ある野良魔導士の書斎

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よくある?光景から(パール、こうしてジャスパーと)


『物言う白猫と、神官と』

土ぼこりのなかを、一匹の白猫がとことこ歩いている。
全長はおよそ45~50センチほどだろうか?
一見この世に生を受けて1~2年ほどの若い雄猫に見えた。
「ったく、なんでこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ」
猫は悪態をついた。そして苛立ち紛れに柱を蹴り上げる。しかしほんの少し爪あとを残すだけで、なにも手ごたえは無かった。
「くっそーっ!俺が一体何をしたんだ!!」
彼は吼える。しかし、それに耳を貸すものは誰もいなかった。

彼の名はパール・フレニール。
本当は闇の眷属なのだが、なぜか今は猫の姿をしていた。

 (それにしても、これからどうするかねぇ)
パールは一人とことこと街の中を歩いていた。さんさんと降り注ぐ太陽の光を浴び、白い毛並みを輝かせている。しっぽを優雅にくねらせ、風を切って町を行くのは気分がいい。しかし、猫の姿で人の言葉を話すと、大体の人が驚いて逃げてしまうのだ。
(噂では物言う猛禽類がパーティリーダーをしている冒険者集団があるらしいな。それなのに物言う猫は別なのかい)
ふん、と鼻を鳴らしながらあたりを見渡す。そこでは子供達が楽しそうに遊んでいた。なんだか厄介なことになりそうだ。子供に捕まったら何をされるかわからない。
(つかまらないうちに逃げちまおう)
そう、走ろうとしたのだが……ばさっ、と音がした。子供に目が行って気づかなかったが、どうやら罠が仕掛けられていたらしい。
「捕まえた!」
甲高い、子供の声がした。どうやら、この籠を被せたのはその子供らしい。パールは籠へと爪を立て、どうにか立ち上がる。別の子供がやってきて、籠を触る。
「白い猫つかまえたよー。触ろう!」
「おい、ガキども!!何しやがった!!」
パールが叫ぶ。大体それで人は逃げるのだが、子供達はそれで興味を持ったらしい。
「うっわー、変なの! こいつしゃべるぞー?」
「僕にも見せて~!!」
そういい、籠がはずされる。逃げようとしたがそれよりはやく子供がパールを持ち上げる。
(おいおい、勘弁してくれよ!
 子供相手に引っかいて逃げるのもなんか大人気ないし…)
本物の猫ならしないような心配をし、身動きが取れなくなるパール。しかし子供たちはそんなことを知る由も無く猫を見つめた。
「かわいい~。あ、こいつオスだ!」
「ちょっ?! 何処見てやがる!!」
「本当だ!こいつしゃべる!!」
子供のうち一人はパールを抱えて、もう一人は頭を撫でる。子供達にもみくちゃにされながらも、パールはどうしようか考えていた。
(早く逃げたいけど…タイミングが…)
すると、少年が一本のペンを取り出した。よく調印式とかで使われる羽ペンだ。それを目の前でひらひらされて、パールの目は思わず釘付けになる。
「それでどうする気だ?」
「ん~? こうするんだ」
子供はペン先をなぜかパールに向ける。そして、おもむろにその額へとそれを落とそうとする。つまりは、何かを書こうとしているのだ。
「お、おい! やめろ!!」
そのときだった。
「ぼうやたち、何してるの?」
一人の少女が近づくや否や、子供たちは慌てて逃げていった。ぽい、と捨てられたパールはけっ、といいつつ子供を見送る。少女は小さくため息をつくと、パールをひょい、と抱き上げた。
「きみも大丈夫だった? うん、落書きはされてないね」
「……ありがとな、お嬢さん」
パールは心からお礼を言う。が、すぐにしまった、と思った。猫の姿だと普通は驚くのだ。……まぁ、あの子供達は別だが。しかし、彼女は少し驚いたような顔をしただけ。そして小さく微笑み、パールの頭をそっと撫でた。
「わたしはジャスパー。こう見えても神官なの。
 冒険者になるためにいい宿を探しているんだけれども…」
「ふうん、冒険者ねぇ。お前も物好きだな。
 ああ、俺はパール。本当はこんな姿じゃないが理由があってな」
苦笑していると、ジャスパー、と名乗った少女はそうなのね、と小さく頷く。そして魔法だったらありえるか、と呟いた。
「冒険者って、盗賊退治したり怪物退治したりするやつらだろ?
 まぁ、英雄候補生でもあるけど大半は埋もれるがオチらしいけど」
パールは己が持つ冒険者のイメージを言ってみるが、彼女はそうね、と頷いた。
「一般的にはそう思われてるようね。
 でも、わたしは……修行にはいいと思うのよね」
そこまでいい、彼女はパールを抱えたまま歩き出す。パールは降りようとしたものの、ジャスパーは放さず言葉を続ける。
「あなたも、元に戻りたいんじゃない?
 なら、冒険者になればいいとおもうわ。手っ取り早く」
「手っ取り早く冒険者になれと?……まぁ、冒険者になれば自分で調べることもできるだろうな。土着の魔術が案外解呪に効果的だったりしそうだしなぁ」
なんか、ジャスパーに言われてみると、いいかもしれない、と思えていた。確かに、冒険者は人間だけではなく多種族も見受けられる。中には滅多にお目にかかれないハイエルフとか、髪に葉緑素を持つドリアッドとか、髪が水のようになっているセイレーンとかも見かけるらしい。
「ある冒険者集団のリーダーは物言う鳥らしいわ。
 物言う猫が冒険猫になるのも、おかしくないと思うの。どう?」
パールはその言葉に、それもそうだな、と小さく笑った。

―そして、一匹の冒険猫がその日誕生したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき

…………グダグダ感。

ども、フーレイです。下書きなし一発書きです。なんかネタが沸かず、こうなりました。奴が猫になった理由はぼちぼちリプレイで明かして行く所存ですが、シリアスな展開にはならないようにする予定です。シリアスなのはアンバーとかサードニクスで十分だと思えてきた今日この頃。最後はクインベリルですが、クインベリルの話は少ししんみり?【六珠】以外もメンバーもぼちぼちやる予定ですが、彼女の話の後は【六珠】結成秘話をお送りします。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-24 20:25 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)