ある野良魔導士の書斎

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対面(フーレイ、手を抜けませんぞ)


『朔爛漫』:【3】

 バルディッシュ・ルー。黒い髪と紅い瞳のエルフは100年ほど前に碧落の森で生を受けた。幼少期をアレトゥーザで過ごした彼は実年齢で15の時に森へ戻り『聖闇』の聖職者としての道を歩き始めたという。そんな話を聞きながらキィフェは彼に捕まっていた。エルフの村を降り、人間たちの町へ行く、と言ってたときは止めたものの、彼はそのエルフを嫌う領主に興味を持ったらしい。キィフェは仕方なく案内することにし、馬を貸した。
(馬を貸したのはいいけど…本当に上手いのね…)
巧みに愛馬ペルセポネを操るバルディッシュにキィフェは驚く。彼女でさえ愛馬と仲良くなるのに3日は掛かったというのに。
「どれぐらいで、つくかな?」
「普通だったら馬を走らせて1時間ほどよ。でも、気をつけて…領主の兵士たちがいるかも」
バルディッシュはふむ、と少し考えて一つ頷く。そして更にスピードを上げる。彼は小さく唇を噛むと僅かに瞳を細めた。
「領主の兵士、ね」
「領民はエルフを仲のよい隣人って見ているから、あれこれ言ってエルフたちを庇っている。余計にそれが、領主には面白くないみたい」
キィフェは溜息混じりにそういいつつ、ちらり、とバルディッシュを見た。精悍な顔つきだが、何処か親しみやすそうな目つき。「よろしく」と言って手を握ったときの優しい顔。脳裏にそれが蘇り、頬骨が急にむず痒くなる。
(やだ、私ったら何を…)
思わず少し俯いていると、バルディッシュの声がした。
「標識が見えてきたんだが、どっちへ行けばいい?…ん、酔ったのか?」
キィフェは首を横に振り、左へ行くように言った。

 1時間後、無事に二人は町に到着した。馬を降り、今度は歩いていく。石畳の綺麗な町並みだ。人間に混じってハーフエルフやエルフの姿もある。それを眺めながら二人は肩を並べて歩いていた。
「へぇ……。いい雰囲気じゃねぇか」
バルディッシュは街の様子にほっとしたような顔をする。が、キィフェは少しだけ表情を曇らせた。兵士たちがいないという事はいい事だが。
「今は、ね。兵士たちが来たら皆…」
そういっている傍から、銀色の鎧を来た兵士の影が見えた。エルフたちは町の人に助けられて物陰に隠れていく。その様子をエルフの聖騎士は内心嫌そうに見つめていた。
「ふん、エルフを何だと思っていやが……おい、何でお前まで逃げるんだよ?」
隣を見ると、キィフェが何処かへ逃げようとしている。それを引き止めようと手を握る。
「ちょ、ちょっと!離してよ!!私は領主が嫌いなんだから!」
「でも隠れる必要は無いだろ?」
バルディッシュは苦笑するが、キィフェは酷く焦っていた。そして、1人の男がバルディッシュにどこかへ隠れろ、とジェスチャーを向ける。
「彼に従って。おねがい、バルディッシュ!」
キィフェが小声でそういうも、彼は首を横に振った。
「俺の目的は、その男に会うことだ」
そういうと、彼はキィフェと彼女の愛馬を物陰へ隠れさせると一人道の真ん中に立った。視線の先には馬に乗った壮年の男と幾人かの騎士の姿が見える。バルディッシュの紅い瞳がゆっくりと細くなった。人々が見守る中、エルフの聖騎士は領主が来るのを静かに待った。
(さあ、みてやろうじゃないか……。そのエルフ嫌いな領主さまとやらを)

【4】へと続く
・・・・・・・・・・・・
実を言うと、タイトルは勢いだったりするが、まぁ、ちゃんと…。
果たしてバルディッシュはどんな感じで御舅さんとわたりあったか…。
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-25 23:50 | 札世界図書館 | Comments(0)