ある野良魔導士の書斎

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やはり、親父の血なのか?(アンバー、ゼファーと一緒)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:15
風邪と風繰り嶺での出会い

あの夜は用心をとって早めに眠ったパールであったが次の日には声が出なくなり、依頼には彼を除く全員で赴いた。パールの体調が回復したのは、あれから数日後の事。原因は風邪と疲労で、治療のためには約一週間おとなしくしておかなければならなかった。
(色んなこと、考えたよなぁ)
その時の事を振り返り、パールはちょっとだけしっぽを揺らす。アンバーの膝の上でウトウトしながら、目を細め…小さく溜息をついた。傍ではクインベリルもアンバーに背中を預けて眠っている。
「そういえば、露天商の坊主からお見舞いもらったんだってな。芋虫と蛙の串焼き」
「…思い出させないでくれ」
アンバーの言葉にパールが苦笑する。「あの喋る白猫か」と覚えていてくれたことは凄く嬉しいけれど…。
(まぁ、主戦力と自負している俺がいなくても…やってける力量になったんだな、俺たち)
ふと、そんな事を思うと寂しくなる。あの夕焼けが、やけに目に染みた。

 今、【六珠】メンバーがいるのは山にある小さな家。『風繰り嶺』と呼ばれる場所。盗賊を追ってここまでやって来たのだが、あわや取り逃がすところを家の主である老婆に助けられ、しかもこうして止まらせてもらっていた。

パールが囲炉裏の炎を見つめ、小さく溜息をついているとジャスパーが心配そうな顔を見せる。
「どうしたの、パール?」
その言葉に首を横に振ると、乱暴にアンバーが彼の頭を撫でた。まだ病み上がりなんだ。ムリはいけない、と言っているようでもある。
(あのえちぃ本はありがたーく楽しませてもらってるぜ、アンバー)
ああいうのを見ていると『早くもとの姿に戻りてぇ!』と思うのだが…。そう思いつつ目を細め、気持ちよさそうにしていると
「ふむ…隠蔽された『呪』じゃな」
そういったのはローブを纏った老婆だった。彼女が家の主であるポダルゲであった。精霊術師であり、彼女が操る風の精霊術に対しオニキスはとても興味を示している。
「…え?」
それに思わず声を上げたのはオニキスだった。今まで傍で本を読みふけっていたが『呪』という言葉に反応したらしい。
「巧妙に隠された『呪』じゃよ。この猫事態が元々魔族の一人であるが故に、隠しやすい『呪』じゃろう」
ポダルゲはそういいつつ年季の入った手でそっとパールを撫でる。そして小さな声で「災難じゃったな」と呟いた。
「そういうのもあるんだね」
サードニクスが聞き入っているとポダルゲは専門外じゃが知識は齧っておる、と苦笑した。そして、アンバーたちを見……小さく微笑む。
「そうか。これはまた面白そうな子らじゃの」
「それは……どういった意味ですか?」
アンバーが問う。老練の精霊術師はくっくっくっ、と本当に楽しそうな顔で笑い、アンバーを、オニキスを、サードニクスを、ジャスパーを、パールを、クインベリルを見……うんうん、と頷いた。
「そ、それでは解りませんよ…ポダルゲ様」
「そうだよ~」
オニキスとサードニクスが心配そうにそういい、それに彼女は悪かった、と小さく謝った上で再び口を開く。
「いや、天使や魔族が混じっているのは珍しいと思っての。それに見覚えのある者も…おってな」
そういい、アンバーを見つめた。脳裏に過ぎるのは彼と同じ瞳をし同じ場所にほくろを持つエルフの男。なぜだろう、彼を見ていると少しだけ胸が詰まるような感覚に陥る。
「……?」
不思議そうに首をかしげるアンバーに、彼女は言った。
「お前は、父親と同じ道を歩まなかったのだな」
囲炉裏の炎が揺れ、仲間たちの表情をはっきりと照らす。そのどれもが好奇心に満ちていた。ベールを畳んでいたアンバーの目が、ポダルゲの目と重なる。
「はい。俺にはその資質がなかったみたいで……」
「しかし、似ておるの。…トパーズに」
その言葉に、アンバーは小さく苦笑した。
「顔は親父に似ましたけれど…人間よりのハーフエルフだから…魔力もそんなに強くありません」
その顔は、どことなくちょっと悲しそうだった。

 次の日。依頼主の所へ戻る途中、アンバーは口を開いた。
「それにしても、親父を知っているなんてな」
「様子からして、お知り合いのようですね」
オニキスの言葉に、アンバーは頷いた。そしてどこか遠い目で呟く。
「でも、前に少しいた程度だって。親父は何も言わなかったな。まー、精霊術師である事もあまり言いたがらない人だったし」
そういいながら先を行く。その背を追いながらもオニキスは不思議に思った。精霊術師のそばにいると、アンバーの目はどことなく懐かしそうになる。そして少し悲しそうにも見える。
(何が…あったのかしら?)
ジャスパーは首をかしげた。

(次へ続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
風繰り嶺(Mart)
夏風邪は馬鹿がひく(月香るな)

ちょいと、アンバーの過去が。勝手にやってしまったが…どうだろう、これ。とりあえずアンバーの親父、トパーズは精霊使いでしたッ!冒険者じゃありませんが(笑)。シグルトさんと出会っていたらきっと楽しいことになっていただろうに(ぇ
次回はサードニクスの過去です。妙に暗い…。

おまけ
『風繰り嶺』でゼファーの力を借りる精霊術がありますが、アンバーに習得させたら緑玉でした。…舞踏家目指したのは精霊術に向いていないと思ったのもあるのに(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-16 14:43 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)