ある野良魔導士の書斎

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そして、時々痛い (フランベルジェ、一人部屋の隅でうずくまる)

― 一年前。
冒険者の宿『見えざる神の手亭』
その冒険者である盲目の少年が、殺人を犯した。そんなニュースが宿のメンバーに届いた。
「くそっ、なんでまた俺の息子が……」
黒髪のエルフが苛立ち混じりにカウンターを叩く。最近ここに出入りしている聖騎士のバルディッシュ。犯人とされたフランベルジェの養父である。
「何かの間違いですよ、きっと」
その隣に腰掛けていたパルチザンは力強く言う。この少年にとって、バルディッシュは先生的存在でもあり、友人の養父。どうしても励ましたかった。
「子供連合のメンバーで、面会に行くのか?」
バルディッシュの問いに、パルチザンは頷く。
「俺も会いに行ったが、凄くへこんでた。俺は俺で調べるから、お前たちも…頼むよ」
彼の言葉に、パルチザンは頷いた。

『空白の時間』『新人と私』(作:机庭球)より ※敬称略
『This memory is …』 (2) 著:天空 仁

「ばっかじゃないの!子供が女性を犯す訳ないじゃない!!」
桃色の瞳に、怒りの焔が揺らぐ。貴族の娘でもある少女、クレイモアは明らかに苛立っていた。
「自警団もろくに捜査していないと思われますよ」
溜息混じりにエイデンが呟く。その赤い目が鋭く自警団事務所を射抜き、偶々目が合った見張りがたじろぐ。
「それにしても、普通男とはいえ子供をレイプ事件の犯人にするかな」
素直に疑問を紡ぐテッセンはディープブルーの目を細め、首をかしげる。エペも同感らしく、一つ頷いて茶色の瞳を自警団に向けた。
「普通は、しないよ。死体の傍に座り込んでたってだけでしょ?それで犯人扱いじゃ、たまったもんじゃないよね」
「とにかく、行ってみましょう。何かつかめるかも」
パルチザンの言葉に、全員が頷く。【子供連合】のメンバーは1人で寂しい想いをしているだろうフランベルジェのもとへ向かった。

「本当にマセたガキだぜ」
下卑た笑い声をもらす自警団員に、フランベルジェは明らかな侮蔑の表情を浮かべた。
「ほら、吐いちまえよ。楽になるぜ?」
別の団員がそういうものの、フランベルジェは黙って首を横に振る。
「この……クソガキがっ!」
ばんっ、と机を叩く音。木製の机が大きく揺れ、音が狭い取調室に響く。それでも、少年は黙ったままだった。
「何か言ったらどうなんだ……あぁ?」
詰め寄る団員。僅かに酒臭い息が少年の鼻を掠める。
「……ってない」
「……?」
僅かに、声がした。団員が目を向けると、盲目の少年は小さくもはっきりとした声で
「僕は、やっていない」
そして
「そんなに怪しいと思うならば、処女検査の男性版でもやればいいじゃないですか」
とまで言い放った。
「僕の体には、性行為の跡が無いんでしょう?ならば彼女を犯した、という証拠は無い筈です」
少年はそれだけ言うと、また黙り込んだ。頭に血が上った団員が拳を振るう。白い頬は赤くなり、口元が切れて血が滲む。それでも、それ以上少年は何も言わなかった。
「そこまでにしろ」
指揮官らしき男の声がした。そして、彼はその団員を素早く殴った。
「な、何故……」
「やりすぎだ。それに相手は子供。吐けるものも吐けなくなる」
指揮官はそういうとくらくらして俯いていたフランベルジェに治癒の魔法を施す。
「大丈夫か」
彼の問いかけに、少年はただ
「もう、疲れたよ」
フランベルジェは、思わずそんな事を呟いた。

―何故、僕はあの場所にいたんだろう…。

面会に来たパルチザンたちは、憔悴したフランベルジェの姿に、胸が痛んだ。
『一刻も早く、自由にしたい』
その思いが、捜査へと駆り立てる。仲間の脳裏に浮かんだ夢もヒントに…。
現場に行くと、議員バッチと指輪があった。そこからさらに捜査を進め、殺害現場には地下室がある事が判明した。勿論聞き込みも謎解きのヒントになったし、教えられた議員との会話も…。面会を重ねると、夢もまた深度を増した。フランベルジェは失った記憶を夢で取り戻しているようだった。それは、パルチザンたちにとってもいい推理の種だった。

 その捜査に手を貸してくれたのは、皆が慕う先輩冒険者のグレイシー。『見えざる神の手亭』の看板冒険者の1人だった。ここは当時、バルディッシュとグレイシーの二枚看板で成り立っていたのかもしれない。彼らはグレイシーと2、3話したあと、チームメンバーだけで少し話し合った。
「それにしても、真犯人も慌ててたんでしょうね」
不意に、紅茶のカップを置いて、エイデンが呟く。
「何故そう思うの?」
エペが不思議そうに首をかしげると、エイデンは落ち着いた表情でいつもの様に遠くをみやり、口を開く。
「私の勘ですけれど、たぶん犯人は犯行現場をフランベルジェに見られたんだと思います。だから、彼を犯人に仕立てようと」
「よくあるパターンですね。よく考えてみるとフランベルジェはまだ10歳になったばかりの少年。女性に暴行するとは考えにくい」
パルチザンは一つ頷き、温くなったミルクを少しのんでまた口を開く。
「考えてみてよ。冷静だったならば、フランベルジェを犯人に仕立て上げるような事はしない。むしろ、目撃者だから殺そうとするよ」
「もしかして、殺せなかったんじゃない?冒険者だし、人魚族だし、一般人より丈夫だったから生きてたー、とか?」
今まで黙っていたテッセンがいう。が、クレイモアは首を横にふる。
「あの子は案外病弱よ。わたしは、フランベルジェの知人が犯人で、知人だからこそ手加減してしまった、と考えてるんだけれど」
「両方とも、可能性はあるね。フランベルジェが記憶を取り戻せば、そこの所もはっきりすると思うけれど」
パルチザンが狼の耳をぴくっ、と震わせる。そしてちらり、と時計を見た。もう午前零時。子供は眠る時間である。
「おまえたち、もう寝なさい。明日も捜査するんだろ?」
親父にせかされ、子供連合の一行はそれぞれ部屋に戻った。エイデンとパルチザンがいつものとおり部屋に入ると、同室の冒険者が既に寝息を立てていた。二段ベッドが二つ。そして、パルチザンが寝ているベッドの下には、本来フランベルジェが眠っている。
「私は、貴方を信じます。貴方は無実だと…」
パルチザンはそう祈り、エイデンも頷いた。

(続く)

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フーレイです。
続きは来週に。そして、このSSは机庭球さんへ送ったりプレイを修正して載せております。

実を言うと、最近リプレイを書きたくなるようなシナリオがなかなか…。
そう思っていたら見つけたけれどリプレイにしたら楽しさが半減しちゃうかもしれないんで若干怖い。そして、もうしばらくパルチザン率いる【子供連合】におつきあいくださいませ。

本当は……ある方のシナリオリプレイを公表したい。
けれど本人はあまり乗り気じゃないからなぁ…(しゅん)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-03-04 15:35 | 札世界図書館 | Comments(0)