1年前の更新に。因みに、オニキスの弟は無事に結婚しました)。

 さて『六珠』はどこに行ったのか。それについては後でちゃんとやりますので、そこら辺はお待ちになってくださいな。

―続きは明日。
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-27 21:17 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

アメジの兄貴の魅力を頑張って引き出してみた (アメジ、……)



『晩秋の訪問者』

 その日は冷たい雨が降っていた。アレトゥーザの『蒼の洞窟』では1人の少女と1人の男がその奥で茶を啜っている。男の顔には殴られた跡があり、手当てされていた。
「……でも、何故そんなにまでなってここへ?貴方はこの町が嫌いだったでしょう?」
目の前の少女が心配そうに問う。が、男は苦笑した。青々とした空間で、黒いローブを纏った彼は苦々しい顔を一度浮かべ……ゆっくりと少女と目を合わせる。
「あんたの顔が見たくなった。それだけさ」
そういうとゆっくりと茶を飲む。僅かに見えたくすんだ金髪を揺らし、彼は小さくため息をついた。ローブの中で何かが動き、僅かに見えたふさふさの尻尾に、少女は苦笑する。そして、何も言わずお茶を口にした。
「私の顔を…ですか」
顔を上げると目の前の男はいつになく真面目な顔で見つめていた。細い瞳が引き締まって見える。自然と背筋が伸びた。そして、男の唇が動く。
「なぁ、レナータ。……村に戻ってこないか?」
顔が動く。と、同時にフードが取れた。カンテラに白い肌とくすんだ金色の流れが照らされる。と同時にぴんっ、とたった狐の耳が姿を現した。
「アンバーやネフィもいるし、お袋や村長たちもレナータには戻ってきてほしいみたいだし…」
「気持ちは、嬉しく思っています。けれど、水の精霊との交信にはここが丁度いいのです」
レナータと呼ばれた少女は男にそう言い、小さく笑う。
「アメジもそうでしょう?貴方は霜の精霊と交信しやすい場所に庵を構えていると聞きましたが?」
「あれか。そんなもんと思っておけ」
アメジと呼ばれた男は他人事のように返すともう一度お茶を口にした。

