ある野良魔導士の書斎

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るーるーるるー(泣:リーダー、がんばれ!!)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:6
鍬と怒りと護衛の仕事

「あー…今回も大変だったよなぁ…」
そんな事をいいつつカウンターに座るアンバー。【六珠】メンバーはそれぞれ席につき、思い思いに飲み物を注文する。あつあつの揚げじゃがとミルクがだされるや否や、全員が小皿に取り分け、塩を軽く振りかけたり、ケチャップや親父さん特性のマヨネーズをつけたりして食べる。しばらくの間無言で食事を取っていたが、しばらくして珈琲を飲んだオニキスが息をつく。
「まず、アンバーは無事で何よりでした。…あの夢魔は悲しい方でしたが…ね」
「うん。どうかんがえても寂しかったから…人を眠らせたとしか思えない」
「本当の家族がほしかったのね…。哀れな子…」
サードニクスとジャスパーが頷き、パールが苛々と尻尾をくねらせる。
「あの野郎、引っかいてやろうと思ったけど……アンバー、何故止めた!」
「仕方ないだろ、あいつを引っかいてもどうにもならない」
リーダーの言葉にパールは少し不機嫌な顔になる。クインベリルはパールの頭を撫でつつ小さく溜息を吐きつつホットミルクを口にした。
「あのお姉さん、きっと今度は幸せに生まれ変われるよね?」
「どうでしょうね……。夢魔として命を幾つも奪っていますから……」
オニキスはそう呟き、表情を曇らせる。柔らかなランプの光を見つめ、彼は小さく溜息を吐くと珈琲を一口飲む。その姿を見つつサードニクスはもう1つの事を思い出していた。
「それにしても、あのおじさんたちについては腹が立つよね」
「そうそうっ!あの野郎もそうだけどあの3人もむ・か・つ・く!!」
ごん、と勢いよくゴブレットをカウンターに叩くジャスパー。他のメンバーもそれには頷いている。普段は怒らないサードニクスも相当怒っており、オニキスにいたってはダークなオーラが漂っているぐらいだ。その時の事を思い出すと若干ひいてしまう面々……。
「まぁ、あの時のうさはあの野郎どもではらせたからいいけどな」
さばさばとした口調で言うパール。彼が魚の塩焼きにがっつき、クインベリルはふん、と鼻を鳴らす。
「有名なオズワルド3兄弟を騙るとは、まったくおこがましいですわっ!」
「まぁ、退治されたんだし、それはそれでいいだろ」
親父の言葉に、一同は苦笑を浮かべながら頷いた。まぁ、かなり暴走したらしく、後からえらいこっちゃになったのは言うまでも無い。一番キレていたのは恐らくオニキスだろう、という事で一致していた。

 一息ついた所で、6人はデザートのガジャル・ハルワ(ニンジンを牛乳と砂糖で甘く煮込んだ美味しいお菓子)を食べつつ今回の依頼について話を始める。
「確か…トレセガ街道を通ってフォーン村までの…だったな。あの森は…少しあれに似ている気がした…」
アンバーは考え込みながら手元のガジャル・ハルワをスプーンで弄びつつ、どこか遠い目でドアを見つめた。何か思い当たることがあるらしい。
「もしかして、あの事件ですか?シャルロッテと一緒に薬草を摘みに行った時の…」
オニキスの問いに、アンバーが頷く。サードニクスはそうだね、と相槌を打ちつつ依頼を思い出す。
「盗賊に森を荒らされ…、人間のエゴに苦しめられたが故に…なのかなぁ」
頬杖をつきつつ呟く少年にジャスパーも頷いている。彼女もまたどこかぼんやりとその依頼を思い出す。
「あの森は確かに理不尽な力が働いていた。けどあれは違う。盗賊やら人間に森を荒らされ、苦しんでいたドライアドたちの化身がやったことだし」
「…天使のオニキスやヴァンパイアなクインベリルの言葉も結構重かったぜ」
パールはカウンターで伸びをしつつ2人を見やる。人間であるジャスパーやサードニクス、半分人間であるアンバーには2人の厳しい言葉が痛かったらしく苦笑している。
「盗賊団は壊滅しましたし、荒らされた森もきっと元に戻るわ」
クインベリルはそういうと祈るように瞳を閉ざした。
「そう、だな…」
アンバーも相槌を打ち、ジョッキに入ったエールを飲み干すと1人席を立つ。
「どうしたんですか?」
不思議に思い、オニキスが顔を上げる。と、アンバーは苦笑してメンバーを見る。
「いや、ちょっと買い物にね。ポートリオンに行ってくるよ」
そう言って、アンバーは1人宿を出て行った。その背中はどこか寂しそうにも見え、思い当たる節があるサードニクスは小さく溜息を吐く。
「…やっぱり、気にしているんじゃないですか?…1人だけレベルアップできなかったって事…」
「リーダーだし、やっぱり悔しいって姿は見せたくないのよ」
ジャスパーはそういいながらワインを飲み、閉ざされたドアを見つめる。パールとクインベリルもまた少し複雑そうな顔をするが、オニキスだけはいつものように平常心だった。
「まぁ、あいつの事です。また依頼でも引っさげて帰ってきますよ。ハーフエルフですからもしかしたら、今が思春期なのかもしれませんね…アンバー…」
そういうと、彼は珈琲に口をつけ静かに微笑んだ。

 一方、アンバーはポートリオン行きの馬車に乗り込み、1人考えていた。このままじゃいけない。もっとしっかりしないと。
(やっぱり武器とか欲しいよなぁ。それに……もっと修行をつまないと)
薄っすらと暮れ行く西の空を見つめていると、少しだけ胸が痛くなった。仲間たちはレベルを順調に上げているのに、自分は何かに引っかかっている。悔しくないといったら嘘になるが、リーダーであるし、そんな姿を見せたくは無い。どこか遠い目で変わっていく景色を、ただただ複雑な思いで見つめていた。

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
歯の欠けた鍬(Pabit)
怒れる者(如月真問)
護衛求む(がじろー)
新港都市ポートリオン(Moonlit)

※サードニクスってホムンクルスじゃないの?
実は、彼自身は自分の種族を知らないのです(大汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-08 15:57 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)