ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

よく考えてみてくれ。こいつをどう思う? (カモミール小隊、漸くです:汗)


 リューンの石畳を、楽しげに歩く6人の男女。その全員がちょっと武装しているところからして、彼らが『冒険者』であることは用意に推測できる。
「ふむ…クリウス商会か。案外がっぽり儲かるかもな~♪」
なんていいながらリーダーのカモミールが鼻歌交じりに依頼の紙を見る。と、傍らでベイジルがやれやれと肩をすくめる。
「けれど、まぁ……いつもながらなんかきな臭い気がする。ただの護衛ではなさそうだ
 ぜ」
紅蓮の髪を揺らし、ハッカが呟く。彼は嫌な予感がしたとき、腰に下げているアスカロンの鞘を叩く癖があり今もかるくぽんぽん、と叩いている。それを見つつミントとジンジャー、マルパッチョが苦笑した。
「その可能性は十分あります。まぁ、楽しめばいいんですよ、た・の・し・め・ば」
ベイジルがそういいつつ不敵に微笑むその横で、ミントがそういうものかしら?と首をかしげる。
「確かに、はらはらするほうが楽しいけれど………」
「それと一緒かもしれないね」
マルパッチョが同意するように頷く。
「…ああ、ここだ。失礼のないように…とくに隊長」
ジンジャーはそっけなく言うとカモミールの肩をぽん、と叩く。そして、彼の耳元で
「いいか。『裏紫苑』は奥の手だぞ」
と小さな声で囁いた。

…まぁ、ともかく。一行はクリウス商会へとやってきたのである。

カードワースシナリオ『ヘイトマシーン』(作:a-system)より
『俺らとヒゲと殺戮兵器』:1 (著:天空 仁)

 カモミール小隊のメンバーが客間に通されて数分後。優しそうな眼鏡の男性が奥の部屋からやってきた。どうやら、彼が依頼主らしい。
「こんにちは、『カモミール小隊』のみなさん。私はクリウス商会の会長をしています
 ドルイズ=クリウスといいます」
彼はにこやかに微笑み、わざわざ来ていただいて…と一礼する。冒険者たちも恐縮し、一礼した。

