ある野良魔導士の書斎

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こんどこそこれで……(子供連合、がんばりましたよ!)


「だ、誰だッ!?」
クレイモアが叫ぶと、彼女はふっ、と笑う。
「人が外でこの子たちのお食事を調達している時に勝手に忍び込むなんて…。
 その上名乗らずに『誰だ』ですって?
 なんと礼儀知らずな子供たちなの?」
彼女はそういいながら一人一人子供たちの顔を見る。そしてまぁ、いいけど、とくすくす笑いながら言葉を続けた。

『山間の村』(作:机庭球)より ※敬称略
『真実を掴む手は幼くも』 後編 (著:天空 仁)

「私の可愛いあの子たちが殺されたとは知っていたけど、あの人ったら冒険者なんて雇ってたなんてねぇ。しかもこんなちっこい子供達だなんて」
「あの子たち…?じゃあ、あのゴブリンたちも…」
エイデンが問いかけると女性はふふ、と小さく微笑む。
「そうよ。私が覚えた渾身の魔術でね。天才的な私は脆弱な人間を強力な魔物へと変える術を見つけて習得した。その結果だったのよ、あの橙色のゴブリンは。なかなか強いでしょ?」
そういいつつ、彼女はうっとりとした表情でリザードマンの入った檻に手を伸ばす。
「一般種より強く、能力次第では上級魔族にだってなる。
 ……そう、この子たちみたいに」
とは言ってもリザードマンぐらいなら駆け出し冒険者でも出来ると嘯きつつ子供たちを見る。
「そうか…そういう事なんだ」
パルチザンが一つ呟く。そしてフランベルジェと頷きあい、盲目の少年が言葉をつなぐ。
「全てそれで繋がった。僕たちが昨日殺したのは、レイト村のお年寄りなんだ!」
「ええっ!?」
その言葉にパルチザン以外のメンバーは息を詰まらせる。フランベルジェは小さく頷き、一度唇をかんでから言葉をつなぐ。
「彼女は、エリックと手を組んでいたんだ。老人を無駄と思ったエリックは実験材料として彼女にお年寄りを差し出したんだ」
「あら、その通りよ…おぼっちゃん。どう?すごいでしょ?老人からですら並みのゴブリンより強い妖魔が作れるんだから。ゾンビを生む術なんかとは違うよ?」
楽しげに笑う彼女に、子供たちの表情が険しくなる。からからと笑い続ける女性に、冒険者たちはきっ、と顔を上げた。
「お年寄りですら…?」
「そうよ。ちょっとしたリサイクルよ。ま、老人ばかりだったから警告の意味で襲わせたけれど……お陰でもっといいものをよこしてくれた」
彼女はそういいながら一歩ずつ冒険者たちに歩み寄る。そして、そっと…無駄のない動きでフランベルジェの顎を手にした。
「ふふ、一端の冒険者なんて滅多にお目にかかれないわ。どんな姿になるのかしら?早くその素晴らしいお姿をご披露していただきたいわ」
「…っ!!」
フランベルジェは腕を払い、瞬間にクレイモアたちは臨戦態勢をとる。女性もまた、リザードマンの檻を開け放つ。
「さあ、私の可愛いリザードマンちゃんたち!
 この冒険者たちを意識不明にしちゃいなさいっ!
 みんなレガッタ様の下僕にするのよ!」
レガッタと名乗った女性の言葉を聴き、リザードマンたちが動き出す。
「…来るッ!」
クレイモアが叫ぶ。そして、戦闘が始まった。
「…老人をリサイクルしてやった?よくもまぁ、そんな事言えますね…」
身構えるフランベルジェにレガッタは冷たい笑顔で言葉を紡ぐ。
「いえ、老若男女リサイクルできるのよ、私は。
 もちろんおちびちゃんたちもリサイクルしてあげるって言ってるでしょ?」
「ふんっ!人として一番大切なものを失った奴を許しはしないッ!」
手にしたサーベルを突きつけ、フランベルジェが叫ぶ。
「冒険者としては、そういうところが甘いわね」
レガッタはそっと笑い、リザードマンたちをけしかける。
「絶対に……許さないッ!!」
フランベルジェたちは声をそろえてそういい、一斉に戦い始めた。

 リザードマンとの戦いはあっけなく終わった。リザードマンさえ叩けばレガッタは直ぐに倒れたのである。
「ま、予想はついていた。魔術師は基本的に頑丈じゃないからね」
クレイモアが愛用の刀を鞘に収めつつ呟く。フランベルジェはレガッタを縛りあげながら問い詰める。彼女曰く何れ丈夫な人間を手に入れて本当に世界征服を考えていたらしい。
「とりあえず彼女を連行しよう」
パルチザンの言葉に全員が頷き、町へ戻ることにした。

