ある野良魔導士の書斎

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結局、二つに分けようかと(スズキ、暴走パラダイス:笑)


あれから三日後。
一羽の猛禽類が、深い闇から浮かび上がる。
それが目指していたのは、一つの塔であった。
(不恰好だが…致し方ない)
それは、剣を咥えて首に荷物袋を提げて飛んでいた。
普通の鷹では出来ない芸当だが、それだからこそできることであった。
ようは、魔術、である。
(…無事でいてくれ、みんな。バルディッシュの旦那からこの剣を借りるのに、理由を考えるのが大変だったんだからなッ!)
鳥は、そう思いつつ塔を睨んだ。
囚われた仲間はそこにいる。そして、宿敵も。
(まるで御伽噺の勇者様じゃないか)
内心で失笑しつつも、鳥…スズキは闇夜を飛んでいた。

CWシナリオ『新月の塔』(作:机庭球)より ※敬称略
『朔の帳を裂く者達』 前編 (著:天空 仁)

 スズキが塔に到着したとき、彼女の体内時計は既に深夜へ近づいていた。目の前に聳(そび)える塔はどこか懐かしく思いつつも、僅かに息苦しくなる。
「…まぁ、助ければいいんだ、助ければ」
彼女はそういうと器用につめで戸を開け、入り込む。と、途端に大きな音を立てて扉がしまった。
「扉が勝手に……!」
振り返った背後のドアは、簡単に開きそうも無い、と確信した。こうなったのは、相手が己を逃がさないため。己の楽しみを逃がさないためである。重苦しい空気に、威圧的な壁。相手を苛立たせるには良い環境だろう。
(流石変態有閑貴族)
などと思っていると…
-ようこそ、勇者のスズキさん…
ふと、漂う敵の声。
そう、彼女が率いる『スズキ組』を陥れた邪道なる魔術師・ジェネラスの声!
ぶわり、と音を立ててスズキの羽が逆立ち、苛立ちをあらわにする。が、頂上にいるであろう奴に見えるはずが無い。彼を倒せば万事解決するが…。
-スズキさん、早く私に会いたいでしょう?
 私もあなたが全員を救い会いに来るのを今か今かと待ち焦がれているのですよ。
 じれったいね…恋でもしたかのようだ。
「相変わらずふざけているな。
 それに…変態に好かれた覚えは無いし、お前のようなのはお断りだ」
半分呆れ気味にスズキはいうが、くすくすと笑うジェネラスはそれを褒め言葉と取っているようだった。そして、彼曰くこの塔には元々あった仕掛けがあり、それにジェネラスプロデュースな罠まで用意されているらしい。
(余計な事を)
などと思っていると、ジェネラスは軽い感じでこう言った。
-…さぁ、お話はここまで。
 まずは小手調べといきましょうかスズキさん
「うっさいっ!さっさとやりやがれっ!!」
スズキが羽ばたいて悪態を吐くと同時に、よく見ると目の前にあった妖魔の像が動き出した。すぐさま反応し、スズキは『風纏う霊刃』を使用する。そして手際よく爪で握った『カナンの魔剣』で像を造作もなくぶち壊す。
-エクセレント! 流石ですよスズキさん。これなら十二分に楽しめそうだ。
 あなたが無事、私の元に来る事を楽しみに待っておりますよ くくくく……
その陰湿な声色が、空虚な闇に映える。スズキは醒めた目で虚空を睨み
「……ご勝手に」
とはき捨てた。

