ある野良魔導士の書斎

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『むげファン参加者に30のお題』より 30:ありがとう


 「共に戦えたことを、誇りに思います」
その言葉を言うたびに、私の胸は酷く軋む…。

りがとう』

 ある晴れた昼下がり。1人のセイレーンが花束をもって歩いていく。濃い桃色や紫を帯びた桃色、白など秋を彩るコスモスは本当に美しかった。
(…喜んでくれるでしょうか)
彼は眼鏡の奥で目を細め、小さく微笑んだ。浅瀬の海を思わせる青い瞳は、何処か悲しげに揺れ続ける。彼は暫く花を見つめていたが我に返り、再び歩き出した。彼の進む先には、一つの石碑が建っている。顔を上げると、少年は僅かに目を細めた。

 『希望のグリモア』にほどちかい場所。ここには数多の戦いで散っていった冒険者たちの名を納めた石碑がある。そして、その傍には幾つもの花束が置かれている。そこへ訪れたそのセイレーンもまた持ってきたコスモスをそこへ手向けた。石碑の前で暫く佇んでいたが、しばらくして祈るように片膝を折って跪き、手を組んだ。瞳を閉ざすと、いろんなことが脳裏を過ぎる。
(あの人は短い間だったけど、同じ旅団でお世話になりましたね。
 あの人は同じ依頼で一緒にご飯を食べましたっけ?
 そしてあの人は、お祭りで楽しそうに過ごしていた……)
色々と思い出していると、目頭が熱くなっていく。同じときを過ごし、助け合い、励ましあい、切磋琢磨していた筈の仲間たち。特には喧嘩もしたけれど、気の置けなかった仲間たち。
しかし、彼らは散っていった。

ザウス大祭阻止、トロウル最終決戦、神との戦い、対ザムザグリード、対ヴァーゼルゼ、第一次・二次ドラゴン界侵攻作戦、対ドラゴンロード戦…。

彼は冒険者になって何度も戦いに赴いている。そして、仲間を失う辛さを何度も経験しているのだ。だから、こうして時折花を手向ける。
(ロード戦でも、多数の死者が出た。……けれど、共に戦えたお陰で…)
石碑を見る。どんな思いで、散っていったのだろう。そう、思うだけで彼の胸は激しく痛む。そして彼らは今、何処にいるのだろうか。彼らの魂はどこで何をしているのだろう。寂しい思いをしていないだろうか。少しの不安がよぎる。けれど彼は口に出さなかった。そして、黙って立ち上がる。
(私は貴方がたに誓います。もっと強くなって、ランドアースを守ると)
だから、見守っていてください。後から、私も参ります。
彼は静かに黙祷を捧げ、再び瞳を開いた時、そっと、口ずさんだ。

-ありがとう、ございます。
 出会えたこと、共に戦えたこと……感謝します。

 青い髪が、煽られえる。セイレーンはそれ以上何も言わず、ただ一礼して石碑に背を向ける。ゆっくりと帰り行くその背中を、石碑が黙って見守る。けれど、少年の瞳は…眼鏡に写る幾つもの戦友の面影に、涙を浮かべていた。

(終)
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あとがき
ども、フーレイです。お題にチャレンジで逆走プレイング!(ぇ
ルール違反ではないはずだ。とりあえずニルギンが墓参りです。
…勝手にこんなものがあるとしちゃったけど本当のトコどうだろう。
とりあえずニルギンはがんばって生きています。
今後もよろしく。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-13 14:34 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)