 晩秋のアレトゥーザ・蒼の洞窟。その奥に暮らす精霊術師のレナータはその日、偶然にも街を嫌う幼馴染、アメジストと出会った。が、彼は顔や手足に痣を作り、ボロボロの状態で路地裏に座り込んでいた。荒い息を必死に落ち着かせようとしているようにも見え、レナータは彼を自分の暮らす場所まで連れてきたのである。何故彼がそうなったのか。理由がレナータにはなんとなく判っていたが、アメジストが珍しく答えてくれた。
―聖海の坊主どもと喧嘩して負けた。
恐らく一方的に因縁をつけられたのだろう。アメジストは精霊術師である前に狐のワービーストであった。それ故に聖海教会の人間は―ごく一部ではあるが―≪汚らわしい妖狐≫と彼を見ている。幼いころ、村の人間達と共に街へ来た時も数人の坊主たちから暴行を受けそれ以来彼は街の人間を嫌う節があった。
 そんなアメジストが危険を冒してまでアレトゥーザに来た。その事が何を意味するのかも彼女には分かっていた。普段は面倒な事が嫌いで、他人にあまり関心を示さない彼が自分のところまで自分からやってくるという意味も。それが、さっきの言葉だった。
「……やっぱり、駄目か」
アメジストのため息が空間に溶ける。良く見ると彼が普段から連れている霜の精霊が肩をすくめていた。狐の耳が震え、頭の上にいた霜柱の精霊もまた苦笑を浮かべている。
「セルゲイ爺もカロンもやれやれ、って言ってるぜ……。ったく…」
そういいながら、アメジストがまた狐の耳を震わせる。彼の左耳には棘のような紋様が刻まれている。立派な【精霊術師の徴】であり、彼からしてみれば「自分である証」でもあるらしい。それを否定するこの街を、彼は酷く嫌っている。だから…もあるかもしれない。
「気が変わったら手紙をくれ。俺は迎えに行くぜ?」
「ええ、そうしますね。気が変わったら」
そういい、互いに笑いあう。けれどアメジストはどこか寂しそうにレナータを見た。レナータも少し表情を曇らせる。しばしの間、揺れる水面の音と天井から落ちる水の音だけがそこに満ちた。何も言わず、2人はただ見つめ合う。が、アメジストは無言でレナータの傍に座り直すと、ぽつり、と言った。
「……俺はあんたが嫁に来てくれたら嬉しい」
その言葉にレナータは思わず息をのんだ。村を離れる前、確かに彼はレナータに求婚した。その時はてっきり酒の勢いだと思って相手にしなかったが……。
「アメジさん…あれは本気だったのですか?」
「でなきゃ『嫁に来い』なんて言わねぇぜ」
驚いたままの瞳に、真剣な紫色の双眸が映る。
(嗚呼……)
そこまで聞いて、レナータの眼がさらに見開かれ…考察がまとまる。彼がどんなに自分を想っているのか。そして、あの村で一緒に生きたいと思っているのか……。けれど、答えは決まっていた。例え本気でも…彼女にとってアメジストは「幼馴染」の域を出ない。それに、恋愛よりも今はもっと大切な事がある。ぎゅっと瞳を閉ざし、いつの間にか首を横に振っていた。
「レナータ……やっぱり…だめ、か…」
アメジストの声は明らかに落胆している。こんな声を聞いた事は一度もなかった。何時もけだるそうで、楽しそうな声しか聞いた事がなかった。あんな真剣な声は初めてだった。
「ごめんなさい、アメジ兄さん。私は貴方の想いに答える事ができません」
「いいよ。男として見れないならば」
いつもの気だるそうな声に戻り、アメジが苦笑する。そういって耳を掻く癖は昔通りだ。思い通りにならなかったり、いい結果を得られない時、そんな思いを悟られないように苦笑を浮かべる。この男は人前で滅多に悔しがったり、泣いたり、泣き言を言わない。
「変わっていませんね……」
思わず呟いた。彼は初めてであった頃から全く変わっていない。師匠に連れられて来たあの村で出会ったときと……。それが聞こえなかったのか、はたまた聞かなかったふりなのか、アメジストはお茶を飲んでいる。
「別に……」
そう言ってお茶を飲み干すと何事もなかったかのように瞳を閉ざし、壁に背を預ける。
「世話になったな。夜が来たらそのまま帰る。狐になればそんなに危険じゃねぇだろう。少し休んだら出ていく」
「えっ? 今夜だけでも泊って行った方が……。傷が酷いですし…」
「休めば問題ない。それに恋人でもない女のトコに泊ったら危ないだろ?男はみんな狼になるんだぜ?」
いつものように気だるそうにそういいつつも、何処か棘のような、自制のような、釘刺しのような言霊が飛んだ。それっきり、レナータが何か言ってもだんまりを決め込むアメジストだった。

 夜になった。目を覚ましたアメジストはレナータが作った夕食を食べるとお茶を一杯飲んだ。そして、直ぐに立ち上がる。
「もう、行くのですね」
「ん。多分明日には家に着くだろう。聖海の坊主どもと面合わせるのも厭だし、とっとと帰るぜ。ま、気が向いたら手伝いに来るから」
口元に、柔らかい笑みがこぼれる。レナータが立ち上がると見送りはココまででいい、とアメジストの手が止めた。
「多分雨は止んだだろうし。…じゃ、またな」
「…気をつけてくださいね」
そういい、レナータが一礼する。アメジストはローブを正すと出口まで歩いて行った。夜の帳が街を包んでいて、雨は霧雨に変わっていた。それでも気にせず歩いて行く。そして蒼の洞窟を出てしばらくすると物陰で狐に変わり、細い路地をとことこ突っ走った。淡い金色の毛並みが湿気を含み、枯れた草花の匂いが鼻を掠めた。
(……ダメだろうな。俺じゃきっと……)
そう思うと胸が痛かった。聖北の坊主に殴られるよりも、見世物小屋の男に鞭で打たれるよりも、あばら骨を折られるよりも痛かった。けれど、それでもいいと思った。レナータが精霊術師として立派になるのはアメジストだって嬉しい事だ。それに自分じゃ彼女に釣り合わない気もした。
(他に好きな男が居たって、祝福しよう。俺は…アイツの幼馴染なんだ)
不意に、想像した。彼女を抱きしめる他の誰かの姿。喜んでやろう、そう思うのに胸の奥が痛かった。
(俺はレナータに負けないぐらい、いい女を探す。もっと俺らしく、それでいてもっといい男になればいい)
元から、性格的に女々しいというのはわかっている。だからそれを口にせずどうにかしていた。こんな思いをするたびに、胸が痛く…そして…魂の奥が熱くなる。
(見ててくれよな。俺の変化を!)

