ある野良魔導士の書斎

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第四話:惹かれ合う力、交じり合う思惑(4)

 エルデルグとハィロゥは海辺の岩場を歩いていた。本当は分かれる予定だったが、こうして一緒に歩いている。
「へぇ、ハィロィってここらへんに詳しいんだ」
エルデルグは感心したように呟く。と、いうのも住人でも知らないような道を行き、本来ならば目抜き通りから三十分はかかる筈の海辺へと十分でやってきたのである。
「まぁ、ね。長年住んでいれば」
「じゃあ、お前はここの出なんだな」
ますます感心するエルデルグに、ハィロゥは僅かに照れる。が、口元は緩んでいた。
「出身ではないが、色々あってね。それに、相方の都合もある」
「相方?」
その言葉に、エルデルグは首を傾げる。彼は気付いていなかったが、この時、僅かに…ハィロゥの頬に朱が射した。
「どーだっていい。…ああ、そうだ。エルデルグ、昨日渡したあのアイテム…どうした?」
急に問われ、エルデルグはきょとん、となる。確かに感情がわかる水晶を彼はハィロゥから貰った。
「友人に、あげました。綺麗だったから」
「そうか…。んじゃ、試しにやってみるかな」
ハィロゥはそういいつつ、鞄から1つのコンパスを取り出す。中にある青い針はクルクル回っていた。それにあわせ、ハィロィが何か呟くと、急に一方向を射すようになった。北などの方角は、書かれていない。
「なんだ、そりゃ?」
「人探しコンパス。今回の場合【エルデルグが昨日、オレから貰った『言霊写し』をあげた相手】というキーワードがあるから、名前がわからなくてもたった一人。直ぐに見つかる」
彼はそういいつつ、針の指す方へ歩き出す。エルデルグは訝しがりつつも…ついていく事にした。
「…おかしいか?」
不意に、ハィロゥは問う。が、エルデルグは首を傾げる。
「その不思議そうな顔だ。一人称の事だろう?」
「…あ、ああ…」
エルデルグはとりあえずそういう事にしておいた。が、今思えば彼の一人称が変わっている。それはよく問われる事なのだろう、ハィロゥは成れた口で言い続ける。
「普段は我輩とか言っているけれど、オレの時もあるかな。商売中は大抵オレって自分の事を言っている」
「ふぅん、変な奴。普通逆じゃねぇか?」
「まぁ、気分って奴だ。気分」
そんな会話をしつつ、二人は歩き続ける。…と、目の前に洞窟が現れる。そして、その傍に…一人のエルフが立っていた。
「あれ?」
エルデルグは少し首を傾げる。その傍らで、ハィロゥは表情を険しくする。心なしか、身を少し固めた。エルフの男は少し何かを考えていたが、漸く、二人に気がつく。
「竜信仰者なら、いいのだが」
ハィロゥが、小さな声で呟くが、二人には聞こえていなかった。それが内心嬉しかった。
「ああ、助かった!こんな所に人が居るなんて…」
エルフの男は心底安心したようで、胸を押さえて微笑んだ。恐らく道に迷ったのだろう。
(町で会った気がするけど…気のせいだよな)
エルデルグが首をかしげている横で、ハィロゥは厳しい眼差しを向けていた。
「此処はあまり人が寄らない場所。足元も不安定で、危険です。潮が満ちると腰まで水がきますよ。早く立ち去ったほうが身のためです」
「そうですか。しかし困ったな…レヴィアータン様の宮へお参りに来たのですが…迷ってしまって」
エルフの男は長い黒髪を揺らし、苦笑した。青と緑の瞳が、どこか細くなる。
「一応、町の方向でも教えたらどうだ?」
エルデルグはそう、ハィロゥに耳打ちするが、彼は首を横に振り…黙ってエルフの男を見続けた。
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by jin-109-mineyuki | 2006-12-24 10:53 | 小説:竜の娘(仮) | Comments(0)