ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

第二次ドラゴン界侵攻作戦で(フーレイ、実は悩む)


「今にして思えば、我々はこの時既に選択を誤っていたのかもしれない…」
CWシナリオ『賢者の選択』より

 ぐつぐつと虚しく煮える鍋。それを見つめるのは三人の冒険者である。白い翼のエンジェル、黒い耳と尻尾のヒトノソリン、青い髪、瞳、石のセイレーン。
「さぁ、できましたよ」
力なくセイレーンの少年がいい、エンジェルの少年とヒトノソリンの女性が顔を上げる。皿に盛られたシチューとパン、飲み物がそろうが、食べ始めない。
「まずは、戦いで亡くなった皆さんに黙祷、だなぁ~ん」
「うん」
女性の言葉に、キャスケットの少年は頷く。もう1人の少年もだまって頷いた。

―第二次ドラゴン界侵攻作戦
それは表向き成功に見えた。
しかし、多くの者が重傷になり…死亡したものもいた。
そして、ロードが自らグリモアへと進み始めた。

その戦いで、己の無力さを痛感した3人は、こうして集った…。

『第二次ドラゴン界侵攻作戦・反省会』 (著:天空 仁)

「で…ニルギン。これは作りすぎだなぁ~ん」
ニルギンと呼ばれたセイレーンは寸胴2つのシチューを見つめ、ああ、と苦笑。
「…実は…いろいろ考え事をしていたら、作りすぎてしまったので。ディート、沢山食べてくださいね」
ディートと呼ばれたエンジェルは、その言葉に苦笑する。
「いいにおい…。でも、食べきれないよ。ギーエルさんでも」
ギーエルと呼ばれたヒトノソリンはその言葉に苦笑で頷く。
「俺やニルギンは今回の作戦でお役に立てなかったなぁ~ん。だから夕食ついでに反省会だなぁ~ん」
ギーエルは突撃戦、ニルギンは撤退戦に参加していたのだが、何かうまく行かなかったのか酷く疲れた様子だった。特にギーエルは先の作戦で重傷になっている。ディートはそうでもないようで、むしろ友人の死を知るまでは笑顔であった。
「と、とにかく食べつつ反省会ですね」
ニルギンの言葉に、2人は頷いた。

 3人は時折食事を一緒にとる。ニルギンやギーエルは料理を得意とするのでどちらかの部屋での場合は、部屋の主が料理の腕を振るう。今回はニルギンの部屋で反省会なので、彼のお手製である。
彼の部屋中にシチューの美味しそうな匂いとあったかい湯気が漂うものの、誰も口にしようとしない。それだけ疲れているのである。
「そういえば…ニル兄、作っているとき物凄く静かだったね。いつもなら歌いながらやってるのに」
キャスケットを握ったままディートが問うが、ギーエルは厳しい表情でとめる。どうして、と問おうとするが、ギーエルは黙って首を横に振る。そんな2人のやり取りを見ていたニルギンは酷く顔を赤くしつつ小さな声で言った。
「お恥ずかしながら、私は…背中を守る、と約束した方を守れなくて。その事が悔しくて…」
薄っすらと青い瞳に涙が浮かび、必死に堪えようとするニルギン。ギーエルはそっと頭を撫でつつも何処か苦笑した声で
「でも生きてるなぁ~ん。次守ればいいなぁ~んよ」
「だね……死んだ仲間たちの分までがんばって…」
ディートが頷き小さく笑うものの、その灰色の瞳にも涙は浮かんでいる。同じ旅団の仲間が死んだことが、少年には辛かったらしい。ギーエルはディートの頭も撫で、頷いた。

 とりあえず食事を始めたものの、のぼる話題はどれも明るくはない。まぁ『反省会』と名づけているだけあっていつもより真面目な会話だ。
「やはりナパームアローよりも無風の構えを持っていって盾になったほうが良かったのかもしれませんねぇ」
「よく考えて見れば、ヴォイドスクラッチは単体だったなぁ~ん。それをすっかり忘れていたのが痛手だなぁ~ん」
アビの選択ミスが結果に響いたな、と思うニルギンとギーエルは互いの顔を見合わせて苦笑する。ディートは2人の話を聞きつつふむ、と1つ唸る。
「ニル兄ちゃんは技系アビ…特に蹴りを得意とするから…武器選択もカギなのかな?第一技系等は威力アップ系アビがあるといいけど」
ディートの言っている『威力アップアビ』とは『狂戦士の極意』や『武人の極意』『邪竜身』のように攻撃力を初めから底上げするアビリティの事である。
「俺は邪竜導士だから『邪竜身奥義』を使って心攻撃の威力上げにしているなぁ~ん。ニルギンの場合は技攻撃の威力上げだから『タクスリーダー』だなぁ~んね」
「牙狩人のアビですね。見落としていました…。私はてっきり技攻撃の威力を上げるアビは無いと思っていましたから…」
ニルギンは感心したように頷き、早速メモを取る。
「俺は思うなぁ~んけど、ニルギンは武道家だから素手だと連撃が望めるなぁ~ん。武器を捨ててそれでもいい気がするなぁ~ん」
ギーエルの言葉にニルギンはそれも考えて見ます、と頷いた。
「あと、ギーエルさん。やはり貴方は心攻撃に強いですから範囲アビを積んで攻撃に望むか、回復系アビを積んで前線援護に回ると良いと思います」
「うん。折角『邪竜身奥義』で威力上げをしているんだもの。医術士のアビでもかなり期待できるんじゃないかな?」
2人の言葉を受けてギーエルはそうかもなぁ~ん、と考える。確かに心能力値が高いという点は活かさないと生き残れなさそうである。少しでも回復手はほしい。あえてそっちへ回るのも手かもしれない。第一に【最後の選択(黄昏の役ともよばれる)】では邪竜導士としてのアビリティを抜かし、回復アビリティのみ積んで戦いに望んだのである。
「ディートはお疲れ様でした。貴方が参加したチームは無事に全員生還されたようで…嬉しいです」
急にニルギンから言われ、ディートはありがと、と少しはにかんで言う。
「話に聞いたけど、撤退条件を託されたらしいなぁ~んね。うまくいってよかったなぁ~ん。それに連携がちゃんと取れてたらしいなぁ~ん」
ギーエルからもそう言われ、ディートの頬は緩む。しかし、すぐに曇って行った。
「でも、他の作戦では死んだヒトも多いよ。それに第四作戦……ロードのこと……」
その言葉に、ニルギンは唇をかみ締める。彼は己の目で無残に殺された仲間の姿を見ているのである。ギーエルもまた、溜息を吐いた。