 あの夜から時が経った。レナータもアメジストも冒険者となっている。そして、前のように楽しげに向かい合っている。この日も雨で、2人はアンバーが焼いたピザを食べながらその時の事を思い出していた。
「そういえばレナータ。あの時は急に『嫁に来い』って言ってすまんかった。ま、驚くわな」
「いつになく真剣でしたから、その事にも驚きました。何時もどこか気だるそうな姿しか観ていませんでしたし」
苦笑するレナータにアメジストはふふ、と大人びた笑顔を見せる。そしてそつなくナプキンを渡し、口元を示してチーズが付いている事を教えた。
「わっ、す、すみませんっ」
「気にするな。…で、いい男でもできたか?」
「何言ってるんですか…」
「いや? ちょっと色っぽくなったとか思ってさ?」
何気なくそうからかう彼が、何故だろう、あの夜よりも、村にいた時よりも…この世を楽しんでいるように、輝いているように思えた。

(終)

後書は此方
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by jin-109-mineyuki | 2009-11-20 18:42 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(1)

因みに、61からは遠くへ? (水繰の剣亭、とりあえず一段落?)

冒険者の宿【水繰の剣亭】:60
何気なくの休日に

 奏でられるピアノに合わせて踊る、1組のカップル。それに黒髪の女性が厳しい指導を入れる。その様子を見ながら、1人…エトワールは頷いた。
(確かアンバーはソロのダンスコンテストで何度か優勝しているらしいのよね。本人は黙っていたけど)
彼女の手元にはアンバーの情報が書かれた書類。そして、その中に1つ気になる資料があった。それは……。

「はぁ……アンバーとネフライトはダンスの練習かぁ」
そう言いながらあくびをかみ殺すのはサードニクス。その隣ではクインベリルがトランペットの手入れをしている。更にはタイガーアイが本を読んでおり、2人に挟まれた状態の少年はちょっと気恥ずかしそうにしていた。
「レッドフロワーじゃないけどコンテストがあるそうよ。それでなの」
「昨日は衣装を見に行っていました。ネフライトさんのドレス姿、綺麗でしたよ?」
2人の言葉に、サードニクスはふぅん、と相槌を打ち……踊る2人を想像した。ネフライトは筋がいいのか、直ぐに基本をマスターした。まぁ、エトワールとバルディッシュの指導がよかったのかもしれないが。
「で、子供トリオ以外はどうしたんだ」
親父が不思議そうに言いながらちょっと退屈そうな3人に問いかけると、其々口にした。それをまとめると↓
・オニキスは自室で瞑想中
・ジャスパーは自分の師匠の手伝い
・パールは別宿の後輩冒険者の指導
・ヒスイはワディムさんの処へでかけて剣術の特訓
・コーラルは娘さんと図書館
・アメジストは先日依頼でいった教会の地下で本漁り

