ある野良魔導士の書斎

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ついにお披露目 (カモミール小隊、出陣!)


 静かな朝に響く水の音。薄暗い厨房で、1人の男が黙々と朝食の準備をしていた。白い肌に黄色い瞳、そして短く切りそろえられた金色の髪に細く引き締まった体。見る人が見たら、彼が普通の人間ではない、と思うだろう。
―鍛え上げられた人間である、と。
…しかし、彼はそんなそぶりも見せずただ淡々と作業をおこなう。朝食用のスープを作り、パンの焼き上がりを見、上の部屋で眠る住人たちの心配をする。ただの『宿の親父』であろうとしていた。
「さて、そろそろか…」
男はくすり、と小さく微笑んだ。

カードワースショートショート
『ある宿の朝を覗けば』 (著:天空 仁)

 ここは表向き冒険者の宿『オーベルテューレ』となっている。事実ここには冒険者が入っており、いろんな依頼を受けている。が、その正体は異世界にある大国『オーベルテューレ』からやって来た軍人たちであった。先行部隊として送り出されたのは若者ばかり5人だった。今では冒険の途中で出会った少女が入隊したり、祖国から別の部隊が投入されたりで、中々にぎわい始めている。そんな冒険者…のフリをした侵略者たちの健康管理とリューンでの情報収集を任されたのが宿の主人…名をクミンシードと言った…となったホムンクルスであった。
「おまえたち、そろそろ起きたらどうだ?」
そういいながら、二階へ声をかける。これは既に日課だ。リューン侵略という任務は中々進みそうもないが、日々が充実している。まぁ、侵略者達自体が冒険者としての生活になじみすぎたのも原因だが、クミンシードはこれを甚く気に入っていた。
「今日は、カリカリベーコンエッグを焼きたてベーグルにはさんでるぞー」
その言葉に、ばっ、と一斉にドアが開いた。


 一階の食堂。そこのカウンターには6人の男女が顔をそろえていた。楽しそうに朝食を取る彼らの様子を見つつ、クミンシードは小さく微笑む。
「んー、今日の依頼はどうしよっかなー」
水色の髪をポニーテイルにし、東方風の衣服を身に纏っているのはカモミール。彼はリューン侵略任務のメインとなる『カモミール小隊』の隊長で、階級は軍曹。いつもはおちゃらけているが、決めるときは決める…らしい。最近ではある少女から貰い受けた刀が原因で【怪刀を帯びし者】という異名を持っている。
「ここ3日なにもしていないのは問題だぞ、カモミール」
紅蓮の髪をポニーテイルにし、腰に剣を下げているのはハッカ。『カモミール小隊』の突撃隊長で、階級は伍長。一番リューン侵略に対し真面目にがんばろうとしているのだが、如何せん戦闘が先に頭に上がる。今は魔剣アスカロンを手に先陣を切り、戦闘を有利な流れにしている。
「ハイリスク・ハイリターンが一番の魅力でしょうね…ふふ」
漆黒の長い髪をなびかせ、これまた黒い衣服を纏っているのはベイジル。『カモミール小隊』の参謀で階級は曹長。噂では異例のスピードでかなりの地位まで行ったが、上層部のいざこざが原因でこの地位に納まっているらしい。医者兼会計係でもあり、かなり厳しいらしい。
「この間の依頼みたいにはらはらするやつがいいなぁ」
白銀の髪をヘアピンで留め、傍らには槍を置いているのはミント。『カモミール小隊』の一員で階級は二等兵。一見軍人らしくないお嬢さんだが、かなり戦闘では活躍するらしい。ムードメーカー的な存在になっていて、宿のアイドルとも言えた。
「そろそろ遠出の依頼に行ってみるのもいいかもな…」
深い紺色の髪と瞳に、濃い灰色のマントを羽織っているのはジンジャー。『カモミール小隊』の諌め役で、階級は兵長。カモミール、ハッカとは同期で、この小隊に組み込まれる前は隠された暗殺者部隊の一員であったと言われる。ただし、存在感が多少薄い。
「うん、それはもの凄く賛成だよッ!!」
狐色の髪と二対の耳が特徴的なのはマルパッチョ。冒険の途中で『カモミール小隊』に入隊した少女で、階級は三等兵。ある魔術師によって犬とのキメラになったという。犬の耳と人間の耳で情報を聞き分けるので、重宝されている存在だ。
「元気なのはいいが、ちゃんと任務の事も……」
と、心配になるクミンシード。しかし、カモミールはははは、と笑う。
「勿論、日々リューン侵攻の作戦を練っているさ。近々この妖刀をつかって
 『リューン市民愚民化計画』を行うつもりでいるんだ」
彼はそういいながら腰に帯びた刀を叩く。彼が持っている刀は妖刀と呼ばれる類で、この効果は『人の心の奥底にある欲望を呼び覚ます』というものだった。
(…まぁ、カモミールたちらしいと言えばらしいといえるが)
クミンシードは少し首を傾げる。カモミールがもっている妖刀の力を食らった事がある彼としては、『愚民化っつーより、オタク化だろ?』という突っ込みをしたいが、一応上官なんで黙っておく。
「…まぁ、やってみる価値はあるとおもうわ」
ベイジルがそういいつつ、楽しそうに笑う。その様子を見つつクミンシードはうーん、と首をかしげた。