 しばらくして、反省会は終わった。ニルギンは後片付けをし、そのまま夜の街を歩いた。ロードは確実に近づいてきている。
「次はロード戦。私たちは、無くなった仲間が持った全ての悲しみと怒りを奴らにぶつけて…勝利を収めなくては」
そんな事を呟いていると、見覚えのある影がよぎった。白い髪とノソリンの耳と尻尾。片思いの相手、レイメイ・レーレンである。
「レイメイさん、こんばんは」
「こんばんはだなぁ~ん。ニルギンさん、何処に行くなぁ~ん?」
レイメイは手に色々救急道具を持っている。仲間が重症になったのだろう。その事を思うと胸が痛い。
「私は第三作戦旅団に入団届けを出しに。…約束した仲間がいるので」
ニルギンはそういうと、いつものように微笑んだ。しかし、レイメイには痛そうな笑顔にしか見えなかった。それを何故か言えなかった。

 ギーエルは同じ依頼へ行くことになっているマサミ・ファルガディアの元にいた。彼もまた重傷を負っている。ニルギン、ディート共通の知り合いではあるが、ギーエルは彼に一度応援されてからあまり会話をしていない。
「…ギーエルか。お前も重傷なんだってな」
苦笑しながらいうマサミに、ギーエルはそうなぁ~ん、と同じように苦笑して相槌をうつ。それでもてきぱきとお茶の準備をするのはメイドの嗜みだからであろう。
「まぁ、でも生きていて何よりだなぁ~ん。気になる相手に死なれては困るなぁ~ん」
「?」
ギーエルの何気ない一言。マサミは意味が取れず首を傾げるが、彼女はいたって真面目な顔でくすっ、と笑った。

 静かな酒場。ディートがそこに入ると、彼が慕っている霊査士のミッドナー・イートゥが1人で静かに酒を飲んでいた…ようだったが、グラスに注がれたワインは一口も飲まれていない。あの作戦の時と同じだった。が、彼女は気がついたのか、ディートを見るなり少し微笑んだ。
「こんばんは、ディートさん」
「ミッドナーさん、こんばんは。…作戦、がんばってきたよ…」
その言葉に、彼女は1つ頷き、優しく少年の頭を撫でる。その感触が嬉しくてディートの頬は緩むが…僅かに曇っていく。
「…でもね…僕……悲しいの。友達が…別の作戦で…」
途切れがちになる言葉を、ミッドナーは目でとめる。それ以上言わなくていい、と。彼女は静かに頷き、一度だけ、ぎゅっ、とディートを抱きしめた。

―静かに、その夜は更けていく。

(終)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
NPCを初めて出したフーレイ(天空 仁)です。
いや、NPCは勝手に出していいらしいので。
マサミさんについてはPLさんに許可を貰っております。

それにしても、PCがこんな会話をしていていいのかわからないので一応アンオフィシャルかもしれない;

では、これで。
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2007-11-18 16:11 | 無限銀雨図書館 | Comments(2)
Commented by ミネルヴァ at 2007-11-19 13:27 x
お疲れ様。
俺はGGにいたよ。
後詰めと言えば聞こえはいいが、臆病風に吹かれたかな
生きていてくれて、ありがとう。
死ぬだけが選択じゃない。
生きて生き抜いて、未来を掴んでくれ。
Commented by jin-109-mineyuki at 2007-11-19 23:56

ミネルヴァさん、書き込みありがとうございます。ニルギンです。
まだ、戦いがあるので…その時にでも戦場で…。
臆病ではありません。GGでの仕事も、立派なもの。
仲間を、民を守るために存在するのですから。
解っています。私にはたくさん、大切な仲間がいますから…。
貴女も、生き抜いてください。
また笑いあうために…。