「まぁ、ばらばらだなぁ」
「それで僕らだけこうして退屈してるの」
サードニクスの言葉に親父は大いに苦笑した。クインベリルはトランペットをケースに入れると次はギターのチューニングを始めた。タイガーアイは本を読み終え、軽く伸びをする。
「そういえば、この間『六珠華・陰』で村の呪いについて調べてきたわよね」
「魚が食べられる、とヒスイとパールが何気なくはしゃいでたのを覚えてるわ」
「まさか濁流村も被害に遭っていたとはねぇ…」
3人はその時の事を思い出し、ため息をつく。フォーチュン=ベルから戻ったその日、一行は「村が呪われた」という話を聞き、その日のうちに清流村へと向かった。そして清流村の村長から「湖の対岸にある濁流村の人々が呪いをかけたに違いない」と言いだした。と、いうのもここ数日、何故か村の人々の眼が見えなくなる、という事件に見舞われているのだ。気になった一行は反対側の村でも話を聞き、調べていくうちに泉の祠へとたどり着いた。
「…あの大きい蛇には参ったよね」
「タイガーアイは毒をくらっちゃうし。聖なる葡萄酒がなかったら大変だったよ」
サードニクスとクインベリルが顔を見合わせる。タイガーアイもあれには参ったのか、苦い顔をしている。
「まぁ、どっちの村長さんも村を大切に思ってるのはわかります。けど、それを利用した邪水精は許せませんでした。倒せてよかったですっ」
そういい、彼女は小さく微笑む。親父はそうか、と相槌を打ちながら3人に温めたミルクとクッキーを差しだした。そろそろおやつの時間だ。
「まぁ、終わったあと魚料理が続いたんだ。あの時のアメジストの呆けた顔が笑えたなぁ。でも新鮮な魚は旨かったろ?」
「うんっ、とっても~。パールも大喜びだったよ」
その時の事を思い出し、笑顔になるサードニクス。
「あとねぇ、夏には遊びにおいでって湖伯様が言ってくれたの。だから今度は夏に行くの」
うきうきとした様子のクインベリル。
「アンバーさんたちにもお魚を味わってほしいです」
出そうになる涎を拭って、頬を赤くしつつ言うタイガーアイ。そんな3人の様子とこんな会話が、どことなく温かく思えた親父だった。

 一方、オニキスはというと……1人、なぜか闇の中にいた。その中を静かに1人歩いて行く。彼は、その闇を何度歩いていただろうか。
(精霊術師になって漸く会えた。貴女が敬いし精霊であり、私の愛しの≪白銀≫を魅了する存在。私にとっては……好敵手と言えるまでになりたいのですが)
そんな事を考え……小さく苦笑する。なぜなら、彼が喧嘩を売りたい相手は、強力な精霊だったりするのである。どこか安堵するような、まるで母親の腕に抱きしめられているような感覚がする、そのような黒い回廊を、ただ歩く。が、幾度も歩いているとその感覚も薄れてきた。いや……、ただその黒が己の精神を研ぐような気がしてきた。
(そろそろ、ですか)
顔を上げる。と、いつの間にか古めかしい祭壇に辿り着いていた。目の前にはたおやかに微笑む女性の姿があった。そう、彼女の後ろにある、蛇のような、蟲のような存在を伴った女性の像のような…。姿を確認すると、オニキスは眼鏡をただし跪く。
「…久しぶりですね、ダナ。『数多の名を持ちし多貌たる母』よ」
「人の生き様に染まった汝(ナレ)らしいな。オニキス、『刃金に惚れし螺旋率』」
ダナと呼ばれた女性はくすり、と笑ってオニキスを見つめる。彼女は目の前で顔を上げた天使を見つめ、どこか楽しげに口元を緩めた。
「吾(ワレ)は悠久を微睡む。時の経過を語るのは無意味な事ぞ」
「解っているのですが、つい……」
たおやかに語る女神に、彼は苦笑とも自嘲とも言える微笑をみせる。女神は変わらぬ笑みで眼前の存在に口を開いた。
「思い上がりとは思わぬか」
「?」
溢された言葉に、オニキスが首をかしげる。それを見、女神は再び言葉を紡ぐ。その表情に変化は無く、オニキスもまた変わらぬ表情で耳を傾ける。
「汝の想い人が歩む道は、別に敷かれた彼の者のぞ。来る時を待てぬというのは無粋というもの」
手を伸ばし、その白い頬に触れながらエメラルドのような瞳を細める。オニキスは恐れることなく瞳を重ね、表情を険しくした。
「放してください。彼女は私の婚約者です。きっと戻ってきます。この試練を乗り越えて」
そこで一端言葉を切り、一度呼吸を整え、再び口を開く。
「私は只管、彼女を見守ります。貴女の手にかかるような存在ではありません。私はそう信じています。そして…戻ってきたならば共に歩き続けます」
「……」
ダナが挑発するようにオニキスを見る。白い翼をゆっくりと広げ、真剣な表情で自分を見つめる男を。そして、他者に与えられた筈の試練に対し横やりを入れようとする存在を。
「あれは彼の娘のが選んだ道。彼の者が汝の介入を望むとでも思うてか。
吾が彼の娘に与えし『刃金の道』は、汝の道ではないというのに」
朗々と女神の声が響く。駄々をこねる子どもを諭す母親の言葉のように聞こえるのはオニキスの思い違いだろうか。しかし、天使は表情を変えず、女神を見つめ続ける。
「それでも、手を尽くします。私には彼女しかいないのです」
オニキスの眼に、迷いはなかった。ダナはまたクスクスと笑う。それはまるで夢の中の出来事を話す子供の話を聞いた母のように。そして、ゆっくりと瞳を開いた。
「足掻くがいい、螺旋律のオニキス。
 吾は刃金の守護者故、道を切り開かんと進み、奮起する者を愛す」
其処までいい、僅かに「だが……」と言いかけて言葉を止めた。暖かな空間の中、目の前にいる存在だけが氷のような冷たさを僅かに放つ。明らかな『意思』を読み取り、そっと目を細めた。
「彼の娘もまた、切り開かんと足掻く者ぞ。
 吾はただ其処にある。そして、与え、奪うのみ」
「わかっていますよ、ダナ。慈悲深くも残酷な原初の女神…」
そういい、オニキスは僅かに睨みを利かせ、女神はただ微笑む。柔らかな微睡みの中で不協和音を響かせる男の『意志』に、古の女神は何もかもを包み込む眼差しで、静かに答えていた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
清流と濁流(DIV)
微睡む刃金 OP体験版(Y2つ)
↑伏線のきっかけでもあります(ぇ

