ある野良魔導士の書斎

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奴はとんでもないものを奪っていきました。…貴方の魂です(シオン、絶賛逃亡中!)


『雨の日の、逃亡者』 (本人側・後)

―ザザザザザッ!
不意に、騎士は息を呑んだ。明らかな『殺気』が背後から突き刺さる。
「何者だッ!?」
そう叫んだとき、殿だった騎士の体を一閃の銀が走る。雨に混じる紅が、鈍い空に映える。馬は脇腹から上のない相手を乗せたまま、暴れ、草原へと逃げ出す。
「くそっ、いやがったかっ!」
無残にも斬られた仲間を見、吐き気を堪えて別の騎士が襲い掛かる。しかし、若者は馬上から繰り出された剣をはじき、今度は馬の脚を切り落とす。彼が草原に倒れている間に、残りの騎士が襲ってくるも、若者は次々に交わす。ただ1人、リーダー的な騎士だけが、若者を見る。
「一号体…いや、アメジスト…」
その間にも、若者の握った剣は的確に騎士二人を倒している。見事な手さばきで急所を切り飛ばし、返り血で白い肌を紅に染めている。
(戦争のためだけに作られた戦隷。その初期型…、唯一あの魔導士が名前をつけた『おきにいり』に…自我が生まれるとはな)
騎士は本来自我など出来ないはずの存在を、興味深く思っていた。だから、この男をみすみす殺したくはなかった。しかし、命令だ。
「その首、貰い受ける」
彼は、若者に襲い掛かる。ただ、身構えもせずに立ち尽くす若者に。
手にした剣で、彼を斬ろうと。
しかし、その剣は「彼」の体に触れることはなかった。
銀色の背中から……紅蓮の花が、咲き、散った。

追っ手の『始末』を終えた「彼」は、その死体を一瞥し、一つ頷く。
「これで…いい…」
嘗ては命令されるがままに殺していた。
これからは、自分が『誰を殺すか』を決める。
―全ては、自分で決めるために。
「彼」は死体の懐からなにやら袋を取り出すと背を向け、只管に街道を走り始めた。
彼の土地勘が確かならば、あの馬車を追い抜ける道が、どこかにあったはずだ。
紅の染みをつけたまま、「彼」は走り始めた。

走り続けると、あの荷馬車の音を耳にした。けれどそれをすぐに追い越す。
(もう少し…先……で…)
もう一度乗せてもらおう。そして、別の大陸にある町…ポートリオンへ行こう。彼は決断すると、更に加速した。

(終)
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シオン、逃亡道中まっしぐら!
いや、…シリアスな内容なのに記事のタイトルとかはめっさおかしい。
まあ、気にしないでくださいよ。
本当は続きもありますが、後日!

 次回は【見えざる神の手亭】に所属するエルフ(たぶん200歳以上)、バルディッシュ・ルーの物語をご紹介予定。デバク宿だからこそ出来るレベル11(ぇ)のおっさんの、冒険者になる前の話です。
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by jin-109-mineyuki | 2007-12-04 01:55 | 札世界図書館 | Comments(0)