ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

自称魔王も惚れるほど美味い飯(冒険者、じつは幸せもの)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:12
魔王と聖剣に記憶喪失な上、罪な美しさ?

長閑でやさしい昼下がり。それをぶち壊しそうな雰囲気輩がなぜか【水繰の剣亭】にやってきていた。でも、やっぱり長閑な雰囲気は雰囲気だった。
「店主殿。今日の昼も美味であった」
「って、何でアンタがここで飯食ってんだよ!!」
思わず突っ込みを入れるアンバーではあったが、珍客…自称魔王リヴァキープはふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「良いではないか。一昨日の戦いの後店主殿が奢ってくれた料理が大変美味であったが故にな、時折ここで食事をとることにしたのだ」
「…もしかして、私たちとの戦いも『食事の前の軽い運動』と化していませんか?」
オニキスの何気ない一言にびくっ!と背中が引きつるリヴァキープ。どうやら、図星らしい。しかしそれぐらいの事で突っ込みを入れる『六珠』ではなかっったりした。
「そ、そんな事はない!そんな事はないぞ!!」
否定する彼に、一同は苦笑する。

 彼、リヴァキープと会ったのは一週間前のこと。魔王と名乗る男が営業妨害をするのでどうにかしてほしい、という依頼を受けた一行は依頼主と共に地下の遺跡にもぐってスライプナーという特殊な剣を手にした。というのもリヴァキープ曰く依頼主の先祖はそれで彼と戦ったという。つまりは、それで『自分を倒せ!』と言っていたのだ。まぁ、その剣は剣さえ認めれば誰だって使えたわけで、今は吟遊詩人のクインベリルがマスターとなっている。『六珠』のメンバーはそれを使うことで漸くリヴァキープを倒せたのだが…彼はその日のうちに復活し、こうして付きまとうようになったのである。

ここ数日のうちに、何故かわからないが、リヴァキープとの間に微妙な友情みたいなものが気づかれ始めていた。
「けれど…依頼先まで押しかけてくることがなくてよかったよ」
サードニクスが苦笑し、それに頷くジャスパー。彼女はふう、と大きな溜息をつきながらイル・マーレをグラスで揺らしながら別の依頼を思い出す。
「アンバーが記憶喪失になったときに来られたらもの凄く厄介になったでしょうし」
そういいつつアンバーの頭を見る。ベールでわかりづらいが、今も包帯が巻いてあるのだ。3日前のことだが、足を滑らせたアンバーはなにかで頭を強打して記憶を失った。ゴブリンの洞窟で再び記憶を取り戻したものの、今も時折頭が痛むらしい。
「それを自分の手…それも荒治療で治そうとするアンバーもアンバーというか…」
パールはそういいながらちらり、とアンバーを見ると、彼は今もリヴァキープと揚げじゃがを取り合っていた。そんな姿に剣、スライプナーは相棒となったクインベリルと共に笑いを堪えている。
「まぁ、無事に記憶を取り戻したんじゃ。結果オーライじゃろうて」
「そうですね。元気そうですし、何よりです」
そうしている間にも、アンバーが己の揚げじゃがを死守したらしく、リヴァキープが悔しそうな声を上げていた。それをオニキスは大人気ない、の一言で片付けて珈琲を飲んで新聞に目を通す。悔しがるリヴァキープにはジャスパーがイル・マーレを彼のグラスに注いでいる。きらきらと輝く青い酒に、彼は大変感激し「ふむ、アレトゥーザを支配してイル・マーレを上納させるのもてダナ」なんて言ったのでアンバーがチョークスリーパーをかけはじめたのでどうにかサードニクスと親父さんが落ち着かせようとしているが「アレトゥーザは俺の故郷だ!支配されてたまるかーっ!!」と引く気がしないらしい。
「ところで」
「ん、何じゃ?」
不意に、オニキスがスライプナーに問いかける。
「記憶を失っていた間ですが、それでもアンバーは巧みにグレイブを操っていました。あれは…」
「恐らく、冒険者としての動きは忘れていなかったのじゃろう。かなりのレベルになってきておるしのぅ」
スライプナーはそういいつつ一行を眺め、楽しげに笑う。その一方、パールはぐったりとカウンターに寝転んでいた。
「…あー、昨日の依頼は疲れたぁ。なんだよ、あのヒゲ!わけがわかんねぇ!男同士で子供作る気満々だぁ!?天と地がひっくり返ってもむりだっつーのっ!!」
いらだたしげにカウンターで爪とぎをしようとしたので、とりあえず無言で首根っこを掴んでおくクインベリル。
「気持ちはわかるよ。あの依頼人さんに襲い掛かっていた幽霊の正体で苛々してるのは…。一番忘れたいのはオニキスさんだとおもう」
「そうじゃったな。あの男はグレモリー殿に好かれておったのぉ」
スライプナーの言うとおり、オニキスは依頼人に気に入られ軽く貞操の危機だったかもしれない。まぁ、依頼人はそういう人だったから仕方ないって言ってしまえばそうかもしれない。
「つーか、美しさは罪ってどの面さげて言ってんだよって話だ」
ようやくリヴァキープから手を離したアンバーが疲れたような様子で言う。オニキスは思い出したくない、という顔で溜息をついて食事を続ける。
「…な、なんかもの凄く空気が気まずいのだが」
リヴァキープの言葉に、とりあえず一同は何も言わないで置くことにした。

 その後、アンバーは踊りの練習をする為、クインベリルは演奏の練習の為に二人で広場へ出かけて行った。オニキスはサードニクスを連れて図書館へ行き、パールは昼寝をするために部屋へ戻った。いつの間にかリヴァキープも姿を消し、後に残されたのはジャスパーだけである。
「…ちょっと買い物でもしてこようかな」
彼女はそういうと席を立ち、昼下がりのリューンへと身を躍らせた。
(もうちょっと、がんばらないとね。今度は私だけがレベルアップできなかったなんて…)

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
勇者と魔王と聖剣と(ほしみ)
記憶は洞窟の中に……(karf)
美しさは罪(SHIMO)

多分、リプレイのノリは変わらないと思う。が、時折書き方が変わるかも。
まぁ、楽しんでくれれば嬉しいことです。
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2008-01-26 14:33 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)