ある野良魔導士の書斎

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漸く登場したやつがいる (アンバー、多分恥ずかしい)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:39
渓谷の鋭利なる乙女(後編)

 パールの一撃を受け、倒れたナパイアスは立ち上がろうとした。が、うまく身体に力が入らず、水面に膝を突く。そして、鋭い目で6人を見つめた。誇り高き渓精はその凛々しい顔に、瞳を細めつつ荒い呼吸を繰り返す。
「あたしの身体も、鈍っちまったかねぇ……」
「いや、相変わらず強いよ。姐さんは」
アンバーの言葉にナパイアスは首を横に振る。冒険者達の目には、彼女が余裕を見せるも無理をしているのが解っており、フライマンバが治癒をほどこそうとしたものの、彼女はそれを止めた。
「やるじゃないか。あんたたちの力は見せてもらったよ。
 流石精霊使いトパーズの倅とその友達ってだけはあるね……」
そういい、彼女はアンバーを見…一同を見る。ふと、アンバーがくすぐったそうな顔をしたのをサードニクスとパールは見逃さず、小さく笑う。
「ナパ姐さんのことだから、ここを動く気ねぇんだろ?」
それとなくアンバーが問うと、彼女は一つ頷く。
「まぁ、ね。でも、これをやるからさ」
と、ナパイアスは一つのカードを渡した。激流を模した絵には美しい彼女の姿も。オニキスは受け取り、それが精霊術である、と確信する。興味深そうにクインベリルが覗き込み、そっと触れる。
「これは……?」
「ああ、あたしを呼び出す媒体さ。これでいつでも呼んでおくれ」
そう言ってにっこりすると……不思議な輝きを持つ瞳で、彼女はオニキスを見た。
「あんた……オニキスだったね」
「ええ。精霊使いとしては未熟ですが……」
そう深く頭を下げる天使族に、ナパイアスは小さく苦笑する。
「そんなに畏まらないでおくれよ。あんたはあたしに勝ったんだ。まぁ、今度来たときにでも立ち寄るといい」
「そうさせていただきます。私は、あなたから色々学べればとおもっていますから」
オニキスはそういい、優しく微笑む。殺伐とした空気は消え、すっかり和やかムードになっていた。アンバーは小さく苦笑する。
「ナパ姐さんは厳しいんだぜ。俺もよく沈められたなぁー」
「さっきみたいに、ずばーんっ……て?」
その言葉にサードニクスが思わず声を上げる。そして、それにあわせるようにくすくすと笑い声が聞こえてきた。若い男性のものだ。
「ナパイアス。相当手荒な歓迎を息子達にしてくれたようだね」
誰も、気配を感じ取ることが出来なかった。気がついたらナパイアスの真横に、一人のエルフが佇んでいた。アンバーと同じ緑がかった海色の瞳が全員の目を引く。
「なんだい、トパーズ。いつから居たんだい?」
ナパイアスの問いに、エルフの男…トパーズはくすくす笑う。
「キミがここへ現れたときに、偶然ね。でも、まさかアンバーが戻ってくるとは思わなかったよ」
「……つまりは、アンバーの…お父さん?!」
ジャスパーは思わず目を見開き、ナパイアスとアンバーは頷く。他のメンバーもまたそのエルフに歩み寄る。健康的にやけた小麦色の肌に緩やかなウェーブをもつ白い髪が、全員の目を引くも、顔はアンバーと凄く似ていた。流石親子である。
「はい。私がアンバーの父であり、精霊術師のトパーズ・ティアーズです。いつも愚息がお世話になっております」
「丁寧すぎるよ、トパーズ。ホント、アンタは変わらないねぇ」
ナパイアスに言われ、トパーズはクセだから、と小さく苦笑する。一同は、くすくすと笑うエルフの男性に、魅入られていた。

 一行は輪になって座り、ナパイアスは水辺の石に腰掛ける。そしてトパーズはにっこりと笑って一同を見る。
「ふふっ、素敵な人たちと出会えましたね、アンバー」
その言葉に照れるアンバーに、ナパイアスもくすくす笑う。
「ホントだよ。戦っていてそうおもう。普段一人でいることが好きなあたしでもいいな、とおもってしまったからねぇ」
「ナパ姐さんまで……。なんか照れちまうよ」
「ふふ、でもまんざらではなさそうですね」
オニキスにも言われ、アンバーは更に顔を赤くする。そんな顔を見ているとなんだか幸せな気持ちになっていた。
「僕らも、アンバーをリーダーにしてよかったって思っているよ」
「時々頼りないと思うときもあるけど」
サードニクスとジャスパーがつなげ、パールとクインベリルも頷きあう。皆が、アンバーを認めているのだ。
「最初に比べて頼りがいが出てきたよなっ、て思う。今じゃかけがえのないやつだよ」
「いざと言う時は決めてくれるし、何より……皆を信じてくれているみたいだから」
仲間たちの言葉が嬉しくて、でも恥ずかしいアンバーはベールで顔を隠す。それにトパーズとナパイアスはそれにくすくすと笑い声を上げ、あとからオニキスたちも加わって益々アンバーの顔は赤くなった。
「……それはいいけど、トパーズ。あんたがここに来たのはどういう風の吹き回しだい?」
ふと、我に返ったナパイアスはトパーズに問う。と、彼は小さく笑いながらアンバーたちをみた。
「風たちが、息子たちのことを教えてくれましてね。それで見に来たのです。もし、無様に負けるようだったら、息子を連れ戻そうとすら思って」
「「!?」」
一瞬だけ、空気が凍る。が、トパーズはやんわりと微笑んで言葉を続けた。
「冗談ですよ。
 本当は依頼を頼むためです。私を魔光都市ルーンディアへ連れて行ってほしい、と」
ルーンディアとは、鉄に囲まれた都市国家であり独特の文化が根付いている場所である。聖北教会から迫害された者たちが集っており、それ故に信者の入国が厳しいらしい。それを思い出しつつアンバーはうなずいた。
「親父の警護か。皆は、どうだ?
 ついでにルーンディア観光ってのもいいと思うけど……」
アンバーの問に、全員が笑顔でうなずいた。
「決まりですね。出発はいつにしましょう?」
オニキスが問いかけると、トパーズは一つ頷いて口を開く。
「明日の昼頃にロリエル村を発とうと思っています。【六珠】の皆さん、よろしくおねがいしますね」
トパーズの言葉に、全員笑顔で頷いた。

 その夜。一行はアンバーの故郷であるロリエル村で一泊した。住人たちはアンバーの帰郷と仲間たちを喜び、美味しいご飯と素敵な音楽でもてなしを受けたのだった。

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
碧海の都アレトゥーザ(Mart)

名前のみ登場のシナリオ(敬称略)
魔光都市ルーンディア(ロキ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

言い訳的後書き
一週間遅れであげておりますフーレイです。
40話からは寄り道な勢いでジャスパーメインの話をと考えたのですが……うーん、どうしよっかなぁ、てな按配です。関連が深い依頼ってそんなにないものだなぁ、と振り返ってみたら。聖北がらみで過去に凄く欝なシナリオもあったからなぁ。

とりあえず、次回はルーンディアへの道中でございます。よろしくね。
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by jin-109-mineyuki | 2008-10-04 23:09 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)