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
えと、フーレイです。
実を言うと、アンバーはダンスコンテストで何度か優勝していたり。で、その事をひけらかさないものだから今までだまっておりまして。うん。

いや、丁度いいシナリオなんてなかったし(暴露)。

序にオニキスの伏線配置。
ダナ様と何気に認識のあったオニキスですが、『刃金の精霊術師』にはなりません(彼は水と風がメインなのです)。会話にも出た婚約者がそうなんです。絶賛「ダナ様の試練」中ではありますが。一応、フラグ回収できればいいんだけれども、ねー;
一応プレイはしてますがその内容かすってません。すみません。
というか、当初の設定から変更です。婚約者…。

あと、「清流と濁流」は最初「こ、公害問題か?!」とも思ったんですけど違ったんですねぇ。と、言う訳で次回はアメジストのSS。霜の精霊であるセルゲイじっちゃんとカロンじっちゃんとのお話でもあるし、何気なくレナータ出してます。

あと設定上ヒスイがワディムさんの元へ行っただけなのでシナリオはやっておりません。後日ちょいとやろうかと思ってますー。彼にはこのままワディムさんの技を磨いてもらおかと。

(2011年 2月 追記)
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-24 20:48 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

偶然とはいえそれはねぇ、とおもいたかった (クインベリル、呆然となる)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:59
薬作りと海賊と冬の回想

