ある野良魔導士の書斎

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大幅に文が増えました(バルディッシュ、何気に登場)

 次の日、手がかりから議員の下へ出向く。グレイシーが議員の話をくれたのだ。しかし、有力な情報は手に入らなかった。その帰り道、一行は近所の駄菓子屋で菓子を買い、宿に戻っていた。
「やっぱり、グレイシーさんは頼りになるよね」
エペは嬉しそうにいいながらお菓子を食べる。うまく聞き出せなかったものの、ヒントだけでもつかめた気がするのだ。クレイモアは無言でふ菓子を口にしながら町を見渡す。
「冒険者を見る目が、若干気になります?」
エイデンの問いに、クレイモアは溜息をつく。
「フランベルジェの一件で、宿への依頼が減ってるんですって。
 町でもあまりいい目で見られない。ふん、気に入らないわ」
「まあまあ、おちついて」
不機嫌になるクレイモアを、テッセンは宥める。彼らの会話を聞きつつ、パルチザンは立ち止まり、フランベルジェとの面会を思い出す。
(彼は、記憶を取り戻しかけている)
きっと、有力な情報……だれが彼を陥れたか……が出てくる。その言葉を固めるためにも、事件をもっとさぐらないと。1人決意を固めていると、風が吹いた。
―嫌な予感がする…。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (3) 著:天空 仁

