ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

最近、CWをしていないがSSをば(フーレイ、水繰の宿はどうなる!?)


『雨の日の、逃亡者』 (本人側・中)

 …ザアアアア
雨が、全身を嬲る。体が凍えそうだった。若者はそれでも街道を目指し走る。
(おれは、何だ)
そんな問いと腰に下げた剣、かっぱらったローブだけを荷物に「彼」は街道に出た。そしてそのど真ん中にたたずんだ。彼の常人を超える感覚は、遠くから荷馬車が来る事を感じていた。

 …ガタゴトガタゴトガタゴト
荷馬車の中で、耳をすませる。と、雨や荷馬車の音とはまた別のモノを捕らえる。明らかな殺意を持った気配。しかし、「彼」を乗せた男は別の事を考えていたようだった。
恐らく、ただの脱走兵としか思っていないのだろう。
しかし、「彼」は……ただの脱走兵ではなかった、のである。

ホムンクルス第一号体…H-01-a001
それが、彼に与えられた「記号」だった。
多くの兵士たちが「一号」と読んでいた。
しかし、ただ1人だけ…彼を作った魔導士だけはこう呼んだ。
―アメジスト、と

 ガタガタガタガタガタガタ…
馬車の音と雨の音を聞きながら、男と会話をする。その間にも『抹消の意志』が「彼」の体に響いていく。
「…来たか」
若者は一つ頷き、気配をそのままに男から離れる。そして…徐に外へ転がり出た。

 荒野の岩に身を潜め、騎士が荷馬車を止める様子を見ていた。彼らは恐らく、あの魔導士か王から自分の抹消を命令されたのだろう。その様子をそっと伺う。幼いころから染み付いた術。そして、20年もの間『戦争』の為だけに『作られた』存在の『機能』なのだ。
―息を殺し、気配すら絶つ。
そして、雨が降りしきる中騎士達が荷馬車を捜索する。が、そこには誰かがいた、ということだけしかわからない。魔力は体の内側で押さえ込んでいたから、よっぽどの人間でないとホムンクルスが持つ特有の【癖】がついたそれを感じ取ることは出来ない。
(…愚かな…)
「彼」は僅かに唇を嘗め、その様子を伺う。そして、馬車が開放され騎士たちを置いてかなり遠くまで走っていくのを見守った。騎士たちもまた、引き返して脱走兵の姿を探す。
「オレに敵うと…思っているのか…」
若者は、馬車が完全に見えなくなったのを確認すると……徐に立ち上がり、騎士たちの方へと走り出す。
(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とりあえず続けてみました、シオンの話。
前回のでシオンがどんな過去かは多少解ったと思いますが……まぁ、いろいろありゃあひねくれますわな(汗)。そんな彼が人間らしさを少しでも身につけていくのが宿に来て冒険者になる前1年間別の場所で働いていたときの話になるかな?一応それは思いついたら。

他の宿のメンバーの話も思いついたら書く予定です。
これ…読者いるかわからないけど、次回でこの話は終わります。
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2007-11-27 15:09 | 札世界図書館 | Comments(0)