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ある野良魔導士の書斎

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くぁー・・・ぐだぐだん(汗:オニキス、パン屋へ)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:27
パン屋とギャンブルと夕日の鉄撃

 アレトゥーザから戻ってきたオニキスは一人パン屋へとやってきた。ここはアネッタとカールの若夫婦が営むパン屋である。店に入ると、美味しそうなパンの匂いが鼻をくすぐる。そして、オニキスの姿を見た利発そうな女性が、嬉しそうに駆け寄る。
「ああ、いらっしゃいませ、オニキスさん」
「お久しぶりです、アネッタさん。今日は遊びに来ましたよ」
オニキスがにっこり微笑むと奥から優しそうな若い男性が現れる。アネッタの夫、カールは焼きたてのパンをバスケットいっぱいに入れて、優しい笑顔をこぼす。
「ようこそ、オニキスさん。妻から話は聞いていますよ。この間、お世話になったそうで」
「いえ、気にしないで。困ったときはお互い様ですから」
と、柄にも無くオニキスが照れているとアネッタが紅茶を用意してくれた。オニキスは若夫婦から椅子を勧められ、それに腰掛ける。あたりを見渡すと焼きたてのパンが色々並んでいる。どれもこれもおいしそうで、お腹がなりそうだ。
(そうですねぇ、皆にお土産としてなにか買っていきましょうか)
そう考えつつ、ふと窓側の棚を見る。……と、見慣れた狐耳の男と小柄な少年が町を歩いている。【珠華】のリーダーであるアメジストと【六珠】のチームメンバー、サードニクスである。二人は丁度このパン屋へ入ってくるサードニクスは入るなり、オニキスを見つける。
「こんにちは。あ、オニキスさん!」
「サードニクスとアメジストですか。二人とも買い物ですか?」
「まーな。俺はこいつの調節」
そういい、アメジストは黒いダイスを見せる。若夫婦もまた不思議そうにそのダイスを見た。冒険者は色々いるが、これも武器になるのだろうか、というような目である。
「そういえば、そのダイスって……」
サードニクスが眼鏡を正してなにかいおうとしたが、それよりも先にカールが口を開く。
「ああ、気づかなくてすみません。お二人もパンを食べていってください」
「えっ?いいの?」
サードニクスはぱっ、と顔を輝かせ、アメジストもやった、と口元をほころばせた。

