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ある野良魔導士の書斎

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多分、来月までつづくかも(ダイラって誰?まぁ、気にしないで)


 スズキはなにげなく一人宿でえさをつついていた。スズキは猛禽類の姿をしている冒険鳥だ。最初は『礎の神話亭』の親父も流石に驚いたが、今ではごく当たり前の風景だ。
「……元気、ないね」
エルフの少年が、止まり木のそばにある席に腰掛ける。そして孔雀色の瞳をスズキに向けた。小柄な体をベージュのローブで包んだ、幼い少年はどこか不安げに鳥を見つめる。
「大丈夫? 疲れているんじゃない?」
「ああ、大丈夫だよ。ちょいと夢見が悪かっただけだ」
スズキはそう答え、専用の餌皿から生肉をついばむ。そして、水を飲み干して空を見た。青い空に雲は一つも無く、とても美しい。
「心配するな、ダート。今日は依頼もないし……のんびりしなよ」
「う、うん。そうするよ。でも、スズキ……無理しないでね」
ダートと呼ばれたエルフの少年はそういい、そっとスズキに手を伸ばした。

カードワース・プライベートショートショート
『酸い昼・

 何気なく街を漂い、一羽の鳥は人々を見つめた。こうしていると、気が楽になる。夢見の悪い朝は、何も考えずこうして風の中をたゆたっているのが一番いい。それが、ずっと前からの気晴らし方法だ。だから、時々やっている。
(ああ、あれからもう……)
どこか遠くを見つめつつも、体は風に包まれて自由に泳いでいた。ため息を漏らしつつもそれさえも纏って。
(判っている。多分死んでいる)
脳裏で影がちらつく。そして、最後ともいえる背中を思い出し、胸が痛む。苛々と嘴を鳴らし、スズキの体がさらに高く舞い上がる。
(・・・でも、願うさ・・・生きていてくれって)
なぜか、世界がゆがんだ。なんだか、小さかった人が大きくなっていく。そして、そのなかで見覚えのある姿が、それだけがはっきりと浮かんだ。

*   *   *   *   *  *  *  *  *

 その日は、快晴だった。仕事も速く終わり、師弟でもあり恋人同士でもあるバリアスとダイラはともに城から街へとやってきた。
「……にしても、最近きな臭い噂ばかりだな」
「ああ、そうだねぇ」
ダイラの呟きに、バリアスは頷く。そして側を通りがかった新聞屋から新聞を買うと早速目を通す。そこには【隣国の大臣、フォレストイージスを批難】などの文字が躍っている。
「ちっ、あの爺さんまたかよ」
記事を読んだダイラが舌打ちし、まぁまぁ、とバリアスは窘める。
「今度オルグレオさまと話し合うんでしょう?落ち着かないとまた変なことかかれますよ」
「ぐぅ・・・・・」
そんなことを弟子に言われ、ダイラは苦笑する。が、別の記事に小さく微笑んだ。
「みろ、バリアス。俺たちのことだ」
そこには【未来のおしどり夫婦】というタイトルで記事がかいてあり、二人のイラストが描かれている。そして、初夏には婚礼を挙げることまで書いてあった。
「あっ……」
バリアスは耳まで赤くなり、少しうつむいてしまう。ダイラは反対にかっかっかっ、とおおきな笑い声を上げた。
「ふふ、別に隠していることじゃねぇんだ。それにしても、よく調べたもんだな」
そういいながら口元をほころばせる。そっと恋人の髪を撫でながら彼は僅かに瞳を細めた。
「でも、はじめのうちは考えなかったな。人生初の弟子で病弱だった貴族の一人娘が今じゃ王国の守り人にして、俺の婚約者になっているなんて」

*   *   *   *   *   *   *

(んな訳がない。でも……、だとしたら!)
スズキは風を切って飛んでいく。世界のゆがみは解け、人の顔がはっきりとわかる。そして、己の欲した影が間近に迫った。心臓が早鐘を打ち、少し混乱しながらも、その姿を追って。
「なあっ!」
「……お前は……」
振り返る、影。それにスズキは空中で動きを止め、その場にただよう。見覚えのある影。されど若く、声も僅かに高い。
「シュウ、どこにいくんだ?」
スズキは平静を装って問いかける。相手は『白銀の剣亭』の冒険者であり、同期とも言える青年のシュウだった。彼もまた冒険者パーティのリーダーである。
「少し買い物に行く所だ。スズキは?」
「ただの散歩だ。夢身が悪くてね」
スズキは苦笑し、歩き出すシュウの後を付いていった。

(終?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後書き
シュウさん、出演ありがとう。フーレイです。
今回は幸せだった頃の記憶であります。次回は気が向いたら続きを。
シュウさんとの会話・・・・もうちょっと精進せんと(汗)

 シュウさんは龍使いさんのブログで語られるカードワースリプレイの主演メンバーです。パーティリーダで剣士様。今後もよろしくお願いします。前に掲載したリプレイ(子供連合がメインの『空白の記憶』です)にもカーナ姐さんと共に出演してくれました。

まだつづきます。
by jin-109-mineyuki | 2008-04-29 01:18 | 札世界図書館