ある野良魔導士の書斎

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二週間お待たせしてさらにこれって・・・(フーレイ、内心で土下座)


冒険者の宿『白銀の翼亭』
その前にやってきた一人の少年は、まじまじと真新しい看板を見ていた。
「……看板だけ新しいな。じゃあ、新しい冒険者の宿なのか?」
「ええ、そうですね。親父さん曰く私が第一号だそうで」
ハーフエルフの男にそう言われ、少年はふうん、とネコの耳を一度振るわせた。小柄な身体に真新しい黒い外套を纏った彼の目は、その看板に釘付けになっていた。
「…しら…がねの……つばさ?」
「その通りです」
たどたどしく看板の文字を読み取る少年の頭を、男は優しく撫でてやる。少年は少し恥ずかしそうにうつむいたが、ちょっとだけうれしかった。

カードワースプライベートSS
『羽搏く翼が集うとき』(後篇)

「理想のパーティってどんな組み合わせでしょうか?」
不意に、ユインが呟く。宿にいる全員が顔を上げる。サクヤの登場によりすっかり怒気が萎えてしまったヘイストはとろけたチーズを挟んだパンを食べながら、
「まぁ、戦士、神官、魔法使い、盗賊がいるパーティじゃねーの?ソドムって兄さんが神官で俺が盗賊。あと魔法使いはサクヤとユイン、戦士は…エレックでOKじゃねぇ?」
とその場にいるメンバーを一瞥する。
「私は精霊使いですッ!」
ユインが頬を膨らませる。肌が白い所為か、少し紅潮しただけでもすぐにわかる。しかしヘイストは面倒くさそうに鼻を鳴らす。
「へっ、どっちでもいいじゃねぇか」
「よくありませんっ!第一魔法も種類が幾つもあり……」
ぱっ、と席を立って彼に詰め寄るユイン。それをエレックがとめようとしていると、カラン、とドアの鈴が軽やかになった。
「漸く帰ってきましたか」
今まで黙っていたバニッシュが瞳を細め、手を止める。そして、自然な動きで紅茶を準備した。サクヤが顔を上げ、入ってきた少年とハーフエルフらしき男に一礼する。
「おや? 私がいない間に新しい冒険者が来たようですね」
「サクヤといいます。以後よろしくお願いしますね」
サクヤが一礼する。たおやかな空気がふわりと広がり、それに彼もまた表情を綻ばせる。が、傍らの少年は少しだけ頬を赤くし、直ぐ彼の後ろに隠れた。
「大丈夫ですよ、クッレルボ」
「…あ、ああ……」
そういい、漸く顔を見えた少年は黒髪から愛らしい猫耳を覗かせていた。そして、マントからでていたこれまた可愛い猫の尻尾がふわっ、と揺れる。
「……俺は、クッレルボ。クッレルボ・ノワールという。ソドムに拾われて、暫く一緒に行動していた。……俺も、仲間にしてほしいっ」
少し緊張気味に、でも一生懸命にいうクッレルボ。その様子に瞳を細め、バニッシュは小さく微笑む。
「歓迎しますよ、クッレルボ。貴方は何に自分が向いているのか解らないといいましたね。ならば……これから模索していくといいでしょう」
そういいながら彼はカウンターからでる。そして、何時の間にやら持っていた古い剣を少年に手渡す。
「そのショートソードは?」
不思議そうにエレックが尋ねる。バニッシュは一つ頷きながら身を屈め、小柄な少年と瞳をあわせる。
「これは、私からのプレゼントです。この剣を使いながら考えてみることを進めます。ああ、勿論、みなさんにもプレゼントがあります」
彼は一度にこっ、と笑うと一度奥へと引っ込む。
「……一体、どんなプレゼントでしょう?」
ソドムの一言が全員の心境を語り、暫く待っていると奥から店主が色々なものを持って戻ってきた。どれもこれも古いが、丈夫そうな印象があった。
「ソドム。貴方には……恐らく宗派があっているかと思いますがロザリオを。
 ヘイスト。貴方にはこの指貫グローブを。サイズは恐らく合うはずですよ」
二人はそれぞれ手渡されたものをしっかり受け取る。古いロザリオは本物の銀なのか、鈍い輝きを放ち、指貫グローブはやや草臥れているもののほつれも無く、使いやすそうだった。
「ユインにはこのアミュレットを……懐に入れておいてくださいね。
 エレックには、このロングソードを……クッレルボの剣と兄弟剣です」
アミュレットは翼を模ったもので、美しいトルコ石が嵌められている。そして、古いロングソードはこれまた丁寧に手入れされたものだった。
「最後に。サクヤにはこのブローチを」
そう言って手渡されたブローチは、蝶を模ったものだった。鈍くも美しく光る蝶の細工に眼を見張る。
「……い、いいの?」
ユインの問いに、バニッシュが頷く。
「ええ。ほんの気持ちですこれから先、がんばって欲しいと思いまして」
バニッシュはそういいながらも、僅かに瞳を細める。嘗てそれを使っていた仲間たちは、今頃どうしているだろうか。そして、受け継いだ冒険者たちを見て、どう思うだろうか、と。全員がそれぞれの言葉で礼を述べ、バニッシュはそれに頷いた。

 しばらくの間、一同は貰っていたものを眺めたりしていたが…ふと、エレックが呟く。
「……ところで、パーティはこの6人で組むのか?」
「それが一番いいでしょうね。私たちは初心者ですが、チームを組めばうまく行くでしょう。職のバランスもいいですし」
ソドムの言葉に、クッレルボとユインが目を輝かせる。
「それがいいぜ。俺は賛成!」
「私もですわ。ヘイストが少し気になりますけれど」
ヘイストは苦笑しながらも頷き、一気に葡萄酒をあおる。
「盗賊がいなきゃ罠は壊せない。まぁ、付き合ってやるよ」
「皆で鍛えていけば、生き残れるさ」
「冒険、楽しみになってきた!このメンバーでならうまく行く気がする!」
エレックとサクヤも頷きあい、全員がにっこりと笑って決断した。
「このメンバーでパーティを組みます。親父さん、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく!
 そして…リーダーとパーティの名前も決めないといけませんね」
その言葉に、全員が、なぜかソドムを見つめる。
そして、ハーフエルフの青年はきょとん、として全員の顔を見返した。

(終)

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(後書きはしばらくお待ちください)
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-29 22:07 | 札世界図書館