 どことなく薬草やら葡萄酒の匂いがする。6人の冒険者と真剣な表情の老婆は鍋を覗きこんでいた。
「いいかのぅ? 何事も集中じゃ。注意力散漫じゃ、いいものはできんぞ」
「はっ、はい!」
老婆の言葉に、少年は頷く。棒を持っているのは普段【六珠】で活動しているサードニクスだ。ここはフォーチュン=ベル。その『象牙の杯』で【六珠華・陰】のメンバーは主であるセラヴィの手ほどきを受けつつ特殊なものを作っているのだ。アメジストは霜の精霊のカロンを肩に乗せて珍しい薬品に見入っている。
「ん、そろそろじゃねぇか?」
アメジストに言われ、サードニクスは手を止める。そしてセラヴィに頷いた。彼女は鍋を覗き込み、しばらくしてポツリ。
「どうやら『治癒の軟膏』は……成功したようだね」
そう言って、彼女は薬を小瓶に詰め、それをサードニクスの掌に乗せた。僅かに微笑んでみせると、少年もまた嬉しそうに頷く。
「しかしこの子は筋がいいね。『聖別された葡萄酒』も質のいいものを作った。気が向いたらまた作りにくるといい」
「よかったね、サードニクス」
タイガーアイはそういい、サードニクスの頭をなでるが少年は頬を真っ赤にしている。それに笑っていると、パールが何かに気付いたようだ。
「そういえばさ。何気にお前…日焼けしたなぁ。まぁ、商船の護衛で戦ったりしたもんな」
「皆焼けましたよ。クインベリルはすぐに元に戻りましたが」
ヒスイがそう言いながら腕をさする。まだひりひりしているらしい。それを見、セラヴィが苦笑する。
「後で日焼けに効く軟膏も分けようかね。結構焼けているみたいだから」
「そうなのよっ!海賊と戦ったからもあるけど」
クインベリルはそう言いながら手にしたギターをちょっと鳴らす。彼女の歌は船乗りたちを楽しませ、海賊への不安を和らげる事が出来たのだ。女性を船に乗せる事を躊躇った船乗りたちが彼女の歌とタイガーアイの舞いで全員陥落したのはここだけの話である。
「3日も出なかったんだ。俺としてはこのまま出ないでほしかったんだけどな。面倒なんだよ」
溜息まじりに呟くアメジスト。彼はそう言いながら黒いダイスを掌で転がすが、それを見てサードニクスが表情を険しくした。
「あの、アメジストさん。海賊との戦闘中に誤爆しましたよね…それ。敵味方巻きこんで全員に毒は結構きつかったんですから…」
「しょうがないよ、ダイスで出ちゃったんだもの。商人さんはそれに気付いていないみたいだけどね……、あの褒めようじゃ」
タイガーアイはそういうと肩を竦める。まぁ、それだけ腕を買ってもらえたのだろう。彼はまたアメジストたちに護衛をしてもらいたい、と言っていた事を思い出すとその複雑さも少しはぬぐえるものである。
「でもよ。あんな旨い飯が食える宿に泊めてもらったお陰で海賊の頭も倒せたんだと思うぜ~。ま、3倍の速度で来れても普通の海賊ってとこかなー」
「……パール。船について『けっ、赤じゃねーのかよ!』って言ったのは覚えています。3倍だから赤いというわけじゃないんです」
すかさずヒスイが言い……その戦いの事を思い出していた。

「俺が蒼き疾風のジャドだ。先日は子分たちをずいぶん可愛がってくれたじゃねぇか。その礼をさせてもらうぜ」
ジャド、と名乗った男に対し、前に出たのはパールだ。彼はゲイボルグを一回転させるとぴたっ、と彼の首筋に当てた。
「俺の名はパール。こっからはゲイボルグで語らせてもらうぜっ!!」
その瞬間、ジャドの剣が槍を跳ね上げ、双方もう一度ぶつかり合うとはじきあってはなれる。ジャドの表情は輝き、唇がつりあがった。
「くぅぅぅっ!本ッ当に面白そうな奴らだぜ!
 気合が入る…うおおおっ、行くぜ、野郎ども!!」
「ぐおおおおおおっ!」
「……えっ??」
海賊たちの声に、クインベリルがあらかじめ召喚していた熊が吠え、ジャドへと襲いかかる。それが、戦いの一撃となった。彼の怪訝そうな顔が、とても理解できた。

―何故船に熊?!

「結局、あの戦いで一番輝いていたのは熊さんでしたわ。まさかジャドを倒してしまうなんて……」
「でも、先に頭を潰せたから短い間に幹部が倒せたんだと思う」
クインベリルがうっとりするが、アメジストはなんだかなぁ、という気分でいっぱいだった。彼女があらかじめ召喚していたとはいえ……。
「もしかして、『笛吹きの歌』かい?そこのお嬢ちゃんは運が良かったと見える」
「でも…あのジャドさん…ちょっとかわいそうだったかなぁ。パールと戦いたかったみたいだし…」
サードニクスがそういい、ちょっとだけ苦笑した。