 暫くして、食事が終わる。そしてカモミールが依頼を見て口を開いた。
「親父さん。
 この張り紙はずいぶんシンプルだけどいったい何なんだい?」
「ああ、しかも内容も護衛だしな。よくある仕事だ」
クミンシードはふむ、とうなって答える。が、娘さん…と親しまれるパプリカは首を傾げた。彼女は唯一オーベルテューレ軍とは無関係の、リューンの人間である。
「でも、ルーラルなんて街なんて聞いた事ないですよ」
すっごく田舎なんじゃないですか、と言いながら彼女は肩をすくめた。カモミールも頷き「それに条件付っていうのが気になる」と溜息をつく。実を言うとクミンシードも知らないのだ。
「ひょっとしたら…危険な依頼かもしれませんね」
ベイジルがぽつり、と呟く。
「まぁ、そのあたりのことはこの依頼主に直接聞いてみて判断すればいいことじゃないか?」
そう言われ、そうだな、と全員が頷く。
「とりあえず、話だけでも聞いてみるよ。クリウス商会に直接向かえばいいんだな」
ジンジャーが確認をするようにクミンシードの目を見る。
「ああ、そうだ。リューンのクリウス商会に直接行ってくれ」
場所は、わかるよな?と親父は全員に問う。
「うん。それじゃあ行ってくるよ!」
ミントは皆を代表してうなづいた。

 こうして意気揚々とクリウス商会へ足を運んだカモミール小隊。その背中を見送り、クミンシードは食器洗いをパプリカに任せると自分は二階にある宿舎の掃除をはじめた。

しかしこの時。ここにいる誰もが……あんな大騒動に発展するとは思わなかった。

(続く)
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あとがき
※作品名は敬称略です。すみません。
ども、天空 仁です。ええと最後のほうが『ヘイトマシーン』(作:a-system)の冒頭部分となります。つか、この6人で遊んだ場合のリプレイもどきをかきますわ。リューン侵略を目指すカモミールたちですが…まぁ、実のところ『ケロロ軍曹』(著:吉崎観音)がモチーフです。そのはずですが、多少変更部分などが出たのでそうともいえなくなってきたかも。

この話は冒頭と顔合わせといいますか、カモミールたちの紹介をメインとした序曲です。次回
からは本格的に『ヘイトマシーン』シリーズのリプレイを書いていきます。

ギャグでいけるかわからないが、案外難しいんですよね。
僕、ギャグセンスに自信がないーっ!
だからケロロにはもの凄く尊敬が。
よし、やろう。やったろう!!
天プラ(同じネタを繰り返す技法。タイミングが命?)でも何でもやってから!!

それでは今回はこれで。
ついにやっちまった感たっぷりな著者・天空 仁
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by jin-109-mineyuki | 2008-08-07 23:08 | 札世界図書館 | Comments(0)