「パルチザン、おいてくよ!」
テッセンに呼ばれ、彼は歩いていく。しかし、胸の中では…不安がぬぐえなかった。小さくため息をつき、頭を振るうと…ふいに、怒りをあらわにした女性とすれ違う。
「!」
パルチザンが振り返るものの、女性は足早に自警団の詰め所へと歩いていく。そのあとを一人の青年が追っていた。
「やれやれ……。 相当頭にきてるようだな…」
「…貴方は…先ほどの女性の…知り合いですか?」
パルチザンはおもわずそう呼びかける。そしてあわてて自分の名を名乗った。青年も、足を止め先を行っていたテッセンたちも戻ってくる。
「……? ああ、そうだが…。 俺はシュウ。 シュウ=アズベルト。 
 白銀の剣亭に所属する冒険者だ」
簡素だが、きちんとした礼を返す青年。
「シュウさん…ですね。私達は見えざる神の手亭の冒険者で
 『子供連合』というチームを組んでいます。
 ・・・あの事件でしっているかもしれませんが」
パルチザンはシュウと名乗った黒髪の青年に一礼し、若干声を潜めた。その言葉に、青年は頭を振り、少し笑みを浮かべていう。
「少しだが、噂は聞いている。 子供だけというチームでありながら、
 数々の依頼をこなしている冒険者のチームがいるとな…」
「えっ、そうなの? あまり知られていないと思ったんだけど…」
そう言ったのはエペ。彼女はツインテイルを揺らし、目を見開く。
「冒険者同士の情報は、他の宿であろうとも重要な部分だ。時に、一緒に
 依頼を組む場合であれば、その情報を知らなければどこかでミスが出るからな」
「ああ、そうですものね。なるほど…」
一人、エイデンが納得しつつシュウの言葉に頷く。そしてクレイモアも、テッセンも同じように聞いていた。パルチザンは紅い瞳をシュウの瞳に重ね、問いかける。
「ええと…先ほどの女性は…貴方と同じチームの方なのですか?」
「そうだ。 名前はカーナと言い、盗賊だ」
その言葉に、一同は一瞬フランベルジェのことを思い出した。この中に盗賊はいないものの、彼は手先が器用なので開錠などは彼が担当していたのである。
「それにしても…なぜカーナさんがあんなにおこっているのでしょう?
 なにかあったのですか?」
「理由は、君たちが一番良く知っていることだ。 殺人事件のことで、な」
その言葉に、全員が息を呑む。
「あの……例の事件のことで? なぜ?」
クレイモアがいつもの癖でシュウに詰め寄る。桃色の瞳は若干警戒したようだが、エペが止め、その様子に、シュウは苦笑を浮かべて、いう。
「あいつは、その事で自警団に問いただそうとしているんだ。同じ冒険者……しかも子供が現場にいただけで殺したなどとありえないって言ってな」
「わ、私達と同じ考えなんだね!」
エペがぱっ、と表情を輝かせ、こんどはクレイモアが苦笑する。そしてテッセンはディープブルーの瞳を細めて
「それじゃあ、あんたは味方と・・・みていいんだね」
と問うような目を向けた。パルチザンが心配そうに彼女の手を引く。やはり仲間以外の冒険者を若干警戒しているらしい。それもそうだ。この事件で、他の宿の冒険者にも冷たい目を向けられているのだから。
「元より、な。 それに……」
シュウの表情が少しだけ、悲しい笑みに変わる。
「俺も、同じ事件にあった…。 だからこそ、見捨てられない…カーナも、仲間達もな…」
テッセンは瞳を元に戻し、そうか…と小さくつぶやいた。警戒を解き、すまなそうに頭を下げる。しゅん、となった彼女をエイデンがぽん、と肩に手を置いて慰める。
「気にすることはない。 
 同じ冒険者とはいえ、他の宿同士では警戒するのは当たり前のことだろうしな」
「ううん、気にしないで。それに…ちょっとね」
テッセンは僅かに苦笑して答える。が、その表情はどこか僅かにおびえが混じっているようにも思えた。
「と、とにかく…心配してくれてありがとう…シュウさん」
エペがすこしだけ頬を紅く染めて頭を下げ、他のメンバーも頭を下げた。
「ああ。 だが、一つだけ言っておく…」
「無理はするな?それとも……真実を見失うな?」
と、クレイモアが真面目な顔で問いかける。
「例え信じられない人が犯人であろうとも、事実は物語る。 
 如何なる理由があろうとも……そして…」
シュウはそこで言葉を止め……僅かに表情を曇らせる。
「『尊敬し、信頼している人』であろうとも……事実は事実にしかならない」
彼の言葉に、子供達は小さく頷いた。そして、パルチザンの胸の中で……ある『漠然とした不安』が、また大きくなった。それとおなじように…幾筋もの風が6人を取り囲んでいた。
「シュウさんは…フランベルジェのこと、無実だって思ってくれてるんだよね。なんかうれしい…」
クレイモアがようやくにっこりわらう。いくら狂戦士でも、やはりそこは子供なのだろう。
「……風が教える」
「風が……?」
エイデンが、首をかしげる。他の面々も不思議そうな顔でシュウを見ていた。
「本当に殺した者なら……お前達の風は、こんなにも温かくはない」
言いながら、シュウは優しく微笑む。それと同時に……『子供連盟』達の間に、少しだけ暖かな風が通り過ぎた気がした。
(…風…が…)
テッセンの目が見開かれる。時折感情が高ぶって魔力を高ぶらせ、風を起こすことはあるが、あの時のように冷たくはない。彼女はシュウを見つめ…彼自信が持つ何かを、僅かにだが感じ取った。
「貴方は精霊使いなのですか?」
興味に駆られ、パルチザンが問いかける。
その言葉に、シュウは静かに頭を振る。
「生憎だが、俺は刀士。だが、幼い頃からこういう事が出来ている」
シュウの言葉に、テッセンも頷く。
「うん。精霊使いじゃないよ。…でも、力は感じる。よくわからないけれど
 …なんかの加護か呪(まじな)いがあるんじゃない?」
「闇の眷属としての……勘?」
エペの問いにテッセンは小さく頷き、彼女はシュウを見つめた。
「……。 そろそろ、行くとしよう。 君たちも、時間が無いのだろう?」
シュウはそんな様子を見て、静かに微笑みながら踵を返そうとする。その言葉に、一同は、あっ、と声を上げた。
「ありがとう、ございます!」
パルチザンはシュウにもう一度頭を下げ…一行は青葉通りへと駆け出した。
「……良い子達だな。恐らく……長い付き合いになるだろう。頑張れよ、後輩…」
これから先にあるであろう、後輩たちの成長に期待しながらシュウは自警団へと足を運んだ。

(続く)
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フーレイです。
えーと、これは作者である机庭球さんへと送ったリプレイに加筆修正を加えたものです。
そして、シュウさん&カーナさんをださせてくれてありがとう、龍さん。
おかげで増えましたよ、濃度が!(なんのだ:汗)
とりあえず次の週までは『空白の時間』及び『新人と私』のリプレイ、その次の週からは『山間の村』か別のリプレイを……とたくらんでおります。
そいでは!
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-11 18:38 | 札世界図書館 | Comments(0)