ある野良魔導士の書斎

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月を見ながら食事はオツなものだが(パール思う、非常食じゃなかったら最高)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:32
銀斧と古城の弔い人

「ふぅ……」
アンバーたち【六珠】は、ある古い城で夜を明かしていた。依頼の帰り道、リューンまであと一息という所で雨が降ってきたためである。今は雨も止み、雲の切れ間からは美しい月が顔を覗かせている。【六珠】の一同はそれぞれ暖めた酒やらお茶を飲みながら非常食を食べていた。そして、1人の老人もまた、席を共にしている。
「今宵の月は、少しばかり磨かれたように見えるな」
「グロアさん、それは雨で空気が洗われたからでしょう」
黒いローブのフードから月を見、グロアと呼ばれた老人は瞳を細め、オニキスがレーズンを進める。それを口にしながら、彼は言葉を続けた。
「しかし物好きだな、お前達も。共に食事をしよう、と誘うなど」
「折角会ったんだよ。他にも色々話したいよ」
サードニクスが笑顔で答え、それには彼も小さく微笑む。何故か、このメンバーには釣られてしまいそうな気がし、事実こうして食事をしている。たまには、いいかもしれないなぁ、と思っていた。
「それにしても、この城……よく見れば見るほどいいディテールをしているわ。戦争でこんな状態になったのが悔しいわね」
今も栄えていればさぞ美しかっただろう、とジャスパーはため息をつく。が、隣のパールにはわからないらしく少々首をかしげる。
「俺に城の良し悪しはわかんねぇよ。それより……俺は外の月のほうがいいな」
「あら、意外ですね。パールのことだからお酒とご飯にしか興味がないかと」
そんなことを言ったのはクインベリル。彼女はトランペットの手入れをしながらも内心、グロアに興味を持っていた。
(一体、どんな戦争を見てきたのかしら。そして…1人で遺体を弔い続ける…。気になります)
本当は物凄く聞きたいが、恐らく彼は語りたがらないだろう。だからクインベリルは我慢し、トランペットの手入れを続ける。
「なんか、オロフさんと一緒に食事をしたときを思い出すな。
 事件解決後にこんなふうにしたけどさ、すっごく穏かな気持ちになれた」
アンバーはふと思い出し、少し酒を口にした。
「オロフ…?」
不意に出た名に、グロアは首をかしげる。
「うん、実はねぇ、ドワーフのオロフさんと一緒に戦ってきたんだよ」
少し興奮した様子でサードニクスが答える。少年にとって、記憶に色濃く残っているらしい。
「低俗な領主が、愚かなことに匠たるドワーフへ対し課税を言ったことが発端です。全く、冗談にも程がある、というものです」
オニキスがやや感情的になりながら付け加える。彼の弟が治める領地ではドワーフを『匠たる一族』、エルフを『知恵深き一族』と呼んで敬っているが故だ。
「アンバーが受けるって言ってくれて正解よ。私としては……お陰で思い違いをしている輩を捕まえることができてよかったんだから」
ジャスパーは少しだけ安堵したような、それでいてすがすがしそうな顔で答え……内心でお世話になった異端審問官に礼を述べる。
「実はオロフさんというドワーフがいる妖精窟がチーニの領主によって侵攻されたのが事の発端で、俺たちはオロフさんと一緒に横暴を働く領主をとっつかまえに行ったんだ」
「その領主というのがダークエルフとつるんでいましてね。正しく言えば、そそのかされて歪んだ異端の信念を吹き込まれていて、ドワーフが悲しいことにその犠牲になっていたのです」
パールとクインベリルがそう解説し、グロアはふむ、と一つ頷き瞳を細めた。
「お前達も、中々大胆なことをしているのだな」
「まぁ、異端審問官が知恵を授けてくれなかったら俺たちもヤバいことになっていたさ」
アンバーはそう苦笑し、一同もそれぞれ肩をすくめるやら、小さく舌を出すやらで反応する。その和気藹々とした雰囲気にグロアもまた小さく笑う。
「で、裁判とか終わったあとにオロフさんと一緒に飯を食ったんだ。そのときもこんなかんじでほのぼのしていた」
(……仄々と言っていいのか?)
アンバーの言葉にパールが若干首をかしげるも、他のメンバーは気にしていないようだ。その言葉に、グロアはそうか…と小さく呟いた。
「それでは、そろそろ失礼するよ。また、何かあったときは冒険の話を聞かせて欲しい」
そういい、グロアは1人席を立ち、闇へ消えていった。その背中を見送りながらオニキスはぽつり、呟く。
「……宗教戦争……ですか」
「まぁ、聖北も案外ドロドロよ。バルドゥアのよーな鬼畜もいるし?」
ジャスパーがそういいながらも十字架を握り締める。
「聖北以外を根絶やし……か。うん、なんかえげつなーって思うけど、良く考えればそんなことを別のとこもやっている、と考えると…頭が痛いな」
パールが珍しく真面目な目でそういい……サードニクスは小さくため息をついた。
「根絶やしにして、当然の権利として金目のものを奪っていく。……ま、最初からそのつもりだから遺体はほっぽらかし…ってこと?」
「そうだ。で、グロアさんは1人で埋葬を続ける……」
アンバーは頷き、言葉を続け……虚空に目を向ける。今宵も、彼は一人ちらばった遺体を弔い続けるのだろうか。明日も、明後日も。
「……なぁ、皆きいてくれ。
 明日発つ前に……グロアさんを手伝わないか?」
その言葉に、一同少しだけ目を丸くする。急な言い出しに全員が少しだけ目をぱちくりさせ……やがてそれは、小さな頷きへと変化した。どうやら、考えていたことは同じだったようだ。
「まぁ、宗教戦争ってーのは一つの予想でしかない。けど……やっぱ遺体がそのままなのはちょいとな」
「偽善と言われそうだけどね。第一に私たちには何の得もないわけよ。……それでもそんな提案をする貴方が、嫌いじゃないわ」
小さく微笑みながら、ジャスパーは言う。そして、彼女はその場に跪き祈りを捧げた。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
銀斧のジハード(Mart)
古城の老兵(SIG)

このリプレイ(もどき)は、上記二つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

こんな終わりだが……いいよな。若干しんみりしたか。

と、いう事でどーも、暑がりやなフーレイです。
今回は銀斧ッ!ある意味ハードボイルドテイストな『銀斧のジハード』ですよ!それに『古城の老兵』を組み合わせてみました。……魅力、出せなかったかもしんないけどね(遠い目)。まぁ、自己満足ッ!(をい)

 えー、Y2つさんとこのリプレイとはなんら関係がないことを強調しておきます(汗)。むしろ今後のリプレイでも友達になった、というノリでいろんな宿の連中が手土産もって遊びにいくとこにしようと考えていますけど……どうだろう?

リプレイでリンクする場合はちゃんと相談します。

因みに。
『銀斧のジハード』のリプレイは【札世界図書館】にて公開します。ラストのバトルの描写が納得いかないので修正検討中。そして『銀斧後日談SS』も考え中です。……『惨劇の記憶』リプレイは……プレイしてから時間がたつので『惨劇の記憶後日談SS』に切り替えます(滝涙)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-19 23:18 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)