彼からの依頼は『ある人物の護衛』である。
ルーラルという地方都市へ向かい、そこにいる「ある人物」を無理やりにでもリューンへ連れ戻してほしい、という。

「……つまり」
そこで黙っていたミントがドルイズを見る。
「どうか、されましたか?」
「ううん。無理やりにでもって事は…どんな手を使っていいの?」
依頼人に、キラキラと目を輝かせて問うミント。いや、この少女だけではない。良く見ると紺色の髪をした青年以外が目をめっちゃくちゃ輝かせている。
「え、ええ…。どんな手段を使ってもかまいませんから」
「どんな手段でもOK?よし、この依頼面白くなってきた!!」
思わず顔が強張るドルイズ。それに気づいているのか、いないのか、カモミールはぐっ、と手を握り楽しげに笑う。一体どんな手段を使おうとしているのか、もの凄く不安に思っ
た依頼人は苦笑しつつ死なない程度に…と言った。
「それって、本人が嫌がってもか?」
今度はハッカが問う。凛とした軍人を思わせる彼に、ドルイズは若干背筋を正して答える。
「ええ。……多分本人はリューンに戻りたがらないでしょうから」
「ふぅん。旅を続けていたいんだねぇ、その人。ならいっその事冒険者になってしまえばいいのに…」
マルパッチョがふむ、と唸る。その愛らしい姿にくす、と笑いつつ彼は報酬の説明をした。無事に達成できれば2000sp。これはかなり美味しい依頼である。
(しかし、なんかトラブルの匂いがするな…)
カモミールはその金額と依頼のバランスが合っていないような気がした。無理やりにでもある人物をリューンへ戻して2000sp。不意に、彼の脳裏に浮かぶシルエットが…。
彼はそのまま依頼主に問う。
「もしや、その護衛してほしいって人は…アニキですか?」
「違います。アニキだったら護衛はいりませんし、彼らには用事がありませんから」
ドルイズは怪訝そうな顔で即答した。
「それで、連れ戻してほしいのはどんな人なのですか?」
ベイジルの問いにドルイズは少し間を空けて、真剣な顔になる。
「私の父、カーター=クリウスです。父を見つけて、ルーラルから一刻も早く引き連れ
 ていただきたいのですが…」
その言葉に、一同は「これはなかなか厄介なことになってきたな」と内心で呟く。が、そこで引くような『カモミール小隊』ではない。
「お受けしましょう、依頼人さん。我ら『カモミール小隊』に任せれくれ!」
カモミールがとん、と自分の胸を叩いてにっ、と笑う。それに続けてハッカが少し首をかしげて問いかける。
「何故貴方の父親をリューンに戻さないといけないんだ?大切な用事でもあるのか?」
「ええと…実はですねぇ…」
ドルイズは少し不安な表情で理由を述べる。
会長職を離れた彼の父・カーターはその後各地を旅歩いている生活を続けており、現在はルーラルに滞在しているという。しかし、最近その都市から北にある村が突然丸々無くなっているという事件が発生したそうだ。
「…初めて知りました。そんなことが起こっているなんて(私の情報網でもつかめてい
 ないなんて、おもしろいものね)」
思わずそういってしまったベイジル。ドルイズも商会の情報網ではじめてしったらしく一般には出回っていないであろう情報…と推測された。
「しかも北部地方では頻発していてどれも原因不明とされているんですよ」
「だからこそ、秘密にしておこうと…(普通だったら入ってきそうなものなのに)」
ベイジルは説明を受けつつも知らない情報に内心苦笑する。
「息子としては、やっぱ父親には無事でいてもらいたいよな。その気持ち、解る気がす
 るよ、ドルイズさん」
ハッカはうんうんと頷き、その横ではミントとマルパッチョも頷いている。
「…だが、それにしても…奇怪な話だな」
不意に、ジンジャーが呟き…一同静まり返る。そしてカモミールと彼の目が合った。
「ジンジャー、お前いたのか」
「それは態とだろ!」
「いえ、私も申し訳ないのですが…今貴方の存在を…」
申し訳なさそうなドルイズの言葉に、ジンジャーはがっくりと項垂れて目に涙を浮かべていた。
「俺って……どれだけ存在感が無いんだよ…」

 とりあえずしょげるジンジャーの背中を叩いてしっかりさせ、ドルイズから前金を貰う。そして、彼は危険な場所へ行くに当たって、同行者を1人だそう、と言った。
「…プネウマ」
それが、同行者の名前だろう。ドアが開き、そこから1人の老女が入ってきた。絵本に出てくる魔女のような三角帽子を被っていた。だからといってかわいい雰囲気ではない。むしろ、どこかオーラが体から発散されているような雰囲気だ。その場にいるメンバーは思わず息を呑んだ。
(いや、絶対オーラが出ている!間違いない、この人は……)
カモミールは額に滲む汗をそっと拭いながら、小さな声で呟いた。
「この人は……きっとマスターアジ」
「そのネタは止して下さい。年齢を疑われます」
すぐにベイジルが突っ込み、当のプネウマ本人はふん、と鼻で笑っただけであった。ドルイズ曰くクリウス財団で一番の腕利きという。
(へぇ……是非手合わせしてもらいたいな)
ハッカが真面目にそんな事を思いながらプネウマをみていた。暫くして、彼女が口を開く。その目はあまり期待していないような目であった。
「……この人達が同行するのですか?失礼ながら1人を除いて魔力はそれほど高いとはおもえませんか」
ドルイズは手厳しい、と笑う。プネウマはベイジルを見つめ、小さく笑う。
「まともなのはそこの黒髪のお嬢さんぐらいですね」
「それは光栄ですわ」
そういわれ、彼女はまんざらでもないという笑みで答えるものの隣にいたカモミールはそれがある意味彼女にとっては挑発の意味である事を知っているので内心苦笑してしまう。
「まぁ、ともかく…早速向かおうぜ。善は急げって言うだろう?」
カモミールはとりあえずそう提案し、一同は動き出した。
「では、みなさんお願いしますね」
ドルイズは切実そうな目で一行を見送り、全員の無事を祈った。

(続く)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

【後書き】と書いて【はんせいぶん】と読む。
ども、フーレイです。シオンとシュウさんのトークが間にはさまったので今週からスタートです。なんか年齢を感じさせるネタもありますけれど、まぁ、今後もよろしくお願いします(一礼)。
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2008-09-30 20:25 | 札世界図書館 | Comments(0)