 三人はカールお手製のパンを食べ、紅茶を飲みつつ話を続ける。アネッタとカールもまたその話に聞き入る。
「それじゃあ、そのダイスは戦闘に被害をもたらすこともあるのですか?」
アメジストの説明に、アネッタが目を丸くする。それがおかしいのか、彼はちょっとくすくす笑うがサードニクスとオニキスは苦笑する。
「そうだね。でも、イカサマさえ上手にやればいいんだよ。俺はまだまだだけどねぇ」
アメジストはくすくす笑いながら掌でダイスを転がす。その様子に若夫婦はきょとんとしているが、サードニクスは肩をすくめる。
「アネッタさんたちは心配しなくていいよ。戦闘でしか使わないようにしているから」
と、ギャンブルアーツの説明をしつつその傍らでオニキスは出されたパンの一つをはもはもと食べ始めた。やさしい蜂蜜の味が口の中に広がる。
「うん、もちもちして美味しいですねぇ」
「それは蜂蜜パンです。記事に蜂蜜を練りこんでみました。優しい味に仕上がっているかと…」
カールはそう言って蜂蜜パンを切り、アメジストとサードニクスにも渡す。
「あ、甘くて美味しい♪」
「確かに美味いな。甘いものが苦手な俺でも食べられる」
美味しいパンに舌鼓を打てて、すぐさま幸せそうになる二人。そんな様子にオニキスとアネッタは顔を見合わせて笑いあう。
「こっちのパンもおいしそう!カールさん、これはなぁに?」
サードニクスが手を伸ばしたのは、一見普通のパンである。
「それはミルクパンですよ。朝一番に取れた濃い牛乳を使用しているんです。…義父の大好物でした」
その言葉に、オニキスはすこしだけしんみりしてしまったが事情を知らないサードニクスはさっそくミルクパンを口にする。すると口いっぱいにふわりと牛乳の濃い味が広がった。牛乳へのこだわりも見え、少年は思わずぱくぱくと食べてしまう。
「うわぁ、おいしいなぁ~♪僕、これを買って帰ろうっと」
「ん?この香ばしいのはなんだ?」
その傍らでアメジストが目をつけたのは焼きたてのバケット。ちぎってみると周りはしっかりしていたのに中がふわふわ。香ばしい匂いに鼻をひくひくさせながら口へと運ぶ。さくさく感が気に入ったのか、狐の耳がぴくぴくしていた。
「今アメジストさんが食べたのはバケットパンです。外はしっかりしてますが、中はふわふわになっているんですよ」
「そういえば……この間も冒険者さんが買いに来たかしら?丁度あなたぐらいの女の子がこのパンを買っていったのよ」
アネッタがそう言ってすすめたのは甘い香りのコロネ。それに三人も目が釘付けになる。そして、彼女が「あなたぐらい」といいつつ見たのはサードニクス。
「んー・・・誰だろ?子供でも冒険者っていっぱいいるし」
「そうですねぇ。それより、今はこのパンを食べましょう?」
首をかしげる少年だが、オニキスは考察よりも今はパンが食べたいらしい。三人は手にすると一緒に一口。すると、とろりとしたチョコレートクリームが口の中に広がった。甘いものが好きな人にはたまらないだろう。
「それはチョココロネです。クリームをたっぷりと入れてみました」
カールの説明に、オニキスが小さく顔をほころばせる。
「では、私はこれを買って行きますよ」
「俺はバケット。こいつに干し肉とチーズを炙ったものを乗せたら美味そうだぜ」
アメジストも珍しく笑顔を向けた。

 その帰り道。サードニクスはミルクパンを齧りながら前を歩く。
「そうそう、サードニクスは何を買ったのですか?」
「ん? これだよ」
オニキスの言葉に、少年はすっ、と投げナイフを見せる。流石盗賊、動きに無駄が一切無い。雨ジストもまた興味深そうに少年の手を見る。
「夕日の鉄撃で買ってきたんだ。この間の依頼で使い果たしちゃったから……」
本当はもっと丈夫な普通のナイフがほしいけど、といいつつもサードニクスはいつのまにかナイフを隠していた。あまり一般人には見せたくないらしい。
「ふぅん、お前も盗賊らしい顔になったな」
アメジストはそういい、その店をあとで訪ねよう、と考える。
「実はね……欲しい防具を見つけたんだ。でも高くて手が出ないよ」
サードニクスはミルクパンにかじりつきつつ、ため息混じりに呟く。その店で見かけた盗賊用の防具、漆黒マントはとても魅力的に見えたのだ。
「それだったら、ギャンブルでもして金を増やすか」
「堅実に依頼を成功させ、お金を貯めるしかないですね」
アメジストとオニキスに言われ、サードニクスは小さくうん、と頷いた。
(店のおじさんもベテラン向きって言っていたなぁ。…ベテラン、かぁ…)

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
魂の色(ZERO)
ギャンブルアーツ指南所(Hotoha)
夕日の鉄撃(SIG)

このリプレイ(もどき)は、上記三つのカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

諸事情によりの修正もありますが、まぁどうにかなるでしょう。
そして看板パンについて。どれ!とはしていませんが全部だして、みんなで美味しくいただくという話にしました。そして、買い物をしている。……うん。既に『聖夜の死神』(F太)をしていたからね(既にオープンしていたのよん)。

と、とりあえず今回はのんびりと羽を伸ばしてみました。
by jin-109-mineyuki | 2008-06-07 23:27 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】