 さて、とスズキは羽搏く。そばにあったドアに鍵穴は無い。としたらそれを開く仕掛けを探せばいいのだ。案の定、パズルが道の先に鎮座していた。
(おいおい、某魔法の眼鏡くんかよ、わたしゃ)
まぁ、某魔法の眼鏡くんではチェスに勝利しないと先へは進めなかったが…
スズキは説明を読んだ。
それによると要は「ななめ取りが出来ないオセロで白を勝たせる」ということだ。
(さて…)
スズキは少し考え…パネルを嘴や魔剣を使って動かす。
上手く全てが白くなると、どこかでドアが開く。が、いざその前に来るとなにかあるような気がした。しかし、準備など当の昔に出来ているのだ。
躊躇いも無くドアを開く。と……
(……っ!!)
鳥の目に映ったのは鎖で拘束され、酷い暴行を受けた幼いエルフ…ダートの姿だった。白い肌に生える鬱血の跡が、余計に痛々しく見える。治癒を施し、いざ、鎖を外そうとした…その時。目の前に現れたのは機甲の兵士だった。どうも一筋縄ではいかないらしい。襲い掛かる敵に攻撃し、その隙に鎖を打ち砕く。
「いわれなくても、倒すよっ!」
鎖から解き放たれたダートは腰に帯びていた細身の剣を機甲の兵士に叩きつける。
それが鎧を破壊し、その刹那決着がついた。
「物静かな依頼人のふりして…大した野郎だよな」
ダートの言葉にスズキはそうだな、と相槌を打つ。が、少年の白い手に痣があるのが見えた。それに札を貼り付け、念じればいいのだ。スズキはすぐさま少年の手に札を貼り付け、念じた。そして、すっ、と痣は消え、ダートは呪いから解き放たれた。
「消えた…。ということは痣は魔法でできたもの、と考えられるな」
-この札には、強力な……。
その言葉が、スズキにはヒントのように思える。そうだ、あの男…この札は6回使える
と言っていた。眠らなかった自分をのぞき、札は5回使用する事になる。
(そういう、ことなのか…?)
スズキは小さく苦笑した。

 その先には、宝珠があり、杖に宝珠の冷気を与えればいいらしい。一階にあるだろう、と睨んだダートの言葉を受け入れ、スズキは少年と奥へ進む。途中罠を壊し、箱からそれらしき杖を入手する。
(ガキがそのまま大人になったような…)
内心苦笑しつつ、ダートは溜息を吐く。そして、元の場所へ戻り、杖へと宝珠の冷気を移した上で二階へあがった。まっすぐ行ってみると、炎の力をゲットできる宝珠を見つけたがあえて無視し、もう一方の道を行く。……が、先が見えない。
(一か八か)
スズキはある手段に出、それがその道へと仕掛けられたものが何か気づかせる。
解除した瞬間、ダートはぽつりと呟いた。
「ここにも仲間が囚われている。…心して進まないと」
そうだ。奴はこの塔の一階ずつに仲間を監禁し、彼自身は最上階で様子を見つつ『スズキ組』を待っているのだ。道の先、嫌な予感のする扉を見つける。ダートは肩に止まったスズキの目を見ると彼女も頷いていた。準備は出来ている。部屋に入るや否や、ジェネラスが労を労ったが、それ以上に奥から聞こえてきた仲間の叫びが気になった。
「そ、ソウキュウ!?」
スズキの声に、ジェネラスが笑う。
-毒ガスをまきました。もって15分…
しかもソウキュウの体はロープで縛られているという。しかもドアには忌々しいゴーレム。しかし、ここでもダートの持つリュディスの剣が役に立った。これは鍵を外す力があるのだ。レバーを少年に任せ、スズキは嘴でローブを切り、ソウキュウを助ける。それでもリザードマンと戦い、漸く一段楽した。
「って、何のまじない!?」
「黙ってろ。これでお前の呪いが解ける」
手を出してもらい、それに札を押し付ける。ダートの時と同じように痣は綺麗に消えた。
「…ともかく…行くしかないな」
ソウキュウの言葉に、2人は頷いた。