「っと、まぁ親父さんのお使いも終わった事だし宿に帰るとするか」
パールの言葉に一同が頷く。『象牙の杯』に別れを告げ、リューンへと歩き出す。その途中、ヒスイは1人の女の子とすれ違った。その薄茶色の瞳に、儚げな影に、柔らかな甘い香りにふと、足を止めてしまう。
(……今のは?)
振り返り、その女の子を探す。と、彼女はすぐに見つかった。けれどヒスイの記憶にある女の子とは全く違ったのか…彼は首を横に振る。
「んー?どうした、ヒスイ」
「何か落としました?」
アメジストとタイガーアイに問われ、ヒスイは苦笑する。そしてなんでもない、と言うと再び歩き始めた。けれど脳裏には、ある女の子の事がよぎっていた。
(そういえば、あの女の子…とても可愛かったですね。また、会えたらなぁ…なんて)
そう言いながら、去年の冬を思い浮かべる。ロマンチックな光り輝く聖夜に、彼はある詐欺師を追っていた。その途中にぶつかった女の子だ。
(名前はわからないけれど、縁があればまた会えるかもしれません)
そんな事を思いながら、ヒスイは小さく口元をほころばせた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
希望の都 フォーチュン・ベル(Djinn)

今回参考にしたシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
 どもフーレイでーす。……えーっとフォーチュン・ベルですけど『商船護衛』中にマジで起こりました、ダイスの誤爆。青いダイスではなく黒いダイスにチェンジしてみましたけど…えらい事になりました。全体に毒っすかー(涙)。青誤爆では大ダメージだったんですけどねー(別パーティでしたら確実に敵味方双方に大ダメージが)。

 そして今年の冬にリプレイ予定のSrenadeのプロローグも載せてしまいました。ヒスイ1人でリプレイです。これは今年のクリスマスかクリスマスイブに掲載できたらいいなぁ、と思っています。これに合わせて
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-19 19:37 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)

久方ぶりの更新で、ぐだぐだです。(ユリン、少し悩む)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:58
お客と薔薇の絆と(やや危険な)昼餉

 のどかな雰囲気ただよう【水繰の剣亭】の一角。旅の商人と、オーエン村から用事でやってきたユリン、近所にある【青狸の袋亭】の先輩冒険者であるカチュアと共に【六珠華・陽】のメンバーはのんびりしていた。
「では、買物は以上でよろしいですか?」
商人の問いに、アンバーは頷く。カウンターを覗くとカチュアとネフライトが何やら料理を作っている。このカチュアは料理好きな冒険者なのだが……虫とか料理に出すので『悪食』といわれていたりする。
(きょ、今日はユリンや商人さんも来ているんだしマトモなのを頼みますよ)
イル・マーレの封を開けつつオニキスは思う。ちょうど昼食時。そろそろ出来上がるとは思うが……微妙に心配だったりする。
「あ、あの……どうして皆さん顔色が優れないんですか?」
「そうですよ。凄く美味しそうな匂いがするではありませんか」
ユリンと商人さんは不思議そうな顔で一行を見るが、ジャスパーは苦々しい顔になった。
「まぁ、あのカチュアって先輩は本当にいろんなものを料理して食べるのが好きで、この間なんか芋虫の煮っ転がしを食べる事になったんですよ?」
「でも、あれ案外クリーミーでおいしかったよ?」
コーラルがそういいながら珈琲を飲む。傍らのトルマリンは小さく笑う。
「そうね、地方によっては蛸も食べるわ。アンバーやネフィ、アメジさんの故郷では食べるといってたかしらね」
そう言いながら彼女は商人さんとユリンへお茶のお代わりを進め、商人さんだけがそれを注いでもらった。
「そういえば、今回の依頼……少し胸が痛かったなぁ」
ネフライトがぽつり、とカウンターで呟く。少ししょげた様子のネフライトにカチュアが首をかしげる。
「ん?吸血鬼退治だったんでしょ?どうしてまた?」
「まぁ、依頼人である司祭様と退治対象の吸血鬼、双方の気持ちがわかってしまったからでしょう。あれは、本当に切ないですね」
オニキスがそういい、小さくため息をつく。そして珈琲を飲みながら優しい瞳でアンバーとネフライトを見つめた。
「クロフォード司祭は愛してしまった吸血鬼に封印を施し、自分の死と同時に目覚めるようにした、か。一種の独占欲なのかなぁ」
「まぁ、そうとも取れる。けど、僕らに『倒してほしい』って頼んだんだ。死後もいっしょにいたいんだろう、と僕は思ったよ」
アンバーが首をかしげ、コーラルは小さく苦笑して答える。ユリンは一行の話を聞きながら小さくため息をついた。
「愛してはいけない者同士の恋……ですね。この間ジャスパーさんからもらった本にもありました。確かに、切ないですね。でも…これでよかったかもしれませんね」
「そうかもしれません。天使としては、複雑なのですがね」
オニキスはそういいながらどこか遠くを見つめ、商人さんもカチュアもどことなく寂しそうな顔をしている。
「最後の時に、クロフォードさんの手を求めていた。本当に彼女も司祭を愛しているんだなって思って……」
ネフライトは表情を曇らせ、少し俯く。そう言いながら、彼女はふと、アンバーを見た。もし、自分だったらどうしただろう?
(アンバーが神官で僕がヴァンパイアだったら……多分愛し合っていても戦いそうだなぁ)
そんな事を考えているとカチュアが思わず声を上げる。
「ね、ネフライト!煮込みすぎちゃうから!」
「えっ?」
そう言われ、ネフライトはあわてて鍋を鍋置きに置いた。

