ある野良魔導士の書斎

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来週から『山間の村』編です。(人狼の神官と人魚の術士、苦い記憶)


 一方、シュウは自警団の詰め所内を歩いていた。面会を許された彼は辺りを見渡し、表情を険しくする。陰気くさい空気で、通るだけでも落ち込みそうだ。
(過去に俺も数度入ったが……嫌な気分だ)
と、昔のことを振り返っていると……案内をしていた団員が足を止める。ここが面会の場所らしい。ぎぃ、と鈍い音がして扉が開き、シュウは中へと案内された。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (5) 著:天空 仁

「面会時間は15分だ」
と、言って団員は睨むようにシュウを見ていた。既に、フランベルジェと思わしき少年がそこにおり、ちょこんと椅子に腰掛けている。白い髪と白い肌。そして閉ざされた瞳。聞いたとおりの姿だ。
「構わない。 早く終わるからな……それと」
その睨みに、シュウは冷えた目で睨み返す。
「俺たち冒険者をどう思おうとは構わない……だが、誤認逮捕のつけは、確実に払ってもらうからな……」
「そんなものは、しったこっちゃない。俺は下っ端で、現場に出してもらえない見張りだかんな」
乱暴に、団員は言い捨てると肩をすくめた。その言葉に……シュウは無言で胸倉をつかむ。
「下っ端、上司は関係ない…。お前たち自警団が腐ってるから、こんな状況が続くんだ。棚上げする根性があるなら、少しは態度を改めろ」
「……誰が。俺はお前のような小生意気な冒険者が嫌いなんだよっ」
「……やめていただけませんか?シュウ=アズベルトさん?…看守さんも…やめてください」
不意に少年の口が開く。その目は見えていないのだろうが、声で反応し、二人へと顔を向けていた。
「……」
無言で手を離すシュウ。団員もまた、首を回し……今度は普通に二人を見つめる。そしてもう一度面会時間は15分だ、といった。彼は頷き、席に着く。シュウも席に座り、言葉を紡ぐ。
「面会と言う時点で、大体の察しはついているとは思うが……事件に関して、なにか覚えてることとかはあるか?」
「……確か…僕は……親父さんからお使いを言われました。でぇ…薬を買いに行く途中、あの殺された女性をみて…あとを追ったんです」
フランベルジェはぽつぽつと思い出したところまでを語り、小さくため息をつく。己の耳と鼻と手で感じた事を思い出せないことが、少年にとっては苦痛なのだ。それでも、目の前にいる同業者が仲間である、とさっきの口論で判断したフランベルジェは思い出せたところまでを、シュウに説明した。
「……似てるな」
「シュウさんも…似たような事件に遭遇したんですか?」
フランベルジェは僅かに首をかしげる。
「似てるというより……同じと言い換えるほうが確実だろうな」
シュウの声に、少しだけ真剣さが帯びる
「…それじゃあ…貴方も死体と現場に居合わせたというだけで犯人にされ…?」
フランベルジェは口元を押さえ、声を潜めて表情を険しくする。シュウの言葉には偽りがない、と少年は思い……言葉を待った。
「……その通りだ」
刹那、フランベルジェの表情が酷く険しくなった。それが何を意味しているのか、シュウにもわかっている。どこか水面を渡るような風が吹き、少年は顔を上げる。
「……恐らく、思い出すのもそう遅くは無い筈だ」
「……」
その言葉の意味をつかみきれず、フランベルジェは首をかしげる。
「僕が記憶を失ったのは……姿を隠す薬の副作用かと考えています。僕は元々人魚なので、人化の薬を服用しているから…」
「ありえないな…」
「ありえない?」
否定するシュウに、フランベルジェが表情を曇らせる。
「俺のチームには、ハイエルフの魔導師がいる。 知識にかけては、彼女の師匠譲りだ。情報を集め、証言を聞いた限りでは……そんなことはありえない」
「そう、ですか……」
フランベルジェは小さく頷くと…頭を抱える。
(まずい、そろそろ人魚になり始める…)
それでも、少年はシュウの話に頷き……別の原因を考えてみる。
「……記憶は、消えることは無い。 ただ忘れてるだけだ。そして……」
そう言って、シュウは立つ。
「記憶を消す要因は、薬だけじゃない。それは、俺自身も良く知っているからな」
「…心理的要素…でしょうか。
 信じたくないことに出会うと、人はその記憶を無意識におしこめる」
「もしくは人による記憶の操作…だろうな。それと、気にしているようだが……言っておく」
シュウは、静かに……穏やかに言う。フランベルジェは閉ざして目を彼に向け、ただ言葉を待つ。
「例え種族が違おうとも、信ずるに値する者ならば……俺は信用しつづける。それが、絆となるのだから……」
その言葉に、フランベルジェは僅かに顔が綻んだ。そして、小さな声で「ありがとう」と呟いた。それが、シュウがはじめてみたフランベルジェの笑顔だった。

