ある野良魔導士の書斎

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帰ってきました(スズキ、実はほろ酔い?)


 日も落ち、空は群青ともいえる色へ変わった。スズキとソウキュウは酒場『銀雨の降る庭亭』を出、拠点としている『礎の神話亭』へと戻る。
「で、あの依頼は受けるのか」
「まぁ、ね。マスターにはお世話になっているし」
ソウキュウの問いにそう答え、スズキは頷く。ちなみに現在は彼女はソウキュウの肩にとまっている。夜は魔力を使えば人間と同じように見渡すことも、夜目を効かせることもできるが今は普通の鳥同様鳥目モード。魔力温存のためだ。
「……たまには、元の姿に戻ったらどうだ?
 あの国は滅んだし、フォレストイージスは復興しつつあるし……」
ソウキュウは不意にそんなことを言うも、スズキは首を横に降る。
「それがな。……元の姿に戻ったら、別の意味で拙いんだ」
「なんでさ?恐らくリューンの『賢者の塔』とか優遇してくれるだろうし…」
そこまでいい、ふと、彼は口を噤む。何故、スズキが鳥の姿をしているのか。その理由を彼は忘れたわけではなかった。しかし、内心それが何と無く『過去を引きずっている』ように思えていた。
「まぁ、たまには元に戻らないと人間に戻れなくなる。
 その時はお前の生命力を頼りにしているんだ。頼むよ」
そういいながら、スズキがうとうとし始める。ソウキュウはそっと鳥の頭を撫でながら、小さくため息をついた。

カードワース・プライベートショートショート
『甘い夜・

「スズキ、遅かったですね」
宿に戻るなり、そういう者がいた。整った顔立ちに澄んだ緑がかった灰色の髪と瞳に、純白の翼を背負った青年だ。
「リー、そんな怖い顔するな。ちゃんと依頼を持って帰ってきたから」
リーと呼ばれた青年はその言葉に肩をすくめる。
「そういう問題ではありません」
「まぁまぁリーガルト。落ち着きなって。でねぇと親父みてぇにはげちまうぞ?」
ソウキュウがからかい混じりにいい、青年は鋭い瞳を向ける。
「ソウキュウ、貴方は黙っていなさい。私はスズキに……」
「相変わらず、心配性だね」
そういったのは水色の瞳と髪が白い肌に映える少女だった。手には長槍ほどのロッドを手にしている。額の汗からして、今まで鍛錬していたのだろう。傍らにはエルフの少年・ダートもいた。どうやら一緒だったらしい。
「じゃなくて、スズキがリーガルトのマシュマロを全部食べたからだよ」
「それは別にいいのです。
 リューンのお役所にまた『ペットの鷹が逃げている』って通報が…」
その言葉に、その場にいた全員が苦笑した。スズキは物言う冒険鳥である。が、それを知らない人間は彼女を『礎の神話亭のペット』と勝手に思い込んでいる。それゆえにだ。
「…鳥がリーダーじゃ、不安か?」
おちゃらけた声で、スズキが問いかける。が、リーガルトたちは首を横に振った。
「私は、貴女を信用していますよ。
 シリウス、貴女はどう考えます?」
純白の翼をちょっと震わせ、リーガルトは少女に問う。
「僕、スズキだからこそここにいるんだよ?
 他のリーダーでは味わえない体験もしているし」
シリウスと呼ばれた少女は笑顔で答え、傍らのダートが小さく頷く。
「この中でソウキュウをとめられるのはスズキだけだし」
「な、なんだよその言い方は!」
「そのままの意味ですわ。
 王子のお目付け役なのに役目そっちのけでナンパするあなたですから」
ソウキュウが腹を立てていると、一人の女性が二階から降りてくる。その声に全員が顔を上げる。
「プリムプラム…!」
「最近来た私が言うのもなんですけれどね。
 リーガルトは下界を良く知らなかったわ。
 シリウスは戦闘で冷静な判断をするのが不得意。
 王子…いえ、ダートも世間を良く知らない。
 そして私は纏める自信がない…。
 やはり、このパーティリーダーはスズキでないと……ね」
緑のローブを纏った女性は少しだけ頬を赤くしてそういい、くすっ、と笑う。が、その拍子にフードが外れ、純白のうろこを持つ鰭耳が姿を現した。
「プリムプラム、フード……」
おもわず突っ込むソウキュウ。しかし、彼女は周りには自分達しかいない、と確認すると小さくウインクした。
「とにかく、依頼の話をしよう。
 明日、アーシウムへ向かうぞー。赤と白を買いに行く」
スズキは依頼の話をしつつも、内心ではくすぐったい感覚を覚えていた。

―ありがと、みんな…。

 *    *     *     *     *

フォレストイージスの王は死に、民は王都から避難することになった。
しかし、希望はあった。
まだ、世継ぎとなる姫が生きている。
多くのものが『碧落の森』へと避難し、裏切り者は抹消された。
フォレストイージス自体は滅びずに済んだのである。
だが、犠牲は大きかった。
雪鴉衆の大半は死に、要ともいえる十三頭は二人を残し全員散った。
いや、一人は生死不明だが…。

バリアスは暫くの間は復興に力を注いだ。
しかし、ダイラのことを忘れずにいられなかった。
故に、心を病み……治療のために『碧落の森』へ向かった。
長い間、彼女はそこに暮らす魔導士と、その娘の世話になった。
そんな彼女ではあったが、一つの夢で我に返る。

―任期が明けたら、皆で旅をしよう。

その約束。
思い出したとき、戦争から20年もの月日が経っていた。
バリアスはその体を鳥へと変え、一人の少女と共に旅立った。
それが……

(終)
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ぐだぐだエンディングの後書き

ども、フーレイこと天空っす。今回はスズキの冒険者になった理由でした。
案外ダークとはいえない内容になりましたけれども、どうでしょ?
少しはスズキをわかってくれたかなぁ~。
他にもいろいろありますが、ひとまずは。
『新月の塔』のリプレイでは見られなかったシリアスさが出ればよし。

 それでは今後もよろしく。こんな感じにいろんな『始まり』を描くかも。プライベートショートショートとしてですけれど。一応アンバーとジョドの因縁とか、エルフの王子ダートをはじめとする『碧落の森』出身メンバーの始まりとか、カモミールたち侵略者が異世界の大国『オーベルトューレ』から『リューン』へ向かった経緯とかも書きたいんですけれどネタが……。

クロスオーバーありのリプレイも今後登場する予定です。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-21 19:07 | 札世界図書館 | Comments(0)