ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

宿の名前の由来です (フーレイ、がんばってみた)


 リューンに近い町の宿屋街。その一角にはちょっと違う宿がそろっていた。
 集う人間は、鎧やローブをまとい、腰には剣を帯びていたりする。
 人々の困りごとを解決する冒険者たちだ。
 場所によっては嫌われ者だったり、救世主だったりする、旅人たち。
 そんな彼らが拠点とする『冒険者の宿』が、そこに集まっていた。
 その中に、どこかほっ、とするような雰囲気のある宿が一軒。
 ドアに飾られた看板には、剣をもっしたガラスがはめられている。
 そして、とても綺麗な書体でこう……刻まれていた。

【水繰の剣亭】

『名前を』

 それは、アンバー、オニキス、サードニクス、ジャスパー、パール、クインベリルが宿に来るすごく前の事だった。いや、今でこそ有名な『黒曜の聖騎士』バルディッシュがリューンへやってくるほんの10年ぐらい前のことだろうか。一人の盗賊が冒険者を辞めた事が始まりだった。盗賊ギルドでは『旋風』という名前で通っている男で、変装も得意としている。彼は念入りに変装すると、一軒の古びた店を見つけた。

 そこはやや古びているが、趣のある店だった。小さい…というほど小さくも無く、大きいというにもなにか物足りないその店を、男は持ち主から買い取ると、早速修理を始めた。彼は盗賊ギルドの仲間に相談し、そこで冒険者の宿をする事にした。

仲間の一人が言った。
「やっぱり、カウンターは必要だろう?」
男は元からあったカウンターをぴかぴかにした。

仲間の一人が言った。
「裏庭はもうちょっと広いほうが剣の稽古にいいだろう」
男は庭の手入れをせっせとし、砂を買って整備をした。

仲間の一人が言った。
「冒険者の宿にするなら、部屋もちゃんとしないと」
男はベッドをあちこちからもらってくると仲間と一緒に修理した。
カーテンも質素だが綺麗なものにし、窓ガラスだってぴかぴかに磨いた。

仲間の一人が言った。
「倉庫にはたんまり酒の樽とか食べ物が置けるといいな。
 冒険者ってのは、なかなか食い意地が張っているからなぁ」
男は地下の倉庫を丁寧に掃除し、棚を設置したり、酒の樽を置く場所を確保した。

来る日も来る日も、そこは仲間たちでにぎわった。冒険者だったときの仲間や盗賊ギルドの仲間と一緒に夢を語らいながら、作業を進め……3ヶ月後には立派な宿が完成した。ようやくできた新しい『冒険者の宿』に、彼らは顔をほころばせた。
「名前はどうしよう?」
「そうだなぁ、なんか印象深い名前がいいなぁ」
不意に、そんな会話が聞こえてくる。男は小さく笑った。
「それは、もう決まっている。看板もできているんだ」
そういいながら、出来上がったばかりの看板を見せる。ガラスのはめ込まれた、おしゃれな看板。いささか冒険者の宿には不釣合いかもしれないが、夕日を受けたそれはとても輝いていた。

 男が冒険者であった時のこと。
 小さな村で一人の女性とであった。
 水を操る巫女であった彼女は、冒険者たちと共に妖魔と戦った。
 そのとき、彼は一本の剣とであった。
 彼女はそれが村の宝であり、水の力を持った魔法の剣だ、と言っていた。
 男はその剣を借受けると、妖魔をばっさりと切り倒した。
 
 村を離れる日、男は剣を返した。
 巫女は男たちに例を述べ、男にだけ小さな声で
 「この村に残ってくれないか」と頼み込んだ。
 でも、男はそれを断った。そして、仲間と村を去った。
 巫女はその前に、あの剣を男に渡した。
 男は、その剣も返し…巫女の手を引いて仲間の元に戻った。

 巫女は冒険者となり、男と夫婦になった。
 二人は互いに力をあわせて依頼をこなした。
 けれど結婚してから5年後、巫女はあっけなく死んでしまった。
 仕掛けられた罠にかかり、それが原因でだ。
 男は大切なものを失った。 そして、冒険者である意味を失った。

 男の脳裏には、優しく微笑む妻の顔が浮かんでいた。

「水繰の剣亭にするさ。これが、宿の名前だ」
男は小さく微笑んだ。

(おわり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
 なんか、脳内に浮かんでいた設定がかなり変わっていると思うんですがフーレイです。そして、宿の成り立ちはこんなかんじです。
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2008-09-07 14:13 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)