 一行が町に戻ると彼らの耳にとんでもない事を聞いてしまった。
「ああ、あのエリック…捕まったぜ?」
「ええーっ!?」
それを聞いた子供たちは眼を丸くする。なんでも領主の使いがやってきたらしい。一行が町の広場に行くとまさに、エリックが公開尋問を受けていた。
(エディは何を思って告げ口をしたのでしょう?)
エイデンは青年から聞いた事を思い出しつつ首を傾げる。
しかし、フランベルジェはつかつかと彼らに歩み寄るとすっ、と手を握った。
「ちょ、ちょっと君…離れなさいッ!」
使いの言葉を無視し、フランベルジェはくすり、と笑う。
「何皆騙されているんです?この人は兄のエディ。エリックではありません」
瞬間、周囲の空気が凍る。そんなのは関係がない、というように、盲目の少年は笑顔でエリックとされる青年の右手を掲げ、
「剣のグリップを握ったときにできる肉刺が何よりの証拠です。
 こんなにゴツゴツしているでしょう?」
少年の声が、凛と響く。村人たちも、仲間たちもそれに驚いていたがエディは舌打ち一つ力任せに少年の手を振り解く。
「フランベルジェ!」
よろけた少年をテッセンが受け止める。エディはきっ、と冒険者たちを睨みつけながら領主の使いから剣を受け取る。
「やっぱグルだったんだ…こいつら!」
「エリックは魔術も使えるし頭がいい。こんなところで終わるような奴じゃない…。お前ら、この餓鬼どもを始末するぞッ!」
エディの言葉に領主の使いたちも身構える。ジュリアには村人たちを避難させ、一行は応戦の構えを取った。
(エディは所詮足止め…。このままじゃエリックを取り逃がしてしまう…。
 こんなとこで油を売っている暇はないんだっ!)
フランベルジェが内心焦っていると、蹄の音が耳に響く。
「フランベルジェ!!」
ジュリアの声に振り返る。と、気づいたエイデンとパルチザンが走ってきた馬を受け止め、フランベルジェをそれに乗せる。
「ありがとう!…よしっ!」
フランベルジェはそれにのり、エリックを追う。
「頼んだよ、フランベルジェ…」
クレイモアは小声で呟くと、改めてエディたちと向き直る。
「さあ、来いっ!!」

 馬の上から匂いや音を感じ、少年は辺りを探った。眼が見えない分、それ以外には敏感なのだ。魔力が高い分、魔力の匂いだって人の何倍も鋭いセンスで感じ取れる。
(この霧も…)
辺りを漂う白い世界に、辟易する。少年は僅かに呼吸を整え、馬を走らせた。

 激戦を制したのは、冒険者たちだった。彼らに縛られながらエディは祈るように呟く。
「エリック…頼む。逃げてくれ…」
「そうは行かないよ」
小突きながらパルチザンが言う。彼はエリックの胸倉を掴むとぎっ、と瞳をあわせる。
「フランベルジェは、絶対にエリックを捕まえる」
「とりあえず、フランベルジェを追うよ」
「こいつらは木に結んでおけばいいか」
テッセンとエペの言葉にクレイモアとエイデンは頷いた。

(魔力を感じる)
フランベルジェの頬が若干引きつる。少年は意識を集中させると音もなく固まりを掴む。それはエリックの手であった。肉刺のない、つるりとした手。それに少年は口元を引き締める。
「つかまえたっ!」
「しぶといっ!」
魔力が膨れ、少年を弾き飛ばす。瞬間に霧ははれ、エリックは鋭い眼で少年を睨んだ。
「お前1人か。…面白い。精々向こうでいい夢でもみるんだな…」
「あなたごときに…そう易々と倒れませんよ…」
フランベルジェは身構え、攻撃を繰り出した。相手は賢者の杖をもって魔力を高めている。しっかりと獲物のレイピアを握り、盲目の少年はくっ、と歯を食いしばった。
(一気に攻めるッ!)
まだ、それはただの細い鉄塊かもしれない。しかし、少年にとっては既に相棒と化していた。気合を入れ、勢い良く一歩踏み出すとそのか細い切っ先が、エリックの懐へと飛び込み…素早く、力強く”Z”の文字を刻み込む!
「なっ!?……『ラストレター』……だとっ!?」
強烈な一撃に呻き、エリックが膝をつく。少年はレイピアを青年の首元に突きつけると厳かに口を開いた。
「これで、私の勝ちです。さぁ、大人しく縛についてもらいますよ」
「くそっ……!」
エリックが、地面を叩く。その音に混じって幾つ物足音を捕らえ、少年は口元をほころばせる。全員が揃ったところで、フランベルジェは再び口を開いた。
「そして全部ぶちまけてもらいますよ。
 ゼルの生死、レガッタとの関係など…なにもかもね」
エリックはやれやれ、といった表情で何もかもを話す。そして、鋭い瞳でフランベルジェをにらみつけた。
「お前らのせいで何もかもが終わった。…怨んでやる。絶対に許さねぇ…ッ」
瞬間、か細い少年の拳が、エリックの頬を殴り飛ばす。そして他人事のように嘯く。
「どうぞご自由に」
そういいながら、少年は見えない目で、彼を睨みつける。
「けれど、これだけは覚えておいて。悪は絶対に……裁かれるって事をッ!」

