ある野良魔導士の書斎

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がんばるのは笑顔のため!(【六珠】、気合を入れなおす)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:24
踊り手達の存在証明(転:後)

アンバーが啖呵を切ったのと同時に、ジャスパーが精霊の盾と魔法の鎧を連続して発動させる。
「お願い、君の力を貸して!」
「ネレイデス、ルサリィ!私たちの援護を!」
クインベリルが動物を、オニキスが精霊を呼び寄せ、パールが勢いよく暴れまわる。底力を見せ付けるように、一同の猛攻が彼らを追い詰める。いつのまにか、ザハとヒギン、ジョド、一人の狂信者の4人になっていた。隙を逃さず、クインベリルが意識を集中する。
「たああっ!」
迸る魔力。空気を切る光がまっすぐ伸びていく。
「クッ…間ニ合ワナイ…」
ザハをすり抜ける魔法の矢。クインベリル、渾身の一撃がヒギンを打つ。そしてパールの薙ぎ倒しが、たしかにザハを捕らえた。
「うっしゃあ、仮面のナイスガイを捉えた!」
「……フフ、潮時ダナ……」
そのザハが、小さく呟く。彼はふらふらと立ち上がり、ため息をつく。
「依頼人ヨ。契約内容ニ不備ガアルヨウダ。ヨッテ、今回ノ依頼ハ無カッタコトニシテモラウゾ」
「えっ?」
その言葉に…アデイも、アンバーたちも、ジョドも目を丸くする。ザハはどこか悲しげな声でそう言った。
「……暗殺ト護衛ハ受ケルガ、ドノヨウナ仕事デモ請ケルトハ言ッテイナイ。同胞トモイエル南方ノ民ヲ襲ウト知ッテノコトナラバ、受ケナカッタ」
そこまでいい、ザハは一度言葉をとめる。視線の先にはアデイの姿があった。彼女は不思議そうに首をかしげるも、ザハは視線を変え、ジョドを睨むように見た。
「残リノ金ハ要ラナイ。依頼主ハ私ニ伝エルベキ真相ヲ述ベテイナイカラ、契約ハ無効ダ。前金分ノ働キハシタ。ソレニ……依頼主ノ言ウ『イカガワシイ踊リ』ヲ踊ル、南方出身ノ女ダ…彼女と一緒デナ。ナラバ私ノ協力ナド迷惑ダロウ?」
彼……いや、彼女はそういうと背筋を伸ばした。そして、アンバーに歩み寄ると手を差し伸べる。
「?」
「アリガトウ、若キ踊リ手ヨ。ソノ怒リガ……ウレシカッタ」
一度だけ、ぎゅっ、と手を握る。そしてその場を立ち去ろうとしてザハは一度振り向いた。その視線は、同胞に対してすまない気持ちでいっぱいだった。
「許セ、同胞ヨ。コノ償イハイズレスル。……サラバダ」
その言葉を残し、ザハは風のように去っていく。歯軋りするジョドとは対照的にアンバーはにっ、と笑う。
「これで鉄壁の構えは崩れたな、ジョゾ!」
「覚悟してもらうぜえええっ!」
パールが叫び、もう一度薙ぎ倒しをかますとジョゾはげはっ、と情けない悲鳴を上げて倒れた。これがきっかけでヒギンと狂信者も倒れ、漸く叩き伏せることができた。しかしどっちともぼろぼろで、アンバーたちもやっと立てる状態だった。
「さて……ジョゾたちはどうしましょうかね?」
オニキスが眼鏡をただしながら問う。アデイはため息混じりに
「少し心許ないけれど治安部隊に引き渡しましょう。それがいいわ」
「賛成よ。……まぁ、保守派からも見捨てられているゴロツキも同然だし、保護はないと見ていいわ」
ジャスパーはジョゾを睨みつけると軽く蹴りをいれ、奴の耳で
「いい?私の師匠は……真実を見て異端か否かを見て、決めただけよ」
と言った。

 一同が内心若干の不安を覚えながら治安部隊の詰め所へ行くと、治安部隊は私闘を咎めるどころか、すんなりとジョゾたちを引き取った。隊長曰くやりすぎだったのだ、との事だ。災いも降りかからんだろう、と言い彼はウインクし一同は思わず笑いあった。
「まぁ、侍祭にもかかわらず教会に見捨てられちまったような奴だ。坊主の一人が好きにしろって上の言葉を届けにきたぐらいだ」
「でしょうね。彼らには目を覚ましてもらわないと。そうそう、暫くのじめじめとした『カゴ』の中ででも」
オニキスの言葉に、隊長は「話がわかるねぇ!」と肩を叩く。それにアデイが苦笑した。
「……にしても。アデイ姐さんとしては、こいつら本当は…」
パールがそう問うものの、彼女は首を横に振る。
「私は証を守れればそれでいいの。別に命を奪うつもりはないわ」
静かに瞳を細める側で、アンバーはぐいぐいとジョドの頬に拳を捻り込ませる。
「くっ……おのれアンバー!知っていますよ、貴方が名家『ティアマッド家』の人間であることを!しかも不義のごぶふぁっ!?」
何か言おうとした所でアンバーの左ストレートが叩き込まれる。
「そこでその名前を出すんじゃねぇよ……。
 どこで知ったか知らんけど二度と口にするんな。反吐が出る」
一瞬、治安部隊の表情が凍りついた。そして、アンバーに視線が集まる。隊長が一歩踏み出し、隊員にジョドたちをしょっ引かせて彼に跪く。
「なっ?!ちょっ、ちょっとまて!」
「貴方さまが、ティアマッド家の方とは……。これはホークアイ様に……」
「いや、黙っていてくれ。俺の話はティアマッド家では禁忌の筈だ。奴らの神経を逆なでしないためにも……頼むよ」
アンバーは小声でそういい、隊長は頷く。その様子をなんとなく釈然としない思いでオニキスたちは見ていたが、問わないことにした。アンバーが言いたければ、言うだろう。そう思ったからだ。

一行は隊長にすべてを任せ、その場を後にした。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
碧海の都アレトゥーザ(Mart)

つっこみ覚悟ですが……あと一週間続きます。

 あと、ここで初登場のティアマッド家はアレトゥーザができてすぐの頃にそこへやってきた貴族で、今では指折りの名家です。そこの娘・マリィとエルフの青年・トパーズが結ばれてアンバーが生まれました。ホークアイは娘の結婚に反対していたのですが、家を留守にしがちだったホークアイの目を盗んで屋敷内の小さな小屋にトパーズ(のちにアンバーも)を住まわせてました(出産時はアンバーが育った村へ行っていましたが)。

 しかし、それはマリィの病死が原因でばれてしまいます。トパーズは屋敷へと駆け込み、彼女の亡骸に泣きついたのです。そしてアンバーも一緒でしたからホークアイは激怒します。別れさせたはずの相手と子供を作っていたのも憎い!顔も見たくない、と彼は二人を屋敷から追い出してしまいました。悲しみにくれたトパーズは故郷である村へとアンバーを連れていきました。

…と、言うわけです。まぁ、ちょっとは出すつもりで。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-10 14:33 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)