ある野良魔導士の書斎

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今思えば【札世界図書館】ですればよかった?(アンバー、とりあえず邂逅?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:25
踊り手達の存在証明(結)

 すべての騒動が終わった、と確信した一同は、市内に踏み出した。暫く歩くと、開けたところへ出る。そこでアデイは一行に優しい笑顔を向けた。
「本当に、ありがとう。……その……『踊り』を、守ってくれて」
「いや、先生……。俺にとっても、『踊り』は俺の証です。だから……」
いつになく顔を真っ赤にしてアンバーが答える。オニキスたちも、フライマンバもなんだがちょっと嬉しい。
「先生も…先生である証を…続けてください。約束ですよ」
「勿論。私は、私のために踊り続けるわ。医者も探してみようと思うし、そのために踊りを教え続ける。だから…アンバー、これからもしごくわよ?」
その言葉に、アンバーは満面の笑みでうなずく。
「その笑顔がいいねぇ、アデイ姐さん!やっぱ姐さんには笑顔が似合うぜ!」
パールがそういい、アンバーに小突かれる。そんな一人と一匹に全員が笑ってしまう。けれど、そんな、心からの笑いが、心地よかった。潮風が、どことなく優しい気もして、気持ちが安らいでいく。
「医者探しは手伝いますし、私も力になれればと思っています」
「もちろん、手伝ってもらうつもりよ。ありがとう、オニキスさん。それと…御礼もしなくちゃね」
オニキスの申し出に、アデイは頷く。そして、彼女はアンバーに微笑む。
「こんなことしかできなくて申し訳ないけれど…
 今の私には、一度しかできない。だから、しっかり見ていてね、アンバー」
「はい……」
アンバーにはそれが何か、わかった。アデイが何をしようとしているのか。
「いくわよ」
アデイはステップを踏み始めた。その舞は、海風をイメージした、柔らかなものだ。優しくも力強く。たしかに痛むのだろう、時折顔をゆがめながら、揺らぎつつも…崩れそうになりながらも。アンバーたちが今までに見たことがないステップを踏み、優雅に身をくねらせて。その舞は、まさしく……降り注ぐ陽光と海を渡る風だった。
「先生……」
いつのまにか、アンバーの瞳から涙が毀れていた。踊り手の生き様を、確かに彼は感じ、胸を打たれていた。
「綺麗ですね。こんな舞は見たことがありません…」
「うん、僕も……」
オニキスとサードニクスが感嘆の息を漏らす。それはただただ見つめ続けるパールと身を振るわせるジャスパー、トランペットを握り締めるクインベリルも同じ事を考えていた。
「すげぇ……」
フライマンバも思わず呟く。踊り終えたアデイはアンバーの手をとり、にっこり笑った。
「【太陽と風】……私がひとりで作り上げた唯一の闘舞術よ。貴方の仕事に役立てると思って…」
「……! でも、いいんですか?」
目を丸くするアンバーに、アデイは頷く。暫くなにか考えていたアンバーではあったが、彼は力強く頷いた。
「よーし、私もその踊りに合う立派な吟遊詩人になります!そしてアデイさんに踊ってもらいますよ!」
「僕も…なんか役に立てたらなぁ…」
クインベリルとサードニクスが決意も新たにいい、パールとオニキス、ジャスパーが頷く。
「あ、そうだ。今日はイル・マーレもありますし…ちょっとしたお祝いもしませんか?」

その日、一行は遺跡でちょっとした食料を持ち寄り、イル・マーレで乾杯した。踊り続ける決意を固め、その一歩である勝利を祝うために。焚き火を囲み、飲んで歌った。クインベリルがギターをかき鳴らすと、アンバーがそれに合わせて舞う。たしかに未熟ではあるが、その舞には彼らしさが滲んでいた。

「ふぅ……」
踊り終えたアンバーは少し輪から外れ、遺跡の瓦礫に腰掛けた。手にはグラスに注いだイル・マーレが光っている。月光を受け、蒼い輝きを見せるワインに、アンバーは瞳を細める。
(まるで……あの洞窟の…)
そんな事を考えていると、人の気配がした。最初はアデイかチームのメンバーだろう、と思っていたのだが……そこにいた人物は、予想もしなかった人物だった。
「……お前は……!?」
「ソノ通リダ。オ前ノ事デ……話ガアル」
彼女はそういい、一歩アンバーに歩み寄る。そして、真面目な声でこう、言った。
「オ前ノ舞ハ、繊細デ風ノヨウダ。シカシ、ソレデイテ生キル希望ヲ人ニ与エル。戦イノトキニ見セタ【連捷の蜂】モ、力強カッタ」
予想もしなかった言葉に、アンバーは思わず頬を赤くする。たしかに敵ではあったが、今は違う。同じ、舞に生きる者だ。
「ほ、褒められるなんてな。……ありがとう、ザハ……さん」
彼女はソレダケダ、と言って頬をかくようなしぐさを見せる。そして一枚にメモをアンバーに投げ渡すとくるり、と背を向けてしまった。
「……これは? それに…折角なんだから一緒に飯でも食おうぜ?」
「ソレハ、我ガ調ベタ……名医ノ住所ダ。アデイニ渡シテクレ。ソシテ……飯ハマタアッタトキニ取ッテオク。今ハ…共ニイル資格ガ無イ」
それだけ言い残し、ザハは闇夜へと消えていった。しばらくの間背中を見送っていたアンバーではあったが、小さな声でありがとう、といい、メモを抱きしめる。
―今度会うときは、共に踊れたらな。
そんなことを思いつつ、彼の瞳は闇を見つめていた。

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
碧海の都アレトゥーザ(Mart)

ども、フーレイです。
えーと、クロスオーバーする際はフォローする所存なので大目に見てください(大汗)。アンバーは踊り手なので…。あと、ナパイアスの出る奴はもうちょい後ですがアンバーのルーツについてあるんでそれもやる所存です。

今のところ、そのシーンで使用する替え歌製作中。
次回はパールの話です。抱腹絶倒は無理ですが、暗くないです。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-17 13:01 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)