 全てが終わり、エリックたちを引き渡すと一行は村をあとにした。その見送りには村長に返り咲いたメリッサとその孫のジュリア、多くの村人たちが出てきてくれた。
「坊主たちでこの樽が運べるか心配だなぁ…」
いつも裏山で見張りをしている青年が、そういいながら樽と6人を見る。が、エイデンはクレイモアとエペをちらりと見てにっこりした。
「大丈夫です。案外力持ちなメンバーがいますから」
「「エイデンッ!」」
クレイモアとエペが声を上げると村人たちとフランベルジェたちが笑い出す。それに頬を赤くそめつつ二人の少女はなんだかなぁ、という表情を浮かべた。
「とにかく力をあわせて運ぶから、大丈夫。冒険者を甘く見ないでよ」
テッセンはえへん、と最近膨らみ始めた胸をそらして言う。
「それにしても、いろいろありがとう。まぁ、まだ問題が残りそうだけど…」
ジュリアはそういい苦笑する。それもそうだ。メリッサだけが生き残ったことに複雑な感情を抱くものが多いに決まっている。しかし彼女は残りの人生をレイト村に捧げるつもりで居る、と強い瞳で語っていた。だから、冒険者たちは誰一人不安を持っていなかった。
「また、何かあったらいつでも『見えざる神の手亭』の子供連合に手紙をくださいね」
「パルチザン、それ、私の台詞ですよ」
パルチザンはにっこりわらってメリッサに言い、その横でフランベルジェが苦笑する。
そんなやり取りを見つつ、ジュリアはそっと瞳を細めた。
「……みんな、気をつけてね。あたし…おばあちゃんと一緒にこの村を護ってみせるから。フランベルジェたちに負けてられないもの」
「そう、ですね。私ももっとがんばりますよ」
フランベルジェはそう微笑み…皆を見た。そろそろ旅立ちの時間だ。
「それじゃ、これで…」
パルチザンの言葉に、一同は頭を下げ、背を向ける。一歩ずつ踏み出していくその未発達だろう背中に、村人たちは感謝の言葉を餞交じりにおくっていく。
「また…ね!今度は平和なレイトに遊びに来てよ!!大人になったら…一緒に葡萄酒を飲もう!!約束だよ、子供連合のみんなっ!!」
ジュリアはそういい、冒険者たちに手を振る。声に振り返ったフランベルジェは小さく微笑み、笑顔で手を振り返した。

 岐路の途中。フランベルジェは何気なくパルチザンの横に並んだ。
「どうだった?…あの村は…」
さりげない彼の問いに、人狼族の親友はくすり、と笑う。
「故郷に似ていました。…ええ、とても。だからこそ…やり直せると、僕は信じています」

(終)

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あとがき
※作者名は敬称略です。
ども、天空です。今回は本来机庭球さんの『空白の時間』および『新人と私』のリプレイと一緒に書く予定でした。が、やはり無理だったって事でこれだけは別にした訳ですが……、本当は前作『This memory is …』を読まないと解らない内容にしたかったのに、別に読まなくてもいい作品になりました。とりあえずネタバレしつつお送りします。

 意図的にシナリオの台詞を使ったところと、アレンジを加えた所があります。子供連合に合わせたかったところがあるんです。折角の『子供のみチーム』ですから。そして、このシナリオでは『Telelteba』(Gaff*Sail)で購入できる『ファイナルレター』を出しました。事実これで戦闘に勝ちまして(笑)。

 あと、『魔剣工房』(Djinn)で買ったばかりのレイピア『デュランダル』を使ったイメージがあり、こうしました。まぁ、これをやった当初も、鉄塊のままなんですがね(落涙)。

とにかく、楽しませていただきました。
今後もマイペースにやっていこうと考えています。
それでは。
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by jin-109-mineyuki | 2008-04-15 16:03 | 札世界図書館 | Comments(0)