ある野良魔導士の書斎

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ちなみに、アンバーとジョドの因縁は別カテで(アンバーだけじゃなく、ジャスパーもぷちっ!?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:22
踊り手達の存在証明(承)

「先生、お久しぶりです!」
「久しぶりね、アンバーさん」
先生と呼ばれた女性は笑顔で答える。
「先生、呼び捨てにしてくださいっていつも言ってるじゃないですか」
アンバーが苦笑している傍らでオニキスが頭を下げる。
「アデイさん、お元気そうで何よりです」
「オニキスさんたちも。今日はやっぱり踊りを……?」
アデイの問いに頷くアンバー。いつになく真剣な表情で彼女の目を見る。仲間にはあまり見せない表情に一同はちょっと笑いそうになる。
「実はリューンで行われる舞踏大会に出るんです。だから…」
「ええ、いいわ。それじゃ付いてきて」
アデイは笑顔で頷き、一同は揃って遺跡へと足を踏み入れた。いつもならアデイと一行だけしかおらず、のんびりと舞の練習が出来る。その空気を乱す先客が、既にいたのだ。
「アデイさん、また会いましたねぇ。それに…アンバーも」
一見僧に見える若い男が、アデイたちに声をかける。親しみではなく明らかな悪意を感じ取り、パールが毛を逆立たせる。男の後ろには何人もの荒事が得意そうな連中が雁首を揃えていた。アデイとアンバーの表情が険しくなり、オニキスたちも身構える。
「ジョドッ……ロネとバドゥーリも一緒って訳ね」
「先生もこいつらから嫌がらせを…?」
アンバーの問いに、アデイはええ、と頷き……鋭い眼光をジョドに向ける。
(こいつが…)
オニキスはふむ、とジョドを見る。確かに小物そうな空気を纏っている。ジョドはにやり、と笑いながらアデイとアンバーを見ていた。
「ご名答。……私のところに『またあなたがいかがわしい踊りをひろめている』と教えてくれた人がいましてね」
「なっ……、てめぇ、よくも」
ジョドの言葉にアンバーが憤る。飛び掛りそうになるのをアデイとサードニクス、ジャスパーが止めた。
「様子を見ようよ、アンバー。らしくない!」
「放せっ、こいつは先生を侮辱したんだぜ?」
「侮辱…ねぇ。まあ、いい。事実のようですし…ね?」
ジョドはアンバーを嘲笑の目で一瞥し、冒険者達にも同じ視線を向ける。そして目のあったジャスパーの顔を見るなり、彼は目を見開いた。
「こいつは驚いた!聖北の『穏健なる異端審問官』のお弟子さんも揃っていたとは。これは好都合だ。貴女の師匠はただでさえ異端ではなかったか、という論争があるぐらいですから」
「こいつ……言わせておけば……」
「じゃ、ジャスパーも落ち着いて…」
ジャスパーもまた怒りを露にし、フライマンバが窘める。アデイは今にも飛び掛りそうなアンバーを抑えつつもジョドに抵抗する姿勢を崩さない。
「あくまでも、私たちから踊りを奪うつもりね。
 でも、私は決めた。貴方達の妨害をうけても踊り続けると……」
そう言って、アンバーをちらりと見る。自分を先生と呼び、慕う青年。彼もまた踊りをアイデンティティーとしている。そう、自分と同じように。
「これは私が私である証。そして、我が部族の一員である証。だから…!」
「俺にとっても俺である証なんだ!先生の宝を…奪わせてたまるかよ!!」
アンバーも叫び、一同がジョドたちに徹底抗戦の構えを見せる。と、ジョドの横にいた男がけっ、と笑った。遺跡に乾いた潮風が吹く。
「ご立派なこと。でも、知ってんだぜ……?お前が踊れないこと、腰を砕かれて子供を産めなくなった事を」
その言葉に、遺跡の空気が音も立てずに凍りつく。
「なっ……!?」
あいた口が塞がらないサードニクス。驚愕する一同。アデイは表情を曇らせ、その様子に笑みを浮かべながら彼は言葉を続ける。
「さあてね。子供が産めない時点で、女である証を失ったも同然だと…思うが?」
「…!」
その言葉に、アンバーたちの怒りに油を注ぐ。様子を伺い、何もいわなかった蒼い髪の男がおかしそうに笑った。
「やめとけよ。どうやら、向こうの客人を怒らせちまったようだぜ?」
「何とでも言えばいい。でも、私は貴方達の言いなりにはならないわ」
アデイは毅然とした態度で言う。が……アンバーにはなんとなく判っていた。彼女の悔しさが。彼女の怒りが。そして……悲しみも。自然と手を握り締め、噛んだ唇には紅が滲む。
「踊りをやめさせたいのなら、この命ごと抹消してみせなさいよ。……保守派にすら相手にされない屑どもめッ」
彼女の言葉に、アンバーが一歩前に出る。そして手に握っていたグレイブをびゅん、とジョドに突きつけた。
「!……アンバー、あの時の仕返しが残ってますよ?」
「…返り討ちにしてやるぜ。
 それに…大の男が三人がかりで若い女性を襲うなんざ…見てられねぇよ」
それが、全員の意思。全員が、怒りに燃えている。ジョドは愚かな、と歯軋りし……更なる憎悪を一行に向ける。
「貴方たちも同罪です。捕らえれば……私の信仰をお認め下さったことでしょうねぇ!」
「貴方のようなものをお認め下さるはずが無いわ、外道坊主が」
ジャスパーのはき捨てるような言葉に、彼は指を鳴らす。と、どこからとも無く幾人ものならず者や狂信者らしき存在が現れる。
「ふふ、甘く見ないことですよ。ロネ、バドゥーリ、ヒギン、ザハ……この者たちに神の正義の何たるかを叩き込んでやりなさい!」
その言葉に、男達がにやっ、と笑って身構える。しかし、アンバーも負けてはいない。
「みんな、アデイ先生を守るぞ。神とかそんなん興味がねぇ!俺たちは…ただ、先生の存在証明を守るだけだッ!」
「「おおっ!」」
オニキスたちが叫び、臨戦態勢をとった。この戦いは負けられない。そんな思いがアンバーにはあった。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
碧海の都アレトゥーザ(Mart)

えーと…引き続き『私は踊り続ける』のリプレイです。うわぉ、イベントの臨場感が全く感じられないぜオウイェア~(滝涙)。実はゲームをやりつつ原型を書き(そのため一部はシナリオのセリフがそのままっぽい)、膨らましております。……Y2つさん、アドバイスありがとうございます。微妙にジョドたちに違和感があったらごめんなさい。ゲームでのイメージのままやったもので(汗)。

そして・・・・・の下の文章を書き終えたときには既にリプレイが完成しているという事実。

因みに、今後のリプレイにもアデイ姉さんは登場します。重要なお方ですからねー。
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-26 15:53 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)