 一旦ソウキュウが囚われていた場所へ戻り、ヒントを探す。と、女神と天使の像があった。とりあえず高く売れそうな天使の像をかっぱら…もとい入手し上へ行くと、魔方陣(あきらかに怪しい)が見えた。
「とりあえず、他のところにもありそうだな」
ふむ、と考えるソウキュウ。転移系魔術のかけられたそれへ踏み出すと、3人は扉のある部屋へと飛ばされる。と、扉が気になったダートはちょっと時間がほしい、とスズキに頼む。そして、あるものがはまりそうな穴を見つけた。
「ビンゴ!」
はめ込んだとたん、ダートは思わずそういい、ソウキュウがわしわしと少年の頭を撫でる。
「ってそれ、ダスキン・モップの口癖じゃないか」
思わずスズキがつっこみつつも、3人はその奥へと向かった。その先でも扉があり、詳しく調べると一部の床が盛り上がっている。
「意味、あるのかなぁ」
「……あるんじゃね?あの(検閲削除)のことだからさ」
ソウキュウの言葉にスズキは頷く。とりあえず調べてみると…どうやらそういうことらしい。しばらくしてそこには女神像が置かれることになった。
「……なんか、ネタバレしているみたいだね」
「いや、そういうコメントは避けておいたほうが無難かと」
スズキの言葉にソウキュウが突っ込み、一行はとりあえず目の前の扉を開くことにし、目の前の扉と魔方陣に苦笑する。念のため行っていない方向の道も確認するがその先も硬く閉ざされた扉しかない。意を決し魔方陣へと踏み込む。覚悟など、とうの昔に出来ている。
「塔だけに」
「いや、くだらん洒落はいいから!」
スズキの言葉にダートがつっこんで3人は転送される。そして、その先の魔方陣には光が無かった。
「ふむ、魔力を注げばいいみたいだな」
ダートがそう判断し早速そうしようとしたら…今度は這う音がした。出てきたのは蜘蛛の群れ。それを全てつぶした先に…蜘蛛の巣があった。それを払うと、そこには酷く衰弱し、虚ろな瞳を向ける天使族…リーガルトの姿があった。縄を解いても、彼は何も言わない。
「こんな時にジェネラスの声が…」
とダートが呟いている側から、奴の声がする。リーガルトがぼんやりとした状態なのは蜘蛛の毒の所為らしい。
「…って、そういう問題じゃない!人の命の重みも道徳心もあんたにはないんかいっ!」
「あったらその時点でこんなゲームは起こらないよ…スズキ」
ダートの突っ込みに、ジェネラスがそうですよ、と頷く。
「で、今度は何だ」
-その蜘蛛の親玉です。ちなみにリーガルト君を助けるにはそいつから抽出される血清が必要ですよ
ソウキュウの問いに、ジェネラスが丁寧に答え……幕が開く。
「ダート、魔方陣を」
「任せておけ、4分もあれば…」
ダートは魔方陣に駆け出し、スズキとソウキュウは虚ろな目で横たわるリーガルトを庇いながら大蜘蛛との戦闘を始める。
-さあ、もっと私を楽しませてください…。そう、あなたたちのあがく姿で…
ジェネラスの声が、忌々しい。しかしスズキたちはそれを無視した。ソウキュウは得意とする技で急所ごと蜘蛛を縛り上げ、そこから血清を奪い取る。
「今のうちに与えて…っと」
蜘蛛が動けないうちにリーガルトの治療をする。と、彼の瞳に生気が宿った。
「私は…!?」
「大丈夫だぜ、リー。…と。あとは魔方陣さえられば蜘蛛から逃げられる!」
ソウキュウはそういうとリーガルトの肩を軽く叩き、蜘蛛へ攻撃する。そうこうしているうちにダートが駆け寄り、魔方陣の用意が出来たことを伝える。
「とんずらするぞっ!」
スズキの言葉に、全員が頷く。こうしてスズキたちはリーガルトを連れて魔方陣へと踏み込んだ。転移魔術により、四人はさきほどの場所へと飛ばされる。
(引くときは引く。勝ち目の無いときは生存を優先する。当たり前のこと…)
ジェネラスはスズキを真の勇者だと褒めたが、嬉しくは無かった。
-因みに蜘蛛には再チャレンジできます♪
「いや、無理にきゃぴきゃぴせんでいいから」
ジェネラスの微妙な声色に、スズキが突っ込んだ。

(後編に続く)

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あとがき?
 どうも、フーレイです。とりあえず、前編と後編に分けました。プレイしつつ執筆という実験的作品でもあったのですが、作者である机庭球さん…ほんまに、こんな輩ですみません。シナリオのダークでドキドキな…そう、手に汗握る!ムードが出ていない!

ちなみに、このリプレイは机庭球さんへ送ったリプレイをちょっと修正して公開しています。

それでは!
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by jin-109-mineyuki | 2008-02-12 19:09 | 札世界図書館 | Comments(0)