ある野良魔導士の書斎

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…これは春ごろの話です(スズキ&シュウ、そぞろ歩き慣行)


「…でさぁ、その時の依頼でソウキュウがばちーんっ!ってやられてさー…」
女性にしてはやや低めの声が、町に響く。その聞きなじんだ声に瞳を細めつつシュウは相槌をうっていた。肩に乗せた猛禽類は楽しげに笑う。
「しかし、いい薬になったんじゃないのか?
 アイツはいつも女性に声をかけているようだから……」
「お前と初めて会ったときなんて『クールビューティーとお近づきになれるなんて冒険者生活の将来は明るいぜ』だもんなぁ!」
「あれには、少し驚かされたよ。まさか俺が女性と間違えられるなんてね」
一人と一羽が楽しげに笑っていると、一人の少女が二人の前を通り過ぎた。黒っぽい肌に痩せた体をした少女だ。
「あれ? ラムーナじゃん。どうしたのさ」
不意にスズキが少女を呼び止める。と、ラムーナと呼ばれた少女は小さく笑った。
「お使いだよ。おやじさんに頼まれて葡萄酒を買いに行くの」
「そうか。ココから近い店は……確か俺たちが向かう予定の店だったよな」
シュウがスズキに問うと、彼女は頷き、バサリと音を立てて羽搏く。少女の前に飛んでいく猛禽類は、どこか楽しそうだった。
「よかったら、一緒に行かないか?」
「うんっ!」
ラムーナが笑顔で頷き、シュウは一つ頷いた。

カードワース・プライベートショートショート
『爽やかな昼下がり・

 暫くして、ラムーナとシュウ、スズキの二人と一羽は店へと到着した。ラムーナが早速葡萄酒3本を買い、シュウは土産用にと少量の菓子を買う。スズキはその様子を見つつ店内を見回った。ここは『小さき希望亭』に程近い雑貨屋で、スズキがラムーナと初めて会ったのもここだった。まぁ、スズキは元々散歩と称してあちこち飛び回っているのでいろんな《冒険者の宿》や冒険者を知っていたりする。
(この間『礎の神話亭』の親父が何の因果かは知らんが『小さき希望亭』の親父に本を借りていた。……今頃ダートかシリウスあたりが返しに向かっているかもなぁ)
そんなことを考えていると二人が買い物を終えていた。
「どうしたの? スズキは何も買わないの?」
ラムーナに問われ、スズキは首を横に振る。
「ちょいと考え事をしていたんだ。俺、生肉食うだろう?
 だから、臭いがきつくならない様にしないとなぁ、と……ね」
鼻が利くコボルトたちなどにばれたら不利だろう?と付け加え、スズキは店の奥へと飛んでいく。器用に飛ぶ猛禽類を見つめ、シュウとラムーナは顔を見合わせた。

 スズキはハッカの根を見つけるとカウンターへ持っていく。そして器用に首から提げた巾着から銅貨を渡すと袋に入れてもらう。早速一本を嘴に咥えると、二人とともに店を出た。

*    *    *   *    *    *    *

 ダイラとバリアスが新聞を読んでいると、一人の青年が駆け寄ってくる。赤い瞳が特徴的で中性的な青年に、バリアスが手を上げて挨拶をする。
「ああ、こんなところにいた!二人とも早く城にもどってくださいっ!」
「……って、伝言魔術でも飛ばせばよかったのに」
バリアスがそういうが、青年は首を横に振る。
「いえ、私も家についた直後に連絡を受けて。だったら近くにいるだろうあなたがたを探すほうがはやいか、とおもったんです」
彼の言葉にバリアスは苦笑したが、ダイラは黒い瞳を細めて微笑んだ。そして、青年の頭を撫でてやる。
「やめてくださいよ。先月22歳になったばかりなんですから!」
「ダメだね。俺にとってお前はずっと『坊ちゃん』なんだからなぁ、キアラ」
キアラと呼ばれた青年は乱暴にダイラの手を跳ね除けると小さくため息をついた。身長はキアラが彼より5~6センチほど高いのだが、幼い頃から彼を知っているダイラは何かと彼を坊ちゃんと呼ぶ。
「…と、兎に角城へ戻りましょう。どうやら、拙いことになってきたようですよ」
キアラはそういい、バリアスとダイラも頷く。三人は駆け足で城へと向かった。

*    *    *    *    *    *    *

「それ、美味しい?」
「うん」
「スズキは猛禽類なのにそういうものがすきだな」
ラムーナ、スズキ、シュウの二人と一羽が楽しげに談笑しつつ歩いていると、目的地が見えていた。ラムーナが世話になっている冒険者の宿『小さき希望亭』だ。彼女はそこを拠点としている冒険者チームの【風を纏う者】の一員である。シュウやスズキはこのチームと同期ともいえる(彼らが冒険を始めたのと同時期に冒険者となっている)。
「俺はここの親父さんに用があるんだ。じゃまするよ」
「うん」
そういい、ラムーナと共に『小さき希望亭』へと入るスズキ。シュウも後を追う。と、親父さんが笑顔で出迎えてくれた。
「おや、ラムーナのほかにシュウとのスズキもか。
 珍しい組み合わせだな。特に物言う猛禽類が……」
「そんな風に言わないで下さい。俺はただの冒険鳥ですから」
いや、言葉を話すという時点でおかしい、とシュウは言いたかったが、取り合えず言わないでおく。
「あと、これを」
巾着からメモを親父さんに渡す。と、親父さんは一つ頷いた。
「ありがとう。しかし……別のチームが受けた依頼の感謝状を届けるとは、お前もお人よしだなぁ」
その言葉に、スズキは僅かに瞳を細めるだけだった。

(終?)

・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
1日遅れでアップした微妙に続くものです。
Y2つさん、勝手にラムーナちゃん出してすみません。
龍使いさん、勝手に二週連続シュウさん出してすんません。
…ラムーナちゃんやシュウさんらしさがでていればいいのだが、若干心配だったりします。最初はシグルトさんを出そうかとも思ったのですが、ラムーナちゃんのほうがなんとなくよくなった(第一に、僕自身がラムーナちゃんを気に入っている)んで、こうなりました。

 ラムーナちゃんはY2つさんのブログにて語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。軽やかに踊る女の子~♪これからの成長が楽しみです。だからお気に入りでして。応援しています~。シュウさんは龍使いさんのブログにて語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。二週連続の出演、ありがとう!

あと、タイトルの色だけれども黄色を使用すると見づらいのでオレンジ。
理由はそれだけ。深くは突っ込まないで(大汗)。

とりあえず、もうちょっと続くかもしれんスズキ’ズ過去。
だらだらとならんようにがんばります…にゃ。
あと色々リプレイやりつつ……。
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by jin-109-mineyuki | 2008-05-07 23:14 | 札世界図書館 | Comments(0)