ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

いちおう、らヴです(フーレイ・・・・新年早々)


『朔爛漫』 【4】

 領主が顔を上げると、そこには黒髪のエルフがいた。彼は紅い瞳を細め、堂々と道の真ん中に佇んでいる。
「貴方が、ここの領主様でしょうか?」
青年の問いに、領主は答えない。ただ厳しい眼をむけ、エルフに問う。
「入り口に書いてある看板を見なかったのか?ここはエルフを歓迎してはおらん。早々に立ち去るがよい」
しかし、青年の影は動く気配を見せない。じっ、と紅の眼を領主に見せている。彼は緊張も、気負いもする様子がない。むしろ威風堂々とした立ち振る舞いで馬上の領主を見つめていた。
(むっ……)
領主は僅かに内心うなった。彼はエルフが纏っている黒い鎧と衣服が『聖闇教会』の『聖騎士』のものである、という事を見抜いていた。敬虔な聖北教徒である彼からしてみれば『異端』である。ますます機嫌が悪くなった。

 キィフェは物陰からバルディッシュと父親である領主のやり取りを見ていた。いや、領主を見るバルディッシュの姿に見とれていた。媚びるでも脅えるでもない、刃のような瞳。真剣な横顔は確かに相手を知ろうとしている。
(不思議な気持ちだわ…。何故かあの人を見つめてしまう…)
高鳴る鼓動を抑えようと深呼吸し、唇を軽く噛む。凛とした態度の彼がキィフェには羨ましく思えた。
(私もあんなふうに父親と対峙できたら…いや、ならなきゃ。ならなきゃいけないのよ)
軽く手を握り締め、バルディッシュを見つめる。彼は領主と会うことが目的だといっていたが…。少し心配だった。彼は何をするのだろう。そして父は…。

「貴様、儂を愚弄する気か。斬られぬうちに立ち去れ」
「……では、そのように。また日を改めて参りましょう」
エルフの聖騎士は優雅に一礼すると彼らから背を向ける。領主はそれを一瞥するとエルフを抜いて立ち去ろうとした。が、その眼がある娘を捕らえる。
「そこにいるのだろう……キィフェ?」
その言葉に、物陰にいたキィフェは体を強張らせる。バルディッシュも何かに気づき、そっと振り返る。
「どうなされましたか?そこには誰もいませんよ?」
「貴様には聞いておらんっ!」
領主は一喝し、バルディッシュは肩をすくめてだまってみやる。
(そうか…奴はキィフェの…)
ならば納得がいくな、などと内心で思いつつ、バルディッシュはくすくす笑った。笑いを堪えることが出来なかった。
「何がおかしい!」
「いえ、少し思い出したことがありまして。貴方様とは関係がありません」
怒鳴る領主に対し、彼は嘘をつきさらに言葉を放つ。
「私は先ほどそっちから来ましたが何もありませんよ。気のせいでしょう」
バルディッシュの言葉に、領主は何も言わず、そのまま騎士たちと馬を走らせていった。その背中を睨みつけ、彼の唇が言葉を紡ぐ。
「…今のままでは大切なものを失いますよ…領主さま」

 キィフェは深く溜息をついた。今のやり取りで自分が領主の娘である事がばれてしまった。もしかしたら、バルディッシュに嫌われるかもしれない。そう思うと、激しく胸が軋んだ。その場に座り込み、何度も深呼吸を繰り返す。
(大丈夫よね。……そんなことないわよね)
そう、内心で繰り返し、彼女は立ち上がった。

 しばらくして、キィフェやエルフたちが物陰から姿を現した。バルディッシュは道の真ん中で首を回し、ふぅ、と小さく息をつく。
「ば、バルディッシュ……」
キィフェは恐る恐るエルフの青年を見る。が、彼は笑顔をむけてくれた。
「ん?気にすることはないさ。親子で意見が食い違うことはよくあるさ」
そういい、バルディッシュはそっとキィフェの頭を撫でてやった。それに頬が赤くなりつつも手を払いのけ、きっ、と睨みつける。
「こ、子ども扱いをするな!」
「悪い、悪い。でも、本当のことだ。俺はお前が領主の娘だと知っても嫌ったりしない」
「ど、どうしてそう言い切れる?」
バルディッシュの言葉に、キィフェは怪訝そうな眼を向ける。エルフの青年は信じろよ、といいながらキィフェの眼を見た。
「…お前が奴と違うって、一目見たときに解ったからさ」
彼はそういうと小さく微笑むと軽くおなかを押さえて、茶目っ気のある眼でキィフェに言う。
「ちょいと小腹が空いたな。どこかいい店はないか?」

 小さな食堂。そこで遅めの昼食をとる。たわいもない会話をしながらキィフェはバルディッシュにそれとなく問いかける。
「ところで…本当に…領主に会うだけが目的だったの?」
それにバルディッシュは少しだけ苦笑してしまった。
「本当はその心算だった。けれど……ちょっと変更した」
「ちょっと変更?」
キィフェは不思議そうにバルディッシュを見、彼の言葉を待つ。やはり領内で大きなトラブルは起きて欲しくない。領民を巻き込むのは更に嫌だ。
「うん。大切な何かを奪っていけば…ちったあ眼を覚まさせられないかな…なんておもってな」
その言葉に、ちょっとどきり、とする。
「が、領主が大切にしているもの…っつーたら領民とかだろ?基本は。だから何が効果があるかなぁ、とか考えているんだ。キィフェ、何か思いつかないか?」
バルディッシュの眼は真面目にそれを考えているようだった。ふざけている心算はないらしい。それに、彼と眼を合わせるだけでドキドキしてしまう。
「ねぇ、バルディッシュ。いっその事…私を掻っ攫ってみない?」
その一言が自然と出た。案の定、バルディッシュは吹きかけた。が、少しだけ考える。
「それはいいアイデアかもしれないな」
そして品定めするようにキィフェの頭からつま先までをじっくり見る。キィフェは表情を強張らせた。
「なっ、何!冗談よ!!冗談に決まってるじゃない!私は時期領主なのよ!ここを元に戻すためにいなくちゃ!」
「そうか。なかなかいいアイデアだとおもったんだが。偽装誘拐」
バルディッシュはそう苦笑しつつ
「お前、なかなかの別嬪だしな」
と微笑んだ。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さくらんぼキッス」って曲を聴いていたらキィフェが…。
冗談でですが。
兎に角・・・・・・・じょじょに動き出すかな?
前フリ長かったかな?
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2008-01-04 23:54 | 札世界図書館 | Comments(0)