その夜のことである。
案の定、パルチザンの不安は的中した。議員と、その人とつながりのある男が殺された。
(犯人は、もしかしたら…フランベルジェを殺そうとした人かも)
その知らせを受けたとたん、パルチザンの胸が激しく痛んだ。

次の日。
フランベルジェは牢に横たわっていた。人化の薬が切れ、下半身は白い魚の尾鰭となっている。だから下半身は他の拘留者が驚かないよう、ぬれた布で覆われていた。
(なんか、嫌な予感がする)
鰭耳をぴくぴくさせ、フランベルジェは身を起こす。人の気配がし、我に返ると兵士がガラスの音と布の音をたてる。瓶と下着類らしい。
「差し入れだ。人化の薬もあるぞ」
「ありがとう、ございます」
フランベルジェは一生懸命這いずり、それを受け取った。薬を飲み、下着とズボンを身に着ける。
「表に出ろ。取調べを行う」
兵士は若干乱暴に少年を連れ出し、部屋へつれていく。
(間に合うかな)
フランベルジェがそんな事を考えていると、一人の男が彼らを止めた。そして、柔らかい声でそれが自分の治療をしてくれた人だと気づいた。
「その子は、無罪だ。釈放しろ」

フランベルジェは一行に合流し、事件の起こった議院宅へと一緒に向かう。
その途中で殺された女性の恋人と出会い、情報を手にする。
議員宅には色々な情報が詰まっており、一つのパズルに出くわした。
それが、真犯人へとつながる。
パルチザンたちをおいて、一人駆け出して…。

―その人は、僕らにとって憧れだった。
それなのに、今……僕はその人と対峙している。
「正直、同情もしますけど……幻滅しましたよ」

フランベルジェは冷たく言い放つ。
声の先には、信頼していた存在が、たたずんでいた。

「もう、ずいぶん前のことだと思えるけれど、ふと、昨日のことのように思うこともあるんだよ」
パルチザンは肩をすくめる。気がつくと【子供連合】のメンバーが顔をそろえていた。フランベルジェは点字の本を広げつつも、読まずパルチザンと話をしていたのだが、我に返る。
「そうだね……」
「それ、読んでいて面白い?」
パルチザンの言葉に返事をしていると、テッセンが首をだしてきた。曖昧に答えていると他の冒険者たちはもう依頼を受け、出て行った。
(はやく依頼を……選ばないと)
そう思い、フランベルジェは依頼のボードへ向かう。文字ははっきり書かれているので、触れば何が書かれているのかがわかる。
(どれがいいかな……あっ!)
ふいに、一つの依頼が少年の手にふれる。その現場は……彼の記憶が正しければ、話に聞いていたパルチザンの故郷に似ている。
(これにしよう。故郷ににた場所に着たらパルチザンも元気になれるかも)
フランベルジェは、小さく頷いた。

(終わり…いや…つづくか?)

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あとがき
※これは作者である机庭玉さんへ送られたリプレイを加筆・修正したものです。
こんにちは。フーレイです。
実は本当は『空白の時間』→『新人と私』→『山間の村』の順でリプレイをしようとし
たのですが
・長すぎ
・ネタがまとまらない
の理由からまずは『空白』『新人』の二つを書いてみました。
順番どおりではないのだけれども。

うまくいっているか不明(汗)。雰囲気を壊さなきゃ良いけれど。
また、龍使いさんとこの冒険者であるシュウさんとカーナさんにも出ていただきました。
そして、そのシーンはメッセを使用して共同制作です。
だから部分的に龍使いさんとの共著となりますか。

それでは、今回はコレで。続きは『山間の村』リプレイメインで。

フーレイ
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-25 14:14 | 札世界図書館 | Comments(0)