ある野良魔導士の書斎

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『むげファン参加者に30のお題』 23:そして空は澄み渡る


対ブックドミネーター戦が発表された日のこと。
1人のヒトノソリンが、一つの作戦旅団へと入団届けを提出する。
「……赦せないから……叩くなぁ~ん」
そこは第四作戦旅団。ブックドミネーターと直接戦う部隊である。彼女には、一つの考察からくる思いがあった。
(今度のロードの能力からして、恐らく元は紋章術士か邪竜導士。俺は邪竜導士の端くれとして、奴を倒しておきたいなぁ~ん)
邪竜導士は『世界の摂理』を『破壊』することで力を操る為、そこから『竜』に喩えられ名の由来となっている。その強大さ故に、人々の中には彼らのアビリティを『呪われた力』として忌み嫌うものも少なくはない。事実、ギーエルもそんなふうに言われたことがあった。
(こいつの事を考えると、人々が恐ろしいと考えるのもしかたないなぁ~ん。だからこそ…)

-負けるわけには行かない。

して空は澄み渡る』

 …戦争までの数日間、第四作戦旅団の団員たちは連日会議に追われていた。ギーエルもまた然りで、ここ2、3日はそこからくる頭の疲れで泥のように眠っている。それでもチョコレートを齧って会議に参加していた。
(他のところも、大詰めなぁ~んね)
第一・第二作戦旅団の会議状況はそれぞれに入っているニルギンやディートなどから話を聞いている。第三作戦旅団には顔見知りがいないのであまり情報を知らないが、向こうも色々大変らしい。
(とくに第三は、時代を変える可能性があるなぁ~ん)
フリージング・タイム・ゲート・・・そこを通らないとドラゴンウォリアーたちは宿敵の場所へ行くことができない。また、その門は複雑で、下手すれば時限を彷徨う可能性もある。しかし、『希望のグリモア』に誓いを立てた冒険者達はあきらめるはずがなかった。
「当日は、最後まで待つしかないのかもな」
ある冒険者がぽつりと呟く。それに、別の冒険者も静かに頷いた。
「途中の作戦に出て重傷になったら、ドミーの首がとれないからな」
「ある意味『耐え忍ぶ戦い』なのかもしれないなぁ~んね」
ギーエルも思わず呟き、彼らは苦笑した。恐らく、第一作戦から第三作戦の間に同盟側にも死者が出るだろう。もしかしたら、酷い戦況になるかもしれない。そうなったとしても、第四作戦までおとなしくしなくてはならないのだろうか?そんな不安があったが、彼らの役目はドラゴンロードを討つ事。もしかしたら……不安は的中するかもしれない。
「重傷となったら下がる。それが鉄則。なのに守らないで死ぬやからもいる。みていられないよ」
1人の医術士が被りをふってそういうも、彼らは顔を見合わせた。
「当日のことは、当日じゃないとわからない。…いまは、出来る事を考えて動こう」
その言葉に、ギーエルも頷いた。

 当日。戦場は相変わらず異様な熱気に包まれた。そして、その中を舞うドラゴンウォリアーたちの姿を第四作戦旅団の団員達は離れた場所で見ていた。
-戦力を温存させておくこと。
多くのメンバーが静かに待っている中、ギーエルは料理しながら戦場を見た。この中には仲のいい友達もいる。
(皆、無事で……)
顔を上げたとき、第三作戦・第三ターンの結果が届いた。その内容に、中には複雑な顔をするものもいる。なぜならば、彼らの決断は『歴史改変』だったからだ。
(やっぱり、そうなったかなぁ~ん)
ギーエルは1人冷静に料理を皿に盛ると、それにかやを被せて歩き出した。【はんなり】のメンバーが、リーダーである青年のもとに集まっている。
「それじゃあ、出撃だなぁ~ん」
彼女の声にチームのメンバー全員が微笑んだ。

 漆黒の髪は鮮やかな紅へ
  血の赤をした左目は、透き通る空の青へ
   纏ったメイド服は露出が増え、白い頬に紅の蝶が浮かぶ
    そして、肘まである手袋に覆われた両手で、モップを握り締める

 作戦は1ターン。そして、それぞれの全力をブックドミネーターにぶつける。弱点と思わしきところに……。
「よぉし」
ギーエルはもう一度モップを握り締めた。狙うは脊椎。
息を吸って、雑念を払って。
ただ、目の前にいるロードの破滅だけを狙って。
全身から、赤黒いオーラが漂いそうな雰囲気がした。頬に浮かんだ蝶の文様が熱い。魂の奥底から火照り、首には汗が浮かぶ。脊椎をなんとも言い難い痺れが走り、思わず口から甘いと息が漏れる。それでも唇をかみ締め、精神を研ぎ澄ます。
「これで」
更に、ぎゅっとモップを握り締める。倒すのは、ブックドミネーター。
仲間の笑顔を奪い、卑劣な罠を仕掛けたロード。
だからこそ、討ち取りたい。
「決めるなぁああああんっ!!」
握ったモップを振るう。同時に放たれるデモニックフレイム。血が滲むほどモップを握り締め、脊椎へと叩きつけ、吼えるッ!

「あああああああああっ!!」

脳裏が白濁する。刹那の爆音。
空気がゆれ、音が消えた後も身体には震えが続く。
「………」
恍惚ともいえる吐息を漏らし、ギーエルが空を仰ぐ。何故だろう、妙に心地よい。意識がゆっくりと戻っていくにつれ、その空がまぶしく思えた。
いつまでも、抱きしめられていないほど、澄み切った白い空。
あの人がこぼす笑顔のような、そんな、空。
「………」
彼女が我に返ったとき、ブックドミネーターは……。

(終)

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おまたせしました。ギーエルの話です。
タイトル、ブックドミネーター撃破時にいいなぁ、とおもえたです。
そして、微妙になんか……まぁ、某票が入りそうだ。
まぁ、あの人については感情欄参照ってことで。
そして、ディートでも書きますけれど……短い上に、暗いです。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-07-11 17:41 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)