ある野良魔導士の書斎

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今度はヒイロの話です、勢いで(ヒイロ、養父は伝承の人)


 静かな闇の中で、一人泣く者がいた。
 それは少し痩せた、若い白髪の青年だった。
 ただひたすら、その瞳から涙をこぼし続けていた。

カードワース・プライベートショートショート
『白妙と黒妙の絆』 (前編)

「何故、あの二人を結んでくださらなかったのですか…」
彼はか細い声でそう言った。そして、震えながら天を仰ぐ。
「僕はどうなってもかまわない。そう言った筈なのに」
その緑の瞳には、何も写らない。胸にあいた大きな穴はドンドン広がるようで、このまま千切れて死んでしまうかもしれないほど、苦しかった。

 彼は、捨て子だった。物心付いたときには孤児院におり、白い髪が原因で他の子供達から気味悪がられた。しかし彼自身は欲が無く、涙脆く、心根の優しい子供だった。

 そんな彼は十三になるとある屋敷に仕えることになった。黙々と雑用をこなし、誠心誠意主に尽くすことで主や使用人たちに認められた。それだけで、幸せだった。けれど、年頃になった時。何かが足りなくなった。

彼は、一人の娘に恋をした。

それは主の娘だった。しかし叶う事は無い、とはっきりわかっていた。確かに、身分違いではあった。それ以前の問題で、令嬢には既に恋人が居たからである。彼女の恋人は、とても優しい人で、聡明な騎士だった。彼は、確かに嫉妬もしたが……全てを飲み込んだ。そして、思いを告げた上で令嬢に誓いを立てたのである。

『僕は、貴女と貴女が愛する人を守ります』

それなのに、二人は引き裂かれた。令嬢は政略結婚のため国王のもとに嫁がされ、騎士は策略に嵌められて命を落とした。令嬢もまた病でこの世を去り、何もできなかった彼は絶望した。助けようとあの手この手を駆使したが、彼もまた同様に策に嵌ったのである。屋敷を追われ、何もかもを失った彼は、一人彷徨っていた。

「……どうして……」
いつの間にか、彼はその場に倒れていた。緑の瞳に辛うじて宿っていた炎も消え、曇った世界を見つめていた。行く筋もの涙の跡をそのままに、ただただ彼は嘆くばかりだった。

*   *   *   *   *   *
「……なんだよ、このヘヴィな展開」
「こういう物語なんです」
ここは冒険者の宿『水繰の剣亭』。その一角で一人の少女が愛用のギターでもの悲しいメロディーを奏でながら、白猫の問いに答えていた。吟遊詩人の少女、クインベリルに物言う白猫のパールはけっ、とはき捨てる。
「そーいうのは女の子たちに受けるんだよなぁ~。悲恋系ってやつ?」
どうやら、彼はこういう物語が嫌いらしい。
「違います。別の大陸から伝わった『白妙の旅人』って物語です。これはその冒頭部分にしか過ぎません。この後、主人公は自分がハイエルフと人間のハーフである事を知らされたり、一人の子供を託されたり、旅に出たりするんです」
クインベリルはそういい、少しうっとりした顔でギターを抱きしめる。
「ああ、『白妙の贖い人』……ジウ様……」
「! ジウを知っているのですか?」
急にそんなことを言って来る者がいた。たまたま遊びに来た『静寂の鏡亭』所属の冒険者、ヒイロである。彼はハーフエルフであり、彼が所属する冒険者チーム【ドルチェーズ】では策士的な位置にいる。
「…まぁ、私は仲間からこの話を教えてもらっただけですし」
「お前、このジウって奴をしってんのか?」
パールが何気ない調子でヒイロに問う。と、彼は一つこくり、と頷いた。
「知っているも何も…そのジウは恐らく…私の養父です」
そう言ったヒイロは、どこか悲しそうな目で小さくため息をついた。

(続く)

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後書き
なんとなく思いついた物語を書いてみたフーレイです。

 …後付設定万歳、なノリで見切り発車なヒイロの過去話スタート(今回は微妙にジウの物語だけだけれどもさ:汗)。本来はシオンがやってきた経緯を書こうかなとか思っていたけれど、食器を洗っていたらクインベリルが語ったような物語がふっ、と湧き出たのですよ。あと、微妙にヒイロがシビアな性格になった原因もちょいと絡んでおります。ジウの物語とヒイロの過去が絡むような書き方になると思いますが、まぁ、期待しないでね(汗)。あと、ジウが愛した女性とその恋人の話が微妙に何かに似ている気がしたが、違いますからね(滝汗)。

多分、2、3週間で終わるかと。

あと、イメージは『花帰葬』って曲だったりする。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-27 17:34 | 札世界図書館 | Comments(0)