ある野良魔導士の書斎

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前日、ミスって記事を書き損ねた(アンバー、舞踏家ですから)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:20
踊りと妖姫と盗賊と

「そこ、足の形を注意して!」
「は、はい!」
なんだかいつもと調子が違う【水繰の剣亭】の一階。机と椅子は下げられ、そこでアンバーと一人の女性が踊っていた。金髪にぺリドット色の瞳が特徴的な女性の舞にはオニキスたちも見とれてしまう。彼女は『見えざる神の手亭』の先輩冒険者であり、踊り子でもあるエトワール。今日はアンバーに踊りの稽古をつけに来ていた。
「相変わらず厳しいですね」
「それだけ、アンバーさんのことも気にかけているんだと思います」
「だと、いいんだけれどもねぇ」
オニキス、サードニクス、ジャスパーは口々にそういうとフロアで踊る二人を見ていた。窓辺ではパールが寝そべっており、奥ではクインベリルがちょこんと椅子に座ってギターをかき鳴らしている。顔が少し紅潮しているのはそれだけ楽しんでいるからだろう。
「それにしても、何でまたアンバーは……踊りの練習をここで?」
「そうよね。普段だったら公園とかで一人でやっているか、アレトゥーザで先生であるアデイさんに見てもらっている筈だし」
オニキスとジャスパーが顔を見合わせて不思議そうにしているとサードニクスが少し悪戯っぽい顔で呟く。
「今度、18歳から23歳までの若手舞踏家が集まる大会があってね。それに向けてみたい」
「なーるほど」
今までだまっていたパールが踊るアンバーたちの横をすり抜けてサードニクスの傍へ駆け寄る。丁度クインベリルの演奏も終わったところだった。
「ふぅ、こっちもギターの練習になるし丁度よかったわ!」
「こちらこそ、情熱的な演奏をありがとうね、クインベリル」
小さな少女の頭を撫でつつ、エトワールが礼を述べる。アンバーは額の汗を拭いつつ
(大会までは時間があるし、1度アデイ先生にも見てもらうかなー)
と考えていた。エトワールの舞とアデイの舞は多少違う。どっちにも興味を持ったアンバーは色々考えつつも『己の舞』を模索中だった。

「そういえば、みんなの調子はどうなの?」
店を元通りにしたあと、親父の好意によってもうけられた昼ごはんでエトワールが口を開いた。
「ラーデックまでパイプを届けにいったんだけど、そのついでにちょいと……ね」
アンバーはばつが悪そうに頭をかく。
「ちょっとした人探しを領主の息子さんとその友達としていたのです」
オニキスもまた若干表情を曇らせる。探していた人間の正体について何と無く予測しているため、なんともいえないらしい。
「アルフレートさんは、教会の裏にある庭園でリアーネさんって子と会っていたんだって。でも、彼女については誰も知らない。しかも、庭園は聖園だから……司教さま以外は入っちゃだめって言われた…。今思えばちょっと怪しいよ」
サードニクスはカウンターに頬杖をつきながら答え、ジャスパーは小さくため息をつく。彼女は久々のラーデックでの出来事に少し頭痛を覚えていた。
「同じ異端審問官でもあいつは外道よ。噂には聞いていたけれどあそこまでとはねぇ。さっさと破門するなり火炙りにするなりしてくれればよかったものを」
いつになくカリカリしていたジャスパーにパールは若干慄くものの、おちつけ、と肉球で肩を叩く。
「まあまあ。あー、そういえばあのリアーネって子。本当に綺麗だったな。あのぼっちゃんが惚れるのも判る(が、好々爺な司教殿の孫娘とはねぇ……。バルドゥアはそこにきっと)」
事件のことを思い出しつつ、彼は出された魚を食べ……少し考える。これでよかったのか、今でもやっぱり悩んでしまうのだ。
(もうちょっと利口に動けばエルンスト様だって奴に殺されないで済んだはずなのに)
そんな事を考えてしまう。一方クインベリルはちいさく鼻を鳴らす。
「魔族と聖北……折り合いが悪くてしょうがないわよ。領主様も、エルンストさまも…物凄く悩んでいた。彼が神官でなかったら悩むことじゃなかったのにね…」
「複雑だね。愛した家族を殺してしまった……なんて…」
「種族なんて関係がない……といいたいよ。でも、たとえ愛し合ったとしても敵対してしまう特性を持つ魔族は少なくない。多分、あの子も『でちゃった』から……」
エトワールの言葉にクインベリルは頷きつつもため息をついた。彼女自身もまた、ヴァンパイアである。それ故に……だ。
「で、アルフレートはリアーネと駆け落ちした。多分奴のことだ。リアーネが人間と魔族のハーフである事を彼女との再会前に感づいたと思う。知った上で彼女と生きることを…選んだんだよ」
アンバーの表情もどこか曇っている。何かを思い出したのか、酷く悲しそうだった。
「その後にベルサレッジで盗賊退治をしてきましたけれどど……その時がものすごく楽でしたね」
あの依頼の後ですから、と付け加えつつ僅かに翼を動かして反応する。サードニクスとパールは顔を見合わせた。
「ただ倒せばいいんだもんね」
「ま、あれであの親父さんにも認めてもらえたみたいだし、今後はもうちょっと難しい依頼を回してくれるかもしれねぇな」
その言葉に苦笑しつつ、メンバーはまったりとした昼下がりをむさぼり始めた。

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
教会の妖姫(齋藤 洋)
要港都市ベルサレッジ(あんもないと)

今回のリプレイに影響を与えたシナリオ
・キミとステップを踏んで…(楓)

エトワールは『見えざる神の手亭』に所属する冒険者で、CWシナリオ『エトワール』(作:楓)に登場するヒロインです。ラストの選択肢であるものをチョイスすると連れ込み可能です。一本道ですけれどなにか物足りないときにどうぞ。むしろ『仇討ち×ラブコメ』という組合せが美味しいので。バルディッシュについてはカテゴリ【札世界図書館】内にある小説を見てもらえば。現在は、彼女に熱を上げている模様。
…一体幾つ年が離れているんだよ、息子と!
※バルディッシュの息子、ラシュはハーフエルフなので外見年齢は30代でも実年齢は70である。
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-29 01:20 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)