ある野良魔導士の書斎

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先週の続きです(フーレイ、実は本人サイドもある)


『雨の日の、逃亡者』 (後)(著:天空 仁)

 ザアアアアア…
馬車を取り囲むかのように5頭の馬が走っていく。その内の一頭が、馬車の行く手を遮った。乗っているのは全て鈍く輝く銀の鎧を纏った騎士達である。
「止まれ」
男は、素直に従っておくことにした。慣れた手つきで馬をとめる。
「なんでございましょう、騎士様方」
「脱走兵が出たのでな。念のために乗っていないか探らせてもらう」
騎士はそういい、部下たちへ指示を下す。が、男はまってくれ、と叫ぶ。脱走兵と聞いて、あの若者のことか、と思ったのだ。彼とて手にした商品を逃したくはないし、殺されたらたまったものではない。
「気のせいですよ、騎士様。手前は一人旅人を乗せただけでして……」
そういっている間にも、騎士たちは荷馬車の中を見た。が、そこからは信じられない声がした。
「誰も乗っておりません」
「そんな筈はない。人の気配は、確実に二人分あったのだ」
リーダー格の騎士がいう。そいつはどうやら人の気配を把握する魔術でも持っているのだな、と男は思った。が、彼の表情が…僅かに曇った。
「どうやら逃げたらしい」
騎士はそういうと、男に非礼を詫び…いくらかの銀貨を握らせると行け、と言い放った。

 …ガタゴトガタゴト
あれから一時間が経過した。男はぼんやりと馬の手綱を握っている。
(夢だったのか?)
いつの間にか、あの若者はいなくなっていた。馬車から降りたならば、それなりに音はしたはずなのだ。それなのに、そんな音は皆無だった。
(雨にまぎれて、か?)
そんな気がした。もしかしたら、相当な戦士だったのかもしれない。けれど、逃げ出したというには何かある。
(それに…これは…)
誰にも言うな、とでも言うように騎士は銀貨をくれた。こういう賄賂は銅貨である事が多いが、質のいい銀貨とは…。そんなことを考えつつ遠くを見ていると…、また人影が見えた。
「……おい」
その方向から、濃い血の臭いがする。良く見れば、その影には赤黒い血の染みが滲んでいる。そして、フードの隙間から見えた目は…爛々と輝く紫水晶だった。
「……乗せろ」
虚ろなバリトンが、同じ事を言う。男は背筋に冷たいものが流れていくのを感じつつも、その若者を再び乗せた。

(終→本人サイドへ続く)
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ども、フーレイです。
あの冷血漢ホムンクルス、シオンのプラテですが、一応おっさん側が終了。次回からは本人側となります。一応あと三週間ですな(笑)。
他にもいろいろあるけれど、まぁ気が向いてからなので期待しないでね。
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by jin-109-mineyuki | 2007-11-13 00:15 | 札世界図書館 | Comments(0)