 ようやく食事ができ、全員で食べてみる事に。今回はネフライトも一緒だからか、けっこうまともな料理……に、見える。
「食欲がそそられますね。これはアレトゥーザの料理ですか?」
商人さんの目の前には魚介類たっぷりのパエリアがのっていた。カチュアにしてはまともなものを選んだものである(たぶんネフライトのお陰だろうが)。ネフライトは小さく頷いた。
「アレトゥーザというより、僕の母の十八番ですけれど。渓谷で育った僕とアンバーにとってはおふくろの味です」
「川魚と川でとれた貝やエビを使うのよね。今回は渓流に住むというドラゴンの鱗でだしを取ってみたの!」
………
その言葉に、一瞬沈黙が下りる。
「ちょっと、どうしたのよ。今回は間違いないわよ?ちゃんとこのレシピにあったんだから!」
「……えーっと、これですか?」
オニキスがカチュアから受取り、そのレシピを読む。興味があるのか、商人さんもそれを読み始めた。一方警戒するコーラルはきょとんとしているユリンを心配している。
「いっそ、誰かに味見してもらった方がいいですよね」
彼女の言葉に全員がじーっ、とアンバーに集中する。
「わかったよ。食べてみるよ……」
そういい、アンバーは恐る恐るその料理を口に運び………ぽとり、と匙を落とした。そして顔面蒼白になった状態でトイレへと走って行った。
「カチュアさん。貴女が使ったというドラゴンの鱗ですが、吐き気をおこす薬ですよ」
商人さんの一言に、全員が青ざめカチュアだけがそうなの、ときょとんとなった。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
風たちがもたらすもの(Y2つ)
芳しき薔薇は散る(ショガス&クエスト)

今回参考にしたシナリオ(敬称略)
惨劇の記憶(きしりとおる)
おいしいごはんの作り方(タナカケイタ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
ども、いきなりこんなかんじなフーレイです。
今回はシナリオ『おいしいごはんの作り方』の前振りもやりました。ごめん、ユリンちゃん、商人さん。変なもの食べさせちゃおうとした……。てへ。

しばらくしてからなんですけど10話ごとのダイジェスト!もやって行こうかなぁ…と思っています。某掲示板リレー小説の方は滞ってるんですけどね(涙)。一応日記形式にしよっかなぁ、とかも思っていますけどそのダイジェストについてはカテゴリーを別にした方がいいのか、同じのままで行くかでちょっと考え中。なにかあったらツッコミをここのコメントにプリーズ。

それにしても、遅くなってすんまそん。けれどまぁ、そのシオンたちのリプレイも挟まるのでこっちの更新は遅くなる事必須です。
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-05 11:10 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)